マンション生活での相談は、「マンション管理士 香川事務所」へ。

平成26年 マンション管理士 試験問題 及び 解説

ページ1(問1より問25まで)

次へ次へ

謝辞:当問題の作成にあたっては、水流様、山崎様、岩田様及び高木様のご協力を戴いております。
テキスト文への変更など、ご助力を心から感謝いたします。
  「マンション管理士 香川事務所」より。


*注: マンション標準管理規約(単棟型、団地型、複合用途型)は、平成28年3月に改正があり、当解説においては、未対応ですから、注意してください。 → 2017年 4月 9日:平成28年3月改正の標準管理規約に対応した。
 また、「マンションの管理の適正化に関する指針」も平成28年3月に改正がありましたので、注意してください。


※ 出題当時以後の法令等の改正には、一部は対応していません。

*試験に臨んで、お節介なアドバイス
  1.設問にあわせて、問題用紙に ○(まる)、X(ばつ)をつける。
    殆どの設問が、「正しい」か「間違い」かを訊いてきますので、設問により、問題の頭に、○かXをつけます。
    そして、各選択肢を読み、○かXをつけます。
    問題の○なりXと、選択肢の○かXが一致したものを、マークシートに記入してください。

  2.疑問な問題は、とりあえず飛ばす。
    回答の時間は限られています。
    そこで、回答として、○かXかはっきりしないものがでたら、「?」マークをつけて、次の問題に移ります。
    全部の回答が終わってから、再度戻って決定してください。

  3.複雑な問は、図を描く。
    甲、乙、A、B、Cなど対象が多い問題もでます。
    この場合、問題用紙の空いているところに、図を描いてください。
    重要な点が分かってきます。

(出題者からの注意) 1.答えは、各問題とも1つだけです。2つ以上の解答をしたもの、判読が困難なものは、正解としません。
              2.問題中法令に関する部分は、平成26年4月1日現在施行中の規定に基づいて出題されています。


解説者からのコメント:あやふやな出題、適切でない出題もあって、解答ができないのもあります。

※  マンション標準管理規約は、平成16年に改正があった。また、平成23年7月にも小幅な改正があった。
   マンション標準管理委託契約書は、平成15年に改正があった。また、平成22年5月にも改正があった。

問1

[問 1] マンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「マンション管理適正化法」という。)第2条第1号イに規定するマンションをいう。以下同じ。)の区分所有者の共有に属する次のア〜エについて、規約でその持ち分を定めることができるものは、建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)及び民法の規定によればいくつあるか。

ア 専有部分以外の建物の部分

○ 規約で持分を定めることができる。 平成25年マンション管理士試験 「問1」、 平成24年マンション管理士試験 「問1」平成22年マンション管理士試験 「問1」平成20年マンション管理士試験 「問1」平成19年マンション管理士試験 「問7」 など。
 まず、過去の私の解説を読んでいる人には、度々となりますが、
 建物の区分所有等に関する法律(以下、当解説では、「区分所有法」といいます)では、法律用語として「マンション」の定義がありません。しかし、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下、当解説では、「マンション管理適正化法」といいます)第2条では、以下のように定義されていますので、マンションの用語を試験で使用する際には設問のような「マンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「マンション管理適正化法」という。)第2条第1号イに規定するマンションをいう」の表現が使用されます。
 そこで、マンション管理適正化法第2条とは、
 
「(定義) 
  第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
     一
 マンション 次に掲げるものをいう
       イ 
二以上の区分所有者(建物の区分所有等に関する法律 (昭和三十七年法律第六十九号。以下「区分所有法」という。)第二条第二項 に規定する区分所有者をいう。以下同じ。)が存する建物で人の居住の用に供する専有部分(区分所有法第二条第三項 に規定する専有部分をいう。以下同じ。)のあるもの並びにその敷地及び附属施設」

 です。マンション管理適正化法第2条1号イによれば、「マンション」であるための要件は、
    @2人以上の区分所有者 がいて、 
    A人の居住用の専有部分が1つでもあればいい 
 です。マンションの建物には、専有部分と共用部分しかなく、そして、マンションは専有部分と共用部分を含んだ建物と敷地及び附属施設の全体的なものであることに注意してください。

 
  そこで、設問の、「規約でその持ち分を定めることができるもの」とは、区分所有法での規定第14条が関係します。
 「(共用部分の持分の割合)
 第十四条  
各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による
  2  前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。
  3  前二項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。
  
4  前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
 とあり
 マンションでの共用部分の持分は、原則:1項により、「各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合」によりますが、4項で、「規約で別段の定めをすることを妨げない」とありますから、共用部分に該当すれば、別途規約でその持分を定めることができとなります。
 それでは、今度は、共用部分とは何かということです。
 共用部分とは、区分所有法第2条
 「(定義)
 第二条  この法律において「区分所有権」とは、前条に規定する建物の部分(第四条第二項の規定により共用部分とされたものを除く。)を目的とする所有権をいう。
  2  この法律において「区分所有者」とは、区分所有権を有する者をいう。
  3  この法律において「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。
 
 4  この法律において「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。
  5  この法律において「建物の敷地」とは、建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により建物の敷地とされた土地をいう。
  6  この法律において「敷地利用権」とは、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利をいう。」  
とあり、
 4項によれば、 「「共用部分」とは、
  @専有部分以外の建物の部分、
  A有部分に属しない建物の附属物 及び
  B第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう」 です。
 この4項で引用されています、Bの「第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物」とは、
 「(共用部分)
 第四条  数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。
 
 2  第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
 とあり、
 第4条2項では、第1条を引用していますから、読み替えますと「一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分」(第1条)と「附属の建物」は、規約があれば、共用部分にすることができると規定しています。
 これは、専有部分(室、部屋)であっても、規約があれば、共用部分として扱うということです。
 そこで、これらをすべてを纏めますと、共用部分とは、
  建物の中で廊下や階段など「専有部分以外の部分」であり、
  さらに、この共用部分には
   @「専有部分でない建物の附属の物」(電気の幹配線、ガス・水道の主配管、エレベーターなど)
   A「専有部分になりえるが、規約でみんなの物とする附属の建物」(集会室、物置、倉庫など)
  となります。

 
 これにより設問の「専有部分以外の建物の部分」は、共用部分となりますから、規約でその持分を定めることができます。


イ 規約により共用部分とされた附属の建物

○ 規約で持分を定めることができる。
   選択肢アで説明しましたように、「規約により共用部分とされた附属の建物」も共用部分ですから、規約でその持分を定めることができます。
 なお、「規約により共用部分とされた附属の建物」とは、別棟の集会所、物置、倉庫、車庫などが考えられます。


ウ 建物の所在する土地

X 規約で持分を定めることができない。
 
 「建物の所在する土地」は、選択肢アで説明しました建物の「共用部分」には該当しませんから、規約ではその持分を定めることができません。
 マンションの土地の持分は、多くの場合分譲時の契約により、敷地の全体面積に対して、何分のいくつ のように決まります


 
エ 共用部分以外の附属施設

X 規約で持分を定めることができない。
 
通常、マンションの附属施設なら、規約によって共用部分としますが、「共用部分以外の附属施設」となると、選択肢アで説明しましたように、共用部分ではありませんから、これは、規約では持分を定めることができません。
 
 1 一つ
 2 二つ
 3 三つ
 4 四つ


答え:2 規約でその持分を定めることができるのは、アとイの2つ。  エの表現が迷うか?
     {ある受験者の感想…選択肢ア、イ、エの3つとも○だと思った。個数問題でなければ、できたかも。}

 なお、区分所有法の解説としては、「マンション管理士 香川事務所」 が無料で提供しています、「超解説 区分所有法」 のサイトもありますから、ご利用ください。
《タグ》 共用部分と持分、 区分所有法 + 民法

問2

[問 2] A所有の甲地に所在するマンションの専有部分をA及びBが所有している場合の敷地利用権に関する次の記述のうち、区分所有法、民法及び不動産登記法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。

1 Aが第三者Cのため甲地に賃借権を設定し、A及びBがCから賃借権の譲渡を受けその持分が各2分の1である場合、A及びBのそれぞれの賃借権の準共有持分が敷地利用権となる。

○ 正しい。 平成25年マンション管理士試験 「問1」 選択肢4、平成19年管理業務主任者試験 「問35」
 まず、解答にあたっては、出題文について、問題用紙の空いているところに、図を書いてみましょう。
 こんな感じです。

  

 そこで、敷地利用権とは、区分所有法第2条6項
 
「(定義)
  第二条
    
6  この法律において「敷地利用権」とは、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利をいう。」
 とあり、
 設問のように、建物の専有部分をA及びBが所有し、Cから賃借権の譲渡を受けていれば、A及びBの敷地に関する権利は、区分所有法での敷地利用権となります。

 
  

 なぜ、区分所有法では聞きなれない「敷地利用権」という権利があるかといいますと、日本の民法では、土地の権利と建物の権利は別々であると規定していますから、正当に建物の権利を所有するためには、建物の下にある土地の権利も正当に持っていなければいけません。そこで、区分所有法では、建物所有に必要な土地に対する権利を「敷地利用権」と定義し、民法で定める、一般の土地に対する権利とは別の概念を創設定義しました。
 では、敷地利用権になる得る権利関係は民法によると、どのようなものがあるかといいますと、
   @所有権...敷地の権利を専有部分の所有者が直接所有する場合(多くの場合。マンションでは複数の所有権者がいますから、共有となります。)(民法第206条以下参照)
   A地上権...他人の土地を利用する権利を持ってマンションを建てた場合。(民法第265条以下参照)
   B賃借権...他人の土地を賃料を支払って借りる場合。(民法第601条以下参照)
   C使用貸借権...他人の土地を無償で借りる場合。(民法第593条以下参照)。この使用賃借は、論理的にはあり得るということですが、無償ですから、現実としては稀な場合です。
  地上権(物権)と賃借権(債権)との違いなどは、解説すると長くなりますので別途勉強してください。

  そこで、設問に戻りますが、A及びBはCから各2分の1を持分とする土地の賃借権の譲渡を受けたとありますから、A及びBは、土地に対する賃借権を有します。
 準共有とは、複数の人が所有権以外の権利を有する場合に使用されます(民法第264条参照)から、賃借権をA及びBが各々持っていますとこれは、準共有となり、A及びBがCから賃借権の譲渡を受けその持分が各2分の1である場合、A及びBのそれぞれの賃借権の準共有持分が敷地利用権となりますから、正しい。
 なお、Aは地主であっても、この設問では、建物の敷地利用権としては、賃借権の準共有持分の2分の1を有することになります。

 

2 AがBのため甲地に地上権を設定し、BがAの専有部分所有のための甲地の使用を認容する場合は、Aの敷地利用権は、地上権者Bとの間の契約上の利用権である。

○ 正しい。
 選択肢1では、敷地利用権は、賃借権でしたが、今度は地上権です。
 

 選択肢1で説明しましたように、マンションの専有部分を所有するための建物の敷地に関する敷地利用権には、地上権も可能です。
 設問の場合、地上権は、Bが持っていますから、地主であるAであっても、Aの敷地利用権は、地上権者Bとの間の契約上の利用権となり、正しい。
 参考:法定地上権(民法第388条)という言葉もありますから、別途勉強しておいてください。



3 AB間の使用貸借契約により、AがBの専有部分所有のための甲地の使用を認容する場合のBの敷地利用権は、使用借権であるが、登記することにより敷地権となる。

X 誤っている。 使用借権は登記できない。 平成25年マンション管理士試験 「問18」も参考に
 選択肢1で説明しましたように、マンションの専有部分を所有するための建物の敷地に関する敷地利用権には、設問の無償の使用貸借契約による使用借権も論理的には該当していますが、これが登記となるとまた別です。
  

 まず、登記上の「敷地権とは、不動産登記法第44条1項
 「(建物の表示に関する登記の登記事項)
 第四十四条  建物の表示に関する登記の登記事項は、第二十七条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
     一  建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番(区分建物である建物にあっては、当該建物が属する一棟の建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番)
     二  家屋番号
     三  建物の種類、構造及び床面積
     四  建物の名称があるときは、その名称
     五  附属建物があるときは、その所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番(区分建物である附属建物にあっては、当該附属建物が属する一棟の建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番)並びに種類、構造及び床面積
     六  建物が共用部分又は団地共用部分であるときは、その旨
     七  建物又は附属建物が区分建物であるときは、当該建物又は附属建物が属する一棟の建物の構造及び床面積
     八  建物又は附属建物が区分建物である場合であって、当該建物又は附属建物が属する一棟の建物の名称があるときは、その名称
     九  建物又は附属建物が区分建物である場合において、当該区分建物について区分所有法第二条第六項 に規定する
敷地利用権(登記されたものに限る。)であって、区分所有法第二十二条第一項 本文(同条第三項 において準用する場合を含む。)の規定により区分所有者の有する専有部分と分離して処分することができないもの(以下「敷地権」という。)があるときは、その敷地権
   2  前項第三号、第五号及び第七号の建物の種類、構造及び床面積に関し必要な事項は、法務省令で定める。」
 とあります。
 この不動産登記法第44条1項9号により、区分所有法第2条6項の「敷地利用権」は、登記することにより、「敷地権」となり、専有部分と分離処分ができなくなります。

 そこで、この「敷地利用権」が登記できるかとなると、不動産登記法第3条
 「(登記することができる権利等)
 第三条  登記は、不動産の表示又は不動産についての次に掲げる権利の保存等(保存、設定、移転、変更、処分の制限又は消滅をいう。次条第二項及び第百五条第一号において同じ。)についてする。
     一  所有権
     二  地上権
     三  永小作権
     四  地役権
     五  先取特権
     六  質権
     七  抵当権
     八  賃借権
     九  採石権(採石法 (昭和二十五年法律第二百九十一号)に規定する採石権をいう。第五十条及び第八十二条において同じ。)」
 とあり、
 登記できる権利は、所有権や抵当権、賃借権など9つの権利に限定されていて、設問の
「使用借権」は登記できないのです。
 そこで、敷地利用権は使用借権ではありますが、登記できないので、「敷地権」になるは、誤りとなります。



4 Aが甲地をA及びBの所有する各専有部分の底地ごとに区画して分筆し、Bの専有部分の底地部分に賃借権を設定し敷地利用権とした場合、Bは、専有部分と敷地利用権とを分離して処分することができる。

○ 正しい。 平成24年マンション管理士試験 「問10」、 平成22年マンション管理士試験 「問5」、 平成20年マンション管理士試験 「問3」、 平成20年管理業務主任者試験 「問5」 など
  分かりにくい出題ですね。設問を図にしましょう。
     
 
  建物は繋がっていますが、敷地(底地)は各々別れているということです。
  マンションの専有部分を所有するための敷地に関する権利として、Bは分筆された土地に対して敷地利用権として賃借権を有していますが、Aは地主であり、Aのマンションの専有部分を所有するための敷地に関する権利は、分筆された土地に対しては、単独の所有権であるということです。
 そこで、設問の「専有部分と敷地利用権とを分離して処分できるか」に対しては、区分所有法第22条があります。
 「(分離処分の禁止)
 第二十二条  
敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
   2  前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第十四条第一項から第三項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。
   3  前二項の規定は、建物の専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合に準用する。」
です。
 
区分所有法第22条1項によれば、「敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。」 とあり、
 敷地利用権を数人で有する場合には、専有部分と敷地利用権とを分離して処分することができないのですが、設問のように、土地が分筆されていて、建物は繋がっていても、建物の下の土地(底地)が各々建物によって区画されている(参考:「超解説区分所有法」 の第22条の解説のテラス・ハウスの分有)と、この区分所有法第22条の規定は適用がないと解されています。それは、建物と土地を一体的に捉えるほどでもないためです。そこで、Bは、専有部分と敷地利用権とを分離して処分することができますから、正しい。 



