マンション生活での相談は、「マンション管理士 香川事務所」へ。

平成21年 マンション管理士 試験問題 及び 解説

ページ1(問1より問25まで)

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  謝辞:問題文の作成には、相川さま、松本さまの協力を得ています。

ご質問は、 「マンション管理士 香川事務所」へ。


*注: マンション標準管理規約(単棟型、団地型、複合用途型)は、平成28年3月に改正があり、当解説においては、未対応ですから、注意してください。
また、マンションの管理の適正化に関する指針も、平成28年3月に改正があり、当解説においては、未対応ですから、注意してください。

※ 出題当時以後の法令等の改正には、一部は対応していません。

*試験に臨んで、お節介なアドバイス
  1.設問にあわせて、問題用紙に ○(まる)、X(ばつ)をつける。
    殆どの設問が、「正しい」か「間違い」かを訊いてきますので、設問により、問題の頭に、○かXをつけます。
    そして、各選択肢を読み、○かXをつけます。
    問題の○なりXと、選択肢の○かXが一致したものを、マークシートに記入してください。

  2.疑問な問題は、飛ばす。
    回答の時間は限られています。
    そこで、回答として、○かXかはっきりしないものがでたら、「?」マークをつけて、次の問題に移ります。
    全部の回答が終わってから、再度戻って決定してください。

  3.複雑な問は、図を描く。
    甲、乙、A、B、Cなど対象が多い問題もでます。
    この場合、問題用紙の空いているところに、図を描いてください。
    重要な点が分かってきます。

※  マンション標準管理規約は、平成16年に改正があった。また、平成23年7月にも小幅な改正があった。
   マンション標準管理委託契約書は、平成15年に改正があった。また、平成22年5月にも改正があった。

問1

〔問 1〕 建物の敷地に関する次の記述のうち、建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)の規定によれば、誤っているものは、どれか。

1 一筆の土地に数棟の建物が存するときは、法律上当然に一筆の土地全体がそれぞれ各棟の建物の敷地となることはない。

X 誤っている。 「法律上当然」の用語は、平成20年では出題されていなかったが過去からよく出ている用語。この「法律上当然」とは、法文上に規定され、そのまま認められること。 平成24年 マンション管理士試験 「問1」 、 平成18年マンション管理士試験 「問1」平成17年マンション管理士試験 「問2」
  区分所有法における「建物の敷地」については、同法第2条(定義)5項によると、
  「5  この法律において「建物の敷地」とは、建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により建物の敷地とされた土地をいう。 」とあり、
  第5条1項は、
  「第五条  区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる。」です。
  第2条5項で規定される「建物が所在する土地」とは、一棟の区分所有建物がその土地の上にあることです。一筆の土地(土地は筆で数えられます)の一部に建物があれば、その土地全体が、建物の敷地となり、数筆の土地にまたがって建物があれば、その数筆の土地の全てが建物の敷地となります。また、一筆の土地の上に数棟の建物があれば、その1筆の土地全体が、各建物それぞれの敷地となります。これらの土地は、法文で定められた土地ですから、法律上当然に建物の敷地(「法定敷地」とも呼ばれます)となります。よって、選択肢1は誤りです。
  次に、第5条1項で規定される土地は、実際にはその上に建物がない場合ですが、管理や使用が法定敷地と一体となっていれば、規約によって、「建物の敷地」とし、法定敷地と同じように扱うことができます。これは、「規約敷地」ともよばれ、規約がなければ「建物の敷地」にはできません。

2 区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理する土地は、法律上当然に建物の敷地となることはない。

○ 正しい。 「区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理する土地」は、区分所有法第5条1項で規定される土地です。
   この土地は、選択肢1で説明したように、そのままでは建物の敷地となりません。規約がなければ、建物の敷地にはできませんから、法律上当然ではありません。区分所有法で「規約敷地」と呼ばれる土地です。

3 一棟の区分所有建物が所在する土地は、法律上当然に建物の敷地となる。

○ 正しい。 選択肢1で説明したように、「一棟の区分所有建物が所在する土地」は、区分所有法第2条5項の土地に該当しますから、法律上当然に建物の敷地となります。法定敷地です。

4 建物が所在する土地が一筆のうちの一部であっても、法律上当然に一筆全体が建物の敷地となる。

○ 正しい。 選択肢1で説明したように、「建物が所在する土地が一筆のうちの一部であっても」、区分所有法第2条5項の土地に該当しますから、法律上当然に建物の敷地となります。これも、法定敷地です。

答え:1  (区分所有法の解説については、別途の「超解説 区分所有法」 も参考にしてください。)

問2

〔問 2〕 区分所有法第3条に規定する区分所有者の団体(この問において「3条の団体」という。)に関するア〜エの記述のうち、区分所有法及び民法の規定並びに判例によれば、誤っているものの組合わせは次のうちどれか。

ア 3条の団体は、設立のための手続きを要することもなく、区分所有者全員のために法律上当然に認められる。

○ 正しい。 出題者が代わったのか? 通常は「区分所有者の団体」と云われるのを、「3条の団体」というとは。平成18年マンション管理士試験 「問2」も参照。
   区分所有法第3条の規定は(区分所有者の団体)
   「第三条  区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。 」です。
   この解釈としては、うしろに、「
できる」がありますが、前半の「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成」するで一応区切ることになっています。そこで、区分所有者(マンションのオーナー)になったら、法律上当然に否応なくこの団体に加入します。任意に団体ができる訳ではありません。そして、この団体は特に設立の手続を要さなくても成立します。

イ 3条の団体は、規約を設定しない場合であっても、法律の定めにより、集会を開くことができる。

○ 正しい。 選択肢1で引用しましたように、区分所有法第3条の規定では、「集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。」で、規約を定めたり管理者を置くことは任意(できる)ですから、規約がなくても、集会は開催できます。

ウ 3条の団体は、管理組合法人として成立しない限り、その名において区分所有者全員のため権利を取得し、義務を負うことはない。

X 誤っている。 ある団体(組織)が法人として登記すると、権利・義務関係がはっきりしますが、世の中には、法人となっていない団体が多く存在し、それらの団体について、権利・義務で争いが発生していますので、判例で「権利能力なき社団」という概念が生まれ、この概念に該当すると法人でなくても権利・義務の対象となります。この「権利能力なき社団」とは、@団体としての組織をそなえ、Aそこには多数決の原則が行われ、B構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、Cしかして、その組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していることです。(昭和39年:最高裁) 区分所有法第3条で定める団体(通常、管理組合と呼ばれます)もほぼこの「権利能力なき社団」に該当しますから、法人としなくても「その名において区分所有者全員のため権利を取得し、義務を負うこと」があります。

エ 3条の団体は、団体の代表者としての管理者を置かなければならない。

X 誤っている。 選択肢1で引用しましたように、区分所有法第3条では、管理者を置くことは任意(できる)となっています。置かないことも可能です。

1 アとイ
2 イとウ
3 ウとエ
4 エとア  

答え:3 (誤っているのは、ウとエ)

問3

〔問 3〕 区分所有法第8条の特定承継人の責任に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。 

1 共用部分の緊急点検のため、その費用を自己の名において負担した管理者は、それにより区分所有者に対して取得した債権について、特定承継人に対して請求することができる。

○ 正しい。 ここは、区分所有法第8条ではあるが、第8条に引用されている、第7条1項での先取特権によって担保される債権の内容をきいている。過去にも出題されている。似た例は、平成17年マンション管理士試験 「問6」が近い。平成20年マンション管理士試験 「問2」 もあり。
  特定承継人・包括(一般)承継人の区別は理解しておくこと。

  *特定承継人とは、売買や贈与など個々の原因に基づいて、権利を承継取得した人です。マンションを買った人や競売で落とした人も該当します。
  *包括(一般)承継人とは、相続などにより、区分所有者の権利・義務を一括して承継取得した人です。
 一般に、合意による取決めは、その合意の当事者及び相続人等の包括承継人のみを拘束するのが原則であり、売買による譲受人(買主)のような特定承継人を拘束しません。
 区分所有者間の合意による取決めである規約と集会の決議を単なる債権契約にすぎないものとすると、相続人のような包括承継人を拘束する効力はありますが、例えば売買等で区分所有権が譲渡された場合に、その契約は譲受人を拘束する効力がないため、未払の管理費などがある場合には、目的を十分に達することができなくなります。
 そのため、区分所有法では、区分所有者の特定承継人に対しても、規約設定時及び集会決議時での当事者と同視して、その効力を受けるものとしています。
 包括承継の場合は第7条の債務を当然に承継しますから、この第8条のような規定は必要ありませんが、特定承継の場合は承継された特定の財産に内在又は付着した物的・法律的な瑕疵や負担しか承継しないことが原則ですから、第8条がなければ前第7条の債務を特定承継人が承継することはありません。

  まず、区分所有法第8条の規定は、(特定承継人の責任)
 「第八条  
前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。 」とあり、前条1項は、(先取特権)
 「第七条  区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。 」とあり、
 @共用部分等につき、他の区分所有者に対する債権と、A規約・集会の決議に基づき他の区分所有者に対する債権 があげられている。これらの債権であれば、管理者・管理組合法人もその職務や業務で区分所有者に対して債権を持ちます。(第7条後半)
  そこで、管理者の職務として、共用部分等の保存が規定されており(区分所有法第26条1項参照)、また、管理者には民法の委任関係(区分所有法第28条、民法第649条参照)が準用されていますから、管理者が「共用部分の緊急点検のために、費用を負担した」場合には、職務を行うのに必要な費用の前払いとなり、この債権は区分所有者に請求でき、ひいては、特定承継人にも請求できます。

2 区分所有者は、規約で、規約に違反した他の区分所有者に対して違約金の支払いの請求ができるものと定められている債権について、特定承継人に対して請求することができる。

○ 正しい。 選択肢1で引用した区分所有法第7条1項での、A規約・集会の決議に基づき他の区分所有者に対する債権に該当する。

3 区分所有者は、区分所有法第3条の団体の目的と一致する範囲での規約又は集会の決議に基づく債権であれば、共用部分等に関するものに限られず、専有部分に関するものであっても、特定承継人に対して請求することができる。

○ 正しい? この設問は、かなり疑問がある。まず、規約や集会で専有部分に関する債権が決められるかということがある。そこで、出題者は、「区分所有法第3条の団体の目的と一致する範囲での規約又は集会の決議に基づく債権」と前置きを入れたようである。区分所有関係という特殊な共同管理では、発生した経費が専有部分に関するものでも、とりあえず請求できる債権とみなし、正しいとします。

4 管理者は、区分所有者との特約により管理者に報酬を支払うことが合意されている場合は、当該管理者が区分所有者に対して有する報酬請求に係る債権について、特定承継人に対して請求することができる。

X 誤っている。 管理者への報酬が先取特権の債権に含まれるか、どうかをきいている。しかも、よく読むと、平成17年マンション管理士試験 「問6」に出題された、管理組合(団体)でなく、(特定の?)区分所有者との特約となっている点に注意。この場合には、選択肢1で引用した、区分所有法第7条1項に規定される先取特権には該当せず、ひいては、特定承継人にも請求できません。支払関係は、管理者と区分所有者との特約の内容によります。管理者の報酬請求権は、「その職務又は業務を行うにつき区分所有者に対する債権」に該当しないと解する説による出題です。

答え:4 (かなり、曖昧な出題ではある。)

問4

〔問 4〕 次のア〜エの規約の定めについて、仮に規約に定めがなかったとしたらその効力が生じないものは、区分所有法の規定によれば、いくつあるか。

ア 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。

○ 規約がなければ、効力を生じない。 逆の出題が、平成22年 マンション管理士 試験 「問1」 選択肢4 ででた。
  区分所有法で明確に規定があるか、規約での別段の定めができるかをきいている。同じような設問が 本年の 「問8」 にもある。規約で別段の定めができる項目は、まとめておくこと。
  専有部分の使用方法を限定する規定は区分所有法にはありません。そこで、規約にできるのは、区分所有法第30条1項(規約事項)
 「第三十条  建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。 」とあります。
 そして、規約に定めることのできるのは、
  @管理組合の名称(法人では「管理組合法人」の名称は用いること)、業務、事務所の設置(法人では必須)
  A管理組合役員の資格、職務権限、理事会・監事の設置(理事・監事は法人にすると必須)、定数、任期(法人では原則2年、規約があれば3年以内)、選任方法
  B集会(総会)の成立要件
  C管理費等の額、徴収方法、会計区分、会計期間、会計処理、遅延損害金の付加、保管方法、諸費用の支払方法、収支予算の編成、収支報告
  
