マンション生活での相談は、「マンション管理士 香川事務所」へ。

平成24年 マンション管理士 試験問題 及び 解説

ページ1(問1より問25まで)

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「マンション管理士 香川事務所」より 謝辞:当問題の作成にあたっては、舘野様、高木様、武崎様、および佐々木様のご協力を戴いております。
 皆様の助力を感謝いたします。 

ご質問は、 「マンション管理士 香川事務所」へ。


*注: マンション標準管理規約(単棟型、団地型、複合用途型)は、平成28年3月に改正があり、当解説においては、未対応ですから、注意してください。

 また、マンションの管理の適正化に関する指針も、平成28年3月に改正があり、当解説においては、未対応ですから、注意してください。


※ 出題当時以後の法令等の改正には、一部は対応していません。

*試験に臨んで、お節介なアドバイス
  1.設問にあわせて、問題用紙に ○(まる)、X(ばつ)をつける。
    殆どの設問が、「正しい」か「間違い」かを訊いてきますので、設問により、問題の頭に、○かXをつけます。
    そして、各選択肢を読み、○かXをつけます。
    問題の○なりXと、選択肢の○かXが一致したものを、マークシートに記入してください。

  2.疑問な問題は、とりあえず飛ばす。
    回答の時間は限られています。
    そこで、回答として、○かXかはっきりしないものがでたら、「?」マークをつけて、次の問題に移ります。
    全部の回答が終わってから、再度戻って決定してください。

  3.複雑な問は、図を描く。
    甲、乙、A、B、Cなど対象が多い問題もでます。
    この場合、問題用紙の空いているところに、図を描いてください。
    重要な点が分かってきます。

(出題者からの注意)
 1. 答は、各問題とも1つだけです。
    2つ以上の解答をしたもの、判読が困難なものは、正解としません。
 2. 問題中法令に関する部分は、平成24年4月1日現在施行中の規定に基づいて出題されています。

解説者からのコメント:あやふやな出題、適切でない出題もあって、解答ができないのもあります。

※  マンション標準管理規約は、平成16年に改正があった。また、平成23年7月にも小幅な改正があった。
   マンション標準管理委託契約書は、平成15年に改正があった。また、平成22年5月にも改正があった。

問1

〔問 1〕マンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「マンション管理適正化法」という。)第2条第1号イに規定するマンションをいう。以下同じ。)に関する次の記述のうち、建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 マンションの建物に対して従物的な関係にある別個の建物は、法律上当然には共用部分とならない。 

○ 正しい。 似たような出題は、平成18年 マンション管理士試験 「問1」 にある。他には、平成21年 マンション管理士試験 「問1」 、「問2」 も参考に。
   まず、建物の区分所有等に関する法律(以下、当解説では、区分所有法といいます)では、法律用語として「マンション」の定義がありません。しかし、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下、当解説では、マンション管理適正化法といいます)第2条では、以下のように定義されていますので、マンションの用語を試験で使用する際には設問のような「マンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「マンション管理適正化法」という。)第2条第1号イに規定するマンションをいう」の表現が使用されます。
 そこで、マンション管理適正化法第2条とは、
 「(定義) 
  第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
     一  
マンション 次に掲げるものをいう。
       イ
 二以上の区分所有者(建物の区分所有等に関する法律 (昭和三十七年法律第六十九号。以下「区分所有法」という。)第二条第二項 に規定する区分所有者をいう。以下同じ。)が存する建物で人の居住の用に供する専有部分(区分所有法第二条第三項 に規定する専有部分をいう。以下同じ。)のあるもの並びにその敷地及び附属施設」
 です。これによれば、「マンション」であるための要件は、
    @2人以上の区分所有者 がいて、 
    A人の居住用の専有部分が1つでもあればいい 
 です。マンションの建物には、専有部分と共用部分しかなく、そして、マンションは専有部分と共用部分を含んだ建物と敷地及び附属施設の全体的なものであることに注意してください。

  また、用語「法律上当然」とは、過去からよく出題されている用語です。この
「法律上当然」とは、法文上に規定され、そのまま変更なく認められることですが、区分所有法では条文があいまいであることを反省してか、平成23年や平成22年では、この言葉「法律上当然」は使用されていませんでいたが、平成24年では久しぶりに復活です。
  出題の「共用部分」に関係する条文は、区分所有法では2ヶ所あります。その1番目は、区分所有法第2条4項
 「(定義)
  第二条
     4  この法律において
「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。」
 とあり、また、2番目に共用部分に関係するのは、同法第4条で、廊下・階段室等が例示されています。
 「(共用部分)
  第四条  数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。
     2  
第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。 」
  です。
 これを踏まえ、設問の「マンションの建物に対して従物的な関係にある別個の建物」とは、区分所有法第4条2項に該当しますから、法律上当然には共用部分にはならず、共用部分とするには「規約」が必要です
 なお、これらの例としては、別棟の集会所、物置、倉庫などがあげられます。



2 マンションの建物に附属し、効用上その建物と不可分の関係にある建物の附属物は、法律上当然に共用部分となる。

X 誤っている。 専有部分であることもある。
  
 「マンションの建物に附属し、効用上その建物と不可分の関係にある建物の附属物」とは、例えば、電気の配線、ガス・水道管の配管等が考えられます。これらは、専有部分内にあれば、専有部分となりますし、共用部分にある場合は共用部分となりますから、法律上当然に共用部分とはなりません。これら、電気の配線、ガス・水道管の配管等は実際の建物で専有部分にあるのか共用部分にあるのかの分岐点が明確にならないことが多いので、管理面においても注意が必要です。


3 マンションである建物全体の基本的構造部分及びその構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供される建物の部分は、法律上当然に共用部分となる。
○ 正しい。
  
 「建物全体の基本的構造部分」とは、数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室や、エレベーター室、基礎・土台、屋根、屋上、外壁等です。これらは、選択肢1で引用しました、区分所有法第4条1項の
  「数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分」に該当していますから、法律上当然に共用部分となります。



4 区分所有権の目的とすることができるマンションの建物の部分は、法律上当然には共用部分とならない。

○ 正しい。
   「区分所有権の目的とすることができるマンションの建物の部分」とは、区分所有法では「専有部分」ともなり得る建物の部分です。それは、区分所有法第2条
  「(定義)
   第二条
       3  この法律において
「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。 」
  とあります。
 そして、区分所有権の目的とすることのできるのは、区分所有法第1条
 「(建物の区分所有)
  第一条  一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ
所有権の目的とすることができる。 」とあり、
 選択肢1で引用しました、区分所有法第4条2項
 「(共用部分)
  第四条  数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。
     2  第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。 」
 により、法律上当然に共用部分にはなれず、共用部分とするには
「規約」が必要です。この例としては、建物内の集会室があります。


答え:2 (「法律上当然」がまた出題されるとは。 区分所有法では、条文が明確でないので、過去の出題にはあったこの「法律上当然」は、もう使用をやめたと思っていたのに。) なお、区分所有法の解説は、別途に、私の 「超解説 区分所有法」 もありますので、参考にしてください。
問2

〔問 2〕区分所有法第6条第1項の区分所有者の共同の利益に反する行為に該当しないものは、次のうちどれか。

1 直上・直下階の特定の区分所有間の騒音問題について、一方の当事者が虚偽の事実を記載した文書を作成し、それを他の区分所有者に配布する行為

○ 該当しない。 似たような出題は、平成19年 マンション管理士試験 「問3」 、や 平成14年 マンション管理士試験 「問4」 。
 まず、区分所有法第6条1項の規定は、
 「(区分所有者の権利義務等)
  第六条  区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。」
 です。
 この第6条1項で、「建物の保存に有害な行為」と 「その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」の禁止が定められており、このような抽象的な表現では、はっきりしないため何が具体的にそれらの行為にあたるかが裁判所に持ち込まれ、該当する行為の例としては、
  ・耐力壁の撤去、
  ・専有部分に爆発物(危険物)の持ち込み、
  ・住居専用使用と決めているのに事務所・店舗とする、
  ・廊下や階段室に私物を置く、
  ・勝手に自動車を停める、
  ・外壁やベランダに家庭教師の宣伝用看板を取り付ける、
  ・プライバシーの侵害、
  ・騒音、悪臭の発散、
  ・猛獣や規約で禁止されているペットの飼育、
  ・管理費等の滞納が原因で、建物の修繕に重大な支障が生ずるような状況に至っている場合は、こ の滞納は、建物の管理に関し区分所有者の共同の利益に反する行為に当たる、
  ・占有者が野鳩に餌付けをして、飼育をしていて他の居住者の迷惑になり、使用賃貸借契約の解除、占有者の退去、占有者に対する損害賠償請求が認められた、
  などが、挙げられます。
 設問の「直上・直下階の特定の区分所有間の騒音問題について、一方の当事者が虚偽の事実を記載した文書を作成し、それを他の区分所有者に配布する行為」は、
特定の区分所有者間の問題であるため、マンション全体の規定である区分所有法第6条に該当しないと判断されています。ただし、虚偽の事実を配布する行為は、不法行為(民法第709条)に該当する場合があります。(不法行為については、下の「問3」を参考にしてください。)


2 隣接する専有部分2個を所有する所有者がこれを1個の専有部分とするため、その間にある耐力壁である戸境壁を勝手に取り壊す行為

X 該当する。
  「耐力壁」を取り壊す行為は、マンション全体の建物の強度を弱くしますから選択肢1で例示しました、共同の利益に反する行為に該当します。


3 廊下、階段室に私物を置いて倉庫がわりに使うなど区分所有者の一人が共用部分を使用し、その結果他の区分所有者の通常の使用が妨げられるような行為

X 該当する。
 
「廊下、階段室に私物を置いて倉庫がわりに使うなど」も、マンション全体で迷惑しますから選択肢1で例示しました、共同の利益に反する行為に該当します。


4 専有部分で営業を行っている区分所有者が勝手に外壁やベランダに看板を取り付けたり、屋上に広告塔を設置したりする行為

X 該当する。
 「勝手に外壁やベランダに看板を取り付けたり、屋上に広告塔を設置したりする行為」も、マンション全体の美観を損ねたり、外壁を壊しますので選択肢1で例示しました、共同の利益に反する行為に該当します。


答え:1 (ここは、易しい。)

問3

*注:標準管理規約は平成28年3月に改正があったので注意の事。
    該当の条文は、必ず改正された標準管理規約で確認のこと。

〔問 3〕以下の事実関係に係る次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。ただし、甲マンションの管理組合(区分所有法第3条に規定する区分所有者の団体をいう。以下同じ。)の規約は、マンション標準管理規約(単棟型)(以下「標準管理規約」という。)と同様であり、また、楽器の演奏については、別段の定めはないものとする。

 甲マンション401号室の区分所有者Aは、高校生の娘Bが演奏会に向けて深夜までピアノの猛練習をすることを容認していたので、401号室の近くの居住者はその騒音に悩まされている。近隣の居住者からの再三の中止要請にもA及びBは応じず、特に、直下の301号室のCは、その騒音により睡眠障害になり、通院を余儀なくされ仕事も休まざるを得ない状況となった。
 ある日、Cが理事長Dに事情を説明して「理事会で解決して欲しい。」と頼んだところ、Dは、理事会で協議し、AとBの実名を挙げて騒音行為を具体的に列挙し、今後の対応として、「“一切の楽器の演奏を禁止する。”との細則を理事会で定めた。」旨の文書を作成して、全住戸へ配布し、掲示板に掲示した。
 それを知ったAは理事会の会議中に押し入り、「AとBの実名を挙げて名誉を毀損したことについて、全住戸へ謝罪文書を配布しろ。」と要求したが、出席していた理事数名から逆になじられたことに激昂(げっこう)し、Aはそれらの理事に暴行を働いた。
 その後、Aは、理事長や理事らをひぼう中傷する内容の文書の配布や貼付を繰り返し、また、マンション管理業者の業務を妨害するなどしている。これらのAの行為は、単なる役員個人に対するひぼう中傷の域を超えるもので、同行為により役員に就任しようとする者がいなくなる等それにより管理組合の業務の遂行や運営に支障が生ずるなどしてマンションの正常な管理又は使用が阻害される状況となっている。

1 Cは、A及びBに対して不法行為に基づく損害賠償を請求することができる。

○ 正しい。  不法行為については、平成22年 マンション管理士試験 「問17」、 平成22年 マンション管理士試験 「問16」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問12」 など多い。
  規約事項については、平成24年 マンション管理士試験 「問33」 も参考に。
  問題文が長い! このような問題文が長い出題は、読むだけでも時間がかかりますから、受験時には、飛ばして、次の問に移り後で戻って検討しましょう。
  まず、登場人物が多いときは、図も書きましょう。下のような図です。

 
  不法行為は、民法第709条に規定されています。
  民法第709条
  「(不法行為による損害賠償)
   第七百九条  
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
  とあり、
  行為者の故意又は過失によって、被害者の所有権や財産権が侵され、また身体に障害が発生すれば、不法行為が成立し、行為者は損害賠償の責任がありますから、具体的に、401号室のピアノ騒音により、睡眠障害で通院までした301号室のCは、損害賠償の請求ができます。
  そこで、次の問題は、被害者Cは誰に対してその損害賠償ができるかと、捻った設問になっています。
  具体的にピアノを弾いているのは、「高校生」としてあり、未成年者であることです。(ここは、まじめに追及すると、単に高校生というだけで、未成年の20歳未満となるとは、完全に言い切れないのですが。)
  未成年者となると、民法第712条
 「(責任能力)
  第七百十二条  
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。 」
  とあり、
  「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったとき」には、責任を負いませんが、特に精神上の障害もないような設問ですから、ここは、実際にピアノを弾いていた高校生の娘Bは、自分が弾いているピアノの騒音がもたらしている被害状況を認識できた知能があると判断されますから、被害者Cは娘Bに対して損害賠償請求ができます。
 次に、設問では、実際にピアノを弾いていない娘Bの親であるAに対しても損害賠償の請求ができるかを訊いています。
 参考になるのは、民法第719条
 「(共同不法行為者の責任)
  第七百十九条  数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
   2  
行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。」です。
  2項に「行為者を教唆した者及び幇助した者」とあり、「教唆」とは、「他人をして不法行為の意思決定をさせる行為」で、「幇助」は「違反行為の補助的な行為をする」ことです。設問の「(親)Aは、高校生の娘Bが演奏会に向けて深夜までピアノの猛練習をすることを容認していた」は、この2項の「幇助」に該当すると判断されますから、被害者Cは、親Aに対しても、共同不法行為に基づく損害賠償ができます。
  最終的に、被害者Cは、親のA及び娘Bに対して不法行為に基づく損害賠償ができます



2 「一切の楽器の演奏を禁止する。」との細則は、無効である。 

○ 正しい。 設問が、「細則」としているために、解説が、面倒ですが。
  マンションでは多くの居住者が生活を共にしていますから、共用の廊下を誰かが勝手に自己の倉庫代わりにして他の居住者が通行できないとか、誰かが飼っている大型の犬がマンション内で吠えたりすると、他の人にとって大変な迷惑となりますので、生活のルールを決めることが認められています。それが、規約と呼ばれるものです。
 区分所有法第30条
 「(規約事項)
  第三十条  
建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。 」です。
 規約で定められるのは、@管理 と A使用 についてだけです。また、規約も広義の合意の一種として強行法規や公序良俗(民法第90条)に反することは定められず、不合理に権利を制限し義務を規定するような場合にはその規約の効力が認められませんので注意してください。
 また、区分所有法には、規約を定めることができるの規定はありますが、規約の他に「使用細則」とよばれるものがあり、マンションに駐車場があれば、その使用について特定の区分所有者に専用使用権を認め、その使用者の選定方法や使用料等を使用細則で定めることがあります。また、ペット飼育に関する細則なども管理規約と共に存在しています。 
 そこで、設問の「一切の楽器の演奏を禁止するとの細則」ですが、これは、まず上で述べた区分所有法での趣旨から、「”一切の楽器”の演奏を禁止する」が無効と考えられます。例えば、ペットの飼育を禁止する場合でも、観賞用の小型の魚などは禁止されませんから、ピアノ以外の楽器で、騒音にならない楽器までを含めて禁止することは、出来ません。また、室内に防音設備を設けたり、演奏時間を制限したりすることで、演奏者と他の居住者との妥協点が見いだせますから、この「”一切の楽器”の演奏を禁止する」との細則は無効です。
 また、もしも「”一切の楽器”の演奏を禁止する」としたいなら、これは、細則ではなく、規約として、区分所有法第31条の
   「(規約の設定、変更及び廃止)
  第三十一条  
規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
   2  前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。」
 によるべきです。
 また、設問は、「“一切の楽器の演奏を禁止する。”との
細則を理事会で定めた」とあります。
 区分所有法では、上で引用した区分所有法第31条により、規約の設定や変更は、「区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議(特別決議)」が必要ですが、使用細則の設定・変更については、規定がないため解釈によるのですが、規約の設定・変更で必要とされる「区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数」は必要ではないまでも、区分所有法第39条
 「(議事)
  第三十九条  集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。」
 により、
 別段の規約が無ければ、 集会(総会)で「区分所有者及び議決権の各過半数の決議(
普通決議)」が必要と考えられています。
 これを受け、マンション標準管理規約(単棟型)では、総会の決議事項として、48条4号に、
 「(議決事項)
  第48条 次の各号に掲げる事項については、
総会の決議を経なければなら ない
    四
規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止
 とあり、理事会の決議だけでは、「細則」は定められませんから、無効です。



3 Aの理事に対する暴行について、名誉毀損に対する正当防衛は成立しない。

○ 正しい。
   民法での正当防衛は、第720条1項
 「(正当防衛及び緊急避難)
  第七百二十条  
他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない。
    2  前項の規定は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する。」
 とあり、
  ここで
正当防衛が成立するためには
  @他人の不法行為があったこと、 と 
  A自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ずした加害行為 
 であることです。
  そこで、設問の、Aは、「理事会の会議中に押し入り、「AとBの実名を挙げて名誉を毀損したことについて、全住戸へ謝罪文書を配布しろ。」と要求したが、出席していた理事数名から逆になじられたことに激昂(げっこう)し、Aはそれらの理事に暴行を働いた。」の検討です。
 前半の「AとBの実名を挙げて名誉を毀損」が不法行為に該当するかどうかですか、この設問では、ピアノの騒音で近隣及び階下の住民に実害を与えていることは、事実であるようですから、選択肢1で引用しました、民法第709条での不法行為
 「(不法行為による損害賠償)
  第七百九条  
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 」
 の成立はできないと考えた方がいいでしょう。
 また、「出席していた理事数名から逆になじられたことに激昂(げっこう)し、暴行を働いた」の加害行為が、要件Aの「やむを得ずした」に該当するとは、考えにくく、Aの理事に対する暴行について、名誉毀損に対する正当防衛は成立しません。



4 Aが理事会へ押し入ってからの一連の行為は、共同利益背反行為に当たらない。

X 誤っている。 共同利益背反行為にあたる。
  共同利益背反行為とは、前の「問2」 でも説明しましたが、区分所有法第6条1項
 「(区分所有者の権利義務等)
  第六条  区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。」
  です。
  第6条で区分所有者が禁止されているのは、
  @建物の保存に有害な行為 
  Aその他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為 です。
  第6条では行為の具体的な例がないので、何が共同利益背反行為に該当するかは解釈になるのですが、「問2」も参考にして、ここでのAの行為は、@の特に建物を壊すとか、建物を傷つけたではありませんから、Aに該当するか、どうかを検討しましょう。
  Aの理事会へ押し人ってからの一連の行為は、
  「Aは、理事長や理事らをひぼう中傷する内容の文書の配布や貼付を繰り返し、また、マンション管理業者の業務を妨害するなどしている。これらのAの行為は、単なる役員個人に対するひぼう中傷の域を超えるもので、同行為により役員に就任しようとする者がいなくなる等それにより管理組合の業務の遂行や運営に支障が生ずるなどしてマンションの正常な管理又は使用が阻害される状況となっている。」とあり、これらは、明らかに、「建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」として、該当します。
 なお、選択肢4については、平成24年1月17日の最高裁判決もあります。 http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81896&hanreiKbn=02  (当判決については、井上様から、アドバイスを戴きました。) 


答え:4  (ここは、「細則」となっているから、解説が面倒になった。単純に「細則は理事会決議で設定できるか」にしてくれたら、解説も短くて済んだのに。なお、選択肢4 は、平成24年 管理業務主任者試験 「問39」 でも出ている。)

問4

〔問 4〕管理費等の負担に関する規約の設定についての次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定並びに判例によれば、誤っているのはどれか。ただし、各区分所有者の専有部分の床面積は同じものとする。

1 住居と店舗が混在するマンションにおいて、住居部分と店舗部分の区分所有者について、異なる管理費等の負担を内容とする規約を設定することができる。

○ 正しい。 できる。
  
マンションでは、廊下・階段などの共用部分にある外灯等の電気代、エレベーターの運行費、また清掃費用など建物の維持・管理にかかる費用を管理費と呼び、また将来必ず発生する外壁の補修などに備えた修繕積立金をその持分(専有部分の床面積:区分所有法第14条1項)に応じて負担する原則が区分所有法第19条に定められています。
 「(共用部分の負担及び利益収取)
  第十九条  
各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。 」
 です。
 しかし、区分所有法第19条は、共用部分の負担について
「規約による別段の定め」を認めています。そこで、規約の区分所有法第31条
 「(規約の設定、変更及び廃止)
  第三十一条  規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
   2  前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。」
 となり、
 ここで、規約が設定できない、
「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼす」かどうかを検討します。
  住居と店舗が混在するマンションとは、通常、下の階に店舗がありその上層階が住居となっているような建物で、下駄ばきマンションともよばれ、案外存在しています。このような住居と店舗が混在するマンションでは、例えば、廊下や階段にしても、住居部分と店舗部分では、訪問者数・来客数などのちがいから、設置する電球の数や清掃の頻度などが大きく異なっていますから、この管理費等を、住居部分と店舗部分の区分所有者がその専有部分に応じて負担することの方が、かえって衡平さを欠きますから、住居部分と店舗部分の区分所有者で異なる管理費等の負担を内容とする規約を設定できます。この場合、「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼす」とは、
住居部分と店舗部分の区分所有者の負担比率が極端に衡平さを逸している場合です。
 通常であれば、住居部分と店舗部分の区分所有者について、異なる管理費等の負担を内容とする規約を設定することができます。
 なお、多くの場合、住居と店舗が混在するマンションでは共用部分は住居(一部)共用部分と店舗(一部)共用部分とに分けられて管理費が設定されてます。