答え:3。  {ある受験者の感想…選択肢3だけは、ピンポイントでXと分かったが、他の3つはまったく知らなかった。}

 この「問2」は、状況を把握するだけでも時間がかかる。面倒です。
 実際の試験会場では、回答の時間は、2時間と限られています。時間がかかる設問は読み飛ばして、次の問題に移った方がいい。「問16」 も面倒です。
 また、敷地利用権については、「問7」も参考にしてください。
 初めて私の過去問題の解説を読む人が多いので、かなり細かく解説しました。もっと細かな解説が欲しい方は、私の「超解説 区分所有法」 を参考にしてください。

《タグ》敷地利用権、  区分所有法 + 民法 + 不動産登記法

問3

[問 3] 管理組合法人に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 監事が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、仮監事を選任しなければならない。

○ 正しい。
 仮監事の出題とは、珍しい。
 管理組合法人においては、理事と監事は必須です。そこで、監事に対しても、理事の規定が準用されています。それは、区分所有法第50条、
 
「(監事)
 第五十条  管理組合法人には、監事を置かなければならない。
   2  監事は、理事又は管理組合法人の使用人と兼ねてはならない。
   3  監事の職務は、次のとおりとする。
     一  管理組合法人の財産の状況を監査すること。
     二  理事の業務の執行の状況を監査すること。
     三  財産の状況又は業務の執行について、法令若しくは規約に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、集会に報告をすること。
     四  前号の報告をするため必要があるときは、集会を招集すること。
   4  第二十五条、第四十九条第六項及び第七項並びに
前条の規定は、監事に準用する。 」
 とあり、
 設問の監事が欠けた場合は、区分所有法第50条4項に該当します。
 準用されています区分所有法第50条4項の前条とは、区分所有法第49条の4です。 
 「(仮理事)
 第四十九条の四  
理事が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、仮理事を選任しなければならない
   2  仮理事の選任に関する事件は、管理組合法人の主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。 」 
とあり、
 監事が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、仮監事を選任しなければなりませんから、正しい。



2 管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、裁判所によって特別代表者が選任され、この者が管理組合法人を代表する。

X 誤っている。 監事が管理組合法人を代表する。 平成25年マンション管理士試験 「問8」、 平成23年マンション管理士試験 「問8」、 平成22年管理業務主任者試験 「問29」 など。
 管理組合法人と理事との利益が相反する行為は、利益相反行為として禁止されています。それは、管理組合法人を代表する理事が取引の相手方(業者)と同一人であると、管理組合法人の利益が十分に保障されない恐れがあるからです。
 そこで、自己契約・双方代理として原則として禁止されています。(民法第108条)
 では、このような管理組合法人と理事との利益が相反する事項に対しては、どうすればいいかということですが、設問のように、「裁判所によって特別代表者が選任され、この者が管理組合法人を代表」する方法も一案ですが、毎回裁判所の手を煩わすこともないという方法もあります。
 そこで、区分所有法では、第51条
 
「(監事の代表権)
 第五十一条  
管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、監事が管理組合法人を代表する。
 と規定しました。
 この規定により、管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、理事に代表権がなく、監事が管理組合法人を代表するとしています。
 裁判所によって特別代表者が選任されません。監事が管理組合法人を代表しますから、誤りです


 


3 管理組合法人は、財産目録を作成しなければならないが、常にこれを主たる事務所に備え置くことについては義務づけられていない。

X 誤っている。 主たる事務所に備え置くことについては義務づけられている。 平成22年管理業務主任者試験 「問29」、 平成21年管理業務主任者試験 「問32」。
 管理組合が法人化されると、法人としての様々な対応が必要とされます。そのひとつが、区分所有法第48条の2
 
「(財産目録及び区分所有者名簿)
 第四十八条の二  
管理組合法人は、設立の時及び毎年一月から三月までの間に財産目録を作成し、常にこれをその主たる事務所に備え置かなければならない。ただし、特に事業年度を設けるものは、設立の時及び毎事業年度の終了の時に財産目録を作成しなければならない。
   2  管理組合法人は、区分所有者名簿を備え置き、区分所有者の変更があるごとに必要な変更を加えなければならない。 」
 とあり、
 管理組合法人は、財産目録を作成し(1項)、また区分所有者名簿も作成し変更のたびに変更します(2項)。これら、財産目録と区分所有者名簿は、区分所有法第48条の2により、常にこれをその主たる事務所に備え置かなければならなりませんから、誤りです。



4 管理組合法人の解散事由は、建物の全部の滅失又は建物に専有部分がなくなることであり、集会の決議によることは含まれない。

X 誤っている。 管理組合法人は集会の決議で解散する。 平成23年マンション管理士試験 「問7」平成19年マンション管理士試験 「問11」
 管理組合法人の解散事由は、区分所有法第55条
 「(解散)
 第五十五条  
管理組合法人は、次の事由によつて解散する
     一  建物(一部共用部分を共用すべき区分所有者で構成する管理組合法人にあつては、その共用部分)の全部の滅失
     二  建物に専有部分がなくなつたこと。
     
三  集会の決議
   2  前項第三号の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。」 
とあり、
 第55条1項3号によれば、集会の決議で解散できますから、誤りです。



答え:1。 特に、条文通りの出題で難しいことはない出題でした。 法人の規定も、丁寧に読んでおいて下さい。
       {ある受験者の感想…選択肢1か3で迷い、3にしてしまった。}

《タグ》管理組合法人、  区分所有法

問4

[問 4] 管理組合(区分所有法第3条の団体をいう。以下同じ。)の管理者の訴訟の追行等に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。

1 規約により使用目的を庭として専用使用権を与えられた敷地を勝手に駐車場に改造した区分所有者に対して、管理者が他の区分所有者の全員のために、原状回復を求める訴訟を原告として提起するためには、集会の決議を経なければならない。

○正しい。 平成24年マンション管理士試験 「問5」、 平成23年マンション管理士試験 「問8」、 平成19年マンション管理士試験 「問5」 など。
 まず区分所有法で問題になるのは区分所有法第3条で規定される
 「(区分所有者の団体)
 第三条  
区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。」
 の解釈です。
 この第3条で規定される区分所有者の団体は、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体であって、そのための事務処理は行っても、権利や義務の主体ではない団体の性格をもっているということです。 また、管理者は区分所有法第26条2項
 
「(権限)
 第二十六条
   2  
管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。 」 
とあり、
 管理者は区分所有者を代理はしていますが、団体の代表ではないということです。
 そのため、裁判において権利・義務を争う時の主体となり得る適正な被告・原告の資格、これは裁判では「当事者適格」といわれますが、において紛争の当事者として区分所有者の団体が当事者適格を有すのか、それとも区分所有者全員が対象になるのかなどの認定が争いの始めとなり、またそれに付随して、区分所有者でない者もなれることのできる管理者が、区分所有者の団体のために訴追行為ができるかも、論争の基になっていました。
 法人でない区分所有者の団体に対しては「権利能力なき社団(権利能力なき団体とも)」の概念があり、訴訟においても、原告・被告になれます(民事訴訟法第29条)が、区分所有法との関係において明確でないため、区分所有法では、平成14年の法改正で管理者の権限として第26条4項
 「4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。 」 と規定して、
 管理者に訴訟を追行する当事者適格を認め、訴訟追行権を与えています。

 これを前提に設問の「規約により使用目的を庭として専用使用権を与えられた敷地を勝手に駐車場に改造」する行為は、区分所有法第57条に該当します。
 「(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
 第五十七条  区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
   2  
前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない
   3  
管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる
   4  前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。」
 とあり、
 引用されています第6条は
 「(区分所有者の権利義務等)
 第六条  区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。
   2  区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。
   3  第一項の規定は、区分所有者以外の専有部分の占有者(以下「占有者」という。)に準用する。 」 
です。
 規約で庭として使用することが定められているにも係わらず、これを勝手に駐車場に変更する行為は、区分所有法第6条1項の「建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」と認定できます。
 そこで、この行為は区分所有法第57条1項に該当し、同2項及び3項により、訴訟の提起は集会の決議があれば、管理者が他の区分所有者の全員のために、原状回復を求める訴訟を原告として提起することができますから、正しい。



2 管理者が原告として滞納管理費等の支払を求める訴訟の係属中に、管理者自身の区分所有権を第三者に譲渡し区分所有者でなくなった場合であっても、管理者は、原告として当該訴訟を追行することができる。

○ 正しい。管理者は区分所有者でなくてもいい。 平成25年マンション管理士試験 「問5」、 平成24年マンション管理士試験 「問7」平成23年管理業務主任者試験 「問30」 など。
 まず管理者はそのマンションにおいて第三者であっても原告として滞納管理費等の支払を求める訴訟の提起については、選択肢1で説明しましたようにできますから、この箇所は正しい。
 次に管理者の地位ですが、管理者の選任は、区分所有法第25条
 
「(選任及び解任)
 第二十五条
 区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。
   2  管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。」
 です。
 国土交通省が作成しましたマンションの標準管理規約では、管理者=理事長(役員)とし、その役員の資格として、区分所有者(組合員)であることを規定しています(標準管理規約36条4項。注:この規定は平成28年3月に改正があり、組合員以外の第三者も役員になれるようになった)が、区分所有法では、第25条1項により原則:管理者は、区分所有者でなくても選任できますから、設問のように、別段の規約がなければ、管理者が区分所有権を失い区分所有者でなくなっても、訴訟上の地位がなくなるわけではありませんから、正しい。
 この選択肢2は全体として、正しい。



3 集会において、共用部分に係る大規模修繕工事の瑕疵について、管理者が施工業者に瑕疵修補に代えて損害賠償請求を求める訴訟を提起することが決議された場合は、管理者は、区分所有者のために原告として当該訴訟を追行する。

○ 正しい。 平成22年マンション管理士試験 「問14」、 平成20年マンション管理士試験 「問4」平成19年マンション管理士試験 「問14」 など。
 もう一度管理者の権限を整理しましょう。
 区分所有法第26条です。
 
「(権限)
 第二十六条  管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
   2  
管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
   3  管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
   4  
管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる
   5  管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。 」


 管理者の職務権限として、2項に「区分所有者を代理し、共用部分等について生じた損害賠償金の請求ができると」あり、同4項により、「管理者は、集会の決議があれば、その職務に関して区分所有者のために、原告又は被告となること」ができます。
 そして、共用部分に係る大規模修繕工事の瑕疵となると、民法第634条
 「(請負人の担保責任)
 第六百三十四条  仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
   
2  注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第五百三十三条の規定を準用する。」
 とあり
 この場合の注文主は、区分所有者の団体(管理組合)で、解釈が面倒ですが、管理者は区分所有者を代理していますから、また集会の決議もありますので、区分所有法第26条4項と民法第634条2項により、 集会において、共用部分に係る大規模修繕工事の瑕疵について、管理者が施工業者に瑕疵修補に代えて損害賠償請求を求める訴訟を提起することが決議された場合は、管理者は、区分所有者のために原告として当該訴訟を追行することができますから、全体として、正しい。

 なお、民法第635条もありますから、注意してください。
 「第六百三十五条  仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。 」



4 管理者が原告として訴訟を追行する場合、当該訴訟に要する費用又は要した費用について、管理者は、各区分所有者に対して、前払い又は償還の請求をすることができるが、弁護士費用については、前払い又は償還の請求をすることができない。

X 誤っている。 委任では、事務を処理するについて要する費用又は要した費用については、前払い請求又は償還の請求をすることができる。 平成24年管理業務主任者試験 「問4」平成16年管理業務主任者試験 「問2」など。
  区分所有者の団体の規約または集会の決議によって選任された管理者と区分所有者の団体との関係は、民法の委任または委任に類似した契約と解されています。そこで、区分所有法第28条はこの関係を明確にしました。
 
「(委任の規定の準用)
 第二十八条  
この法律及び規約に定めるもののほか、管理者の権利義務は、委任に関する規定に従う。

 この規定により、民法の委任の規定第643条から第656条が管理者に適用されます。
 そこで設問の「管理者が原告として訴訟を追行する場合、当該訴訟に要する費用又は要した費用」の請求は、民法第649条
 
「(受任者による費用の前払請求)
 第六百四十九条  
委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。」
 とあり、
 管理者(受任者)は委任者(各区分所有者)に前払い請求ができます。
 また、民法第650条
 「(受任者による費用等の償還請求等)
 第六百五十条
 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる
   2  受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
   3  受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。 」
 とあり、
 受任者である管理者が委任された訴訟に要する費用を支出したときも委任者に償還の請求ができます。
 ここで、設問が、請求先の委任者を区分所有者の団体とか、管理組合とせず、「各区分所有者」としてあるのが、出題者も区分所有法での団体の扱いで苦労している箇所です。
 そこで、委任事務を処理するについての費用又は委任事務を処理するのに必要と認められる費用に、「弁護士費用がふくまれるか、どうか」ですが、客観的にみて、通常裁判となると、管理者だけでは対応できないと考えられますから、弁護士費用も含めていいと判断できますので、正しい。



答え:4。 なお、管理者については、「問14」 も参考にしてください。 また、弁護士費用についても、「問14」選択肢3 も参考にしてください。
      {ある受験者の感想…選択肢2も候補にあがったが、4の方がXの可能性が高かったので、4にした。}

《タグ》管理者の訴訟、 区分所有法 + 民法

問5

[問 5] 次の各決議については、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数によるが、この区分所有者の定数について、規約でその過半数まで減ずることができるものは、区分所有法の規定によれば、次のうちどれか。

1 区分所有者の共有に属する敷地又は共用部分以外の附属施設の変更についての集会の決議

○ 区分所有者の定数について、規約でその過半数まで減ずることができる。 平成25年管理業務主任者試験 「問38」平成24年マンション管理士試験 「問25」平成23年マンション管理士試験 「問25」平成23年管理業務主任者試験 「問25」 など多い。
 例年の出題傾向と異なりすこしばかり捻った出題です。
 まず、設問の「区分所有者の定数について、規約でその過半数まで減ずることができるもの」に対しては、区分所有法第17条の規定があります。
 「(共用部分の変更)
 第十七条  
共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
   2  前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。」
 です。
 1項はおかしな括弧書きがあるのでかなり分かりにくいのですが、共用部分の”その形状又は効用の著しい変更を伴う変更(重大変更)”は、原則: 区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によるのですが、ここで但し書き「
この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる」があるので、規約があれば、議決権の方は四分の三以上必要ですが、区分所有者の数の方だけは、四分の三以上から過半数まで、減らすことができます。
 この趣旨は、マンションという共同生活を営む場において、共用部分の変更なら、財産管理に影響を及ぼすため一人で多数の専有部分を有する者の存在を法律の草案者が考慮したものです。

 そこで、設問の「区分所有者の共有に属する敷地又は共用部分以外の附属施設の変更」となると、区分所有法第21条
 「(共用部分に関する規定の準用)
第二十一条  
建物の敷地又は共用部分以外の附属施設(これらに関する権利を含む。)が区分所有者の共有に属する場合には、第十七条から第十九条までの規定は、その敷地又は附属施設に準用する。 」 
とあり、
 第17条の規定が準用されていますから、区分所有者の定数について、規約でその過半数まで減ずることができ、正しい。
 共用部分以外の附属施設とは、附属の建物でも、規約で共用部分とされていない建物とその附属施設です。

 なお、区分所有者の数を規約で減らせることができるのは、この区分所有法第17条の重大変更だけです。
 他の「区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する(特別多数決議とよびます)」と規定されている条文では、規約による区分所有者の定数を減じることは認めていませんから注意してください。