D専有部分の用途、管理・使用制限
  E共用部分、敷地、付属施設の用途、運営方法
  F専用使用部分の範囲、専用使用者の資格、決定方法、使用期間、対価の有無、専用使用料の額・徴収方と譲渡・転貸の可否
  G近隣および地方自治体などとの協定書の承継 
 となります。
  「専有部分を専ら住宅として使用する」の規定も、規約があれば、有効と考えられています。

イ 共用部分について、各区分所有者が負担する費用は、その共用部分の共有持分に応じて算出するものとする。

X 規約がなくても効力を生じる。 これは、区分所有法第19条(共用部分の負担及び利益収取)
 「第十九条  各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。 」とありますから、規約がなくても効力を生じます。この規定と異なった負担割合を決めるなら、規約が必要です。

ウ 一部共用部分については、区分所有者全員の共有に属するものとする。

○ 規約がなければ、効力を生じない。 これは、区分所有法第11条(共用部分の共有関係)
 「第十一条  共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。
ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する
   2  前項の規定は、
規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第二十七条第一項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。」とあります。
  原則として、一部共用部分を共有しているのは、その一部区分所有者達だけです。これを区分所有者全員の共有とするには、2項により規約が必要です。

エ 管理者は、共用部分の損害保険契約に基づく保険金額の請求及び受領について、区分所有者を代理する。

X 規約がなくても効力を生じる。 これは、区分所有法第26条2項
 「2  管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。」とありますから、規約がなくても効力が生じます。なお、保険金の受領でどうしてこのような、特別の規定が必要かは、どこかで勉強しておくこと。

1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ

答え:2 (規約で定めるもの二つ。アとウ)

問5

〔問 5〕 共用部分に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 ある者が所有する専有部分を規約により共用部分とした場合において、その旨の登記が遅れている間に当該所有者の債権者が当該部分を差し押さえても、その差し押さえは効力を生じない。

X 誤っている。 管理人室や集会室などは、内部的には皆が使う共用部分と認識していても、外部から見ると専有部分と見られる可能性があります。そこで、規約により共用部分と明確にすることができます。これは「規約共用部分」と呼ばれます。その理論の延長で、完全に個人所有の室(専有部分)であっても、規約で共用部分にできます。
その場合には、区分所有法第4条2項
 「2  第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。
この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。 」とあり、登記がないと第三者には対抗できないため、登記が遅れていれば、当該の債権者が差し押さえをすると、その差し押さえは有効になります。(実際には、マンションの分譲時から、規約があり、共用部分として登記されていれば権利関係もすっきりしますが、設問のような既に「ある者が所有する専有部分を規約により共用部分とする」過程においては、様々な問題がありますよ。)

2 共用部分の持分と専有部分とを分離して処分することができる旨を、規約で定めることはできない。

X 誤っている? ここの設問は曖昧です。出題として適切でないと、指摘したのに、平成22年 マンション管理士 試験 「問1」選択肢2 でも出た。
  共用部分の持分と専有部分の処分については、区分所有法第15条(共用部分の持分の処分)
 「第十五条  共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う。
   2  共有者は、
この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。 」とあり、区分所有法では原則として、専有部分と共用部分の持分は分離処分ができませんが、別段の定めが2つあります。
 その1番目は、規約によって他の区分所有者又は管理者を共用部分の所有者とする場合(区分所有法第11条2項、第27条1項参照)で、2番目は、規約の設定・変更によって共有持分の変更をする場合(同法第14条4項参照)です。
 1番目の場合には、実質的な処分とみなされないこともありますが、2番目の場合には、共有者の間で共用部分の持分の処分が規約により専有部分と分離してなされたことになります。

3 区分所有法上当然に共用部分とされる部分は、規約で定めれば、区分所有者及び管理者以外の者であっても所有することができる。

X 誤っている。 原則として、共用部分は区分所有者全員の共有ですが、区分所有法では規約があれば、特定の区分所有者(複数でも可)または管理者(複数でも可)に、共用部分(法律上当然に共用部分とされる法定共用部分と規約共用部分を含む)の所有を認めています。登記ができない共用部分に所有者がいるとは変な話ですが、これは「管理所有」と呼ばれています。この例外的な存在から、過去においてもよく出題されます。平成20年マンション管理士試験 「問5」など、また、今年の 「問9」 選択肢1 でも出ている。
 根拠は、区分所有法11条2項
 「第十一条  共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。
   2  前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
ただし、第二十七条第一項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。
 にあり、同法第27条1項 (管理所有)
 「第二十七条  
管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。 」とあります。
 これにより、共用部分は、規約で定めれば、@区分所有者 又は A管理者が所有できますが、それ以外の人は所有できません。

4 共用部分は、規約に別段の定めがない限り、各共有者は、その持分に応じてその負担に任じ、その持分に従って使用することができる。

X 誤っている。 共用部分の負担については、区分所有法第19条(共用部分の負担及び利益収取)
 「第十九条  各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。 」とあり、設問の前半は正しい。
 共用部分の使用については、区分所有法第13条(共用部分の使用)
 「第十三条  各共有者は、
共用部分をその用方に従つて使用することができる。」とあり、持分(大小)に関係なく使用できます。後半が誤っている。

答え:? (多分、答は、敷地利用権との混同を狙って、2 を想定しているのだろうが) 
マンション管理センターの正解:2

問6

〔問 6〕 マンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律第2条第1号イのマンションをいう。以下同じ。)の屋上部分の一部を携帯電話会社に電波基地局設置のために賃貸すること及びそれに伴う電波基地局設置工事(この問において「電波基地局設置」という。)並びに共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれれば、誤っているものは、どれか。

1 電波基地局設置について、管理者は、集会の決議を経て、民法第602条に定める期間を超えて賃貸借期間を10年とする契約を締結することができる。

○ 正しい? まず、「マンション」という法律用語は、区分所有法にはありません。そこで、設問では必ず、「マンション」の定義として、マンションの管理の適正化の推進に関する法律第2条第1号イでの規定を使用します。マンションの管理の適正化の推進に関する法律第2条第1号イは、(定義) 
 「第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
   一  
マンション 次に掲げるものをいう。
     イ 二以上の区分所有者(建物の区分所有等に関する法律 (昭和三十七年法律第六十九号。以下「区分所有法」という。)第二条第二項 に規定する区分所有者をいう。以下同じ。)が存する建物で人の居住の用に供する専有部分(区分所有法第二条第三項 に規定する専有部分をいう。以下同じ。)のあるもの並びにその敷地及び附属施設」です。
 要件としては、@2人以上の区分所有者 がいて、 A人の居住用の専有部分が1つでもあればいい となっています。

  この設問のキーは、マンションでは、民法第602条に定める短期賃貸借(建物の賃貸借期間は3年)を超える処分行為を、集会の決議(多数決)でできるのか、それとも、区分所有者全員の合意を必要とするのかです。いいかえますと、
区分所有法内で決着がつくのか、それとも、民法での共有関係の適用となるのかです。
 この設問は、問題があります。その訳は、この設問の基本となっているのは、札幌でのソフトバンク・モバイルとマンション住民の裁判です。
  平成20年5月30日の札幌地裁の判決では、民法第602条に定める短期賃貸借での建物の賃貸借契約期間が3年を超えると、民法の適用となり、全員の合意が必要となる(民法第251条)と判決しましたが、翌平成21年2月28日の札幌高裁では、1審の判決を棄却して、民法第602条はマンションの管理組合には適用がなく、普通決議事項として、賃貸借期間の10年を認めました。
  このような背景を元にすると、まだ区分所有法の適用か、民法の適用か、解釈での争いがある部分での出題は、適切ではありません。なお、私は、高裁の判決を支持しますが。

2 電波基地局設置が共用部分の変更に当たるかどうかは、その形状又は効用の著しい変更を伴うか否かを基準として判断され、費用の多寡は考慮されない。

○ 正しい。 共用部分の変更となると単純に区分所有法第17条(共用部分の変更)
 「第十七条  共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
   2  前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。」とあります。
 平成14年の改正前には、「著しく多額の費用」の表現がありましたが、何と比較して「著しく多額の費用」かはっきりしませんでした。
そこで、平成14年の改正では「多額の費用」の言葉を外し、「形状または効用の著しい変更」にしました。なお、 「その形状又は効用の著しい
変更を伴うもの」は、重大変更とよばれ、 「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」は軽微な変更と呼ばれます。そこで、大規模修繕は、多額の費用がかかっても、普通決議でできます。

3 電波基地局設置が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときに必要な承諾は、当該専有部分が賃貸されている場合は、賃借人から得なければならない。

X 誤っている。 共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときには、選択肢2で引用しました、区分所有法第17条2項
 「2  前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その
専有部分の所有者の承諾を得なければならない。」とありますから、この場合には、賃貸されていても専有部分の所有者=区分所有者の承諾が必要です。賃借人の承諾ではありません。

4 電波基地局設置が共用部分の変更に該当する場合の集会における決議要件については、規約によって、区分所有者の定数を2/3とすることができる。

○ 正しい。 区分所有法第17条からの出題も多い。 平成23年 管理業務主任者試験 「問35」 、 平成18年 管理業務主任者試験 「問32」 肢1 など。
  共用部分の変更(重大変更)なら、選択肢2で引用しました、区分所有法第17条1項 
 「第十七条  共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。
ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。」とあり、原則として、「区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決します」が、この場合、規約があれば、区分所有者の定数だけ、過半数まで減らせます。そこで、区分所有者の定数を2/3(66.6%)とすることは、過半数(1/2超=50%超)までの範囲にありますから、可能です。

答え:3 (選択肢1の出題は、いきなり民法第602条とだしたり、まだ判決が未確定であるので適切でないが。)
 マンション管理センターの正解:3
 (2014年 8月 3日追記:その後、この札幌の事件は、最高裁までに行きましたが、最高裁が受理せず、札幌高裁での判決が確定しています。)
 *この出題では、具体的には、電波基地局設置工事が、共用部分のその形状又は効用の著しい変更を伴うか否かには触れていませんが、工事内容の検討は必要です。
 また、管理組合が電波基地局設置に伴い建物賃貸借契約を結び、対価を得えると、、収益事業(不動産貸付業)に該当し、その収益事業から生じた所得に対して、法人化されていない区分所有者の団体(管理組合)に対しても法人税が課されることになります。

問7

*注:標準管理規約は平成28年3月に改正があったので注意の事。
    該当の条文は、必ず改正された標準管理規約で確認のこと。

〔問 7〕
 「敷地及び建物の使用については、別に使用細則を定めるものとする。」との定めがある場合の規約と使用細則に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 一部共用部分の各共有者の負担割合については、区分所有者及び議決権の各過半数の集会の決議で使用細則に定めることは、許される。

X 誤っている。 使用細則についての出題は新しい。
  区分所有法には使用細則についての規定はないのですが、たとえば、マンションに駐車場があれば、その使用について特定の区分所有者に専用使用権を認め、その使用者の選定方法や使用料等を使用細則で定めることがあります。規約以外の取り決めです。そこで、規約で決めておかなければならない事項と、使用細則で定めることができる事項が問題となります。その判断の基準としては、区分所有法で@個別的に規約によってのみ定めることを認めている(絶対的規約事項)か、A規約で定めても認められる区分所有者相互間の一般的な事項(相対的規約事項)かになります。Aに該当すれば、使用細則での定めも許されると解されます。
  これを元に、設問を検討しますと、「一部共用部分の各共有者の負担割合」は、区分所有法第19条(共用部分の負担及び利益収取)
 「第十九条  各共有者は、
規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。 」とあり、この規定は一部共用部分の各共有者においても適用されますが、絶対的規約事項と解され、別段の定めは、規約でなければ規定できません。使用細則で定めることは、許されません。

2 使用細則の設定、変更又は廃止は、議決権総数の半数以上を有する区分所有者が出席した集会において出席区分所有者の議決権の過半数で決する旨を規約に定めることは、許される。

○ 正しい。 使用細則に規定される内容は、区分所有者相互間の一般的な事項に限られますから、設定、変更又は廃止は区分所有法での普通決議で可能と考えられます。すると、区分所有法第39条1項(議事)
 「第三十九条  集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。」とあります。
 この規定にあります、普通決議の場合、例えば、標準管理規約(単棟型)47条1項、2項(総会の会議及び議事)
 「第47条 総会の会議は、前条 第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。
   2 総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。 」に見られるように、
 規約での別段の定めも可能ですから、使用細則の設定、変更又は廃止は、議決権総数の半数以上を有する区分所有者が出席した集会において出席区分所有者の議決権の過半数で決する旨を規約に定めることは、許されます。