2 エレベーターのあるマンションにおいて、1階部分の区分所有者とそれ以外の区分所有者について、異なる管理費等の負担を内容とする規約を設定することができる。

○ 正しい。できる。 平成24年 管理業務主任者試験 「問12」 選択肢4 の設問と矛盾している!
   多くのマンションでは、1階部分の区分所有者がエレベーターを使用しないからといって、1階部分の区分所有者の管理費からエレベーター関係の費用を減額したりはしませんが、選択肢1で引用しました区分所有法第31条に従って、適切に「1階部分の区分所有者とそれ以外の区分所有者について、異なる管理費等の負担を内容とする規約」が集会(総会)で決議されれば、これは適法です。
 現実的ではないが、あり得る。でも、この理論を推し進めると、ゴミだしの量や、エレベーターに乗る回数などでも、異なる管理費等の負担を求めることになり、マンション管理士試験の出題としては、適切でない。(参考:東京地裁:平成5年3月30日 判決)


3 住居専用のマンションにおいて、居住者が日本国籍を有するか否かによって、異なる管理費等の負担を内容とする規約を設定することはできない。 

○ 正しい。できない。
  まず、日本国籍を有しない外国人が日本の不動産など区分所有建物(マンション)を購入し、区分所有者として登記できるかですが、これは、国籍により手続きの面倒さはあるものの、制限がなく可能です。
 すると、民法第3条2項
 「第三条  私権の享有は、出生に始まる。
    2  
外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。」
 とあり、居住者が日本国籍を有するか否かによる差別はできません。 (私権と公権の違い。享有は自分で調べてください。)

 

4 住居専用のマンションにおいて、現に居住する区分所有者と現に居住していない区分所有者について、管理組合の運営のための業務負担に応じ異なる管理費等の負担を内容とする規約を設定することはできない。

X 誤っている。できる。
  この出題に対しては、平成22年1月26日の最高裁判決 があります。
  元々の裁判は、団地ですが、判決の主旨として、「不在組合員はマンションの住環境の維持に対して貢献しておらず、利益だけを享受しているから、組合活動金として、別途月額2500円を支払うように変更した規約は、一部の団地建物所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときに該当しないというべきである。」としたものです。
 この判決により、「現に居住する区分所有者と現に居住していない区分所有者について、管理組合の運営のための業務負担に応じ異なる管理費等の負担を内容とする規約を設定すること」は、できます。


答え:4  (選択肢4の判決文の詳細は、私の「超解説 区分所有法」第31条を見てください。)

問5

〔問 5〕管理者に関する次の記述のうち、区分所有法、民事訴訟法及び民事執行法の規定によれば、誤っているものはどれか。 

1 管理者は、区分所有者のために、原告又は被告となることができるものであり、管理者が原告又は被告となった訴訟の確定判決の効力は、区分所有者には生じるが、管理者には生じない。

X 誤っている。 管理者にも生じる。
 
 通常、裁判においては、判決が適切な当事者に対して行われる必要上から、原告(訴訟を起こした当事者)・被告(その訴訟の相手方)が正当な当事者であることが要求されます(これは「当事者適格」とよばれます)。そこで、当事者でない他人や第三者が訴訟を起こせないのが原則です。この理論をマンションに適用すると、訴訟は、常に区分所有者全員が当事者となりますので、大変に面倒な現実がありました。
 そこで、区分所有法では、訴訟追行に関し、第三者である管理者ができるようにしました。
それが、区分所有法第26条4項です。
 「(権限)
  第二十六条  管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
    2  管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
    3  管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
    4  
管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる
    5  管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。」
 とあり、
 4項により、 本来他人の関係にある管理者(原則として、区分所有者以外でもなれます。区分所有法第25条参照)であっても、区分所有者のために、原告又は被告となることができます。
 そして、訴訟の確定判決の効力は、民事訴訟法第115条1項にあります。
 「(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)
  第百十五条  確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
     一  
当事者
     二  
当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
     三  前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
     四  前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者
    2  前項の規定は、仮執行の宣言について準用する。」
 とあり、 1号により確定判決の効力は、訴訟の当事者となった管理者にも及び、また2号により管理者は区分所有者のために原告又は被告となったのですから、訴訟の確定判決の効力は、区分所有者にも効力を有します。設問の「管理者には生じない」が誤りです。



2 管理者は、その職務に関し、原告又は被告となることができるものであり、区分所有法で定める管理者の権限の範囲内において、原告又は被告となることが認められる。

○ 正しい。
   選択肢1で引用しました、区分所有法第26条4項
 「(権限)
   第二十六条
     4  
管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。」
 とあり、正しい。



3 管理者は、原告又は被告となることができるものであるが、仮差押え、仮処分の申請をし、又はその相手方となること並びに民事執行及び民事調停の当事者となることもできる。

○ 正しい。
   選択肢1で引用しましたように、区分所有法第26条4項
 「(権限)
   第二十六条
     4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。」
 とあり、
  この規定は、仮差押え、や仮処分、また民事調停などでも適用されると解することができますから、正しい。



4 管理者は、規約により原告又は被告になったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならないが、区分所有者に対し訴訟への参加を求める訴訟告知をする必要はない。

○ 正しい。
  まず、訴訟告知とは、民事訴訟法第53条
 「(訴訟告知)
  第五十三条  
当事者は、訴訟の係属中、参加することができる第三者にその訴訟の告知をすることができる
    2  訴訟告知を受けた者は、更に訴訟告知をすることができる。
    3  訴訟告知は、その理由及び訴訟の程度を記載した書面を裁判所に提出してしなければならない。
    4  訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合においても、第四十六条の規定の適用については、参加することができた時に参加したものとみなす。」
 とあり、
 民事訴訟において当事者から、その訴訟に利害関係を有する第三者に訴訟の存在を法定の方式で通知し、訴訟に参加を求めることです。
  区分所有法では、管理者が規約により原告又は被告になったときは、選択肢1で引用しました同法第26条5項
 「 (権限)
  第二十六条
     5  
管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。」
  とあり、
 管理者は、区分所有者に対して訴訟があることの「通知」は求められていますが、
民事訴訟法による法定の「訴訟告知」までは求められていませんので、正しい。
  区分所有法の制定者は、区分所有法第26条5項の「通知」の規定で、「訴訟告知」に準じた対応がとれると判断したようです。
 なお、その通知は、区分所有法第35条2項から4項の手続きに従って行います。


答え:1 (まったく、解説に時間がかかる。そこで、次は、正解が別れている、  「問 9」  を先にやります。)

問6

〔問 6〕管理所有に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 規約に特別の定めを設けても、管理者以外の区分所有者に共用部分を管理所有させることはできない。

X 誤っている。 管理者以外でも、区分所有者なら管理所有ができる。
  管理所有は、 平成23年 管理業務主任者試験 「問30」 平成21年 マンション管理士試験 「問9」 、平成20年 マンション管理士試験 「問5」 、平成18年 管理業務主任者試験 「問38」 、 平成15年 マンション管理士試験 「問4」 など多いので、注意のこと。
  通常、マンションの建物の共用部分は、区分所有者全員の共有であり、一部共用部分は、そこを共用する一部の区分所有者が共有しているのですが、その共用部分の共有関係を崩して規約があれば別段の定めができる、といっている訳のわからない規定が、区分所有法第11条1項及び2項にあります。
 「(共用部分の共有関係)
  第十一条  共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。
    2  
前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第二十七条第一項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない
    3  民法第百七十七条 の規定は、共用部分には適用しない。 」です。
 2項で引用されています、区分所有法第27条1項は、
 「(管理所有)
  第二十七条  
管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる
    2  第六条第二項及び第二十条の規定は、前項の場合に準用する。」
 とあり、
 通常、区分所有者たちの共有関係にある筈の共用部分(一部共用部分も含めて)でも、規約があれば、区分所有者または管理者であれば、所有者となれるのです。この形態が「
管理所有」と呼ばれる、区分所有法でも特異な条文です。
  そして、管理所有者と定められると、区分所有法第20条
 「(管理所有者の権限)
  第二十条  第十一条第二項の規定により規約で共用部分の所有者と定められた区分所有者は、区分所有者全員(一部共用部分については、これを共用すべき区分所有者)のためにその共用部分を管理する義務を負う。この場合には、それらの区分所有者に対し、相当な管理費用を請求することができる。
   2  前項の共用部分の所有者は、第十七条第一項に規定する共用部分の変更をすることができない。」
 とあり、
 大体、マンションの建物の共用部分となると区分所有者の共有となり、特定の人の所有が出来ないのになんでこんな面倒な規定が設けられたのかということですが、区分所有者全員で共用部分の管理をするより、特定の人(複数でも可)に共用部分の管理をさせた方が便利という発想が、法の制定者にあったようです。
 そこで、設問に戻りますが、区分所有法第11条2項は、管理所有ができるのは
 @区分所有者 A管理者(区分所有者でなくても可) なら規約で管理所有者にできると定めていますから、管理者でない区分所有者でも管理所有はできますから、誤りです。




2 規約に特別の定めを設けても、建物の敷地を管理者に管理所有させることはできない。

○ 正しい。
  設問は、「建物の敷地」となっています。選択肢1で述べたように、区分所有法第11条2項で規約により「管理所有」が認められているのは、建物の共用部分についてだけです。区分所有法では、「建物の敷地」について、管理所有を認める規定はありませんから、正しい。なお、区分所有法では、共用部分とは、建物の部分です。敷地は入っていませんから、注意してください。


3 規約に特別の定めを設けることによって、共用部分を管理所有とした場合、その旨を登記しなければならない。

X 誤っている。 登記はできない。
  マンションが建設されてその建物の共用部分となると、選択肢1で述べましたように、区分所有者の持分に応じた共有となり、不動産登記法でも特定の人の所有権は設定出来ません(区分所有法第11条3項)から、共用部分を規約で「管理所有」としても、登記する規定はありません。また、登記したくてもできませんから、誤りです。
 参考:区分所有法第4条
 「(共用部分)
  第四条  数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。
    2  第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。 」



4 管理所有者は、共用部分の形状又は効用の著しい変更を伴わないものであっても、共用部分の変更は行うことができない。

X 誤っている。 できる。
  管理所有者による、共用部分の変更は、選択肢1で引用しました、区分所有法第20条2項
    「(管理所有者の権限)
  第二十条
    2 
前項の共用部分の所有者は、第十七条第一項に規定する共用部分の変更をすることができない。」
  とあり、引用されています、区分所有法第17条1項とは、
 「(共用部分の変更)
  第十七条  共用部分の変更(
その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。」ですから、
 少し、条文にカッコ書きがあり分かり難いのですが、 共用部分の変更であっても”その形状又は効用の著しい変更を伴わないものは除かれています”から、設問の場合の共用部分の変更はできないは誤りです。


答え:2  (管理所有はその制定の曖昧さから、出題者としては、よく出題しますが、今日では、このような形態のマンションはないので、試験のための試験問題で、現実から離れた出題は、もう止めるべきです。また、管理所有については、私の 「超解説 区分所有法」 でしっかりと勉強しておいてください。)

問7

〔問 7〕管理組合、団地管理組合(区分所有法第65条に規定する団地建物所有者の団体をいう。)及び管理組合法人に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。

1 管理組合及び団地管理組合の管理者並びに管理組合法人の理事は、それぞれの集会において、区分所有者又は団地建物所有者及び議決権の各過半数の決議により選任する。

○ 正しい。 管理者と管理組合法人の理事の違いはよく出るので、まとめておくこと。 平成23年 管理業務主任者試験 「問34」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問30」 、平成22年 管理業務主任者試験 「問37」 、平成21年 マンション管理士試験 「問8」 、平成20年 マンション管理士試験 「問9」 など。平成24年は、これらに団地を加えている。
  まず、管理組合の
管理者の選任規定は、区分所有法第25条
 「(選任及び解任)
  
第二十五条  区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。
    2  管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。」
 とあり、
  団地管理組合の管理者の選任は、区分所有法第66条
 「(建物の区分所有に関する規定の準用)
  第六十六条  第七条、第八条、第十七条から第十九条まで、
第二十五条第二十六条、第二十八条、第二十九条、第三十条第一項及び第三項から第五項まで、第三十一条第一項並びに第三十三条から第五十六条の七までの規定は、前条の場合について準用する。この場合において、これらの規定(第五十五条第一項第一号を除く。)中「区分所有者」とあるのは「第六十五条に規定する団地建物所有者」と、「管理組合法人」とあるのは「団地管理組合法人」と、第七条第一項中「共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設」とあるのは「第六十五条に規定する場合における当該土地若しくは附属施設(以下「土地等」という。)」と、「区分所有権」とあるのは「土地等に関する権利、建物又は区分所有権」と、第十七条、第十八条第一項及び第四項並びに第十九条中「共用部分」とあり、第二十六条第一項中「共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設」とあり、並びに第二十九条第一項中「建物並びにその敷地及び附属施設」とあるのは「土地等並びに第六十八条の規定による規約により管理すべきものと定められた同条第一項第一号に掲げる土地及び附属施設並びに同項第二号に掲げる建物の共用部分」と、第十七条第二項、第三十五条第二項及び第三項、第四十条並びに第四十四条第一項中「専有部分」とあるのは「建物又は専有部分」と、第二十九条第一項、第三十八条、第五十三条第一項及び第五十六条中「第十四条に定める」とあるのは「土地等(これらに関する権利を含む。)の持分の」と、第三十条第一項及び第四十六条第二項中「建物又はその敷地若しくは附属施設」とあるのは「土地等又は第六十八条第一項各号に掲げる物」と、第三十条第三項中「専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)」とあるのは「建物若しくは専有部分若しくは土地等(土地等に関する権利を含む。)又は第六十八条の規定による規約により管理すべきものと定められた同条第一項第一号に掲げる土地若しくは附属施設(これらに関する権利を含む。)若しくは同項第二号に掲げる建物の共用部分」と、第三十三条第三項、第三十五条第四項及び第四十四条第二項中「建物内」とあるのは「団地内」と、第三十五条第五項中「第六十一条第五項、第六十二条第一項、第六十八条第一項又は第六十九条第七項」とあるのは「第六十九条第一項又は第七十条第一項」と、第四十六条第二項中「占有者」とあるのは「建物又は専有部分を占有する者で第六十五条に規定する団地建物所有者でないもの」と、第四十七条第一項中「第三条」とあるのは「第六十五条」と、第五十五条第一項第一号中「建物(一部共用部分を共用すべき区分所有者で構成する管理組合法人にあつては、その共用部分)」とあるのは「土地等(これらに関する権利を含む。)」と、同項第二号中「建物に専有部分が」とあるのは「土地等(これらに関する権利を含む。)が第六十五条に規定する団地建物所有者の共有で」と読み替えるものとする。」
 とあり、
  よく読むと、第25条が準用されていますから、共に管理者は、集会の決議によつて選任されます。
 そして、管理組合法人の
理事の選任は、区分所有法第49条8項
 「(理事)
  第四十九条
     8  
第二十五条の規定は、理事に準用する。」
 とあり
 管理組合でも団地管理組合でも、さらに法人化された管理組合法人のすべてにおいて、管理者及び理事は 「規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて」選任されます。
 そして、集会の決議は、区分所有法第39条1項
 「(議事)
  第三十九条  集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、
区分所有者及び議決権の各過半数で決する。」とあり、
 この区分所有法第39条も団地関係の第66条において準用され(第三十三条から第五十六条の七までの規定は、前条の場合について準用する)、団地では「区分所有者」とあるのは「第六十五条に規定する団地建物所有者」と読み替えられますから、規約に別段の定めがないとの設問ですから、全部正しい。



2 管理組合及び団地管理組合においては、その職務に関し、管理者が区分所有者を代理し、管理組合法人においては、その事務に関し、当該法人が区分所有者を代理する。 

○ 正しい。 よく出る問題。 平成22年 マンション管理士試験 「問6」 、 平成22年 管理業務主任者試験 「問3」 、平成22年 管理業務主任者試験 「問37」 、平成21年 マンション管理士試験 「問4」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問4」 など。
  まず、管理者の権限は、区分所有法第26条
 「(権限)
  
第二十六条  管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
    2  
管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
    3  管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
    4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
    5  管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。 」
とあり、
 2項により、その職務に関し、管理者が区分所有者を代理していますから、正しい。
 そして、団地管理組合における管理者は、選択肢1で引用しました区分所有法第66条により、
第26条が準用されていますから、設問の前半は正しい。
 では、管理組合法人で区分所有者を代理しているのは、区分所有法第47条6項
 「(成立等)
  第四十七条
    6  
管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。」
 とあり、これも、正しいので、選択肢2は、全体として、正しい。 管理組合
法人では、区分所有者を代理しているのは、その管理組合法人です。理事ではないので注意してください。


3 規約に特別の定めがあるときは、管理組合及び団地管理組合の管理者は、共用部分を管理所有することができるが、管理組合法人の理事は共用部分を管理所有することができない。

X 誤っている。
 
団地の管理者でも、法人の理事にも管理所有は認められていない。
  管理所有については、前の「問6」を参考にしてください。
  通常の管理組合の管理者は、区分所有法第27条
 「(管理所有)
  第二十七条
 管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。
    2  第六条第二項及び第二十条の規定は、前項の場合に準用する。」
 とあり、
 1項により、規約で定めると建物の共用部分を管理所有できます。
 しかし、選択肢1で引用しました団地関係の規定の区分所有法第66条では、
管理所有に関する第20条も管理者の第27条も準用がありませんから、団地管理組合の管理者は、共用部分を管理所有することができませんから、ここは、誤りです。
 そして、管理組合が法人化されますと、区分所有法第47条11項
 「(成立等)
  第四十七条
    11  
第四節及び第三十三条第一項ただし書(第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。)の規定は、管理組合法人には、適用しない。」
 とあり、
 この
第四節は、管理者の規定で第25条から第29条が該当していますから、管理所有を定めた第27条も適用外となりますから、管理組合法人の理事は共用部分を管理所有することができないは正しい。そこで、選択肢3は、前半の「団地管理組合の管理者は、共用部分を管理所有することができる」が誤りです。


4 共同利益背反行為の停止の請求に係る訴訟の提起に関する集会の決議は、管理組合及び管理組合法人の集会においては行うことができるが、団地管理組合の集会においては行うことができない。

○ 正しい。 
  共同利益背反行為の停止の請求に係る訴訟となると、区分所有法第57条が該当します。
 「(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
  第五十七条  区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、
他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる
    2  前項の規定に基づき訴訟を提起するには、
集会の決議によらなければならない
    3  管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
    4  前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。 」
 とあります。
  この規定は、1項及び2項により、他の区分所有者の全員(管理組合)及び管理組合法人の集会においては行うことができます。
  しかし、選択肢1で引用しました団地関係の
区分所有法第66条では、第57条の準用がありませんから、団地管理組合の集会においては行うことができません。よって、共に正解です。団地関係からこの規定など義務違反者に対する措置(第57条〜第60条)を除いたのは、義務違反者の事情は、同じ棟の区分所有者たちがよく知っているので、棟の集会に任せて、戸建も含む団地全体の集会から除くという発想からきたようです。


答え:3  (団地を規定した区分所有法第66条は長文ですが、団地において準用される規定と、されない規定の区別は、正確にしておかないと、ミスりますよ。区分所有法第66条も、私の「超解説 区分所有法」を参考にまとめてください。)

問8

〔問 8〕管理組合法人に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 管理組合法人の理事は、共用部分についての損害保険契約に基づく保険金額の請求及び受領について管理組合法人を代理する。

X 誤っている。 法人が区分所有者を代理する。
  理事と法人の関係。 代理と代表の関係は、似たような出題が多いのでまとめておくこと。 平成22年 マンション管理士試験 「問6」 、 平成22年 管理業務主任者試験 「問3」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問8」 平成19年 「マンション管理士試験 「問2」 など。
 管理組合法人において、区分所有者を代理しているのは、管理組合法人であって、理事ではありません。理事は、管理組合法人の代表です。
 区分所有法第47条6項
 (成立等)
  第四十七条
   6  
管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。」
 とあり、
 引用されています、区分所有法第18条4項は、
 「4  共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。 」
 です。
 そして、理事は、同法第49条3項
 「(理事)
  第四十九条
    3  
理事は、管理組合法人を代表する。 」
 とあり、
 誤っています。 なお、法人でない場合の管理者は、区分所有者を代理しています。(区分所有法第26条2項参照。)



2 管理組合法人の理事は、規約又は集会の決議により、管理組合法人の事務に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。

X 誤っている。 理事と法人の立場に注意のこと。
  法人となると、区分所有法第47条8項
 「(成立等)
  第四十七条
    8  
管理組合法人は、規約又は集会の決議により、その事務(第六項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
 とあり、
 管理組合法人が、区分所有者のために、原告又は被告となります。理事ではありませんから、誤りです。



3 管理組合法人の財産をもってその債務を完済することができない場合でも、区分所有者がその債務の弁済の責めに任ずることはない。

X 誤っている。 平成18年 マンション管理士試験 「問30」 。
  通常ある団体の財産が支払(債務)過剰などで不足したら、それから先の責任を誰が負うとか負わないとかになりますが、マンションの管理組合が法人化されていますと、区分所有法第53条
 「(区分所有者の責任)
  第五十三条  
管理組合法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、区分所有者は、第十四条に定める割合と同一の割合で、その債務の弁済の責めに任ずる。ただし、第二十九条第一項ただし書に規定する負担の割合が定められているときは、その割合による。
    2  管理組合法人の財産に対する強制執行がその効を奏しなかつたときも、前項と同様とする。
    3  前項の規定は、区分所有者が管理組合法人に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、適用しない。 」
 とあり、
 1項により、管理組合法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、区分所有者が原則として、その専有部分の床面積の割合(第14条)で、弁済の責任がありますから、誤りです。



4 管理組合法人は、代表理事その他の理事がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。

○ 正しい。
  通常、区分所有法では読み飛ばすのですが、区分所有法第47条10項に、
 「(成立等)
  第四十七条
    10  
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 (平成十八年法律第四十八号)第四条 及び第七十八条 の規定は管理組合法人に、破産法 (平成十六年法律第七十五号)第十六条第二項 の規定は存立中の管理組合法人に準用する。」
 とあり、
 準用されています、
 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第78条
 「(代表者の行為についての損害賠償責任)
  第七十八条  
一般社団法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。 」
 とあり、正しい。



答え:4  (選択肢4は、以前は、民法からの準用だった個所が、民法の改正に伴い、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律に変更された条文です。)

問9

〔問 9〕区分所有者の管理費の滞納が共同利益背反行為に該当する場合において、当該区分所有者を被告(以下「被告」という。)として、管理者が、区分所有法第59条の区分所有権及び敷地利用権の競売(以下「競売」という。)を請求する場合の訴訟に関する次の記述のうち、区分所有法、民事訴訟法及び民事執行法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

1 競売の訴訟の口頭弁論終結後から競売開始までの間に、被告が区分所有権及ぴ敷地利用権を第三者に譲渡した場合には、管理者は、その譲受人に対しては、当該訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできない。