 


2 規約の設定、変更又は廃止についての集会の決議
 
X 区分所有者の定数について、規約でその過半数まで減ずることはできない。 平成25年マンション試験 「問6」、 同「問10」平成25年管理業務主任者試験 「問35」、 同「問38」平成24年マンション管理士試験 「問3」、 同「問4」、 同「問10」 など多い。
 規約の設定、変更又は廃止についての集会の決議は区分所有法第31条に規定されています。
 「(規約の設定、変更及び廃止)
 第三十一条  
規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
   2  前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。」
 です。
 1項によれば、 「規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする」とあるだけで、規約で別段の定めを認めていませんから、区分所有者の定数について、規約でその過半数まで減ずることはできません。



3 管理組合法人となる旨の集会の決議

X 区分所有者の定数について、規約でその過半数まで減ずることはできない。 平成21年マンション管理士試験 「問7」、 平成21年管理業務主任者試験 「問1」、 同「問33」平成19年管理業務主任者試験 [問36」 など。
 管理組合法人となる旨の集会の決議は、区分所有法第47条
 「(成立等)
 第四十七条  
第三条に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによつて法人となる。
   2  前項の規定による法人は、管理組合法人と称する。
   3  この法律に規定するもののほか、管理組合法人の登記に関して必要な事項は、政令で定める。
   4  管理組合法人に関して登記すべき事項は、登記した後でなければ、第三者に対抗することができない。
   5  管理組合法人の成立前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人につき効力を生ずる。
   6  管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
   7  管理組合法人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
   8  管理組合法人は、規約又は集会の決議により、その事務(第六項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
   9  管理組合法人は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合においては、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。
   10  一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 (平成十八年法律第四十八号)第四条 及び第七十八条 の規定は管理組合法人に、破産法 (平成十六年法律第七十五号)第十六条第二項 の規定は存立中の管理組合法人に準用する。
   11  第四節及び第三十三条第一項ただし書(第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。)の規定は、管理組合法人には、適用しない。
   12  管理組合法人について、第三十三条第一項本文(第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定を適用する場合には第三十三条第一項本文中「管理者が」とあるのは「理事が管理組合法人の事務所において」と、第三十四条第一項から第三項まで及び第五項、第三十五条第三項、第四十一条並びに第四十三条の規定を適用する場合にはこれらの規定中「管理者」とあるのは「理事」とする。
   13  管理組合法人は、法人税法 (昭和四十年法律第三十四号)その他法人税に関する法令の規定の適用については、同法第二条第六号 に規定する公益法人等とみなす。この場合において、同法第三十七条 の規定を適用する場合には同条第四項 中「公益法人等(」とあるのは「公益法人等(管理組合法人並びに」と、同法第六十六条 の規定を適用する場合には同条第一項 及び第二項 中「普通法人」とあるのは「普通法人(管理組合法人を含む。)」と、同条第三項 中「公益法人等(」とあるのは「公益法人等(管理組合法人及び」とする。
   14  管理組合法人は、消費税法 (昭和六十三年法律第百八号)その他消費税に関する法令の規定の適用については、同法 別表第三に掲げる法人とみなす。」 
とあり、
 1項によれば、区分所有者の団体(区分所有法第3条)は、 区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法人となりますが、この規定以外の規約による別段の定めを認めていませんから、区分所有者の定数について、規約でその過半数まで減ずることはできません。



4 訴えをもって、共同利益背反行為をした区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求する旨の集会の決議

X 区分所有者の定数について、規約でその過半数まで減ずることはできない。 平成24年マンション管理士試験 「問9」、 平成23年マンション管理士試験 「問32」 。
 設問の、訴えをもって、共同利益背反行為をした区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求する旨の集会の決議となると、区分所有法第59条
 
「(区分所有権の競売の請求)
 第五十九条  第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。
   
2  第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する
   3  第一項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。
   4  前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。」
 とあり、
 集会の決議については、2項があり、前条(第58条)の2項が準用されています。
 区分所有法第58条は、
 「(使用禁止の請求)
 第五十八条  前条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、前条第一項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる。
   
2  前項の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。
   3  第一項の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。
   4  前条第三項の規定は、第一項の訴えの提起に準用する。 」です。
 区分所有法第58条2項は「前項の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。」
 とだけあり、
 この規定以外の規約による別段の定めを認めていませんから、区分所有者の定数について、規約でその過半数まで減ずることはできません。



答え:1 選択肢1はちょっとひっかかるかも。

《タグ》特別多数決議、 区分所有者の数   区分所有法

問6

[問 6] 集会に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 区分所有者は、規約の定めによらない限り、書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法によって議決権を行使することはできない。

X 誤っている。 規約以外、集会の決議でもできる。 平成23年マンション管理士試験 「問5」平成21年管理業務主任者試験 「問5」平成20年管理業務主任者試験 「問35」 など。
 議決権の行使は、区分所有法第39条
 「(議事)
 第三十九条  集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。
   2  議決権は、書面で、又は代理人によつて行使することができる。
   
3  区分所有者は、規約又は集会の決議により、前項の規定による書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)によつて議決権を行使することができる。」
 とあり、
 3項によれば、「規約”又は集会の決議”」で、電磁的方法で議決権を行使することができますから、規約の定めによらない限りは、誤りです。



2 専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならないが、共有者がそのための協議をしないとき、又は協議が調わないときであっても、管理者が指定することはできない。

○ 正しい。 管理者の権限を越えている。 平成25年マンション管理士試験 「問7」、 平成24年管理業務主任者試験 「問29」、 平成22年マンション管理士試験 「問8」平成21年マンション管理士試験 「問5」 など。
 区分所有法では、専有部分が数人の共有になっていると、議決権行使者は一人にしなさいという規定があります。それは、区分所有法第40条
 
「(議決権行使者の指定)
 第四十条  
専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない。 」
 です。
 設問の前半「専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない」は、正しい。
 そこで、共有者が議決権行使者を決めない(決まらない)場合ですが、この場合に、管理者の職務権限として与えられている共用部分の保存(区分所有法第26条参照)を中心とした内容に、議決権行使者を指定することまでは含まれていないと判断されますから、選択肢2は全体として、正しい。

 なお、議決権行使者が共有者の協議で調わないときは、専有部分の持分の過半数を有する人が議決権行使者と解され、また、共有者の持分が等しい場合や、議決権を行使すべき者一人を決めない場合には、共有者は、議決権を行使できないとも解されます。

  

3 集会においては、招集の通知によりあらかじめ通知した事項についてのみ決議をすることができ、規約で別段の取扱いをすることはできない。

X 誤っている。 特別多数決議事項でなければ、規約で別段の定めができる。 平成24年マンション管理士試験 「問25」、 平成24年管理業務主任者試験 「問32」平成23年マンション管理士試験 「問4」 など。
 集会は、全員出席が望ましいのですが、不参加の区分所有者もいます。そこで、集会で決議できる規定として区分所有法第37条
 「(決議事項の制限)
 第三十七条  
集会においては、第三十五条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる
   
2  前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない
   3  前二項の規定は、前条の規定による集会には適用しない。」
 です。
 1項により、原則: あらかじめ通知した事項についてのみ決議をしますが、2項では、「この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項(特別多数決議事項といいます)でなければ、規約で別段の定めを認めていますから、誤りです。



4 管理者は、集会において、毎年1回一定の時期に、その事務に関する報告をする必要があるとともに、個々の区分所有者の請求がある場合にも、これに応じることができない正当な理由がない限り、報告をする必要がある。

X 誤っている。 管理者の事務報告は、集会においてすれば、足りる。 平成25年管理業務主任者試験 「問38」、 平成23年マンション管理士試験 「問5」平成23年管理業務主任者試験 「問30」平成21年マンション管理士試験 「問8」 など。
 管理者の事務報告は、区分所有法第43条
 
「(事務の報告)
 第四十三条  
管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。 」
 です。
 これにより、設問の前半「管理者は、集会において、毎年1回一定の時期に、その事務に関する報告をする必要がある」は、正しい。
 そこで、後半の「個々の区分所有者の請求がある場合にも、これに応じることができない正当な理由がない限り、報告をする必要がある」ですが、判例で「事務報告は、集会において行えば足りるのであって、個々の区分所有者の要求に直接的かつその都度、応じる義務はない(東京地裁;平成4年5月22日 判決)」とされていますから、選択肢4は、後半が、誤りです。
  
  



答え:2 

《タグ》集会  区分所有法 + 民法

問7

〔問 7〕 甲マンションには、4つの専有部分があり、101号室と102号室はAが、201号室はBが、202号室はCがそれぞれ所有している。甲の敷地は、A及びBが 敷地利用権(AとBの共有)を有しているが、Cは敷地利用権を有していない。この場合に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、正しいものはどれか。ただし、甲については、不動産登記法の定めるところにより分離して処分することができない専有部分及び敷地利用権であることが登記され、また、規約に専有部分と敷地利用権とを分離して処分することができない旨が定められているものとする。

1 A及びBが、Cに対し、区分所有権を時価で売り渡すべきことを請求したときは、その意思表示によって、一方的に時価による売買契約成立の効果が生じる。

○ 正しい。 その意思表示によって、一方的に時価による売買契約成立の効果が生じる形成権である。 平成18年管理業務主任者試験 「問38」 。
 「問2」 でも説明しましたように、日本の民法では土地の権利と建物の権利は別々であるため、建物を正当に所有するには、その建物の下にある土地の権利を正当に持っていることが必要です。
 そこで、区分所有法では、建物所有に必要な土地に対する権利を「敷地利用権」と定義し、民法で定める、一般の土地に対する権利とは別の概念を創設定義しています。
 また不動産取引との関係から、マンションでは戸建てと異なった不動産の登記方法をとることにしました。
 それが、設問にある「専有部分と敷地利用権とを分離して処分することができない」という建物(専有部分)の権利と土地の権利(敷地利用権)を一体化して、専有部分の処分(譲渡、抵当権の設定、遺贈など)に伴い土地の権利も共に動くようにしました。


  

 
これを前提にして、出題があります。そして、設問を図にすると以下のようになります。

 

 
どうして、Cが敷地利用権がないという事態になったのかはおいといて、Cはマンションの建物の専有部分の権利は持っていますが、土地の権利(敷地利用権)は持っていないということです。
 すると、区分所有法第10条に、
 「(区分所有権売渡請求権)
 第十条  
敷地利用権を有しない区分所有者があるときは、その専有部分の収去を請求する権利を有する者は、その区分所有者に対し、区分所有権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。 とあり、
 民法の原則により、土地の権利を持っているAとBは、建物は持っていても土地の権利(敷地利用権)を有しないCに対して、土地を不法占拠しているので、その区分所有権(建物の専有部分を所有する権利)を時価で売り渡せと請求できます。
 そこで、この「区分所有権売渡請求権」の性質の解釈ですが、通常の売買契約と異なり申込みと相手の承諾という当事者間の意思の合致は必要ではなく、土地権利者からの一方的な「売り渡せ」という意思表示により売買が成立します。相手がその申し出を拒んでも、「売り渡せ」という申し出は成立します。このような権利を民法では「
形成権」とよびます。
 そこで、A及びBが、Cに対し、区分所有権を時価で売り渡すべきことを請求したときは、その意思表示によって、一方的に時価による売買契約成立の効果が生じますから、正しい。
 
 なお、区分所有法における形成権としては、第61条7項の「大規模滅失での買取請求権」、第63条4項での「建替での売渡請求権」もあります。



2 Aの所有する101号室に係る敷地利用権と102号室に係る敷地利用権の割合は、その割合が規約に定められているときはその割合によるが、規約に定められていないときは等しい割合による。

X 誤っている。 敷地利用権の割合は規約がないときは、専有部分の床面積の割合による。 平成24年マンション管理士試験 「問10」、 平成22年マンション管理士試験 「問5」、 平成20年マンション管理士試験 「問3」 など多い。
 敷地利用権の割合は、区分所有法第22条
 
「(分離処分の禁止)
 第二十二条  敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
   
2  前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第十四条第一項から第三項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。
   3  前二項の規定は、建物の専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合に準用する。」 
とあり、
 2項で引用されている第14条とは、

 「(共用部分の持分の割合)
 第十四条  
各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による
   2  前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。
   3  前二項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。
   4  前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。」 
です。
 区分所有法第22条2項及び同第14条1項によれば、敷地利用権の割合が規約に定められているときはその割合によりますが、規約に定められていないときは、第14条により、共用部分の持分と同じように、専有部分の床面積の割合によりますから、誤りです。


 
なお、参考:共有 民法第250条
 「(共有持分の割合の推定)
 第二百五十条  各共有者の持分は、相等しいものと推定する。 」
 
 この規定との混同を狙った出題です。



3 Aが、101号室と分離して、101号室に係る敷地利用権について第三者Dのために抵当権を設定した場合に、Dがその抵当権設定時にそれらの分離処分が禁止されていることを知らないときは、Aは、その無効をDに主張することができない。

X 誤っている。 登記後であれば、善意の相手方にも無効を主張できる。 平成20年マンション管理士試験 「問3」
 
選択肢1で説明しましたように、区分所有法では、土地の権利である敷地利用権と、建物の専有部分とは分離して処分(譲渡、抵当権の設定、遺贈など)ができないとしましたが、この規定は区分所有法だけの新しい規定です。
 そこで、区分所有法の制定について知らない人を保護する規定が区分所有法第23条です。
 「(分離処分の無効の主張の制限)
 第二十三条  前条第一項本文(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定に違反する専有部分又は敷地利用権の処分については、その無効を善意の相手方に主張することができない。
ただし、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)の定めるところにより分離して処分することができない専有部分及び敷地利用権であることを登記した後に、その処分がされたときは、この限りでない。」 とあります。
 この区分所有法第23条によれば、相手方Dが抵当権設定時にそれらの分離処分が禁止されていることを知らない(善意といいます)ので、Aは無効だと言えないようですが、設問では、既に「不動産登記法の定めるところにより分離して処分することができない専有部分及び敷地利用権であることが登記され、また、規約に専有部分と敷地利用権とを分離して処分することができない旨が定められているものとする。」との条件ですから、第23条の但し書きにより、登記をした後での処分となり、例え相手方が分離処分が禁止されていることを知らなくても、Aはその無効を主張できますから、誤りです。
 これは、多くの不動産の取引において、取引に際しては登記簿を見るのが普通であると考えた規定です。



4 Bが死亡して相続人がないときは、Bの敷地利用権は、敷地の他の共有者であるAに帰属する。


X 誤っている。 民法の共有と異なり、死亡して相続人がないときは、国のものとなる。 平成20年マンション管理士試験 「問3」 、平成19年マンション管理士試験 「問6」
 設問の場合、建物の専有部分はBの個人所有ですが、土地の権利である敷地利用権は、AとBとの共有です。
 すると、Bが死亡して相続人が(特別縁故者も)いないとなると、建物である専有部分の帰属は、民法第959条
 「(残余財産の国庫への帰属)
 第九百五十九条  
前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。」 とあり、
 専有部分は国庫のものとなります。
 一方、AとBとの共有である敷地利用権は、共有のため民法第255条
 「 (持分の放棄及び共有者の死亡)
 第二百五十五条  
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。」 の適用となり、
 Bが死亡して相続人がいないと、 その持分は他の共有者であるAのものになります。
 これだと、建物の専有部分は国のものですが、敷地利用権はAのものになってしまいます。


 

