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平成30年(2018年) マンション管理士 試験問題 及び 解説

ページ1(問1より問25まで)

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謝辞:問題文の作成には、 高井さまの協力を得ています。


実施:平成30年11月25日(日) 13時から15時まで

※ 出題当時以後の法令等の改正には、一部は対応していません。

*試験に臨んで、お節介なアドバイス
  1.設問にあわせて、問題用紙に ○(まる)、X(ばつ)をつける。
    殆どの設問が、「正しい」か「間違い」かを訊いてきますので、設問により、問題の頭に、○かXをつけます。
    そして、各選択肢を読み、○かXをつけます。
    問題の○なりXと、選択肢の○かXが一致したものを、マークシートに記入してください。

  2.疑問な問題は、とりあえず飛ばす。
    回答の時間は限られています。
    そこで、回答として、○かXかはっきりしないものがでたら、「?」マークをつけて、次の問題に移ります。
    全部の回答が終わってから、再度戻って決定してください。

  3.複雑な問は、図を描く。
    甲、乙、A、B、Cなど対象が多い問題もでます。
    この場合、問題用紙の空いているところに、図を描いてください。
    重要な点が分かってきます。

(出題者からの注意
次の注意事項をよく読んでから、始めてください。
(注意事項)
1  これは試験問題です。問題は、1 ページから29 ページまでの50 問です。
2  試験開始の合図と同時に、問題のページ数を確認してください。
  もし落丁や乱丁があった場合は、ただちに試験監督員に申し出てください。
  また、法律等の略称及び用語の定義について、裏面の記載を確認してください。
3  答は、別の解答用紙に記入してください。
  解答用紙に記入する際は、解答用紙の注意事項をよく読み、所定の要領で記入してください。
4  答は、各問題とも1 つだけです。
  2 つ以上の解答をしたもの、判読が困難なものは、正解としません。
5  問題中法令等に関する部分は、平成30 年4 月1 日現在施行中の規定に基づいて出題されています。

問題及びこのページの中で使用している主な法律等の略称及び用語の定義については、各問題において特に記述している場合を除いて以下のとおりとします。

・「区分所有法」………………… 建物の区分所有等に関する法律(昭和37 年法律第69 号)
   
☆マンション管理士 香川より;この解説においては、私も略称「区分所有法」といいます。
・「マンション管理適正化法」…マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成12 年法律第149号)
 
 ☆マンション管理士 香川より;この解説においては、私も略称「マンション管理適正化法」といいます。
・「標準管理規約」………………  マンション標準管理規約(単棟型)及びマンション標準管理規約(単棟型)コメント(最終改正平成29 年8月29 日 国住マ第33 号)
  
☆マンション管理士 香川より、この解説においては、私も略称「標準管理規約」といいます。
・「マンション」…………………「マンション管理適正化法第2条第1号イに規定するマンション」をいう。
  ☆マンション管理士 香川より;
  初めての人には、分かり難い引用方法です。
  そこで、私の過去の年度の解説を読んでいる人には、度々となりますが、これは、受験での基本ですから、解説します。

 建物の区分所有等に関する法律(以下、当解説では、「区分所有法」といいます)では、法律用語として「マンション」の定義がありません。しかし、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下、当解説では、「マンション管理適正化法」といいます)第2条では、以下のように定義されていますので、マンションの用語を試験で使用する際にはこのような「マンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「マンション管理適正化法」という。)第2条第1号イに規定するマンションをいう」の表現が使用されます。

 そこで、マンション管理適正化法第2条とは、
 「(定義) 
  第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
     一
 マンション 次に掲げるものをいう
       イ 
二以上の区分所有者(建物の区分所有等に関する法律 (昭和三十七年法律第六十九号。以下「区分所有法」という。)第二条第二項 に規定する区分所有者をいう。以下同じ。)が存する建物で人の居住の用に供する専有部分(区分所有法第二条第三項 に規定する専有部分をいう。以下同じ。)のあるもの並びにその敷地及び附属施設」

 です。マンション管理適正化法第2条1号イによれば、「マンション」であるための要件は、
    @2人以上の区分所有者 がいて、 
    A人の居住用の専有部分が1つでもあればいい 
 です。マンションの建物には、専有部分と共用部分しかなく、そして、マンションは専有部分と共用部分を含んだ建物と敷地及び附属施設の全体的なものであることに注意してください。

 

・「管理組合」……………………  「区分所有法第3条に規定する区分所有者の団体」をいう。
  
☆マンション管理士 香川より; この定義の仕方には問題があります。
  まず、区分所有法第3条とは、
  「(区分所有者の団体)
   第三条  区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。 」

 です。
  このマンション管理士試験では、区分所有法第3条前半に規定される「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体」を”即=管理組合”に置き換えていますが、区分所有法では、法人化された場合には、「管理組合法人」の規定はありますが、管理組合だけの規定は1つも存在しません。
 法律で定義がされていない「管理組合」を国家試験として、直ちに「区分所有法第 3条に規定する区分所有者の団体をいう」は、実に不適切な方法です。改めるべきやり方です。

・「管理組合法人」………………  「区分所有法第47 条第1項に規定する法人」をいう。
  ☆マンション管理士 香川より;この解説においては、法人であれば区分所有法に明記されていますので、私も略称「管理組合法人」といいます。
・「
団地管理組合」………………  「区分所有法第65条に規定する団地建物所有者の団体」をいう。
  ☆マンション管理士 香川より; この定義の仕方には、上の「管理組合」の定義で指摘したのと同様に、法人化されていない「団地建物所有者の団体」を直ちに「団地管理組合」と呼ぶことは、国家試験においては、適切ではなく、非常に追及される出題方法です。これも、改めるべきやり方です。

解説者(マンション管理士 香川)からのコメント:あやふやな出題、適切でない出題もあって、解答ができないのもあります。

 *この解説の利用方法:過去に出題された年度が、リンクされていますから、出題の仕方、解説文も参考にしてください。

  *判例や、根拠となる告示なども、リンクしていますから、これも、確認してください。


民法(債権関係)は、2020年4月1日施行で、大幅に改正があるので、注意のこと。

※  ・マンション標準管理委託契約書は、平成30年3月9日付で24条に「反社会勢力の排除」などの改正があり、平成30年度の試験から出題適用となるので注意のこと。

   ・マンション標準管理規約は、平成29年8月29日付で「民泊」で12条に改正があり、平成30年度の試験から出題適用となるので注意のこと。

    ・マンションの管理の適正化に関する指針(国土交通省告示第490号)及びマンション標準管理規約は、平成28年3月14日付で大幅な改正があった。
  
   ・マンション標準管理委託契約書は、平成28年7月に改正があり、平成29年度の試験から出題適用となるので注意のこと。
   
   ・マンション標準管理規約は、平成16年に改正があった。また、平成23年7月にも小幅な改正があった。
   ・マンション標準管理委託契約書は、平成15年に改正があった。また、平成22年5月にも改正があった。

問1

〔問 1〕 規約に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 規約の設定、変更又は廃止については、集会を招集してその集会の決議によってこれを設定、変更又は廃止をする以外の方法は認められていない。

X 誤っている。 他に当初の公正証書でも一部の規約は設定できる。また、書面や電磁的方法もある。
 平成28年 マンション管理士試験 「問7」 、平成24年 管理業務主任者試験 「問38」 、平成23年 マンション管理士試験 「問5」 、平成23年 管理業務主任者試験 「問30」 、 平成22年 管理業務主任者試験 「問38」 、 同 「問31」 、平成15年 マンション管理士試験 「問7」 、平成15年 管理業務主任者試験 「問32」  

 まず、規約の設定、変更又は廃止は、区分所有法第31条
 「(規約の設定、変更及び廃止)
 第三十一条 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による
集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
2 前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。」

 とあり、
 基本的には、区分所有法第31条1項により、「規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする」のですが、次の第32条
 「(公正証書による規約の設定)
 第三十二条 最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、
公正証書により、第四条第二項、第五条第一項並びに第二十二条第一項ただし書及び第二項ただし書(これらの規定を同条第三項において準用する場合を含む。)の規約を設定することができる
 ともあり、
 「最初に建物の専有部分の全部を所有する者(分譲会社等)であれば、単独で@規約共用部分(集会所等)やA規約敷地(マンションが建っている土地以外の土地)、B専有部分と敷地利用権の分離処分の可能、C敷地利権の割合など、分譲前に決めておかなければならない4項目だけを公正証書で規約として設定できるようにしていますから、誤りです。

 
 

 また、区分所有法第45条
 「(書面又は電磁的方法による決議)
 第四十五条 この法律又は規約により集会において決議をすべき場合において、
区分所有者全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。ただし、電磁的方法による決議に係る区分所有者の承諾については、法務省令で定めるところによらなければならない。
2 この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項については、区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意があつたときは、書面又は電磁的方法による決議があつたものとみなす。
3 この法律又は規約により
集会において決議すべきものとされた事項についての書面又は電磁的方法による決議は、集会の決議と同一の効力を有する。
4 第三十三条の規定は、書面又は電磁的方法による決議に係る書面並びに第一項及び第二項の電磁的方法が行われる場合に当該電磁的方法により作成される電磁的記録について準用する。
5 集会に関する規定は、書面又は電磁的方法による決議について準用する。

 ともあり、
 区分所有者全員の承諾があれば、集会を招集しなくても、書面又は電磁的方法で決議が出来るため、集会を招集してその集会の決議によってこれを設定、変更又は廃止をする以外の方法は認められていないは、誤りです。



2 規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、当該区分所有者は、規約の設定、変更又は廃止の決議に賛成した区分所有者に対し、自己の区分所有権等を時価で買い取るべきことを請求することができる。

X 誤っている。 区分所有法にこんな規定はない。

 設問には、選択肢1で引用しました区分所有法第31条1項の後半
 「この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。」
 とありますが、「当該区分所有者は、規約の設定、変更又は廃止の決議に賛成した区分所有者に対し、自己の区分所有権等を時価で買い取るべきことを請求することができる。」との規定は、区分所有法にはありませんから、誤りです。
  では、区分所有法のどこに、買取の請求の規定がありますか?



3 一部共用部分の管理は、区分所有者全員の利害に関係するもの以外は、これを共用すべき区分所有者のみで行う。

X 誤っている。 一部共用部分の管理は、規約があれば、全体の管理に入れることができる。

 平成29年 マンション管理士試験 「問1」 、 平成28年 管理業務主任者試験 「問36」、 平成27年 マンション管理士試験 「問1」、 平成26年 管理業務主任者試験 「問36」、 平成24年 管理業務主任者試験 「問38」、 平成15年 管理業務主任者試験 「問37」

 まず、一部共用部分ですが、一部共用部分とはなにかの定義は、区分所有法第3条にあります。
 「(区分所有者の団体)
 第三条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。
一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。」 です。

 区分所有法第3条によれば、「一部共用部分」とは、一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが”明らかな”共用部分です。
 
 具体的には、1棟のマンションで下が店舗、上が住居用の構造となっており、店舗部分には従業員専用入り口やお客を対象にした出入口があり、住居部に対しては住居部専用の出入口や居住階専用のエレベーターがある場合を考えてください。
 この状況で店舗用の共用部分である従業員専用出入り口や店内にある廊下などの部分は、店舗部だけの「一部共用部分」となりますし、また、住居部専用の出入口や住居部だけが使用する廊下、居住階専用のエレベーターなどがあればその共用部分は、住居部だけの「一部共用部分」となります。
 この場合「一部共用部分」を管理する各々の団体が当然に構成されます。
そして、その「一部共用部分」を管理する各々の団体においても、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができるとしています。




 その、一部共用部分の管理は、区分所有法第16条
 「(一部共用部分の管理)
 第十六条 一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するもの又は第31条第2項の規約に定めがあるものは区分所有者全員で、その他のものはこれを共用すべき区分所有者のみで行う。」 

 とあります。
  これは、
   @区分所有者”全員の利害に関係するもの”は一部共用部分であっても当然に全体の管理への強制移管とし、
   Aその他のものは、一部共用部分であって全体の利害に関係しなくても、規約で定めて全体の管理に移管してもよいということです。

   逆に捉えると、一部共用部分で、
   @区分所有者全員の利害に関係しないもの
   Aまた、全体の規約で定めていないもの
   として、残された一部共用部分だけが、一部共用部分を共用する区分所有者の団体で管理することになります。

 


 ということで、一部共用部分の管理は、区分所有者全員の利害に関係するもの以外であっても、規約があれば、全体の管理に入りますから、「これを共用すべき区分所有者のみで行う」は、誤りです。


4 規約は、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人が保管しなければならないが、保管する者の選任は、集会の決議によるほか規約で定めることもできる。

〇 正しい。 保管する者の選任は、規約か集会で決める。
   平成29年 マンション管理士試験 「問8] 平成28年 マンション管理士試験 「問6」 、 平成26年 マンション管理士試験 「問33」 など。 
 
 規約の保管は、区分所有法第33条
 「(規約の保管及び閲覧)
 第三十三条 
規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない
2 前項の規定により規約を保管する者は、利害関係人の請求があつたときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧(規約が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したものの当該規約の保管場所における閲覧)を拒んではならない。
3 規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。」

 とあり、
 区分所有法第33条1項によれば、「規約は、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人が保管しなければならないが、保管する者の選任は、集会の決議によるほか規約で定めることもできる」は、正しい。

 

答え:4

《タグ》区分所有法 規約 集会の決議 書面又は電磁的方法 一部共用部分 一部共用部分の管理 規約の保管

 区分所有法の解説は、マンション管理士 香川 が無料で提供しています「超解説 区分所有法」のサイトを参考にしてください。また、リンクされている過去問題の解説も参考に、勉強してください。


 *平成30年のマンション管理士試験の出だしは、易しい。昨年(平成29年)の「問1」の「一部共用部分」の出題文は、意味が不明だったが、今年は、問題ない。

   選択肢1の書面・電磁的方法とか選択肢2の買取請求を持ってくるとは、今年の出題者は、今までと傾向が違う?

問2

〔問 2〕 管理者に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 集会の決議がなくとも、各区分所有者は、管理者の選任を裁判所に請求することができる。

X 誤っている。  マンションの管理者の選任まで、国(裁判所)は、面倒見ない。

  平成29年 マンション管理士試験 「問8」 、平成28年 管理業務主任者試験 「問33」 平成26年 マンション管理士試験 「問4」 、 平成25年 マンション管理士試験 「問5」 など 多い。

 マンションの管理者がいないからといって、各区分所有者レベルで、裁判所に選任を求める規定は、区分所有法には、ありませんから、誤りです。
 なお、管理者を解任する規定は、区分所有法第25条
 「(選任及び解任)
 第二十五条 区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。
2 管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。」

 とあります。



2 管理者は、集会において、毎年1回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならないが、規約の定めにより書面の送付をもって報告に代えることができる。

X 誤っている。 管理者の事務報告は、必ず集会(総会)で行うこと。規約で書面での報告はできない。 
  平成27年 管理業務主任者試験 「問33」 、平成26年マンション管理士試験 「問25」 、平成25年管理業務主任者試験 「問38」

 
管理者の事務報告は、区分所有法第43条
 「(事務の報告)
 第四十三条 
管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。」
 とあり、
 規約での別段の定めを認めていませんから、規約の定めにより書面の送付をもって報告に代えることができるは、誤りです。

 
 
管理者にこの事務報告の義務を課しているのは、区分所有法の集会中心主義の一環として、区分所有者が出席している集会で管理者が報告することにより、管理者の行った事務内容について区分所有者が質問することができ、管理者の事務執行に対する監督をより十分に行うためです。


3 管理者は、集会の決議により原告又は被告となったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。

X 誤っている。 集会の場合には、区分所有者は知っているので、通知は不要。

  平成28年 マンション管理士試験 「問2」 平成21年 マンション管理士試験 「問9」 、平成13年 マンション管理士試験 「問7」 。

 管理者はその権限として、規約又は集会の決議により、区分所有者のために、裁判での原告又は被告になります。
 それが、区分所有法第26条です。
 「(権限)
 第二十六条 管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
2 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
3 管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
4 管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる
5 管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。」

 とあり、
 区分所有法第26条4項により、管理者は、@規約 又は A集会の決議 によって、その職務に関し、区分所有者のために、原告又は被告となれます。
 そして、区分所有法第26条5項によれば、”@の規約によって、原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。”とありますから、
A集会の決議によるのであれば、区分所有者のために、原告又は被告となったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならないは、誤りです。
 集会を開催していれば、区分所有者は、既にその内容を知っていますので、通知は除かれています。



4 管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。

〇 正しい。 誰も所有することのできない共用部分を所有することができる。管理所有という。
 
管理所有の出題は、 平成28年 マンション管理士試験 「問5」 、平成24年 マンション管理士試験 「問6」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問30」 平成21年 マンション管理士試験 「問5」 、平成20年 マンション管理士試験 「問5」 、平成18年 管理業務主任者試験 「問38」 、 平成15年 マンション管理士試験 「問4」 など多いので、注意のこと。

 私の 「超解説 区分所有法」 をまだ読んでいない人には、質問の意図も分からないでしょう。
 この出題は区分所有法での「
管理所有」と呼ばれる分野からです。

 もともと、マンションの建物の共用部分となると、区分所有法第11条
 「(共用部分の共有関係)
 第十一条  
共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。
 2  
前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第二十七条第一項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。
 3  民法第百七十七条 の規定は、共用部分には適用しない。

 とあり、
 区分所有法第11条1項によれば、建物の共用部分は原則:区分所有者全員の共有に属するのですが、例外が2項にあります。
 規約で共有関係について別段の定めもできるということです。
 しかし、その別段の共有関係を定めた規約においても、但し書きにより、
  @区分所有者 と
  A区分所有法第27条1項の場合 
  でないと共用部分の所有者にしてはいけないということです。
 そこで、区分所有法第27条は
 「(管理所有)
 第二十七条  
管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる
 2  第六条第二項及び第二十条の規定は、前項の場合に準用する。 」

 とあり、
 区分所有法第27条1項により、管理者であれば、区分所有者でなくても、建物の共用部分の所有者になれますから、管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができるは、正しい。

 

答え:4  管理所有を知っていると易しい。

《タグ》区分所有法 管理者 選任 事務報告 原告・被告 通知 管理所有

問3

〔問 3〕 マンションの駐車場が区分所有者の共有に属する敷地上にあり、その駐車場の一部が分譲時の契約等で特定の区分所有者だけが使用できるものとして有償の専用使用権が設定されている場合、使用料を増額するために規約を変更する集会の決議及び特別の影響について、区分所有法及び民法(明治29年法律第89号)の規定並びに判例によれば、次のうち正しいものはどれか。

1 駐車場の使用が管理組合と専用使用権者との間の駐車場使用契約という形式を利用して行われている場合には、管理組合は、専用使用権者の承諾を得ずに規約又は集会の決議をもって、使用料を増額することはできない。

X 誤っている。 増額が社会通念上相当な額なら「特別の影響」に該当しないので、使用料は増額できる。
  平成28年 管理業務主任者試験 「問34」 、平成27年 管理業務主任者試験 「問29」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問35」 、平成25年 マンション管理士試験 「問6」 など 多い。

 まず、規約の変更は、区分所有法第31条
 「(規約の設定、変更及び廃止)
 第三十一条 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。
この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない
2 前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。」

 とあります。
 そこで、設問では、分譲時から駐車場の専用使用権を得ている特定の区分所有者がほかの駐車場利用者よりも低い使用料しか払っていない場合に、管理組合として、その専用使用をしている人に対して、使用料を増額しようとした事件です。
 この場合に、その増額が、区分所有法第31条1項後半の「この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。」の”特別の影響”に該当するのか、どうかで争いがあり、その判断は、最高裁判所まで持ち上がり、平成10年10月30日:「シャルマンコーポ博多」事件として判決が出ています。


 
 その判決では、  
  「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」の意義は、
   規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、
  当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が右区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合 をいう。」
 と例示し、
  続いて、  
 区分所有者が専用使用権を有するマンション駐車場の使用料を「増額」する規約の設定、変更等は、一般的に専用使用権者に不利益を及ぼすが、
     @増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、
     A増額された使用料が当該区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合には、
     B専用使用権者は、使用料の増額を受忍すべきで、
     C使用料の増額は、専用使用権者の権利において建物の区分所有等に関する法律31条1項後段にいう「特別の影響」を及ぼすものではない 
  とも例示しています。
  この判例によれば、管理組合は、専用使用権者の承諾を得ずに規約又は集会の決議をもって、使用料を増額することはできますから、設問は、誤りです。



2 区分所有法第31条に規定されている特別の影響を及ぼすべきときに当たるのは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超える場合である。

〇 正しい。

  選択肢1で引用しました、平成10年10月30日の最高裁判所の判決によれば、区分所有法第31条に規定されている特別の影響を及ぼすべきときに当たるのは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超える場合ですから、正しい。


3 使用料の増額について、増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、増額された使用料が区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合であっても、使用料の増額に関する規約の設定、変更等は専用使用権者の権利に特別の影響を及ぼすものとなるため、区分所有法第31条の規定により専用使用権者の承諾が必要となる。

X 誤っている。 この条件なら、専用使用権者の承諾は、不要。

  選択肢1で引用しました、平成10年10月30日の最高裁判所の判決によれば、増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、増額された使用料が区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合には、専用使用権者は、使用料の増額を受忍すべきで、使用料の増額は、専用使用権者の権利において建物の区分所有等に関する法律31条1項後段にいう「特別の影響」を及ぼすものではないため、専用使用権者の承諾は不要となり、誤りです。


4 専用使用権者が訴訟において使用料増額の効力を裁判で争っている場合であっても、裁判所の判断を待つことなく、専用使用権者が増額された使用料の支払に応じないことを理由に駐車場使用契約を解除し、その専用使用権を失わせることができる。

X 誤っている。 駐車場使用契約の解除は、係争中なので、最高裁の判断が出るまで、出来ない。

  また、選択肢1で引用しました、平成10年10月30日の「シャルマンコーポ博多事件」の判決文の最後では、「特別の影響の判断は最終的に裁判所が行う」ので、その係争中には該当している駐車場の契約解除は、裁判所の最終判断がされるまでできないと示したことです。 
 判決文によりますと、マンション駐車場の専用使用権を有する区分所有者が、使用料を増額する集会決議の効力を争い、管理組合の主張する増額使用料の支払義務の不存在確認を求める訴訟を提起し、既に三回の口頭弁論期日が開かれていたにもかかわらず、管理組合が、専用使用権者に対して増額使用料を支払うように催告し、その支払に応じないことを理由として駐車場使用契約を解除する旨の意思表示をしたことは、管理組合の主張する使用料の増額の適否については、一審、二審で判断が異なったように、社会通念上相当なものであることが明白であるとはいい難いことなどから、専用使用権者が従来の支払をすることは無理ではないので、管理組合が増額に応じないからといって、駐車場契約を解除しても、その効力はないとしたものです。
 そこで、設問は、誤りです。



答え:2  過去問題をやり、私の解説を読んでいれば、易しい。

 設問の平成10年の駐車場を巡る判例は、区分所有法第31条での「特別の影響」の意義だけでなく、他にも分譲した会社と管理組合との間での返還請求などが4件もあり、最高裁の判決としては、現在の区分所有法との関係で、よくない判例として、「マンション管理士 香川」として、別途解説していますので、参考にしてください。
  http://www.higuchi-fit.co.jp/mezase/hanrei/hanre-h10-chushaba.html

《タグ》 区分所有法 専用使用の駐車場 規約の改正 特別の影響とは 係争中の契約の解除

問4

〔問 4〕 区分所有法の定める建物及びその敷地に関する定義によれば、次の記述のうち、正しいものの組合せは、1〜4のうちどれか。

ア 建物の敷地には、建物が所在する土地のほか、それと一体として管理又は使用する土地で規約により建物の敷地とされたものも含まれる。

〇 正しい。 法定敷地と規約敷地がある。
 平成26年 管理業務主任者試験 「問34」 、平成25年マンション管理士試験 「問1」平成21年マンション管理士試験 「問1」 
 