○ 正しい。民事執行法は、平成17年 マンション管理士試験 「問4」 もある。
  
まず、区分所有法第59条は、
 「(区分所有権の競売の請求)
  第五十九条  第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の
区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる
    2  第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。
    3  第一項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。
    4  前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。」
 とあります。
  この規定は、マンション生活において、区分所有者の誰かが、激しい「共同の利益に反する行為(同法第6条)」をしているために、その障害がひどく、もうその人をマンションから強制的に追い出す以外の方法しかとれない場合を想定したものです。今まで住んでいたマンションから、他の人により強制的に排除されるという、1戸建ての環境ではありえない、かなり恐ろしい規定です。
 具体的な例としては、専有部分が暴力団の組事務所として使用され、暴力団同士の抗争の舞台になった時に認められたことがあります。
 そこで、設問の「
管理費の滞納」がこの区分所有法第59条に該当するほどの行為かは、裁判でも争いがあったのですが、最近は、「管理費の滞納」であっても、区分所有法第59条の適用がされる傾向にあります。
 設問の第三者である管理者でも、同法第59条2項により、訴訟の提起はできます。ここで、訊いているのは、著しい障害を起こした人が、具体的な競売の判決を受ける前に、マンションを売ってしまった場合に、それを買った人(著しい障害はおこしていない人)に対して、元の区分所有者を当事者として判決された競売ができるかということです。
 区分所有法第59条制定の精神は、問題を起こした人をそのマンションから排除するための規定ですから、排除の対象にした区分所有者がもう既にそのマンションからいなくなっているのなら、後から買った人(譲受人)は、その時点では、問題をおこしていないため、排除の対象にすべきではないと考えます。旧区分所有者とは状況が異なっていますから、旧区分所有者での判決は、当事者適格を欠くと考える方が妥当でしょう。
 これについては、平成23年10月11日の最高裁の判決が該当しています。http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81691&hanreiKbn=02
 その判決文の主旨は「建物の区分所有等に関する法律59条1項に基づく訴訟の口頭弁論終結後に被告であった区分所有者がその区分所有権及び敷地利用権を譲渡した場合に,その譲受人に対し同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできない。 」というものですから、判例によれば正解です。(当判決については、井上様のアドバイスを戴いております。)
 ここで、前問「問5」の選択肢1で取り上げた、訴訟の確定判決の効力は、民事訴訟法第115条1項3号の「承継人」に対しても効力を有するを深く追及すると、裁判とは、曖昧さを残しているということに気が付くでしょう。
 「(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)
  第百十五条  確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
     一  当事者
     二  当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
     三  
前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
     四  前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者
    2  前項の規定は、仮執行の宣言について準用する。」
 また、この「問9」をやった後に、 平成24年 マンション管理士試験  「問26」 の選択肢4をやると、占有者の追い出し(区分所有法第60条)との違いもわかるでしょう。



2 競売の請求の訴えにおいて、管理者は仮執行の申立てを行うことができ、当訴訟において勝訴判決を得た場合、仮執行の宣言を付した判決を債務名義として、競売を行うことができる。

X 誤っている。
  仮執行とは、民事訴訟法第259条
 「(仮執行の宣言)
  第二百五十九条  
財産権上の請求に関する判決については、裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言することができる
   2  手形又は小切手による金銭の支払の請求及びこれに附帯する法定利率による損害賠償の請求に関する判決については、裁判所は、職権で、担保を立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない。ただし、裁判所が相当と認めるときは、仮執行を担保を立てることに係らしめることができる。
   3  裁判所は、申立てにより又は職権で、担保を立てて仮執行を免れることができることを宣言することができる。
   4  
仮執行の宣言は、判決の主文に掲げなければならない。前項の規定による宣言についても、同様とする。
   5  仮執行の宣言の申立てについて裁判をしなかったとき、又は職権で仮執行の宣言をすべき場合においてこれをしなかったときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、補充の決定をする。第三項の申立てについて裁判をしなかったときも、同様とする。
   6  第七十六条、第七十七条、第七十九条及び第八十条の規定は、第一項から第三項までの担保について準用する。 」
  とあります。
  日本の裁判制度は三審制であるため、第1審で判決をもらっても、判決に不服があると第2審、第3審となり、最終的に判決が確定するまで、時間がかかることが多いのが現状です。そこで、判決が最終的に確定する前でも、財産上の権利(金銭の支払いなど)に関する請求なら、あとで回復・修復できる可能性がありますので、裁判所の判断により、判決が確定する以前でも、執行することが認められています。これが、裁判における「仮執行の宣言」です。
  そこで、仮執行の申立ては、全ての請求において認められるものではありません。もし競売が、最終的に確定する前に執行されると、後の判決で覆った場合に、権利関係の修復は困難なものになります。競売の請求では、管理者でなくても仮執行の申立てはできませんから誤りです

 2013年 2月23日 追記:出題が不明確なので、上の解説は「仮執行の申立てができるか」の方に中心を置いたのですが、下の選択肢3とも絡んで、区分所有法第59条の競売請求では、勝訴判決を得れば、形式的競売として、担保権の実行としての競売の例と同じように債務名義がなくても競売ができるとも捉えることもできる?


3 競売は、滞納管理費を回収するために行われる担保不動産競売であるので、区分所有権及び敷地利用権に設定されていた担保権が買受人に引き受けられることはない。

X 誤っている。
  まず、民事執行法の勉強です。担保不動産競売とは、民事執行法第180条以下に規定され、
 「(不動産担保権の実行の方法)
  第百八十条  不動産(登記することができない土地の定着物を除き、第四十三条第二項の規定により不動産とみなされるものを含む。以下この章において同じ。)を目的とする担保権(以下この章において「不動産担保権」という。)の実行は、次に掲げる方法であつて債権者が選択したものにより行う。
    一  
担保不動産競売(競売による不動産担保権の実行をいう。以下この章において同じ。)の方法
    二  担保不動産収益執行(不動産から生ずる収益を被担保債権の弁済に充てる方法による不動産担保権の実行をいう。以下この章において同じ。)の方法」などとあり、
  不動産(土地、建物)に設定された抵当権や質権などの担保権により、該当の不動産に対して、競売を行うものです。
 
裁判の判決によって行われる競売は「強制執行」と呼ばれるのに対して、一方、担保権による競売は、「担保不動産競売」と呼ばれ、別の扱いとなります。
 しかし、強制執行も担保権による競売も、執行の方法などでは、地方裁判所を介して行うなど殆ど違いがありませんが、強制執行をするには、判決文の中で強制執行をしてもよいという「
債務名義が必要」ですが、担保権による競売には、債務名義が必要でなく、不動産登記法での登記事項証明書などがあれば、執行できる点が大きな違いです
 そこで、設問のマンションの滞納管理費の回収を目的とした、区分所有法第59条による強制競売の性質ですが、これは、民事執行法第195条
 「(留置権による競売及び民法 、商法 その他の法律の規定による換価のための競売)
  第百九十五条  留置権による競売及び民法 、商法
その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による。」
 に該当するとされ、一見、条文を読んだだけでは、これなら実態は担保権と同じではないかと思うのですが、 民事執行法上の言葉として、「担保不動産競売」ではなく、この競売は換価のための競売として
「形式的競売」と呼ばれますから誤りです。
 また、設問の後半は、民事執行法第59条
 「(売却に伴う権利の消滅等)
  第五十九条  不動産の上に存する先取特権、使用及び収益をしない旨の定めのある質権並びに抵当権は、売却により消滅する。
    2  前項の規定により消滅する権利を有する者、差押債権者又は仮差押債権者に対抗することができない不動産に係る権利の取得は、売却によりその効力を失う。
    3  不動産に係る差押え、仮差押えの執行及び第一項の規定により消滅する権利を有する者、差押債権者又は仮差押債権者に対抗することができない仮処分の執行は、売却によりその効力を失う。
    4  
不動産の上に存する留置権並びに使用及び収益をしない旨の定めのない質権で第二項の規定の適用がないものについては、買受人は、これらによつて担保される債権を弁済する責めに任ずる。
 とあり、
 4項により、買受人が弁済しなければならない担保権もありますから、ここも誤りです。



4 競売の目的である区分所有権及び敷地利用権にその価額を上回る優先債権がある場合において、競売による買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たないときは、競売を行うことができない。 

X 誤っている?
  競売をしても、売却代金が手続費用や債権額に満たないことも多くあります。競売の目的は債権の回収ですから、目的を達成できない場合には、もう競売を止めようとする規定があります。
 
剰余主義と呼ばれる民事執行法第63条です。
 「(剰余を生ずる見込みのない場合等の措置)
  第六十三条  執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、その旨を差押債権者(最初の強制競売の開始決定に係る差押債権者をいう。ただし、第四十七条第六項の規定により手続を続行する旨の裁判があつたときは、その裁判を受けた差押債権者をいう。以下この条において同じ。)に通知しなければならない。
     一  差押債権者の債権に優先する債権(以下この条において「優先債権」という。)がない場合において、不動産の買受可能価額が執行費用のうち共益費用であるもの(以下「手続費用」という。)の見込額を超えないとき。
     二  優先債権がある場合において、不動産の買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たないとき。
   2  差押債権者が、前項の規定による通知を受けた日から一週間以内に、優先債権がない場合にあつては手続費用の見込額を超える額、優先債権がある場合にあつては手続費用及び優先債権の見込額の合計額以上の額(以下この項において「申出額」という。)を定めて、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める申出及び保証の提供をしないときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てに係る強制競売の手続を取り消さなければならない。ただし、差押債権者が、その期間内に、前項各号のいずれにも該当しないことを証明したとき、又は同項第二号に該当する場合であつて不動産の買受可能価額が手続費用の見込額を超える場合において、不動産の売却について優先債権を有する者(買受可能価額で自己の優先債権の全部の弁済を受けることができる見込みがある者を除く。)の同意を得たことを証明したときは、この限りでない。
     一  差押債権者が不動産の買受人になることができる場合
        申出額に達する買受けの申出がないときは、自ら申出額で不動産を買い受ける旨の申出及び申出額に相当する保証の提供
     二  差押債権者が不動産の買受人になることができない場合
        買受けの申出の額が申出額に達しないときは、申出額と買受けの申出の額との差額を負担する旨の申出及び申出額と買受可能価額との差額に相当する保証の提供
   3  前項第二号の申出及び保証の提供があつた場合において、買受可能価額以上の額の買受けの申出がないときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てに係る強制競売の手続を取り消さなければならない。
   4  第二項の保証の提供は、執行裁判所に対し、最高裁判所規則で定める方法により行わなければならない。」
 とあります。
 そこで、解釈が難しいのですが、専有部分が暴力団事務所として使用され、他の暴力団との抗争の場となっていれば、追い出しでの解決策しかありませんが、設問のような単なる金銭である「滞納管理費の回収」において、回収の見込みがないのに、手続費用も含めて面倒な競売にする必要はない(1項2号)とそのまま捉える考え方と、2項1号のように、自ら買受人になって、今後の滞納を出さないようにする場合も、少ないでしょうがあり得ます。出題者としては、ここは誤りとさせたいようですが、滞納管理費で無剰余となると、法廷での判断も難しいところです。

 平成16年5月20日の東京高裁の判決によると、区分所有法第59条では、民事執行法第63条の「剰余主義」が排除されると言っていますが、ここまで、言い切れるかは、今後の他の判決が必要です。


答え:1 (まったく、面倒な出題だった。民事執行法まで出題するとは。区分所有法第59条と滞納管理費の関係は、今後の判例にも注意のこと。)

問10

〔問 10〕Aマンションが、甲地及び乙地の2筆にまたがって所在していたが、地震によってAの一部が滅失し、乙地上には建物が所在しなくなった。この場合に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、甲地及び乙地は、Aの区分所有者全員の共有に属するものとする。

1 乙地については、民法の共有物の管理又は変更に関する規定は適用されず、規約でAの敷地と定められたものとみなされ、区分所有法の共用部分の管理又は変更に関する規定が準用される。

○ 正しい。 平成15年 マンション管理士試験 「問3」 
  設問を読んだだけで、図が浮かぶ人はおいといて、この設問は、区分所有法第5条2項
 「(規約による建物の敷地)
  第五条  区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる。
   2  
建物が所在する土地が建物の一部の滅失により建物が所在する土地以外の土地となつたときは、その土地は、前項の規定により規約で建物の敷地と定められたものとみなす。建物が所在する土地の一部が分割により建物が所在する土地以外の土地となつたときも、同様とする。」
  に該当する
「みなし規約敷地」と呼ばれる土地の設問です。
  

 

  設問の乙地は、上の図では、B土地と考えてください。
  規約によるものであってもマンションの敷地となると、法定敷地と同様に扱われ、区分所有法第21条
 「(共用部分に関する規定の準用)
  第二十一条  建物の敷地又は共用部分以外の附属施設(これらに関する権利を含む。)が区分所有者の共有に属する場合には、第十七条から第十九条までの規定は、その敷地又は附属施設に準用する。」
 とありますから、 共用部分の変更(第17条)、共用部分の管理(第18条)、共用部分の負担・利益収取(第19条)の規定が準用されます。
 区分所有法は民法の特別法の位置にありますから、民法の共有物の管理又は変更に関する規定は適用されませんから、正しい。



2 乙地について、集会において、区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数の決議により規約に段定の定めをしない限り、区分所有者全員で、乙地に第三者のために駐車場として賃借権を設定することはできない。

X 誤っている?
  設問が不明確ですが。区分所有者全員の同意があるなら、規約を変更しなくてもできるという解釈ができます。また、賃貸借契約は、民法での「変更行為(第251条)」でなく、「管理行為(第252条)」であることも問題にしているようですが、この違いの判定は、区分所有法においてはまだ疑問がある点です。
  区分所有法は制定されてからの歴史が新しいため、区分所有法の条文と民法との解釈で競合する場合に、どちらを優先するかの判断が難しい場合が多々あります。
  民法を優先するなら、
  民法第251条
 「(共有物の変更)
  
第二百五十一条  各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」
 とあり、設問では、
区分所有者全員が、「駐車場として賃借権を設定することに同意」したのなら、特に規約を変更しなくても可能です。
  しかし、マンションという共同生活をおくる建物内での事柄は、もう、多数決を前提にした考えを優先しようとする理論もあります。
 これは、区分所有建物なら、建替えにおける規定(区分所有法第62条参照)のように、区分所有者及び議決権の各4/5以上の多数が賛成すれば、共有物である建物を壊して、反対者を追い出せます。これは、民法の「全員の合意」がなければならない理論を大きく変えるものです。
 そこで、区分所有法を優先するなら、建物が無くなった乙地は、選択肢1で引用しました、区分所有法第5条2項により、「みなし規約敷地」となっていますから、区分所有法第31条
 「(規約の設定、変更及び廃止)
  第三十一条  規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
   2  前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。」
 の規定を先に適用すべきという解釈もあり得ます。
 そして、区分所有法第22条
 「(分離処分の禁止)
  第二十二条  敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
    2  前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第十四条第一項から第三項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。
    3  前二項の規定は、建物の専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合に準用する。 」
 とあり、
 この専有部分と敷地利用権の分離処分の禁止に該当する処分には、敷地(規約敷地を含めて)だけに賃借権を設定する行為は、入らないとする説があります。この説によると、規約敷地のままでも、つまり、規約を変更しなくても、乙地は第三者に駐車場として貸せることになります。
 しかし、設問のような、建物の一部滅失となると、物理的な変更も伴っているため争いのある点です。


3 乙地について、集会において、区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数の決議により、Aの敷地と定められたものとみなされた規約を廃止し、Aの区分所有者全員の同意を得て、乙地を売却することができる。

○ 正しい。
   上の選択肢2と矛盾した設問です。選択肢2では、「賃貸借」が、この選択肢3では「売却」となっていて、出題者は、ここらの処分の違いも問いたいようではありますが、選択肢2で述べましたように、民法第251条には、
 「(共有物の変更)
  第二百五十一条  
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」
 とありますから、
 Aマンションの区分所有者全員の同意があれば、設問の前半の「Aの敷地と定められたものとみなされた規約を廃止」の手順を踏まずに、該当の土地を売却できるという解釈も成り立ちますが、ここは、区分所有法第22条
 「(分離処分の禁止)
  第二十二条  敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
    2  前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第十四条第一項から第三項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。
    3  前二項の規定は、建物の専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合に準用する。 」
 とあり、
 この専有部分と敷地利用権の分離処分の禁止に該当するので、売却の前に、建物の敷地から外しておこうという考えです。これは、妥当な判断です。



4 乙地について、集会において、区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数の決議により、規約に別段の定めをすれば、Aの区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る乙地の敷地利用権を分離して処分することができる。 


○ 正しい。
  選択肢1や選択肢2、そして選択肢3で述べましたように、以前は建物があり、そのマンションの敷地となっていた土地が、上にあった建物が滅失した場合には、区分所有法第5条2項
   「(規約による建物の敷地)
  第五条  区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる。
   2  建物が所在する土地が建物の一部の滅失により建物が所在する土地以外の土地となつたときは、その土地は、前項の規定により規約で建物の敷地と定められたものとみなす。建物が所在する土地の一部が分割により建物が所在する土地以外の土地となつたときも、同様とする。」
 により、
「規約で建物の敷地と定められたものとみなされます」から、この土地は依然として、「建物の敷地」です。
 建物の敷地なら、区分所有法第2条5項及び同上6項
 「(定義)
  第二条
    5  この法律において「建物の敷地」とは、建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により建物の敷地とされた土地をいう。
    6  この法律において「敷地利用権」とは、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利をいう。 」
 により、敷地利用権の対象となり、敷地利用権となると、
 区分所有法第22条
 「(分離処分の禁止)
  第二十二条  敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
    2  前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第十四条第一項から第三項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。
    3  前二項の規定は、建物の専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合に準用する。」
 です。
  この第22条1項では、原則として、 区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができませんが、規約があれば、専有部分と敷地利用権を分離できます。規約の変更は、区分所有法第31条
 「(規約の設定、変更及び廃止)
  第三十一条  規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
   2  前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。」
 とあり、可能で、正しい。



答え:2  (設問としては、多いに疑問がある出題でした。なお、選択肢2は、 「問25」 の選択肢4 とも比較検討して下さい。)
マンション管理センターの答え:2

問11

〔問 11〕一団地内に下図のとおり、専有部分のある建物であるA棟及びB棟並びに団地建物所有者の共有に属するごみ集積所、平面駐車場、管理事務所及び集会所がある場合、規約により団地共用部分とすることができるものの組合せは、区分所有法の規定によれば、次のうちどれか。



 平成20年 マンション管理士試験 「問11」 、平成15年 管理業務主任者試験 「問37」 、 平成14年 管理業務主任者試験 「問31」 。
 まず、全体の解説です。団地関係で規約により共用部分にできる規定は、区分所有法第67条
 「(団地共用部分)
  第六十七条  
一団地内の附属施設たる建物(第一条に規定する建物の部分を含む。)は、前条において準用する第三十条第一項の規約により団地共用部分とすることができる。この場合においては、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
    2  一団地内の数棟の建物の全部を所有する者は、公正証書により、前項の規約を設定することができる。
    3  第十一条第一項本文及び第三項並びに第十三条から第十五条までの規定は、団地共用部分に準用する。この場合において、第十一条第一項本文中「区分所有者」とあるのは「第六十五条に規定する団地建物所有者」と、第十四条第一項及び第十五条中「専有部分」とあるのは「建物又は専有部分」と読み替えるものとする。 」
 とあり、
 1項により、一団地内の附属施設たる建物で、引用されています第1条
 「(建物の区分所有)
  第一条  一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。」
 です。
 言い換えますと、団地内にあって、附属の施設の建物ですから、別棟の集会所や、建物内にあっても専有部分と区別しておきたい管理業務室などが、規約によって団地共用部分にすべきものに該当します。 別の判断として、マンションの外から第三者がみて、これは、専有部分か共用部分かの判断が付きにくいものと考えることもできます。



ア 敷地上の屋根のないごみ集積所

X 団地共用部分にできない。
  屋根があると判断が面倒になるのですが、屋根のないごみ集積所であれば、建物とは言えないでしょうから、団地共用部分にできません。


イ 敷地をアスファルト舗装して白線で区画した平面駐車場

X 団地共用部分にできない。
  これも、単に敷地をアスファルト舗装して白線で区画しただけでは、建物とは言えないでしょうから、団地共用部分にできません。


ウ A棟にある構造上及び利用上独立した建物部分である管理事務所

○ 団地共用部分にできる。
  団地共用部分にできるというよりも、これこそ、規約で団地共用部分にしないと、専有部分にもなります。


エ 別棟の建物である集会所

○ 団地共用部分にできる。
  これも、規約で団地共用部分にすべきです。 



1 アとイ
2 イとウ
3 ウとエ
4 エとア


答え:3 (できるのは、ウとエ)

問12

〔問 12〕Aが死亡し、その子B、C及びDが、各1/3の割合でAの財産を相続した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Aがマンションの一室の区分所有者であった場合で、Aの死亡前からAと同居していたBがそのままそのマンションに居住しているときには、遺産分割の前でも、C及びDは共同してBに対して、その明渡しを請求することができる。

X 誤っている。 できない。

  相続は、民法896条
 「(相続の一般的効力)
  第八百九十六条  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。 」
 とあり、
 遺産の分割相続となると、
 民法第909条
 「(遺産の分割の効力)
  第九百九条  
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。 」
 とあり、
  遺産分割前では、まだ、子B、C及びDは財産を相続していませんから、マンションの一室の区分所有者としての権利を持っていませんので、C及びDは共同してBに対して、その明渡しを請求することができません。また、遺産相続後であっても、明渡し請求となると、Bも共有者の1人であるため、当然には、共有物の明渡しは請求できないという判例(最高裁:昭和41年5月19日)もあります。


2 Aがマンションの一室の区分所有者であった場合で、Eにそれを賃貸していたが、Aの死亡前に、AE間の賃貸借契約が有効に解除され契約が終了していたときには、その後も退去していないEに対して、Cは単独でその明渡しを請求することができる。

○ 正しい。 できる。 
  賃貸借契約が有効に解除されていて、その終了後もそこにいるとなると、そのEは不法占拠者になります。
 そこで、3人で共同相続した内のC1人だけで、不法占拠者Eに対して、明渡しを請求ができるのか、どうかです。
 共同相続は、民法第898条
 「(共同相続の効力)
  第八百九十八条  相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」
 とあり、
   そして、共有関係となると、民法第250条から第252条が該当します。
 「(共有持分の割合の推定)
  第二百五十条  各共有者の持分は、相等しいものと推定する。」
 「(共有物の変更)
  第二百五十一条  各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」
 「(共有物の管理)
  第二百五十二条  共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。」
 とあり、
 これらを簡単に言いますと、各共有者の持分は特に決めていなければ等分で、
@共有物の変更には全員の合意が必要で、 A管理に関する事項は持分の過半数で決し、この他の B保存行為なら単独でできる ということです。
 しかし、何が変更行為か、管理行為か、また保存行為かは、実に判断が難しく、特に建物の賃貸借では、裁判例によることとなります。
 そして、
保存行為と判断できるのは、
   ・共有物の単なる現状維持程度の補修・修繕
   ・共有物の侵害に対する妨害排除請求
   ・
不法占拠者に対する返還要求
   ・所有権保存登記
 管理行為は、
   ・使用方法の協議
   ・利用行為。収益を図る
   ・改良行為して経済的価値を高める
 との判断で、設問の不法占拠者に対する明渡し請求(返還請求)は、共有関係では保存行為に該当すると考えられますから、共有者の1人Cは単独でできますから、正しい。