3 区分所有者が専有部分の修繕に係る共用部分の工事を行うことができる旨を規約で定め、その具体的な手続きや当該区分所有者が遵守すべき事項等について使用細則で定めることは、許される。

○ 正しい。 区分所有者相互間の一般的な事項(相対的規約事項)の例の1つと考えられます。許されます。

4 使用細則の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議によってする旨を規約に定めることは、許される。

○ 正しい。 選択肢2で説明しました議決方法よりも、規約の設定、変更又は廃止と同じような厳しい要件ですが、これも許されます。
 参照:区分所有法第31条1項(規約の設定、変更及び廃止)
 「第三十一条  規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。 」

答え:1

問8

〔問 8〕 規約の定めとして有効であるとされるものは、区分所有法の規定によれば、次のうちどれか。

1 規約の保管者について、管理者が他に指定することができると定めること。

X 無効である。 区分所有法で規約により別段の定めができると規定があるかどうかをきいている。このように、「別段の定め」については、出題傾向が高いので、チャントまとめておくこと。
 規約の保管者については、区分所有法第33条1項(規約の保管及び閲覧)
 「第三十三条  規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない。」とあり、
 管理者がいる時には、管理者が保管します。管理者がいないときにだけ、集会や規約で保管者を定めます。無効です。

2 集会における、毎年一回一定の時期に行う事務に関する報告について、管理者以外の区分所有者に行わせることができると定めること。

X 無効である。 管理者の事務の報告については、区分所有法第43条(事務の報告)
 「第四十三条  管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。 」とあり、
 管理者の義務としています。他の区分所有者での代行を認めていません。無効です。



3 管理者の選任について、集会の決議によらず、区分所有者の輪番制によるものと定めること。

○ 有効である。 管理者の選任については、区分所有法第25条1項(選任及び解任)
 「第二十五条  区分所有者は、
規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。」とあります。
 規約で管理者を区分所有者の輪番制で選任することができます。 有効です。(実際に、多くのマンションの管理組合で、管理者(具体的には理事長や役員等)を輪番制で選任する方法は採用されています。)

4 書面で作成された集会の議事録について、集会に出席した区分所有者二人の署名押印は省略することができると定めること。

X 無効である。 集会の議事録は、大変に重要な書類です。そこで、区分所有法第42条3項
 「3  前項の場合において、議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名押印しなければならない。 」とあり、
 議長と出席した区分所有者の署名押印は必要です。規約で省略できません。無効です。

答え:3 (易しい問題? 「問4」と似たような出題だ。)

問9

〔問 9〕 管理者と集会の決議に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。

1 管理者は、集会の決議によれば、区分所有者全員のために共用部分である倉庫を所有し、管理することができる。

X 誤っている。 集会の決議でできるのか、それとも必ず規約での定めが必要かをきいている。
  また、問5の選択肢3と同じ「
管理所有」からの出題だ。
  管理者と管理所有については、区分所有法第27条(管理所有)
 「第二十七条  
管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる
  2  第六条第二項及び第二十条の規定は、前項の場合に準用する。」とありますから、管理者も共用部分(法定共用部分と規約共用部分を含み)である倉庫を所有し管理できますが、それは規約で定めがなければなりません。集会の決議だけでは、できません。

2 管理者は、集会の決議により、その職務に関し原告又は被告となったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。

X 誤っている。 管理者の権限として、区分所有法第26条4項、及び5項
 「4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
  5  管理者は、前項の
規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。」とあります。
 管理者は、その職務に関し、事前に規約で定めてある場合または、問題が発生した時に開催される集会の決議により、原告又は被告となります。集会の決議によって、原告・被告となった場合には、各区分所有者はその内容を知っていますが、規約による場合にはいつ原告・被告になったかが分かりませんから、同条5項で規約で原告・被告になった時には、区分所有者に通知が求められています。集会の決議の時には、通知はいりません。

3 管理者は、共用部分である階段の補修工事に伴い生じた瑕疵について、当該工事請負業者に対して損害賠償を請求する場合は、集会の決議によらなければならない。

X 誤っている。 これは、管理者が単独でできるのか、それとも、別途、集会の決議が必要かをきいています。
 管理者の職務権限については、区分所有法第26条(権限)
 「第二十六条  管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
   2  管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに
共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。」とあります。
 共用部分である階段の補修工事に伴い生じた瑕疵での損害賠償を請求する場合には、同条2項により、管理者の職務として、区分所有者を代理していますから、集会の決議が無くても、単独で請求できます。なお、「共用部分の保存」とは、共用部分の滅失・毀損を防ぐ、現状維持程度の行為、または、緊急を要する場合です。

4 管理者は、集会の決議によらなくとも、共用部分である管理事務室の破損個所の小修繕の契約をし、その費用の支払をすることができる。

○ 正しい。 共用部分である管理事務室の破損個所の小修繕は、選択肢3で引用しました、区分所有法第26条1項で規定される、 「共用部分の保存」に該当しますから、集会の決議がなくても、管理者が単独でできます。

答え:4 (選択肢1の管理所有など、同じ条文からの、重なった出題が多いようだ。)

問10

〔問 10〕 管理者が共同利益背反行為を行った専有部分の占有者に係るA〜Dの訴訟と訴訟の相手方となるべき者(ア、イ)に係る次の組合せのうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。

A 不法占拠者たる占有者が占有する専有部分の引渡し

*相手方は、イ:(不法占拠者)占有者だけである。
  まず、マンションでは、共同生活の場であるという特殊な環境から、区分所有者に共同の利益に反する行為をしてはならないと定めています。(区分所有法第6条1項参照) そして、この規定は、占有者にも準用されています。(同法第6条3項)
 この共同の利益に反する行為は、「共同利益背反行為」ともよばれ、義務違反者に対しては、@差止め(区分所有法第57条)、A使用禁止(同法第58条)、B競売(同法第59条)、C占有者に対する引渡し(同法第60条) の請求が認められています。
  設問として、不法占拠者の専有部分の明渡しを、管理者ができるかという問題もありますが、ここは、共同利益背反行為といっているので、区分所有法第60条1項(占有者に対する引渡し請求)
 「第六十条  第五十七条第四項に規定する場合において、第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、
当該行為に係る占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求することができる。 」とあります。
 占有者が正式な賃貸借契約による場合は、裁判において、引渡しは、その契約の解除も必要となるため、相手となる当事者は、占有者(賃借人)と区分所有者(貸主)になりますが、不法占拠では、元々の賃貸借契約などが存在しませんから、相手としては、占有者(不法占拠者)だけとなります。

B 不法占拠者たる占有者に対する共同利益背反行為の結果の除去

*相手方は、イ:(不法占拠者)占有者だけである。
  この場合は、区分所有法第57条1項(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
 「第五十七条  区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、
その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。」とあり、この規定は、占有者にも準用されます(同法同条3項参照)から、この相手方は、その行為を行っている、不法占拠者だけとなります。

C 賃借人たる占有者が占有する専有部分の使用を目的とする契約の解除

*相手方は、ア:占有者と専用部分の区分所有者となる
  契約の解除となると、Aで説明しましたように、区分所有法第60条の規定によりますが、この場合、借主の占有者と貸主である区分所有者の双方を共同被告とする必要があります。

D 賃借人たる占有者に対する共同利益背反行為の予防

*相手方は、イ:占有者だけである。
  賃借人たる占有者に対する共同利益背反行為の予防は、Bで説明しました、区分所有法第57条に該当し、相手は占有者だけとなります。

ア 占有者及び専有部分の所有者
イ 占有者

1 Aとア
2 Bとイ
3 Cとア
4 Dとイ 

答え:1 (誤っているのは、Aの相手は、占有者(不法占拠者)だけ。専有部分の区分所有者は該当しない。義務違反者を訴訟当事者からの出題とは、新しい。)

問11

〔問 11〕 区分所有法第65条の団地建物所有者の団体(この問において、「団地管理組合」という。)に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。

1 団地管理組合における団地共用部分の各共有者の持分は、その有する建物又は専有部分の床面積の割合による。

○ 正しい。 団地関係も、1棟の条文の準用と読み替えが多くて分かり難いが、必ず出題されるので、整理しておくこと。
   団地共用部分の各共有者の持分は、区分所有法第67条3項
 「3  第十一条第一項本文及び第三項並びに第十三条から第十五条までの規定は、団地共用部分に準用する。この場合において、第十一条第一項本文中「区分所有者」とあるのは「第六十五条に規定する団地建物所有者」と、
第十四条第一項及び第十五条中「専有部分」とあるのは「建物又は専有部分」と読み替えるものとする。 」とある。 
 そして、準用される同法第14条1項(共用部分の持分の割合)
 「第十四条  各共有者の持分は、その有する
専有部分の床面積の割合による。」とあり、読み替えられて、原則 、「その有する建物又は専有部分の床面積の割合による。」正しい。

2 団地管理組合の集会における議決権については、団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)の持分割合による。

○ 正しい。 今度は、議決権である。 これは、区分所有法第66条中に、議決権に関する同法第38条が読み替えられて準用されています。
 区分所有法第66条の該当部分を抜き出しますと、(建物の区分所有に関する規定の準用)
 第六十六条 ・・・第二十九条第一項、
第三十八条、第五十三条第一項及び第五十六条中「第十四条に定める」とあるのは「土地等(これらに関する権利を含む。)の持分の」と、・・・と読み替えるものとする。 」とあり、同法第38条(議決権)
「第三十八条  各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による。」は、 「各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、土地等(これらに関する権利を含む。)の持分の割合による。」となります。 正しい。

3 団地管理組合の集会においては、区分所有法第57条の共同の利益に反する行為の停止等の訴訟を提起するための決議をすることができない。

○ 正しい。 これは、よく出る問題。 平成18年マンション管理士試験 「問11」選択肢3 など。
  団地関係を規定する区分所有法第66条では、同法第57条が準用されていません。その訳は、義務違反者の事情は、同じ棟の区分所有者たちがよく知っているという発想です。

4 団地管理組合においては、区分所有権を有する者以外のものがその構成員となることはない。 

X 誤っている。 団地の一括建替えなどを中心に考えると、ここも○となるが、区分所有法第65条(団地建物所有者の団体)
 「第六十五条  一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)がそれらの建物の所有者(専有部分のある建物にあつては、区分所有者)の共有に属する場合には、それらの所有者(以下「団地建物所有者」という。)は、全員で、その団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。 」とある。
 この規定での団地とは、区分所有建物以外の戸建などを含んでも可能です。そこで、この団体(団地管理組合)の構成員には、区分所有権者以外の戸建の所有者なども入ることがあります。

答え:4 (あわてて、2 としないように。)

問12

〔問 12〕 甲マンションでは、管理組合(区分所有法第3条に規定する区分所有者の団体をいう。以下同じ。)の集会で、共同で新たなインターネット通信設備を設置することが決議され、設備設置会社Aが当該設備の設置工事を行った。これに伴い、区分所有者B〜D又は区分所有者の子EとAとの間に生じた紛争に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Bが従前のインターネット通信設備に対する機器を買い換えた直後に当該設置工事が行われ、その費用が無駄になってしまった場合、AB間で当該機器の買取りについての契約がなかったとしても、Bは、Aに対し、その買取りを請求することができる。

X 誤っている。 まったく設問に驚いてしまった。このような、常識的な出題だと、理由を探す方が難しい。
  逆に、購入者Bが、設備設置会社Aに買取り請求ができるという状況、かなり無理をして、不法行為(民法第709条)が適用されるかを検討してみましょう。(不法行為による損害賠償)
 「第七百九条  
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 」とあり、不法行為が成立するには、故意(損害の発生を知っていながらあえて行う)又は過失(注意義務違反)が必要ですが、設備設置会社Aは区分所有者Bが事前に購入した機器についてまでは責任を持たないと解すべきでしょう。

2 当該設置工事に伴う部屋の配線工事の際にAの過失によりCのパソコンの印刷機が全損したため、CがAに対し損害賠償を請求する場合、当該印刷機の全損時の価値分についての損害賠償の請求だけでなく、当該賠償額に対する遅延損害金も請求することができる。

○ 正しい。 この設問なら、素直に答えられる。 設備設置会社Aの過失であれば、選択肢1で引用した民法第709条に該当し、被害者Cは損害賠償を請求でき、損害賠償は、民法第722条(損害賠償の方法及び過失相殺)
 「第七百二十二条  第四百十七条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
  2  被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。 」とあり、準用される、民法第417条(損害賠償の方法)
 「第四百十七条  
損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。 」により金銭債務となり、民法第419条1項(金銭債務の特則)
 「第四百十九条  金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率(*注:5分 年)によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。 」により、遅延損害金も請求できます。