 まず建物の敷地とは、区分所有法第2条5項及び第5条1項
 「(定義)
 第二条 
 5 この法律において「
建物の敷地」とは、建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により建物の敷地とされた土地をいう。」

 とあり、設問の前半「建物の敷地には、建物が所在する土地」は正しい。
 そして、建物の敷地は、他にも、「第五条第一項の規定により建物の敷地とされた土地をいう」、とあり、区分所有法第5条1項は、
 「(規約による建物の敷地)
 第五条 
区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる。
 2 建物が所在する土地が建物の一部の滅失により建物が所在する土地以外の土地となつたときは、その土地は、前項の規定により規約で建物の敷地と定められたものとみなす。建物が所在する土地の一部が分割により建物が所在する土地以外の土地となつたときも、同様とする。」

 とあり、
 建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができるため、後半も正しい。
 よって、選択肢1は正しい。
 なお、設問の前半、「建物が所在する土地」は、法定敷地と呼ばれ、後半の「規約により建物の敷地とすることができる土地」は、規約敷地と呼ばれます。

 
 
 

イ 専有部分は、規約により共用部分とすることができるが、附属の建物については、規約により共用部分とすることはできない。

X 誤っている。 専有部分も附属の建物も、共に規約があれば、共用部分にできる。
  平成26年 マンション管理士試験 「問1」 、平成25年マンション管理士試験 「問1」、 平成24年マンション管理士試験 「問1」平成22年マンション管理士試験 「問1」平成20年マンション管理士試験 「問1」平成19年マンション管理士試験 「問7」 など。

 まず、設問の前半の専有部分の共用部分化は、区分所有法第2条4項、
 
「(定義)
 第二条 
 4 この法律において
「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。」

 とあり、
 通常、専有部分であれば、共用部分ではないのですが、引用されています、第4条2項は、
 「(共用部分)
 第四条 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。
 2 
第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。」

 とあり、
 「第一条に規定する建物の部分」とは、共用部分を除いた区分所有権の目的たる「専有部分」を指していますから、専有部分は、規約により共用部分とすることができるは、正しい。
 また、第4条2項には、「及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる」ともありますから、附属の建物(別棟の集会所、物置、倉庫、車庫など)も規約により共用部分とすることができるため、選択肢イは、後半が誤りです。

 
 

 
 これにより、共用部分は、
   @法定共用部分...第2条4項前半に明示されている、「共用部分」とは、「専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物」である。
 具体的には、通常、建物の躯体、支柱、外壁、屋根、廊下、階段室、エレベーター室など。外部から見ても、構造上、使用上、法律上当然に居住者みんなが使う場所や構造物は共用部分となる。
   A規約共用部分...第2条4項後半に規定される、「第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物」である。
   それは、その用途・性質から、専有部分となりえるが、区分所有者達が規約で決めれば共用部分に変更できる。
   その建物の部分は、もともとは他の人(外部の人)が見て、マンションの一室かどうか分からないものであるため規約で共用部分であることを明文化する必要がある。

 なお、その用途・性質から専有部分にも成り得る集会室、管理事務室は、規約で共用部分とすべきです。


ウ 専有部分は、区分所有権の目的たる建物の部分であり、その用途は、住居、店舗、事務所又は倉庫に供することができるものに限られる。

X 誤っている。 専有部分は、区分所有権の目的たる建物の部分だが、その用途は、住居、店舗、事務所又は倉庫に供することができるものに限られない。建物であればいい。
  平成25年 マンション管理士試験 「問1」 、平成19年 マンション管理士試験 「問1」 、平成18年 マンション管理士試験 「問3」

 まず、設問の前半は、区分所有法第2条3項
 「(定義)
 第二条 
 
3 この法律において「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。

 とあり、
 「専有部分は、区分所有権の目的たる建物の部分であり」は、正しい。
 しかし、区分所有権は、区分所有法第2条1項
 
「1項 この法律において「区分所有権」とは、前条に規定する建物の部分(第四条第二項の規定により共用部分とされたものを除く。)を目的とする所有権をいう。」
 とあり、
 前条は、第1条
 
「(建物の区分所有)
 第一条 
一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。」

 とあり、
 その用途は、住居、店舗、事務所又は倉庫”その他建物としての用途に供することができるもの”であればよく、その用途は、住居、店舗、事務所又は倉庫に供することができるものに限られるは、誤りです。

 

建物 @専有部分 @構造上、
A利用上の独立性があること
住居、店舗、事務所、倉庫など 住居に限らないことに注意
A共用部分 @法定共用部分 廊下、階段室、エレベーター室など 法律上当然
A規約共用部分 本来は専有部分、物置、管理人室、集会室など 登記をすれば、第三者に対抗できる。



エ 専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利である敷地利用権には、所有権だけでなく賃借権や地上権も含まれる。

〇 正しい。 敷地利用権はあくまでも、利用権で、その形態には、所有権以外の地上権、賃借権、使用貸借権もある。
  平成27年 マンション管理士試験 「1」 、 平成16年 マンション管理士試験 「問2」 、

 まず、敷地利用権とは、区分所有法第2条6項
 「(定義)
 第二条
 6 この法律において「
敷地利用権」とは、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利をいう。

 とあり、
 専有部分(建物)所有に必要な土地に対する権利を「敷地利用権」と定義し、民法で定める、一般の土地に対する権利とは別の概念を創設定義しています。
 具体的には、マンションが建っている土地(法定敷地と規約敷地を含む)の利用権としては、所有権以外もあり、地上権、賃借権、またほとんどないが使用貸借権でも可能ですから、設問は、正しい。


 


1 アとイ
2 イとウ
3 ウとエ
4 エとア



答え:4 正しいのは、ア と エ (エ ア)  選択肢の前後で別れているが、易しい。

 この設問は、区分所有法における基本ですので、かなり詳細に説明しました。

《タグ》区分所有法 定義 敷地 専有部分 共用部分 規約 用途 敷地利用権

問5

〔問 5〕 未納の管理費等の回収や義務違反者に対する措置に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 未納の管理費等に係る債権は、区分所有法第7条に規定する先取特権の実行としての担保不動産競売を申し立てることにより、他の一般債権者に優先して弁済を受けることができる。

〇 正しい。 これが、先取特権です
  平成29年 管理業務主任者試験 「問35」 平成28年 マンション管理士試験 「問3」 、 平成27年 管理業務主任者試験 「問38」 、 平成27年 管理業務主任者試験 「問2」 、平成27年 マンション管理士試験 「問26」 、 平成27年 管理業務主任者試験 「問2」 、平成25年 管理業務主任者試験 「問2」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問3」 、 平成17年 マンション管理士試験 「問6」 なども。

 まず、先取特権とは、民法第303条に、次のように規定され、
 「(先取特権の内容)
 第三百三条  先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、
その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。 」
 とあり、
 民法で定められた、10種の物権の一つです。
 抵当権と同様に担保物の価値で債権(財産権の1つ)を担保する方法の一つで、担保される債務の履行がないときに担保権を実行(民事執行法に基づく競売)して債権を他の債権者より優先的に回収することができます。他の債権者よりも先に債務を支払ってもらえることが特権たる所以です。

 そこで、区分所有法でも、区分所有法第7条
 「(先取特権)
 第七条 区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に
先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。
 2 前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、
共益費用の先取特権とみなす
 3 民法(明治二十九年法律第八十九号)第三百十九条の規定は、第一項の先取特権に準用する。」

 とあります。

   区分所有関係によって生じた区分所有者間の債権なら、民法で規定される先取特権の制度を適用して、一般の債権の回収よりも優先してできると強い保護を与えた規定です。
 この区分所有法での先取特権をうけられる被担保債権は、
  @区分所有者が、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権、
  A規約又は集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権です。
  @の債権は保存行為等で個人の区分所有者が立替えた現在の債権をいい、
  Aの債権は管理費・修繕積立金・義務違反者の違約金等団体としての区分所有者の全員が共同して(または管理組合が)有する債権をいうとするのが一般のようです。
 そこで、設問の未納の管理費等に係る債権は、区分所有法第7条に規定する先取特権の実行としての担保不動産競売を申し立てることにより、他の一般債権者に優先して弁済を受けることができるは、正しい。



2 区分所有法第7条に規定する先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができるが、登記をした第三者に対しては、この限りでない。

〇 正しい。 登記してある抵当権があると、無登記の先取特権は、登記が優先する。

  特別担保とは、債務者の特定の財産が特定の債権のために抵当権や質権などの担保物権の目的とされること。また、その目的とされた財産のことです。
  区分所有法第7条での先取特権と他の抵当権との関係は、解釈上での解説ですが、
  1.抵当権が未登記であれば、区分所有法第7条の先取特権が未登記でも抵当権に優先します。 
  2.抵当権が登記されていて、区分所有法第7条の先取特権が未登記だと、抵当権が優先します。
  3.抵当権と区分所有法第7条の先取特権が共に登記されていると、優先順序は、その登記の前後によって決まります。(先に登記した方に優先権があります。)
 そこで、区分所有法第7条に規定する先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができますが、登記をした第三者に対しては、優先しませんから、正しい。
 

 参考:民法第336条
 「(一般の先取特権の対抗力)
  第三百三十六条 
一般の先取特権(注:@共益の費用、A雇用関係、B葬式の費用、4日用品の供給)は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。ただし、登記をした第三者に対しては、この限りでない。


3 管理者は、区分所有法第59条の規定による区分所有権及び敷地利用権の競売について、規約又は集会の決議により、訴えをもって請求することができる。

X 誤っている。 区分所有法第59条の競売請求は、規約ではできない。必ず集会を開くこと。
  平成28年 管理業務主任者試験 「問37」 、平成26年 マンション管理士試験 「問8」 、平成24年 マンション管理士試験 「問9」 、平成23年 マンション管理士試験 「問32」 

  マンションでは余りにも共同の利益違反が大きいと、そのマンションから追い出しを受けます。
 それが、区分所有法第59条
 「(区分所有権の競売の請求)
 第五十九条 第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、
集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる
2 第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。
3 第一項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。
4 前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。」

 とあり、
 区分所有法第59条1項によれば、訴えを起こすには、必ず集会を開いて決めなさいと言っていますから、”
規約又は”集会の決議により、訴えをもって請求することができるの「規約」の箇所が誤りです。
 なぜ、必ず集会を開かせるのか理由を考えてください。

 なお、前半の管理者でも訴訟提起は可能です。(第59条2項による第57条3項の準用)
 「第57条3項
 3 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。」


 


4 区分所有法第59条の規定による競売請求の判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から6ヵ月以内に行わなければならない。

〇 正しい。  判決で競売していいとなっても、判決後、6ヶ月間放置したら、もう競売はできない。
  平成26年 管理業務主任者試験 「問31」 平成26年マンション管理士試験 [問5」

 選択肢3で引用しました、区分所有法第59条3項 
 
「3 第一項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。」
 とあり、
 区分所有法第59条の規定による競売請求の判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から6ヵ月以内に行わなければならないは、正しい。

 通常、確定判決での時効は10年の筈です(民法第174条の2)が、あまり長い間被告を不安定な状態に置いておくことは不当であることと競売の申立てが可能になってから6ヶ月間もの間共同生活内に置いている状況では共同生活からの放逐の必要性が消滅したものとみなし得るという理由によるものと思われます。



答え:3  易しい問題です。 法律の条文は、なぜこの規定があるかも考えると理解しやすい。

《タグ》区分所有法 先取特権 競売 義務違反者 滞納

問6

〔問 6〕 マンションの登記に関する次の記述のうち、区分所有法及び不動産登記法(平成16年法律第123 号)の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、団地管理組合である場合を除くものとする。

1 マンションの登記簿において、一つの登記記録に建物の専有部分と敷地権とが共に登記されることはない。

X 誤っている。 区分建物なら、1つの登記簿に建物の専有部分と敷地権が共に登記されている。
  平成28年 管理業務主任者試験 「問43」 、 平成25年 管理業務主任者試験 「問43」 、  平成23年 管理業務主任者試験 「問45」 、 平成21年マンション管理士試験 「問18」 、 平成21年管理業務主任者試験 「問43」 、 平成19年マンション管理士試験 「問18」 、平成18年管理業務主任者試験 「問45」 など。

  分譲マンションは、不動産登記法上「区分建物」とよばれ、一戸建ての普通建物とは、登記事項証明書の表題部の様式が大きく異なります。
 それは、マンションでは区分所有法第22条によって、建物の専有部分(室)と、土地の敷地利用権の分離処分を禁止したためです。
  「(分離処分の禁止)
 第二十二条 
敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
 2 前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第十四条第一項から第三項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。
 3 前二項の規定は、建物の専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合に準用する。」

 
 この規定により、今までの登記簿では、民法の原則により土地の権利と建物の権利が別々に記載されていたのが、区分建物では1つになり、「敷地権」の登記がなされると土地の権利(敷地利用権)についても同様の登記がなされたものとみなすことによって、たとえ権利の変動があっても土地(敷地)への登記はしないという簡略な扱いができ、権利関係が、単純化され分かりやすくなりました。
 なお、区分所有法での”
敷地利用権”は、登記されると”敷地権”となります

 具体的には、不動産登記規則第4条
 「(登記記録の編成)
 第四条 土地の登記記録の表題部は、別表一の第一欄に掲げる欄に区分し、同表の第一欄に掲げる欄に同表の第二欄に掲げる事項を記録するものとする。
 2 建物(次項の建物を除く。)の登記記録の表題部は、別表二の第一欄に掲げる欄に区分し、同表の第一欄に掲げる欄に同表の第二欄に掲げる事項を記録するものとする。
 3 
区分建物である建物の登記記録の表題部は、別表三の第一欄に掲げる欄に区分し、同表の第一欄に掲げる欄に同表の第二欄に掲げる事項を記録するものとする
 4 権利部は、甲区及び乙区に区分し、甲区には所有権に関する登記の登記事項を記録するものとし、乙区には所有権以外の権利に関する登記の登記事項を記録するものとする。」

 とあり、
 不動産登記規則第4条3項での別表三は、


 
 とあり、1つの登記記録には、建物の専有部分と敷地権が登記されていますから、一つの登記記録に建物の専有部分と敷地権とが共に登記されることはないは、誤りです。


登記記録の例

表題部が2つあり一棟の建物の表示や敷地権の表題部もあることが、区分建物の登記の特徴です。




2 マンションの登記簿の表題部(専有部分の建物の表示)の登記記録において、専有部分は登記されるが、法定共用部分は登記事項ではないので、登記されることはない。

〇 正しい。 法定共用部分とは、登記できない性格のもの。
   共用部分については、「問4」 も参考の事

 まず、 共用部分とは、区分所有法第2条4項
 「(定義)
  第二条 
 4 この法律において「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。」

 とあり、
 引用されています、区分所有法第4条
 「(共用部分)
 第四条 
数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする
 2 第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

 です。
 そこで、第4条によりますと、共用部分には、
   @法定共用部分 と
   A規約共用部分
   があり、共に共用部分になると、区分所有権の目的にはできないともなります。
  法定共用部分は、具体的には、通常、建物の躯体、支柱、外壁、屋根、廊下、階段室、エレベーター室など。外部から見ても、構造上、使用上、法律上当然に居住者みんなが使う場所や構造物のことです。
  これら、法定共用部分は、選択肢1で引用しました不動産登記規則第4条 別表三 においても、登記事項でもありませんから、マンションの登記簿の表題部(専有部分の建物の表示)の登記記録において、専有部分は登記されるが、法定共用部分は登記事項ではないので、登記されることはないは、正しい。

 
 実務において、建物の部分として、専有部分か共用部分かの争いはありますが、解釈上では、設問の様になります。


3 専有部分を規約により共用部分とした場合に、その旨の登記をしなければ、これをもって第三者に対抗することはできない。

〇 正しい。 外観から見て専有部分ともなるなら、登記が無いと第三者に対抗できない。
  
平成 26年 マンション管理士試験 「問1」 、 

 集会室や管理事務室などは、専有部分ともなりますから、多くの場合、規約によって、区分所有者全員の共用部分にします。
 すると、選択肢2で引用しました、区分所有法第4条2項
 「2 第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。
この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
 により、
 専有部分を規約により共用部分とした場合に、その旨の登記をしなければ、これをもって第三者に対抗することはできないため、正しい。



4 管理組合法人が成立するためには、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、登記をすることが必要である。

〇 正しい。  内部で決めただけでは、第三者には分かりませんから、登記が必要です。

  平成28年 マンション管理士試験 「問2」、「問8」 平成28年 管理業務主任者試験 「問36」 、 平成27年 マンション管理士試験 「問7」 、平成26年 マンション管理士試験 「問5」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問2」 、 平成18年 マンション管理士試験 「問2」   

 マンションでの管理組合を法人化するには、区分所有法第47条
  第六節 管理組合法人
 「(成立等)
 第四十七条 
第三条に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによつて法人となる
 2 前項の規定による法人は、管理組合法人と称する。
  以下、略)」

 とあり、
 区分所有法第47条1項及び2項によれば、管理組合法人が成立するためには、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、
登記をすることが必要であるは、正しい。
 単に集会で決議しても、法人にはなれません。世間に知らせるための登記が必要です。

 


答え:1  易しい。

 ここもかなり詳細に説明しました。
  
 なお、「超解説 区分所有法」 で 不動産登記の解説もしてますので、参考にしてください。

  http://www.higuchi-fit.co.jp/mezase/kubun-hou/kubun-M-p03.htm#futoho


《タグ》区分所有法 不動産登記法 登記記録 専有部分 敷地権 法定共用部分 管理組合法人


 ★2018年12月20日 追記:  本「問6」 の選択肢4 について

 本年のマンション管理士試験の受験生Sさんより、以下のメールがきましたので、ご紹介します。
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 「選択肢「4」(以下、選択肢4と称す)について以下の通り疑問があります。
   まず、区分所有法 第47条第1項において
  「第三条に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記することによって法人となる」
   とあります。
   しかしながら、上記区分所有法の条文と選択肢4を比べると、選択肢4においては、「管理組合法人が成立するためには、区分所有法及び議決権の4分の3以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、登記することが必要である。」
   となっており、区分所有法第47条第1項の条文にある「かつ、その主たる事務所の所在地において」の文言の記載がありません

 この点につきまして、
 区分所有法第47条1項で「その主たる事務所の所在地において」登記するとしているのは、それ以外の場合(手続きの誤り等で従たる事務所の所在地で登記してしまった等の事故)があることを想定していることから、ただ「登記する」とせず、「その主たる事務所の所在地において登記する」としているのではないでしょうか。

 ついては、ただ「登記する」とだけ記載されている選択肢4では、区分所有法に規定される条件を広義には満たしていますが、狭義(本質的)には満たしておらず不十分ではないかと考えました。
 また、今回の選択肢4の文言が正答となるならば、区分所有法第47条第1項の条文中の「主たる事務所の所在地において登記する」という文言自体の意義がなくなり、条文を選択肢4と一言一句同じに変えるべきと考えてしまいます。

 また、蛇足ですが昨年度平成29年度マンション管理士試験問題の問21の選択肢1が正解に訂正されました。

 ■平成29年度マンション管理士試験問題 問21 選択肢1において

 (原文)
 共同住宅に設ける昇降機の所有者(所有者と管理者が異なる場合においては、管理者)は、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築設備等検査員資格者証の交付を受けている者に検査をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。
 との当初の選択肢でしたが、上記下線部において、
 ”建築設備等検査員資格者証の交付を受けている者”では、昇降機等検査員以外の建築設備検査員や防火設備検査員も含まれるため「誤り」に訂正されました。                      

 今回質問させていただきました内容は、以上のようなロジックで訂正された「平成29年度問題 問21 選択肢1」の内容と同じように感じる次第です。

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 このメールに対するマンション管理士 香川の見解:
 回答:本当に、出題元の 公益財団法人マンション管理センター は問題文を作成するにあたって、昨年の問21だけでなく、例年注意が不足しています。

  ここも、国家資格である「マンション管理士」試験の問題文であるなら、丁寧に区分所有法第47条1項の文面「第四十七条 第三条に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、 その主たる事務所の所在地において登記をすることによつて法人となる。」
 とあるので、ご指摘のように、「かつ、その主たる事務所の所在地において」も選択肢4に入れるべきです

 そこで、S様が至急取るべきアクションは、
 1.出題元の公益財団法人マンション管理センターに、問6は、誤りが1、4の2つになり、不適切な出題だと指摘する手紙をだす。

   その手紙に対して、公益財団法人マンション管理センターは、「試験問題等に関する問い合わせには、一切応じられません」
   と回答してきますから、
   国家資格の試験問題で、受験生に対して、「試験問題等に関する問い合わせには、一切応じられません」の態度は、許されないと、前もって記載すればいいでしょう。

 2.平行して、出題元の公益財団法人マンション管理センターを監督している、国土交通省 住宅局あてにも手紙をだす。
   
   過去の例をみても、出題元の公益財団法人マンション管理センターの態度は、実に傲慢です。

   そこで、公益財団法人マンション管理センターの監督官庁である国土交通省 住宅局長あてにも 「問6」では、本来、1つであるべき誤りが、選択肢1 と 選択肢4 になると 説明する。

   質問状の例は、http://www.higuchi-fit.co.jp/mezase/kako-mon/H24/H24-man-q24-shitumon.htm

 にもあります。

 選択肢1が誤りの解説は、平成30年の問題解説にありますから、参考にしてください。

  これで、ダメなら、SNS を使って、マスコミにも動いてもらうことです。

 以上、ご参考までに。


 *この出題に似たような内容が、平成30年 管理業務主任者試験 「問50」 でも起きていますから、受験生は、厳しく「抗議」してください。

問7

〔問 7〕 集会の決議における電磁的方法の利用に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。

1 区分所有法又は規約により集会において決議をすべき場合において、電磁的方法による決議をするためには、区分所有者の4分の3以上の承諾がなければならない。

X 誤っている。 4分の3以上では足りない。全員が承諾しなければならない。
 平成23年 マンション管理士試験 「5」 、

 まず、電磁的方法とは、区分所有法第45条
 「(書面又は電磁的方法による決議)
 第四十五条 
この法律又は規約により集会において決議をすべき場合において、区分所有者全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。ただし、電磁的方法による決議に係る区分所有者の承諾については、法務省令で定めるところによらなければならない。
 2 この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項については、区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意があつたときは、書面又は電磁的方法による決議があつたものとみなす。
 3 この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項についての書面又は電磁的方法による決議は、集会の決議と同一の効力を有する。
 4 第三十三条の規定は、書面又は電磁的方法による決議に係る書面並びに第一項及び第二項の電磁的方法が行われる場合に当該電磁的方法により作成される電磁的記録について準用する。
 5 集会に関する規定は、書面又は電磁的方法による決議について準用する。」

 とあります。
 この規定は、平成14年に世間のIT化の波を受け、区分所有法の改正で電磁的方法の採用があり、新設された条文です。
 区分所有法では、多くの事項は集会を開いて決議しなさいとしていますが、「
全員が承諾するなら」もう、集会は省略してもいいということです。
 そこで、区分所有法第45条1項によれば、”区分所有者の4分の3以上の承諾”では、誤りです。全員の承諾が必要です。



2 集会を招集すべき者は、電磁的方法による決議を行うときには、回答の期限とされている日よりも少なくとも1週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に通知を発しなければならない。

〇 正しい。 電磁的方法には、集会の規定が準用される。
  過去問題なし。

 選択肢1で引用しました、区分所有法第45条5項
 「5 集会に関する規定は、書面又は電磁的方法による決議について準用する。」
 とあり、
 準用されています集会の既定とは、具体的には、第34条から第46条までで、そこで、区分所有法第35条1項
 「(招集の通知)
 第三十五条 
集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。」
 とあり、
 集会を招集すべき者は、電磁的方法による決議を行うときには、回答の期限とされている日よりも少なくとも1週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に通知を発しなければならないは、規約で別段の定めがないとのことで、正しい。