 
これでは、折角区分所有法で建物の権利と土地の権利を一体化した、分離処分の禁止の苦労がまた、元に戻ってしまいます。
 そこで、区分所有法では、相続関係としては、
区分所有法第24条
 「(民法第二百五十五条 の適用除外)
 第二十四条  
第二十二条第一項本文の場合には、民法第二百五十五条 (同法第二百六十四条 において準用する場合を含む。)の規定は、敷地利用権には適用しない。 」 としました。
 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合(区分所有法第22条本文)には、民法第255条の「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」の規定は適用しないとしたのです。
 その結果、敷地利用権は他の共有者に属さずに専有部分とともに、専有部分の所有者(特別縁故者または国庫)に帰属し、建物の権利と土地の権利はまた同一人に帰属して、分離処分の禁止が適用されますから、誤りです。



答え:1。 区分所有法第10条からの出題とは、珍しい。 かなり詳細に解説しましたが、問題としては、易しい方でした。
      形成権については、「問12」 も参考に。
      {ある受験者の感想…民法の理解不足で、選択肢2を選んでしまった。}

《タグ》分離処分、 形成権  区分所有法 + 民法

問8

〔問 8〕 区分所有法第6条第1項の共同利益背反行為をした区分所有者又は区分所有者以外の専有部分の占有者に対して、次のア〜エの請求をする場合、集会の決議に基づき、訴えをもってしなければならないものは、同法の規定によれば、いくつあるか。

ア 当該区分所有者の専有部分の相当の期間の使用の禁止の請求

○ 集会の決議に基づき、訴えが必要。 平成19年管理業務主任者試験 「問29」、 平成15年マンション管理士試験 「問9」
 区分所有法第6条第1項の共同利益背反行為をしている区分所有者に対してその専有部分の相当の期間の使用の禁止の請求をするには、区分所有法第58条
 「(使用禁止の請求)
 第五十八条  前条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、前条第一項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、
集会の決議に基づき、訴えをもつて相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる
   2  前項の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。
   3  第一項の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。
   4  前条第三項の規定は、第一項の訴えの提起に準用する。 」
 とあります。
 1項によれば、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求するには、集会の決議に基づき、訴えをもってします。



イ 当該占有者の共同利益背反行為の結果の除去の請求

X 裁判にしなくてもいい。 平成25年マンション管理士試験 「問3」、 平成24年マンション管理士試験 「問26」、 同「問28」、平成20年マンション管理士試験 「問17」など。
 マンションでは区分所有者は当然に共同利益背反行為をしてはいけませんが、占有者(賃借人など)も共同利益背反行為をしてはいけません。もし占有者が共同利益背反行為をして結果の除去の請求を求められると、区分所有法第57条 
 「(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
 第五十七条  区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため
必要な措置を執ることを請求することができる
   2  前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
   3  管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
   
4  前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。 とあり、
 4項により、1項の区分所有者と同じく、 区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求されます。
 この、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置は、訴訟にしなくてもできます。
 なお、訴訟を提起するなら、集会の決議は必要です(2項)。



ウ 当該区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売の請求

○ 集会の決議に基づき、訴えが必要。 平成24年マンション管理士試験 「問9」、 平成23年マンション管理士試験 「問32」、 平成17年マンション監理士試験 「問4」 など。
 当該区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売の請求となると、区分所有法第59条
 「(区分所有権の競売の請求)
 第五十九条  第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、
集会の決議に基づき、訴えをもつて当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる
   2  第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。
   3  第一項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。
   4  前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。 」
 とあり、
 1項により、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求するには、集会の決議に基づき、訴えをもってします。



エ 当該占有者の占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しの請求

○ 集会の決議に基づき、訴えが必要。 平成24年マンション管理士試験 「問26」、 平成21年マンション管理士試験 「問10」 など。
 占有者の占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しの請求となると、区分所有法第60条
 「(占有者に対する引渡し請求)
 第六十条  第五十七条第四項に規定する場合において、第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、区分所有者の全員又は管理組合法人は、
集会の決議に基づき、訴えをもつて当該行為に係る占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求することができる。
   2  第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、第五十八条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。
   3  第一項の規定による判決に基づき専有部分の引渡しを受けた者は、遅滞なく、その専有部分を占有する権原を有する者にこれを引き渡さなければならない。 」
 とあり、
 1項によれば、占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求するには、集会の決議に基づき、訴えをもってします。



 1 一つ
 2 二つ
 3 三つ
 4 四つ


答え:3 集会の決議に基づき、訴えをもってするのは、ア、ウ、エ の3つ。  問題文をサラット読むと正解から外れます。

《タグ》義務違反者に対する措置  区分所有法

問9

〔問 9〕 上層階を住居部分、下層階を店舗部分とする複合用途型マンションの店舗一部共用部分に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 店舗一部共用部分である外装がマンション全体の美観に影響を及ぼすような場合におけるその全体の美観に影響を及ぼす外装の変更は、区分所有者全員の集会の決議を得なければならない。

○ 正しい。一部共用部分であっても、全体に影響する。 平成24年管理業務主任者試験 「問38」、 平成23年マンション管理士試験 「問1」
 まず、一部共用部分とは、区分所有法第3条
 「(区分所有者の団体)
 第三条  区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。
一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。 」 とあり、
 一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分ということです。この文章で明らかに分かりますか?
 具体的には、設問のように1棟が店舗部と住居部で構成される複合用途型マンションなら、店舗部には店の従業員専用入り口やお客を対象にした出入口があり、住居部に対しては住居部専用の出入口や居住階専用のエレベーターがある場合を考えてください。
 この状況で店舗用の共用部分である従業員専用出入り口や店内にある廊下などの部分は、店舗部だけの「一部共用部分」となりますし、また、住居部専用の出入口や住居部だけが使用する廊下、居住階専用のエレベーターなどがあればその共用部分は、住居部だけの「一部共用部分」となります。

  
 

 そして、一部共用部分の管理は、区分所有法第16条
 「(一部共用部分の管理)
 第十六条  
一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するもの又は第三十一条第二項の規約に定めがあるものは区分所有者全員で、その他のものはこれを共用すべき区分所有者のみで行う。 です。
 この規定は、一部共用部分であっても、
  @区分所有者全員の利害に関係するもの
  A規約で区分所有全員で管理するとしたもの
 は、区分所有者全員の管理にするとしています。
 
 そして、出題の”店舗一部共用部分である外装がマンション全体の美観に影響を及ぼすような場合におけるその全体の美観に影響を及ぼす外装の変更”となると、一部共用部分であっても、 @区分所有者全員の利害に関係するものとなり、区分所有法第18条
 「(共用部分の管理)
 第十八条  
共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
   2  前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
   3  前条第二項の規定は、第一項本文の場合に準用する。
   4  共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。 」
 とあり、
  規約に別段の定めがない限り、1項により、集会の決議が必要ですから、正しい。


  


2 店舗一部共用部分である店舗部分の1階出入り口の管理について、区分所有者全員の規約で定められている場合、その改修は、店舗一部共用部分の区分所有者の集会で決議することができない。 

○ 正しい。 店舗一部共用部分であっても、区分所有者全員の規約で定められている場合には、全体の管理に入る。
 選択肢1で説明しましたように、店舗一部共用部分であっても、区分所有者全員の規約で定められている場合には、区分所有者全員の管理に入るため、店舗一部共用部分の区分所有者の集会で決議することができません。区分所有者全員の集会の決議が必要ですから、正しい。


3 店舗一部共用部分であるエスカレーターについて、区分所有者全員の規約に定めがない場合、その取替えが区分所有者全員の利害に関係しないときは、店舗一部共用部分の区分所有者の集会の決議で取替えを行うことができる。

○ 正しい。 全体の規約もなく、全体の利害に関係なければ、一部共用部分の区分所有者で決めて良い。
 選択肢1で説明しましたように、店舗一部共用部分で、区分所有者全員の規約に定めがなく、さらにその取替えが区分所有者全員の利害に関係しないときは、完全に一部共用部分の共有者だけの管理となりますから、店舗一部共用部分の区分所有者の集会の決議で取替えを行うことができますので、正しい。


4 店舗一部共用部分である客用便所の管理について、区分所有者全員の規約で定めをしようとする場合、住居一部共用部分の区分所有者の4分の1を超える者が反対したときは、することができない。

X 誤っている。 ”住居”一部共用部分の4分の1ではなく、”店舗”一部共用部分の4分の1の反対。 
 規約の設定は、区分所有法第31条
 「(規約の設定、変更及び廃止)
 第三十一条  規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
   2  前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、
当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。」 とあり、
 2項で引用されています、前条は、区分所有法第30条
 「(規約事項)
 第三十条  建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
   
2  一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。
   3  前二項に規定する規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払つた対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。
   4  第一項及び第二項の場合には、区分所有者以外の者の権利を害することができない。
   5  規約は、書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により、これを作成しなければならない。 」
 です。

 まず、第30条2項は分かりにくい言い方ですが、一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものであっても、区分所有者全員の規約によって管理を定めることができるということです。
 しかし、一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものを、区分所有者全員の多数決で、全体の規約に取り組むことは、かなり乱暴な行為です。そこで、少数意見を尊重する立場から、区分所有法では、第31条2項に、「当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない」としています。
 設問の店舗一部共用部分である客用便所は明らかに、店舗部の一部共用部分ですから、規約を設定するなら、区分所有法第31条1項に該当する反対の対象になる区分所有者は、”住居”一部共用部分の区分所有者でなく、”店舗部”の一部共用部分の区分所有者ですので、誤りです。



答え:4  選択肢4 は、少しばかり引っ掛け的ですが、それほど難しくはないでしょう。

《タグ》一部共用部分、 規約の改正  区分所有法

問10

〔問 10〕 下図の団地において、A棟及びB棟並びに附属施設について、団地管理組合(区分所有法第65条の団地建物所有者の団体をいう。以下同じ。)で管理する場合の規約の設定に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、規約の設定は、一部の団地建物所有者の権利に特別の影響を及ぼさないものとする。


1 団地建物所有者全員が共有するごみ集積所については、団地管理組合の集会において団地建物所有者及び議決権の各4分の3以上の決議を得て規約を定めることができる。

○ 正しい。 団地建物所有者全員が共有していれば、団地管理組合の集会において決められる。 平成25年マンション管理士試験 「問9」平成25年管理業務主任者試験 「問31」、 平成24年マンション管理士試験 「問7」 平成23年マンション管理士試験 「問11」 、平成23年管理業務主任者試験 「問38」、 平成19年マンション管理士試験 「問12」 など。
 まず、区分所有法で規定される「団地」の関係は、区分所有法第65条
 「 (団地建物所有者の団体)
 第六十五条  一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)がそれらの建物の所有者(専有部分のある建物にあつては、区分所有者)の共有に属する場合には、それらの所有者(以下「団地建物所有者」という。)は、全員で、その団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。」 
です。
 団地と呼ばれるための要件は、
   @団地内に数棟の建物があり
   Aその団地内の土地又は附属施設を共有であれば可能です。
 そこで、マンションだけでなくても、数棟の戸建だけであっても、団地内で共有する附属施設があれば、団地管理組合を構成できるということに注意してください。


  
 
 この第65条の条件を満たせば、団地において、単棟の規定が適用できます。
 それが、区分所有法第66条です。
 「 (建物の区分所有に関する規定の準用)
 第六十六条  第七条、第八条、第十七条から第十九条まで、第二十五条、第二十六条、第二十八条、第二十九条、
第三十条第一項及び第三項から第五項まで、第三十一条第一項並びに第三十三条から第五十六条の七までの規定は、前条の場合について準用する。この場合において、これらの規定(第五十五条第一項第一号を除く。)中「区分所有者」とあるのは「第六十五条に規定する団地建物所有者」と、「管理組合法人」とあるのは「団地管理組合法人」と、第七条第一項中「共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設」とあるのは「第六十五条に規定する場合における当該土地若しくは附属施設(以下「土地等」という。)」と、「区分所有権」とあるのは「土地等に関する権利、建物又は区分所有権」と、第十七条、第十八条第一項及び第四項並びに第十九条中「共用部分」とあり、第二十六条第一項中「共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設」とあり、並びに第二十九条第一項中「建物並びにその敷地及び附属施設」とあるのは「土地等並びに第六十八条の規定による規約により管理すべきものと定められた同条第一項第一号に掲げる土地及び附属施設並びに同項第二号に掲げる建物の共用部分」と、第十七条第二項、第三十五条第二項及び第三項、第四十条並びに第四十四条第一項中「専有部分」とあるのは「建物又は専有部分」と、第二十九条第一項、第三十八条、第五十三条第一項及び第五十六条中「第十四条に定める」とあるのは「土地等(これらに関する権利を含む。)の持分の」と、第三十条第一項及び第四十六条第二項中「建物又はその敷地若しくは附属施設」とあるのは「土地等又は第六十八条第一項各号に掲げる物」と、第三十条第三項中「専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)」とあるのは「建物若しくは専有部分若しくは土地等(土地等に関する権利を含む。)又は第六十八条の規定による規約により管理すべきものと定められた同条第一項第一号に掲げる土地若しくは附属施設(これらに関する権利を含む。)若しくは同項第二号に掲げる建物の共用部分」と、第三十三条第三項、第三十五条第四項及び第四十四条第二項中「建物内」とあるのは「団地内」と、第三十五条第五項中「第六十一条第五項、第六十二条第一項、第六十八条第一項又は第六十九条第七項」とあるのは「第六十九条第一項又は第七十条第一項」と、第四十六条第二項中「占有者」とあるのは「建物又は専有部分を占有する者で第六十五条に規定する団地建物所有者でないもの」と、第四十七条第一項中「第三条」とあるのは「第六十五条」と、第五十五条第一項第一号中「建物(一部共用部分を共用すべき区分所有者で構成する管理組合法人にあつては、その共用部分)」とあるのは「土地等(これらに関する権利を含む。)」と、同項第二号中「建物に専有部分が」とあるのは「土地等(これらに関する権利を含む。)が第六十五条に規定する団地建物所有者の共有で」と読み替えるものとする。」
 
 この第66条は、一目みただけでも、引用されている条文の多さと読み替えがあって、読みにくくて大変ですが、出題者からは、狙われやすい条文ですから、受験生は必ず理解しておいてください。
 基本的には、団地の管理も、1棟の区分所有関係に従いますが、団地全体に影響しないものや1棟ごとに処理すべきもの(義務違反者に対する措置(第57条〜第60条)、復旧(第61条) (大規模・小規模滅失に関係なく)などは、準用されていないのです。

 そこで、設問に戻りますが、団地内にある附属施設である「ごみ集積所」は、A棟、B棟そして戸建て住宅とすべての団地建物所有者全員が共有していますから、区分所有法での団地の規定が適用でき、規約の設定は、同第66条によって、第31条1項の規約の設定・変更・廃止の規定が準用され、以下のように読み替えられます。
 「(規約の設定、変更及び廃止)
 第三十一条  
規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者(読み替え→第六十五条に規定する団地建物所有者)及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者(読み替え→第六十五条に規定する団地建物所有者)の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。 」
 となります。
 一部の団地建物所有者の権利に特別の影響を及ぼさないものと仮定していますから、規約の設定は、団地管理組合の集会において団地建物所有者及び議決権の各4分の3以上の決議を得て定めることができ、正しい。


 