3 当該設置工事の際にAの過失によりDがベランダに設置していたエアコンの室外機に傷をつけられた場合、Dは、当該傷を発見してから1年以内であれば、Aに対し、当該傷の修補請求をすることができる。

X 誤っている。 設備設置会社Aの過失による不法行為の場合の消滅時効は、民法第724条(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
 「第七百二十四条  
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。 」とあり、
 被害者Dはその損害を知ってから3年の間行使できます。1年以内ではありません。 また、賠償の方法は、債務不履行と同様に考えられ、金銭賠償を原則とします。傷の修補請求は原則できないようです(2010年2月14日:訂正)(注:売主の瑕疵担保責任なら、損害賠償の請求は知ってから1年以内にしないとだめです。民法第566条参照)

4 当該設置工事に伴う部屋の配線工事の際にAが過失により幼児Eに怪我を負わせたため、Eが損害賠償を請求する場合、Eの親に監督上の過失があったときでも、その過失を理由に過失相殺により賠償額を減額することはできない。

X 誤っている。 今度は、被害者側にも親としての監督上の過失があれば、民法第722条2項
 「2  
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」とあり、
 これは過失相殺とよばれ、これに該当すれば、賠償額は減額されることもあります。

答え:2 (あわてて、3 としないように。一読すると、「問6」のミスプリントかとも思う。)

問13

〔問 13〕 管理組合に対し、区分所有者Aが管理費を滞納している場合の消滅時効の中断に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 Aが滞納管理費の支払の猶予を申し出た場合、そのことによる時効中断は、Aの相続人にも効力が及ぶ。

○ 正しい。 時効の中断はよく出題されるので、整理しておくこと。
  時効の中断とは、時効期間の進行を中断させ、中断があれば、すでに進行した時効期間はまったく効力がなくなり、時効中断事由が終わったときから、新しく時効期間が起算されます。そして、民法第147条(時効の中断事由)
 「第百四十七条  時効は、次に掲げる事由によって中断する。
   一  請求
   二  差押え、仮差押え又は仮処分
   三  
承認 」 とあります。
  3号の承認とは、時効によって利益を受ける者が、権利の存在を認める行為です。例えば、承認書への記入・押印の他、利息の支払、元金の一部支払、債務者が「少し待ってくれ」という「猶予」の申し出をしたとき、元金の減額交渉をしたときなどです。管理費の滞納者Aが、滞納管理費の支払いについて、「猶予」を申し出る行為は滞納を認めているため「承認」(2010年2月14日:訂正)に該当します。すると、時効は中断します。そして、その時効中断の効力は、民法第148条(時効の中断の効力が及ぶ者の範囲)
 「第百四十八条  前条の規定による時効の中断は、その中断の事由が生じた
当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。」とあり、承継人とは相続などの包括承継人と売買などの特定承継人を指しますから、当事者であるAとその相続人にも、効力は及びます。

2 管理者がAを被告として滞納管理費の支払を求めて訴訟を提起したが、その請求が棄却された場合、時効は中断しない。

○ 正しい。 管理者が滞納者Aを被告として滞納管理費の支払を求めて訴訟を起こすことは、民法での裁判上の請求となります。すると、民法第149条(裁判上の請求)
 「第百四十九条  
裁判上の請求は、訴えの却下又は取下げの場合には、時効の中断の効力を生じない。 」とあります。
 これにより、その請求が棄却された場合には、時効は中断しません。

3 管理者がAを被告として滞納管理費の支払を求めて訴訟を提起した後に、管理者とAの間で裁判上の和解が成立した場合、その和解の申入れをした時から、時効が新たに進行する。

X 誤っている(1)? 和解の場合には、民法第151条(和解及び調停の申立て)
 「第百五十一条  
和解の申立て又は民事調停法 (昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事審判法 (昭和二十二年法律第百五十二号)による調停の申立ては、相手方が出頭せず、又は和解若しくは調停が調わないときは、一箇月以内に訴えを提起しなければ、時効の中断の効力を生じない。」とあります。
 和解の場合には、申し立てて、なお、相手を呼び出してもらうこと、相手方が出頭し、弁論をすることで終了し、その翌日から新しい時効が進行すると解されます。申し入れをしたときからではありません。

 (2010年11月9日:その後も、このあやふやな出題を調べていたら、和解が成立したら、それは、和解の申し立てをした時に、時効の中断があったものと解される(大審院:昭和4年6月22日があるとのこと。ここを誤っているとするのは、実に不適当な設問だ)。

X 誤っている(2)? ここは、上の、民法第151条の和解の申し立ての場合でなく、「裁判上の和解」の成立と考えて、単純に、民法第157条2項(中断後の時効の進行)
 「第百五十七条  中断した時効は、その中断の事由が終了した時から、新たにその進行を始める。
  2  
裁判上の請求によって中断した時効は、裁判が確定した時から、新たにその進行を始める。」とあり、
   裁判上の和解では、その和解が成立した時(裁判が確定した時)から、新たに進行する、がいいかも。申し入れをしたときからではありません。(2010年2月14日:加筆。しかし、これは、かなり強引な解釈ですが。参考:民事訴訟法第267条
 「(和解調書等の効力)
  第二百六十七条  和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。」 )

4 管理者がAに対して申し立てていた滞納管理費の支払を求める民事調停法による調停が成立したときは、当該調停を申し立てた時に時効中断の効力が生じる。

○ 正しい? 調停と和解では、扱いが違うのか?
  選択肢3で引用しました、民法第151条では、和解も調停も同じ解釈が可能です。が、設問にする以上なにかあるのでしょう。そこで、何かあるのかと調べました。でも、図書館で民法や民事調停法のテキストを時間をかけて読みあさりましたが、なかなか、選択肢3の和解と調停の時効中断の差に触れている教科書はありません。やっと、平成5年3月26日の最高裁の判決が出てきました。それによると、「
調停の申立てがされた平成元年二月二二日に、消滅時効が中断したものというべきである」という判決文がありました。ここらが、根拠のようです。調停を申し立てた時に時効中断の効力を生じます。

答え:3?  (難しい! 民法第151条は改正もありで、調べるのに時間がかっかた。)

マンション管理センターの正解:3

問14

〔問 14〕 甲マンションの201号室の区分所有者Aは、Bに同室を賃貸していたが、管理費を10万円滞納したまま死亡した。Aの相続人である子C及びD(相続分は各1/2)は、遺産分割の仕方についてもめており、遺産分割手続が行われないままAの死亡後5ヵ月を経過した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。ただし、C及びDはいずれも、当該相続の放棄及び限定承認をしなかったものとする。

1 遺産分割前であっても、C及びDは、滞納管理費10万円の各1/2について支払義務を負う。

○ 正しい。 相続と絡めた出題もよくある。ここは、平成19年マンション管理士試験 「問17」平成17年マンション管理士試験 「問18」などで出ている。
  まず、相続でもめていて、相続の放棄も限定承認をしないと、民法第915条1項(相続の承認又は放棄をすべき期間)
 「第九百十五条  相続人は、自己のために
相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。 」とあり、相続の開始を知ってから3カ月以内に、単純・限定・放棄をしなければいけません。この期間内に何もしないと、民法第921条2号(法定単純承認)
 「第九百二十一条  次に掲げる場合には、
相続人は、単純承認をしたものとみなす
  二  相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。 」となり、設問ではAの死亡後、5カ月を過ぎていますから単純承認をしたとみなされます。すると、子供C・Dは、死亡した親の財産に属していた一切の権利義務を承継します。(民法第896条(相続の一般的効力)
 「第八百九十六条  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。 」
 そして、遺産分割がされていないと、法定相続分として、C・Dが各1/2を有するなら、滞納管理費は分割できる金銭債務(可分債務)として、相続の時に、当然に分割されると解されています(最高裁:昭和29年4月8日)から、C及びDは各々1/2の支払義務を負います。(注:共同相続は、民法での、共有関係に似ているのでいろいろと争いがあります。)

  参考:可分債務・可分債権:民法第427条
 「(分割債権及び分割債務)
  第四百二十七条  数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、
それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。」
 ここは、重要ですので、追記します。金銭債権や金銭債務が相続された場合にも、当然に分割債権関係となる、というのが判例です。
 例えば、200万円の預金をしている人が死んで、相続人が2人いる場合には、各相続人は、100万円ずつ、銀行に預金の払戻を請求できます。それは、逆に200万円の借金をしている人が死んだ場合も同じで、2人の相続人は、それぞれ100万円ずつ返済すれば足りるということです。

2 遺産分割前には、Bに対する賃貸人が誰になるかが決まらないので、C及びDは、それぞれ単独で賃料の各1/2を請求することができない。

X 誤っている。 選択肢1で説明したように、相続人は、相続分についての権利はもっているので、賃料の全額は請求できないが、各1/2についての請求はできる。参照:民法第427条(分割債権及び分割債務)
 「第四百二十七条  数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは
、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。」
 (参考:最高裁:平成17年9月8日:遺産は,相続人が数人あるときは,相続開始から遺産分割までの間,共同相続人の共有に属するものであるから,この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は,遺産とは別個の財産というべきであって,
各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は,相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。)

3 Bは、自らに対する賃料の債権者が誰になるかについて利害関係を有しないので、家庭裁判所に遺産分割の請求をすることができない。

○ 正しい。 遺産分割がはっきりしないときには、いつまでも権利・義務の関係が定まらないため、民法第907条(遺産の分割の協議又は審判等)
 「第九百七条  共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
  2  遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、
各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる
  3  前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。 」とあり、2項で家庭裁判所に遺産分割請求のできるのは、原則共同相続人ですが、利害関係人も参加できると解されています。
 参照:民法第260条1項:(共有物の分割への参加)
  「第二百六十条  
共有物について権利を有する者及び各共有者の債権者は、自己の費用で、分割に参加することができる。」
 その利害関係人の範囲ですが、相続では、受遺者、相続分の譲受人、遺言執行者、相続人の債権者と考えられています。賃借人Bは、通常利害関係がないと解されます。

4 遺産分割前であっても、管理組合の管理者は、C又はDのいずれに対しても、Aの死亡後遺産分割までの間に発生した管理費の全額を請求することができる。

○ 正しい? 設問に注意。 「死亡後遺産分割までの間に発生した管理費の全額」となっており、選択肢1での場合とは異なっています。
 相続した債務は、相続した共同相続人に合有的(処分は、共同の目的が終わるまで制約をうける)に帰属していると解されています。そこで、相続債権者(区分所有者を代理する管理者)は、共同相続人の全員を相手にして、相続財産に執行でき、各共同相続人の割合による負担部分には拘束されないという考え方があります。これによれば、可能です。 (だけど、このような場合、死亡前の債務と、死亡後の債務で分ける必要があるのだろうか?)(参照:民法第430条、同第432条)

答え:2 (難しい! ここの解説も時間がかかる! それは、相続と共有の絡みがあって、テキストのあちらこちらを探さないとならないからです。)


*2017年 4月9日 追記:
 注:平成28年12月19日の最高裁判所の判決で、
 共同相続の場合、今までは、被相続人が死亡すれば、その遺産である預貯金は可分債権として”当然”に、他の相続人の同意がなくても、各相続人は単独で、その相続分に応じて預貯金の引き出し(払い戻し)ができていたのを変更し、預貯金を遺産分割の対象にして、各相続人が単独では、預貯金の引き出しができなくしました。

 詳細は、
 http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86354

 にありますので、今後の受験生は、注意してください。

問15

〔問 15〕 建設業者Aが建築した甲マンションの1室を買ったBが、共用部分であるエレベーターの瑕疵により負傷事故にあった場合における次の記述のうち、民法及び区分所有法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

1 Bから区分所有者全員に対して設置の瑕疵を理由に損害賠償請求があった場合、区分所有者全員は、当該瑕疵の原因がAの施工上の故意に起因することを証明したときは、Bに対する損害賠償義務を免れることができる。

X 誤っている。 マンションでの共用部分であるエレベーターの瑕疵による事故なら、区分所有法第9条(建物の設置又は保存の瑕疵に関する推定)
 「第九条  建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと
推定する。」とあります。
 この条文には、「推定する」とありますから、通常、反証として、他の原因であることを証明すれば、責任を負いません。しかし、区分所有法第9条での証明は、そのマンション内の特定の専有部分に起因する場合であれば、その専有部分の区分所有者に責任を転嫁できますが、
共用部分に起因する場合には、区分所有者全員が責任を負うと解されています。そこで、共用部分であるエレベーターでの事故を負ったBに対する責任は、区分所有者全員が負います。なお、区分所有者全員は、当該瑕疵の原因がAの施工上の故意によりますから、建設業者Aに対して求償できます。参考:民法第717条1項(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
 「第七百十七条  土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」