3 区分所有法又は規約により集会において決議すべきものとされた事項については、区分所有者全員の電磁的方法による合意があったときは、電磁的方法による決議があったものとみなされる。

〇 正しい。 決議とみなされる。
  平成24年 管理業務主任者試験 「問38」 、 平成18年 管理業務主任者試験 「問31」 、 平成17年 マンション管理士試験 「問9」

 選択肢1で引用しました、区分所有法第45条2項
 「2 この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項については、区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意があつたときは、書面又は電磁的方法による決議があつたものとみなす。」
 とあり
 区分所有法第45条2項によれば、区分所有法又は規約により集会において決議すべきものとされた事項については、区分所有者全員の電磁的方法による合意があったときは、電磁的方法による決議があったものとみなされるは、正しい。

 区分所有者全員が、書面や電子メールで、議題の内容として合意した事項は、普通決議でも特別決議でも、集会の決議と同じ効力を持つということです。



4 区分所有法又は規約により集会において決議すべきものとされた事項についての電磁的方法による決議は、集会の決議と同一の効力を有する。

〇 正しい。 決議は有効。
  平成18年 管理業務主任者試験 「問31」 

 選択肢1で引用しました、区分所有法第45条3項
 「3 この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項についての書面又は電磁的方法による決議は、集会の決議と同一の効力を有する」
 とあり、
 区分所有法第45条3項によれば、区分所有法又は規約により集会において決議すべきものとされた事項についての電磁的方法による決議は、集会の決議と同一の効力を有するは、正しい。



答え:1  条文だけで、易しい 。

《タグ》区分所有法 電磁的方法 全員の承諾 準用 集会 効力

問8

〔問 8〕 管理組合法人の理事及び監事に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 管理組合が主たる事務所の所在地において登記をすることによって管理組合法人となる場合において、管理組合法人の監事については登記はなされない。

〇 正しい。 マンションの管理組合が法人化しても、代表は登記事項だが、監事は登記事項ではない。
  平成25年 管理業務主任者試験 「問36」 、 

  マンションの管理組合を法人化するについては、「問6」 の選択肢4 も参考のこと。 
  法人の登記は、区分所有法第47条3項
 「(成立等)
 第四十七条
 3 この法律に規定するもののほか、管理組合法人の登記に関して必要な事項は、
政令で定める。」
 とあり、
 引用されています、政令とは、「組合等登記令」です。

 そこで設問に関係している条文は、組合等登記令第2条
 「(設立の登記)
 第二条 組合等の設立の登記は、その主たる事務所の所在地において、設立の認可、出資の払込みその他設立に必要な手続が終了した日から二週間以内にしなければならない。
 2 前項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
   一 目的及び業務
   二 名称
   三 事務所の所在場所
   
四 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
   五 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
   六 別表の登記事項の欄に掲げる事項」

 とあり、
 組合等登記令第2条2項6号の別表で該当するのは、別表(第一条、第二条、第六条、第七条の二、第八条、第十七条、第二十条、第二十一条の三関係) 

名称   根拠法  登記事項
 管理組合法人
団地管理組合法人
 建物の区分所有等に関する法律  共同代表の定めがあるときは、その定め
 とあります。

 これらの組合等登記令によりますと、登記事項は、代表権を有する者の氏名、住所とその資格(理事長など)は登記事項で、また複数の代表(共同代表=理事長を決めない時の各理事)がいれば、理事全員が登記の対象になりますが、
監事は、登記事項ではありませんから、管理組合が主たる事務所の所在地において登記をすることによって管理組合法人となる場合において、管理組合法人の監事については登記はなされないは、正しい。


2 代表権のある理事が管理組合法人所有の土地の一部を購入しようとする場合、当該理事は、他の理事全員の承諾を得た上で管理組合法人の代表者として当該売買契約を締結しなければならない。

X 誤っている。 利益が相反すると、監事が管理組合法人の代表となる。

  
平成27年 管理業務主任者試験 「問30」 、平成26年マンション管理士試験 「問3」 、 平成26年管理業務主任者試験 「問32」 、 平成25年マンション管理士試験 「問8」

 設問の、「代表権のある理事が管理組合法人所有の土地の一部を購入しようとする場合」は、管理組合法人を代表してその利益のために行動すべき立場と、購入者としての利益を追及する立場が同一人となり、管理組合法人の利益が十分に保障されない事態が生じるるため、通常「利益相反行為」として、民法でも禁止されています。
 そこで、このような場合は、区分所有法第51条
 「(監事の代表権)
 第五十一条 
管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、監事が管理組合法人を代表する。」
 とあり、
 代表権のある理事が管理組合法人所有の土地の一部を購入しようとする場合には、監事が管理組合法人を代表しますから、当該理事は、他の理事全員の承諾を得た上で管理組合法人の代表者として当該売買契約を締結しなければならないは、誤りです。
 
 監事の役目は、重要ですよ。
 では、標準管理規約の規定は?


 


3 複数の理事がいる管理組合法人において、理事全員が共同して管理組合法人を代表する旨が規約によって定められている場合、そのうちの理事一人と管理組合法人との間で利益相反事項が生じるときには、当該利益相反事項と関わりのない他の理事が管理組合法人を代表することができる。

X 誤っている。  共同代表なら、監事が代表すべき。 他の理事ではだめ。 

  選択肢2で引用しました区分所有法区分所有法第51条では、
 「管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、監事が管理組合法人を代表する」
 とあり
 管理組合法人が共同代表制をとるなら、利益違反に関係しない理事がいても、連帯として、利益相反となり、監事が管理組合法人を代表すべきで、当該利益相反事項と関わりのない他の理事が管理組合法人を代表することができるは、誤りです。
  なお、共同代表制でなく、各理事が管理組合法人を代表する場合なら、利益相反に該当しない理事がいれば、その理事が管理組合法人を代表します。


4 理事が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときには裁判所によって仮理事が選任されるが、監事が欠けた場合には、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときであっても裁判所による仮監事の選任はなされない。

X 誤っている。 管理組合法人では、裁判所によって、仮理事、仮監事が選任されることがある。 
  平成29年 マンション管理士試験 「問7」 、 平成26年 マンション管理士試験 「問3」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問37」 

 まず、管理組合法人での理事が欠けて、事務が遅滞し損害が生じるおそれがあると、区分所有法第49条の4
 「(仮理事)
 第四十九条の四 
理事が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、仮理事を選任しなければならない
 2 仮理事の選任に関する事件は、管理組合法人の主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。」

 とあり、
 設問の前半、理事が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときには裁判所によって仮理事が選任されるは、正しい。
 そして、監事なら、区分所有法第50条4項
 「(監事)
 第五十条 
 4 第二十五条、第四十九条第六項及び第七項並びに
前条の規定は、監事に準用する。」
 とあり、
 仮理事の規定(前条=第49条の4)が、準用されますから、監事が欠けた場合には、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときなら、裁判所による仮監事の選任があるため、監事が欠けた場合には、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときであっても裁判所による仮監事の選任はなされないは、誤りです。

 選択肢4は、後半が誤りとなります。



答え:1 選択肢3 は少し悩むか? でも、選択肢1 を知っていれば、易しい。

《タグ》 区分所有法 管理組合法人化 理事 監事 利益相反 仮理事 仮監事
問9

〔問 9〕 管理組合及び管理組合法人に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。

ア 規約を保管する者は、正当な理由がある場合を除き、利害関係人から請求のあった当該規約の閲覧を拒んではならない。

〇 正しい。
  平成17年 管理業務主任者試験 「問36」 、 平成14年 マンション管理士試験 「問30」 

  設問が、普通の管理組合と法人となっているため、解説が面倒ですが、まず、規約の閲覧は、区分所有法第33条
 「(規約の保管及び閲覧)
 第三十三条 規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない。
 2 前項の規定により
規約を保管する者は、利害関係人の請求があつたときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧(規約が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したものの当該規約の保管場所における閲覧)を拒んではならない。
 3 規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。」

 とあり、
 区分所有法第33条2項により、管理組合の規約の保管者は、正当な理由がある場合を除き、利害関係人から請求のあった当該規約の閲覧を拒んではならないは、正しい。

 次に、管理組合法人では、原則として、第4節の「管理者」以外の規定は、適用があります。そこで、区分所有法第47条12項
 「12 管理組合法人について、
第三十三条第一項本文(第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定を適用する場合には第三十三条第一項本文中「管理者が」とあるのは「理事が管理組合法人の事務所において」と、第三十四条第一項から第三項まで及び第五項、第三十五条第三項、第四十一条並びに第四十三条の規定を適用する場合にはこれらの規定中「管理者」とあるのは「理事」とする。」
 とあり、
 区分所有法第33条1項本文が、「管理者 → 理事が管理組合法人の事務所において」と読み替えて適用されていますから、こちらも、正しい。
 

 


イ 集会の議事録の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。

〇 正しい。
  平成25年 マンション管理士試験 「問7」 、 平成25年 管理業務主任者試験 「問38」   

 集会の議事録の保管は、まず、普通の管理組合なら、区分所有法第42条
 「(議事録)
 第四十二条 集会の議事については、議長は、書面又は電磁的記録により、議事録を作成しなければならない。
 2 議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、又は記録しなければならない。
 3 前項の場合において、議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名押印しなければならない。
 4 第二項の場合において、議事録が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報については、議長及び集会に出席した区分所有者の二人が行う法務省令で定める署名押印に代わる措置を執らなければならない。
 
5 第三十三条の規定は、議事録について準用する。」
 とあり、
 区分所有法第42条5項で準用されています、区分所有法第33条は選択肢ア でも引用しました 3項
 
「3 規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。」
 とあり、
 集会の議事録の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならないは、正しい。

 そして、管理組合法人では、選択肢ア でも引用しました区分所有法第47条12項
 「12 管理組合法人について、第三十三条第一項本文(
第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定を適用する場合には第三十三条第一項本文中「管理者が」とあるのは「理事が管理組合法人の事務所において」と、第三十四条第一項から第三項まで及び第五項、第三十五条第三項、第四十一条並びに第四十三条の規定を適用する場合にはこれらの規定中「管理者」とあるのは「理事」とする。
 とあり、
 こちらでも、集会の議事録の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならないは、正しいとなり、選択肢イ は正しい。



ウ 管理者が集会の議事録の保管をしなかったときは、20万円以下の過料に処せられる。

〇 正しい。
  平成26年 管理業務主任者試験 「問38」 、 平成25年 マンション管理士試験 「問11」 、

  管理者が集会の議事録の保管の規定は、選択肢ア で引用しました区分所有法第33条1項 
 「(規約の保管及び閲覧)
 第三十三条 規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない。」

 とあり、
 管理者が集会の議事録の保管をしなかったときの過料は、区分所有法第71条
 「第七十一条 
次の各号のいずれかに該当する場合には、その行為をした管理者、理事、規約を保管する者、議長又は清算人は、二十万円以下の過料に処する
   一 
第三十三条第一項本文(第四十二条第五項及び第四十五条第四項(これらの規定を第六十六条において準用する場合を含む。)並びに第六十六条において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)又は第四十七条第十二項(第六十六条において準用する場合を含む。)において読み替えて適用される第三十三条第一項本文の規定に違反して、規約、議事録又は第四十五条第四項(第六十六条において準用する場合を含む。)の書面若しくは電磁的記録の保管をしなかつたとき。
   二 第三十三条第二項(第四十二条第五項及び第四十五条第四項(これらの規定を第六十六条において準用する場合を含む。)並びに第六十六条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、正当な理由がないのに、前号に規定する書類又は電磁的記録に記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧を拒んだとき。
   三 第四十二条第一項から第四項まで(これらの規定を第六十六条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、議事録を作成せず、又は議事録に記載し、若しくは記録すべき事項を記載せず、若しくは記録せず、若しくは虚偽の記載若しくは記録をしたとき。
   四 第四十三条(第四十七条第十二項(第六十六条において準用する場合を含む。)において読み替えて適用される場合及び第六十六条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
   五 第四十七条第三項(第六十六条において準用する場合を含む。)の規定に基づく政令に定める登記を怠つたとき。
   六 第四十八条の二第一項(第六十六条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、財産目録を作成せず、又は財産目録に不正の記載若しくは記録をしたとき。
   七 理事若しくは監事が欠けた場合又は規約で定めたその員数が欠けた場合において、その選任手続を怠つたとき。
   八 第五十五条の七第一項又は第五十五条の九第一項(これらの規定を第六十六条において準用する場合を含む。)の規定による公告を怠り、又は不正の公告をしたとき。
   九 第五十五条の九第一項(第六十六条において準用する場合を含む。)の規定による破産手続開始の申立てを怠つたとき。
   十 第五十六条の二第二項(第六十六条において準用する場合を含む。)の規定による検査を妨げたとき。

 とあり、
 区分所有法第71条1号によれば、
 「一 
第三十三条第一項本文(第四十二条第五項及び第四十五条第四項(これらの規定を第六十六条において準用する場合を含む。)並びに第六十六条において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)又は第四十七条第十二項(第六十六条において準用する場合を含む。)において読み替えて適用される第三十三条第一項本文の規定に違反して、規約、議事録又は第四十五条第四項(第六十六条において準用する場合を含む。)の書面若しくは電磁的記録の保管をしなかつたとき。」
 とあり、
 選択肢イ でも解説しましたように、区分所有法第33条1項は、区分所有法第42条5項で読み替えの適用がありますから、管理組合の管理者、管理組合法人の理事が、集会の議事録の保管をしなかったときは、20万円以下の過料に処せられるは、正しい。


 なお、過料 と 科料 の違いも理解すること。


エ 管理組合法人は、居住者名簿を備え置き、居住者の変更があるごとに必要な変更を加えなければならない。

X 誤っている。 区分所有者名簿である。居住者名簿ではない。
 平成26年 マンション管理士試験 「問3」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問32」 、

 管理組合法人の区分所有者名簿は、区分所有法第48条の2
 「(財産目録及び区分所有者名簿)
 第四十八条の二 管理組合法人は、設立の時及び毎年一月から三月までの間に財産目録を作成し、常にこれをその主たる事務所に備え置かなければならない。ただし、特に事業年度を設けるものは、設立の時及び毎事業年度の終了の時に財産目録を作成しなければならない。
 2 管理組合法人は、区分所有者名簿を備え置き、区分所有者の変更があるごとに必要な変更を加えなければならない。
 とあり、
 管理組合法人が備え置くのは、「
区分所有者の名簿」であり、「居住者名簿ではない」ため、管理組合法人は、居住者名簿を備え置き、居住者の変更があるごとに必要な変更を加えなければならないは、誤りです。


1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ


答え:3 (正しいのは、 ア イ ウ の3つ) 

    選択肢エ の居住者と区分所有者の違いは、注意すること。 易しい。

《タグ》区分所有法 管理組合 法人 規約の保管者 集会の議事録の保管場所の掲示 過料 区分所有者名簿

問10

〔問 10〕 一筆の敷地上に、甲棟、乙棟、丙棟が存在している。甲棟及び乙棟は戸建て住宅、丙棟は専有部分のある建物であり、また、甲棟の所有者はA、乙棟の所有者はB、丙棟の区分所有者はC、D、Eである。敷地は、A、B、C、D、Eが共有している。この場合の団地管理組合に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。ただし、乙棟の建替えは他に特別の影響を及ぼさないものとする。

1 団地管理組合は、団地管理組合の集会において、共有持分の4分の3以上を有するものが承認し、かつ、Aの同意があれば、甲棟を管理するための団地規約を定める決議をすることができる。

X 誤っている。 戸建ての管理は、団地関係には入っていないため、規約では定められない。
  平成29年 マンション管理士試験 「問10」 、 平成27年 マンション管理士試験 「問11」 、

 まず、このように入り組んでいる場合は、下のような図を書きましょう。


 
  
 そして、区分所有法で規定する団地関係が成立するには、区分所有法第65条、
 「(団地建物所有者の団体)
 第六十五条 
一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)がそれらの建物の所有者(専有部分のある建物にあつては、区分所有者)の共有に属する場合には、それらの所有者(以下「団地建物所有者」という。)は、全員で、その団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。」
 とあります。

  そこで、設問のような戸建て(甲棟、乙棟)が入っていても、その団地内の土地が共有なら、団地に該当するのですが、ここで管理の対象が問題となります。
 区分所有法第65条によれば、全員で、その団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物の管理を行うための団体とあり、”専有部分のある建物”なら管理できますが、戸建ては、もともと管理の対象には入っていないため、団地管理組合は、団地管理組合の集会において、共有持分の4分の3以上を有するものが承認し、かつ、Aの同意があれば、甲棟を管理するための団地規約を定める決議をすることができるは、誤りです。

  区分所有法では、団地管理組合なら、土地、附属施設の管理は規約に入れられますが、A(戸建て)の同意があっても、戸建ては管理の対象には出来ません。

 
  

 どうして、戸建てなら、本人が同意しても、団地から管理が外されるのか、区分所有法の構成を考えさせられる設問です。


2 Bが乙棟を取り壊し、かつ、従前の乙棟の所在地に新たに建物を建築しようとする場合には、団地管理組合の集会において議決権の4分の3以上の多数による承認の決議を得なければならない。

〇 正しい。 土地が他の人との共有となると、建替えには他の人の承認が必要となる。
  平成25年 マンション管理士試験 「問9」 、  

 土地が、A,B,C,D,Eの共有であるため、Bが戸建ての乙棟を取り壊し、かつ、従前の乙棟の所在地に新たに建物を建築しようとする場合には、区分所有法第69条の規定が適用されます。
 それは、
 [(団地内の建物の建替え承認決議)
 第六十九条 
一団地内にある数棟の建物(以下この条及び次条において「団地内建物」という。)全部又は一部が専有部分のある建物であり、かつ、その団地内の特定の建物(以下この条において「特定建物」という。)の所在する土地(これに関する権利を含む。)が当該団地内建物の第六十五条に規定する団地建物所有者(以下この条において単に「団地建物所有者」という。)の共有に属する場合においては、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める要件に該当する場合であつて当該土地(これに関する権利を含む。)の共有者である当該団地内建物の団地建物所有者で構成される同条に規定する団体又は団地管理組合法人の集会において議決権の四分の三以上の多数による承認の決議(以下「建替え承認決議」という。)を得たときは、当該特定建物の団地建物所有者は、当該特定建物を取り壊し、かつ、当該土地又はこれと一体として管理若しくは使用をする団地内の土地(当該団地内建物の団地建物所有者の共有に属するものに限る。)に新たに建物を建築することができる
   一 当該特定建物が専有部分のある建物である場合 その建替え決議又はその区分所有者の全員の同意があること。
   
二 当該特定建物が専有部分のある建物以外の建物である場合 その所有者の同意があること。
 2 前項の集会における各団地建物所有者の議決権は、第六十六条において準用する第三十八条の規定にかかわらず、第六十六条において準用する第三十条第一項の規約に別段の定めがある場合であつても、当該特定建物の所在する土地(これに関する権利を含む。)の持分の割合によるものとする。
 3 第一項各号に定める要件に該当する場合における当該特定建物の団地建物所有者は、建替え承認決議においては、いずれもこれに賛成する旨の議決権の行使をしたものとみなす。ただし、同項第一号に規定する場合において、当該特定建物の区分所有者が団地内建物のうち当該特定建物以外の建物の敷地利用権に基づいて有する議決権の行使については、この限りでない。
 4 第一項の集会を招集するときは、第六十六条において準用する第三十五条第一項の通知は、同項の規定にかかわらず、当該集会の会日より少なくとも二月前に、同条第五項に規定する議案の要領のほか、新たに建築する建物の設計の概要(当該建物の当該団地内における位置を含む。)をも示して発しなければならない。ただし、この期間は、第六十六条において準用する第三十条第一項の規約で伸長することができる。
 5 第一項の場合において、建替え承認決議に係る建替えが当該特定建物以外の建物(以下この項において「当該他の建物」という。)の建替えに特別の影響を及ぼすべきときは、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者が当該建替え承認決議に賛成しているときに限り、当該特定建物の建替えをすることができる。
   一 当該他の建物が専有部分のある建物である場合 第一項の集会において当該他の建物の区分所有者全員の議決権の四分の三以上の議決権を有する区分所有者
   二 当該他の建物が専有部分のある建物以外の建物である場合 当該他の建物の所有者
 6 第一項の場合において、当該特定建物が二以上あるときは、当該二以上の特定建物の団地建物所有者は、各特定建物の団地建物所有者の合意により、当該二以上の特定建物の建替えについて一括して建替え承認決議に付することができる。
 7 前項の場合において、当該特定建物が専有部分のある建物であるときは、当該特定建物の建替えを会議の目的とする第六十二条第一項の集会において、当該特定建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、当該二以上の特定建物の建替えについて一括して建替え承認決議に付する旨の決議をすることができる。この場合において、その決議があつたときは、当該特定建物の団地建物所有者(区分所有者に限る。)の前項に規定する合意があつたものとみなす。」

 です。

 この規定も一度読んだだけでは、分かり難いのですが、区分所有法第69条1項によれば、
 団地内で建替えを希望する戸建て(専有部分のある建物以外の建物です)があれば、団地内建物の団地建物所有者で構成される団体(団地管理組合)の集会で、議決権の4分の3以上の承認の決議がなければ、その戸建ては、取り壊しや建替えができないのです。

 そこで、戸建てのBが乙棟を取り壊し、かつ、従前の乙棟の所在地に新たに建物を建築しようとする場合には、団地管理組合の集会において議決権の4分の3以上の多数による承認の決議を得なければならないは、正しい。



3 団地管理組合が規約を定めて丙棟の管理を行っている場合に、地震によって丙棟の建物の価格の2分の1以下に相当する部分が滅失したときに、その滅失した共用部分を復旧しようとするときは、団地管理組合の集会において、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をする必要がある。

X 誤っている。 専有部分のある建物の復旧は、団地管理組合の集会ではなく、その棟の集会の決議でいい。
  平成27年 マンション管理士試験 「問11」 など多い。

 基本的に、区分所有法での団地関係には、第66条により単棟の規定が多く準用されていますが、義務違反者に対する規定(第57条から第60条)とか、一部滅失の復旧(第61条)や、建替え(第62条から第64条)の規定は、準用がないため、よく出題されます。

 そこで、設問のように、丙棟(専有部分のある建物=マンション)の管理は、団地管理組合の規約で管理ができますが、地震によって丙棟の建物の価格の2分の1以下に相当する部分が滅失したとき(小規模滅失)に、その滅失した共用部分を復旧しようとするときは、区分所有法第61条3項
 
「3 第一項本文(注:建物の価格の二分の一以下に相当する部分が滅失したとき)に規定する場合には、集会において、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。」
 の規定によって、丙棟の集会で決議します。
 団地管理組合の集会において、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をする必要はないため、誤りです