2 A棟及びB棟については、団地管理組合の集会における規約の設定の決議のほか、これに加えて、それぞれの棟の集会において区分所有者及び議決権の各4分の3以上の決議を得て規約を定めることができる。

○ 正しい。 原則として、団地管理組合の管理に入るのは、共有となっている、土地と附属施設。
 選択肢1で説明しましたように、区分所有法第65条の団地関係で団地建物の所有者(団地管理組合)が管理するのは、共有となっている、土地と附属施設です。団地内にあっても、区分所有建物とその1棟の区分所有者だけが共有している土地や附属施設は原則として、各棟の区分所有者の団体(棟の管理組合)が管理しますから、A棟及びB棟については、団地管理組合の集会における規約の設定の決議のほか、これに加えて、それぞれの棟の集会において区分所有者及び議決権の各4分の3以上の決議を得て規約を定めることができ、正しい。
 全体の管理に入れるなら、下の選択肢3の手続き(区分所有法第68条)が必要です。



3 A棟及びB棟の区分所有者が共有する駐車場については、団地管理組合の集会における規約の設定の決議のほか、これに加えて、当該駐車場の共有者及びその持分の過半数の同意を得て規約を定めることができる。

X 誤っている。規約の設定は、過半数では足りない。 四分の三以上を有するものの同意が必要。 
 選択肢1及び2で説明しましたように、A棟及びB棟の区分所有者が共有する駐車場は、原則として、A棟及びB棟だけの区分所有者による管理となりますが、A棟及びB棟の多くの区分所有者が、団地全体の管理に入れてもいいと考えると、区分所有法第68条の規定があります。
 「 (規約の設定の特例)
 第六十八条  次の物につき第六十六条において準用する
第三十条第一項の規約を定めるには、第一号に掲げる土地又は附属施設にあつては当該土地の全部又は附属施設の全部につきそれぞれ共有者の四分の三以上でその持分の四分の三以上を有するものの同意、第二号に掲げる建物にあつてはその全部につきそれぞれ第三十四条の規定による集会における区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による決議があることを要する。
     一  
一団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)が当該団地内の一部の建物の所有者(専有部分のある建物にあつては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地又は附属施設(専有部分のある建物以外の建物の所有者のみの共有に属するものを除く。)
     二  当該団地内の専有部分のある建物
   2  第三十一条第二項の規定は、前項第二号に掲げる建物の一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものについての同項の集会の決議に準用する。」

 第68条で引用されています第30条1項は、第66条の読み替えをいれると次のようになります。
 「(規約事項)
 第三十条  建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者(読み替え→第65条に規定する団地建物所有者)相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。」


 この第68条も実に分かりにくい規定ですが、 A棟及びB棟の区分所有者が共有する駐車場は、第68条1項1号に該当しますから、団地全体の規約に定めるには、団地管理組合の集会における規約の設定の決議だけでは足りず、当該駐車場の共有者及びその持分の4分の3以上の同意を得ることが、必要で、過半数の同意は、誤りです。



4 戸建て住宅所有者のみが共有する駐車場については、団地管理組合で規約を定めることができない。

○ 正しい。 戸建ての所有者だけが共有している、土地や附属施設は、団地全体の管理に入らない。
 それでは、戸建て住宅所有者のみが共有する駐車場も団地全体の管理に入れられるかということですが、選択肢3で引用しました、区分所有法第68条1項1号
 「 (規約の設定の特例)
 第六十八条  次の物につき第六十六条において準用する第三十条第一項の規約を定めるには、第一号に掲げる土地又は附属施設にあつては当該土地の全部又は附属施設の全部につきそれぞれ共有者の四分の三以上でその持分の四分の三以上を有するものの同意、第二号に掲げる建物にあつてはその全部につきそれぞれ第三十四条の規定による集会における区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による決議があることを要する。
     一  一団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)が当該団地内の一部の建物の所有者(専有部分のある建物にあつては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地又は附属施設(
専有部分のある建物以外の建物の所有者のみの共有に属するものを除く。)」 とあり、
 カッコ書き、「専有部分のある建物以外の建物の所有者のみの共有に属するものを除く」とあります。
 ”専有部分のある建物”はいわゆるマンション(区分所有建物)で、”これ以外の建物”は、戸建てをさします。そこで、戸建て所有者のみの共有にある土地や附属施設は、1号から除かれていますので、正しい。



答え:3。  少しばかり、迷う出題か。選択肢3は、他の選択肢との消去法で選べる? 
    なお、同意とかは、「マンション管理士 香川事務所」が提供しています「超解説 区分所有法」 の解説も参考にしてください。
    {ある受験者の感想…選択肢4も怪しかったが、3にした。}

《タグ》団地 附属施設 全体規約 、区分所有法 

問11

〔問 11〕 大規模な火災、震災その他の災害で政令で定めるものにより、その全部が滅失したマンションの敷地の売却、その一部が滅失(区分所有法第61条第1項本文に規定する場合(小規模滅失)を除く。)したマンションの建物及びその敷地の売却並びに当該マンションの建物の取壊し等の決議に関する次の記述のうち、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 マンションの建物の全部が滅失した場合における「敷地売却決議」は、敷地共有者等集会において、敷地共有者等の議決権の5分の4以上の多数でしなければならない。

○ 正しい。建物が全部滅失すると、残るのは敷地の共有関係。 平成23年マンション管理士試験 「問10」
 まず、区分所有法では、建物が一部滅失した場合には、復旧(第61条)や建替え(第62条以下)の規定がありますが、地震や大津波により建物が全部滅失した場合には、建物がなくなったので区分所有法の適用から外れます。
 今まであった建物の敷地だけが元の区分所有者の共有として残り、この土地に建物を再建するには、民法の適用となり、民法第251条で定める共有関係の「共有物の変更には全員の同意を得る」ことになりますが、全員の同意を得ることは、ほとんど不可能で、再建は進みませんでした。
 そこで、平成7年(1995年)1月17日に発生した震度7の「阪神・淡路大震災」を契機として、敷地共有者の4/5以上の多数決で建物が再建できる、「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(被災マンション法)」が平成7年3月24日に急遽施行されました。
 しかし、この法律の適用には、「政令で定める災害」という面倒な前提があるため、平成23年(2011年)3月11日に発生した東日本大震災では適用がありませんでした。
 そこで、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法は、今後想定される大規模な災害で、区分所有建物の取壊しなどを容易にする目的で大幅に改正され、新しく大規模滅失では、建物の取壊しが、区分所有者及び議決権の4/5以上の承認でできたり、敷地の売却ができるなど、平成25年(2013年)6月26日に施行されて、本平成26年は、出題されると、私の「超解説 区分所有法」でも指摘した法律です。



 そこで、設問のマンションの建物の全部が滅失した場合の「敷地売却決議」は、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法第5条
 「(敷地売却決議等)
 第五条  
敷地共有者等集会においては、敷地共有者等の議決権の五分の四以上の多数で、敷地共有持分等に係る土地(これに関する権利を含む。)を売却する旨の決議(以下「敷地売却決議」という。)をすることができる。
   2  敷地売却決議においては、次の事項を定めなければならない。
     一  売却の相手方となるべき者の氏名又は名称
     二  売却による代金の見込額
   3  敷地売却決議については、前条第四項から第八項まで並びに区分所有法第六十三条第一項 から第三項 まで、第四項前段、第六項及び第七項並びに第六十四条の規定を準用する。この場合において、前条第四項中「第一項に規定する」とあるのは「次条第一項に規定する」と、同条第五項中「再建」とあるのは「売却」と、区分所有法第六十三条第一項 中「区分所有者」とあるのは「敷地共有者等(被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(以下「特別措置法」という。)第二条に規定する敷地共有者等をいう。以下同じ。)」と、同項 並びに同条第三項及び第四項前段並びに区分所有法第六十四条 中「建替えに」とあるのは「売却に」と、区分所有法第六十三条第二項 、第三項及び第四項前段並びに第六十四条中「区分所有者」とあるのは「敷地共有者等」と、区分所有法第六十三条第四項 前段中「区分所有権及び敷地利用権を買い受ける」とあるのは「敷地共有持分等(特別措置法第二条に規定する敷地共有持分等をいう。以下同じ。)を買い受ける」と、「区分所有権及び敷地利用権を時価」とあるのは「敷地共有持分等を時価」と、同条第六項中「建物の取壊しの工事に着手しない」とあるのは「特別措置法第五条第一項に規定する敷地売却決議に基づく売買契約による敷地共有持分等に係る土地(これに関する権利を含む。)についての権利の移転(以下単に「権利の移転」という。)がない」と、同項及び区分所有法第六十四条 中「区分所有権又は敷地利用権」とあるのは「敷地共有持分等」と、区分所有法第六十三条第六項 ただし書中「建物の取壊しの工事に着手しなかつた」とあるのは「権利の移転がなかつた」と、同条第七項 中「建物の取壊しの工事の着手」とあるのは「権利の移転」と、「その着手をしないとき」とあるのは「権利の移転がないとき」と、区分所有法第六十四条 中「建替えを行う」とあるのは「売却を行う」と読み替えるものとする。」
  とあり、
 1項に該当し、「敷地売却決議」は、敷地共有者等集会において、敷地共有者等の議決権の5分の4以上の多数でしなければならないは、正しい。



2 マンションの建物の一部が滅失した場合における「建物敷地売却決議」は、区分所有者集会において、区分所有者、議決権及び敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上の多数でしなければならない。

○ 正しい。建物が一部滅失なら、区分所有者も敷地利用権も残っている。
 マンションの建物の一部が滅失した場合における「建物敷地売却決議」は、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法第9条
 「(建物敷地売却決議等)
 第九条  
第七条に規定する場合において、当該区分所有建物に係る敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利であるときは、区分所有者集会において、区分所有者、議決権及び当該敷地利用権の持分の価格の各五分の四以上の多数で、当該区分所有建物及びその敷地(これに関する権利を含む。)を売却する旨の決議(以下「建物敷地売却決議」という。)をすることができる
   2  建物敷地売却決議においては、次の事項を定めなければならない。
     一  売却の相手方となるべき者の氏名又は名称
     二  売却による代金の見込額
     三  売却によって各区分所有者が取得することができる金銭の額の算定方法に関する事項
   3  前項第三号の事項は、各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならない。
   4  第一項に規定する決議事項を会議の目的とする区分所有者集会を招集するときは、区分所有法第三十五条第一項 の通知は、同項 の規定にかかわらず、当該区分所有者集会の会日より少なくとも二月前に発しなければならない。
   5  前項に規定する場合において、区分所有法第三十五条第一項 の通知をするときは、前条第五項に規定する議案の要領のほか、次の事項をも通知しなければならない。
     一  売却を必要とする理由
     二  復旧又は建替えをしない理由
     三  復旧に要する費用の概算額
   6  第四項の区分所有者集会を招集した者は、当該区分所有者集会の会日より少なくとも一月前までに、当該招集の際に通知すべき事項について区分所有者に対し説明を行うための説明会を開催しなければならない。
   7  前項の説明会の招集の通知その他の説明会の開催については、区分所有法第三十五条第一項 本文及び第二項 並びに第三十六条 並びに前条第二項から第四項までの規定を準用する。
   8  建物敷地売却決議をした区分所有者集会の議事録には、その決議についての各区分所有者の賛否をも記載し、又は記録しなければならない。
   9  建物敷地売却決議があった場合については、区分所有法第六十三条第一項 から第四項 まで、第六項及び第七項並びに第六十四条の規定を準用する。この場合において、区分所有法第六十三条第一項 、第三項及び第四項並びに第六十四条中「建替えに」とあるのは「売却に」と、区分所有法第六十三条第六項 中「建物の取壊しの工事に着手しない」とあるのは「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法第九条第一項に規定する建物敷地売却決議に基づく売買契約による区分所有建物及びその敷地(これに関する権利を含む。)についての権利の移転(以下単に「権利の移転」という。)がない」と、同項ただし書中「建物の取壊しの工事に着手しなかつた」とあるのは「権利の移転がなかつた」と、同条第七項中「建物の取壊しの工事の着手」とあるのは「権利の移転」と、「その着手をしないとき」とあるのは「権利の移転がないとき」と、区分所有法第六十四条 中「建替えを行う」とあるのは「売却を行う」と読み替えるものとする。」
 とあり、
 引用されています、第7条は、
 「(区分所有者集会の特例)
 第七条  第二条の政令で定める災害により
区分所有建物の一部が滅失した場合においては、区分所有者は、その政令の施行の日から起算して一年を経過する日までの間は、この法律及び区分所有法 の定めるところにより、区分所有法第三十四条 の規定による集会(以下「区分所有者集会」という。)を開くことができる。」 とあり、
 第9条1項及び第7条により、 マンションの建物の一部が滅失した場合における「建物敷地売却決議」は、区分所有者集会において、区分所有者、議決権及び敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上の多数でしなければならないは、正しい。



3 マンションの建物の一部が滅失した場合における「建物取壊し敷地売却決議」は、区分所有者集会において、区分所有者、議決権及び敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上の多数でしなければならない。

○ 正しい。建物の一部滅失でも、建物を取り壊し敷地を売却できる。
 マンションの建物の一部が滅失した場合における「建物取壊し敷地売却決議」は、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法第10条
 「(建物取壊し敷地売却決議等)
 第十条  
前条第一項に規定する場合においては、区分所有者集会において、区分所有者、議決権及び敷地利用権の持分の価格の各五分の四以上の多数で、当該区分所有建物を取り壊し、かつ、これに係る建物の敷地(これに関する権利を含む。次項において同じ。)を売却する旨の決議(次項及び第三項において「建物取壊し敷地売却決議」という。)をすることができる
   2  建物取壊し敷地売却決議においては、次の事項を定めなければならない。
     一  区分所有建物の取壊しに要する費用の概算額
     二  前号に規定する費用の分担に関する事項
     三  建物の敷地の売却の相手方となるべき者の氏名又は名称
     四  建物の敷地の売却による代金の見込額
   3  建物取壊し敷地売却決議については、前条第三項から第八項まで並びに区分所有法第六十三条第一項 から第四項 まで、第六項及び第七項並びに第六十四条の規定を準用する。この場合において、前条第三項中「前項第三号」とあるのは「次条第二項第二号」と、同条第四項中「第一項に」とあるのは「次条第一項に」と、同条第五項第一号中「売却」とあるのは「区分所有建物の取壊し及びこれに係る建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却」と、区分所有法第六十三条第一項 、第三項及び第四項並びに第六十四条中「建替えに」とあるのは「区分所有建物の取壊し及びこれに係る建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却に」と、同条中「及び区分所有権」とあるのは「並びに区分所有権」と、「建替えを行う」とあるのは「区分所有建物の取壊し及びこれに係る建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却を行う」と読み替えるものとする。 」 
とあり、
 マンションの建物の一部が滅失した場合は選択肢2で説明した第7条と本第10条1項により、マンションの建物の一部が滅失した場合における「建物取壊し敷地売却決議」は、区分所有者集会において、区分所有者、議決権及び敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上の多数でしなければならない、は正しい。



4 マンションの建物の一部が滅失した場合における建物の「取壊し決議」は、区分所有者集会において、区分所有者、議決権及び敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上の多数でしなければならない。

X 誤っている。建物の一部滅失での取壊し決議だけなら、敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上の多数はいならい。
 マンションの建物の一部が滅失した場合における建物の「取壊し決議」は、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法第11条
 「(取壊し決議等)
 第十一条  第
七条に規定する場合においては、区分所有者集会において、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、当該区分所有建物を取り壊す旨の決議(以下「取壊し決議」という。)をすることができる。
   2  取壊し決議においては、次の事項を定めなければならない。
     一  区分所有建物の取壊しに要する費用の概算額
     二  前号に規定する費用の分担に関する事項
   3  取壊し決議については、第九条第三項から第八項まで並びに区分所有法第六十三条第一項 から第四項 まで、第六項及び第七項並びに第六十四条の規定を準用する。この場合において、第九条第三項中「前項第三号」とあるのは「第十一条第二項第二号」と、同条第四項中「第一項に」とあるのは「第十一条第一項に」と、同条第五項第一号中「売却」とあるのは「取壊し」と、区分所有法第六十三条第一項 、第三項及び第四項並びに第六十四条中「建替えに」とあるのは「取壊しに」と、同条中「建替えを行う」とあるのは「取壊しを行う」と読み替えるものとする。 」
 とあり、
 マンションの建物の一部が滅失した場合の取壊し決議は選択肢2で説明した第7条と本第11条1項により、「区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数」でできる。敷地の売却をしないので、
敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上の多数は、いらないから、誤りである。