2 当該事故が共用部分から発生したものなので、甲マンション管理組合の管理者は、管理者の職務として、Bを代理し当該事故の損害賠償を請求することができる。

X 誤っている。 問題文をサラッーと読まない事。 「Bを代理し」となっている引っかけ的な設問に注意!
  管理者の職務権限は、区分所有法第26条1項、及び2項(権限)
 「第二十六条  管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
   2  
管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。」とありますが、この管理者の職務には、負傷者個人の代理権限は当然には含まれていません。管理者がBを代理するなら、別途、Bからの代理権付与が必要です。

3 当該瑕疵がAの被用者の過失によるものである場合においては、区分所有者全員がBに当該瑕疵の損害賠償金を支払ったときでも、区分所有者全員は、Aに対しては求償することができない。

X 誤っている。 使用者責任もよく出題される。
  建設業者Aの被用者の過失となると、建設業者Aは使用者となり民法第715条(使用者等の責任)
 「第七百十五条  
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
  2  使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
  3  前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。」により、責任を負います。そこで、区分所有者全員は、建設業者Aに対して、損害賠償金請求が可能です。(これは、選択肢1で述べた、区分所有者全員が被害者に損害賠償を支払った後も参照)

4 当該事故がA及び当該エレベーターの保守点検業務を受託していた業者Cの共同不法行為による場合、Bは、A及びCの両者又はA若しくはCに対し、損害賠償額の全額を請求することができる。

○ 正しい。 共同不法行為も、不法行為と並んでよく出題される。平成17年 マンション管理士試験 「問17」 。
  共同不法行為は、民法第719条(共同不法行為者の責任)
 「第七百十九条  数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、
各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
  2  行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。」とあります。
  この規定の解釈として、他人に損害を加えた数人は、各人が損害の全額について支払義務を負います。参照:民法第432条(履行の請求)
 「第四百三十二条  数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。 」
 被害者Bは、建設業者A・保守点検業者Cの両者に対しても、また別々でも損害賠償の全額を請求できます。

答え:4 (ここは、選択肢1 と 引っかけの選択肢2 があやふやな理解だと迷うかも。)

問16

〔問 16〕 甲マンションの区分所有者が管理費を滞納している場合における管理組合(管理者A)の滞納管理費の請求等に関する次の記述のうち、民法、民事執行法及び民事再生法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 滞納者に滞納管理費の支払を命ずる判決が確定すれば、当該滞納者が勤務している法人について民事再生手続きが開始されたときでも、Aは、滞納者の給料債権を差し押さえることができる。

X 出来ない? 何という設問! 民事再生法なんてマンション管理士の出題範囲か? なお、滞納者が破産した時は、平成21年管理業務主任者試験 「問11」 がある。
  それは、ともかく、解答を探しました。 給料差押えが、民事再生法でいう「再生債権」に該当するでいいと思います。
 民事再生法第84条(再生債権となる請求権)
 「第八十四条  
再生債務者に対し再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(共益債権又は一般優先債権であるものを除く。次項において同じ。)は、再生債権とする
   2  次に掲げる請求権も、再生債権とする。
    一  再生手続開始後の利息の請求権
    二  再生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金の請求権
    三  再生手続参加の費用の請求権」とあり、「再生債権」なら、同法第85条1項(再生債権の弁済の禁止)
 「第八十五条  
再生債権については、再生手続開始後は、この法律に特別の定めがある場合を除き、再生計画の定めるところによらなければ、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができない。 」とあります。これにより、民事再生手続が開始されると、その法人に勤めている滞納者の給料には、差押えが出来ないのでしょう。でも、普通の給料とは、違うという根拠が探せない。

○ 正しい?  給料は、勤務している法人(会社など)が民事再生手続きに入ると、一般の先取特権に入る。民法第306条(一般の先取特権)
 「第三百六条  次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
     一  共益の費用
     
二  雇用関係
     三  葬式の費用
     四  日用品の供給」とあり、
 民法308条(雇用関係の先取特権)
 「第三百八条  雇用関係の先取特権は、
給料その他債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権について存在する。」
 すると、民事再生法第122条(一般優先債権)
 「第百二十二条  一般の先取特権その他一般の優先権がある債権(共益債権であるものを除く。)は、
一般優先債権とする。
   2
 一般優先債権は、再生手続によらないで、随時弁済する
   3  優先権が一定の期間内の債権額につき存在する場合には、その期間は、再生手続開始の時からさかのぼって計算する。
   4  前条第三項から第六項までの規定は、一般優先債権に基づく強制執行若しくは仮差押え又は一般優先債権を被担保債権とする一般の先取特権の実行について準用する。 」の2項により、
 再生手続きから外れて、随時弁済されるため、滞納者の給料債権を差し押さえられる。ここらが、妥当かな? (2010年1月16日:解説を追記)

  この設問と、平成21年管理業務主任者試験 「問11」 の管理費の滞納者の破産を再度確認していたら、まだすっきりとした解説になっていないようだ。
  分かる方は、http://tk4982.at.webry.info/ まで連絡ください。

2 専有部分を共有している姉妹が滞納者である場合において、Aがその一人に対して滞納管理費の全額を請求したときは、他の共有者に対しても、その請求の効力が生じる。

○ 正しい。 区分所有権(専有部分の権利)が共有であれば、管理費の支払は連帯債務となり、民法第432条(履行の請求)
 「第四百三十二条  数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。 」により、管理者Aは共有者の一人に請求ができ、そして民法第434条(連帯債務者の一人に対する履行の請求)
 「第四百三十四条  
連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる。 」により、正しい。(これは、前の「問15」選択肢4:共同不法行為も参照)

X 誤っている? 滞納管理費は、債権の目的である給付が分割されたのでは、その給付の目的を満たすことができないので、不可分債務と解される。すると、民法第428条(不可分債権)
 「第四百二十八条  債権の目的がその性質上又は当事者の意思表示によって不可分である場合において、数人の債権者があるときは、各債権者はすべての債権者のために履行を請求し、債務者はすべての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。」とあり、同じく民法430条(不可分債務)
 「第四百三十条  前条の規定及び次款(連帯債務)の規定(
第四百三十四条から第四百四十条までの規定を除く。)は、数人が不可分債務を負担する場合について準用する。 」とあり、
 設問の「Aがその一人に対して滞納管理費の全額を請求したときは、他の共有者に対しても、その請求の効力が生じる。」は民法第434(連帯債務者の一人に対する履行の請求)
 「第四百三十四条  連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる。」に該当するが、
 この
民法第434条は、不可分債務では準用から除外されている
 不可分債務では、債務者の一人に対して滞納管理費の全額を請求できますが、その効果は、他の債務者には及びません。民法第432条(履行の請求)
 「第四百三十二条  数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。」  (2010年1月16日:解説を追加)

  注:過去問題を見直していたら、滞納費を不可分債務としてとらえる、平成20年マンション管理士試験 「問15」 選択肢2 があった。

3 滞納者が死亡し、二人の子が各1/2の割合で相続した場合において、その相続人の一方が相続を放棄し、他方が単純承認すると、Aは、単純承認した相続人に対して、滞納管理費の1/2しか請求できない。

X 誤っている。 滞納者が死亡すると、包括承継者である相続人は、滞納管理費も相続します。(「問14」も参照)民法第896条(相続の一般的効力)
 「第八百九十六条  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」。
 そして、相続人は、@単純承認、A限定承認、B相続放棄 を選ぶことができます。(民法第920条以下参照) Bの相続放棄をすると民法第939条(相続の放棄の効力)
 「第九百三十九条  相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。 」により、相続財産は全て、単純承認をした相続人にいく。そこで、管理人Aは、滞納管理費全額を、単純承認をした相続人に対して請求できる。1/2ではない。

4 滞納者が法人でその代表者が管理費の支払について連帯保証をしていた場合において、当該法人に滞納管理費の支払を命ずる判決が確定したときは、Aは、その判決を債務名義として、当該法人の代表者の個人財産に強制執行をすることができる。

X 誤っている。 判決での債務名義と連帯保証の関係である。
  債務者に強制執行を行なう際、その前提として必要となる公的機関が作成した文書のことを「
債務名義」といいます。債務名義には「確定判決」「仮執行宣言付判決」「和解調書」「調停調書」「執行認諾文言付公正証書」「仮執行宣言付支払督促」があります。(民事訴訟法第22条参照)。強制執行は、この「債務名義」無しには行うことができません。そこには、(1)実現されるべき給付請求権、(2)当事者(債権者・債務者)、(3)執行対象財産ないし責任の限度が記入されています。
 そして、民事執行法第23条(強制執行をすることができる者の範囲)
 「第二十三条  執行証書以外の債務名義による強制執行は、次に掲げる者に対し、又はその者のためにすることができる。
   
一  債務名義に表示された当事者
   二  債務名義に表示された当事者が他人のために当事者となつた場合のその他人
   三  前二号に掲げる者の債務名義成立後の承継人(前条第一号、第二号又は第六号に掲げる債務名義にあつては口頭弁論終結後の承継人、同条第三号の二に掲げる債務名義又は同条第七号に掲げる債務名義のうち損害賠償命令に係るものにあつては審理終結後の承継人)
  2  執行証書による強制執行は、執行証書に表示された当事者又は執行証書作成後のその承継人に対し、若しくはこれらの者のためにすることができる。
  3  第一項に規定する債務名義による強制執行は、同項各号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者に対しても、することができる。」です。
  法人としての判決ですから、1号の「債務名義に表示された当事者」=代表者 としての範囲で支払の責任を負いますが、連帯保証人であっても個人の財産には強制執行はできません。現実には代表の財産か、個人の財産かの区別は難しいですが。

答え:2 (面倒な設問! 選択肢1 は根拠を探すのが大変。今年の出題では、同じ条文からの解答を導き出すのが多い?)
マンション管理センターの正解: 1

問17

〔問 17〕 甲マンションの管理組合(管理者A)は、区分所有者Bが管理費を5ヵ月分滞納していたため、Bに対して、何度も支払を督促していたところ、ある日、第三者Cから、「Bの管理費債務については、滞納分も将来分も、すべて私の方でその支払を引き受けることになりましたので、本日以降は私に請求してください。なお、この文書を受け取った旨を管理組合名で速やかにご通知ください。」という内容証明郵便が到着した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。ただし、AB間で、当該管理費債務について第三者の弁済を許さない旨の特約はなかったものとする。

1 Aは、滞納管理費についてはBに対して請求できるが、新たに発生する管理費債権については、Cに十分な資力があるときは、Cに対してのみ請求することができる。

X 誤っている。 十分な資力とは設問の意味が不明であるが。
  債務の弁済は、第三者でも可能です。民法第474条(第三者の弁済)
 「第四百七十四条  
債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、その債務の性質がこれを許さないとき、又は当事者が反対の意思を表示したときは、この限りでない。
  2  利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。 」とあり、
 第三者Cが滞納分も将来分も支払うといい、第三者の弁済を許さない旨の特約がないのであれば、管理者Aは、Cの資力に関係なくCに請求できる。また、債務引き受けの通知があっても、債権者である管理組合が関知していない以上、元々の債務者であるBに対しても請求は可能である。債務者・債権者・債務引受人の三者の合意により、元の債務者の債務を、引受人だけが引き受ける(免責的債務引受)ならば、元の債務者には請求できなくなります。

2 C自らが弁済してBの滞納管理費債務を消滅させることについて利害関係を有する場合、Cが同人の名義で滞納管理費をAの管理費収納口座に振り込んだときは、Aは、それを拒絶してBに支払を求めることはできない。

○ 正しい。 選択肢1で引用しました、民法第474条2項
 「2  利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。 」により、第三者Cは、利害関係があるので、債務者Bの弁済ができます。また同条1項の解釈として、第三者は、自分の名で、しかし、他人の債務であることを明らかにして弁済することを要します。Cが同人の名義で滞納管理費をAの管理費収納口座に振り込むことは可能です。管理者Aは、これを拒絶できません。

3 当該郵便到着後に、Bの名義で滞納管理費がAの管理費収納口座に振り込まれた場合、Aは、それをBに返還しなければならない。

X 誤っている。 滞納者Bは本来の弁済者ですから、この場合には、Bに返還することはありません。選択肢1でも述べたように、債権者が関知していない取り決めが、元の債務者と引受人の間であっても、債権者にその効力は及びません。(では、二重に入金されたのは、どうするかの問題は残りますが。)