 参考:区分所有法第66条
 (建物の区分所有に関する規定の準用)
 第六十六条 第七条、第八条、第十七条から第十九条まで、第二十五条、第二十六条、第二十八条、第二十九条、第三十条第一項及び第三項から第五項まで、第三十一条第一項並びに第三十三条から第五十六条の七までの規定は、前条の場合について準用する。この場合において、これらの規定(第五十五条第一項第一号を除く。)中「区分所有者」とあるのは「第六十五条に規定する団地建物所有者」と、「管理組合法人」とあるのは「団地管理組合法人」と、第七条第一項中「共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設」とあるのは「第六十五条に規定する場合における当該土地若しくは附属施設(以下「土地等」という。)」と、「区分所有権」とあるのは「土地等に関する権利、建物又は区分所有権」と、第十七条、第十八条第一項及び第四項並びに第十九条中「共用部分」とあり、第二十六条第一項中「共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設」とあり、並びに第二十九条第一項中「建物並びにその敷地及び附属施設」とあるのは「土地等並びに第六十八条の規定による規約により管理すべきものと定められた同条第一項第一号に掲げる土地及び附属施設並びに同項第二号に掲げる建物の共用部分」と、第十七条第二項、第三十五条第二項及び第三項、第四十条並びに第四十四条第一項中「専有部分」とあるのは「建物又は専有部分」と、第二十九条第一項、第三十八条、第五十三条第一項及び第五十六条中「第十四条に定める」とあるのは「土地等(これらに関する権利を含む。)の持分の」と、第三十条第一項及び第四十六条第二項中「建物又はその敷地若しくは附属施設」とあるのは「土地等又は第六十八条第一項各号に掲げる物」と、第三十条第三項中「専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)」とあるのは「建物若しくは専有部分若しくは土地等(土地等に関する権利を含む。)又は第六十八条の規定による規約により管理すべきものと定められた同条第一項第一号に掲げる土地若しくは附属施設(これらに関する権利を含む。)若しくは同項第二号に掲げる建物の共用部分」と、第三十三条第三項、第三十五条第四項及び第四十四条第二項中「建物内」とあるのは「団地内」と、第三十五条第五項中「第六十一条第五項、第六十二条第一項、第六十八条第一項又は第六十九条第七項」とあるのは「第六十九条第一項又は第七十条第一項」と、第四十六条第二項中「占有者」とあるのは「建物又は専有部分を占有する者で第六十五条に規定する団地建物所有者でないもの」と、第四十七条第一項中「第三条」とあるのは「第六十五条」と、第五十五条第一項第一号中「建物(一部共用部分を共用すべき区分所有者で構成する管理組合法人にあつては、その共用部分)」とあるのは「土地等(これらに関する権利を含む。)」と、同項第二号中「建物に専有部分が」とあるのは「土地等(これらに関する権利を含む。)が第六十五条に規定する団地建物所有者の共有で」と読み替えるものとする。」


 
区分所有法第61条
 「(建物の一部が滅失した場合の復旧等)
 第六十一条 
建物の価格の二分の一以下に相当する部分が滅失したときは、各区分所有者は、滅失した共用部分及び自己の専有部分を復旧することができる。ただし、共用部分については、復旧の工事に着手するまでに第三項、次条第一項又は第七十条第一項の決議があつたときは、この限りでない。
 2 前項の規定により共用部分を復旧した者は、他の区分所有者に対し、復旧に要した金額を第十四条に定める割合に応じて償還すべきことを請求することができる。
 
3 第一項本文に規定する場合には、集会において、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。
 4 前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
 5 第一項本文に規定する場合を除いて、建物の一部が滅失したときは、集会において、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数で、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。
 6 前項の決議をした集会の議事録には、その決議についての各区分所有者の賛否をも記載し、又は記録しなければならない。
 7 第五項の決議があつた場合において、その決議の日から二週間を経過したときは、次項の場合を除き、その決議に賛成した区分所有者(その承継人を含む。以下この条において「決議賛成者」という。)以外の区分所有者は、決議賛成者の全部又は一部に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。この場合において、その請求を受けた決議賛成者は、その請求の日から二月以内に、他の決議賛成者の全部又は一部に対し、決議賛成者以外の区分所有者を除いて算定した第十四条に定める割合に応じて当該建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。
 8 第五項の決議の日から二週間以内に、決議賛成者がその全員の合意により建物及びその敷地に関する権利を買い取ることができる者を指定し、かつ、その指定された者(以下この条において「買取指定者」という。)がその旨を決議賛成者以外の区分所有者に対して書面で通知したときは、その通知を受けた区分所有者は、買取指定者に対してのみ、前項前段に規定する請求をすることができる。
 9 買取指定者が第七項前段に規定する請求に基づく売買の代金に係る債務の全部又は一部の弁済をしないときは、決議賛成者(買取指定者となつたものを除く。以下この項及び第十三項において同じ。)は、連帯してその債務の全部又は一部の弁済の責めに任ずる。ただし、決議賛成者が買取指定者に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、この限りでない。
 10 第五項の集会を招集した者(買取指定者の指定がされているときは、当該買取指定者)は、決議賛成者以外の区分所有者に対し、四月以上の期間を定めて、第七項前段に規定する請求をするか否かを確答すべき旨を書面で催告することができる。
 11 前項に規定する催告を受けた区分所有者は、前項の規定により定められた期間を経過したときは、第七項前段に規定する請求をすることができない。
 12 第五項に規定する場合において、建物の一部が滅失した日から六月以内に同項、次条第一項又は第七十条第一項の決議がないときは、各区分所有者は、他の区分所有者に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。
 13 第二項、第七項、第八項及び前項の場合には、裁判所は、償還若しくは買取りの請求を受けた区分所有者、買取りの請求を受けた買取指定者又は第九項本文に規定する債務について履行の請求を受けた決議賛成者の請求により、償還金又は代金の支払につき相当の期限を許与することができる。」



4 団地管理組合は、団地管理組合の集会において、区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で、団地内建物のすべてにつき一括して、その全部を取り壊し、かつ、同一敷地上に新たに建物を建築する旨の決議をすることができる。

X 誤っている。 団地内に戸建てがあると、一括建替え決議はできない。
  平成28年 マンション管理士試験 「問11」 、

 団地内の建物の一括建替え決議は、区分所有法第70条、
 「(団地内の建物の一括建替え決議)
 第七十条 
団地内建物の全部が専有部分のある建物であり、かつ、当該団地内建物の敷地(団地内建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により団地内建物の敷地とされた土地をいい、これに関する権利を含む。以下この項及び次項において同じ。)が当該団地内建物の区分所有者の共有に属する場合において、当該団地内建物について第六十八条第一項(第一号を除く。)の規定により第六十六条において準用する第三十条第一項の規約が定められているときは、第六十二条第一項の規定にかかわらず、当該団地内建物の敷地の共有者である当該団地内建物の区分所有者で構成される第六十五条に規定する団体又は団地管理組合法人の集会において、当該団地内建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、当該団地内建物につき一括して、その全部を取り壊し、かつ、当該団地内建物の敷地(これに関する権利を除く。以下この項において同じ。)若しくはその一部の土地又は当該団地内建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地(第三項第一号においてこれらの土地を「再建団地内敷地」という。)に新たに建物を建築する旨の決議(以下この条において「一括建替え決議」という。)をすることができる。ただし、当該集会において、当該各団地内建物ごとに、それぞれその区分所有者の三分の二以上の者であつて第三十八条に規定する議決権の合計の三分の二以上の議決権を有するものがその一括建替え決議に賛成した場合でなければならない。
 2 前条第二項の規定は、前項本文の各区分所有者の議決権について準用する。この場合において、前条第二項中「当該特定建物の所在する土地(これに関する権利を含む。)」とあるのは、「当該団地内建物の敷地」と読み替えるものとする。
 3 団地内建物の一括建替え決議においては、次の事項を定めなければならない。
   一 再建団地内敷地の一体的な利用についての計画の概要
   二 新たに建築する建物(以下この項において「再建団地内建物」という。)の設計の概要
   三 団地内建物の全部の取壊し及び再建団地内建物の建築に要する費用の概算額
   四 前号に規定する費用の分担に関する事項
   五 再建団地内建物の区分所有権の帰属に関する事項
 4 第六十二条第三項から第八項まで、第六十三条及び第六十四条の規定は、団地内建物の一括建替え決議について準用する。この場合において、第六十二条第三項中「前項第三号及び第四号」とあるのは「第七十条第三項第四号及び第五号」と、同条第四項中「第一項に規定する」とあるのは「第七十条第一項に規定する」と、「第三十五条第一項」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項」と、「規約」とあるのは「第六十六条において準用する第三十条第一項の規約」と、同条第五項中「第三十五条第一項」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項」と、同条第七項中「第三十五条第一項から第四項まで及び第三十六条」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項から第四項まで及び第三十六条」と、「第三十五条第一項ただし書」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項ただし書」と、同条第八項中「前条第六項」とあるのは「第六十一条第六項」と読み替えるものとする。

 とあり、
 区分所有法第70条1項によれば、団地内の建物の一括建替え決議ができるのは、
 団地内の建物の全部が専有部分のある建物であり、区分所有建物だけで、団地の土地が共有(準共有)されていることで、戸建てが団地関係に入っていては、一括建替えの決議はできませんから、団地管理組合は、団地管理組合の集会において、区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で、団地内建物のすべてにつき一括して、その全部を取り壊し、かつ、同一敷地上に新たに建物を建築する旨の決議をすることができるは、誤りです。


 


答え: 2  ここは、選択肢1 で、戸建てを注意しないと、難しくなる。

 かなり詳細に解説したので、時間がかかった。

《タグ》区分所有法 団地 規約 建替え 一部滅失 復旧 一括建替え

問11

〔問 11〕 大規模な火災、震災その他の災害で政令で定めるものにより、区分所有建物の全部が滅失した場合における、被災区分所有建物の敷地共有者等の集会に関する次の記述のうち、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(平成7年法律第43 号)の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 敷地共有者等の集会を開くに際し、敷地共有者等に管理者がない場合の集会の招集権者は、議決権の5分の1以上を有する敷地共有者等であって、この定数を規約で減ずることはできない。

〇 正しい。 区分所有法第34条5項の但し書きは、除かれる。
  平成29年 マンション管理士試験 「問11」  、平成26年 マンション管理士試験 「問11」 、 平成23年マンション管理士試験 「問10」

  まず、マンションの建物が、一部滅失した場合の復旧手続きなどは、区分所有法に定めがありますが、大規模な災害や震災などで建物の全部が滅失すると、建物を中心にした区分所有法の範疇では無くなります。建物が無くなれば、あとに残るのは土地(瓦礫もありますが)の権利だけとなり、民法の共有の規定に戻ります。
 しかし、民法第251条の共有物の変更
 「(共有物の変更)
 第二百五十一条 
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」
 では、何もできないと同じで、再建ができません。
 そこで、区分所有法と同様に敷地共有者の多数決で先に進めるようにしたのが、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法です。


 この法律は、区分所有法の後を引き継いでいますから、多くの条文が区分所有法から準用されています。具体的には、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法第3条
 「(敷地共有者等が置く管理者及び敷地共有者等集会に関する区分所有法の準用等)
 第三条 敷地共有者等が置く管理者及び敷地共有者等が開く集会(以下「敷地共有者等集会」という。)については
区分所有法第一章第四節(第二十六条第五項、第二十七条及び第二十九条第一項ただし書を除く。)及び第五節(第三十条から第三十三条まで、第三十四条第二項、第三項ただし書及び第五項ただし書、第三十五条第一項ただし書及び第四項、第三十七条第二項、第四十二条第五項、第四十三条、第四十四条、第四十五条第四項並びに第四十六条第二項を除く。)の規定を、議事録並びにこの項において準用する区分所有法第四十五条第一項及び第二項に規定する書面又は電磁的方法による決議に係る書面並びに同条第一項の電磁的方法による決議及び同条第二項の電磁的方法による合意が行われる場合に当該電磁的方法により作られる電磁的記録の保管及び閲覧については区分所有法第三十三条第一項及び第二項の規定を、それぞれ準用する。この場合において、これらの規定(区分所有法第二十五条第一項、第三十三条第一項ただし書、第三十四条第三項本文及び第五項本文、第三十五条第三項並びに第三十九条第一項を除く。)中「区分所有者」とあり、及び区分所有法第三十三条第一項ただし書中「建物を使用している区分所有者」とあるのは「敷地共有者等」と、区分所有法第二十五条第一項中「区分所有者」とあるのは「敷地共有者等(被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(平成七年法律第四十三号。以下「特別措置法」という。)第二条に規定する敷地共有者等をいう。以下同じ。)」と、「規約に別段の定めがない限り集会」とあるのは「敷地共有者等集会(特別措置法第三条第一項に規定する敷地共有者等集会をいう。以下同じ。)」と、区分所有法第二十六条第一項中「共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)」とあるのは「敷地共有持分等(特別措置法第二条に規定する敷地共有持分等をいう。以下同じ。)に係る土地」と、「集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする」とあるのは「及び敷地共有者等集会の決議を実行する」と、同条第二項中「第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等」とあるのは「敷地共有持分等に係る土地」と、同条第四項並びに区分所有法第三十三条第一項ただし書及び第三十九条第三項中「規約又は集会」とあり、並びに区分所有法第四十六条第一項中「規約及び集会」とあるのは「敷地共有者等集会」と、区分所有法第二十八条中「この法律及び規約」とあり、並びに区分所有法第三十九条第一項及び第四十五条第一項から第三項までの規定中「この法律又は規約」とあるのは「特別措置法」と、区分所有法第二十九条第一項本文中「第十四条に定める」とあり、及び区分所有法第三十八条中「規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める」とあるのは「敷地共有持分等の価格の」と、区分所有法第三十四条第三項本文及び第五項本文中「区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するもの」とあるのは「議決権の五分の一以上を有する敷地共有者等」と、区分所有法第三十五条第二項及び第四十条中「専有部分が数人の共有に属するとき」とあるのは「一の専有部分を所有するための敷地利用権に係る敷地共有持分等を数人で有するとき」と、区分所有法第三十五条第三項中「区分所有者が」とあるのは「敷地共有者等が」と、「その場所に、これを通知しなかつたときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所」とあるのは「その場所」と、同条第五項中「第十七条第一項、第三十一条第一項、第六十一条第五項、第六十二条第一項、第六十八条第一項又は第六十九条第七項」とあるのは「特別措置法第四条第一項、第五条第一項、第十五条第七項又は第十七条第二項」と、区分所有法第三十七条第三項中「前二項」とあるのは「第一項」と、区分所有法第三十九条第一項中「区分所有者及び議決権の各過半数」とあるのは「議決権の過半数」と、区分所有法第四十一条中「規約に別段の定めがある場合及び別段」とあるのは「別段」と読み替えるものとする
 2 敷地共有者等集会を招集する者が敷地共有者等(前項において準用する区分所有法第三十五条第三項の規定により通知を受けるべき場所を通知したものを除く。)の所在を知ることができないときは、同条第一項の通知は、滅失した区分所有建物に係る建物の敷地(区分所有法第二条第五項に規定する建物の敷地をいう。以下同じ。)内の見やすい場所に掲示してすることができる。
 3 前項の場合には、当該通知は、同項の規定による掲示をした時に到達したものとみなす。ただし、敷地共有者等集会を招集する者が当該敷地共有者等の所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。」
 です。
 こんなにたくさんある条文の中から、また「除く」だとか「読み替える」があり、該当の条文を探すのは大変ですが、解説者としては、やりましょう。

 設問の敷地共有者が開く集会の招集で、管理者がいない時の規定は、第3条で準用されている区分所有法第34条5項

 「(集会の招集)
 第三十四条
 5 
管理者がないときは、区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、集会を招集することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。」
 です。
 
この準用において、「第三十四条第二項、第三項ただし書及び第五項ただし書を除く」とあり、定数は規約で減じることはできません。また「区分所有法第三十四条第三項本文及び第五項本文中「区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するもの」とあるのは「議決権の五分の一以上を有する敷地共有者等」と読み替えるとありますから、敷地共有者等の集会を開くに際し、敷地共有者等に管理者がない場合の集会の招集権者は、議決権の5分の1以上を有する敷地共有者等であって、この定数を規約で減ずることはできないは、正しい。
 

2 敷地共有者等の集会を招集するに当たり、敷地共有者等の所在を知ることができないときは、集会の招集の通知を、滅失した区分所有建物に係る建物の敷地内の見やすい場所に掲示してすることができるが、敷地共有者等の所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。

〇 正しい。 震災では行方不明はでるが、過失はないように。

 設問は、選択肢1で引用しました、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法第3条2項、3項
 「2 敷地共有者等集会を招集する者が
敷地共有者等(前項において準用する区分所有法第三十五条第三項の規定により通知を受けるべき場所を通知したものを除く。)の所在を知ることができないときは、同条第一項の通知は、滅失した区分所有建物に係る建物の敷地(区分所有法第二条第五項に規定する建物の敷地をいう。以下同じ。)内の見やすい場所に掲示してすることができる。
 3 前項の場合には、当該通知は、同項の規定による
掲示をした時に到達したものとみなす。ただし、敷地共有者等集会を招集する者が当該敷地共有者等の所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。」
 とあり、
 被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法第3条2項、3項により、敷地共有者等の集会を招集するに当たり、敷地共有者等の所在を知ることができないときは、集会の招集の通知を、滅失した区分所有建物に係る建物の敷地内の見やすい場所に掲示してすることができるが、敷地共有者等の所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じないは、正しい



3 区分所有建物の全部が滅失した後に敷地共有者等が敷地共有持分等を譲渡した場合であっても、滅失の当時にその敷地共有持分等を有していた者は敷地共有者等の集会における議決権を有する。

X 誤っている。 敷地共有持分等を譲渡すれば、当然に集会の議決権を失う。議決権は、新しい敷地共有者等に移る。


  まず、敷地共有者等とは、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法第2条
 「(敷地共有者等集会等)
 第二条 大規模な火災、震災その他の災害で政令で定めるものにより建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号。以下「区分所有法」という。)第二条第三項に規定する専有部分が属する一棟の建物(以下「区分所有建物」という。)の全部が滅失した場合(その災害により区分所有建物の一部が滅失した場合(区分所有法第六十一条第一項本文に規定する場合を除く。以下同じ。)において、当該区分所有建物が第十一条第一項の決議又は区分所有者(区分所有法第二条第二項に規定する区分所有者をいう。以下同じ。)全員の同意に基づき取り壊されたときを含む。)において、その建物に係る敷地利用権(区分所有法第二条第六項に規定する敷地利用権をいう。以下同じ。)が数人で有する所有権その他の権利であったときは、その権利(以下
「敷地共有持分等」という。)を有する者(以下「敷地共有者等」という。)は、その政令の施行の日から起算して三年が経過する日までの間は、この法律の定めるところにより、集会を開き、及び管理者を置くことができる。」
 とあり、
 「敷地共有持分等」を有する者が「敷地共有者等」ですから、敷地共有持分等を譲渡した場合には、もう敷地共有者等の地位を失い、新しく、敷地共有持分等を譲りうけた者が敷地共有者等の集会における議決権を有しますから、区分所有建物の全部が滅失した後に敷地共有者等が敷地共有持分等を譲渡した場合であっても、滅失の当時にその敷地共有持分等を有していた者は敷地共有者等の集会における議決権を有するは、誤りです。



4 集会における再建決議によって建築する建物は、滅失した区分所有建物に係る建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地上に建築しなければならない。

〇 正しい。

 再建決議は、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法第4条
 「(再建決議等)
 第四条 敷地共有者等集会においては、敷地共有者等の議決権の五分の四以上の多数で、
滅失した区分所有建物に係る建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に建物を建築する旨の決議(以下「再建決議」という。)をすることができる。
 2 再建決議においては、次の事項を定めなければならない。
   一 新たに建築する建物(以下この項において「再建建物」という。)の設計の概要
   二 再建建物の建築に要する費用の概算額
   三 前号に規定する費用の分担に関する事項
   四 再建建物の区分所有権(区分所有法第二条第一項に規定する区分所有権をいう。第十八条第三項第五号において同じ。)の帰属に関する事項
 3 前項第三号及び第四号の事項は、各敷地共有者等の衡平を害しないように定めなければならない。
  (以下、略)」

 とあり、
 被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法第4条1項によれば、
 集会における再建決議によって建築する建物は、滅失した区分所有建物に係る建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地上に建築しなければならないは、正しい。


 


答え: 3 

   何となく、区分所有法を知っていれば、正解が出そうだが、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法をここまで、勉強している人は少ない。 迷う。

《タグ》被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法 集会の招集 掲示 議決権者 再建の敷地

問12

〔問 12〕 甲マンション203 号室を所有しているAは、高齢になり判断能力に不安を抱えていたところ、Bとの間で、Bに高額の報酬を支払って同室の内装をリフォームしてもらう旨の請負契約(以下「本件請負契約」という。)を締結した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 本件請負契約を締結した時にAに意思能力がなかった場合には、Aは、意思能力を欠いていたことを理由として、本件請負契約の無効を主張することができる。

〇 正しい。 意思能力がない者の契約は無効である。
 平成26年 マンション管理士試験 「問13」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問13」 、

 意思能力の有無とは、民法の法律行為の原則といえば、原則。

 

 意思無能力による無効は、民法にその旨の規定は存在しませんが、私的自治の原則(人は、自らの自由な意思によらなければ法的に拘束されることはない)の帰結として、民法上の解釈として認められています。
 では、意思能力を欠くとは、法律行為が有効であるためには、行為者が自分の行為の結果を”弁識し判断できる精神的な能力をもつことを必要”とし、この精神的な判断能力を意思能力といいます。
 意思能力を欠く者 (幼年者および精神障害者、認知症など) がなした法律行為は、その者の意思に基づかないためこれを保護するために無効と解釈しています。

 そして、判例:大審院明治38年5月11日 もあります。意思能力を欠く者(意思無能力者)がした取引行為(法律行為)は無効である。

 よって、本件請負契約を締結した時にAに意思能力がなかった場合には、Aは、意思能力を欠いていたことを理由として、本件請負契約の無効を主張することができるは、正しい。

 【参考】平成29年(2017年)改正民法は、意思無能力による無効の法理を明文化している。
 「第3条の2 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」
 また、意思能力がない人を守る制度として、成年後見制度があります。



2 本件請負契約を締結した時に、Aについて後見開始の審判はなされていなかったが、Aが精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあった場合には、Aは、行為能力の制限を理由として、本件請負契約を取り消すことができる。

▲ 誤っている? 
  平成26年 マンション管理士試験 「問13」 

 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあることは、意思能力を欠くことに該当して選択肢1との関係で、設問がかなり曖昧ですが、後見開始の審判とは、精神上の障害(認知症、知的障害、精神障害など)によって判断能力を欠く常況にある者(本人)を保護するための手続です。
 それが、民法第7条
 「(後見開始の審判)
 第七条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。」

 とあり、
 成年被後見人となると、民法第9条
 「(成年被後見人の法律行為)
 第九条 
成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」
 とあり、
 後見開始の審判を得て成年被後見人となると、成年被後見人がした法律行為(契約)は、日常生活に関する行為を除いて、後で成年被後見人本人でも、その代理人でも取り消すことができ、取り消された行為は、初めからなかったものとみなされます。

 設問は、「本件請負契約を締結した時に、Aについて後見開始の審判はなされていなかったが、Aが精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあった場合」と、面倒な条件を出していて、これが、引っかかります。

 それは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況=意思能力がないなら、それを立証すれば、その行為を無効または取り消しにできるからです。

 単純に、Aがまだ、後見開始の審判を受ける前の行為は、行為能力の制限を理由とした取り消しはできないとしたいようですが、この設問は、不適切です。



3 Bが、実際にはリフォームをする必要がないにもかかわらず、リフォームをしないと健康を害するとAをだまし、これによりAがリフォームをする必要があると誤信して本件請負契約を締結していた場合には、Aは、Bの詐欺を理由として、本件請負契約を取り消すことができる。

〇 正しい。 詐欺なら、取り消せる。
  平成29年 管理業務主任者試験 「問3」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問1」 、 

 民法での詐欺が成立するのは、
 @詐欺者が相手方を欺こうとする意思と、欺くことによって一定の意思表示をさせる、二重の意思があること
 A欺罔(欺くこと)行為があること
 B相手方が欺罔行為によって、錯誤に陥り、詐欺者の欲した意思表示をすること
 です。

  設問の、「Bが、実際にはリフォームをする必要がないにもかかわらず、リフォームをしないと健康を害するとAをだまし、これによりAがリフォームをする必要があると誤信して本件請負契約を締結していた場合」なら、詐欺が成立します。
 すると、民法第96条
 「(詐欺又は強迫)
 第九十六条 
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる
 2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
 3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。」

 とあり、
 民法第96条1項により、詐欺なら、Aは、Bの詐欺を理由として、本件請負契約を取り消すことができますから、正しい。



4 本件請負契約を締結する際に、Bが、Aの窮迫・軽率・無経験を利用して、相場よりも著しく高額な報酬の支払をAに約束させていた場合には、Aは、公序良俗に違反することを理由として、本件請負契約の無効を主張することができる。

〇 正しい。 窮迫・軽率・無経験を利用は、公序良俗違反で、契約無効を主張できる。
  平成26年 マンション管理士試験 「問13」 

 まず、公序良俗とは、民法第90条
 「(公序良俗)
 第九十条 
公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」
 とあり、
 分かったようで分からない、公の秩序とは、「国家社会の一般的な利益」と説明され、善良の風俗とは、「社会の一般的な道徳観念」と説明されますが、つまるところ何が一般的かは個人の判断によります。そこで、公序良俗違反とは、時代と共に変化していく概念で、掴まえ所がなく、結局裁判所の判断によります。
 そこで、判例から纏めますと、
 1.人倫に反するもの(例:既婚者との愛人契約)
 2.正義の観念に反するもの(例:犯罪、賭博行為での債権)
 3.個人の自由を極度に制限するもの(例:芸娼妓契約)
 
4.暴利行為(例:相手方の無思慮・窮迫に乗じたもの。過度の違約金)
 となります。
 また、判例:大判昭和9年5月1日は、窮迫、軽率又は無経験を利用し、著しく過当な利益の獲得を目的とする法律行為を暴利行為とし、公序良俗に反するものとして無効としていますから、本件請負契約を締結する際に、Bが、Aの窮迫・軽率・無経験を利用して、相場よりも著しく高額な報酬の支払をAに約束させていた場合には、Aは、公序良俗に違反することを理由として、本件請負契約の無効を主張することができるは、正しい。



答え:2 ?