3 Aがマンションの一室の区分所有者であった場合で、Aの死亡後、BがC及びDに無断で、第三者であるFにそのマンションを使用させているときにはC及びDは共同してFに対して、その明渡しを請求することができる。

X 誤っている。できない。
  共有者の1人(持分:B=1/3)が他の共有者に無断でした行為に対して、持分価格の過半数(持分:C+D=2/3)があれば、その行為を止めさせられるかどうかです。
 この場合には、最高裁:昭和63年5月20日 の判断では、共有者全員の承諾がなくても、共有者の1人から許されれば、それに基づいた行為をした第三者Fに対しては、当然には、他の共有者は、明渡しの請求はできないとしていますから、誤りです。



4 Aがマンションの一室をGから賃借し、1人でそこに居住していた場合、Gは、Aの死亡を理由として、その賃貸借契約を解除することができる。

X 誤っている。 できない。
  民法では、無償での使用貸借は借主の死亡で終了するとしています(民法第599条)が、有償の賃貸借では賃借人が死亡した場合、その賃貸借契約は、相続されると解釈しています。(最高裁:昭和36年12月22日最高裁:昭和42年4月28日
  これらの判例によると、賃借人Aが例え1人で住んでいても、誰か相続人の存在も考えられますから、家主Gは、借家人の死亡だけを理由としては、その賃貸借契約を解除することができませんから、誤りです。
  参考:民法第601条
 「(賃貸借)
  第六百一条  賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。 」



答え:2 

問13

〔問 13〕夫Aと妻Bは、甲マンションの301号室の区分所有権を各1/2の持分で共有し、同室で生活をしているが、管理費及び修繕積立金を滞納している場合に関する次の記述のうち、民法及び破産法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

1 Aが破産手続により免責許可の決定を受け、その決定が確定したときは、管理組合は、Bに対し滞納額全額の請求をすることはできず、その1/2の額のみ請求することができる。

X 誤っている。全額請求できる。 平成21年 マンション管理士試験 「問16」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問15」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問1」 。
  マンションの区分所有者は、原則として持っている専有部分の床面積の割合で管理費や修繕積立金を負担することになっています。その規定は、区分所有法第19条
 「(共用部分の負担及び利益収取)
  第十九条  
各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。」
 です。
 そこで、設問の「管理費及び修繕積立金」の性格ですが、「管理費及び修繕積立金」は、室(専有部分)ごとに設定されています。その室の持分が半分づつの2人の共有となっているので1/2だけの「管理費及び修繕積立金」が収められても、その目的を達することができません。室(専有部分)に対する全額が収められる性格のものです。このような支払いを必要とする債務は、分割できないため 
「不可分債務」 と呼ばれます。
 そして、不可分債務では、共有者間では、自分の責任でなくても連帯して責任を負う 
「不真正連帯債務」 の関係があると解され、設問のような場合には、管理費等の全額の支払い義務がありますから、管理組合は、区分所有権が1/2の妻Bに対して、滞納金額の全額を請求できますから、誤りです。
 参考:民法第428条以下
 「(不可分債権)
  第四百二十八条  債権の目的がその性質上又は当事者の意思表示によって不可分である場合において、数人の債権者があるときは、各債権者はすべての債権者のために履行を請求し、債務者はすべての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。 」
 なお、破産については、別途勉強をしてください。
  破産法の勉強ができない人へ:破産法第253条
 「(免責許可の決定の効力等)
  第二百五十三条  免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。
ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない
      一  租税等の請求権
      二  破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
      三  破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
      四  次に掲げる義務に係る請求権
        イ 民法第七百五十二条 の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
        ロ 民法第七百六十条 の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
        ハ 民法第七百六十六条 (同法第七百四十九条 、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
        ニ 民法第八百七十七条 から第八百八十条 までの規定による扶養の義務
        ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
      五  雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
      六  破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
      七  罰金等の請求権
    2  
免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさない
    3  免責許可の決定が確定した場合において、破産債権者表があるときは、裁判所書記官は、これに免責許可の決定が確定した旨を記載しなければならない。
  とあり、
 2項を参考にしてください。



2 管理費と修繕積立金のいずれも月ごとに支払われるものであるが、その債権の消滅時効期間は管理費については5年、修繕積立金については10年である。

X 誤っている。 共に、消滅時効期間は、5年。
  平成23年 マンション管理士試験 「問16」 平成22年 マンション管理士試験 「問7」 、平成21年 管理業務主任者試験 「問39」  など。
  管理費等の消滅時効については、その消滅時効期間について定期給付債権(民法第169条)に該当し5年間とする考えと、一般債権(民法第167条1項)に該当して10年間とする考えがあり、裁判上でも争いがあったのですが、最高裁の平成16年4月23日の判決で、
滞納管理費と修繕積立金は共に、5年の消滅時効となっていますから、誤りです。
 私は、管理費の消滅時効:5年は妥当ですが、修繕積立金は管理費とはその性格が異なっているため、共に 5年とする判決には疑問を抱いていますが。
 参考:民法第167条
 「(債権等の消滅時効)
  第百六十七条  債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
    2  債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。
 民法第169条
 「(定期給付債権の短期消滅時効)
  第百六十九条  年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、
五年間行使しないときは、消滅する。 」


3 A及びBが、滞納している管理費及び修繕積立金の支払を「3ヵ月待ってほしい。」と、口頭で管理組合に告げていたのみでは消滅時効は中断しない。

X 誤っている。承認となり時効は中断する。
  平成23年 管理業務主任者試験 「問10」 、平成22年 マンション管理士試験 「問7」 、平成21年 マンション管理士試験 「問13」 、平成21年 管理業務主任者試験 「問11」 、など 過去から出題は多い。
 滞納の支払いを3ヶ月待ってほしいという行為は、滞納の事実を認める行為となり、時効との関係は、民法第147条
 「(時効の中断事由)
  第百四十七条  
時効は、次に掲げる事由によって中断する
     一  請求
     二  差押え、仮差押え又は仮処分
     三  
承認
 とあり、
 滞納の事実を認める行為は3号の承認にあたります。すると、承認した時点で、それまで経過した時間の効力が無くなり、また新しく時間が進む、「時効の中断」となりますから、誤りです。
 なお、催告なら、民法第153条
 「(催告)
  第百五十三条  催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法 若しくは家事審判法 による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。 」
 とあり、
 催告後の裁判上の請求などがないと時効は中断しませんが、承認では、口頭であろうと文書であろうと、認めた行為が相手方に伝わった時点で時効が中断します。



4 規約に滞納管理費及び修繕積立金の遅延損害金についての定めがない場合でも、管理組合は、年5%の遅延損害金を付加して請求することができる。

○ 正しい。 平成21年 マンション管理士試験 「問12」 、平成21年 管理業務主任者試験 「問6」 、平成19年 管理業務主任者試験 「問10」 、平成16年 管理業務主任者試験 「問11」 など。
  管理費及び修繕積立金は金銭債権です。滞納の理由で債務が不履行になれば、損害賠償を請求できます。
 それが、民法第419条
 「(金銭債務の特則)
  第四百十九条  
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
    2  前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
    3  第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。」
 とあり、
 1項により、当事者間で約束した遅延損害金の規定があれば、 それに従い、定めていないときは、法定利率が適用されるとなっていますから、民法第404条
 「(法定利率)
  第四百四条  利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、
その利率は、年五分とする。 」
 とあり、
 管理組合は、年5%の遅延損害金を付加して請求することができます。なお、利率と言っていますが、損害賠償です。



答え:4 (ここは、易しい。)

問14

〔問 14〕Aは、Bに対して、平成12年4月1日に、瑕疵担保責任期間を引渡しの日から1年間とする特約をして中古マンションの一室を売却し、同年5月1日にこれを引き渡した後、Bが浴室設備に瑕疵を発見した場合におけるAの瑕疵担保責任に関する次の記述のうち、民法及び宅地建物取引業法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

1 Aが宅地建物取引業者でない場合、Bが平成13年4月10日に瑕疵を発見し、同月20日にAに対して瑕疵の存在を指摘したうえ、平成13年5月10日にAに対して損害賠償請求をすれば、Aは瑕疵担保責任を免れない。

X 誤っている? 売主の瑕疵担保責任は、民法と宅地建物取引業法とを絡めて、またアフターサービスも絡めて、過去から出題が多いので、別途まとめていますから、これも参考にしてください。http://www20.tok2.com/home/tk4982/kashi-tanpo.htm
 平成23年 マンション管理士試験 「問12」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問41」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問13」 、 平成22年 管理業務主任者試験 「問42」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問4」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問41」 「問42」 、平成20年 マンション管理士試験 「問16」 、平成20年 管理業務主任者試験 「問41」 など、必ず出る問題です。


 面倒な日付の並んだ、瑕疵担保責任の問題です。
 こんな出題は、問題用紙の空いているところに図を描いてみましょう。
 なお、この設問の「瑕疵担保責任期間を引渡しの日から1年間とする特約」は、有効です。特約は、選択肢3のように売主Aが、宅地建物取引業者である時には、買主にとって不利な期間を定めた場合は無効となります。


 まず、売主Aは、宅地建物取引業者でないとありますから、これは、単純に民法第570条
 「(売主の瑕疵担保責任)
  第五百七十条  売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。 」
 とあり、引用されています、民法第566条は、 
 「(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
  第五百六十六条  売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
   2  前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
   3  前二項の場合において、
契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。 」
 とあり、
 設問のような「浴室設備に瑕疵」があり、そのために契約の目的が達せられない場合には、買主Bは、 @契約の解除 A契約の解除が出来ないときは損害賠償請求 ができます。しかし、民法では、修補(修繕)の請求は入っていないことに注意してください。
 そこで、設問のポイントは、
特約としてある「瑕疵担保責任の期間が引き渡しから1年」と、3項の「買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない」です。
 参考になるのは、平成4年10月20日の最高裁の判例です。 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319122100890884.pdf
 この判決文の中で、「各法条の文言に照らすと、この(注:瑕疵担保責任の)損害賠償請求権を保存するには、後記のように、売主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げることをもって足り、裁判上の権利行使をするまでの必要はないと解するのが相当である。」
 そして
 「一年の期間経過をもって、直ちに損害賠償請求権が消滅したものということはできないが、右損害賠償請求権を保存するには、
少なくとも、売主に対し、具体的に瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し、請求する損害額の算定の根拠を示すなどして、売主の担保責任を問う意思を明確に告げる必要がある。」と述べています。
 そこで、判例に従うと、設問の「平成13年4月10日の瑕疵発見」は、まだ、買主だけの段階で、売主に具体的には伝えていませんから、この日は外していいでしょう。
 次に、「平成13年4月20日の指摘」と「平成13年5月10日の損害賠償請求」ですが、平成13年4月20日であれば、引渡しの日から1年間とする特約に該当しますが、平成13年5月10日となると特約が切れてしまいます。
 設問の「指摘」の内容が明確でなく曖昧なために、判断が難しいのですが、この「指摘」は、出題者としては、判例のような「売主に対し、具体的に瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し、請求する損害額の算定の根拠を示すなどして、売主の担保責任を問う意思を明確に告げていない」とさせたいようです。そして、「平成13年5月10日の損害賠償請求」が、判決文に該当しますが、もう瑕疵担保責任期間を引渡しの日から1年間とする特約を過ぎたから、誤っているという方向の出題のようです。(出題としては、もっと明確にしないと適切でありません。)



2 Aが宅地建物取引業者でなく瑕疵の存在を知りながらBに告げなかった場合、Bが平成12年5月10日に瑕疵を発見し、平成13年6月10日にAに対して瑕疵を告げて損害賠償請求をすれば、Aは瑕疵担保責任を免れない。 

X 誤っている。 平成23年 管理業務主任者試験 「問42」 、平成20年 管理業務主任者試験 「問41」 、 平成18年 管理業務主任者試験 「問42」 、平成14年 管理業務主任者試験 「問44」 。
  
 売主Aが瑕疵の存在を知りながら買主Bに告げなかった場合には、民法第572条
 「(担保責任を負わない旨の特約)
  第五百七十二条  
売主は、第五百六十条から前条までの規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。 」
 とあり、
 宅地建物取引業者でない売主Aは瑕疵担保責任を負わない特約ができるのですが、「瑕疵の存在を知りながら買主Bに告げなかった」場合には、選択肢1で引用した民法第570条の適用となり、
準用されています、民法第566条
 「(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
  第五百六十六条  売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
   2  前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
   3  前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。 」
 となり、
 3項「
契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない」が適用されます
 そこで、設問は、瑕疵を発見したのが、平成12年5月10日ですが、損害賠償請求は平成13年6月10日で、これでは、買主が事実を知った時から一年以上が過ぎていますから、売主Aは瑕疵担保責任は負いませんから、誤りです。

 

3 Aが宅地建物取引業者である場合、Bが平成13年5月10日に瑕疵を発見し、平成13年6月10日にAに対して損害賠償請求をすれば、Aは瑕疵担保責任を免れない。 

○ 正しい。
  今度は、売主Aが宅地建物取引業者の場合です。すると、Aは宅地建物取引業者として、宅地建物取引業法第40条の規定
 「(瑕疵担保責任についての特約の制限)
  第四十条  宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、民法 (明治二十九年法律第八十九号)第五百七十条 において準用する同法第五百六十六条第三項 に規定する期間について
その目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条 に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない
    2  
前項の規定に反する特約は、無効とする。 」
 とあり、
 売主の瑕疵担保責任として、民法第566条3項の「買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない」を「不動産の引渡し日から2年以上とする」特約だけが有効となり、設問では、
「瑕疵担保責任期間を引渡しの日から1年間とする特約」とあり、この特約は宅地建物取引業法第40条に違反するため無効となりますから、この場合には民法の適用となります。
 そこで、買主Bが平成13年5月10日に瑕疵を発見して、平成13年6月10日(1月後)に売主Aに対して損害賠償請求をするのは、買主が事実を知った時から一年以内の条件を満たしていますから、正しい。


4 Aが宅地建物取引業者である場合、Bが平成22年5月10日に瑕疵を発見し、平成22年6月10日にAに対して損害賠償請求をすれば、Aは瑕疵担保責任を免れない。

X 誤っている。
  日付に注意してください。今度は、平成12年5月1日に引渡してから、10年が過ぎても売主の瑕疵担保責任が追及できるのか、言い換えますと、買主の瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効があるかということです。
 これには、平成13年11月27日:最高裁判決:http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120610147637.pdf があり、「瑕疵担保による損害賠償請求権につき同法167条1項の適用が排除されると解することはできない。」とあり、
 民法第167条
 「(債権等の消滅時効)
  第百六十七条  
債権は、十年間行使しないときは、消滅する
    2  債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。」 の
 1項により、
瑕疵担保による損害賠償請求権は10年で消滅しますから、売主Aが宅地建物取引業者であっても、買主はもう瑕疵担保による損害賠償請求はできませんから、誤りです。


答え:3 (正解が1つということで、3 を正しいものにしましたが、選択肢1の「瑕疵の存在の指摘」は、疑問のある文章です。)
 また、 「問3」 の長文の出題といい、この出題の選択肢1のように、余りにも入り組んだ出題は、決められた時間内に回答を求める試験問題において、実に適切でない出題方法です。改めるべきです。
マンション管理センターの答え:3

問15

〔問 15〕Aは、その所有する甲マンション1階の店舗部分(101号室)を、Bに対し賃貸し、Bは、引渡しを受けた後に、これをCに転貸し引き渡した。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているのはどれか。

1 AとBとの賃貸借契約において、あらかじめ第三者に対する転貸をAが承諾していた場合、Aはこれを撤回することはできず、BがCに101号室を転賃するに当たって、改めてAに承諾を求める必要はない。

○ 正しい。 賃借権の転貸(また貸)も出題は多い。 平成23年 管理業務主任者試験 「問3」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問3」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問5」 、 平成19年 管理業務主任者試験 「問6」 、平成18年 マンション管理士試験 「問5」 、平成15年 管理業務主任者試験 「問4」 、平成13年 マンション管理士試験 「問14」 。

  賃借権の転貸は、まず、民法第612条
 「(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
  第六百十二条  
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない
    2  賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。」
 とあり、さらに、民法第613条
 「(転貸の効果)
  第六百十三条  賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
    2  前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。」
 です。
  設問の、元の貸主Aが、「転貸(また貸し)」を承認していた場合に、その承諾を撤回できるか、どうかはもう条文には規定されていませんから、解釈の世界の問題です。
 これには、昭和30年5月13日の最高裁の判決があります。http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319124221337856.pdf
 この判決文では、「賃貸人が賃借人に対し一旦賃借権の譲渡について承諾を与えた以上、たとえ、本件のごとく賃借人が未だ第三者と賃借権譲渡の契約を締結しない以前であつても、賃貸人一方の事情に基いて、その一方的の意思表示をもつて、
承諾を撤回し、一旦与えた賃借権の譲渡性を奪うということは許されないものと解するを相当とする。」とあり、貸主A(賃貸人)が一度与えた転貸の承諾は、撤回できませんから、正しい。


2 Aが、Bに対し、Cへの転貸を承諾した後、BがAへの賃料の支払を怠り、AとBとの間の賃貸借契約が有効に解除された場合、BとCとの転貸借契約はAがCに101号室の返還を請求した時に終了する。 

○ 正しい。
  転貸となると、選択肢1で引用した、民法第612条と第613条の問題となりますが、このような判断の設問となると、一体どの条文を適用するのか面倒な話です。
 基本とするのは、民法第613条
 「(転貸の効果)
  第六百十三条  賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
    2  前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。」
 から派生して、最高裁判決:平成5年10月27日:http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120925042371.pdf
 判決文では、「
賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、転貸人の転借人に対する債務の履行不能により終了すると解するのが相当である。」
 とあり、正しい。



3 Aが、Bに対し、Cへの転貸を承諾した後、Bの賃料不払を理由として賃貸借契約を解除するためには、Bに対して賃料の支払を催告したうえ、Cに対しても、Bの代わりに支払うよう催告して、その支払の機会を与える必要がある。

X 誤っている。 支払いの機会を与えなくてもいい。
  また借りをしている人Cにも、Bの代わりに支払うよう催告が必要かとは、これも、解釈の問題です。
  これは、判例:平成6年7月18日:最高裁。http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319130740879504.pdf
  判決文では、「
土地の賃貸借契約において、適法な転貸借関係が存在する場合に、賃貸人が賃料の不払を理由に契約を解除するには、特段の事情のない限り、転借人に通知等をして賃料の代払の機会を与えなければならないものではない。」
 とあり、転借人Cに対しても、賃借人Bの代わりに支払うよう催告して、その支払の機会を与える必要はありませんから、誤りです。



4 Aが、Bに対し、Cへの転貸を承諾した後、Cの過失による火災が生じ、101号室の一部が焼失した場合、BはAに対して損害賠償責任を負う。

○ 正しい。
  これもまた、面倒な設問です。一体いつの判例かと調べると、昭和4年6月19日の大審院の判例があるようです。
 この判例では、転貸が正当に承認された場合、転借人Cの火災があれば、転貸人Bは、賃貸人Aに対して、債務不履行の損害賠償責任を負うとしていますから、正しい。(平成23年の新司法試験の問題だった。)


答え:3  (なんとなく、選択肢3 が誤っているとの感じはしたが、根拠を探すのに、時間がかかった!)