4 Aは、Cから求められている当該文書の受領書をCに送付しないときには、Cに対して債務不履行責任を負う。

X 誤っている? 大体、「文書を受け取ったという通知」が、債権に該当するのか。つまり、債務者に履行を強制しうる力(訴求力)をもっているのかということです。社会的にみて、一方的に送ってきた内容証明では、受け取ったという書類を送らなくても、債務不履行責任までは負わないと判断します。

答え:2 (常識的な問題なのか、さらに高度な解答内容を求めているのか、分からない。どこかに、併存的(重畳的=ちょうじょうてき)債務引受としての判例があるようだが、このまずい設問では、随分と民法のテキストを読んだが、分からない。)
マンション管理センターの正解:2

問18

〔問 18〕 マンションの登記に関する次の記述のうち、不動産登記法及び区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 一棟の建物の表題部には、当該建物の各階ごとの床面積が記録され、当該面積には区分所有法上当然に共用部分とされる部分の面積も含まれる。

○ 正しい。 不動産登記法からの出題は、平成19年マンション管理士 「問18」 が、ほぼ同じ内容。また、平成15年マンション管理士試験 「問19」 選択肢4 もある。
   まず、区分所有法では、「敷地利用権」と呼ばれるが、登記をすると不動産登記法では「
敷地権」と呼ばれることに注意。
  区分所有法上当然に共用部分とされる部分とは、専有部分(室)に通じる廊下、階段室などです。
  不動産登記法では、区分建物の登記簿の表題部は、@一棟の建物の表題部と、A専有部分の表題部に分けられ、その後にB権利部が続く。
  登記は、不動産登記法第44条(建物の表示に関する登記の登記事項)
 「第四十四条  建物の表示に関する登記の登記事項は、第二十七条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
    一  建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番(区分建物である建物にあっては、当該建物が属する一棟の建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番)
    二  家屋番号
    三  建物の種類、構造及び床面積
    四  建物の名称があるときは、その名称
    五  附属建物があるときは、その所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番(区分建物である附属建物にあっては、当該附属建物が属する一棟の建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番)並びに種類、構造及び床面積
    六  建物が共用部分又は団地共用部分であるときは、その旨
    七  建物又は附属建物が区分建物であるときは、当該建物又は附属建物が属する一棟の建物の構造及び床面積
    八  建物又は附属建物が区分建物である場合であって、当該建物又は附属建物が属する一棟の建物の名称があるときは、その名称
    九  建物又は附属建物が区分建物である場合において、当該区分建物について区分所有法第二条第六項 に規定する敷地利用権(登記されたものに限る。)であって、区分所有法第二十二条第一項 本文(同条第三項 において準用する場合を含む。)の規定により区分所有者の有する専有部分と分離して処分することができないもの(以下「敷地権」という。)があるときは、その敷地権
   2  前項第三号、第五号及び第七号の建物の種類、構造及び床面積に関し必要な事項は、
法務省令で定める。」とあり、
 2項の政令は不動産登記規則第4条3項
 「3  区分建物である建物の登記記録の表題部は、
別表三の第一欄に掲げる欄に区分し、同表の第一欄に掲げる欄に同表の第二欄に掲げる事項を記録するものとする。 」
 そして、別表三

別表三 (第四条第三項関係)区分建物である建物の登記記録

第一欄 第二欄
一棟の建物の表題部
専有部分の家屋番号欄 一棟の建物に属する区分建物の家屋番号
一棟の建物の表示欄 所在欄 一棟の建物の所在
所在図番号欄 建物所在図の番号
建物の名称欄 一棟の建物の名称
構造欄 一棟の建物の構造
床面積欄 一棟の建物の床面積
原因及びその日付欄 一棟の建物に係る登記の登記原因及びその日付
建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記における建物の種類、構造及び床面積が設計書による旨
閉鎖の事由
登記の日付欄 一棟の建物に係る登記の年月日
閉鎖の年月日
敷地権の目的たる土地の表示欄 土地の符号欄 敷地権の目的である土地の符号
所在及び地番欄 敷地権の目的である土地の所在及び地番
地目欄 敷地権の目的である土地の地目
地積欄 敷地権の目的である土地の地積
登記の日付欄 敷地権に係る登記の年月日
敷地権の目的である土地の表題部の登記事項に変更又は錯誤若しくは遺漏があることによる建物の表題部の変更の登記又は更正の登記の登記原因及びその日付
区分建物の表題部
専有部分の建物の表示欄 不動産番号欄 不動産番号
家屋番号欄 区分建物の家屋番号
建物の名称欄 区分建物の名称
種類欄 区分建物の種類
構造欄 区分建物の構造
床面積欄 区分建物の床面積
原因及びその日付欄 区分建物に係る登記の登記原因及びその日付
共用部分である旨
団地共用部分である旨
建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記における建物の種類、構造及び床面積が設計書による旨
登記の日付欄 区分建物に係る登記の年月日
附属建物の表示欄 符号欄 附属建物の符号
種類欄 附属建物の種類
構造欄 附属建物の構造
附属建物が区分建物である場合におけるその一棟の建物の所在、構造、床面積及び名称
附属建物が区分建物である場合における敷地権の内容
床面積欄 附属建物の床面積
原因及びその日付欄 附属建物に係る登記の登記原因及びその日付
附属建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記における建物の種類、構造及び床面積が設計書による旨
登記の日付欄 附属建物に係る登記の年月日
敷地権の表示欄 土地の符号欄 敷地権の目的である土地の符号
敷地権の種類欄 敷地権の種類
敷地権の割合欄 敷地権の割合
原因及びその日付欄 敷地権に係る登記の登記原因及びその日付
附属建物に係る敷地権である旨
登記の日付欄 敷地権に係る登記の年月日
所有者欄 所有者及びその持分

とあり、実例としては、

 

  答えとしては、一棟の建物の表題部には、当該建物の各階ごとの床面積が記録され、当該面積には区分所有法上当然に共用部分とされる部分(廊下や階段室)の面積も含まれています。床面積は専有部分と共用部分の合計で記録されています。

2 敷地権付き区分建物の場合、一棟の建物の表題部には、敷地権の目的たる土地の所在及び地番、地目等が記録される。

○ 正しい。 選択肢1で引用した不動産登記法第44条等により、敷地権付き区分建物の場合、一棟の建物の表題部には、敷地権の目的たる土地の所在及び地番、地目、地籍、登記日付等が記録されます。敷地利用権は建物全体に対する土地の権利です。

3 区分建物に関する敷地権について表題部に登記がされたときは、当該敷地権の目的である土地の登記記録に、職権で、敷地権である旨の登記がされる。

○ 正しい。 不動産登記法第46条(敷地権である旨の登記)
 「第四十六条  登記官は、表示に関する登記のうち、区分建物に関する敷地権について表題部に最初に登記をするときは、当該敷地権の目的である土地の登記記録について、
職権で、当該登記記録中の所有権、地上権その他の権利が敷地権である旨の登記をしなければならない。」とあります。
 これにより、もうその土地の登記は閉鎖された状態となり、今後の権利の変動は、建物の専有部分(区分所有権)の処分記録だけとなります。

4 共用部分である旨の登記をするときは、一棟の建物の表題部にその旨が記録される。

X 誤っている。 共用部分の登記は、選択肢1で引用しました、不動産登記法第44条等により、「専有部分の建物の表示欄」に記録されます。(共用部分は、元々は、専有部分ともなり得る建物の部分ですから。なお、登記が必要なのは、規約で共用部分としたものだけです。法定共用部分は、登記の対象にはなりません。また、規約共用部分は登記しないと、第三者に対抗できません。))

答え:4 

問19

〔問 19〕 マンション建替組合(この問いにおいて「建替組合」という。)に関する次の記述のうち、マンションの建替えの円滑化等に関する法律の規定によれば、正しいものはどれか。

1 建替組合は、権利変換期日後遅滞なく、施行再建マンションの敷地につき、権利変換後の土地に関する権利について必要な登記を申請しなければならない。

○ 正しい。 マンションの建替えの円滑化等に関する法律(ここでは、マンション建替え法という)も1問は必ず出題される。眼を通しておくこと。
   概要は、私のホームページ 「マンションの建替えの円滑化等に関する法律の概要」 にあります。
  敷地の登記については、マンション建替え法第74条(権利変換の登記)
 「第七十四条  
施行者は、権利変換期日後遅滞なく、施行再建マンションの敷地(保留敷地を含む。)につき、権利変換後の土地に関する権利について必要な登記を申請しなければならない
  2  権利変換期日以後においては、施行再建マンションの敷地(保留敷地を含む。)に関しては、前項の登記がされるまでの間は、他の登記をすることができない。 」とあります。
 正しい。なお、マンションの建替えの円滑化等に関する法律での「権利変換期日」は、様々な権利が確定するため重要な日です。

2 建替組合は、事業が完成するまでの間であればいつでも、総会の決議により解散することができる。

X 誤っている。 建替組合の解散については、マンション建替え法第38条(解散)
 「第三十八条  組合は、次に掲げる理由により解散する。
     一  設立についての認可の取消し
     
二  総会の議決
     三  事業の完成又はその完成の不能
  2  
前項第二号の議決は、権利変換期日前に限り行うことができるものとする。 」とあります。
  1項により、総会の議決(特別議決=組合員の議決権及び持分割合の各3/4以上)があれば、解散できますが、それは、いつでもではありません。同法2項により、権利変換期日前でないと、総会による解散はできません。

3 建替組合は、権利変換計画の認可の申請にあたり、施行マンションの敷地であった土地の一部を、施行再建マンションの敷地とせず公募により売却する場合は、あらかじめ組合員全員の合意を得なければならない。

X 誤っている。 ここの解説は、かなり面倒です。
  まず、権利変換計画の内容の確認です。
  マンション建替え法第58条14号(権利変換計画の内容)
 「第五十八条  権利変換計画においては、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項を定めなければならない。
    十四  施行マンションの敷地であった土地で
施行再建マンションの敷地とならない土地(以下「保留敷地」という。)の所有権又は借地権の明細、その帰属及びその処分の方法 」とありますから、「施行マンションの敷地であった土地の一部(保留敷地です)を、施行再建マンションの敷地とせず公募により売却する場合」は、権利変換計画に入っています。
 では、次に権利変換計画は、マンション建替え法第27条(総会の決議事項)
 「第二十七条  次に掲げる事項は、総会の議決を経なければならない。
     一  定款の変更
     二  事業計画の変更
     三  借入金の借入れ及びその方法並びに借入金の利率及び償還方法
     四  経費の収支予算
     五  予算をもって定めるものを除くほか、組合の負担となるべき契約
     六  賦課金の額及び賦課徴収の方法
     
七  権利変換計画及びその変更
     八  第九十四条第一項又は第三項の管理規約
     九  組合の解散
     十  その他定款で定める事項 」の7号に該当し、総会の議決が必要です
 そして、その議決は、マンション建替え法第30条3項
 「3  
第二十七条第七号に掲げる事項は、組合員の議決権及び持分割合の各五分の四以上で決する。」とありますから、
 組合員全員の合意は必要ありません。重要な議決ですから、特別議決(通常3/4以上)のなかでも、4/5以上となっています。

4 建替組合の組合員は、定款に特別の定めがある場合を除き、各組合員が有する施行マンション(権利変換期日以降は施行再建マンション)の専有部分の床面積の割合に応じた議決権を有する。

X 誤っている。 これまた、面倒な設問で、マンション建替え法全部を探した。
  マンション建替え法第33条1項(議決権及び選挙権)
 「第三十三条  
組合員及び総代は、定款に特別の定めがある場合を除き、各一個の議決権及び選挙権を有する。」とあります。
  なお、マンション建替え法では特別な場合(同法第30条)には、議決権及び持分割合での決議を要求しています。

答え:1 (細かな出題で時間がかかり、解説者泣かせです。)

問20

〔問 20〕 違反建築物等に対する措置等に関する次の記述のうち、建築基準法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 特定行政庁は、一定の建築物について、そのまま放置すれば著しく保安上の危険となるおそれがあると認める場合、当該建築物の所有者等に対して、直ちに、保安上必要な措置をとることを勧告することができる。

X 誤っている。 建築基準法からも出題が多いので、分野別として過去問題でまとめています
  キーワードは、「
直ちに」。保安上の危険は、建築基準法第10条1項(保安上危険な建築物等に対する措置)
 「第十条  特定行政庁は、第六条第一項第一号に掲げる建築物その他政令で定める建築物の敷地、構造又は建築設備(いずれも第三条第二項の規定により第二章の規定又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の適用を受けないものに限る。)について、損傷、腐食その他の劣化が進み、そのまま放置すれば著しく保安上危険となり、又は著しく衛生上有害となるおそれがあると認める場合においては、当該建築物又はその敷地の所有者、管理者又は占有者に対して、
相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用中止、使用制限その他保安上又は衛生上必要な措置をとることを勧告することができる。」とあり、
 「直ちに」ではなく、「相当の猶予期限」がつきます。  