  選択肢2の設問は、適切ではないが。 ここで、解説に時間がかかった。

  民法(債権関係)は、2020年4月1日施行で、大幅に改正があるので、注意のこと。

《タグ》民法 意思能力の有無 後見制度 詐欺 無効 取り消し

問13

〔問 13〕 Aは、弟Bが事業資金500 万円の融資をC銀行から受けるに際して、Aが所有し、居住している甲マンションの103 号室にC銀行のために抵当権を設定し、その登記もされた場合に関する次の記述のうち、民法及び区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 Aは、BのC銀行に対する債務について、Bの意思に反してもC銀行に対して、第三者としての弁済をすることができる。

〇 正しい。 利害を有するため、Bの意思に反しても、物上保証人のAは、弁済できる。
 平成27年 管理業務主任者試験 「問4」 、 平成23年 マンション管理士試験 「問16」 、

 まず、抵当権とは、債務者が占有を移すことなく提供した特定の不動産につき、債務者が債務を履行しない場合に、目的物を競売してその代金から債権者が他の一般債権者に優先して弁済を受け得る担保物権(民法第369条以下)です。
 「(抵当権の内容)
 第三百六十九条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。」



 

 そして、兄Aは、弟Bの債務を保証するために、自分の財産(不動産)に抵当権を設定しましたので、物上保証人となります。
 すると、物上保証人は、民法第351条
 「(物上保証人の求償権)
 第三百五十一条 他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。」

 とあり、
 この規定は、民法第372条
 「(留置権等の規定の準用)
 第三百七十二条 第二百九十六条、第三百四条及び
第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。」
 とあり、
 抵当権においても、民法第351条は準用があります。

 これらを踏まえて、物上保証人の兄Aは、銀行Cと弟Bの融資関係で、利害を有する者として、弟Bが厭だといっても弁済ができるかですが、それは、民法第474条
 「(第三者の弁済)
 第四百七十四条 
債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、その債務の性質がこれを許さないとき、又は当事者が反対の意思を表示したときは、この限りでない
 
2 利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。」
 とあり、
 民法第474条条2項での「利害関係を有しない第三者」については、物上保証人、担保不動産の第三取得者、後順位抵当権者などは、利害関係を有する第三者と解されておりますから、物上保証人:Aは、BのC銀行に対する債務について、Bの意思に反してもC銀行に対して、第三者としての弁済をすることができるため、正しい。



2 C銀行の抵当権の効力は、Aが有する共用部分の共有持分には及ばない。

X 誤っている。 マンションの抵当権の効力は、区分所有者が有する共用部分の共有持分にも及ぶ。
  平成25年 マンション管理士試験 「問13」  、 平成20年 管理業務主任者試験 「問6」 、 平成14年 マンション管理士試験 「問13」 
  
 まず、抵当権の効力は、民法第370条
 「(抵当権の効力の及ぶ範囲)
 第三百七十条 抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び第四百二十四条の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りでない。」

 です。
 そして、マンションの室(専有部分)に設定された抵当権の効力は、区分所有法第15条
 「(
共用部分の持分の処分
 第十五条 
共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う
 2 共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。」

 とあり、
 区分所有法第15条1項により、共用部分はその専有部分の処分と共に動きますから、区分所有者が専有部分に抵当権を設定すれば、その区分所有者が有する共用部分の共有持分に及ぶため、C銀行の抵当権の効力は、Aが有する共用部分の共有持分には及ばないは、誤りです。


  


3 C銀行の抵当権の実行により、Aが103 号室の所有権を失った場合には、AはBに対して求償することはできない。

X 誤っている。 物上保証人は、債務者に対して、求償できる。

  先走って、選択肢1で解説しましたが、物上保証人は、民法第351条
 「(物上保証人の求償権)
 第三百五十一条 
他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。」
 とあり、
 この規定は、民法第372条
 「(留置権等の規定の準用)
 第三百七十二条 第二百九十六条、第三百四条及び
第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。」
 とあり、
 抵当権においても、民法第351条は準用があります。

 これにより、C銀行の抵当権の実行により、Aが103 号室の所有権を失った場合には、AはBに対して求償することが出来るため、C銀行の抵当権の実行により、Aが103 号室の所有権を失った場合には、AはBに対して求償することはできないは、誤りです。



4 Aが103号室を売却するときは、C銀行の承諾を得なければならない。

X 誤っている。 抵当権設定者がその目的物(担保物件)を売却するにあたって、抵当権者の承諾はいらない。

 抵当権者:C銀行は、103号室が売却されても、新規購入者に対して抵当権で対抗できますから、抵当権設定者は、抵当物件の売却にあたって、抵当権権者の承諾を得なくてもよく、Aが103号室を売却するときは、C銀行の承諾を得なければならないは、間違いです。

 抵当権が設定されているということは、登記簿をみれば、分かります。


答え: 1 物上保証人を知らないと、難しいか。

 過去問題をしっかりやっていれば、分かる。

《タグ》民法 物上保証人 抵当権 弁済 区分所有法 専有部分と共用部分の不可分 抵当権者の承諾

問14

〔問 14〕 Aがその所有する甲マンションの101号室を、賃料を月額10万円としてBに賃貸し、これを使用中のBが、Aに対し、5月分の賃料10万円の支払を怠った場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、AB 間に相殺禁止の特約はないものとし、遅延利息については考慮しないものとする。

1 Bは101号室の敷金として20万円をAに差し入れているが、Bは、Aに対し、当該敷金返還請求権20万円のうち10万円と5月分の賃料10 万円とを相殺することはできない。

〇 正しい。 賃借人からは、敷金からの充当主張ができないため、相殺できない。
  平成28年 マンション管理士試験 「問15」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問12」 、 同「問15」 
 
 

 まず、相殺の規定は、民法第505条
 「(相殺の要件等)
 第五百五条 
二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
 2 前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。」

 とあります。
 相殺する側の債権を自働債権(じどうさいけん)、相殺される側の債権を受動債権(じゅどうさいけん)といいいます。
 必要なのは、
  @互いに金銭なら金銭の同種の債務であり
  A2つの債権が弁済期にあること
  です。


 そこで、家賃が支払えないので預けてある敷金から差し引いてくれという問題ですが、これについては、大審院昭和5年3月10日;の判決があります。(裁判検索にはなし)
 「
賃貸人においては、敷金を滞納賃料に充当することは自由であるが、賃借人又はその保証人からは、充当を主張することはできない
 とあり、
 賃借人:Bからは、預けてある敷金から滞納している賃料を差し引いてくれと言えないと判断していますから、相殺の要件である A2つの債権が弁済期にあること に該当しないため、Bは101号室の敷金として20万円をAに差し入れているが、Bは、Aに対し、当該敷金返還請求権20万円のうち10万円と5月分の賃料10 万円とを相殺することはできないは、正しい。


 また、最高裁判所の昭和48年2月2日の判決 も参考になります。
 事件全体は、家屋明渡しですが、その中で、敷金の性格を以下のようにしています。
 「家屋賃貸借における敷金は、賃貸借存続中の賃料債権のみならず、賃貸終了後家屋明渡義務履行までに生ずる賃料相当損害金の債権その他賃貸借契約により賃貸人が貸借人に対して取得することのあるべき一切の債権を担保し、賃貸借終了後、家屋明渡がなされた時において、それまでに生じた右の一切の被担保債権を控除しなお残額があることを条件として、その残額につき敷金返還請求権が発生するものと解すべきであり、本件賃貸借契約における前記条項もその趣旨を確認したものと解される。」
 とあります。


 この最高裁判所の判断では、借家人からの敷金の返還請求は、家屋の明渡し時でなければ、できないとなり、双方の債務が弁済期にある(相殺適状)とはいえませんから、相殺はできません。

 なお、「敷金」は、その扱いが曖昧であったので、2020年4月1日施行の改正民法では、敷金を定義し、第622条の2 2項で
 「賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。」
 の規定があります。



2 Bが101号室の故障したガス給湯設備の修繕費用として適切である10万円を支出し、AB間に費用負担の特約がないときは、Bは、Aに対し、当該費用の償還請求権10万円と5月分の賃料10万円とを相殺することができる。

〇 正しい。 修繕費は、賃貸借契約での必要費なので、当月分の家賃と相殺できる。
 
 まず、賃借人が、故障したガス給湯設備の修繕費用として適切である10万円を支出となると、民法第608条
 「(賃借人による費用の償還請求)
 第六百八条 
賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
 2 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。」

 とあり、
 民法第608条1項により、故障したガス給湯設備の修繕費用10万円は賃借人による必要費の支出となり賃貸人に直ちに請求ができ、これは、5月分の賃料10万円と相殺適状にあるので、相殺ができ、正しい。



3 BがAに対し弁済期が到来した50万円の貸金債権を有しているとき、Bは、Aに対し、当該貸金債権と101号室の5月分の賃料10万円及びいまだ支払期限の到来していない6月から9月までの賃料40万円とを相殺することができる。

〇 正しい。 相殺をしようとする者がその債権の期限の利益を放棄するなら、相殺はできる。

 相殺をしようとする者がその債権の期限の利益を放棄するなら、相殺はできると解されているので、BがAに対し弁済期が到来した50万円の貸金債権を有しているとき、Bは、Aに対し、当該貸金債権と101号室の5月分の賃料10万円及びいまだ支払期限の到来していない6月から9月までの賃料40万円とを相殺することができるは、正しい。

 期限の利益の放棄:この場合、賃借人は本来なら、今支払わなくてもいい、6月から9月分の支払をすること。
 民法第136条
 「(期限の利益及びその放棄)
 第百三十六条 期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
 2 
期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。」


4 AがBに対して不法行為を行った結果、BがAに対する損害賠償債権30万円を有しているとき、Bは、Aに対し、損害賠償債権30万円のうち10 万円と101号室の5月分の賃料10 万円とを相殺することはできない。

X 誤っている。 不法行為での損害賠償債権なら、被害者からは、相殺できる。

  平成23年 管理業務主任者試験 「問11」 

  不法行為と相殺は、民法第509条
 「(不法行為により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
  第五百九条  
債務が不法行為によって生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
 とあり、
 判例、最高裁判所の昭和42年11月30日 は、不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権(相殺をする側)とし不法行為以外の原因による債権を受働債権(相殺がされる側)とする相殺の許否 として、
 「民法第五〇九条は、不法行為の被害者をして現実の弁済により損害の填補をうけしめるとともに、不法行為の誘発を防止することを目的とするものであり、不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権とし、不法行為による損害賠償債権以外の債権を受働債権として相殺をすることまでも禁止するものではないと解するのが相当である。 」
 として、受働債権が不法行為債権でない場合には、不法行為から生じた債権を自働債権とする相殺は許されるとしていますから、AがBに対して不法行為を行った結果、BがAに対する損害賠償債権30万円を有しているとき、Bは、Aに対し、損害賠償債権30万円のうち10 万円と101号室の5月分の賃料10 万円とを相殺することはできないは、誤りです。



答え:4 

 選択肢4 の誤りはすぐに分かるが、解説は、改正民法まで入れる等で、時間がかかった。

《タグ》民法 相殺 敷金 必要費 期限の利益の放棄 不法行為

問15

〔問 15〕 Aが所有する甲マンションの201 号室をBに賃貸した場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法(平成3年法律第90号)の規定によれば、正しいものはどれか。ただし、AB 間の契約は定期建物賃貸借でないものとする。

1 AB間の契約で賃貸期間を2年と定め、A又はBが、相手方に対し、期間満了の1年前から6ヵ月前までの間に更新拒絶の通知をしなかったときは、従前と同一の賃貸期間とする契約として更新される。

X 誤っている。 期間満了の1年前から6ヵ月前までの間に更新拒絶の通知をしなかったときは、従前と同じ条件での契約更新となるが、期間の定めのないものとなる。
  借地借地家法からの出題は、平成28年 管理業務主任者試験 「問40」 、 平成27年 管理業務主任者試験 「問44」 平成26年 マンション管理士試験 「問12」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問43」 、 平成25年 管理業務主任者試験 「問42」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問43」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問44」 、  平成22年 管理業務主任者試験 「問44」 、平成21年 管理業務主任者試験 「問45」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問43」 など。

 

 借家では、賃貸期間は、定めてもいいし、定めなくてもいいのですが、期間を定めた賃貸借の更新なら、借地借家法第26条
 「(建物賃貸借契約の更新等)
 第二十六条 
建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
 2 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
 3 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。」

 とあり、
 借地借家法第26条1項によれば、当事者(貸主・借主)から、「期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされますが、
ただし、その期間は、定めがないものとする」となりますから、従前と同一の賃貸期間とする契約として更新されるは、誤りです。

 期間の定めがなくなると、次の選択肢2になります。



2 AB間の契約で賃貸期間を10ヵ月と定めたときは、Aに借地借家法の定める正当の事由があると認められる場合には、Aは期間満了の前でもBに解約の申入れをすることができる。

〇 正しい。 建物の1年未満の賃貸契約は、期間の定めのない賃貸借となり、賃貸人(大家)からは、6ヵ月前に、正当な事由があれば、解約の申入れができる。

 まず、賃貸期間が1年未満である10ヵ月の契約となると借地借家法第29条
 「(建物賃貸借の期間)
 第二十九条 
期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
 2 民法第六百四条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。」

 とあり、
 適用しない民法第604条の規定は、
 「民法第604条(賃貸借の存続期間)
  第六百四条  賃貸借の存続期間は、二十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、二十年とする。
  2  賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から二十年を超えることができない。」
  とあり、
  賃貸期間が10ヵ月となると、借地借家法第29条1項により、期間の定めがない建物の賃貸借とみなされます。


 そして、期間の定めのない賃貸借となると、民法第617条
 「(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
 第六百十七条  当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
     一  土地の賃貸借 一年
     
二  建物の賃貸借 三箇月
     三  動産及び貸席の賃貸借 一日
 2  収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。」

 とあり、
 民法第617条1項2号により、建物の賃貸借なら、当事者(賃貸人・賃借人)から、3ヵ月前に申入れがあれば、解約ができますが、賃貸人(大家)からの解約の申し入れは、民法に優先する特別法として借地借家法第27条
 「(解約による建物賃貸借の終了)
 第二十七条  
建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する
 2  前条第二項及び第三項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。」

 とあり、
 
賃貸人(大家)からの賃貸借の解約の申入れは、民法の”3ヵ月前”から変更されて”6ヵ月前”となります。

 そこで、期間の定めがない建物の賃貸借契約の解除は、借地借家法第28条
 「(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
 第二十八条 
建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
 とあり、
 期間の定めがないときは、期間満了の前でも、賃借人(借家人)からは、3ヵ月前に、賃借人(大家)からは、6ヵ月前にそして、一定の正当事由があれば、建物の賃貸借は、終了しますから、AB間の契約で賃貸期間を10ヵ月と定めたときは、賃貸人Aに借地借家法の定める正当の事由があると認められる場合には、Aは期間満了の前でもBに解約の申入れをすることができるは、正しい。

 なお、正当の事由とは、
  1.賃貸人が建物を必要とする事情
  更新を拒絶する賃貸人がその建物を自ら使う必要性がどの程度あるのか、または、賃借人がほかに使用できる建物があるかどうか。
 2.賃貸借に関する事前の経緯
  賃貸借にすることにした経緯や、権利金などの支払いの有無、その金額、契約上の義務の履行など。
 3.建物の利用状況
  賃借人がその建物をどのような状況で利用しているか。
 4.建物の現況
  建物の老朽化により大規模な修繕あるいは建て替えが必要になっていることや、建物敷地を利用する権利の喪失によって建物の利用が困難になるなど。
 5.賃貸人による財産上の給付の申し出(補完的事由)
  いわゆる立退料の提供です。ただし、立退料の提供だけで正当事由を満たしていると判断されるわけではなく、他の事情が備わり、立退料の提供もあるときに、正当事由の1つとして判断されます。

 つまり、賃貸人がどうしてもそこに住まなくてはならない格段の理由があることや、建物が著しく老朽化して居住するには危険であることなどを証明しなければ裁判所は正当事由があるとは判断しません。


3 AB 間の契約で賃貸期間を30 年と定めても、賃貸期間は20 年とされる。

X 誤っている。 借地借家法での建物の賃貸借では、賃貸期限の制限はない。


 借地借家法で、借家だけを勉強している人には、借家では、賃貸期間は、定めてもいいし、制限はなくてもいいのに、どうして、賃貸の契約期間が30年とか、20年とかがよく出題されるのか、分からない設問です。
 この出題の意図は、民法や借地借家法での借地関係も勉強した人への混同をついたものです。

 まず、民法第604条
 「(賃貸借の存続期間)
 第六百四条 
賃貸借の存続期間は、二十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、二十年とする
 2 賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から二十年を超えることができない。」

 とあります。
 そして、借地借家法第3条には、
 「借地権の存続期間)
 第三条 
借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。」
 あります。
 
 ところが、民法の特別法である借地借家法での借家の規定の第29条2項は、選択肢1でも説明しましたように、
 「(建物賃貸借の期間)
 第二十九条 期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
 
2 民法第六百四条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。

 とあり、
 民法第六百四条の規定である、「賃貸借の存続期間は、二十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、二十年とする」を適用しませんから、AB 間の契約で賃貸期間を30 年と定めると、それは有効で、賃貸期間は20 年とされることはなく、選択肢3は誤りです。


賃貸借契約  最初の存続期間   最初の更新後の存続期間
 民法
第604条
 20年以下
最短は定められていない
 賃貸人が異議を述べない場合、
前賃貸借と同一条件
  借地借家法
 借地
第3条
 30年以上
最長は定められていない
 最初の更新 : 20年以上
2回目以降の更新 : 10年以上
借家
第29条
第26条 
 制限はないが、1年未満で定めると
期間の定めのないものとみなされる

民法第604条(長期の制限)の適用がない
 更新しない通知をしなければ
従前の契約と同一の条件
ただし、存続期間は
期間の定めのないものとされる。



4 AB 間の契約で賃貸期間を定めなかったときは、Aに借地借家法の定める正当の事由があると認められる場合には、Aの解約の申入れにより、解約の申入れの日から3ヵ月を経過した日に、契約は終了する。

X 誤っている。 賃貸期間を定めなかったときの賃貸人からの解約申入れは、正当事由と6ヵ月前のこと

 選択肢2でも説明しましたように、借地借家法第27条により、賃貸人A(大家)からの解約申入れは、正当事由と共に、解約の解約の申入れの日から6ヵ月を経過した日でなければ、終了しませんから、AB 間の契約で賃貸期間を定めなかったときは、賃貸人Aに借地借家法の定める正当の事由があると認められる場合には、Aの解約の申入れにより、解約の申入れの日から3ヵ月を経過した日に、契約は終了するは、誤りです。 賃貸人からは、6ヵ月の経過が必要です。


答え: 2 

 過去問題をやっていれば、易しい。 中途半端な勉強では、悩むか。

《タグ》借地借家法 民法 期間の定めがない建物の賃貸借 解約 期間の制限
 賃貸人からの解約

問16

〔問 16〕 甲マンションの301号室を所有するAが、長期間入院することとなり、その間の同室の日常的管理を302号室のBに委託した。この委託が準委任に当たるとされる場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 Bが報酬の特約をして管理を受託したときは、Bは301 号室を自己のためにすると同一の注意をもって管理すれば足りる。

X 誤っている。 報酬の特約に関係なく、受任者には、「善良な管理者の注意」が必要。「自己のためにすると同一の注意」では足りない。

  平成30年 管理業務主任者試験 「問1」 、平成29年 管理業務主任者試験 「問6」 、平成24年 管理業務主任者試験 「問6」平成23年 管理業務主任者試験 「問2」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問2」 



 

 まず、委任は、民法第643条
 「(委任)
 第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」

 とあります。
 そして、準委任は、民法第656条
 「(
準委任
 第六百五十六条 この節(注:第10節:委任)の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。」

 とあり、
 民法上、事務処理の委託であっても、法律行為なら、「委任」で、法律行為でなければ、「準委任」とその名称を分けていますが、委任の規定が全て準委任でも準用される結果(第656条)、委任と準委任に差はありません。

 そこで、受任者の注意義務は、民法第644条
 「(受任者の注意義務)
 第六百四十四条 受任者は、委任の本旨に従い、
善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。」
 とあります。
 ここでの「善良な管理者の注意」とは、民法において他の条文でもよく使われる言葉で、略して「
善管注意」とも、また義務を付けて「善管注意義務」とも言われます。
 「善良な管理者の注意」とは、「
自己のためにするのと同一の注意」、または「自己の財産に対するのと同一の注意」などに対する観念です。

 「善良な管理者の注意」となると、その人の属する階層・地位・職業などにおいて一般に要求されるだけの注意を意味し、「自己のためにするのと同一の注意」は、その人が普通に用いる注意であるため、「善良な管理者の注意」の方が、「自己のためにすると同一の注意」よりも重い規定となります。
 そこで、受任者Bが報酬の特約をして管理を受託したときは、Bは301 号室を自己のためにすると同一の注意をもって管理すれば足りるは、誤りです。 「善良な管理者の注意」が必要です。
 なお、この規定は、特約の有無には関係しません。



2 Bが報酬の特約をして管理を受託したときは、委託事務を処理するための費用の前払を請求することはできない。

X 誤っている。 特約がなくても、受任者が費用を要するなら、委任者に前払の請求ができる。
  平成24年 管理業務主任者試験 「問4」

 原則として、委任契約は、民法第648条にあるように、報酬のない
無償契約です。
 「(受任者の報酬)
 第六百四十八条 
受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
 2 受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、第六百二十四条第二項の規定を準用する。
 3 委任が受任者の責めに帰することができない事由によって履行の中途で終了したときは、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。」

 
 そこで、特約があれば、委任者から報酬を受けることができます。
 
 また、受任者が委託事務を処理するための費用の前払は、民法第649条
 「(受任者による費用の前払請求)
 第六百四十九条 
委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。

 とあり、
 この民法第649条の規定は、特約の有無に係わらず適用されますから、受任者Bが報酬の特約をして管理を受託したときは、委託事務を処理するための費用の前払を請求することはできないは、誤りです。