答え: 4。 出題されるとわかってはいても、敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上が出るとは、少しばかり細かい。
        {ある受験者の感想…選択肢2か4かで迷ったが、2にしてしまった。法が改正されたので出されるとは思っていたが、細かすぎる!}

《タグ》敷地売却決議 建物敷地売却決議 建物取壊し敷地売却決議 取壊し決議 区分所有者、議決権及び敷地利用権の持分の価格、 被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法

問12

〔問 12〕 Aは、その所有する甲マンション1階の店舗部分(101号室)を、平成20年4月1日にBに対し、期間を10年、賃料を月額50万円として賃貸し、引き渡したところ、Bは、平成25年4月1日にAに対し、賃料を月額40万円に減額するよう請求した。この場合における次の記述のうち、借地借家法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 AとBとの賃貸借契約において、賃貸期間中は賃料を減額しない旨の定めがある場合も、Bは賃料減額を請求することができる。

○ 正しい。 減額しないという特約は無効。 借地借家法からの出題は、平成24年管理業務主任者試験 「問43」、 平成23年管理業務主任者試験 「問44」、 平成22年管理業務主任者試験 「問44」など 過去は、管理業務主任者試験からが多い。
 賃料の減額は、借地借家法第32条
 「(借賃増減請求権)
 第三十二条  建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。
ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う
   2  建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
   3  建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。 」
 とあり、
 1項により、建物の借賃の額の増減を請求することができます。また、但し書き「一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。」により、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約は有効ですが、賃貸期間中は賃料を減額しない旨の定め(特約)は、賃借人に不利な内容となり、無効です(但し書きの反対解釈)から、賃貸期間中は賃料を減額しない旨の定めがある場合も、Bは賃料減額を請求することができ、正しい。
 社会的弱者保護という立場から賃借人に有利な特約のみ認めようとしたものです。



2 Bは、平成25年4月1日より前の賃料減額を請求することができない。

○ 正しい。 将来に向かって。相当な時の経過が必要。
 選択肢1で引用しました、借地借家法第32条1項
 「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、
将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。」 とあり、
 借賃増減請求権をするには、経済状況の変動という相当な時間が経過していることが必要であり、また「将来に向かって」とありますから、借主Bが減額を請求したのは、平成25年4月1日であるため、借主Bは平成25年4月1日より前(過去)の賃料減額を請求することができませんので、正しい。



3 Bの減額請求につき、AとBとの協議が調わないときには、Aは、減額を正当とする裁判が確定するまでは、Bに対し、相当と認める額の賃料の支払を請求することができる。

○ 正しい。 
 選択肢1で引用しました、借地借家法第32条3項
 「3  
建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。」 とあり、
 3項により、請求を受けた貸主Aは、減額を正当とする裁判が確定するまでは、Bに対し、相当と認める額の賃料の支払を請求することができますので、正しい。



4 Bの減額請求につき、月額45万に減額するのが正当である旨の裁判が確定した場合、賃料は裁判確定時から月額45万円となる。

X 誤っている。 減額請求の意思表示をした時から。形成権
 借地借家法第32条の借賃増減請求権は、裁判の確定したときではなく、減額請求の意思表示をしたときから有効になると判断されています。
 最高裁:昭和36年2月24日: 借家法七条に基づく家賃増減の請求は形成的効力を有し、請求者の一方的意思表示が相手方に到達したときに同条所定の理由が存するときは、賃料は以後相当額に増減せられたものと解すべきものである。
 これにより、Bの減額請求につき、月額45万に減額するのが正当である旨の裁判が確定した場合、賃料は裁判確定時ではなく、請求した平成25年4月1日から月額45万円となりますので、誤りです。



答え:4 借地借家法第32条の借賃増減請求権を知らなくても、なんとなく、分かった人もいたようです。
      なお、形成権については、「問7」 も参考にしてください。

《タグ》借賃増減請求権 形成権  、借地借家法

問13

〔問 13〕 高齢のAは、甲マンションの201号室を所有していたところ、アルツハイマー症状が見られるようになり、Bから「このマンションは地震による倒壊の恐れがあり、せいぜい200万円の価値しかない」と言われて、代金200万円でBに対し売却してしまったが、その201号室の売却当時の時価は約2、000万円であった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 AB間の売買契約の後に、Aの子がAについて家庭裁判所に後見開始の審判の申立てを行い、Aが成年被後見人となったことにより、AB間の売買契約は、その締結時に遡及して無効となる。 

X 誤っている。 アルツハイマー症状中の行為は、まだ成年被後見人の行為ではない。遡及しない。 平成20年マンション管理士試験 「問13」
 出題の論点が、Aのいつの行為に対してあるのか、分かり難いのですが、高齢のAが成年被後見人になるには、民法第7条
 「(後見開始の審判)
 第七条  精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。」 
とあり、
 Aの子は、四親等内の親族として、後見開始の審判の請求を家庭裁判所にできます。
 そして、Aが成年被後見人と判定されれば、後見の登記がなされ、成年被後見人の法律行為は、民法第9条
 「(成年被後見人の法律行為)
 第九条  成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。 」
 とあり、
 取消すことができ、取消しの効果は、民法第121条
 「 (取消しの効果)
 第百二十一条  取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。」
 により、
 始めから、遡及して、無効となります。

 しかし、これらの規定が適用されるのは、Aが成年被後見人と判定された後の行為です。
 まだ、成年被後見人と判定される前の行為については、適用がないため、誤りです。
 アルツハイマー症状中のAの行為は、Aが意思能力を欠いていたことを証明して対応します。



2 Bが201号室の所有権移転登記をした後に、AB間の売買契約の経緯を知らないCが、Bの登記を信じて転売を受けた場合でも、Aが売買契約締結当時、Aに意思能力がなかったことが証明されたときは、Aは売買契約の無効を理由として、Cに対して同室の返還請求をすることができる。

○ 正しい。 意思能力がない場合の無効は、すべての第三者に対して主張できる。
 高齢者Aが売買契約締結当時意思能力がないこと(行為の結果を判断できない)が証明されると、Aの行った行為は法律上、具体的な条文はありませんが、民法が前提としています人は自由な意思を持っていて、価値判断をしているという、根本の能力を欠いているので、最初からその法律行為は無効と主張してもいいし、取り消しを主張してもいいと解されています。
 そこで、Aが売買契約の無効を理由とすれば、Bが行った登記は効力を失います。この無効は、その後の、AB間の売買契約の経緯を知らないCに対しても対抗できますから、Aは売買契約の無効を理由として、Cに対して同室の返還請求をすることができ、正しい。



3 Aは、Bの行為は暴利行為であり、公序良俗違反であるとして、売買契約の無効を主張することができるが、その権利行使は、Aがその売買による損害を知ってから3年以内にしなければならない。

X 誤っている。無効の主張に時効はない。 平成25年管理業務主任者試験 「問3」平成17年マンション試験 「問17」平成15年マンション管理士試験 「問12」平成15年管理業務主任者試験 「問2」
 公序良俗違反は、民法第90条
 「(公序良俗)
 第九十条  
公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。 」 とあり、
 分かったようで分からない、公の秩序とは、「国家社会の一般的な利益」と説明され、善良の風俗とは、「社会の一般的な道徳観念」と説明されますが、つまるところ何が一般的かは個人の判断によります。そこで、公序良俗違反とは、時代と共に変化していく概念で、掴まえ所がなく、結局裁判所の判断によります。
 そこで、判例から纏めますと、
 1.人倫に反するもの(例:既婚者との愛人契約)
 2.正義の観念に反するもの(例:犯罪、賭博行為での債権)
 3.個人の自由を極度に制限するもの(例:芸娼妓契約)
 4.暴利行為(例:相手方の無思慮・窮迫に乗じたもの。過度の違約金)
 となります。
 そこで、設問の時価約2,000万円のマンションの一室を、200万円で売却した行為は、公序良俗違反の.暴利行為として売買契約の無効を主張することができます。
 しかし、無効は最初から無効であり、無効に時効はないと解されていますから、その権利行使は、Aがその売買による損害を知ってから3年以内にしなければならないは、誤っています。



4 Aが売買契約後に死亡した場合、Aの相続人は、Bに対して損害賠償請求をすることはできるが、契約の無効の主張又は取消しの意思表示をすることはできなくなる。

X 誤っている。 相続は、被相続人の権利を承継する。契約の無効の主張又は取消しの意思表示をすることもできる。 平成25年マンション管理士試験 「問15」平成25年管理業務主任者試験 「問2」 、平成24年マンション管理士試験 「問12」、 平成24年管理業務主任者試験 「問11」 など相続に関する出題も多い。
 相続人の地位は、民法第896条
 「 (相続の一般的効力)
 第八百九十六条  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」
 とあり、
 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継していますから、Aが生前に行った売買契約が不当なものであれば、民法第709条の不法行為
 「(不法行為による損害賠償)
 第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 」
 を援用し、Aの相続人は、Bに対して損害賠償請求をすることもできますし、
 または、選択肢2のように、Aが売買契約締結当時、Aに意思能力がなかったことを証明できれば、契約の無効の主張又は取消しの意思表示をすることもできますから、誤りです。



答え:2。 基本的な問題を出されると、かえって説明に時間がかかる。 相続は、「問16」 にも出題有。
      {ある受験者の感想…選択肢2か3で迷った。3にしてしまった。民法の理解不足。}

     参考:平成21年10月29日 東京地裁の判決: http://www.retio.or.jp/attach/archive/79-102.pdf (栗栖 屯さんからの情報です。有難うございます。)

《タグ》意思能力、無効、時効  民法  

問14

〔問 14〕 甲マンションの附属施設である立体駐車場において、A運転の自動車が、Aの運転操作ミスによって駐車場設備を破損したため、甲マンションの管理者Bは駐車場設備の修理費につき損害賠償請求をしようとしている。この場合における次の記述のうち、民法及び区分所有法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

1 事故時にAが18歳の高校生であり、友人の自動車で無免許運転をしていた場合、Bは、Aの両親であるC及びDに損害賠償請求をすることができるが、Aに損害賠償請求をすることはできない。

X 誤っている。 未成年でも責任はある。また両親も責任を追及されることがある。 不法行為の出題も多い。 平成24年マンション管理士試験 「問3」平成22年マンション管理士試験 「問10」、 平成19年マンション管理士試験 「問15」、 平成17年マンション管理士試験 「問17」 など。
 まず、民法第709条
 「(不法行為による損害賠償)
 第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
 とあり、
  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。 これが、基本です。
 では、未成年者が過失により侵した行為は、民法第712条
 「(責任能力)
 第七百十二条  
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。 とあり、
 自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負いませんが、そこで、18歳の高校生の立場です。
 自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときの判断は、各個人によって異なりますが、民法では、原則、未成年者であっても、12歳から13歳程度になれば責任能力があると判定されています。
 これにより、まず、運転をしていたAは未成年であっても損害賠償の責任を負います。
 では、次にAの両親であるC及びDの責任追及ですが、子供であるAが責任を負うなら、両親は免責されるかというと、事案によっては、親にも不法行為責任を認めた判例があります。
 最高裁:昭和49年3月22日の判決です。
 「未成年者が責任能力を有する場合であっても、その監督義務者に監督義務違反があり、これと未成年者の不法行為によって生じた損害との間に相当因果関係を認め得るときには、
監督義務者は、民法709条に基づき損害賠償責任を負うものと解するのが相当である
  これによれば、未成年者Aにも、損害賠償責任があり、両親にも事案によっては、損害賠償責任を請求できる場合がありますから、被害者である甲マンションは、共に請求できます。
 そして、次は、甲マンションの第三者である管理者Bが、損害賠償責任を請求できるかをきいています。
 すると、これは、管理者の権限として区分所有法第26条
 「(権限)
 第二十六条  管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
   2  
管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする
   3  管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
   4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
   5  管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。 」
 とあり、
 2項により、管理者は区分所有者を代理し、共用部分である立体駐車場に生じた損害賠償金の請求はできます。
 そこで、選択肢1は、全体として、誤りです。


 参考:民法第714条
 「(責任無能力者の監督義務者等の責任)
 第七百十四条  前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
   2  監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。 」



2 事故時にAが勤務先であるE社所有の自動車を私用で運転していた場合、Bは、Aに損害賠償請求をすることができるが、E社に損害賠償請求をすることはできない。

X 誤っている。私用での事故であっても、会社も損害賠償責任を負う。 平成25年管理業務主任者試験 「問6」、 平成22年マンション管理士試験 「問16」平成21年マンション管理士試験 「問15」、 平成21年管理業務主任者試験 「問3」 など。
  今度は、社有車を私用で使用した時の事故です。
 実際の事故を起こしたAが損害賠償責任を負うのは、選択肢1で引用した、民法第709条
 「(不法行為による損害賠償)
 第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」 
に該当しますから、
 Aには、損害賠償請求ができます。
 では、次に、勤務先のE社の責任ですが、これは、民法第715条
 「(使用者等の責任)
 第七百十五条  
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
   2  使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
   3  前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。 」 
です。
 ここでの、「被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」の解釈が、判例ではかなり広く解釈されています。
 例えば、最高裁:昭和37年11月8日の判決
 「本件自動車は、たとえDの専用するものではなく、また会社には勤務時間の定めがあつて、Dが本件自動車を使用したのは右勤務時間後のことであり、その使用の目的もまた原判示の如き恣意的なものであつたとしても、それらはただ被上告会社とDとの間の内部関係に過ぎないのであつて、
外形的にこれを観れば、Dの本件自動車運転は、被上告会社の運転手としての職務行為の範囲に属するものとして、同会社の事業の執行と認めることの妨げとなるものではない。(昭和三〇年(オ)五四七号、同年一二月二二日当裁判所第一小法廷判決、集九巻一四号二〇四七頁、昭和三二年(オ)九九〇号、同三四年四月二三日当裁判所第一小法廷判決、集一三巻四号五三二頁各参照)」 とあり、
 会社所有の自動車で私用中に起こした事故の責任を会社にも追求できますから、誤りです。
 なお、甲マンションの管理者Bが請求できるのは、選択肢1と同様です。



3 BがAに対して損害賠償請求をするに当たり、訴訟の追行を弁護士に委任した場合には、相当な修理費に加え、相当な弁護士費用を併せて請求することができる。

○ 正しい。 相当と認められる額の範囲なら、弁護士費用も含めていい。 平成22年マンション管理士試験 「問16」、 平成21年マンション管理士試験 「問12」
 訴訟費用の請求は、民法第722条
 「(損害賠償の方法及び過失相殺)
 第七百二十二条  第四百十七条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
   2  被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。 」
 とあり、
 準用されている、民法第417条
 「(損害賠償の方法)
 第四百十七条  損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。 」
 とあり、
 不法行為による損害賠償の額は、原則:金銭となります。
 そこで、この損害賠償の額に弁護士費用も含めていいかどうかですが、最高裁:昭和58年9月6日の判決
 「不法行為の被害者が自己の権利擁護のため訴えを提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、
その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害であり、被害者が加害者に対しその賠償を求めることができると解すべきことは、当裁判所の判例(最高裁昭和四一年(オ)第二八〇号同四四年二月二七日第一小法廷判決・民集二三巻二号四四一頁)とするところである。」 とあり、
 正しい。
 なお、甲マンションの管理者Bが請求できるのは、選択肢1と同様です。