問16

〔問 16〕マンションで生じた事故の責任に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 マンションの外壁のタイルが落下し、通行人に怪我を負わせた場合、落下の原因が外壁のタイルエ事を実施した工事業者の施工不良にあっても、管理組合は通行人に対して責任を負う。

▲ 設問が妥当でない。 この設問で該当するのは、民法第717条があり、平成23年 マンション管理士試験 「問14」 、や 平成22年 マンション管理士試験 「問16」 、 及び 「「問17」 、そして、平成22年管理業務主任者試験 「問5」 などがあるが、マンションの区分所有者の団体(区分所有法第3条)と管理組合の認識の違いから、民法第717条から進んで、区分所有法第9条ともからみ、過去の問題においても論争がある個所です。
 そこで、この設問では、民法の規定及び判例によればとしていますが、マンションで生じた事故であれば、それは、もう区分所有法も絡んで検討しなければ、マンション管理士試験の意味がありません。
 まず、民法第717条の規定は、
 「(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
  第七百十七条  
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない
   2  前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
   3  前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。」
 とあります。
 この民法第717条の規定の主旨は、「建物や橋などの建設において、建て方や修理が不完全なため、誰かが損害を受けたときには、先ずその建物や橋などの占有者(第一次)が責任を負いますが、その占有者が、私はちゃんと責任を果たしましたと立証すればその占有者は責任を逃れ、次の責任者は、建物や橋などの所有者(第二次)となり、所有者は、もう無過失で責任を負うことにしています。
  そして、区分所有法第9条
 「(建物の設置又は保存の瑕疵に関する推定)
  第九条  
建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する。 」
 とあります。
  この区分所有法第9条の主旨は、マンションでは、専有部分と共用部分の区分けが明確にできないことが多いため、マンションではその建て方や修理が不完全なため被害を受けたら、もう被害の原因は、専有部分なのか共用部分かを特定しないで、とりあえずは、被害を与えた原因は、共用部分であるとみようとするものです。(原因が、特定できた場合は、別です。)
 そこで、被害を及ぼした原因が共用部分にあるとなると、マンションの共用部分の管理は、民法第717条に戻って、まずは、占有者です。 占有者が、私は責任を果たしましたというと、次は区分所有者全員が共有者としての責任を負うことになります。
 ここで、マンションの占有者は、通常、賃借人(借りている人)になるわけですが、賃借人なら専有部分にあるベランダだと、管理すべきだと判断しますが、設問は、「マンションの外壁のタイルが落下した」とあり、ここでは、占有者の責任問題は外してくれと意味しているようですから、次の所有者全員が責任を負うとなります。
 そこで、設問は、区分所有法にも民法にも定義されていない
「管理組合」という概念を持ってきています。
 「管理組合」に近似した表現が、区分所有法第3条にあります。
 「(区分所有者の団体)
  第三条  
区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。 」
 とあるだけです。
 
法的に厳密にいうと、管理組合という存在が、ただちに民法第717条に規定される所有者全員にそのまま置き換えることは、解釈の世界になりますから、これが、区分所有法やマンションの管理の適正化の推進に関する法律(ここでは、管理組合が定義されています)などによればとなれば、設問のように、「管理組合」=区分所有者となり、選択肢1は、正しいとなりますが、解釈を違えて、「管理組合」は直ちに所有者全員ではないと捉えると、選択肢1は、誤りとなります。実に、出題として曖昧で適切ではありません。


2 マンションの外壁工事を依頼された工事業者が、工事のために管理組合から借りていた金づちをポケットに入れていたところ、そのポケットが破れていたため落下し、通行人に怪我を負わせた場合、管理組合は通行人に対して責任を負う。

X 誤っている。 負わない。
  通行人に怪我を負わせたとする不法行為の原因が「そのポケットが破れていたため」とあるので明確です。
  すると、民法第709条
 「(不法行為による損害賠償)
  第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 」
 とあります。
  例え、金づちが管理組合から借りたものでも、工事業者の過失責任となり、これだけでは、管理組合は責任を負いませんから、誤りです。



3 マンションの窓から誰かが外に向けて石を投げ、通行人に怪我を負わせた場合において、誰が投げたか分からないときには、マンションの区分所有者のうち、自らが投げたのでないことを証明できない者は、通行人に対して連帯責任を負う。

X 誤っている。 マンションの区分所有者に限定できない。  ここ共同不法行為は、民法の講義でも議論が多い個所です。 平成22年 マンション管理士試験 「問10」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問15」 、平成18年 マンション管理士試験 「問13」 、 平成18年 マンション管理士試験 「問15」 、 平成17年 マンション管理士試験 「問17」 。
  設問のような、被害はあっても、加害者が特定できない場合には、民法719条1項後段があります。
  「(共同不法行為者の責任)
   第七百十九条  数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。
共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする
    2  行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。」
 です。
  この共同不法行為を巡っては、行為と損害の因果関係の必要性や、川の汚染や国の責任論まで、実に判例や学説も異論がさまざまにあります。
  一応、、共同不法行為の成立要件は、参考として、昭和43年4月23日:最高裁。http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319121843993549.pdf
 この判決文では、「共同行為者各自の行為が客観的に関連し共同して違法に損害を加えた場合において、各自の行為がそれぞれ独立に不法行為の要件を備えるときは、各自が右違法を加害行為と相当因果関係にある損害についてその賠償の責に任ずべきであり、この理は、本件のごとき流水汚染により惹起された損害の賠償についても、同様であると解するのが相当である。」とあります。
  設問のような、石を投げたのが誰か不明であっても、被害があった以上誰かに責任をとらせる必要上から、この民法第719条1項後段は設定されたとするのが妥当です。
 そして、マンションから石が投げられ、誰かが被害を受けたのなら、それは私ではないと、石を投げた時間(被害が発生した時)に、マンションの中にいた人が挙証(立証)する責任があります。
 設問では、単に「マンションの区分所有者のうち、自らが投げたのでないことを証明できない者」となっているのは、誤りです。区分所有者であっても、賃貸に出していれば、居住していませんから、その区分所有者まで、自らが投げたのでないことを証明する必要はありません。専有部分を賃貸にしている場合などでは、占有者や家族などが、自らが投げたのでないことを証明しなければなりませんから、誤りです。


4 6階建てのマンションにおいて、屋上部分の施工不良があり、屋上から601号室に雨漏りが生じ、さらに、同室の床を伝わって501号室に水漏れが生じたときは、601号室に居住している区分所有者は、501号室に居住している区分所有者に対して賠償の責任を負う。

○ 正しい。負う?
  ここも設問が不適切です。民法だけでなく、区分所有法での区分所有者の団体(管理組合)の共用部分の管理も絡みますから、民法や判例によるとはかなり不適当です。
  まず、設問の「屋上部分の施工不良があり、屋上から601号室に雨漏りが生じ」については、屋上はマンションでは共用部分とされ、この管理は区分所有者の団体が行います。
 区分所有法第18条
 「(共用部分の管理)
  第十八条  共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
    2  前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
    3  前条第二項の規定は、第一項本文の場合に準用する。
    4  共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。」
  とあり、
 601号室の雨漏りについては、区分所有者の団体が責任を負います。
  しかし、「601号室の床を伝わって501号室に水漏れが生じた」とは、状況説明が曖昧な設問です。601号室に居住している区分所有者が雨漏りが下の階に行かないような適切な措置を取ったかが明確でありません。また、多くの判例で共用部分か専有部分かで問題とされる床下の配管を伝わってなどが設問では表れておらず、出題者は、601号室に居住している人の責任で水漏れが下の階にいったと言いたいようです。それなら、501号室の水漏れ責任は、601号室にありますから、正しい。



答え:4   (本当に面倒な出題だ。解説者も、解説に時間をとられる。選択肢4については、判例もいろいろと調べたが、ヒットするのがなかった。ここの”正しいを1”とするなら、もっと、区分所有者の団体と管理組合を法的に判断する根拠を、出題者は示さないといけない。また、選択肢4の状況ももっと明確にしないと、これだけで、601号室の居住者に過失がないとするには無理がある。出題委員のレベルが、本当に下がっていると感じる今年の出題です。)
マンション管理士センターの答え:1 

 なお、区分所有者の団体や管理組合については、私の「超解説 区分所有法」 の第3条 にその微妙な違いを解説していますから、この選択肢1 が妥当かどうか、判断してください。

問17

〔問 17〕甲マンションの401号室の区分所有者Aが多額の債務をかかえたまま死亡し、Aに子B及び子Cの相続人がいた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Aの死亡後、401号室の玄関扉の鍵が見当たらないため、B及びCが相談のうえ、新たな鍵に取り替えた場合は、B及びCは相続を放棄することができない。

X 誤っている。できる。 平成21年 マンション管理士試験 「問14」 、 平成18年 管理業務主任者試験 「問5」 。
  相続の放棄は、民法第915条
 「(相続の承認又は放棄をすべき期間)
  第九百十五条  相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
    2  相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。 」
 とあり、
  鍵を交換した行為は、民法第921条
 「(法定単純承認)
  第九百二十一条  次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
      一  
相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
      二  相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
      三  相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。」
 とあり、
 1号の相続財産の処分とは、財産の現状またはその性質を変更する行為や、売却・取り壊しなどが該当し、鍵の交換だけでは、1号の単純承認したものとはみなされないため、相続を放棄できますから誤りです。



2 Bが先に相続の開始を知って3ヵ月内に限定承認又は相続放棄をしなかった場合には、CがBより後に相続の開始を知ってから3ヵ月の期間が満了する前であっても、Cは相続の放棄をすることができなくなる。

X 誤っている。 できる。
 

  相続は、選択肢1で引用しました民法第915条1項
 「(相続の承認又は放棄をすべき期間)
  第九百十五条  
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。」
 とあり、
  複数の相続人がいる場合には、相続人各自が「相続の開始を知ってから3ヵ月(熟慮期間)」に「単純若しくは限定の承認又は放棄」をできますから、誤りです。
熟慮期間は、各相続人ごとに別々に進行します。
 ただし、これが限定承認をするとなると、民法第923条
 「(共同相続人の限定承認)
  第九百二十三条  相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。」
 となり、 共同相続人の全員がすることになります。



3 B及びCが、Aが401号室を区分所有するること及び多額の負債があることを知らないまま、相続の開始を知って3ヵ月が経過したときには、相続財産が全くないと信じたことに相当の理由があると認められる場合であっても、B及びCは相続を放棄することはできない。

X 誤っている。 放棄出来る場合がある。
  相続の放棄は、通常、選択肢1や2で引用しました、民法第915条
   「(相続の承認又は放棄をすべき期間)
  第九百十五条  相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。」
 とあり、
 1項により、相続の開始を知って3ヶ月(熟慮期間)が過ぎると、民法921条
 「(法定単純承認)
  第九百二十一条  
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす
     一  相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
     二  
相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき
     三  相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。」
 とあり、
 2号により「相続人は、単純承認をしたものとみなされる」のですが、この「相続の開始があったことを知った時から三箇月以内(熟慮期間)」の起算日を柔軟に考える判例があります。
 それが最高裁の昭和59年4月29日の判決です。http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120534996058.pdf
 この裁判の概要は、被相続人が死亡したことは、相続人(達)も知っており、3ヶ月を過ぎても相続の限定・放棄をしなかったため、被相続人の死亡約1年後に、被相続人の債権者が、相続人(達)に借金を払えと訴えたものです。
 この判決文では、「熟慮期間(注:知ってから3ヶ月以内)は、原則として、相続人が前記の各事実を知つた時から起算すべきものであるが、相続人が、右各事実を知つた場合であつても、右各事実を知つた時から三か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかつたのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があつて、相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、相続人が前記の各事実を知つた時から熟慮期間を起算すべきであるとすることは相当でないものというべきであり、
熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当である。」
 として、状況によっては、「知ってから3ヶ月」の起算日を変更していますから、相当な理由があれば、1年後であっても、相続の放棄ができることもありますから誤りです。(この判決文では、少数意見もあります。)



4 B及びCは、限定承認又は相続放棄をするまでの間、自己の固有財産におけると同一の注意をもって401号室を管理しなければならない。

○ 正しい。
  相続が確定しない間の相続財産の管理は、民法第918条
 「(相続財産の管理)
  第九百十八条  
相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。ただし、相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない。
    2  家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。
    3  第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。」
 とあり、
 1項に該当しますから、正しい。



答え:4 (選択肢3の判例は、裁判所にしては、人情味のある判決をしたものだと納得しています。)

問18

〔問 18〕敷地権付き区分建物についての登記申請に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 敷地権付き区分建物を新築した者から当該区分建物を売買により取得した者は、自己を表題部所有者とする表題登記を申請することができる。

X 誤っている。 自己を表題部所有者とする表題登記を申請することができない。 
  登記申請からの出題は、新しい。
  登記は大きく分けると @表示に関する登記 と A権利に関する登記 に分けられ、表題登記とは、@表示に関する登記 に該当し、一筆の土地または一個の建物に関して、最初になされる表示登記のことです。A権利に関する登記は、選択肢3のように、所有権や抵当権などが登記されます。
 新築された建物などの場合、登記記録そのものが存在していないので、登記記録そのものを新規に作成する手続きが必要になります。この場合、新規に登記記録を作成するには手順として、まず
表題部を作成する必要があり、このような登記を「表題登記」と呼んでいます。この表題登記によって初めて、建物の所在地や建物の種類、構造、また広さなどが記載されます。
 その手続きの流れは、新築建物が、区分建物(マンション)のときは、建物の表題申請義務のあるのは、「新築した建物の所有権を取得した者(多くの場合分譲マンションの分譲業者)」だけです。転得者には申請義務はありません(不動産登記法第47条)。
  所有権取得の日から1ヶ月以内に、一棟の建物に属する他の区分建物と一括して表題登記の申請をしなければなりません(不動産登記法第48条)。ただし、区分建物の原始取得者が死亡(法人では合併)等の時には、一般承継人も表題登記が出来ます(不動産登記法第47条2項)
 一括申請方式により、
区分建物の敷地利用権(敷地権)があるときは、「一棟の建物の表題部」に敷地権の対象となる土地が表示されます。
敷地権も登記事項であるため、 登記官が敷地権の割合を調査するための一棟の建物に属する全区分建物の床面積が分かります(不動産登記法第46条)。
 一棟の建物の表示に続いて、各「
専有部分の表題部」に対象の部屋(専有部分)の床面積、そしてまた表題部として、敷地権の種類(所有権とか地上権とか)と敷地権の割合が(xxxx分のyyyyy)表示されます。(不動産登記法第44条7号、9号)
 そして、「区分建物の登記記録の表題部」に「敷地権」と登記をするときは、当該敷地権の目的である「土地」の登記記録の方にも、登記官が職権で、所有権敷地権とか、地上権敷地権と記入し、これにより、建物の専有部分と土地の利用権は分離して処分できなくなります。(不動産登記法第46条)
 土地にも敷地権の表記があると、権利変動は建物の登記記録によってのみ公示されることになります。
 これが、
敷地権付き区分建物です。
 そこで設問に戻りますが、不動産登記法第47条
 「(建物の表題登記の申請)
  第四十七条  新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。
    2  
区分建物である建物を新築した場合において、その所有者について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人も、被承継人を表題部所有者とする当該建物についての表題登記を申請することができる。」
 とあり、
 2項の「その他の一般承継があったとき」に売買は該当しますから、この場合、「”被承継人(区分建物を新築した所有者)”を表題部所有者とする表題登記の申請」しかできませんから、”自己”を表題部所有者とする表題登記を申請することはできませんから、誤りです。
 なお、分かり難いのですが、この表題登記での所有者は、あくまでも表示されているだけで、権利者ではありません。真の権利者として対抗要件を備えるためには、選択肢3で出てきます、
所有権保存登記(権利部の甲区欄に記入されます)が必要です。所有権保存登記がなされると、表題部所有者は抹消されます。


2 敷地権付き区分建物を新築した者が死亡したときは、相続により当該敷地権付き区分建物の所有権を取得した者は、自己を表題部所有者とする表題登記を申請することができる。

X 誤っている。 ”自己”を表題部所有者とする表題登記を申請することができない。
  相続により当該敷地権付き区分建物の所有権を取得した場合も、選択肢1で引用しました、不動産登記法第47条2項
 「2  区分建物である建物を新築した場合において、その所有者について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人も、
被承継人を表題部所有者とする当該建物についての表題登記を申請することができる。」
 とあり、
 ”自己”を表題部所有者とする表題登記ではなく、「”被承継人(被相続人=死亡した人)を表題部所有者とした表題登記を申請しますから、誤りです



3 敷地権付き区分建物の表題部所有者から当該敷地権付き区分建物の所有権を売買により取得した者は、当該敷地権の登記名義人の承諾を得れば、自己名義の所有権保存登記を申請することができる。

○ 正しい。
  選択肢1で説明しました「表題登記」ができますと、これで、登記簿に「登記記録」が記載可能となります。
 そして、
所有権保存登記とは、選択肢1で説明しました A権利に関する登記 の権利関係の登記の始めとなります。
 所有権保存登記は、表題部にしか登記がない不動産につき、初めてする所有権の登記です。申請や嘱託による場合のほか、職権で登記される場合もあります。誰が申請できるかは、不動産登記法第74条2項
 「(所有権の保存の登記)
  第七十四条  
所有権の保存の登記は、次に掲げる者以外の者は、申請することができない。
      一  表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人
      二  所有権を有することが確定判決によって確認された者
      三  収用(土地収用法 (昭和二十六年法律第二百十九号)その他の法律の規定による収用をいう。第百十八条第一項及び第三項から第五項までにおいて同じ。)によって所有権を取得した者
   2  
区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。 」
 とあり、
 原則は、1項1号の「表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人」ですが、区分建物では、選択肢1で説明しましたように、表題部所有者は多くの場合、分譲業者ですから、2項に例外規定として、表題部所有者から所有権を売買により取得した者であっても、当該敷地権の登記名義人の承諾があれば、所有権の保存の登記ができるようになっています。この場合の所有権保存登記では、売買で所有権を取得した者は、自己の名義で所有権保存登記を申請しますから、正しい。なお、これは、冒頭省略登記と呼ばれます。



4 敷地権付き区分建物の表題部所有者が死亡したときは、相続により当該敷地権付き区分建物の所有権を取得した者は、被相続人名義で保存登記をすることなく、直接自己名義の所有権保存登記を申請することができる。

○ 正しい。 被相続人名義でも直接自己名義どちらでもいい。2つの説がある。
  選択肢3で引用しました不動産登記法第74条
 「(所有権の保存の登記)
  第七十四条  所有権の保存の登記は、次に掲げる者以外の者は、申請することができない。
      一  
表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人
      二  所有権を有することが確定判決によって確認された者
      三  収用(土地収用法 (昭和二十六年法律第二百十九号)その他の法律の規定による収用をいう。第百十八条第一項及び第三項から第五項までにおいて同じ。)によって所有権を取得した者
   2  区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。」
 とあり、
 1項1号により、敷地権付き区分建物でも表題部所有者が保存登記をしないで死亡するとその相続人が所有権保存登記を申請できます。この場合に、死亡した人(被相続人)の名義で所有権保存をするのか、直接相続した人の名義で所有権保存をするのか、ですが、どちらでもいいようです。(参考:登記研究443−93頁 にあるようですが、ここまでは、探せませんでした。
 登記簿の表題部に所有者として記載されたAが死亡してBが相続した後,さらにBが死亡した場合に,Bの相続人であるCは,C名義の所有権保存の登記を申請することができる(法74条1項1号後)(登記研究443号93頁)。



答え:3、及び 4  (答えが2つになる! しかし、時間をかけて調べたが、3 も 4 も正しい。不動産登記法からの新しい分野からの出題だけど、かなり難しい! それにしても、敷地権付き区分建物の概念がまだ、不動産の実務でも徹底していないようで、選択肢4 については、引き続き検討中です。 どなたか、明確に分かる方は、http://tk4982.at.webry.info/ へ連絡ください。)
マンション管理士センターの答え:3


2012年 2月27日:選択肢4 について:
 出題元のマンション管理センターは、問い合わせに答えないという態度をとり続けるので、2月4日に法務局に問い合わせたところ、2月26日に以下のような回答がありました。

 回答:本月4日付けのメールを拝見いたしました。
 一般論として,制定法の解釈に関して諸説ある場合の当該解釈の公定は,裁判所においてされるものであり,法務省としてお答えすることはできませんので,御理解をお願いいたします。
 なお,実際に登記申請を行う必要が生じた場合においては,不動産登記の事務は,個別の事案について,その不動産の所在地を管轄する登記所(法務局)の登記官の判断により行われるものとなります(不動産登記法(平成16年法律第123号)第6条第1項,第9条)ので,当該法務局に御相談いただきますよう,お願いいたします。

 これを受け、実務として、どう処理するかの確認を、登記所にしました。

 その回答;、現在は、解釈として、敷地権付き区分建物の表題部所有者が死亡したときは、相続により当該敷地権付き区分建物の所有権を取得した者は、被相続人名義で保存登記をすることなく、直接自己名義の所有権保存登記を申請もできるという説もある。
 また、このような場合、一度、表題部の死亡した被相続人の名義で保存登記をする説もあり、どちらにするかは、最終的には、裁判所の判断となる。
 そこで、法務局内部の勉強会では、敷地権付き区分建物の表題部所有者が死亡したときには、相続により当該敷地権付き区分建物の所有権を取得した者は、一度、表題部所有者(死亡した者)名義で、保存登記をするという考え方が強いとのことでした。
 まだ、正しいとか、誤っているという判断はできない問題である。

★このように、争いがあり、まだ現実的に、判断に任されている個所からの出題は、実に「不適切な」出題です。


 2015年 2月10日 追記: 選択肢4について、栗栖 屯 さんから、以下のメールが来ましたので、ご紹介させていただきます。
 栗栖 屯さん有難うございます。

*選択肢4について、

 ある人が自分の土地に敷地権付きのマンションを建てて表題登記を済ませた後、所有権保存登記をしないまま死去、マンションを建てた人の相続人(設問では、相続人は1人らしい‥)が、所有権保存登記をしようとした場合、どうも司法書士さんが言うには、こんなややこしい手続きをすると言っています。
http://www.konaka-dolls.com/01/004.html
http://shihoshoshi-yamaguchi.com/staffblog/%E6%9B%B8%E5%BC%8F/%E6%95%B7%E5%9C%B0%E6%A8%A9%E4%BB%98%E3%81%8D%E5%8C%BA%E5%88%86%E5%BB%BA%E7%89%A9%E3%81%AE%E7%9B%B8%E7%B6%9A%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E4%BF%9D%E5%AD%98%E7%99%BB%E8%A8%98
   1.不登法74条1項1号後段の相続人による保存登記
   2.敷地権を抹消する登記
   3.敷地利用権の相続による移転登記
   4.被相続人名義の敷地権の設定登記
  
  加えて、書いてあったのが、手続きが煩雑なので、直接相続人名義での所有権保存登記が出来る様になりつつあるとも言っています。

  要は、
  登記所にて相談すれば、(手続きを簡略して)直接相続人名義での所有権保存登記が可能な場合もあるし、登記所が駄目と言えば、厳密に上記四段階の手続きをする必要があると言う事らしいです。
  故に、「直接自己…申請することができない」が回答になりそうです。

   ご参考迄。

問19

〔問 19〕マンション建替組合(この問いにおいて「建替組合」という。)が施行するマンション建替事業に関する次の記述のうち、マンションの建替えの円滑化等に関する法律及び区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 建替組合の設立の認可を申請しようとする者は、建替組合の設立について、建替え合意者の3/4以上の同意(同意した者の区分所有法第38条の議決権の合計が、建替え合意者の同条の議決権の合計の3/4以上となる場合に限る。)を得なければならない。

○ 正しい。 マンションの建替えの円滑化等に関する法律からも、1問はでますから、この法律も読んでおいてください。概要は、私の別途サイト 「概要:マンションの建替えの円滑化等に関する法律」 もありますから、参考にしてください。 平成20年 マンション管理士試験 「問19」 平成15年 マンション管理士試験 「問18」 。
  建替組合の設立の認可申請は、マンションの建替えの円滑化等に関する法律(以下「建替え円滑化法」という)第9条2項
 「(設立の認可)
  第九条  区分所有法第六十四条 の規定により区分所有法第六十二条第一項 に規定する建替え決議(以下単に「建替え決議」という。)の内容によりマンションの建替えを行う旨の合意をしたものとみなされた者(マンションの区分所有権又は敷地利用権を有する者であってその後に当該建替え決議の内容により当該マンションの建替えを行う旨の同意をしたものを含む。以下「建替え合意者」という。)は、五人以上共同して、定款及び事業計画を定め、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事(市の区域内にあっては、当該市の長。以下「都道府県知事等」という。)の認可を受けて組合を設立することができる。
    2  前項の規定による
認可を申請しようとする建替え合意者は、組合の設立について、建替え合意者の四分の三以上の同意(同意した者の区分所有法第三十八条 の議決権の合計が、建替え合意者の同条 の議決権の合計の四分の三以上となる場合に限る。)を得なければならない
    3  区分所有法第七十条第四項 において準用する区分所有法第六十四条 の規定により一括建替え決議の内容によりマンションの建替えを行う旨の合意をしたものとみなされた者(マンションの区分所有権又は敷地利用権を有する者であってその後に当該一括建替え決議の内容により当該マンションの建替えを行う旨の同意をしたものを含む。以下「一括建替え合意者」という。)は、五人以上共同して、第一項の規定による認可を受けて組合を設立することができる。
    4  第一項の規定による認可を申請しようとする一括建替え合意者は、組合の設立について、一括建替え合意者の四分の三以上の同意(同意した者の区分所有法第七十条第二項 において準用する区分所有法第六十九条第二項 の議決権の合計が、一括建替え合意者の同項 の議決権の合計の四分の三以上となる場合に限る。)及び一括建替え決議マンション群(一括建替え決議に係る団地内の二以上のマンションをいう。以下同じ。)を構成する各マンションごとのその区分所有権を有する一括建替え合意者の三分の二以上の同意(各マンションごとに、同意した者の区分所有法第三十八条 の議決権の合計が、それぞれその区分所有権を有する一括建替え合意者の同条 の議決権の合計の三分の二以上となる場合に限る。)を得なければならない。
    5  前各項の場合において、マンションの一の専有部分が数人の共有に属するときは、その数人を一人の建替え合意者又は一括建替え合意者(以下「建替え合意者等」という。)とみなす。
    6  二以上の建替え決議マンション(建替え決議に係るマンションであって一括建替え決議マンション群に属さないものをいう。以下同じ。)若しくは一括建替え決議マンション群又は一以上の建替え決議マンション及び一括建替え決議マンション群に係る建替え合意者等は、五人以上共同して、第一項の規定による認可を申請することができる。この場合において、第二項の規定は建替え決議マンションごとに、第四項の規定は一括建替え決議マンション群ごとに、適用する。
7  第一項の規定による認可の申請は、施行マンションとなるべきマンションの所在地が町村の区域内にあるときは、当該町村の長を経由して行わなければならない。」
 とあり、
 2項により、正しい。(3/4以上は、区分所有法では、法人化と同じと覚えればいいかも。)