 特約がなくても、受忍者Bは、委託事務を処理するための費用の前払を請求することができます。


3 Bは、Aに不利な時期であってもAB間の委託契約を解除することができ、やむを得ない事由があればAに損害が生じたときでもAの損害を賠償する義務は生じない。

〇 正しい。 委任は各当事者がいつでも解除でき、損害を与えても、やむを得ない事由があれば損害賠償をしなくてもいい。
  平成27年 マンション管理士試験 「問6」 

  委任契約の解除は、民法第651条
 「(委任の解除)
  第六百五十一条 
委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる
 2 当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。
ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。」

 とあり、
 設問の前半、「受任者Bは、委任者Aに不利な時期であってもAB間の委託契約を解除することができ」は、民法第651条1項により、正しい。
 そして、設問の後半、「やむを得ない事由があればAに損害が生じたときでもAの損害を賠償する義務は生じない」は、同民法第651条2項但し書きによれば、正しい。

 よって、全体として選択肢3は、正しい。


4 Aが後見開始の審判を受けたときは、AB 間の委託契約は終了する。

X 誤っている。 委任者が後見開始の審判を受けても、委任は終わらない。
   平成29年 管理業務主任者試験 「問6」

 委任契約の終了事由は、民法第653条
 「(委任の終了事由)
 第六百五十三条 
委任は、次に掲げる事由によって終了する
   一 委任者又は受任者の死亡
   二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
   
三 受任者が後見開始の審判を受けたこと。
 とあり、
 民法第653条3号によれば、受任者Bが後見開始の審判を受けたことは、委任の終了事由に該当しますが、委任者Aが後見開始の審判を受けたても、AB 間の委託契約は終了しないため、誤りです。


 なお、後見開始の審判とは、民法第7条
 
「(後見開始の審判)
  第七条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。」

 であり、
 精神上の障害(認知症,知的障害,精神障害など)によって判断能力が全くない常況にある者(本人)を保護するための手続です。
  参考「問12」


答え:3

 
このあたりは、基本で、易しい。 委任者・受任者 を間違えないこと。 また、常に条文を正確に「但し書き」まで記憶すること。

《タグ》民法 委任 費用の前払 解約 損害賠償 終了

問17

〔問 17〕 甲マンション305 号室を所有するAは、「305号室を娘Bに遺贈する。」という内容の遺言(以下「本件遺言」という。)をした。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 本件遺言が公正証書によってなされた場合には、本件遺言を撤回することはできない。

X 誤っている。 遺言が公正証書であっても、撤回はできる。

 このあたりの条文からの出題は、珍しい。

 遺言の撤回は、民法第1022条
 「(遺言の撤回)
 第千二十二条 
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。」

 とあり、
 民法第1022条によれば、遺言が公正証書によってなされた場合でも、後の遺言の方式で、その遺言を撤回することができるため、できないは、誤りです。

 これは、遺言は遺言者の最終の意思を尊重するということです。なお、撤回の方式は、特に前と同じ公正証書でなく自筆証書遺言でも可能です。

   なお、自筆証書遺言の方式は、民法第968条
 「(自筆証書遺言)
 第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
 2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」

 です。

 そして、公正証書遺言の方式は、民法第969条
 「(公正証書遺言)
 第九百六十九条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
   一 証人二人以上の立会いがあること。
   二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
   三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
   四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
   五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。」

 です。



2 Aが本件遺言をした後に、「305 号室を息子Cに遺贈する。」という内容の遺言をした場合には、本件遺言を撤回したものとみなされる。

〇 正しい。 前の遺言と後の遺言とが抵触すると、その部分での撤回となる。


 遺言の前後関係は、民法第1023条
 「(前の遺言と後の遺言との抵触等)
 第千二十三条 
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす
 2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。」

 とあります。
 そこで、「Aが本件遺言をした後に、305 号室を息子Cに遺贈する」ですが、この行為は、民法第1023条1項に該当するため、Aが本件遺言をした後に、「305 号室を息子Cに遺贈する。」という内容の遺言をした場合には、本件遺言を撤回したものとみなされるは、正しい。



3 本件遺言が自筆証書によってなされた場合において、Aが本件遺言をした後に、文面全面に斜線を引く等故意にその遺言書の文面全体を破棄する行為をしたときは、本件遺言を撤回したものとみなされる。

〇 正しい。 遺言者が故意に遺言の文章全体を破棄すれば、それは、遺言の撤回となる。


 遺言者が自分の作成した遺言を破棄すると、民法第1024条
 「(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
 第千二十四条 
遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。」
 とあり、
 民法第1024条によれば、本件遺言が自筆証書によってなされた場合において、Aが本件遺言をした後に、文面全面に斜線を引く等故意にその遺言書の文面全体を破棄する行為をしたときは、本件遺言を撤回したものとみなされるは、正しい。

 なお、平成27年11月20日付の最高裁判所の判例
 「遺言者が自筆証書である遺言書に故意に斜線を引く行為は,その斜線を引いた後になお元の文字が判読できる場合であっても,その斜線が赤色ボールペンで上記遺言書の文面全体の左上から右下にかけて引かれているという判示の事実関係の下においては,その行為の一般的な意味に照らして,上記遺言書の全体を不要のものとし,そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当であり,民法1024条前段所定の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当し,遺言を撤回したものとみなされる。]
 もあります。


4 Aが本件遺言をした後に、305号室を友人Dに贈与した場合には、本件遺言を撤回したものとみなされる。

〇 正しい。 後の行為が優先し、撤回になる。

 Aが本件遺言をした後に、305号室を友人Dに贈与した場合は、選択肢2で引用しました民法第1023条2項
 「(前の遺言と後の遺言との抵触等)
 第千二十三条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
 
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。」

 
 民法第1023条2項の生前処分に該当しますから、本件遺言を撤回したものとみなされるは、正しい。

 なお、贈与は、民法第964条
「(包括遺贈及び特定遺贈)
 第九百六十四条 遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。ただし、遺留分に関する規定に違反することができない。」

 ともあります。



答え: 1
 
 
遺言の撤回からの出題は、珍しいが、それほど難しくはない。

《タグ》民法 遺言 撤回 故意に線を引く 抵触

問18

〔問 18〕 区分建物の登記の申請に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 区分建物の表題部所有者の持分についての変更は、表題部所有者が、当該区分建物について所有権の保存の登記をすることなく、その変更の登記を申請することができる。

X 誤っている。 表題部所有者の持分についての変更は、所有権の保存の登記後、その所有権の移転の登記の手続をすること。 所有権の保存の登記は必要。
  平成28年 管理業務主任者試験 「問43」 、 平成25年 管理業務主任者試験 「問43」 、  平成23年 管理業務主任者試験 「問45」 、 平成21年マンション管理士試験 「問18」 、 平成21年管理業務主任者試験 「問43」 、 平成19年マンション管理士試験 「問18」 、平成18年管理業務主任者試験 「問45」 など。

  不動産登記法については、 「問6」 も参照のこと。
 しかし、今年(平成30年)は、出題箇所が違う!


 建物表題登記とは、新しく建物が建てられた場合には必ずしなければいけない、人間で言えば、出生届けのようなものです。新築の建物は、登記の記録がありませんから、この表題登記によって、表題部に所在地、種類、構造、床面積など不動産の物理的な現況が示され、今後の所有権や地上権、抵当権などの権利関係などが権利部(甲区と乙区)に登記されます。建物の表題登記は、所有権取得後1ヵ月以内に行わなければなりません。多くのマンションの場合、建物の表題登記は、分譲会社が行います。
 建物表題登記には、登録免許税はかかりません。

 なお区分建物では、各専有部分が1個の建物として扱われ、専有部分ごとに登記記録が作成されます。

 

 次に、所有権保存の登記とは、表題部にしか登記がない不動産につき、初めてする所有権の登記です。申請や嘱託による場合のほか、職権で登記される場合もあります。
 権利部の甲区(所有権に関する事項)に最初の「所有者」として、名前が記載されます。これにより、表題部の末尾にあった所有者の表示は下線により抹消されます。

 

 マンションでは、原則として、所有権の保存登記は、登記記録の表題部に所有者として記録された者(分譲会社)などが申請できますが、特に、表題部所有者から所有権を取得した者(購入者)も、所有権の保存登記申請ができます(不動産登記法第74条2項)。
 しかし、所有権の保存登記には、建物表題登記と異なり登録免許税がかかりますし、また法的には強制されていませんから、区分建物ではほとんどあり得ませんが、戸建では表題部だけの建物も存在します。


 これらを基に、設問は、不動産登記法第32条
 「(表題部所有者の変更等に関する登記手続)
 第三十二条 
表題部所有者又はその持分についての変更は、当該不動産について所有権の保存の登記をした後において、その所有権の移転の登記の手続をするのでなければ、登記することができない。」

 とあり、
 不動産登記法第32条によれば、区分建物に限らず、表題部所有者の持分を変更したければ、それは、所有権保存の後で、移転の登記手続きでないとできないとなっていますから、区分建物の表題部所有者の持分についての変更は、表題部所有者が、当該区分建物について所有権の保存の登記をすることなく、その変更の登記を申請することができるは、誤りです。


 表題部所有者の持分の変更は、権利に関する登記であるため、表示に関する登記としては、できないのです。


2 区分建物の敷地権の更正の登記は、所有権の登記名義人について相続があったときは、相続人は、相続による所有権移転の登記をした後でなければ、その登記の申請をすることができない。

X 誤っている。 建物の表題部の更正登記の申請は、一般承継人でも、相続人でもできる。

  まず敷地権の更生とは区分建物の表題部に記載されている敷地権の割合を誤って表示の登記をした場合や記載漏れまた誤りがある場合です。
 この場合の更生の登記は、不動産登記法第53条
 「(建物の表題部の更正の登記)
 第五十三条 第二十七条第一号、第二号若しくは第四号(同号にあっては、法務省令で定めるものに限る。)又は
第四十四条第一項各号(第二号及び第六号を除く。)に掲げる登記事項に関する更正の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)以外の者は、申請することができない。
 2 第五十一条第五項及び第六項の規定は、建物が区分建物である場合における同条第五項に規定する登記事項に関する表題部の更正の登記について準用する。」

 とあり、
 準用されています不動産登記法第44条は、
 「(建物の表示に関する登記の登記事項)
 第四十四条 建物の表示に関する登記の登記事項は、第二十七条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
   一 建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番(区分建物である建物にあっては、当該建物が属する一棟の建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番)
   二 家屋番号
   三 建物の種類、構造及び床面積
   四 建物の名称があるときは、その名称
   五 附属建物があるときは、その所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番(区分建物である附属建物にあっては、当該附属建物が属する一棟の建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番)並びに種類、構造及び床面積
   六 建物が共用部分又は団地共用部分であるときは、その旨
   七 建物又は附属建物が区分建物であるときは、当該建物又は附属建物が属する一棟の建物の構造及び床面積
   八 建物又は附属建物が区分建物である場合であって、当該建物又は附属建物が属する一棟の建物の名称があるときは、その名称
   九 建物又は附属建物が
区分建物である場合において、当該区分建物について区分所有法第二条第六項に規定する敷地利用権(登記されたものに限る。)であって、区分所有法第二十二条第一項本文(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定により区分所有者の有する専有部分と分離して処分することができないもの(以下「敷地権」という。)があるときは、その敷地権
 2 前項第三号、第五号及び第七号の建物の種類、構造及び床面積に関し必要な事項は、法務省令で定める。」
 です。


 そこで、敷地権の更正の登記申請は、不動産登記法第53条に該当し、2項の
 「2 第五十一条第五項及び第六項の規定は、建物が区分建物である場合における同条第五項に規定する登記事項に関する表題部の更正の登記について準用する。」
 により、
 不動産登記法第51条
 「(建物の表題部の変更の登記)
 第五十一条 
第四十四条第一項各号(第二号及び第六号を除く。)に掲げる登記事項について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、当該変更があった日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。
 2 前項の登記事項について変更があった後に表題部所有者又は所有権の登記名義人となった者は、その者に係る表題部所有者についての更正の登記又は所有権の登記があった日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。
 3 第一項の登記事項について変更があった後に共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記があったときは、所有者(前二項の規定により登記を申請しなければならない者を除く。)は、共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がされた日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。
 4 共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物について、第一項の登記事項について変更があった後に所有権を取得した者(前項の規定により登記を申請しなければならない者を除く。)は、その所有権の取得の日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。
 5 建物が区分建物である場合において、第四十四条第一項第一号(区分建物である建物に係るものに限る。)又は第七号から第九号までに掲げる登記事項(同号に掲げる登記事項にあっては、法務省令で定めるものに限る。次項及び第五十三条第二項において同じ。)に関する変更の登記は、当該登記に係る区分建物と同じ一棟の建物に属する他の区分建物についてされた変更の登記としての効力を有する。
 6 前項の場合において、同項に規定する登記事項に関する変更の登記がされたときは、登記官は、職権で、当該一棟の建物に属する他の区分建物について、当該登記事項に関する変更の登記をしなければならない。」

 とあり、
 敷地権の更正の登記申請は、表題部所有者又は所有権の登記名義人なら可能です。
 では、設問の「所有権の登記名義人の相続人」となると、不動産登記法第30条
 「(一般承継人による申請)
 第三十条 
表題部所有者又は所有権の登記名義人が表示に関する登記の申請人となることができる場合において、当該表題部所有者又は登記名義人について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人は、当該表示に関する登記を申請することができる。

 とあり、
 不動産登記法第30条により、区分建物の敷地権の更正の登記は、所有権の登記名義人について相続があったときは、相続人は、相続による所有権移転の登記の申請が、できますから、相続による所有権移転の登記をした後でなければ、その登記の申請をすることができないは、誤りです。



3 区分建物の所有者と当該区分建物の表題部所有者とが異なる場合に行う当該表題部所有者についての更正の登記は、当該表題部所有者以外の者は、申請することができない。

X 誤っている。 不動産の所有者と当該不動産の表題部所有者とが異なる場合なら、更正の登記ができるのは、不動産の所有者だけ。表題部所有者ではない。

 区分建物の所有者と当該区分建物の表題部所有者とが異なる場合に行う当該表題部所有者についての更正の登記は、不動産登記法第33条
 「(表題部所有者の更正の登記等)
 第三十三条 
不動産の所有者と当該不動産の表題部所有者とが異なる場合においてする当該表題部所有者についての更正の登記は、当該不動産の所有者以外の者は、申請することができない。
 2 前項の場合において、当該不動産の所有者は、当該表題部所有者の承諾があるときでなければ、申請することができない。
 3 不動産の表題部所有者である共有者の持分についての更正の登記は、当該共有者以外の者は、申請することができない。
 4 前項の更正の登記をする共有者は、当該更正の登記によってその持分を更正することとなる他の共有者の承諾があるときでなければ、申請することができない。」

 とあり、
 不動産登記法第33条1項によれば、不動産の所有者(区分建物の所有者)と当該不動産の表題部所有者とが異なる場合においてする当該表題部所有者についての更正の登記は、
当該不動産の所有者以外の者は、申請することができないため、当該表題部所有者は、誤りです。

 この解説で、登場人物の違いが理解できるかな?


4 区分建物の表題部所有者の氏名又は住所の変更の登記は、表題部所有者について一般承継があったときは、その一般承継人は、その登記の申請をすることができる。

〇 正しい。 一般承継人や相続人も区分建物の表題部所有者の氏名又は住所の変更の登記申請ができる。

 区分建物の表題部所有者の氏名又は住所の変更の登記は、不動産登記法第31条
 「(表題部所有者の氏名等の変更の登記又は更正の登記)
 第三十一条 
表題部所有者の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記は、表題部所有者以外の者は、申請することができない。

 とあり、
 表題部所有者以外の者は、申請することができません。
 そこで、設問の表題部所有者の一般承継人の立場ですが、これは、選択肢2でも引用しました、不動産登記法第30条
 「(一般承継人による申請)
 第三十条 
表題部所有者又は所有権の登記名義人が表示に関する登記の申請人となることができる場合において、当該表題部所有者又は登記名義人について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人は、当該表示に関する登記を申請することができる。」

 とあり、
 不動産登記法第30条により、表題部所有者の一般承継人も、区分建物の表題部所有者の氏名又は住所の変更の登記ができますから、正しい。



答え:4 

 知らない。すごく難しい。不動産登記法からも新しい条文からの出題で、該当の条文を探すのに、3時間もかかった。 

 だいたい、登記上の表題部の更正とか、変更をマンション管理士が関与して行う業務か! 出題の本質から大いに逸脱した、実に不適切な出題だ!

《タグ》不動産登記法 表題部所有者 持分の変更登記 所有権の保存の登記 敷地権の更正の登記 区分建物の所有者と当該区分建物の表題部所有者とが異なる場合 区分建物の表題部所有者の氏名又は住所の変更の登記

問19

〔問 19〕 マンションの建替え等の円滑化に関する法律(平成14年法律第78 号)の規定による、マンション敷地売却組合(この問いにおいて「組合」という。)が施行するマンション敷地売却事業に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 マンション敷地売却決議においては、売却による代金の見込額を定めなければならない。

〇 正しい。 マンション敷地売却決議においては、買受人や売却による代金の見込額等を定めること。

 マンションの建替え等の円滑化に関する法律からも、例年1問はでる。最近の出題傾向としては、マンション敷地売却事業からが多い。
 平成29年 マンション管理士試験 「問19」 、平成29年 管理業務主任者試験 「問42」、 平成28年 マンション管理士試験 「問19」 、 平成27年 マンション管理士試験 「問19」 。

 
 まず、マンション敷地売却制度とは、平成26年の改正で創設された規定で、”耐震性不足の認定を受けたマンション”については、区分所有者、議決権及び当該敷地利用権の持分の価格の各五分の四以上の多数での賛成(4/5以上は、区分所有法での建替え要件とほぼ同じです。)で、マンションおよびその敷地(借地権も)の売却を一括して買受人(デベロッパー等)に行う旨を決議できるというものです。
 改正前は、民法の共有での全員の合意(一致)が重視されていたため、多数決で敷地を売却することは、できませんでした。
  この改正は、画期的な内容です。

 そこで、マンション敷地売却決議で定めるものは、マンションの建替え等の円滑化に関する法律 第108条
 「(マンション敷地売却決議)
 第百八条 第百二条第一項の認定を受けた場合において、要除却認定マンションに係る敷地利用権が数人で有する所有権又は借地権であるときは、区分所有者集会において、区分所有者、議決権及び当該敷地利用権の持分の価格の各五分の四以上の多数で、当該要除却認定マンション及びその敷地(当該敷地利用権が借地権であるときは、その借地権)を売却する旨の決議(以下「
マンション敷地売却決議」という。)をすることができる。
 2 
マンション敷地売却決議においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
   一 買受人(第百二十条第一項の規定により組合(第百十六条に規定する組合をいう。以下この号において同じ。)が設立された場合にあっては、組合から要除却認定マンションを買い受ける者)となるべき者の氏名又は名称
   
二 売却による代金の見込額
   三 売却によって各区分所有者が取得することができる金銭(以下「分配金」という。)の額の算定方法に関する事項
 3 前項第一号に掲げる者は、次条第一項の認定を受けた者でなければならない。
 4 第二項第三号に掲げる事項は、各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならない。
 5 第一項に規定する決議事項を会議の目的とする区分所有者集会を招集するときは、区分所有法第三十五条第一項の通知は、同項の規定にかかわらず、当該区分所有者集会の会日より少なくとも二月前に発しなければならない。
 6 前項に規定する場合において、区分所有法第三十五条第一項の通知をするときは、前条に規定する議案の要領のほか、次に掲げる事項をも通知しなければならない。
   一 売却を必要とする理由
   二 建築物の耐震改修の促進に関する法律第二条第二項に規定する耐震改修(次号において単に「耐震改修」という。)又はマンションの建替えをしない理由
   三 耐震改修に要する費用の概算額
 7 第五項の区分所有者集会を招集した者は、当該区分所有者集会の会日より少なくとも一月前までに、当該招集の際に通知すべき事項について区分所有者に対し説明を行うための説明会を開催しなければならない。
 8 区分所有法第三十五条第一項から第四項まで及び第三十六条の規定は、前項の説明会の開催について準用する。この場合において、区分所有法第三十五条第一項ただし書中「伸縮する」とあるのは、「伸長する」と読み替えるものとする。
 9 マンション敷地売却決議をした区分所有者集会の議事録には、その決議についての各区分所有者の賛否をも記載し、又は記録しなければならない。
 10 区分所有法第六十三条及び第六十四条の規定は、マンション敷地売却決議があった場合について準用する。この場合において、区分所有法第六十三条第一項中「建替えに」とあるのは「マンションの建替え等の円滑化に関する法律(以下「円滑化法」という。)第二条第一項第八号に規定するマンション敷地売却(以下単に「マンション敷地売却」という。)に」と、同条第三項から第五項まで及び区分所有法第六十四条中「建替えに」とあるのは「マンション敷地売却に」と、区分所有法第六十三条第六項中「建物の取壊しの工事に着手しない」とあるのは「円滑化法第百八条第一項に規定するマンション敷地売却決議に基づく売買契約によるマンション(円滑化法第二条第一項第一号に規定するマンションをいう。以下同じ。)及びその敷地(マンションの敷地利用権が円滑化法第二条第一項第十七号に規定する借地権(以下単に「借地権」という。)であるときは、その借地権。以下同じ。)についての権利の移転(円滑化法第百二十条第一項の規定により組合(円滑化法第百十六条に規定する組合をいう。以下同じ。)が設立された場合にあつては、円滑化法第百四十九条の規定による売却マンション(円滑化法第二条第一項第十号に規定する売却マンションをいう。)及びその敷地の組合への帰属。以下「権利の移転等」という。)がない」と、同項ただし書中「建物の取壊しの工事に着手しなかつた」とあるのは「権利の移転等がなかつた」と、同条第七項中「建物の取壊しの工事の着手」とあるのは「権利の移転等」と、「その着手をしないとき」とあるのは「権利の移転等がないとき」と、区分所有法第六十四条中「建替えを」とあるのは「マンション敷地売却を」と読み替えるものとする。」

 とあり、
 マンションの建替え等の円滑化に関する法律 第108条2項2号によれば、マンション敷地売却決議においては、売却による代金の見込額を定めなければならないは、正しい。



2 組合は、分配金取得計画の認可を受けたときは、遅滞なくその旨を公告し、及び関係権利者に関係事項を書面で通知しなければならない。

〇 正しい。 当然。
 
  分配金取得計画段階での分配金は、売却によって組合員が取得することができる金銭です。(同法第108条2項3号参照)

 そして、設問は、マンションの建替え等の円滑化に関する法律 第147条 
 
「(分配金取得計画に基づく組合の処分)
 第百四十七条 
組合は、分配金取得計画若しくはその変更の認可を受けたとき、又は分配金取得計画について第百四十五条の国土交通省令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公告し、及び関係権利者に関係事項を書面で通知しなければならない。
 2 分配金取得計画に基づく組合の処分は、前項の通知をすることによって行う。
 3 分配金取得計画に基づく組合の処分については、行政手続法第三章の規定は、適用しない。」

 とあり、
 マンションの建替え等の円滑化に関する法律 第147条1項によれば、組合は、分配金取得計画の認可を受けたときは、遅滞なくその旨を公告し、及び関係権利者に関係事項を書面で通知しなければならないは、正しい。



3 分配金取得計画に定める権利消滅期日以後においては、売却マンション及びその敷地に関しては、売却マンション及びその敷地に関する権利について、組合の申請により必要な登記がされるまでの間は、他の登記をすることができない。

〇 正しい。 他の登記をされると権利関係が複雑になる。

 権利消滅期日の前と後では、大きく権利関係が変動しますから注意してください。
 設問は、マンションの建替え等の円滑化に関する法律 第150条
 「(権利売却の登記)
 第百五十条 組合は、権利消滅期日後遅滞なく、売却マンション及びその敷地に関する権利について必要な登記を申請しなければならない。
 2 権利消滅期日以後においては、売却マンション及びその敷地に関しては、前項の登記がされるまでの間は、他の登記をすることができない。

 とあり、
 マンションの建替え等の円滑化に関する法律 第150条2項によれば、分配金取得計画に定める権利消滅期日以後においては、売却マンション及びその敷地に関しては、売却マンション及びその敷地に関する権利について、組合の申請により必要な登記がされるまでの間は、他の登記をすることができないは、正しい。



4 総会の議決により組合を解散する場合の当該議決については、分配金取得計画に定める権利消滅期日後に限り行うことができる。

X 誤っている。 総会の議決により組合は解散できるが、それは、分配金取得計画に定める権利消滅期日前であること。権利消滅期日後では、遅すぎる。

 総会の議決により組合を解散する場合は、マンションの建替え等の円滑化に関する法律 第137条
 「(解散)
 第百三十七条 
組合は、次に掲げる理由により解散する
   一 設立についての認可の取消し
   
二 総会の議決
   三 事業の完了又はその完了の不能
 
2 前項第二号の議決は、権利消滅期日前に限り行うことができるものとする
 3 組合は、第一項第二号又は第三号に掲げる理由により解散しようとする場合において、借入金があるときは、解散について債権者の同意を得なければならない。
 4 組合は、第一項第二号又は第三号に掲げる理由により解散しようとするときは、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事等の認可を受けなければならない。
 5 都道府県知事等は、組合の設立についての認可を取り消したとき、又は前項の規定による認可をしたときは、遅滞なく、その旨を公告しなければならない。
 6 組合は、前項の公告があるまでは、解散をもって組合員以外の第三者に対抗することができない。」

 とあり、
 マンションの建替え等の円滑化に関する法律 第137条1項2号により、組合は総会の議決があれば、解散できますが、同法第137条2項により、その場合には、権利消滅期日前でなければないませんから、総会の議決により組合を解散する場合の当該議決については、分配金取得計画に定める権利消滅期日後に限り行うことができるは、誤りです。



答え:4

  ここまで細かい条文は知らないが、敷地売却の手順が分かっていれば、何となく 正解は、選択肢4 とは分かるか?