2 特定行政庁が、一定の建築物について、公益上著しく支障があるとして、当該建築物の除去等を命ずる場合、当該命令に基づく措置によって生じた通常生ずべき損害については、当該建築物の所有者が負担する。

X 誤っている。 キーワードは「損害の負担」。建築基準法第11条1項
 「第十一条 特定行政庁は、建築物の敷地、構造、建築設備又は用途(いずれも第三条第二項(第八十六条の九第一項において準用する場合を含む。)の規定により第三章の規定又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の適用を受けないものに限る。)が公益上著しく支障があると認める場合においては、当該建築物の所在地の市町村の議会の同意を得た場合に限り、当該建築物の所有者、管理者又は占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、修繕、模様替、使用禁止又は使用制限を命ずることができる。この場合においては、
当該建築物の所在地の市町村は、当該命令に基づく措置によつて通常生ずべき損害を時価によつて補償しなければならない。」とあります。
 損害を与えたら、与えた人(この場合市町村)が負担するのは普通です。

3 特定行政庁が建築基準法違反の建築物の建築主等に対して是正措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないときは、行政代執行法の定めるところに従い、特定行政庁自身が義務者のなすべき行為をすることができ、当該特定行政庁はその費用を義務者から徴収することができる。

○ 正しい。 これは、建築基準法第9条12項
 「12 特定行政庁は、第一項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、
行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、みずから義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。」とあり、
 行政代執行法第2条
 「第二条  法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、
その費用を義務者から徴収することができる。」とありますから、正しい。

4 特定行政庁が、緊急の必要がある場合において、仮に、違反建築物の使用禁止又は使用制限の命令をすることができ、この場合、当該命令を受けた者は、特定行政庁に対して公開による意見聴取を求めることはできない。

X 誤っている。 このキーワードは、「公開による意見聴取を求めること」。これは、建築基準法第9条7項と8項
 「7 特定行政庁は、緊急の必要がある場合においては、前五項の規定にかかわらず、これらに定める手続によらないで、仮に、使用禁止又は使用制限の命令をすることができる。
  8 前項の命令を受けた者は、その命令を受けた日から三日以内に、特定行政庁に対して
公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。この場合においては、第四項から第六項までの規定を準用する。ただし、意見の聴取は、その請求があつた日から五日以内に行わなければならない。」とあり、
 前半の特定行政庁の命令は正しいが、後半の公開による意見聴取を求めることができないが間違い。普通、行政機関が行った行為については、公開の場での意見聴取は許されている。

答え:3 (選択肢3が正解となんとなく分かった人は多いようです。なお、建築基準法の解説として、「要約 建築基準法」もあります。)

問21

〔問 21〕 用途地域に関する次の記述のうち、都市計画法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 第二種低層住居専用地域においては、都市計画に建築物の高さの限度を定めなければならない。

○ 正しい。 都市計画法からは、毎年1問出されています。そして、地域地区からの出題傾向が高いです。平成20年マンション管理士試験 「問22」  など。 なお、都市計画法もよく出題されるので、分野別として、取り出して解説してます。
  第二種低層住居専用地域に定めるのは、都市計画法第8条3項二ロ
 「3  地域地区については、次に掲げる事項を都市計画に定めるものとする。
   ロ 第一種低層住居専用地域又は
第二種低層住居専用地域 建築基準法第五十三条第一項第一号 に規定する建築物の建ぺい率(建築面積の敷地面積に対する割合をいう。以下同じ。)、同法第五十四条 に規定する外壁の後退距離の限度(低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため必要な場合に限る。)及び同法第五十五条第一項 に規定する建築物の高さの限度」とあり、
 建築物の高さの限度を定めます。また、外壁の後退距離の限度も定めます。

2 第一種中高層住居専用地域においては、都市計画に外壁の後退距離の限度を定めなければならない。

X 誤っている。 第一種中高層住居専用地域に定めるものは、都市計画法第8条3項二ハ
 「ハ 
第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、準工業地域、工業地域又は工業専用地域 建築基準法第五十三条第一項第一号 から第三号 まで又は第五号 に規定する建築物の建ぺい率」とあり、
 建ぺい率を定めます。なお、外壁の後退距離の限度を定めるのは、第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域です。選択肢1を参照。

3 商業地域においては、都市計画に建築物の容積率を定めなければならない。

○ 正しい。 商業地域で定めるものは、都市計画法第8条3項二イ
 「3 地域地区については、次に掲げる事項を都市計画に定めるものとする。
  二 次に掲げる地域地区については、それぞれ次に定める事項
   イ 用途地域 
建築基準法第五十二条第一項第一号から第四号までに規定する建築物の容積率(延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。以下同じ。)並びに同法第五十三条の二第一項及び第二項に規定する建築物の敷地面積の最低限度(建築物の敷地面積の最低限度にあつては、当該地域における市街地の環境を確保するため必要な場合に限る。)」とあり、
 建築基準法第52条1項3号に
 「三  
商業地域内の建築物   十分の二十、十分の三十、十分の四十、十分の五十、十分の六十、十分の七十、十分の八十、十分の九十、十分の百、十分の百十、十分の百二十又は十分の百三十のうち当該地域に関する都市計画において定められたもの 」とありますから、
 商業地域(これ以外でも、全用途地域を含めて)では、容積率を定めます。(注:商業地域での建ぺい率は、都市計画法では定められていません。参考:平成17年マンション管理士試験 「問24」)

4 準工業地域においては、都市計画に建築物の建ぺい率を定めなければならない。

○ 正しい。 準工業地域において定めるのは、選択肢2と同じで都市計画法第8条3項二ハ
 「ハ 第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、
準工業地域、工業地域又は工業専用地域 建築基準法第五十三条第一項第一号から第三号まで又は第五号に規定する建築物の建ぺい率」とあり、
 建ぺい率を定めます。

答え:2 (選択肢3の商業地域での「容積率」を「建ぺい率」と間違えた解答は多いかも。)

問22

〔問 22〕 簡易専用水道の設置者の義務に関する次の記述のうち、水道法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 給水栓における水が遊離残留塩素を一定値以上保持するよう、塩素消毒をしなければならない。

X 誤っている。 水道法からも過去において出題が多いので、分野別にまとめています。また、この設問に、近いのは、平成16年マンション管理士 「問23」 です。
  まず、水道法の概要からの説明がないと、出題の意図がつかめないでしょうから、そこから入ります。
  水道法の規制対象は、@事業 と、 A水道 があり、 水道には、ア.専用水道 と イ.
簡易専用水道 があります。
  そして、簡易専用水道とは、水道法第3条7号
 「7  この法律において「簡易専用水道」とは、水道事業の用に供する水道及び専用水道以外の水道であつて、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするものをいう。ただし、その用に供する施設の規模が政令で定める基準以下のものを除く(政令:水槽の有効容量10m3超が対象となる)。 」です。
 ア.の専用水道では、残留塩素の測定や、管理基準、検査等が厳しく定められていますが、イ.の「簡易専用水道」は頭に「簡易」がついているように、専用水道で規定されている内容よりも緩やかになっています。
 そこで、簡易専用水道の管理者の管理には、水道法第34条の2 
 「第三十四条の二  簡易専用水道の設置者は、厚生労働省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならない。
  2  簡易専用水道の設置者は、当該簡易専用水道の管理について、厚生労働省令の定めるところにより、定期に、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならない。」とあり、
  厚生労働省令とは、水道法施行規則55条(管理基準)
 「第五十五条  法第三十四条の二第一項 に規定する厚生労働省令で定める基準は、次の各号に掲げるものとする。
    一  水槽の掃除を一年以内ごとに一回、定期に、行うこと。
    二  水槽の点検等有害物、汚水等によつて水が汚染されるのを防止するために必要な措置を講ずること。
    三  給水栓における水の色、濁り、臭い、味その他の状態により供給する水に異常を認めたときは、水質基準に関する省令 の表の上欄に掲げる事項のうち必要なものについて検査を行うこと。
    四  供給する水が人の健康を害するおそれがあることを知つたときは、直ちに給水を停止し、かつ、その水を使用することが危険である旨を関係者に周知させる措置を講ずること。」
 また、同規則56条(検査)
 「第五十六条  法第三十四条の二第二項 の規定による検査は、一年以内ごとに一回とする。
   2  検査の方法その他必要な事項については、厚生労働大臣が定めるところによるものとする。 」となっています。

 また、簡易であるため、専用水道の一部が準用されます。その準用の条文が水道法第34条の4 です。(準用)
 「第三十四条の四  
第二十条の二から第二十条の五までの規定は第三十四条の二第二項の登録について、第二十条の六第二項の規定は簡易専用水道の管理の検査について、第二十条の七から第二十条の十六までの規定は第三十四条の二第二項の登録を受けた者について準用する。この場合において、第二十条の二中「前条第三項」とあるのは「第三十四条の二第二項」と、同条、第二十条の四第一項各号及び第二項第三号、第二十条の六第二項、第二十条の七から第二十条の九まで、第二十条の十二から第二十条の十四まで、第二十条の十五第一項並びに第二十条の十六第四号中「水質検査」とあるのは「簡易専用水道の管理の検査」と、第二十条の三、第二十条の五第一項、第二十条の十三第五号並びに第二十条の十六第一号及び第四号中「第二十条第三項」とあるのは「第三十四条の二第二項」と、第二十条の三第二号及び第二十条の十六第四号中「第二十条の十三」とあるのは「第三十四条の四において準用する第二十条の十三」と、第二十条の三第三号中「前二号」とあるのは「第三十四条の四において準用する前二号」と、第二十条の四第一項中「第二十条の二」とあるのは「第三十四条の四において準用する第二十条の二」と、同項第一号中「第二十条第一項」とあるのは「第三十四条の二第二項」と、同号及び第二十条の十五第一項中「検査施設」とあるのは「検査設備」と、第二十条の四第一項第二号中「別表第一」とあるのは「別表第二」と、「五名」とあるのは「三名」と、同項第三号ハ中「ロ」とあるのは「第三十四条の四において準用するロ」と、同条第二項中「水質検査機関登録簿」とあるのは「簡易専用水道検査機関登録簿」と、第二十条の五第二項中「前三条」とあるのは「第三十四条の四において準用する前三条」と、同項及び第二十条の十五第二項中「前項」とあるのは「第三十四条の四において準用する前項」と、第二十条の六第二項、第二十条の七、第二十条の八第一項、第二十条の九から第二十条の十四まで及び第二十条の十五第一項中「登録水質検査機関」とあるのは「第三十四条の二第二項の登録を受けた者」と、第二十条の八中「水質検査業務規程」とあるのは「簡易専用水道検査業務規程」と、第二十条の十第一項中「次項」とあるのは「第三十四条の四において準用する次項」と、同条第二項中「水道事業者」とあるのは「簡易専用水道の設置者」と、第二十条の十一中「第二十条の四第一項各号」とあるのは「第三十四条の四において準用する第二十条の四第一項各号」と、第二十条の十二中「第二十条の六第一項又は第二項」とあるのは「第三十四条の三又は第三十四条の四において準用する第二十条の六第二項」と、「受託す」とあるのは「行う」と、第二十条の十三第一号中「第二十条の三第一号又は第三号」とあるのは「第三十四条の四において準用する第二十条の三第一号又は第三号」と、同条第二号及び第二十条の十六第二号中「第二十条の七」とあるのは「第三十四条の四において準用する第二十条の七」と、第二十条の十三第二号及び第二十条の十六第三号中「第二十条の九」とあるのは「第三十四条の四において準用する第二十条の九」と、第二十条の十三第二号中「第二十条の十第一項」とあるのは「第三十四条の四において準用する第二十条の十第一項」と、「次条」とあるのは「第三十四条の四において準用する次条」と、同条第三号中「第二十条の十第二項各号」とあるのは「第三十四条の四において準用する第二十条の十第二項各号」と、同条第四号中「第二十条の十一」とあるのは「第三十四条の四において準用する第二十条の十一」と、「前条」とあるのは「第三十四条の四において準用する前条」と、第二十条の十五第三項中「第一項」とあるのは「第三十四条の四において準用する第一項」と読み替えるものとする。 」