2 建替組合は、区分所有法第63条第4項に規定する建替えに参加しない旨を回答した区分所有者に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求しようとするときは、あらかじめ建替えに参加しない旨を回答した区分所有者の承諾を得なければならない。

X 誤っている。 不参加者の承諾は不要。
   平成23年 マンション管理士試験 「問19」 。 
  建替えに不参加の区分所有者に対しては、その区分所有権及び敷地利用権を売渡の請求ができます。
 建替え円滑化法第15条1項
 「(区分所有権及び敷地利用権の売渡し請求)
  第十五条  組合は、前条第一項の公告の日(その日が区分所有法第六十三条第二項 (区分所有法第七十条第四項 において準用する場合を含む。)の期間の満了の日前であるときは、当該期間の満了の日)から二月以内に、区分所有法第六十三条第四項 (区分所有法第七十条第四項 において準用する場合を含む。)に規定する
建替えに参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含み、その後に建替え合意者等となったものを除く。)に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。建替え決議等があった後に当該区分所有者から敷地利用権のみを取得した者(その承継人を含み、その後に建替え合意者等となったものを除く。)の敷地利用権についても、同様とする。
    2  前項の規定による請求は、建替え決議等の日から一年以内にしなければならない。ただし、この期間内に請求することができなかったことに正当な理由があるときは、この限りでない。
    3  区分所有法第六十三条第五項 から第七項 まで(区分所有法第七十条第四項 において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定は、第一項の規定による請求があった場合について準用する。この場合において、区分所有法第六十三条第六項 中「第四項 」とあるのは、「マンションの建替えの円滑化等に関する法律第十五条第一項」と読み替えるものとする。 」
 とあり、
 1項の売渡請求権は、単独の意思表示でその法律効果が生じる「
形成権」と考えられていて、あらかじめ建替えに参加しない旨を回答した区分所有者の承諾は求められていませんから、誤りです。(2013年 2月24日: 適用条文を変更した。)


3 建替組合は、区分所有権等以外の権利を有する者から同意を得られないときは、その同意を得られない理由及び同意を得られない者の権利に関し損害を与えないようにするための措置を記載した書面を添えて、権利変換計画の認可を申請することができる。

○ 正しい。  平成23年 マンション管理士試験 「問19」 。
  設問は、建替え円滑化法第57条3項
 「(権利変換計画の決定及び認可)
  第五十七条  施行者は、前条の規定による手続に必要な期間の経過後、遅滞なく、権利変換計画を定めなければならない。この場合においては、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事等の認可を受けなければならない。
    2  施行者は、前項後段の規定による認可を申請しようとするときは、権利変換計画について、あらかじめ、組合にあっては総会の議決を経るとともに施行マンション又はその敷地について権利を有する者(組合員を除く。)及び隣接施行敷地がある場合における当該隣接施行敷地について権利を有する者の同意を得、個人施行者にあっては施行マンション又はその敷地(隣接施行敷地を含む。)について権利を有する者の同意を得なければならない。ただし、次に掲げる者については、この限りでない。
     一  区分所有法第六十九条 の規定により同条第一項 に規定する特定建物である施行マンションの建替えを行うことができるときは、当該施行マンションの所在する土地(これに関する権利を含む。)の共有者である団地内建物の区分所有法第六十五条 に規定する団地建物所有者(以下単に「団地建物所有者」という。)
     二  その権利をもって施行者に対抗することができない者
    3  前項の場合において、
区分所有権等以外の権利を有する者から同意を得られないときは、その同意を得られない理由及び同意を得られない者の権利に関し損害を与えないようにするための措置を記載した書面を添えて、第一項後段の規定による認可を申請することができる
    4  第二項の場合において、区分所有権等以外の権利を有する者を確知することができないときは、その確知することができない理由を記載した書面を添えて、第一項後段の規定による認可を申請することができる。」
 とあり、
 3項により、正しい。

 なお、3項での「区分所有権等以外の権利」とは、@区分所有権、A敷地利用権、B敷地の所有権、C敷地の借地権、D借家権 以外の権利です(建替え円滑化法第45条3項)から、権利変換計画の認可を申請する際には、重要な権利を有している者からは、同意が必要ということです。


4 建替組合は、権利変換期日後遅滞なく、施行再建マンションの敷地(保留敷地を含む。)につき、権利変換後の土地に関する権利について必要な登記を申請しなければならない。

○ 正しい。  平成21年 マンション管理士試験 「問19」 。
  権利変換後の土地の登記は、建替え円滑化法第74条1項
 「(権利変換の登記)
  第七十四条  
施行者は、権利変換期日後遅滞なく、施行再建マンションの敷地(保留敷地を含む。)につき、権利変換後の土地に関する権利について必要な登記を申請しなければならない
    2  権利変換期日以後においては、施行再建マンションの敷地(保留敷地を含む。)に関しては、前項の登記がされるまでの間は、他の登記をすることができない。 」
 とあり、1項に該当して、正しい。


答え:2 (ここは、区分所有法を知っていれば、選択肢2 は分かる?)

問20

〔問 20〕共同住宅に関する次の記述のうち、建築基準法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 共同住宅の各戸の界壁は、耐火構造とし、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。

X 誤っている。 遮音性能と準耐火構造。
 平成20年 マンション管理士試験 「問21」 、 平成15年 マンション管理士試験 「問20」 。
 共同住宅の各戸の界壁は、建築基準法第30条
 「(長屋又は共同住宅の各戸の界壁)
  第三十条  長屋又は
共同住宅の各戸の界壁は、小屋裏又は天井裏に達するものとするほかその構造を遮音性能(隣接する住戸からの日常生活に伴い生ずる音を衛生上支障がないように低減するために界壁に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。 」
 とあり、
 建築基準法施行令第114条
 「(建築物の界壁、間仕切壁及び隔壁)
  第百十四条  長屋又は
共同住宅の各戸の界壁は、準耐火構造とし、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。 」
 とあり、
 遮音構造と準耐火構造は求められていますが、耐火構造は求められていませんから誤りです。





2 防火地域内にある階数が2で延べ面積が250uの共同住宅は、耐火建築物としなくてもよい。

X 誤っている。 階数が2でも、延べ面積が100uを超えているので、耐火建築物とする。
  平成19年 マンション管理士試験 「問21」 。
  防火地域内なら、建築基準法第61条
 「(防火地域内の建築物)
  第六十一条  
防火地域内においては、階数が三以上であり、又は延べ面積が百平方メートルを超える建築物は耐火建築物とし、その他の建築物は耐火建築物又は準耐火建築物としなければならない。ただし、次の各号の一に該当するものは、この限りでない。
     一  延べ面積が五十平方メートル以内の平家建の附属建築物で、外壁及び軒裏が防火構造のもの
     二  卸売市場の上家又は機械製作工場で主要構造部が不燃材料で造られたものその他これらに類する構造でこれらと同等以上に火災の発生のおそれの少ない用途に供するもの
     三  高さ二メートルを超える門又は塀で不燃材料で造り、又は覆われたもの
     四  高さ二メートル以下の門又は塀 」
 とあり、階数が2階でも、延べ面積が100uを超えているため、耐火建築物としますから、誤りです。





3 準防火地域内にある地階を除く階数が3で延べ面積が1,200uの共同住宅は耐火建築物又は準耐火建築物としなければならない。

○ 正しい。  これも、 平成19年 マンション管理士試験 「問21」 。
  準防火地域内なら、建築基準法第62条
 「(準防火地域内の建築物)
  第六十二条  
準防火地域内においては、地階を除く階数が四以上である建築物又は延べ面積が千五百平方メートルを超える建築物は耐火建築物とし、延べ面積が五百平方メートルを超え千五百平方メートル以下の建築物は耐火建築物又は準耐火建築物とし、地階を除く階数が三である建築物は耐火建築物、準耐火建築物又は外壁の開口部の構造及び面積、主要構造部の防火の措置その他の事項について防火上必要な政令で定める技術的基準に適合する建築物としなければならない。ただし、前条第二号に該当するものは、この限りでない。
    2  準防火地域内にある木造建築物等は、その外壁及び軒裏で延焼のおそれのある部分を防火構造とし、これに附属する高さ二メートルを超える門又は塀で当該門又は塀が建築物の一階であるとした場合に延焼のおそれのある部分に該当する部分を不燃材料で造り、又はおおわなければならない。 」
 とあり、
 1項により、地階を除く階数が3で延べ面積が1,200uなら、「延べ面積が500uを超え1,500u以下の建築物」となり、耐火建築物又は準耐火建築物にしますから、正しい。





4 準防火地域内にある共同佳宅を増築しようとする場合、その増築部分の床面積の合計が10u以内であれば、建築確認を受ける必要はない。

X 誤っている。 防火地域又は準防火地域内だと、増築等で床面積が10u以内でも建築確認は必要。
  平成14年 マンション管理士試験 「問21」 。
 建築確認なら、建築基準法第6条1項及び2項
 「(建築物の建築等に関する申請及び確認)
  第六条  建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。当該確認を受けた建築物の計画の変更(国土交通省令で定める軽微な変更を除く。)をして、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合も、同様とする。
     一  別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が百平方メートルを超えるもの
     二  木造の建築物で三以上の階数を有し、又は延べ面積が五百平方メートル、高さが十三メートル若しくは軒の高さが九メートルを超えるもの
     三  木造以外の建築物で二以上の階数を有し、又は延べ面積が二百平方メートルを超えるもの
     四  前三号に掲げる建築物を除くほか、都市計画区域若しくは準都市計画区域(いずれも都道府県知事が都道府県都市計画審議会の意見を聴いて指定する区域を除く。)若しくは景観法 (平成十六年法律第百十号)第七十四条第一項 の準景観地区(市町村長が指定する区域を除く。)内又は都道府県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若しくは一部について指定する区域内における建築物
   2  
前項の規定は、防火地域及び準防火地域外において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合で、その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が十平方メートル以内であるときについては、適用しない。
   3  建築主事は、第一項の申請書が提出された場合において、その計画が次の各号のいずれかに該当するときは、当該申請書を受理することができない。
     一  建築士法第三条第一項 、第三条の二第一項、第三条の三第一項、第二十条の二第一項若しくは第二十条の三第一項の規定又は同法第三条の二第三項 の規定に基づく条例の規定に違反するとき。
     二  構造設計一級建築士以外の一級建築士が建築士法第二十条の二第一項 の建築物の構造設計を行つた場合において、当該建築物が構造関係規定に適合することを構造設計一級建築士が確認した構造設計によるものでないとき。
     三  設備設計一級建築士以外の一級建築士が建築士法第二十条の三第一項 の建築物の設備設計を行つた場合において、当該建築物が設備関係規定に適合することを設備設計一級建築士が確認した設備設計によるものでないとき。
   4  建築主事は、第一項の申請書を受理した場合においては、同項第一号から第三号までに係るものにあつてはその受理した日から三十五日以内に、同項第四号に係るものにあつてはその受理した日から七日以内に、申請に係る建築物の計画が建築基準関係規定に適合するかどうかを審査し、審査の結果に基づいて建築基準関係規定に適合することを確認したときは、当該申請者に確認済証を交付しなければならない。
   5  建築主事は、前項の場合において、申請に係る建築物の計画が第二十条第二号又は第三号に定める基準(同条第二号イ又は第三号イの政令で定める基準に従つた構造計算で、同条第二号イに規定する方法若しくはプログラムによるもの又は同条第三号イに規定するプログラムによるものによつて確かめられる安全性を有することに係る部分に限る。次条第三項及び第十八条第四項において同じ。)に適合するかどうかを審査するときは、都道府県知事の構造計算適合性判定(第二十条第二号イ又は第三号イの構造計算が同条第二号イに規定する方法若しくはプログラム又は同条第三号イに規定するプログラムにより適正に行われたものであるかどうかの判定をいう。以下同じ。)を求めなければならない。
   6  都道府県知事は、当該都道府県に置かれた建築主事から前項の構造計算適合性判定を求められた場合においては、当該建築主事を当該構造計算適合性判定に関する事務に従事させてはならない。
   7  都道府県知事は、特別な構造方法の建築物の計画について第五項の構造計算適合性判定を行うに当たつて必要があると認めるときは、当該構造方法に係る構造計算に関して専門的な識見を有する者の意見を聴くものとする。
   8  都道府県知事は、第五項の構造計算適合性判定を求められた場合においては、当該構造計算適合性判定を求められた日から十四日以内にその結果を記載した通知書を建築主事に交付しなければならない。
   9  都道府県知事は、前項の場合(第二十条第二号イの構造計算が同号イに規定する方法により適正に行われたものであるかどうかの判定を求められた場合その他国土交通省令で定める場合に限る。)において、同項の期間内に建築主事に同項の通知書を交付することができない合理的な理由があるときは、三十五日の範囲内において、同項の期間を延長することができる。この場合においては、その旨及びその延長する期間並びにその期間を延長する理由を記載した通知書を同項の期間内に建築主事に交付しなければならない。
   10  第五項の構造計算適合性判定に要する費用は、当該構造計算適合性判定を求めた建築主事が置かれた都道府県又は市町村の負担とする。
   11  建築主事は、第五項の構造計算適合性判定により当該建築物の構造計算が第二十条第二号イに規定する方法若しくはプログラム又は同条第三号イに規定するプログラムにより適正に行われたものであると判定された場合(次条第八項及び第十八条第十項において「適合判定がされた場合」という。)に限り、第一項の規定による確認をすることができる。
   12  建築主事は、第四項の場合(申請に係る建築物の計画が第二十条第二号に定める基準(同号イの政令で定める基準に従つた構造計算で同号イに規定する方法によるものによつて確かめられる安全性を有することに係る部分に限る。)に適合するかどうかを審査する場合その他国土交通省令で定める場合に限る。)において、同項の期間内に当該申請者に第一項の確認済証を交付することができない合理的な理由があるときは、三十五日の範囲内において、第四項の期間を延長することができる。この場合においては、その旨及びその延長する期間並びにその期間を延長する理由を記載した通知書を同項の期間内に当該申請者に交付しなければならない。
   13  建築主事は、第四項の場合において、申請に係る建築物の計画が建築基準関係規定に適合しないことを認めたとき、又は申請書の記載によつては建築基準関係規定に適合するかどうかを決定することができない正当な理由があるときは、その旨及びその理由を記載した通知書を同項の期間(前項の規定により第四項の期間を延長した場合にあつては、当該延長後の期間)内に当該申請者に交付しなければならない。
   14  第一項の確認済証の交付を受けた後でなければ、同項の建築物の建築、大規模の修繕又は大規模の模様替の工事は、することができない。
   15  第一項の規定による確認の申請書、同項の確認済証並びに第十二項及び第十三項の通知書の様式は、国土交通省令で定める。 」
 とあり、
 1項と2項により防火地域及び準防火地域
で、増築部分の床面積が10u以内なら、建築確認は不要ですが、設問は、「準防火地域内」ですから、誤りです。建築確認が必要です。


答え:3 (建築基準法も必ず数問出題されますから、私の 「過去問題集」  の下の方に「建築基準法」だけを取り出して、解説していますから、参考にしてください。)

問21

〔問 21〕都市計画法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 都市計画区域については、都市計画に、道路、公園、緑地、教育文化施設等の都市施設を定めることができるが、特に必要があるときは、当該都市計画区域外においても、これらの施設を定めることができる。 

○ 正しい。 今年度は、例年と違った条文から出ている。 なお、都市計画法からも必ず1問は出題されますから、私の 「過去問題集」  の下の方に「都市計画法」だけを取り出して、解説していますから、参考にしてください。
 都市計画と都市施設なら、都市計画法第11条1項
 「(都市施設)
  第十一条  
都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる施設を定めることができる。この場合において、特に必要があるときは、当該都市計画区域外においても、これらの施設を定めることができる。
     一  
道路、都市高速鉄道、駐車場、自動車ターミナルその他の交通施設
     二  
公園緑地、広場、墓園その他の公共空地
     三  水道、電気供給施設、ガス供給施設、下水道、汚物処理場、ごみ焼却場その他の供給施設又は処理施設
     四  河川、運河その他の水路
     五  学校、図書館、研究施設その他の
教育文化施設
     六  病院、保育所その他の医療施設又は社会福祉施設
     七  市場、と畜場又は火葬場
     八  一団地の住宅施設(一団地における五十戸以上の集団住宅及びこれらに附帯する通路その他の施設をいう。)
     九  一団地の官公庁施設(一団地の国家機関又は地方公共団体の建築物及びこれらに附帯する通路その他の施設をいう。)
     十  流通業務団地
     十一  一団地の津波防災拠点市街地形成施設(津波防災地域づくりに関する法律 (平成二十三年法律第百二十三号)第二条第十五項 に規定する一団地の津波防災拠点市街地形成施設をいう。)
     十二  その他政令で定める施設
   2  都市施設については、都市計画に、都市施設の種類、名称、位置及び区域を定めるものとするとともに、面積その他の政令で定める事項を定めるよう努めるものとする。
   3  道路、河川その他の政令で定める都市施設については、前項に規定するもののほか、適正かつ合理的な土地利用を図るため必要があるときは、当該都市施設の区域の地下又は空間について、当該都市施設を整備する立体的な範囲を都市計画に定めることができる。この場合において、地下に当該立体的な範囲を定めるときは、併せて当該立体的な範囲からの離隔距離の最小限度及び載荷重の最大限度(当該離隔距離に応じて定めるものを含む。)を定めることができる。
   4  密集市街地整備法第三十条 に規定する防災都市施設に係る都市施設、都市再生特別措置法第十九条の四の規定により付議して定める都市計画に係る都市施設及び同法第五十一条第一項 の規定により決定又は変更をする都市計画に係る都市施設、都市鉄道等利便増進法 (平成十七年法律第四十一号)第十九条 の規定により付議して定める都市計画に係る都市施設、流通業務団地並びに一団地の津波防災拠点市街地形成施設について都市計画に定めるべき事項は、この法律に定めるもののほか、別に法律で定める。
   5  次に掲げる都市施設については、第十二条の三第一項の規定により定められる場合を除き、第一号又は第二号に掲げる都市施設にあつては国の機関又は地方公共団体のうちから、第三号に掲げる都市施設にあつては流通業務市街地の整備に関する法律第十条に規定する者のうちから、当該都市施設に関する都市計画事業の施行予定者を都市計画に定めることができる。
     一  区域の面積が二十ヘクタール以上の一団地の住宅施設
     二  一団地の官公庁施設
     三  流通業務団地
   6  前項の規定により施行予定者が定められた都市施設に関する都市計画は、これを変更して施行予定者を定めないものとすることができない。 」
 とあり、
 1項により、都市計画区域については、都市計画に、道路、公園、緑地、教育文化施設等の都市施設を定めることができ、特に必要があるときは、当該都市計画区域外においても、これらの施設を定めることができますから、正しい。



2 準都市計画区域については、都市計画に、高度地区、景観地区、防火地域又は準防火地域を定めることができる。

X 誤っている。  防火地域又は準防火地域が入っていない。
 準都市計画区域とは、都市計画区域外で、都市計画法第5条の2
 「(準都市計画区域)
  第五条の二  都道府県は、都市計画区域外の区域のうち、相当数の建築物その他の工作物(以下「建築物等」という。)の建築若しくは建設又はこれらの敷地の造成が現に行われ、又は行われると見込まれる区域を含み、かつ、自然的及び社会的条件並びに農業振興地域の整備に関する法律(昭和四十四年法律第五十八号)その他の法令による土地利用の規制の状況その他国土交通省令で定める事項に関する現況及び推移を勘案して、そのまま土地利用を整序し、又は環境を保全するための措置を講ずることなく放置すれば、将来における一体の都市としての整備、開発及び保全に支障が生じるおそれがあると認められる一定の区域を、
準都市計画区域として指定することができる
   2  都道府県は、前項の規定により準都市計画区域を指定しようとするときは、あらかじめ、関係市町村及び都道府県都市計画審議会の意見を聴かなければならない。
   3  準都市計画区域の指定は、国土交通省令で定めるところにより、公告することによつて行う。
   4  前三項の規定は、準都市計画区域の変更又は廃止について準用する。
   5  準都市計画区域の全部又は一部について都市計画区域が指定されたときは、当該準都市計画区域は、前項の規定にかかわらず、廃止され、又は当該都市計画区域と重複する区域以外の区域に変更されたものとみなす。 」
 とあり、
 そして、都市計画法第8条
 「(地域地区)
  第八条  都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる地域、地区又は街区を定めることができる。
     一  第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域又は工業専用地域(以下「用途地域」と総称する。)
     二  特別用途地区
     二の二  特定用途制限地域
     二の三  特例容積率適用地区
     二の四  高層住居誘導地区
     三  高度地区又は高度利用地区
     四  特定街区
     四の二  都市再生特別措置法(平成十四年法律第二十二号)第三十六条第一項の規定による都市再生特別地区
    