 なお、「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」 の概説も別途していますから、参考にしてください。

《タグ》マンションの建替え等の円滑化に関する法律 売却による代金 分配金 権利消滅期日 組合の解散

問20

〔問 20〕 地域地区に関する次の記述のうち、都市計画法(昭和43 年法律第100号)の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 準住居地域は、道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域である。

〇 正しい。
 都市計画法からも、例年1問の出題がある。多くは、地域地区から。  参考:出題分析。  
 平成29年 マンション管理士試験 「問20」 、 平成28年 マンション管理士試験 「問20」 、  平成27年 マンション管理士試験 「問21」 平成26年マンション管理士試験 「問21」、 平成25年マンション管理士試験 「問21」平成24年マンション管理士試験 「問21」平成23年マンション管理士試験 「問21」、など。


 都市計画法の概要は以下のようになっています。

 
 
 都市計画区域内には、地域、地区、街区を定めることができ、その中には総称:用途地域と呼ばれる旧12種の地域がありましたが、平成30年4月1日から、新しく住居系の用途地域として都市計画法に創設された地域:田園住居地域が加わり、今は、用途地域は13種になりました。

 
 
 そして、準住居地域なら、都市計画法第9条7項
 「7 準住居地域は、道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域とする。」
 とあり、
 準住居地域は、道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域であるは、正しい。



2 田園住居地域は、農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域である。

〇 正しい。

  出た! 田園住居地域は、平成30年4月から、新しく住居系の用途地域として都市計画法に創設された地域で、度々、私も出題の対象になると、指摘してきたものです。
 具体的には、都市計画法第9条8項
 「8 田園住居地域は、農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域とする。
 とあり、
 田園住居地域は、農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域であるは、正しい。



3 高度地区は、用途地域内において市街地の環境を維持し、又は土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める地区である。

〇 正しい。

 高度地区は、都市計画法第9条18項
 「18 高度地区は、用途地域内において市街地の環境を維持し、又は土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める地区とする。
 とあり、
 高度地区は、用途地域内において市街地の環境を維持し、又は土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める地区であるは、正しい。



4 特別用途地区は、用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)内において、当該地域の特性にふさわしい土地利用の増進、環境の保護等の特別の目的の実現を図るため定める地区である。

X 誤っている。 この記述は、特定用途制限地域。

 特別用途地区なら、都市計画法第9条14項
 
「14 特別用途地区は、用途地域内の一定の地区における当該地区の特性にふさわしい土地利用の増進、環境の保護等の特別の目的の実現を図るため当該用途地域の指定を補完して定める地区とする。
 とあり、
 特別用途地区は、用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)内において、当該地域の特性にふさわしい土地利用の増進、環境の保護等の特別の目的の実現を図るため定める地区であるは、誤りです。

 なお、参考:都市計画法第9条15項には、
15 特定用途制限地域は、用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)内において、その良好な環境の形成又は保持のため当該地域の特性に応じて合理的な土地利用が行われるよう、制限すべき特定の建築物等の用途の概要を定める地域とする。」
 とあります。



答え:4 

  
地域地区は、似たような文章で、紛らわしいので、必ず、まとめを作って、違いを理解すること。 ここは、易しい。

 都市計画法も、必ず1問は出るので、 「目指せ! マンション管理士・管理業務主任者」の過去問題解説 において、下の方に 「都市計画法」 だけを取り出していますので、参考にしてください。

《タグ》都市計画法 用途地域 準住居地域 田園住居地域 高度地区 特別用途地区 特定用途制限地域

問21

〔問 21〕 共同住宅に関する次の記述のうち、建築基準法(昭和25 年法律第201号)の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 建築主は、防火地域及び準防火地域外にある共同住宅を増築しようとする場合で、その増築に係る部分の床面積の合計が5m2 であるときは、建築確認を受ける必要はない。

〇 正しい。 防火地域及び準防火地域外にある共同住宅を増築で、床面積が10u以内なら、建築確認を受ける必要はない。
  平成28年 マンション管理士試験 「問21」 、 平成25年 マンション管理士試験 「問41」 、平成24年 マンション管理士試験 「20」 、平成14年 マンション管理士試験 「問21」平成13年 マンション管理士試験 「問25」

 建築基準法からも、例年、あちらこちらから、2、3問は出題される。
 
 基本的に、新しい建物の建築や増築となると建築主は、着工前に行政などの関係部門に建築確認申請をして、用途地域、道路の接面状態、建ぺい率、容積率、構造などのチェックを受けなければなりません。
 それが、建築基準法第6条
 「(建築物の建築等に関する申請及び確認)
 第六条 
建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。当該確認を受けた建築物の計画の変更(国土交通省令で定める軽微な変更を除く。)をして、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合も、同様とする。
   一 別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が百平方メートルを超えるもの
   二 木造の建築物で三以上の階数を有し、又は延べ面積が五百平方メートル、高さが十三メートル若しくは軒の高さが九メートルを超えるもの
   三 木造以外の建築物で二以上の階数を有し、又は延べ面積が二百平方メートルを超えるもの
   四 前三号に掲げる建築物を除くほか、都市計画区域若しくは準都市計画区域(いずれも都道府県知事が都道府県都市計画審議会の意見を聴いて指定する区域を除く。)若しくは景観法(平成十六年法律第百十号)第七十四条第一項の準景観地区(市町村長が指定する区域を除く。)内又は都道府県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若しくは一部について指定する区域内における建築物
 2 前項の規定は、防火地域及び準防火地域外において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合で、その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が十平方メートル以内であるときについては、適用しない。
 3 建築主事は、第一項の申請書が提出された場合において、その計画が次の各号のいずれかに該当するときは、当該申請書を受理することができない。
   一 建築士法第三条第一項、第三条の二第一項、第三条の三第一項、第二十条の二第一項若しくは第二十条の三第一項の規定又は同法第三条の二第三項の規定に基づく条例の規定に違反するとき。
   二 構造設計一級建築士以外の一級建築士が建築士法第二十条の二第一項の建築物の構造設計を行つた場合において、当該建築物が構造関係規定に適合することを構造設計一級建築士が確認した構造設計によるものでないとき。
   三 設備設計一級建築士以外の一級建築士が建築士法第二十条の三第一項の建築物の設備設計を行つた場合において、当該建築物が設備関係規定に適合することを設備設計一級建築士が確認した設備設計によるものでないとき。
 4 建築主事は、第一項の申請書を受理した場合においては、同項第一号から第三号までに係るものにあつてはその受理した日から三十五日以内に、同項第四号に係るものにあつてはその受理した日から七日以内に、申請に係る建築物の計画が建築基準関係規定に適合するかどうかを審査し、審査の結果に基づいて建築基準関係規定に適合することを確認したときは、当該申請者に確認済証を交付しなければならない。
 5 建築主事は、前項の場合において、申請に係る建築物の計画が第六条の三第一項の構造計算適合性判定を要するものであるときは、建築主から同条第七項の適合判定通知書又はその写しの提出を受けた場合に限り、第一項の規定による確認をすることができる。
 6 建築主事は、第四項の場合(申請に係る建築物の計画が第六条の三第一項の特定構造計算基準(第二十条第一項第二号イの政令で定める基準に従つた構造計算で同号イに規定する方法によるものによつて確かめられる安全性を有することに係る部分に限る。)に適合するかどうかを審査する場合その他国土交通省令で定める場合に限る。)において、第四項の期間内に当該申請者に第一項の確認済証を交付することができない合理的な理由があるときは、三十五日の範囲内において、第四項の期間を延長することができる。この場合においては、その旨及びその延長する期間並びにその期間を延長する理由を記載した通知書を同項の期間内に当該申請者に交付しなければならない。
 7 建築主事は、第四項の場合において、申請に係る建築物の計画が建築基準関係規定に適合しないことを認めたとき、又は建築基準関係規定に適合するかどうかを決定することができない正当な理由があるときは、その旨及びその理由を記載した通知書を同項の期間(前項の規定により第四項の期間を延長した場合にあつては、当該延長後の期間)内に当該申請者に交付しなければならない。
 8 第一項の確認済証の交付を受けた後でなければ、同項の建築物の建築、大規模の修繕又は大規模の模様替の工事は、することができない。
 9 第一項の規定による確認の申請書、同項の確認済証並びに第六項及び第七項の通知書の様式は、国土交通省令で定める。」

 です。


 つまり、どんな場合に建築確認申請が必要となるのかというと、
  1. 建物の新築はかならず、
  
2. 防火地域と準防火地域内の10u(6畳程度)を超える増・改築・移転
  3. 大規模の修繕、大規模の模様替え、
  4. 特殊建築物(マンション=共同住宅で入ります)で100uを超える用途変更の場合、また
  5. 木造で3階以上も必要です。

 建築基準法第6条1項1号の 別表第一(い)欄に掲げる用途に供する”
特殊建築物”とは、「病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎その他これらに類するもので政令で定めるもの」
 とあり、
 設問の共同住宅も該当します

 そこで、設問の「防火地域及び準防火地域
にある共同住宅を増築しようとする場合で、その増築に係る部分の床面積の合計が5m2 」なら、建築基準法第6条2項の
 「2 前項の規定は、防火地域及び準防火地域外において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合で、その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が十平方メートル以内であるときについては、
適用しない。」
 に該当し、防火地域及び準防火地域外で、また、増築の床面積が10u以下の5uであるので、建築確認を受ける必要はないは、正しい。



2 政令で定める技術的基準に従って換気設備を設けた場合を除き、共同住宅の居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、20 分の1以上としなければならない。

〇 正しい。  居室の換気設備は、床面積に対して、20 分の1以上とすること。
  平成29年 管理業務主任者試験 「問18」 、 平成25年 管理業務主任者試験 「問20」 、  平成19年 管理業務主任者試験 「問24」  、平成15年 マンション管理士試験 「44」 など 良く出題がある。

 まず、換気設備の必要性は、採光と並んで、建築基準法第28条
 「(居室の採光及び換気)
 第二十八条 住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室(居住のための居室、学校の教室、病院の病室その他これらに類するものとして政令で定めるものに限る。)には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、住宅にあつては七分の一以上、その他の建築物にあつては五分の一から十分の一までの間において政令で定める割合以上としなければならない。ただし、地階若しくは地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室又は温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室については、この限りでない。
 
2 居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、二十分の一以上としなければならない。ただし、政令で定める技術的基準に従つて換気設備を設けた場合においては、この限りでない。
 3 別表第一(い)欄(一)項に掲げる用途に供する特殊建築物の居室又は建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備若しくは器具を設けたもの(政令で定めるものを除く。)には、政令で定める技術的基準に従つて、換気設備を設けなければならない。
 4 ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた二室は、前三項の規定の適用については、一室とみなす。」
 とあります。


 ここで、
 ★居室とは、建築基準法第2条四号によると、
  「居室(とは)  居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう。」とあります。
  具体的には、居間、ダイニング、キッチン、寝室、子供部屋、応接室、書斎等 継続的に使用する部屋で人が継続的に使用するので採光・換気その他環境衛生についての決まりがあります。
  玄関、廊下や階段は居室ではありません。便所、浴室も利用時間が一時的なので居室ではありません。
 ★居室に求められる室内居住環境...良好な室内居住環境を実現するために、採光、換気、防湿、遮音、温度調整、有害な化学物質の規制があります。
 ★換気も必要です。...室内で人が呼吸をすると、酸素を消費し二酸化炭素が排出され空気が汚染されます。そこで、この規定があります。

  建築基準法では、採光ともに換気についても、窓などの大きさを定め、居室の場合、床面積の1/20以上としています。

 そこで、建築基準法第28条2項によれば、設問の「政令で定める技術的基準に従って換気設備を設けた場合を除き、共同住宅の居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、20 分の1以上としなければならないは、正しい。



3 主要構造部が準耐火構造である共同住宅の3階(避難階以外の階)については、その階における居室の床面積の合計が150 m2 である場合、その階から避難階又は地上に通ずる2以上の直通階段を設けなければならない。

X 誤っている。 主要構造部が準耐火構造である共同住宅の3階なら、その階における居室の床面積の合計は、200uを超えると、その階から避難階又は地上に通ずる2以上の直通階段を設けなければならない。150uなら該当しない。
 平成24年 マンション管理士試験 「問24」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問20」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問18」 、 平成16年 マンション管理士試験 「21」 、 平成14年 マンション管理士試験 「問41」 。

 避難階とは、分かり難い言い方ですが、直接地上へ通じる出入口がある階のことです。
 一般的には地上に出る1階ですが、建築物が斜面に建てられている場合などでは、1階以外の階が避難階になることがあり、建物によっては避難階が複数存在することもあります。


 

  建築基準法では、地震や火災発生時などの緊急時に多数の人が安全に避難できるように、建物の用途や階高に応じ「直通階段」や「避難階段」の設置を義務付けています。
 ちなみに「直通階段」とは、建物の上層階または地下階から、地上または避難階に直通する階段のことです。階段から次の階段へは可能な限り短く連続したものとし、経路が分断されることなく、まちがいなく容易に避難できるものと規定されています。
 「避難階段」は、@屋内避難階段、A屋外避難階段、B特別避難階段の3種類に区別されています。
 
 避難階以外の階では、建築基準法施行令第121条、
 「(二以上の直通階段を設ける場合)
 第百二十一条 
建築物の避難階以外の階が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その階から避難階又は地上に通ずる二以上の直通階段を設けなければならない。
   一 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場の用途に供する階でその階に客席、集会室その他これらに類するものを有するもの
   二 物品販売業を営む店舗(床面積の合計が千五百平方メートルを超えるものに限る。第百二十二条第二項、第百二十四条第一項及び第百二十五条第三項において同じ。)の用途に供する階でその階に売場を有するもの
   三 次に掲げる用途に供する階でその階に客席、客室その他これらに類するものを有するもの(五階以下の階で、その階の居室の床面積の合計が百平方メートルを超えず、かつ、その階に避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するもの及びその階から避難階又は地上に通ずる直通階段で第百二十三条第二項又は第三項の規定に適合するものが設けられているもの並びに避難階の直上階又は直下階である五階以下の階でその階の居室の床面積の合計が百平方メートルを超えないものを除く。)
     イ キャバレー、カフェー、ナイトクラブ又はバー
     ロ 個室付浴場業その他客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業を営む施設
     ハ ヌードスタジオその他これに類する興行場(劇場、映画館又は演芸場に該当するものを除く。)
     ニ 専ら異性を同伴する客の休憩の用に供する施設
     ホ 店舗型電話異性紹介営業その他これに類する営業を営む店舗
   四 病院若しくは診療所の用途に供する階でその階における病室の床面積の合計又は児童福祉施設等の用途に供する階でその階における児童福祉施設等の主たる用途に供する居室の床面積の合計が、それぞれ五十平方メートルを超えるもの
   
五 ホテル、旅館若しくは下宿の用途に供する階でその階における宿泊室の床面積の合計、共同住宅の用途に供する階でその階における居室の床面積の合計又は寄宿舎の用途に供する階でその階における寝室の床面積の合計が、それぞれ百平方メートルを超えるもの
   六 前各号に掲げる階以外の階で次のイ又はロに該当するもの
     イ 六階以上の階でその階に居室を有するもの(第一号から第四号までに掲げる用途に供する階以外の階で、その階の居室の床面積の合計が百平方メートルを超えず、かつ、その階に避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するもの及びその階から避難階又は地上に通ずる直通階段で第百二十三条第二項又は第三項の規定に適合するものが設けられているものを除く。)
     ロ 五階以下の階でその階における居室の床面積の合計が避難階の直上階にあつては二百平方メートルを、その他の階にあつては百平方メートルを超えるもの
 
2 主要構造部が準耐火構造であるか、又は不燃材料で造られている建築物について前項の規定を適用する場合には、同項中「五十平方メートル」とあるのは「百平方メートル」と、「百平方メートル」とあるのは「二百平方メートル」と、「二百平方メートル」とあるのは「四百平方メートル」とする。
 3 第一項の規定により避難階又は地上に通ずる二以上の直通階段を設ける場合において、居室の各部分から各直通階段に至る通常の歩行経路のすべてに共通の重複区間があるときにおける当該重複区間の長さは、前条に規定する歩行距離の数値の二分の一をこえてはならない。ただし、居室の各部分から、当該重複区間を経由しないで、避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するものに避難することができる場合は、この限りでない。」

 とあり、
 実に、複雑な構成です。


 通常なら、共同住宅は、建築基準法施行令第121条1項5号により、
 「五 ホテル、旅館若しくは下宿の用途に供する階でその階における宿泊室の床面積の合計、
共同住宅の用途に供する階でその階における居室の床面積の合計又は寄宿舎の用途に供する階でその階における寝室の床面積の合計が、それぞれ百平方メートルを超えるもの
 とあり、
 共同住宅では、その階における居室の床面積の合計が100uを超えると、その階から避難階又は地上に通ずる二以上の直通階段を設けなければならないのですが、設問では、「
主要構造部が準耐火構造」となっているのが、鍵です。
 すると、建築基準法施行令第121条2項に
 「2 
主要構造部が準耐火構造であるか、又は不燃材料で造られている建築物について前項の規定を適用する場合には、同項中「五十平方メートル」とあるのは「百平方メートル」と、「百平方メートル」とあるのは「二百平方メートル」と、「二百平方メートル」とあるのは「四百平方メートル」とする。
 とあるため、
 主要構造部が準耐火構造なら、その階における居室の床面積の合計が100uは、200uと変更されるのです。

 そこで、「主要構造部が準耐火構造である共同住宅の3階(避難階以外の階)については、その階における居室の床面積の合計が150 u である場合、その階から避難階又は地上に通ずる2以上の直通階段を設けなければならない」の「その階における居室の床面積の合計が150 u」は、200uを超えていないため、その階から避難階又は地上に通ずる2以上の直通階段を設けなくてもいいため、誤りです。



4 防火地域内にある共同住宅の屋上に設ける高さ2mの看板は、その主要な部分を不燃材料で造り、又はおおわなければならない。

〇 正しい。 防火地域内にある共同住宅の屋上に設ける看板なら、高さに関係なく、その主要な部分を不燃材料で造り、又はおおわなければならない。
 平成25年 マンション管理士試験 「問20」 、平成24年 マンション管理士試験 「問20」、 平成15年 マンション管理士試験 「問20」 

  看板等の防火措置は、建築基準法第66条
 「(看板等の防火措置)
 第六十六条 防火地域内にある看板、広告塔、装飾塔その他これらに類する工作物で、建築物の屋上に設けるもの又は高さ三メートルをこえるものは、その主要な部分を不燃材料で造り、又はおおわなければならない。」

 とあり、
 看板等の防火措置の建築基準法第66条は、
防火地域だけの規制です。準防火地域では規制がありません。
  看板、広告塔、装飾塔などで
   @屋上に設ける場合(高さは関係なく) または
   A高さ3mをこえるもの は
  その主要な部分を、
  イ.不燃材料で造るか
  ロ.不燃材料でおおう こと。
 であり、
 防火地域内にある共同住宅の屋上に設ける高さ2mの看板は、その主要な部分を不燃材料で造り、又はおおわなければならないは、正しい。


答え:4 

  難しい! 選択肢3の 100uが 200u になるとは条文も面倒。 
  また、選択肢4の「又は」は条文を正確に覚えていないと、ひっかかる。 解説も約3時間がかかった。
  
 建築基準法 については、別途  「要約 建築基準法」  もありますから、ご利用ください。
 ここで、主要構造部とか、耐火構造・準耐火構造、不燃材料などを勉強してください。
 また、過去問題の解説でも、 建築基準法  だけを取り出していますから、こちらも、参考にしてください。


《タグ》建築基準法 増築 建築確認 換気設備 避難階 直通階段 防火地域内 看板 3m

問22

〔問 22〕 水道法(昭和32年法律第177号)の規定によれば、簡易専用水道の設置者が1年以内ごとに1回受けなければならない検査に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態に関する検査は、水槽の水を抜かずに実施する。

〇 正しい。 簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態に関する検査は、水槽の水を抜かずに実施する。

  水道法からも、例年1問の出題があります。 
 平成29年 マンション管理士試験 「問22」 、平成28年 マンション管理士試験 「問22」 、 平成27年 マンション管理士試験 「問22」、 平成26年 マンション管理士試験 「問22」
 、平成23年 マンション管理士試験 「問22」 、平成21年 マンション管理士試験 「問22」 、 平成16年 マンション管理士試験 「問23」 など。

 どうして、いつも水道法では、「貯水槽水道」とか「簡易専用水道」がよく出題されるのかといいますと、マンションやビルでは、受水槽(給水タンクとも)にいったん水道水を貯めてから、ポンプや高置水槽を使用し、各蛇口へ給水している場合があります。この受水槽から各蛇口までの施設全体を「貯水槽水道」と呼びます。


 

 
「貯水槽水道」に関する規定は、ビル、マンション等の貯水槽水道の管理について、その設置者(建物所有者や分譲マンションでは管理組合等)の責任を水道事業者が定める供給規定上明確にし、その管理の徹底を図るために平成13年の改正水道法で設けられました。

 この法改正により、今までありました、簡易専用水道も貯水槽水道に含まれますが、簡易専用水道のうち、水槽の有効容量の合計が 10m3 以下のものは適用除外になっています。


 そこで、簡易専用水道の検査は、水道法第34条の2、
 「第三十四条の二 簡易専用水道の設置者は、厚生労働省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならない。
 2 簡易専用水道の設置者は、当該簡易専用水道の管理について、
厚生労働省令の定めるところにより、定期に、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならない。」
 とあり、
 その厚生労働省令で定める基準は、水道法施行規則第56条
「(検査)
 第五十六条  法第三十四条の二第二項 の規定による検査は、一年以内ごとに一回とする。
 2  
検査の方法その他必要な事項については、厚生労働大臣が定めるところによるものとする。 」
 とあり、
 水道法施行規則第56条2項を受けた厚生労働大臣が定めたところは、
 厚生労働省告示第二百六十二号 です。