4 BがAに対して相当な修理費について損害賠償請求をする場合、当該債務は損害賠償を請求した時から履行遅滞になり、これに対する損害賠償を請求した日の翌日から年5分の割合による遅延損害金を併せて請求することができる。

X 誤っている。 不法行為による賠償債務は被害者の請求を待たずに、不法行為が発生した時から履行遅滞となり、遅延損害金が生じる。
 不法行為での賠償請求権については、選択肢3で引用した、最高裁:昭和58年9月6日の判決、に
 
不法行為に基づく損害賠償債務は、なんらの催告を要することなく、損害の発生と同時に遅滞に陥るものと解すべきところ(最高裁昭和三四年(オ)第一一七号同三七年九月四日第三小法廷判決・民集一六巻九号一八三四頁参照」 とあり、
  損害の発生した時(不法行為の発生時)から、履行遅滞になりますから、設問の損害賠償を請求した時から履行遅滞になりは、誤りです。 
 また、遅延損害金は、民法第419条
 「(金銭債務の特則)
 第四百十九条  金銭の給付を目的とする債務の不履行については、
その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
   2  前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
   3  第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。」
 とあり、
 1項により、特別の定めない限り、民法第404条
 「(法定利率)
 第四百四条  利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、
その利率は、年五分とする。」 です。
 そこで、選択肢4の損害賠償請求は、事故が発生したときから、請求をしなくても、履行遅滞となり、遅延損害金(年5分)も、 併せて請求できますから、誤りです。
 なお、甲マンションの管理者Bが請求できるのは、選択肢1と同様です。

 参考:民法第420条
 「(履行期と履行遅滞)
 第四百十二条  債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
   2  債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。
   3  債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。」



答え:3。 難しい。何となく選択肢3と分かれば、すごい。 選択肢1と選択肢4の判例を探すのに時間がかかった。管理者の権限については、 「問4」 も参考にしてください。 弁護士費用のついても、「問4」選択肢4も参考に。
     {ある受験者の感想…迷わず選択肢2にした。民法がわかっていない。}
 

《タグ》不法行為、使用者責任、監督責任、弁護士費用の上乗せ、履行遅滞。  民法 + 区分所有法 + 判例

問15

〔問 15〕 Aの所有する甲マンションの301号室をAから賃借して居住しているBは、Aの承諾を得て、301号室の賃借権をCに譲渡し、301号室をCに引き渡した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 賃借権の譲渡前にBがAに対して賃料1ヵ月分を支払っていなかった場合において、賃借権の譲渡をAが承諾する際に、この未払の賃料をCにも負担させることをAB間で合意したとしても、Aは、Cに対し、その支払を請求することはできない。

○ 正しい。 契約は基本として、当事者しか拘束しない。 転貸借・譲渡からの出題も多い。 平成24年マンション管理士試験 「問15」、 平成23年管理業務主任者試験 「問3」、 平成20年マンション管理士試験 「問3」、 平成20年管理業務主任者試験 「問5」 など。
  

 しかし、例年と異なり、本年度の出題は、転貸借ではなく、賃借権の譲渡であることに注意。
 まず、元の賃貸人(大家)Aから賃借人B、そして譲受人Cへの契約は、民法第612条
 「 (賃借権の譲渡及び転貸の制限)
 第六百十二条  
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない
   2  賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。」
 とあり、
 設問の場合の賃借権の譲渡は、大家であるAの承認を得てなされているので、有効です。
  賃借権が譲渡されると、従来の賃借人Bが有していた賃借権は、譲受人であるCに帰属します。
 そこで、Bの未払の賃料の支払い約束ですが、これは、賃貸人Aと元の賃借人BであるAB間における合意であり、新しく賃借権者となったCはその債務を引き受けることは合意していませんので、Cには請求できず、正しい。

 

2 賃借権の譲渡後、台風による暴風雨の影響で301号室の窓が破損した場合には、Cは、その修繕の請求をBに対してしなければならず、Aに対してすることはできない。

X 誤っている。 賃借権の譲渡が適法になされると、元の賃貸人(大家)が、修繕をする。
  設問の賃借権の譲渡は、賃貸人の承諾を得てなされていますから、権利・義務の関係は、賃貸人Aと新しい賃借人Cとになります。台風の影響で窓が破損した場合には、修繕義務は、民法第606条
 「(賃貸物の修繕等)
  第六百六条  
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
    2  賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。」
 とあり、
 この1項の修繕を必要とする理由には、天災や不可抗力で生じたものも含まれますから、台風で窓が破損した場合の修繕の請求は、元の賃借権者Bではなく、賃貸人であるAに対して行いますので、誤りです。



3 賃借権の譲渡後に発生する賃料について、Aは、Cに対して支払を請求することができるだけでなく、Cが無資力であるために支払えない場合には、Bに対しても支払を請求することができる。

X 誤っている。 賃借権の譲渡後となると、もう前の賃借人Bには請求できない。
 選択肢1でも述べましたように、賃借権が正当に譲渡されると、従来の賃借人Bが有していた賃借権は、譲受人であるCに帰属します。
 すると、賃借人の義務として賃料の支払いは、賃借権の譲受人であるCとなり、たとえCが無資力であるために支払えない場合であっても、賃貸人Aは、もう賃借権を有しないBには請求できず、誤りです。
 参考:ここは、転貸の民法第613条2項
 「(転貸の効果)
 第六百十三条  賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
   
2  前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。」
 との混同を狙った出題です。


4 BC間の賃借権譲渡契約において、Cが賃借権の譲渡の対価をBに支払うことが合意されていたにもかかわらず、Cがこれを支払わない場合には、Bは、Aの承諾を得ない限り、債務不履行を理由として賃借権譲渡契約を解除することができない。

X 誤っている。 賃借権の譲渡は、賃借人Bと譲受人Cとの間では、有効に成立している。 Cの債務不履行なら、賃貸人Aの承諾は不要である。
 選択肢1で引用しました、民法第612条
 「 (賃借権の譲渡及び転貸の制限)
 第六百十二条  
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
   2  賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。」 
において、
 賃借人Bと譲受人Cとの賃借権の譲渡契約は、賃貸人Aの承諾の有無に係わらず、当事者間では有効に成立していると解釈されています。
 ただ、賃貸人Aの承諾がないと、その賃借権の譲渡は、賃貸人に対して対抗できない(有効性を主張できない)だけです。
 そこで、譲受人Cが賃借権の譲渡の対価を賃借人Bに支払わない場合には、賃借人Bと譲受人Cとの関係となり、賃借人Bは、賃貸人Aの承諾がなくても、債務不履行を理由として賃借権譲渡契約を解除することができますので、誤りです。
 参考:民法第543条
 「(履行不能による解除権)
 第五百四十三条  履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」



答え:1  やや難問。過去問題では、転貸が中心だったので、問題をサラット読むと、賃借権譲渡を転貸借と捉え易い。
       なお、債務引受けについては、平成26年管理業務主任者試験 「問4」 もある。

《タグ》賃借権の譲渡 、民法

問16

〔問 16〕 甲マンションの201号室を所有するAが、管理費60万円を滞納したまま遺言をすることなく平成25年12月1日に死亡した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 Aの死亡より前に配偶者が死亡し、Aに実子B及び養子Cがある場合、B及びCがいずれも単純承認したときは、滞納管理費については、B及びCが各30万円を承継する。

○ 最高裁の判例によるならば、正しい? 平成23年 マンション管理士試験 「問16」 選択肢3、 平成21年マンション管理士試験 「問14」、 平成17年マンション管理士試験 「問18」
 この遺産相続については、共有か合有かの議論があるので、出題として適切でない。 
 
 
 
 まず、誰かが死亡すると、相続が開始され、通常相続人がいますから、民法第896条
 「(相続の一般的効力)
 第八百九十六条  
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。 」 とあり
 相続人が、相続の放棄をしない限り、単純承認として、民法第920条
 「(単純承認の効力)
 第九百二十条  
相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。 により、
 死亡した被相続人の財産に属した一切の法律上の権利義務を承継することになります。
 遺言もないこの設問の場合、単純承認で承継するのは、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(負債)も承継しますから、管理組合に支払うべき管理費を滞納していれば、相続人はその滞納金(60万円)を支払わなければなりません。

 では、誰が相続人となるかは、民法第887条
 「(子及びその代襲者等の相続権)
 第八百八十七条  
被相続人の子は、相続人となる。
   2  被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
   3  前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。 」
 とあり、
 設問では、1項により、子が相続人となります。
 そこで、養子の立場ですが、民法第727条
 「(縁組による親族関係の発生)
 第七百二十七条  
養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。」 とあり、
  実子と養子を区別しません。子が数人いれば、実子と養子は共同で相続人となります。
  また、死亡した人の配偶者は、民法第890条
 「 (配偶者の相続権)
 第八百九十条  
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。」 ですが、
 設問では、配偶者Bは、Aより先に死亡しているため、Aの死亡により、実子のCおよび養子のDが共同相続人となり、滞納管理費もC及びDに支払い義務があります。

 ここまでは問題がないのですが、この相続された財産(遺産)については、共有説と合有説で見解が分かれていて論争があります。要点は、以下のとおりです。
 @共有説...共同相続人は相続時に個々の遺産について、相続分に応じた持分を有しており、可分できるなら、相続分に応じて遺産は、分割される。
          いいかえると、
被相続人の債権者は、共同相続人に対して、各々その相続分で請求できるということです
 A合有説...共同相続人間で遺産分割協議がなされるとその分割の効果は遡及することを考えると、分割協議が成立するまでは、各共同相続人は個々の遺産に対する持分を各自では処分することができない。
          いいかえると、
被相続人の債権者は、遺産分割協議前は、共同相続人個々の持分に対しては、請求できず、共同相続人全員に対して債権の総額で請求できるということです

 この遺産の論争に対して、最高裁は、共有説をとっています。例えば、昭和30年5月31日の判決
 「相続財産の共有(民法八九八条、旧法一〇〇二条)は、民法改正の前後を通じ、民法二四九条以下に規定する「共有」とその性質を異にするものではないと解すべきである。相続財産中に金銭その他の可分債権があるときは、その債権は法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するとした新法についての当裁判所の判例(昭和二七年(オ)一一一九号同二九年四月八日第一小法廷判決、集八巻八一九頁)及び旧法についての大審院の同趣旨の判例(大正九年一二月二二日判決、録二六輯二〇六二頁)は、いずれもこの解釈を前提とするものというべきである。それ故に、遺産の共有及び分割に関しては、共有に関する民法二五六条以下の規定が第一次的に適用せられ、遺産の分割は現物分割を原則とし、分割によつて著しくその価格を損する虞があるときは、その競売を命じて価格分割を行うことになるのであつて、民法九〇六条は、その場合にとるべき方針を明らかにしたものに外ならない」 と述べています。

 私は、遺産分割協議前の状態では、最終的な分割ではないため、相続分が後の遺産分割協議により変更される可能性が非常に高いことを考えると、遺産分割協議前の財産は、共同相続人が全員で持っていると考える
合有説を支持します

 そこで、選択肢1に戻りますが、遺言もなければ、最高裁の判例によれば、滞納管理費60万円は、民法第900条
 「(法定相続分)
 第九百条  同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
     
一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
     二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
     三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
     四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。」
 とあり、
 1項により、配偶者がいませんから、相続分に分割して承継されB及びCが各々2分の1、つまり、全額60万円の内各30万円を承継するは、正しいとなります。
しかし、最高裁の判断は誤っています。早急に、民法を改訂すべき問題です。

 参考:
 「(遺産の分割の効力)
 第九百九条  遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。」



2 Aの死亡より前に配偶者が死亡し、Aに実子D及び実子Eがある場合、Dが単純承認し、Eが相続放棄したときは、Dが滞納管理費60万円全額を承継する。

○ 正しい。 
 本来、相続人であるDとEがいて、Dが単純承認をすると、選択肢1でも引用しました民法第920条
 「(単純承認の効力)
 第九百二十条  
相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。」  とあり、
 Dは、被相続人Aの債務である滞納管理費の支払い義務も承継します。
 一方、Eは相続放棄をしたとなると、民法第939条
 「(相続の放棄の効力)
 第九百三十九条  
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。 とあり、
  Eは、相続人の地位から外れますから、相続人はD一人になります。
 そこで、遺言もないようですから、被相続人Aの債務である滞納管理費60万円全額の支払い義務を負うのは、Dとなり、正しい。



3 Aに配偶者F、実子G及び実子Hがあり、Aの死亡より前にG及びHが死亡し、Gに実子Iがあり、Hに実子J及び実子Kがある場合、F、I、J及びKがいずれも単純承認したときは、滞納管理費については、Fが30万円、I、J及びKが各10万円を承継する。

X 誤っている。 Iは、15万円、J及びKは、7万5千円。
  なんと登場人物が多い出題でしょう。 こんな出題は、不適切です。 図を作るだけでも時間がかかる。
  代襲相続からの出題は、珍しい。

  
  
 
 被相続人Aの死亡により相続人となるのは、まず配偶者Fは、民法第890条
 「(配偶者の相続権)
 第八百九十条  
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。」 とあり、
 配偶者Fは相続人となります。
 次に子G及びHも民法第887条
 「(子及びその代襲者等の相続権)
 第八百八十七条  被相続人の子は、相続人となる。
   
2  被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
   3  前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。」
 とあり、
 1項により相続人となりますが、設問では、 GとHは被相続人よりも前に死亡しています。
 すると、2項の規定により、GとHの直系卑属である子I,J、K(Aからみれば孫です)がG及びHに代襲して相続人となります。

 遺言もなく、全員が単純承認すれば、配偶者Fと代襲相続人の相続分は、民法第900条
 「(法定相続分)
 第九百条  同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
     
一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
     二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
     三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
     四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。」
 とあり、
 1号により、配偶者の相続分は、1/2 となります。
 残りの1/2が死亡したG及びHの相続分でG及びHは、1/2 割る 2 で、各々1/4の相続分を持っています。

 そして、死亡したG及びHの代襲相続人の相続分は、民法第901条
 「(代襲相続人の相続分)
 第九百一条  第八百八十七条第二項又は第三項の規定により
相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。
   2  前項の規定は、第八百八十九条第二項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。」
 とあり、
 1項により、 Gの子は1人ですから、1/4 を相続し、Hの子は2人ですから、1/4 割る 2 で 1/8 を各々相続します。
 そこで、滞納管理費 60万円の承継は、
 配偶者F=600,000x1/2=300,000
 Gの子I =600,000x1/4=150,000
 Hの子J及びK=600,00x1/8=75,000 となりますから、
 滞納管理費については、Fが30万円、I、J及びKが各10万円を承継するは、I、J及びKが、誤りです。
 なお、代襲相続制度が認められるのは、本来相続人(子)が生きていれば、相続できた財産を、間接的に代襲人(孫)に認めるものですから、本来相続人が相続する範囲でしか、相続分もないということです。そこで、相続人が生きていて相続を放棄した場合には、代襲相続はありませんので注意してください。



4 Aに配偶者、子がなく、Aの死亡より前に実父が死亡し、Aに実母L及び兄Mがある場合、Lが単純承認したときは、Lが滞納管理費60万円全額を承継する。

○ 正しい。 
 
 

 Aに配偶者も子もいない時の相続人は、民法第889条
 「(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
 第八百八十九条  次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
     