 これを、踏まえ、設問の「給水栓における水が遊離残留塩素を一定値以上保持するよう、塩素消毒をしなければならない。」は水道法第22条(衛生上の措置)
 「第二十二条  水道事業者は、厚生労働省令の定めるところにより、水道施設の管理及び運営に関し、消毒その他衛生上必要な措置を講じなければならない。 」とあり、
 厚生労働省令は、水道法施行規則第17条1項3号(衛生上必要な措置)
 「第十七条  法第二十二条 の規定により水道事業者が講じなければならない衛生上必要な措置は、次の各号に掲げるものとする。
    三  給水栓における水が、遊離残留塩素を〇・一mg/l(結合残留塩素の場合は、〇・四mg/l)以上保持するように塩素消毒をすること。ただし、供給する水が病原生物に著しく汚染されるおそれがある場合又は病原生物に汚染されたことを疑わせるような生物若しくは物質を多量に含むおそれがある場合の給水栓における水の遊離残留塩素は、〇・二mg/l(結合残留塩素の場合は、一・五mg/l)以上とする。 」とあります。
 そこで、
この第22条が同法34条の2 に入っているかとみると、準用は第22条の2 からとなっているので、水道法では簡易専用水道の設置者の義務ではありません

2 定期及び臨時の水質検査を行ったときは、これに関する記録を作成し、水質検査を行った日から起算して5年間保存しなければならない。

X 誤っている。 定期及び臨時の水質検査については、水道法第20条(水質検査)
 「第二十条  水道事業者は、厚生労働省令の定めるところにより、定期及び臨時の水質検査を行わなければならない。
  2  水道事業者は、前項の規定による水質検査を行つたときは、これに関する記録を作成し、水質検査を行つた日から起算して五年間、これを保存しなければならない。 」とありますが、
 この条文も選択肢1で説明しました、簡易専用水道での
準用に入っていません

3 簡易専用水道の管理について、1年以内ごとに1回、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならない。

○ 正しい。 管理と検査は、水道第34条の2 2項
 「2  簡易専用水道の設置者は、当該簡易専用水道の管理について、厚生労働省令の定めるところにより、定期に、
地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならない。」とあり、
 その厚生労働省令、 水道法施行規則第56条1項(検査)
 「第五十六条  法第三十四条の二第二項 の規定による
検査は、一年以内ごとに一回とする。」とありますから、
  簡易専用水道の設置者の管理について、1年以内ごとに1回、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者が検査します。

4 水道の管理について技術上の業務を担当させるため、水道技術管理者1人を置かなければならない。

X 誤っている。 水道技術管理者をおくことは、水道法第19条1項(水道技術管理者)
 「第十九条  水道事業者は、水道の管理について技術上の業務を担当させるため、水道技術管理者一人を置かなければならない。ただし、自ら水道技術管理者となることを妨げない。 」とありますが、
 簡易専用水道では、この
第19条の準用はありません

答え:3 (過去問題をやってきた人は、すぐに分かったかも。)

問23

〔問 23〕 共同住宅における消防用設備等に関する次の記述のうち、消防法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 延べ面積が1500u以上の共同住宅には、携帯用拡声器、手動式サイレンその他の非常警報器具を設置しなければならない。

X 誤っている。 消防法からの出題も多いので、過去の問題は分野別にまとめています。ここに近いのは、平成16年マンション管理士試験 「問25」
  携帯用拡声器、手動式サイレンその他の非常警報器具の設置については、消防法施行令24条1項(非常警報器具又は非常警報設備に関する基準)
 「第二十四条  非常警報器具は、別表第一(四)項、(六)項ロ、ハ及びニ、(九)項ロ並びに(十二)項に掲げる防火対象物で収容人員が二十人以上五十人未満のもの(次項に掲げるものを除く。)に設置するものとする。ただし、これらの防火対象物に自動火災報知設備又は非常警報設備が第二十一条若しくは第四項に定める技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置されているときは、当該設備の有効範囲内の部分については、この限りでない。」とあり、

 共同住宅は、別表第一 では「(五)ロ」に入っていて
設置の対象ではありません。

2 一定の構造要件等を満たした共同住宅等において、通常用いられる消防用設備等に代えて、必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等を用いた場合については、3年に1回、消防長又は消防署長に点検結果の報告をしなければならない。

○ 正しい。 点検結果の報告は、消防法施行規則31条の6、3項
 「3  防火対象物の関係者は、前二項の規定により点検を行つた結果を、維持台帳(第三十一条の三第一項及び第三十三条の十八の届出に係る書類の写し、第三十一条の三第四項の検査済証、次項の報告書の写し、消防用設備等又は特殊消防用設備等の工事、整備等の経過一覧表その他消防用設備等又は特殊消防用設備等の維持管理に必要な書類を編冊したものをいう。)に記録するとともに、次の各号に掲げる防火対象物の区分に従い、当該各号に定める期間ごとに消防長又は消防署長に報告しなければならない。ただし、特殊消防用設備等にあつては、第三十一条の三の二第六号の設備等設置維持計画に定める点検の結果についての報告の期間ごとに報告するものとする。
    一  令別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物 一年に一回
    二  令
別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ、(十七)項及び(十八)項までに掲げる防火対象物 三年に一回」とあり、
 マンションは共同住宅で、2号の「令別表第一(五)項ロ」に該当するから、3年に1回、消防長又は消防署長に報告する。

3 延べ面積が500uのものには、消火器又は簡易消火用具を設置しなければならない。

○ 正しい。 消火器又は簡易消火用具の設置は、消防法施行令10条1項(消火器具に関する基準)
  「第十条  消火器又は簡易消火用具(以下「消火器具」という。)は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。
    一  別表第一(一)項イ、(二)項、(六)項ロ、(十六の二)項、(十六の三)項、(十七)項及び(二十)項に掲げる防火対象物
    
二  別表第一(一)項ロ、(三)項から(五)項まで、(六)項イ、ハ及びニ、(九)項並びに(十二)項から(十四)項までに掲げる防火対象物で、延べ面積が百五十平方メートル以上のもの
    三  別表第一(七)項、(八)項、(十)項、(十一)項及び(十五)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が三百平方メートル以上のもの 」とあり、
 
共同住宅は、別表第一(五)項ロ であるから、2号の「別表第一(一)項ロ、(三)項から(五)項まで」に該当し、延べ面積が500uは、150u以上につき、消火器又は簡易消火用具の設置を義務付けられている。

4 消防長又は消防署長は、消防用設備等が設備等技術基準に従って設置され、又は維持されていないと認めるときは、当該設備等技術基準に従ってこれを設置すべきこと、又はその維持のため必要な措置をなすべきことを命ずることができる。

○ 正しい。 これは、消防法第17条の4
 「第十七条の四 消防長又は消防署長は、第十七条第一項の防火対象物における消防用設備等が設備等技術基準に従つて設置され、又は維持されていないと認めるときは、当該防火対象物の関係者で権原を有するものに対し、当該設備等技術基準に従つてこれを設置すべきこと、又はその維持のため必要な措置をなすべきことを命ずることができる。」とあり、
 正しい。

答え:1 (選択肢2 は過去問題から ○ は分かるが、 延べ面積で迷うかも。)

問24

〔問 24〕 マンションにおける防犯に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

1 網入り板ガラスは、火災の延焼防止を目的に使用される金網入りガラスであり、防犯性能は、フロート板ガラスと同様期待できない。

○ 適切である。 ここは、平成18年マンション管理士試験 「問41」 が似ている。
   網入り板ガラスは、一見すると壊れにくくて、防犯に役立つと思うが、これは火災の延焼防止が目的です。フロート板ガラスは一般的な板ガラスでフロート法(溶融錫の上にガラス融液を流し出すことで、上下ともに平滑な面を生成する。錫はガラスより比重が大きく、しかもガラスと混ざらないので、錫の上には非常に平坦な板ガラスが形成される。この方法で1mm〜22mm程度の厚さの板ガラスを作成することが出来る。)によって作られた板ガラスです。金網は容易に切断できるため、防犯性能はフロート板ガラスと同様期待できません。

2 共用玄関扉は、扉の内外を相互に見通せる構造にするとともに、オートロックシステムを導入することが望ましい。

○ 適切である。 防犯については、「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針 」が国土交通省から出ている。(平成13年3月23日付、一部改正平成18年4月)
 これによると、「2 共用部分の設計 (1) 共用出入口 イ 共用玄関扉
 「・共用玄関には、玄関扉を設置することが望ましい。また、玄関扉を設置する場合には、
扉の内外を相互に見通せる構造(以下「内外を見通せる構造」という。)とするとともに、オートロックシステムを導入することが望ましい。」とある。

3 共用メールコーナーの照明設備は、床面においておおむね20ルクス以上の平均水平面照度を確保することが望ましい。

X 適切でない。 選択肢2で引用した「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針 」によると、(3) 共用メールコーナー  イ 共用メールコーナーの照明設備
 ・共用メールコーナーの照明設備は、
床面において概ね50ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする。」とあり、50ルクスは欲しい。 ここは、平成22年 マンション管理士試験 「問24」 でも出ている。

4 共用玄関ホールは、床面においておおむね50ルクス以上の平均水平面照度を確保することが望ましい。

○ 適切である。 選択肢2で引用した、「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針 」によると、
 「エ 共用出入口の照明設備
 ・共用玄関の照明設備は、
その内側の床面において概ね50ルクス以上、その外側の床面において概ね20ルクス以上の平均水平面照度をそれぞれ確保することができるものとする。 」とあり、適切である。

答え:3 (過去問題をやっていると、すぐに解答できたかも。)

問25

[問 25〕 管理組合の集会における委任状の取扱いに関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、適切なものはどれか。

1 「集会の議長は、集会において、組合員の中から選出する。」と定めている規約の下では、誰が議長になるかわからないから、議長あての委任状は無効である。

X 適切でない。 有効である。 委任状については、平成20年管理業務主任者試験 「問30」。 平成19年マンション管理士試験 「問25」 。また、平成19年マンション管理士試験 「問27」 は紛糾した設問でした。平成21年管理業務主任者試験 「問35」 も参照。 委任はその取扱いが曖昧で、出題として適切でないと指摘しているのに、平成22年 管理業務主任者試験 「問34」 ででている。
 委任する相手の記入がない白紙委任状の扱いは、紛争があるが、設問の「議長」宛であれば、一応、誰がなるのかは分からないまでも、委任者の意思表示もあることを考えれば、有効と考えます。

2 集会招集通知に「集会に代理人を出席させる場合は、あらかじめ、その旨を管理組合に届け出なければなりません。」と記載されている場合、その届出がなく集会当日に委任状を持参した者がいても、その委任状を有効とする必要はない。

X 適切でない。 有効にすべきである。 民法にせよ区分所有法にせよ、代理人の資格を制限する規定はない。
 参照:民法第102条(代理人の行為能力)
 「第百二条  代理人は、行為能力者であることを要しない。」
 区分所有法第39条2項
 「2  議決権は、書面で、又は代理人によつて行使することができる。 」
 代理人を選ぶということは、本人が多忙であったり、病気などで集会に参加できないときでも、出来るだけ本人に近い意思表示をする人を選んでいることであり、それを、「あらかじめ、届け出なければなりません」で規制はできない。
(勿論、代理人が本人と違った意思表示をしても、責任は本人に及びますが)

3 委任状について、代理人の氏名の記載の有無にかかわらず、実際に集会に出席した区分所有者の議案に対する賛否の数に応じてその数を振り分け、議決権を行使させた。

X 適切でない。 設問の意味が今一はっきりしませんが、これでは代理人制度が成り立たない。 

4 一人の区分所有者が2通委任状を提出した場合において、1通は第1号議案用、もう1通は第1号議案を除く他の議案用と明記してあったので、両委任状とも有効として扱った。

○ 適切である。 有効です。 一人から複数の委任状が提出されて、同一の議案について、賛成と反対があれば、判断できないため無効と考えられますが、設問では、1号議案用、その他用と別々に意思表示がされていますから、両委任状は共に有効です。

答え:4 (易しい問題。) 
参考:この委任状の曖昧さが、問題になり、平成22年10月22日「第4回 マンション標準管理規約の見直しに関する検討会」で検討されています。

ここまで、問25


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最終更新日:
2017年 4月 9日:「問14」に、相続での預貯金について最高裁の判例の変更を入れた。
2014年 8月 3日:「問6」の携帯基地局の裁判に追記。
2012年 6月22日:平成23年の標準管理規約の改正で確認済み。
2011年 2月 4日:問14に加筆
2010年11月9日:問13に加筆
2010年2月27日:問3の承継人加筆
2010年2月15日:加筆など
2010年2月13日:加筆・訂正など
2010年1月30日:イラストなどを追加
2010年1月16日:問16に追記。マンション管理センターの正式発表を記入

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