 これによりますと、
 「第三 簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態に関する検査
   一 簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態に関する検査は、簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態が、当該簡易専用水道の水質に害を及ぼすおそれのあるものであるか否かを検査するものであり、
当該簡易専用水道に設置された水槽(以下「水槽」という。)の水を抜かずに、次に掲げる検査を行うものとする
     1 水槽その他当該簡易専用水道に係る施設の中に汚水等の衛生上有害なものが混入するおそれの有無についての検査
     2 水槽及びその周辺の清潔の保持についての検査
     3 水槽内における沈積物、浮遊物質等の異常な物の有無についての検査
   二 一に関して必要な検査事項及び判定基準は、別表第一に定めるところによる。」
 とあり、
 簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態に関する検査は、水を抜かずに、各種検査を行いますから、正しい。


2 給水栓における、臭気、味、色、色度、濁度、残留塩素に関する検査は、あらかじめ給水管内に停滞していた水も含めて採水する。

X 誤っている。 検査においては、あらかじめ給水管内に停滞していた水が新しい水に入れ替わるまで放流してから採水すること。停滞していた水は含めない。

  選択肢1で引用しました、厚生労働省告示第二百六十二号
 「第四 給水栓における水質の検査
   一
給水栓における水質について、次に掲げる検査を行うものとする。
     1 臭気、味、色及び濁りに関する検査
     2 残留塩素に関する検査

   二 一に関して必要な検査事項及び判定基準は、別表第二に定めるところによる。」
 とあり、
 設問の前半、給水栓における、臭気、味、色、色度、濁度、残留塩素に関する検査の項目は、正しい。

  そして、そのやり方は、別表第二

  

 とあり、
 「備考
 
 一の項から六の項に係る検査においては、あらかじめ給水管内に停滞していた水が新しい水に入れ替わるまで放流してから採水すること。」
 とありますから、
 設問の「あらかじめ給水管内に停滞していた水も含めて採水する」は、誤りです。給水管内に停滞していた水が新しい水に入れ替わるまで放流してから採水します。



3 書類の整理等に関する検査の判定基準は、簡易専用水道の設備の配置及び系統を明らかにした図面、受水槽の周囲の構造物の配置を明らかにした平面図及び水槽の掃除の記録その他の帳簿書類の適切な整理及び保存がなされていることと定められている。

〇 正しい。 

 選択肢1で引用しました、厚生労働省告示第二百六十二号
 「第五
書類の整理等に関する検査
  一
次に掲げる書類の整理及び保存の状況について、検査を行うものとする
     1 簡易専用水道の設備の配置及び系統を明らかにした図面
     2 受水槽の周囲の構造物の配置を明らかにした平面図
     3 水槽の掃除の記録
     4 その他の管理についての記録
  二 一に関して必要な検査事項及び
判定基準は、別表第三に定めるところによる。」
 とあり、
 別表第三
 

 これにより、 書類の整理等に関する検査の判定基準は、簡易専用水道の設備の配置及び系統を明らかにした図面、受水槽の周囲の構造物の配置を明らかにした平面図及び水槽の掃除の記録その他の帳簿書類の適切な整理及び保存がなされていることと定められているは、正しい。


4 検査者は設置者に対して、検査終了後に検査結果等を記した書類を交付するとともに、判定基準に適合しなかった事項がある場合には、当該事項について速やかに対策を講じるよう助言を行う。

〇 正しい。 

 検査後は、選択肢1で引用しました、厚生労働省告示第二百六十二号
 第七 検査後の措置
 「一 検査者は、検査終了後、次に掲げる措置を行うものとする。
   1
設置者に検査済みを証する書類を交付すること。この場合において、当該書類には次に掲る事項を記載すること。
     (一)検査機関の名称及び所在地
     (二)検査員の氏名
     (三)簡易専用水道を有する施設の名称及び所在地
     (四)設置者の氏名又は名称
     (五)簡易専用水道を有する施設の概要
     (六)水槽の数、有効容量、形状、設置場所及び材質
     (七)検査の結果
     (八)その他必要な事項
  
 2 検査の結果、別表第一から別表第三までに掲げる判定基準に適合しなかった事項がある場合には、設置者に対し、当該事項について速やかに対策を講じるよう助言を行うこと。
  以下、略 」
 とあり、
 検査者は設置者に対して、検査終了後に検査結果等を記した書類を交付するとともに、判定基準に適合しなかった事項がある場合には、当該事項について速やかに対策を講じるよう助言を行うは、正しい。



答え:2

 選択肢1や選択肢2は、過去問題から分かるか? 初めての人には、出題箇所が細かくて正解は難しい。

 水道法も例年1問の出題がありますので、 水道法 についても、 過去問題から 取り出していますから、参考にしてください。

《タグ》水道法 簡易専用水道 検査 書類 判定後

問23

〔問 23〕 消防法(昭和23年法律第186号)の規定によれば、居住者数50人以上のマンションの管理について権原を有する者によって定められた防火管理者が行うものではない業務は、次のうちのどれか。

1 消防用設備等について定期に点検を行い、その結果を消防長又は消防署長に報告すること。

X 誤っている。 消防用設備等について定期に点検を行い、その結果を消防長又は消防署長に報告することは、管理について権原を有する者(管理権限者)であり、防火管理者ではない。

 消防法からも、例年1問はでます。

 防火管理者の出題は、 平成27年 マンション管理士試験 「問23」 、 平成24年マンション管理士試験 「問23」 、平成24年 管理業務主任者試験 「問19」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問23」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問24」 、平成17年 マンション管理士試験 「問25」 、平成15年 マンション管理士試験 「問24」 、平成14年マンション管理士 試験 「問24」 、 平成13年 管理業務主任者 試験 「問19」


 まず、防火管理者については、消防法第8条
 「第八条 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(これに準ずるものとして政令で定める大規模な小売店舗を含む。以下同じ。)、複合用途防火対象物(防火対象物で政令で定める二以上の用途に供されるものをいう。以下同じ。)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
 2 前項の権原を有する者は、同項の規定により防火管理者を定めたときは、遅滞なくその旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
 3 消防長又は消防署長は、第一項の防火管理者が定められていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、同項の規定により防火管理者を定めるべきことを命ずることができる。
 4 消防長又は消防署長は、第一項の規定により同項の防火対象物について同項の防火管理者の行うべき防火管理上必要な業務が法令の規定又は同項の消防計画に従つて行われていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、当該業務が当該法令の規定又は消防計画に従つて行われるように必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
 5 第五条第三項及び第四項の規定は、前二項の規定による命令について準用する。」

 とあり、
 消防法第8条1項を受けた消防法施行令第1条の2 
 
「(防火管理者を定めなければならない防火対象物等)
 第一条の二 法第八条第一項の政令で定める大規模な小売店舗は、延べ面積が千平方メートル以上の小売店舗で百貨店以外のものとする。
 2 法第八条第一項の政令で定める二以上の用途は、異なる二以上の用途のうちに別表第一(一)項から(十五)項までに掲げる防火対象物の用途のいずれかに該当する用途が含まれている場合における当該二以上の用途とする。この場合において、当該異なる二以上の用途のうちに、一の用途で、当該一の用途に供される防火対象物の部分がその管理についての権原、利用形態その他の状況により他の用途に供される防火対象物の部分の従属的な部分を構成すると認められるものがあるときは、当該一の用途は、当該他の用途に含まれるものとする。
 3 法第八条第一項の政令で定める防火対象物は、次に掲げる防火対象物とする。
   一 別表第一に掲げる防火対象物(同表(十六の三)項及び(十八)項から(二十)項までに掲げるものを除く。次条において同じ。)のうち、次に掲げるもの
     イ 別表第一(六)項ロ、(十六)項イ及び(十六の二)項に掲げる防火対象物(同表(十六)項イ及び(十六の二)項に掲げる防火対象物にあつては、同表(六)項ロに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものに限る。)で、当該防火対象物に出入し、勤務し、又は居住する者の数(以下「収容人員」という。)が十人以上のもの
     ロ 別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項イ、ハ及びニ、(九)項イ、(十六)項イ並びに(十六の二)項に掲げる防火対象物(同表(十六)項イ及び(十六の二)項に掲げる防火対象物にあつては、同表(六)項ロに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものを除く。)で、収容人員が三十人以上のもの
     
ハ 別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ及び(十七)項に掲げる防火対象物で、収容人員が五十人以上のもの
   二 新築の工事中の次に掲げる建築物で、収容人員が五十人以上のもののうち、総務省令で定めるもの
     イ 地階を除く階数が十一以上で、かつ、延べ面積が一万平方メートル以上である建築物
     ロ 延べ面積が五万平方メートル以上である建築物
     ハ 地階の床面積の合計が五千平方メートル以上である建築物
   三 建造中の旅客船(船舶安全法(昭和八年法律第十一号)第八条に規定する旅客船をいう。)で、収容人員が五十人以上で、かつ、甲板数が十一以上のもののうち、総務省令で定めるもの
 4 収容人員の算定方法は、総務省令で定める。」

 です。

 消防法施行令第1条の2 3項での別表第一 では、
 
  
  共同住宅(マンション)は、
別表第一(五)ロ に該当し、消防法施行令第1条の2 3項 ハ の「収容人員が五十人以上のもの」となり、防火管理者を定めなければなりません。

 すると、防火管理者の責務は、消防法施行令第3条の2
 
「(防火管理者の責務)
 第三条の二 防火管理者は、総務省令で定めるところにより、当該防火対象物についての防火管理に係る消防計画を作成し、所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。
 2 防火管理者は、前項の消防計画に基づいて、当該防火対象物について消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わなければならない。
 3 防火管理者は、防火管理上必要な業務を行うときは、必要に応じて当該防火対象物の管理について権原を有する者の指示を求め、誠実にその職務を遂行しなければならない。
 4 防火管理者は、消防の用に供する設備、消防用水若しくは消火活動上必要な施設の点検及び整備又は火気の使用若しくは取扱いに関する監督を行うときは、火元責任者その他の防火管理の業務に従事する者に対し、必要な指示を与えなければならない。」

 となります。


 しかし、設問「消防用設備等について定期に点検を行い、その結果を消防長又は消防署長に報告すること」は、消防法第8条の2の2 
 「第八条の二の二 第八条第一項の防火対象物のうち火災の予防上必要があるものとして政令で定めるものの管理について権原を有する者は、総務省令で定めるところにより、定期に、防火対象物における火災の予防に関する専門的知識を有する者で総務省令で定める資格を有するもの(次項、次条第一項及び第三十六条第四項において「防火対象物点検資格者」という。)に、当該防火対象物における防火管理上必要な業務、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の設置及び維持その他火災の予防上必要な事項(次項、次条第一項及び第三十六条第四項において「点検対象事項」という。)がこの法律又はこの法律に基づく命令に規定する事項に関し総務省令で定める基準(次項、次条第一項及び第三十六条第四項において「点検基準」という。)に適合しているかどうかを点検させ、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。ただし、第十七条の三の三の規定による点検及び報告の対象となる事項については、この限りでない。
 2 前項の規定による点検(その管理について権原が分かれている防火対象物にあつては、当該防火対象物全体(次条第一項の規定による認定を受けた部分を除く。)についての前項の規定による点検)の結果、防火対象物点検資格者により点検対象事項が点検基準に適合していると認められた防火対象物には、総務省令で定めるところにより、点検を行つた日その他総務省令で定める事項を記載した表示を付することができる。
 3 何人も、防火対象物に、前項に規定する場合を除くほか同項の表示を付してはならず、又は同項の表示と紛らわしい表示を付してはならない。
 4 消防長又は消防署長は、防火対象物で第二項の規定によらないで同項の表示が付されているもの又は同項の表示と紛らわしい表示が付されているものについて、当該防火対象物の関係者で権原を有する者に対し、当該表示を除去し、又はこれに消印を付するべきことを命ずることができる。
 5 第一項の規定は、次条第一項の認定を受けた防火対象物については、適用しない。」

 とあり、
 消防法第8条の2の2 1項によれば、消防用設備等について定期に点検を行い、その結果を消防長又は消防署長に報告することは、管理について権原を有する者(管理権限者)であり、防火管理者ではないため、誤りです。

 なお、防火管理者には、甲種と乙種があり、収容人員や延べ面積により必要とされる資格が異なります。


 

 また、甲種防火管理者の消防署における講習は、2日ですが、乙種防火管理者なら、1日です。勿論、講習会は有料です。

  


2 防火対象物についての消防計画を作成すること。

〇 防火管理者の責務である。

 選択肢1で説明しました、消防法施行令第3条の2 1項
 「
防火管理者は、総務省令で定めるところにより、当該防火対象物についての防火管理に係る消防計画を作成し、所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。」
 とあり、
 防火対象物についての消防計画を作成することは、防火管理者の責務で、正しい。



3 消火、通報及び避難の訓練を実施すること。

〇 防火管理者の責務である。

 選択肢1で説明しました、消防法施行令第3条の2 2項
 「2 
防火管理者は、前項の消防計画に基づいて、当該防火対象物について消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わなければならない。」
 とあり、
 消火、通報及び避難の訓練を実施することは、防火管理者の責務で、正しい。



4 避難又は防火上必要な構造及び設備について維持管理を行うこと。

〇 防火管理者の責務である。


 選択肢1で説明しました、消防法施行令第3条の2 2項
 「2 
防火管理者は、前項の消防計画に基づいて、当該防火対象物について消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わなければならない。」
 とあり、
 避難又は防火上必要な構造及び設備について維持管理を行うことは、防火管理者の責務で、正しい。



答え:1 

 防火管理者の立場と責務を理解していれば、正解は早い。 

 ここも、詳細に解説したので、約3時間かかった。

 消防法 からの過去の出題については、マンション管理士 香川 が無料で提供しています、「目指せ! マンション管理士・管理業務主任者」 の過去問題 の解説の下の方に纏めていますから、これも利用して下さい。

《タグ》消防法 防火管理者の責務 消防計画 避難訓練 維持管理

問24

〔問 24〕 「共同住宅に係る防犯上の留意事項及び防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針について」(最終改正平成18 年4月 国住生第19号)によれば、マンションのA〜Cの場所において確保すべき照明設備の平均水平面照度に関し、適切なものの組合せは、1〜4のうちどれか。

[場所]
A 共用玄関内側の床面及び共用メールコーナーの床面
B 共用玄関以外の共用出入口床面
C 駐車場の床面及び自転車置場・オートバイ置場の床面


[確保すべき平均水平面照度の組合せ]
1 Aは概ね50ルクス以上、Bは概ね10 ルクス以上、Cは概ね3ルクス以上
2 Aは概ね40ルクス以上、Bは概ね20 ルクス以上、Cは概ね10 ルクス以上
3 Aは概ね50ルクス以上、Bは概ね20 ルクス以上、Cは概ね3ルクス以上
4 Aは概ね40ルクス以上、Bは概ね10 ルクス以上、Cは概ね3ルクス以上


 似たような出題は、平成29年 マンション管理士試験 「問24」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問24」 、平成24年 マンション管理士試験 「問24」 、 平成23年 マンション管理士試験 「問24」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問24」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問42」 

 「共同住宅に係る防犯上の留意事項及び防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針について」
  http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/press/h12/130323-3.htm
 によると、
 A.共用玄関内側の床面及び共用メールコーナーの床面の明るさは、
   まず、共用玄関内側の床面は、
  2 共用部分の設計
   (1) 共用出入口
     エ 共用出入口の照明設備
      
共用玄関の照明設備は、その内側の床面においては概ね50ルクス以上、その外側の床面においては、極端な明暗が生じないよう配慮しつつ、概ね20ルクス以上の平均水平面照度をそれぞれ確保することができるものとする。
      共用玄関以外の共用出入口の照明設備は、床面において概ね20ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする。
  とあり、共用玄関内側の床面なら、床面においては概ね50ルクス以上です。

 
  そして、共用メールコーナーの床面なら、
  (3)共用メールコーナー
    イ 共用メールコーナーの照明設備
     
共用メールコーナーの照明設備は、床面において概ね50ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする。
  とあり、こちらも、床面において概ね50ルクス以上です。

 B 共用玄関以外の共用出入口床面は、
  Aで引用しました、 
  「
共用玄関以外の共用出入口の照明設備は、床面において概ね20ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする
 とあり、
 共用玄関以外の共用出入口床面は、床面において概ね20ルクス以上です。

 C 駐車場の床面及び自転車置場・オートバイ置場の床面は、
  「(7) 自転車置場・オートバイ置場
     ウ 自転車置場・オートバイ置場の照明設備
       
自転車置場・オートバイ置場の照明設備は、極端な明暗が生じないよう配慮しつつ、床面において概ね3ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする。
  とあり、
  自転車置場・オートバイ置場の照明は、床面において概ね3ルクス以上です。

 これらにより、
 A の「共用玄関内側の床面と共用メールコーナーの床面」の照明は 概ね 50ルクス以上
 B の「共用玄関以外の共用出入口床面」の照明は、概ね 20ルクス以上
 C の「駐車場の床面及び自転車置場・オートバイ置場の床面」は、概ね3ルクス以上 
 となり、
 正解は 3 です。

 
 なお、「ルクス」は照らされた面の明るさの単位です。
 そして、「共同住宅に係る防犯上の留意事項 」の下にある、注意書きによると
 (注1)「人の顔、行動を明確に識別できる程度以上の照度」とは、10メートル先の人の顔、行動が明確に識別でき、誰であるか明確にわかる程度以上の照度をいい、平均水平面照度(床面又は地面における平均照度。以下同じ。)が概ね
50ルクス以上のものをいう。
 (注2)「人の顔、行動を識別できる程度以上の照度」とは、10メートル先の人の顔、行動が識別でき、誰であるかわかる程度以上の照度をいい、平均水平面照度が概ね
20ルクス以上のものをいう。
 (注3)「人の行動を視認できる程度以上の照度」とは、4メートル先の人の挙動、姿勢等が識別できる程度以上の照度をいい、平均水平面照度が概ね
3ルクス以上のものをいう。
 ともありますので、参考にしてください。


 

答え:3 (A=50ルクス B=20ルクス C=3ルクス)

 過去問題をやっていれば、答えは易しい。

 大体、20ルクスの、「人の顔、行動を識別できる程度以上の照度」とは、10メートル先の人の顔、行動が識別でき、誰であるかわかる程度以上の照度をいい、平均水平面照度が概ね20ルクス以上のものをいうを、記憶していれば、答えは早い。

《タグ》共同住宅に係る防犯上の留意事項及び防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針について 共用玄関内側の床面 共用メールコーナーの床面 共用玄関以外の共用出入口床面 駐車場の床面及び自転車置場・オートバイ置場の床面

問25

解説者 香川より;
 当解説においては、以降、「マンション標準管理規約(単棟型)」を、略して「標準管理規約」と言います。


〔問 25〕 住居専用の単棟型マンションの管理組合における管理費等の取扱いに関する次の記述のうち、標準管理規約によれば、適切なものはどれか。

1 建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査費用については管理費から支出することとされているが、各マンションの実態に応じて、修繕積立金から支出する旨を規約に定めることもできる。

X 適切でない。 建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査費用は、修繕積立金から取り崩す。 管理費からではない。

  平成28年 管理業務主任者試験 「問12」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問12」 

  まず、管理費からの支出は、標準管理規約27条
 「(管理費)
 第27条 管理費は、次の各号に掲げる通常の管理に要する経費に充当する。
   一 管理員人件費
   二 公租公課
   三 共用設備の保守維持費及び運転費
   四 備品費、通信費その他の事務費
   五 共用部分等に係る火災保険料、地震保険料その他の損害保険料
   六 経常的な補修費
   七 清掃費、消毒費及びごみ処理費
   八 委託業務費
   九 専門的知識を有する者の活用に要する費用
   十 管理組合の運営に要する費用
   十一 その他第32条に定める業務に要する費用(次条に規定する経費を 除く。)」
 とあり、
  建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査費用については管理費から支出しませんから、適切ではありません。

  建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査費用は、標準管理規約28条
 「(修繕積立金)
 第28条 管理組合は、各区分所有者が納入する修繕積立金を積み立てるも のとし、積み立てた修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する 経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。
   一 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
   二 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
   三 敷地及び共用部分等の変更
   
四 建物の建替え及びマンション敷地売却(以下「建替え等」という。) に係る合意形成に必要となる事項の調査
   五 その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理
  (以下、略)」
  とあり、
 標準管理規約28条1項5号に建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査費用は該当していますから修繕積立金から取り崩します。
 なお、設問は、標準管理規約28条、コメントG
 「G 建替え等に係る調査に必要な経費の支出は、各マンションの実態に応じて、管理費から支出する旨管理規約に規定することもできる。」
 との混同を狙ったものです。



2 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕及び不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕については修繕積立金を充当し、敷地及び共用部分等の変更については管理費を充当する。

X 適切でない。 これらはすべて、修繕積立金から取り崩す。

  平成24年 管理業務主任者試験 「問12」 

 修繕積立金からの取り崩しは、選択肢1で引用しました、標準管理規約28条
 「(修繕積立金)
 第28条 管理組合は、各区分所有者が納入する修繕積立金を積み立てるも のとし、積み立てた修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する 経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。
   
一 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
   
二 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
   三 敷地及び共用部分等の変更
   四 建物の建替え及びマンション敷地売却(以下「建替え等」という。) に係る合意形成に必要となる事項の調査
   
五 その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理
  (以下、略)」
  とあり、
 設問の「一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕」は、標準管理規約28条1項1号に該当しています。
 そして、「不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕」は、同じく標準管理規約28条1項2号に該当しています。
 また、「敷地及び共用部分等の変更」も、標準管理規約28条1項3号に該当していますから、
 これを、管理費から充当するは、適切ではありません。

 設問の事項は、すべて修繕積立金から取り崩します。



3 駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料は、管理組合の通常の管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる。

X 適切ではない。 駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料は、”それらの管理に要する費用”に充てるほか、修繕積立金として積み立てる。
  平成28年 マンション管理士試験 「問25」 、 平成27年 管理業務主任者試験 「問12」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問35」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問12」 、平成21年 マンション管理士試験 「問29」
 
 駐車場使用料などは、標準管理規約29条
 「(使用料)
 第29条 
駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料(以下「使用料」という。)は、それらの管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる。
 とあり、
 「それらの管理に要する費用に充てる」ため、「管理組合の通常の管理に要する費用に充てる(管理費)」ではありませんから、適切ではありません。

 なお、余剰金がでれば、修繕積立金として積み立てます。



4 管理費等の額については、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するものとし、使用頻度等は勘案しない。

〇 適切である。 使用頻度等を勘案していては、纏まらない。

 平成29年 管理業務主任者試験 「問12」 、 平成28年 マンション管理士試験 「問29」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問13」

 まず、管理費等(管理費や修繕積立金)は、標準管理規約25条
 {(管理費等)
 第25条  区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、次の費用(以下「管理費等」という。)を管理組合に納入しなければならない。
   一  管理費
   二  修繕積立金
 
2 管理費等の額については、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するものとする。
 とあり、
 標準管理規約25条2項によれば、「管理費等の額については、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出する」は、適切です。

 そして、コメント 第25条関係
 
「@ 管理費等の負担割合を定めるに当たっては、使用頻度等は勘案しない。
 とあり、
 設問は、全体で適切です。

 どうして、使用頻度等を勘案しないのか?
  例えば、エレベーターの使用頻度によって、1階の区分所有者の管理費の額を減額しますか?



答え:4 
 
 文章は混み入っているが、管理費と修繕積立金の意味を理解していれば、易しい。

 なお、標準管理規約は、条文の下にコメントを入れ、改正箇所が分かるようにした、 「マンション管理士 香川事務所」 が作成した、 「改正標準管理規約 (WORD版)」 もありますから、利用してください。

《タグ》標準管理規約(単棟型) 管理費 修繕積立金 使用料 使用頻度

ここまで、問25


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2019年 4月1日:見直した。最終考 とする。
解説 第1考済:2018年12月27日:
解説開始から、25問まで、1ヵ月もかかっている。本当に、解説は、大変な労力を使う!
解説開始:2018年11月27日

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