 五  防火地域又は準防火地域
     五の二  密集市街地整備法第三十一条第一項 の規定による特定防災街区整備地区
     六  景観法 (平成十六年法律第百十号)第六十一条第一項 の規定による景観地区
     七  風致地区
     八  駐車場法 (昭和三十二年法律第百六号)第三条第一項 の規定による駐車場整備地区
     九  臨港地区
     十  古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法 (昭和四十一年法律第一号)第六条第一項 の規定による歴史的風土特別保存地区
     十一  明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法 (昭和五十五年法律第六十号)第三条第一項 の規定による第一種歴史的風土保存地区又は第二種歴史的風土保存地区
     十二  都市緑地法 (昭和四十八年法律第七十二号)第五条 の規定による緑地保全地域、同法第十二条 の規定による特別緑地保全地区又は同法第三十四条第一項 の規定による緑化地域
     十三  流通業務市街地の整備に関する法律(昭和四十一年法律第百十号)第四条第一項の規定による流通業務地区
     十四  生産緑地法 (昭和四十九年法律第六十八号)第三条第一項 の規定による生産緑地地区
     十五  文化財保護法 (昭和二十五年法律第二百十四号)第百四十三条第一項 の規定による伝統的建造物群保存地区
十六  特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法 (昭和五十三年法律第二十六号)第四条第一項 の規定による航空機騒音障害防止地区又は航空機騒音障害防止特別地区
   2  
準都市計画区域については、都市計画に、前項第一号から第二号の二まで、第三号(高度地区に係る部分に限る。)、第六号、第七号、第十二号(都市緑地法第五条 の規定による緑地保全地域に係る部分に限る。)又は第十五号に掲げる地域又は地区を定めることができる。
 とあり、
 2項により、準都市計画区域では、1項5号の「防火地域又は準防火地域」は入っていませんから、誤りです。



3 市町村は、都市計画区域又は準都市計画区域について都市計画を決定しようとするときは、あらかじめ都道府県知事と協議し、同意を得なければならない。

X 誤っている。  市”が入っていないとは、もうひどい出題。同意が必要なのは”町村”だけ。
 設問は、都市計画法第19条3項
 「(市町村の都市計画の決定)
  第十九条  市町村は、市町村都市計画審議会(当該市町村に市町村都市計画審議会が置かれていないときは、当該市町村の存する都道府県の都道府県都市計画審議会)の議を経て、都市計画を決定するものとする。
   2  市町村は、前項の規定により都市計画の案を市町村都市計画審議会又は都道府県都市計画審議会に付議しようとするときは、第十七条第二項の規定により提出された意見書の要旨を市町村都市計画審議会又は都道府県都市計画審議会に提出しなければならない。
   3
 市町村は、都市計画区域又は準都市計画区域について都市計画(都市計画区域について定めるものにあつては区域外都市施設に関するものを含み、地区計画等にあつては当該都市計画に定めようとする事項のうち政令で定める地区施設の配置及び規模その他の事項に限る。)を決定しようとするときは、あらかじめ、都道府県知事に協議しなければならない。この場合において、町村にあつては都道府県知事の同意を得なければならない。
   4  都道府県知事は、一の市町村の区域を超える広域の見地からの調整を図る観点又は都道府県が定め、若しくは定めようとする都市計画との適合を図る観点から、前項の協議を行うものとする。
   5  都道府県知事は、第三項の協議を行うに当たり必要があると認めるときは、関係市町村に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。 」
 とあり、
 3項「この場合において、町村にあつては都道府県知事の同意を得なければならない」とあり、同意に「市」は入っていないから、誤りです。(酷い、引掛け問題で、適切な出題ではない。)


4 地区計画に関する都市計画を決定しようとするときは、当該地区計画の区域内の土地の所有者その他政令で定める利害関係を有する者の同意を得なければならない。

X 誤っている。 規定がない?
 設問に近いのは、都市計画法第16条2項
 「(公聴会の開催等)
  第十六条  都道府県又は市町村は、次項の規定による場合を除くほか、都市計画の案を作成しようとする場合において必要があると認めるときは、公聴会の開催等住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。
   2  
都市計画に定める地区計画等の案は、意見の提出方法その他の政令で定める事項について条例で定めるところにより、その案に係る区域内の土地の所有者その他政令で定める利害関係を有する者の意見を求めて作成するものとする
   3  市町村は、前項の条例において、住民又は利害関係人から地区計画等に関する都市計画の決定若しくは変更又は地区計画等の案の内容となるべき事項を申し出る方法を定めることができる。 」
 とあり、
 2項では、「利害関係を有する者の
意見を求めて作成するもの」とありますが、「利害関係を有する者の同意を得なければならない」とはありませんから、誤りです。


答え:1 (何というひどい出題方法だろうか! こんな引掛け問題を出すようでは、出題委員の質が問われる。)

問22

〔問 22〕貯水槽水道及び簡易専用水道の管理に関する次の記述のうち、水道法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 貯水槽水道の管理に関し、水道事業者はその供給規程において、水道事業者の責任に関する事項として、必要に応じて、貯水槽水道の利用者に対する情報提供について定めなければならない。 

○ 正しい。 水道法からも必ず1問は出題されますから、私の 「過去問題集」  の下の方に「水道法」だけを取り出して、解説していますから、参考にしてください。 平成22年 マンション管理士試験 「問22」 。
  まず、貯水槽水道とは、ビルやマンションなどの建築物で、水道管から供給された水をいったん受水槽に貯め、これをポンプで屋上などにある高架水槽にくみ上げてから各家庭の皆さんに給水します。この受水槽と高架水槽を合わせた設備を一般的に貯水槽といいます。この貯水槽水道には、水槽の有効容量が10立方m以下(小規模貯水槽水道)と水槽の有効容量が10立方m超(簡易専用水道)も含んでいます。
 設問の「水道事業者はその供給規程を定め」は、水道法第14条
 (供給規程)
  第十四条  
水道事業者は、料金、給水装置工事の費用の負担区分その他の供給条件について、供給規程を定めなければならない
    2  前項の供給規程は、次の各号に掲げる要件に適合するものでなければならない。
     一  料金が、能率的な経営の下における適正な原価に照らし公正妥当なものであること。
     二  料金が、定率又は定額をもつて明確に定められていること。
     三  水道事業者及び水道の需要者の責任に関する事項並びに給水装置工事の費用の負担区分及びその額の算出方法が、適正かつ明確に定められていること。
     四  特定の者に対して不当な差別的取扱いをするものでないこと。
     五  貯水槽水道(水道事業の用に供する水道及び専用水道以外の水道であつて、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするものをいう。以下この号において同じ。)が設置される場合においては、貯水槽水道に関し、水道事業者及び当該貯水槽水道の設置者の責任に関する事項が、適正かつ明確に定められていること。
   3  前項各号に規定する基準を適用するについて必要な技術的細目は、厚生労働省令で定める。
   4  水道事業者は、供給規程を、その実施の日までに一般に周知させる措置をとらなければならない。
   5  水道事業者が地方公共団体である場合にあつては、供給規程に定められた事項のうち料金を変更したときは、厚生労働省令で定めるところにより、その旨を厚生労働大臣に届け出なければならない。
   6  水道事業者が地方公共団体以外の者である場合にあつては、供給規程に定められた供給条件を変更しようとするときは、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。
   7  厚生労働大臣は、前項の認可の申請が第二項各号に掲げる要件に適合していると認めるときは、その認可を与えなければならない。 」
 とあり、
 1項により、「供給規程」を定めなければなりません。
 そして、供給規程の内容は、水道法施行規則第12条の4
 「第十二条の四  法第十四条第三項 に規定する技術的細目のうち、同条第二項第五号 に関するものは、次に掲げるものとする。
     一  水道事業者の責任に関する事項として、必要に応じて、次に掲げる事項が定められていること。
       イ 貯水槽水道の設置者に対する指導、助言及び勧告
       ロ 
貯水槽水道の利用者に対する情報提供
     二  貯水槽水道の設置者の責任に関する事項として、必要に応じて、次に掲げる事項が定められていること。
       イ 貯水槽水道の管理責任及び管理の基準
       ロ 貯水槽水道の管理の状況に関する検査」
 とあり、
 1号ロ に該当しますから、正しい。



2 貯水槽水道の管理に関し、水道事業者はその供給規程において、貯水槽水道の設置者の責任に関する事項として、必要に応じて、貯水槽水道の管理の状況に関する検査について定めなければならない。

○ 正しい。
 選択肢1で引用しました、水道法施行規則第12条の4 2号ロ
 「二  貯水槽水道の設置者の責任に関する事項として、必要に応じて、次に掲げる事項が定められていること。
       イ 貯水槽水道の管理責任及び管理の基準
       ロ 
貯水槽水道の管理の状況に関する検査
 とあり、正しい。



3 簡易専用水道の管理に関し、簡易専用水道の検査の登録を受けた検査機関は、簡易専用水道の設置者の了解を得て、検査の結果を行政庁に代行報告することができる。

○ 正しい。
  簡易専用水道とは、東京都水道局などの水道事業者から水の供給を受けるための水槽の有効容量の合計が10立方メートルを超えるものです。



  その簡易専用水道は、設置者が管理することになりますが、検査は「地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者」が行います。それは、水道法第34条の2
 「簡易専用水道の設置者は、厚生労働省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならない。
   2 
簡易専用水道の設置者は、当該簡易専用水道の管理について、厚生労働省令の定めるところにより、定期に、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならない。」、
 とあり、
 「(検査の義務)
  第三十四条の三
   前条第二項の登録を受けた者は、簡易専用水道の管理の検査を行うことを求められたときは、正当な理由がある場合を除き、遅滞なく、簡易専用水道の管理の検査を行わなければならない。」
   とあるからです。
 すると、水道法第34条の4
 「(準用)
  第三十四条の四  第二十条の二から第二十条の五までの規定は第三十四条の二第二項の登録について、第二十条の六第二項の規定は簡易専用水道の管理の検査について、第二十条の七から第二十条の十六までの規定は第三十四条の二第二項の登録を受けた者について準用する。この場合において、第二十条の二中「前条第三項」とあるのは「第三十四条の二第二項」と、同条、第二十条の四第一項各号及び第二項第三号、第二十条の六第二項、第二十条の七から第二十条の九まで、第二十条の十二から第二十条の十四まで、第二十条の十五第一項並びに第二十条の十六第四号中「水質検査」とあるのは「簡易専用水道の管理の検査」と、第二十条の三、第二十条の五第一項、第二十条の十三第五号並びに第二十条の十六第一号及び第四号中「第二十条第三項」とあるのは「第三十四条の二第二項」と、第二十条の三第二号及び第二十条の十六第四号中「第二十条の十三」とあるのは「第三十四条の四において準用する第二十条の十三」と、第二十条の三第三号中「前二号」とあるのは「第三十四条の四において準用する前二号」と、第二十条の四第一項中「第二十条の二」とあるのは「第三十四条の四において準用する第二十条の二」と、同項第一号中「第二十条第一項」とあるのは「第三十四条の二第二項」と、同号及び第二十条の十五第一項中「検査施設」とあるのは「検査設備」と、第二十条の四第一項第二号中「別表第一」とあるのは「別表第二」と、「五名」とあるのは「三名」と、同項第三号ハ中「ロ」とあるのは「第三十四条の四において準用するロ」と、同条第二項中「水質検査機関登録簿」とあるのは「簡易専用水道検査機関登録簿」と、第二十条の五第二項中「前三条」とあるのは「第三十四条の四において準用する前三条」と、同項及び第二十条の十五第二項中「前項」とあるのは「第三十四条の四において準用する前項」と、第二十条の六第二項、第二十条の七、第二十条の八第一項、第二十条の九から第二十条の十四まで及び
第二十条の十五第一項中「登録水質検査機関」とあるのは「第三十四条の二第二項の登録を受けた者」と、第二十条の八中「水質検査業務規程」とあるのは「簡易専用水道検査業務規程」と、第二十条の十第一項中「次項」とあるのは「第三十四条の四において準用する次項」と、同条第二項中「水道事業者」とあるのは「簡易専用水道の設置者」と、第二十条の十一中「第二十条の四第一項各号」とあるのは「第三十四条の四において準用する第二十条の四第一項各号」と、第二十条の十二中「第二十条の六第一項又は第二項」とあるのは「第三十四条の三又は第三十四条の四において準用する第二十条の六第二項」と、「受託す」とあるのは「行う」と、第二十条の十三第一号中「第二十条の三第一号又は第三号」とあるのは「第三十四条の四において準用する第二十条の三第一号又は第三号」と、同条第二号及び第二十条の十六第二号中「第二十条の七」とあるのは「第三十四条の四において準用する第二十条の七」と、第二十条の十三第二号及び第二十条の十六第三号中「第二十条の九」とあるのは「第三十四条の四において準用する第二十条の九」と、第二十条の十三第二号中「第二十条の十第一項」とあるのは「第三十四条の四において準用する第二十条の十第一項」と、「次条」とあるのは「第三十四条の四において準用する次条」と、同条第三号中「第二十条の十第二項各号」とあるのは「第三十四条の四において準用する第二十条の十第二項各号」と、同条第四号中「第二十条の十一」とあるのは「第三十四条の四において準用する第二十条の十一」と、「前条」とあるのは「第三十四条の四において準用する前条」と、第二十条の十五第三項中「第一項」とあるのは「第三十四条の四において準用する第一項」と読み替えるものとする。 」 
 とあり、
 だれが、この準用を真面目に、確認できるか疑問な条文ですが、該当らしい個所を探し出しました。
 検査結果の報告は、
水道法第20条の15
 「報告の徴収及び立入検査)
  第二十条の十五  厚生労働大臣は、水質検査の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、登録水質検査機関(注:読み替え→登録を受けた者)に対し、業務の状況に関し必要な報告を求め、又は当該職員に、登録水質検査機関の事務所又は事業所に立ち入り、業務の状況若しくは検査施設、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
    2  前項の規定により立入検査を行う職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
    3  第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。」
 とあり、
 これが、
水道法第34条の4 での読み替え「第二十条の十五第一項中「登録水質検査機関」とあるのは「第三十四条の二第二項の登録を受けた者」となり、設問の「簡易専用水道の検査の登録を受けた検査機関は、簡易専用水道の設置者の了解を得て、検査の結果を行政庁に代行報告することができる」は正しいとなります。

 2013年 3月8日 追記:その後も、はっきりしないので、根拠を探してどうにか、こんな記述を見つけた。 

 健水発0325第5号 平成22年 3月25日 厚生労働省健康局水道課長 
 貯水槽水道の管理水準の向上に向けた取組の推進について
 2.登録簡易専用水道検査機関の検査結果活用について
   「簡易専用水道の管理に係る検査の方法その他必要な事項」(平成15年厚生労働省告示第262号。以下「検査方法告示」という。)第7の3において、法定検査の結果、特に衛生上問題がある状況が認められる場合において、設置者から行政庁へその旨報告することとされている。この規定に関連して、設置者の了解を得た上で検査を実施した登録簡易専用水道検査機関が代行して行政庁に報告すること(以下「代行報告」という。)を妨げるものではない。



4 簡易専用水道の管理に関し、簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態に関する検査は、当該簡易専用水道の水質に害を及ぼす恐れがあるものか否かを検査するものであり、当該水槽の水を抜いて行う。

X 誤っている。 水槽の水を抜かないで検査する。
  こんな、検査方法のやり方まで、マンション管理士に必要な知識か、適切な出題ではありません。
  簡易専用水道の水槽の検査の方法は、
 厚生労働省告示第二百六十二号 簡易専用水道の管理に係る検査の方法その他必要な事項 にあります。
 そこで該当の個所、
 「第三 簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態に関する検査
    一 簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態に関する検査は、簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態が、当該簡易専用水道の水質に害を及ぼすおそれのあるものであるか否かを検査するものであり、当該簡易専用水道に設置された
水槽(以下「水槽」という。)の水を抜かずに、次に掲げる検査を行うものとする。
      1 水槽その他当該簡易専用水道に係る施設の中に汚水等の衛生上有害なものが混入するおそれの有無についての検査
      2 水槽及びその周辺の清潔の保持についての検査
      3 水槽内における沈積物、浮遊物質等の異常な物の有無についての検査
   二 一に関して必要な検査事項及び判定基準は、別表第一に定めるところによる。」
 とあり、
 水槽の水を抜かず」に行いますから、誤りです。



答え:4 (本当に、面倒な条文の読み替えや、水槽の検査方法の根拠を探すのに、時間がかかる! 前の「問21」といい、これらを出題した委員は正常な判断能力を欠いています。)

問23

〔問 23〕高さ31mを超えるマンション(この問いにおいて「高層マンション」という。)の防火管理及び共同防火管理に関する次の記述のうち、消防法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 高層マンションの管理について権原を有する者は、定期に、火災の予防に関する専門的知識を有する者で一定の資格を有するものに、マンションにおける防火管理上必要な業務その他火災の予防上必要な事項について点検させなければならない。

▲ 設問が不明だ。 消防法からも必ず1問は出題されますから、私の 「過去問題集」  の下の方に「消防法」だけを取り出して、解説していますから、参考にしてください。
 消防法での高層建築物は、 平成20年 マンション管理士試験 「問24」 、 平成19年 マンション管理士試験 「問24 など。 

 設問が、高さだけにこだわっていますが、収容人員との関係が、不明です。 参考: 平成24年 管理業務主任者試験 「問19」 など。
 まず、高さが31m(約11階建て)を超えると、消防法では、高層建築物となり、それは、消防法第8条の2 に定義されます。
 「第八条の二  
高層建築物(高さ三十一メートルを超える建築物をいう。第八条の三第一項において同じ。)その他政令で定める防火対象物で、その管理について権原が分かれているもの又は地下街(地下の工作物内に設けられた店舗、事務所その他これらに類する施設で、連続して地下道に面して設けられたものと当該地下道とを合わせたものをいう。以下同じ。)でその管理について権原が分かれているもののうち消防長若しくは消防署長が指定するものの管理について権原を有する者は、これらの防火対象物について、消防計画の作成その他の防火管理上必要な業務に関する事項で総務省令で定めるものを、協議して、定めておかなければならない。
   2  前項の権原を有する者は、同項の総務省令で定める事項を定めたときは、遅滞なく、その旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。当該事項を変更したときも、同様とする。
   3  消防長又は消防署長は、第一項の総務省令で定める事項が定められていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、同項の規定により当該事項を定めるべきことを命ずることができる。
   4  第五条第三項及び第四項の規定は、前項の規定による命令について準用する。」
 とあります。
 そして、設問の点検は、消防法第8条の2の2
 「第八条の二の二
  第八条第一項の
防火対象物のうち火災の予防上必要があるものとして政令で定めるものの管理について権原を有する者は、総務省令で定めるところにより、定期に、防火対象物における火災の予防に関する専門的知識を有する者で総務省令で定める資格を有するもの(次項、次条第一項及び第三十六条第三項において「防火対象物点検資格者」という。)に、当該防火対象物における防火管理上必要な業務、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の設置及び維持その他火災の予防上必要な事項(次項、次条第一項及び第三十六条第三項において「点検対象事項」という。)がこの法律又はこの法律に基づく命令に規定する事項に関し総務省令で定める基準(次項、次条第一項及び第三十六条第三項において「点検基準」という。)に適合しているかどうかを点検させ、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。ただし、第十七条の三の三の規定による点検及び報告の対象となる事項については、この限りでない。
   2 前項の規定による点検(その管理について権原が分かれている防火対象物にあつては、当該防火対象物全体(次条第一項の規定による認定を受けた部分を除く。)についての前項の規定による点検)の結果、防火対象物点検資格者により点検対象事項が点検基準に適合していると認められた防火対象物には、総務省令で定めるところにより、点検を行つた日その他総務省令で定める事項を記載した表示を付することができる。
   3 何人も、防火対象物に、前項に規定する場合を除くほか同項の表示を付してはならず、又は同項の表示と紛らわしい表示を付してはならない。
   4 消防長又は消防署長は、防火対象物で第二項の規定によらないで同項の表示が付されているもの又は同項の表示と紛らわしい表示が付されているものについて、当該防火対象物の関係者で権原を有する者に対し、当該表示を除去し、又はこれに消印を付するべきことを命ずることができる。
   5 第一項の規定は、次条第一項の認定を受けた防火対象物については、適用しない。」
 とあり、
 「第八条第一項の防火対象物のうち火災の予防上必要があるものとして政令で定めるもの」は、消防法施行令第1条の2 3項
 (防火管理者を定めなければならない防火対象物等)
 「3 法第八条第一項の政令で定める防火対象物は、次に掲げる防火対象物とする。
    一 別表第一に掲げる防火対象物(同表(十六の三)項及び(十八)項から(二十)項までに掲げるものを除く。次条において同じ。)のうち、次に掲げるもの
      イ 別表第一(六)項ロ、(十六)項イ及び(十六の二)項に掲げる防火対象物(同表(十六)項イ及び(十六の二)項に掲げる防火対象物にあつては、同表(六)項ロに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものに限る。)で、当該防火対象物に出入し、勤務し、又は居住する者の数(以下「収容人員」という。)が十人以上のもの
      ロ 別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項イ、ハ及びニ、(九)項イ、(十六)項イ並びに(十六の二)項に掲げる防火対象物(同表(十六)項イ及び(十六の二)項に掲げる防火対象物にあつては、同表(六)項ロに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものを除く。)で、収容人員が三十人以上のもの
      ハ 
別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ及び(十七)項に掲げる防火対象物で収容人員が五十人以上のもの
    二 新築の工事中の次に掲げる建築物で、収容人員が五十人以上のもののうち、総務省令で定めるもの
      イ 地階を除く階数が十一以上で、かつ、延べ面積が一万平方メートル以上である建築物
      ロ 延べ面積が五万平方メートル以上である建築物
      ハ 地階の床面積の合計が五千平方メートル以上である建築物
    三 建造中の旅客船(船舶安全法(昭和八年法律第十一号)第八条に規定する旅客船をいう。)で、収容人員が五十人以上で、かつ、甲板数が十一以上のもののうち、総務省令で定めるもの」
 とあり、
 消防法施行令の別表第一は、



 で、設問も単に「高さ31mを超えるマンション」とだけあり疑問があるのですが、マンションなら、一応「共同住宅」として、別表の (五)項ロ に該当しますが、消防法施行令第1条の2 3項 一 ハ「ハ 別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ及び(十七)項に掲げる防火対象物で、収容人員が五十人以上のもの」となり、設問の単に「高さ31mを超えるマンション」の他に、「収容人員」がないと、答えられません。

 2013年 1月20日:追記:この設問者の頭には、高層マンションということで、消防法第8条
 「第八条  学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(これに準ずるものとして政令で定める大規模な小売店舗を含む。以下同じ。)、
複合用途防火対象物(防火対象物で政令で定める二以上の用途に供されるものをいう。以下同じ。)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行なわせなければならない。
 (以下略)」
 での、 「複合用途防火対象物」に「高層マンションは入らない」としたいようですが、「収容人員」との関係が不明です。

★2013年 3月19日 追記。
  この消防法第8条の2の2 の適用につき、2月23日に 総務省消防庁にメールをだして、質問をしたのですが、回答がなく、再度3月19日にメールを出したところ、電話で回答がありました。
 回答:消防法第8条の2の2の2 で規定される防火対象物とは、消防法施行令第4条の2の2 が適用され、複合用途の防火対象物なら該当するが、建物全体が共同住宅なら(別表の
 (五)項ロ) 該当しないとのことです。

 消防法施行令第4条の2の2 (火災の予防上必要な事項等について点検を要する防火対象物)
 「第四条の二の二  法第八条の二の二第一項 の政令で定める防火対象物は、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ及び(十六の二)項に掲げる防火対象物であつて、次に掲げるものとする。
     一  収容人員が三百人以上のもの
     二  前号に掲げるもののほか、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が避難階(建築基準法施行令 (昭和二十五年政令第三百三十八号)第十三条第一号 に規定する避難階をいう。以下同じ。)以外の階(一階及び二階を除くものとし、総務省令で定める避難上有効な開口部を有しない壁で区画されている部分が存する場合にあつては、その区画された部分とする。以下この号、第二十一条第一項第七号、第三十五条第一項第四号及び第三十六条第二項第三号において「避難階以外の階」という。)に存する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段(建築基準法施行令第二十六条 に規定する傾斜路を含む。以下同じ。)が二(当該階段が屋外に設けられ、又は総務省令で定める避難上有効な構造を有する場合にあつては、一)以上設けられていないもの

 単純に、消防法第8条の2の2 の適用があるかどうかというと、消防法第8条の2の2 の適用はありませんが、高さに関係なく、収容人員によって防火管理者を定めることは必要です。

 ということで、設問が単純に、消防法第8条の2の2 の高層建築物に共同住宅が入るかどうかというだけと捉えて、ここは、「誤っている」 とします。


2 高層マンションの管理について権原を有する者は、廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について避難の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理しなければならない。 

○ 正しい。
  設問は、消防法第八条の2の4
 「第八条の二の四  学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物
その他の防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について避難の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理し、かつ、防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理しなければならない。」
 とあり、 
 その他の防火対象物で政令は、消防法施行令第4条の2の3
 「(避難上必要な施設等の管理を要する防火対象物)
  第四条の二の三
   法第八条の二の四の政令で定める防火対象物は、
別表第一に掲げる防火対象物(同表(十八)項から(二十)項までに掲げるものを除く。)とする。」
 とあり、
  選択肢1で引用しています、別表第一でマンションなら、共同住宅として、表の「
 (五)項ロ」 に該当しますから、正しい。


3 高層マンションで、その管理について権原が分かれているもののうち消防長若しくは消防署長が指定するものの管理について権原を有する者は、防火管理上必要な業務に関する事項で一定のもの協議して定めておかなければならない。

○ 正しい。
  設問は、消防法第8条の2
 「第八条の二  
  
高層建築物(高さ三十一メートルを超える建築物をいう。第八条の三第一項において同じ。)その他政令で定める防火対象物で、その管理について権原が分かれているもの又は地下街(地下の工作物内に設けられた店舗、事務所その他これらに類する施設で、連続して地下道に面して設けられたものと当該地下道とを合わせたものをいう。以下同じ。)でその管理について権原が分かれているもののうち消防長若しくは消防署長が指定するものの管理について権原を有する者は、これらの防火対象物について、消防計画の作成その他の防火管理上必要な業務に関する事項で総務省令で定めるものを、協議して、定めておかなければならない
   2  前項の権原を有する者は、同項の総務省令で定める事項を定めたときは、遅滞なく、その旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。当該事項を変更したときも、同様とする。
   3  消防長又は消防署長は、第一項の総務省令で定める事項が定められていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、同項の規定により当該事項を定めるべきことを命ずることができる。
   4  第五条第三項及び第四項の規定は、前項の規定による命令について準用する。」
 とあり、
 1項に該当し、正しい。


4 高層マンションの管理者、所有者又は占有者は、当該マンションで使用するため、防炎性能を有しないじゅうたんを購入し、業者等に委託して一定基準以上の防炎性能を与えるための処理をさせたときは、その旨を明らかにしておかなければならない。

○ 正しい。
 設問は、消防法第8条の3
 「第八条の三  高層建築物若しくは地下街又は劇場、キャバレー、旅館、病院その他の政令で定める防火対象物において使用する防炎対象物品(どん帳、カーテン、展示用合板その他これらに類する物品で政令で定めるものをいう。以下同じ。)は、政令で定める基準以上の防炎性能を有するものでなければならない。
   2  防炎対象物品又はその材料で前項の防炎性能を有するもの(以下この条において「防炎物品」という。)には、総務省令で定めるところにより、同項の防炎性能を有するものである旨の表示を附することができる。
   3  何人も、防炎対象物品又はその材料に、前項の規定により表示を附する場合及び工業標準化法 (昭和二十四年法律第百八十五号)その他政令で定める法律の規定により防炎対象物品又はその材料の防炎性能に関する表示で総務省令で定めるもの(以下この条において「指定表示」という。)を附する場合を除くほか、同項の表示又はこれと紛らわしい表示を附してはならない。
   4  防炎対象物品又はその材料は、第二項の表示又は指定表示が附されているものでなければ、防炎物品として販売し、又は販売のために陳列してはならない。
   
5  第一項の防火対象物の関係者は、当該防火対象物において使用する防炎対象物品について、当該防炎対象物品若しくはその材料に同項の防炎性能を与えるための処理をさせ、又は第二項の表示若しくは指定表示が附されている生地その他の材料からカーテンその他の防炎対象物品を作製させたときは、総務省令で定めるところにより、その旨を明らかにしておかなければならない。」 
 5項に該当し、正しい。



答え:? (答えられない) (消防法第8条の2の2 と その施行令4条の2の2 では、共同住宅(別表 (五)項ロ )は除外されていますが、「収容人員」との関係が、不明確です。)
マンション管理士センターの答え:1

問24

〔問 24〕マンションにおける防犯に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

1 共用メールコーナーの照明設備は、10m先の人の顔、行動が明確に識別でき、誰であるか明確にわかる程度以上となるよう、床面において概ね50ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする。

○ 適切である。 防犯も出題は多い。 平成23年 マンション管理士試験 「問23」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問24」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問43」 。
 根拠となっているのは、「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針 」:http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/press/h12/130323-3.htm
 と
 「共同住宅に係る防犯上の留意事項」 :http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/press/h12/130323-2.htm
 まず、照度は、「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」
  2 共用部分の設計
    (3) 共用メールコーナー
      イ 共用メールコーナーの照明設備
        ・
共用メールコーナーの照明設備は、床面において概ね50ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする
 とあり、床面において概ね50ルクス以上の平均水平面照度を確保することは、適切です。
 次に、10m先の人の顔などが「明確にわかる」は、「共同住宅に係る防犯上の留意事項 」
  (3) 共用メールコーナー 
     ア 共用玄関付近からの見通しが確保された位置等にあること。
     イ 人の顔、行動を明確に識別できる程度以上の照度が確保されたものであること。 」
 とあり、
  同じく 「共同住宅に係る防犯上の留意事項 」の下にある、注意書き
  
(注1)「人の顔、行動を明確に識別できる程度以上の照度」とは、10メートル先の人の顔、行動が明確に識別でき、誰であるか明確にわかる程度以上の照度をいい、平均水平面照度(床面又は地面における平均照度。以下同じ。)が概ね50ルクス以上のものをいう
   (注2)「人の顔、行動を識別できる程度以上の照度」とは、10メートル先の人の顔、行動が識別でき、誰であるかわかる程度以上の照度をいい、平均水平面照度が概ね20ルクス以上のものをいう。
   (注3)「人の行動を視認できる程度以上の照度」とは、4メートル先の人の挙動、姿勢等が識別できる程度以上の照度をいい、平均水平面照度が概ね3ルクス以上のものをいう。
 とあり、(注1)により、こちらも、適切ですから、選択肢1は、全体で適切です。


2 共用玄関の存する階以外の階のエレベーターホールの照明設備は、10m先の人の顔、行動が識別でき、誰であるかわかる程度以上となるよう、床面において概ね20ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする。

○ 適切である。
 まず、共用玄関の存する階以外の階のエレベーターホールの照明設備は、選択肢1で引用しました、「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」
 (4) エレベーターホール
   イ エレベーターホールの照明設備
     ・共用玄関の存する階のエレベーターホールの照明設備は、床面において概ね50ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする。
     ・
その他の階のエレベーターホールの照明設備は、床面において概ね20ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする
  とあり、
 共用玄関の存する階以外の階のエレベーターホールですから、照度20ルクスは適切です。
 次に、10m先の人の顔などが「誰であるかわかる程度」は、これも、選択肢1で引用しました、「共同住宅に係る防犯上の留意事項」
 (4) エレベーターホール  
    ア 共用玄関付近からの見通しが確保された位置等にあること。
    イ 人の顔、行動を明確に識別できる程度以上の照度が確保されたものであること。 」
 とあり、「共同住宅に係る防犯上の留意事項 」の下にある、注意書き
  (注1)「人の顔、行動を明確に識別できる程度以上の照度」とは、10メートル先の人の顔、行動が明確に識別でき、誰であるか明確にわかる程度以上の照度をいい、平均水平面照度(床面又は地面における平均照度。以下同じ。)が概ね50ルクス以上のものをいう。
  
(注2)「人の顔、行動を識別できる程度以上の照度」とは、10メートル先の人の顔、行動が識別でき、誰であるかわかる程度以上の照度をいい、平均水平面照度が概ね20ルクス以上のものをいう
   (注3)「人の行動を視認できる程度以上の照度」とは、4メートル先の人の挙動、姿勢等が識別できる程度以上の照度をいい、平均水平面照度が概ね3ルクス以上のものをいう。
 とあり、(注2)により、こちらも、適切ですから、選択肢2は、全体で適切です。



3 自転車置場、オートバイ置場の照明設備は、10m先の人の挙動、姿勢等が識別できる程度以上となるよう、床面において概ね3ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする。

X 適切でない。 人の挙動、姿勢等が識別できる程度以上とは、10m先ではなく、4m先
 自転車置場、オートバイ置場の照明設備は、選択肢1で引用しました、「共同住宅に係る防犯上の留意事項 」
  (7) 自転車置場・オートバイ置場 
    ア 周囲からの見通しが確保された構造等を有するものであること。
    イ チェーン用バーラックの設置等盗難防止に有効な措置が講じられたものであること。
    
ウ 人の行動を視認できる程度以上の照度が確保されたものであること。」
 とあり、 「ウ 人の行動を視認できる程度以上の照度」とは、
 
(注3)「人の行動を視認できる程度以上の照度」とは、”4メートル先”の人の挙動、姿勢等が識別できる程度以上の照度をいい、平均水平面照度が概ね”3ルクス以上”のものをいう。」
 とありますから、 照度の3ルクスは適切ですが、”10m先”の人の挙動、姿勢等が識別できるではなく、”4m先”の人の挙動、姿勢等が識別できる程度です。適切ではありません。


4 住戸の玄開扉等は、工具類等の侵入器具を用いた侵入行為に対して、騒音の発生を可能な限り避ける攻撃方法に対しては5分以上侵入を防止する性能を有する防犯建物部品等の扉又は錠を設置したものとする。

○ 適切である。→→ X 適切でない。 (追加訂正:2013年 1月18日) 
 *2012年12月22日の解説: こんなの根拠不明ですが、探し出しました。以下の文書です。
 「建物の設備面での対抗処置を講じることによって侵入犯罪の防止を図るために、平成14年11月25日、警察庁では、国土交通省・経済産業省や建物部品関係の民間団体とともに「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」を設置しました。
 官民合同会議では、現在の侵入犯罪の手口を踏まえ、建物への侵入を防ぐための各建物部品の基準などについて検討を重ね、平成15年10月からは建物部品の防犯性能試験を実施。平成16年3月、官民合同会議の活動について「防犯性能の高い建物部品の開発・普及の今後の在り方」として取りまとめました。同時に、平成15年度中における試験結果に基づき、「侵入までに5分以上の時間を要する」など一定の防犯性能があると評価された建物部品(防犯建物部品)15種類、計約2,300品目を掲載した「防犯性能の高い建物部品目録」を公表しました。
防犯建物部品は、平成24年6月末現在、17種類3,170品目です。」
 とあり、適切です。

 
 *2013年 1月18日;追加訂正: ”扉又は錠”は”扉及び錠”のため、この選択肢4 も適切でない。
 ここは、私も、昨年12月の解説(上記参照)では概要だけで済ましてしまったのですが、受験生の立場でもあった「角田末吉様」の、正解発表前の国土交通省や出題元の 財団法人:マンション管理士センター への、出題ミスに対する強い抗議文により、財団法人:マンション管理士センター も平成25年 1月11日 の正解発表の前に、
選択肢3 と 選択肢4 を解答としたものです。
 また、正解速報を出した、資格校にも、角田様は、昨年末に同じような質問文を出されています。 別紙参照

 設問での該当の文章は、
 「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針の改正:平成18年4月20日:国土交通省住宅局長 発 :http://www.jia.or.jp/news/domestic_news/2006/housing_bouhan.pdf

 第2 留意事項
  2 専用部分
    (1) 住戸の玄関扉
       ア 防犯建物部品等の
扉(枠を含む。)及び錠が設置されたものであること。」
 とあり、
 また、防犯優良マンション標準認定基準 
 (財)全国防犯協会連合会、(社)日本防犯設備協会、、(財)ベターリビング 作成でも、
  「第2 認定基準
   1 標準的事項
     (2) 専用部分
       @ 住戸の玄関扉
         a 住戸の玄関は、防犯建物部品等の
扉(枠を含む。)及び錠が設置されていること。既存マンション(認定制度が施行される前に着工されたものに限る。)においてやむを得ずこれを満たさない場合は、補完する措置が講じられていること。」
 とあり、
 明らかに、「住戸の玄関は、防犯建物部品等の
扉(枠を含む。)”及び”錠が設置されていること」とあり、”又は”ではありません。
 言葉の「及び」と「又は」の違いは、明確ですから、角田様は、ここを指摘して、不適切としたものです。
 角田様、ありがとうございました。 これで、何名かの受験生が合格になったことと思います。



答え:3 (フーッ、まったく、根拠を探すのに苦労する出題だ! 10mだとか4mとか、重箱の隅を突っつく出題で、試験委員として適切な態度かな?)

マンション管理士センターの答え:3、4 (ここは、出題の不備で、答えが2つあります。) 
 マンション管理士センターのお詫び文:※問24については、3又は4のいずれも正解として取り扱うこととしました。複数解となる問題がありましたことをお詫び申し上げますとともに、再発防止に努めてまいります。

 しかし、これだけの文章を、解答欄:http://www.mankan.org/pdf/H24_answer.pdf の下の方に記載するだけでは、財団法人:マンション管理士センターは出題元としての責任を果たしていません。
高額な受験料を払った受験生に対して、もっと詳細に、「なぜ、このようなことになったかの顛末」も示す責任があります。

問25

〔問 25〕「機械式駐車場の一部撤去に関する件」という議題で招集された集会における区分所有者の次の発言のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、機械式駐車場は区分所有者全員の共有に属するものとする。

1 議題は、通知されていますが、議案の要領は、本日、会場で出席者に配付され事前に通知されていません。各区分所有者は、会議の目的たる事項についてあらかじめその内容を知り検討したうえで、集会に出席したり、又は書面により議決権を行使したりすることができませんので、決議しても無効です。

○ 正しい。 議案の要領も必要。 複合問題で面倒。 平成20年 マンション管理士試験 「問6」 、 平成18年 管理業務主任者試験 「問30」 、平成17年 管理業務主任者試験 「問35」 、平成16年 マンション管理士試験 「問7」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問37」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問9」  、 平成23年 管理業務主任者試験 「問31」 、 平成19年 マンション管理士試験 「問28」 など。
  区分所有法では、集会(総会)を開く際には、会議の目的(議題)たる事項は必ず示せと言っています。そして、その集会での議題の重さにより、さらに、その内容を説明した要領も通知しろと言っています。
 それが、区分所有法第35条にあります。
 「(招集の通知)
  第三十五条  集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、
会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。
    2  専有部分が数人の共有に属するときは、前項の通知は、第四十条の規定により定められた議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の一人)にすれば足りる。
    3  第一項の通知は、区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知しなかつたときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば足りる。この場合には、同項の通知は、通常それが到達すべき時に到達したものとみなす。
    4  建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第一項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。この場合には、同項の通知は、その掲示をした時に到達したものとみなす。
    5  第一項の通知をする場合において、会議の目的たる事項が
第十七条第一項、第三十一条第一項、第六十一条第五項、第六十二条第一項、第六十八条第一項又は第六十九条第七項に規定する決議事項であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。 」
 そこで、5項により、設問の「機械式駐車場の一部撤去に関する件」は、共用部分の変更ですから、該当しそうなのは、第17条1項です。
 「(共用部分の変更)
  第十七条  共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
     2  前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。 」
 とあり、
 この区分所有法第17条1項は、「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)」となっていて、カッコ書きが入っているため、解釈が面倒なのですが、「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く」ですから、逆に、「その形状又は効用の著しい変更を伴う、共用部分の変更」と解されます。
 そこで、何が、「その形状又は効用の著しい変更を伴う、共用部分の変更」なのか、これまた具体性に乏しい規定のため、判断が分かれることも多いのですが、「機械式駐車場を一部撤去」すると機械式駐車場の外観や構造の形状も大きく変わり、また駐車場から別の使用方法も考えられるため、これは、
「その形状又は効用の著しい変更を伴う、共用部分の変更」と判断します。そこで、この行為は、区分所有法第17条1項に該当するため、区分所有法第35条5項により、その議案の要領をも通知しなければなりません。
 設問では、議案の要領を通知していませんから、今度は、区分所有法第37条
 「(決議事項の制限)
  第三十七条  集会においては、第三十五条の規定により
あらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる
    2  前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない。
    3  前二項の規定は、前条の規定による集会には適用しない。」
 とあり、
 1項により、集会で決議できるのは、 「第三十五条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ」ですから、第35条の要件を満たしていないため、集会では決議できません。もし決議しても、無効となりますから、正しい。



2 撤去対象になっている駐車場はパレット毎に専用使用権が設定され分譲時に対価を支払っており、分譲時からあまり時間が経過していないので、その清算を行うことなく撤去を求めることは専用使用権を有する区分所有者に特別の影響を及ぼすこととなります。影響を受ける区分所有者が同意していない限り決議しても無効です。

○ 正しい。 平成22年 管理業務主任者試験 「問35」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問26」 、 平成19年 マンション管理士試験 「問7」 、 平成19年 管理業務主任者試験 「問33」 など。
  ここも、設問が曖昧ですが、設問のような、専用使用権が設定されていると、出題者としては、規約も変更になるので、この場合はどうかと訊きたいようです。
 規約の変更は、区分所有法第31条
 「(規約の設定、変更及び廃止)
  第三十一条  規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。
この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない
    2  前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。 」
 とあり、
 1項により、機械式駐車場の一部撤去は、撤去される区分所有者にとって不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合で、権利に特別の影響を及ぼしますから、この場合には、影響を受ける区分所有者の承諾(同意)が必要です。正しい。
 判例:最高裁:平成10年11月20日:も参考にしてください。http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319130811646570.pdf


3 議案の要領の内容には、機械式駐車場に隣接する別の附属施設であるバイク置場の撤去も盛り込まれていますが、それにもかかわらず、議題として通知されていません。本来別の議題とすべきで、それを含めて集会で決議することはできません。

○ 正しい。
  ここもサラット読むと、設問が分からないのですが、「議案の要領の内容には、機械式駐車場に隣接する別の附属施設であるバイク置場の撤去も盛り込まれています」とあり、選択肢1で問題にした、「機械式駐車場の一部撤去に関する件」が議題として通知され、さらにその「議案の要領」に、@機械式駐車場 に プラスして、Aバイク置場の撤去 が通知されていると解釈します。
 すると、@機械式駐車場 については、招集の通知においては、瑕疵がありません。 次に、Aバイク置場の撤去 ですが、これは、通知内容には、会議の目的(議題)として示さなかったが、「議案の要領」としては通知した状態と捉えます。
 ここで、設問が、「別の附属施設であるバイク置場の撤去」となっているのは、選択肢2で説明しました駐車場の専用使用者のように、
バイク置場の専用使用者の権利に特別の影響を及ぼす行為となり、これを決議するには、機械式駐車場の一部撤去とは別にバイク置場の撤去の決議も必要と考えますから、別の議題として通知が必要でさらに、バイク置場の撤去の要領も通知が必要と考えますから、正しい。


4 機械式駐車場及びバイク置場は、区分所有者全員の共有に属する附属施設なので、その撤去を行い更地にする場合は、共有物の処分行為に当たります。したがって、撤去については、区分所有全員の同意がない限り、実施することはできません。

X 誤っている? 平成22年 マンション管理士試験 「問30」 は、民法がでてこない出題。 平成18年 マンション管理士試験 「問6」 、平成17年 マンション管理士試験 「問5」 。 平成24年 マンション管理士試験 「問10」選択肢2 も参考に。
 撤去して更地にする。共有物の処分行為になるか。変更行為か。判断が難しい個所だ。
 上の 「問10」選択肢2 でも説明しましたように、区分所有法はまだ制定されて日が新しいため、明治時代から存在する民法との境界において、裁判所や学者間においても、判断が異なることが多々あります。
 その上、共有物においては、何が保存・管理・変更行為に該当するかは、これまた議論が飛び交わっている項目です。
 また、区分所有法ではマンションの建替えが多数決によってできる例から、全ての事柄は区分所有者の団体の多数決の原理で決するという理論も成り立つ訳です。
 それらを踏まえながら、設問の「機械式駐車場及びバイク置場を撤去して、更地にする」行為を検討しますと、この行為は、マンション外に与える影響が少ないので、区分所有法内で決することができる事項で、民法の共有物の処分行為には、当たらないとするのが、出題者の意図だと思いますので、一応、誤っているとします。
 参考:区分所有法第17条
  「(共用部分の変更)
第十七条  共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
  2  前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。 」
 
 民法251条
 (共有物の変更)
 第二百五十一条  各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」



答え:4 (出題者の設問のまずさで、解説に時間がかかる。 設問は出題意図をもっと端的・明確にしてくれないと、受験生も解答に時間をとられる。)
マンション管理センターの答え:4

ここまで、問25


次へ次へ

2015年 2月10日:[問18」 選択肢4 に 栗栖 屯さんのメールを入れた。
2014年 6月19日:問19 選択肢3 に追記した。
2013年 3月29日:再度、リンクなど入れた。
2013年 3月19日:「問23」に消防庁の問い合わせの結果を入れた。
2013年 3月 8日:「問22」 選択肢3に 具体的な 「健水発0325第5号」入れた。
2013年 2月26日:「問18」の選択肢4 に法務局の回答を入れた。
2013年 2月24日:再々検討し、「問9」の競売、「問13」の破産法、「問19」選択肢2の適用条文など変更した。
2013年 2月12日:再検討して、図など入れた。
2013年 1月20日:解説文に 「赤字」 や 「問23」 の消防法に追記した。
2013年 1月18日:「問24」 に 角田様の抗議文と選択肢4 の解説を追加した。
2013年 1月12日:マンション管理士センターの解答をいれた。
2012年12月22日:第1稿済。「問23」の高層マンションは、判断ができない。
解説開始:2012年11月30日
問題文Up:2012年11月30日

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