一  被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
     
二  被相続人の兄弟姉妹
   2  第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。」
 とあり、
 設問は、1号により、 被相続人の直系尊属である、母Lが第1位の相続人となり、2号により、兄Mが第2位の相続人になります。
 そこで、Aの遺言もなく、第1位の相続人の母Lが単純承認すれば、選択肢1でも引用しました、民法第896条
 「(相続の一般的効力)
 第八百九十六条  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。 」
 により
 母LがAの滞納管理費60万円全額を承継しますから、正しい。



答え:3  ここも、登場人物が多すぎて、解説に時間がかかります。また、実際の試験では、「問2」と同様に、回答を飛ばして、次の問題に取り掛かった方がいいでしょう。

《タグ》相続、 単純承認、 相続放棄、 代襲相続  民法


*2017年 4月9日 追記:
 注:平成28年12月19日の最高裁判所の判決で、
 共同相続の場合、今までは、被相続人が死亡すれば、その遺産である預貯金は可分債権として”当然”に、他の相続人の同意がなくても、各相続人は単独で、その相続分に応じて預貯金の引き出し(払い戻し)ができていたのを変更し、預貯金を遺産分割の対象にして、各相続人が単独では、預貯金の引き出しができなくしました。

 詳細は、
 http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86354

 にありますので、今後の受験生は、注意してください。

問17

〔問 17〕 AがBに中古住宅である甲マンションの101号室を売却した場合におけるAの瑕疵担保責任に関する次の記述のうち、民法及び宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 AとBとの売買契約において、隠れた瑕疵につき瑕疵担保責任を負う期間を引渡しの日から1年間とした場合、Aが宅地建物取引業者であり、Bが宅地建物取引業者でないときは、Aは、引渡しの日から2年間は瑕疵担保責任を免れない。

X 誤っている。 宅地建物取引業法での無効な特約は、民法に戻る。買主がその事実を知ってから1年間は、瑕疵担保責任を免れない。 平成26年管理業務主任者試験 「問40」平成25年マンション管理士試験 「問17」 、平成25年管理業務主任者試験 「問40」、 平成24年マンション管理士試験 「問14」 、平成24年管理業務主任者試験 「問40」、 平成23年 マンション管理士試験 「問12」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問41」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問13」 、 平成22年 管理業務主任者試験 「問42」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問4」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問41」 「問42」 、平成20年 マンション管理士試験 「問16」 、平成20年 管理業務主任者試験 「問41」 など、必ず出る問題です。
 例年瑕疵担保責任の出題も多いので、別サイトを作っていますので、これも、参考にしてください。

 売買の対象物に通常の注意を払っても発見できない品質や性能の不備があれば、買主が支払った金額は公平でありません。そこで、民法では売主に対して、故意や過失がなくても、契約の解除や損害賠償などの責任を負わせることにしています。それが、民法第570条
 「 (売主の瑕疵担保責任)
 第五百七十条  売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。」
 です。
 準用されている民法第566条は、
 「 (地上権等がある場合等における売主の担保責任)
 第五百六十六条  売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、
買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる
   2  前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
   3  前二項の場合において、
契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。」 です。
 しかし、この売主の瑕疵担保責任は任意規定で、売主が瑕疵担保責任を負わないという特約も有効です。 その際でも、民法第572条
 「(担保責任を負わない旨の特約)
 第五百七十二条  売主は、第五百六十条から前条までの規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。 」
 とあり、
 売主が知っていて相手に告げなかった事実等があれば、売主は責任を負います。

 土地・建物の売買を扱う宅地建物取引業者は、民法に従っているのですが、買主の無知に付け込み、売買の際に自分たち宅地建物取引業者に都合のいい特約を結んでいて、トラブルが多く発生していました。
 これらを規制するため、宅地建物取引業法第40条
 「 (瑕疵担保責任についての特約の制限)
 第四十条  
宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、民法 (明治二十九年法律第八十九号)第五百七十条において準用する同法第五百六十六条第三項 に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条 に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
   
2  前項の規定に反する特約は、無効とする。」 とし、
  瑕疵担保責任を負う期間を「目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合」なら、有効ですが、その他の買主にとって不利となる特約は無効としています。

 民法第566条3項での「買主が事実を知った時(発見した時)から一年以内にしなければならない」は開始の期間が限定されていず、一方宅地建物取引業法第40条1項の「その目的物の引渡しの日から二年以上」となると開始期間からの限定があり、これは、買主にとって不利ですが、不動産業界の強い要望で許容されたものです。

 そこで、設問の宅地建物取引業者であるAが「瑕疵担保責任を負う期間を引渡しの日から1年間とした場合」は、宅地建物取引業法第40条の規定の特約が許される「2年以上」に反していますから、無効となります。
 無効となると、瑕疵担保責任は民法が適用されるということですから、「買主が事実を知った時から一年以内」となります。この場合、瑕疵担保責任は「引渡しの日から2年間」ではありませんから、誤りです。



2 AとBとの売買契約において、隠れた瑕疵につき瑕疵担保責任を負う期間を引渡しの日から6ヵ月間とした場合、Aが宅地建物取引業者でなく、Bが宅地建物取引業者であるときは、Aは、引渡しの日から6ヵ月を経過した時に瑕疵担保責任を免れる。

○ 正しい。 売主が宅地建物取引業者でなければ、宅地建物取引業法第40条は適用されない。特約は有効。
 選択肢1で引用しました宅地建物取引業法第40条
 「 (瑕疵担保責任についての特約の制限)
 第四十条  
宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、民法 (明治二十九年法律第八十九号)第五百七十条において準用する同法第五百六十六条第三項 に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条 に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
   2  前項の規定に反する特約は、無効とする。」
 は、
 宅地建物取引業者を規制するものです。宅地建物取引業者が売主となる場合に適用されますが、売主が宅地建物取引業者でなければ、買主が宅地建物取引業者であっても、隠れた瑕疵につき瑕疵担保責任を負う期間を引渡しの日から6ヵ月間とする特約は選択肢1で説明したように有効ですから、正しい。



3 AとBとの売買契約において、住宅の構造耐力上主要な部分の隠れた瑕疵についてのみ瑕疵担保責任を負うとした場合、A及びBが宅地建物取引業者であるときは、Aは、住宅の構造耐力上主要な部分の隠れた瑕疵以外の瑕疵についても瑕疵担保責任を免れない。

X 誤っている。 宅地建物取引業者同志だと、宅地建物取引業法第40条は適用されない。特約は有効。
 宅地建物取引業法第40条設定の趣旨は、買主が一般人の時に不利となる特約の作成を防ぐものです。
 そこで、宅地建物取引業者同志の取引となると、宅地建物取引業法第78条
 「(適用の除外)
 第七十八条  この法律の規定は、国及び地方公共団体には、適用しない。
   
2  第三十三条の二及び第三十七条の二から第四十三条までの規定は、宅地建物取引業者相互間の取引については、適用しない。 とあり、
  2項により、宅地建物取引業法第40条は宅地建物取引業者同志の取引には適用がありませんから、選択肢1で説明しましたように、住宅の構造耐力上主要な部分の隠れた瑕疵についてのみ瑕疵担保責任を負うの特約は有効で、誤りです。



4 AとBとの売買契約において、隠れた瑕疵につき解除及び損害賠償請求に加え、あるいはこれに代えて瑕疵修補請求ができるものとした場合、Aが宅地建物取引業者であり、Bが宅地建物取引業者でないときは、Bは、瑕疵修補請求をすることができない。

X 誤っている。 瑕疵修補請求もできるなら、特約は買主に不利でない。
 Aが宅地建物取引業者で、Bが宅地建物取引業者でないときの特約は、選択肢1で引用しましたように、宅地建物取引業法第40条
  「 (瑕疵担保責任についての特約の制限)
 第四十条  宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、民法 (明治二十九年法律第八十九号)第五百七十条において準用する同法第五百六十六条第三項 に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条 に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
   2  前項の規定に反する特約は、無効とする。」
 
 によって買主に不利な特約を禁じています。
 そこで、民法第566条
 「(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
 第五百六十六条  売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、
買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる
   2  前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
   3  前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。」
 です。
 民法第566条では、売買の目的物に瑕疵があれば、買主は、売主に対して、
 @損害賠償の請求
 A目的を達することができない時は、契約の解除
 ができるとしています。
 そこで、設問の「隠れた瑕疵につき解除及び損害賠償請求に
加えあるいはこれに代えて瑕疵修補請求ができるものとした」特約は、買主に請求の選択権が与えられていて不利ではありませんから、有効で、買主Bは、瑕疵修補請求ができますから、誤りです。


答え:2。  ここは、選択肢3の宅地建物取引業者相互間の取引には、宅地建物取引業法第40条の適用がないと知らなくても、分かる?
       でも、この出題では、宅地建物取引主任者試験から流れてきた人に有利だ。
       {ある受験者の感想…選択肢2か3で迷ったが、2にした。}

《タグ》瑕疵担保責任、特約の有効性、宅地建物取引業者相互間の取引、  民法 + 宅地建物取引業法

問18

〔問 18〕 敷地権付き区分建物の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法及び区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 敷地権付き区分建物の登記記録の表題部の「敷地権の目的である土地の表示」欄には、敷地権の目的である土地の地目、地積、敷地権の種類が登記される。

X 誤っている。 登記記録の表題部の「敷地権の目的である土地の表示」欄には、地番、地目、地積は記載されているが、敷地権の種類は登記されていない。 敷地権の種類は、専有部分の建物の表示に登記される。 平成25年マンション管理士試験 「問18」、 平成25年管理業務主任者試験 「問43」、 平成24年マンション管理士試験 「問18」、 平成23年管理業務主任者試験 「問45」 など。
 敷地権付き区分建物の登記の詳細は、 不動産登記規則第4条
 「登記記録の編成)
 第四条  土地の登記記録の表題部は、別表一の第一欄に掲げる欄に区分し、同表の第一欄に掲げる欄に同表の第二欄に掲げる事項を記録するものとする。
   2  建物(次項の建物を除く。)の登記記録の表題部は、別表二の第一欄に掲げる欄に区分し、同表の第一欄に掲げる欄に同表の第二欄に掲げる事項を記録するものとする。
   3  
区分建物である建物の登記記録の表題部は、別表三の第一欄に掲げる欄に区分し、同表の第一欄に掲げる欄に同表の第二欄に掲げる事項を記録するものとする。
   4  権利部は、甲区及び乙区に区分し、甲区には所有権に関する登記の登記事項を記録するものとし、乙区には所有権以外の権利に関する登記の登記事項を記録するものとする。」 
とあり、
 引用されています、別表三は、 

 別表三 (第四条第三項関係)区分建物である建物の登記記録

第一欄 第二欄
一棟の建物の表題部
専有部分の家屋番号欄 一棟の建物に属する区分建物の家屋番号
一棟の建物の表示欄 所在欄 一棟の建物の所在
所在図番号欄 建物所在図の番号
建物の名称欄 一棟の建物の名称
構造欄 一棟の建物の構造
床面積欄 一棟の建物の床面積
原因及びその日付欄 一棟の建物に係る登記の登記原因及びその日付
建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記における建物の種類、構造及び床面積が設計書による旨
閉鎖の事由
登記の日付欄 一棟の建物に係る登記の年月日
閉鎖の年月日
敷地権の目的である土地の表示欄 土地の符号欄 敷地権の目的である土地の符号
所在及び地番欄 敷地権の目的である土地の所在及び地番
地目欄 敷地権の目的である土地の地目
地積欄 敷地権の目的である土地の地積
登記の日付欄 敷地権に係る登記の年月日
敷地権の目的である土地の表題部の登記事項に変更又は錯誤若しくは遺漏があることによる建物の表題部の変更の登記又は更正の登記の登記原因及びその日付
区分建物の表題部
専有部分の建物の表示欄 不動産番号欄 不動産番号
家屋番号欄 区分建物の家屋番号
建物の名称欄 区分建物の名称
種類欄 区分建物の種類
構造欄 区分建物の構造
床面積欄 区分建物の床面積
原因及びその日付欄 区分建物に係る登記の登記原因及びその日付
共用部分である旨
団地共用部分である旨
建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記における建物の種類、構造及び床面積が設計書による旨
登記の日付欄 区分建物に係る登記の年月日
附属建物の表示欄 符号欄 附属建物の符号
種類欄 附属建物の種類
構造欄 附属建物の構造
附属建物が区分建物である場合におけるその一棟の建物の所在、構造、床面積及び名称
附属建物が区分建物である場合における敷地権の内容
床面積欄 附属建物の床面積
原因及びその日付欄 附属建物に係る登記の登記原因及びその日付
附属建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記における建物の種類、構造及び床面積が設計書による旨
登記の日付欄 附属建物に係る登記の年月日
敷地権の表示欄 土地の符号欄 敷地権の目的である土地の符号
敷地権の種類欄 敷地権の種類
敷地権の割合欄 敷地権の割合
原因及びその日付欄 敷地権に係る登記の登記原因及びその日付
附属建物に係る敷地権である旨
登記の日付欄 敷地権に係る登記の年月日
所有者欄 所有者及びその持分

 とあり、敷地権の種類は、区分建物(専有部分)の表題部の敷地権の表示欄に記載されていて、敷地権の目的である土地の表示欄には、登記されていないので、誤りです。

 


2 敷地権は、区分建物と分離して処分することができない敷地利用権であって、登記できる権利でなければならないが、現に登記されている必要はない。

X 誤っている。 敷地権とは、登記されている敷地利用権のこと。 問2 の選択肢3も参考に。
 平成21年マンション管理士試験 「問18」 、平成19年マンション管理士試験 「問18」 平成18年マンション管理士試験 「問18」 。
敷地利用権は区分所有法第22条
 「(分離処分の禁止)
 第二十二条  敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
   2  前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第十四条第一項から第三項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。
   3  前二項の規定は、建物の専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合に準用する。」
 とあり、
 1項により、敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、原則:専有部分と分離処分が禁止されます。
しかし、登記制度は任意です
 そこで、区分所有法第23条
 「(分離処分の無効の主張の制限)
 第二十三条  前条第一項本文(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定に違反する専有部分又は敷地利用権の処分については、その無効を善意の相手方に主張することができない。ただし、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)の定めるところにより分離して処分することができない専有部分及び敷地利用権であることを登記した後に、その処分がされたときは、この限りでない。 」
 とあり、
 不動産登記法で登記をすると完全に専有部分と敷地利用権の分離処分の禁止が図られます。
 そこで、不動産登記法第44条
 「 (建物の表示に関する登記の登記事項)
 第四十四条  建物の表示に関する登記の登記事項は、第二十七条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
     一  建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番(区分建物である建物にあっては、当該建物が属する一棟の建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番)
     二  家屋番号
     三  建物の種類、構造及び床面積
     四  建物の名称があるときは、その名称
     五  附属建物があるときは、その所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番(区分建物である附属建物にあっては、当該附属建物が属する一棟の建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番)並びに種類、構造及び床面積
     六  建物が共用部分又は団地共用部分であるときは、その旨
     七  建物又は附属建物が区分建物であるときは、当該建物又は附属建物が属する一棟の建物の構造及び床面積
     八  建物又は附属建物が区分建物である場合であって、当該建物又は附属建物が属する一棟の建物の名称があるときは、その名称
     九  
建物又は附属建物が区分建物である場合において、当該区分建物について区分所有法第二条第六項 に規定する敷地利用権(登記されたものに限る。)であって、区分所有法第二十二条第一項 本文(同条第三項 において準用する場合を含む。)の規定により区分所有者の有する専有部分と分離して処分することができないもの(以下「敷地権」という。)があるときは、その敷地権
   2  前項第三号、第五号及び第七号の建物の種類、構造及び床面積に関し必要な事項は、法務省令で定める。」 とあり、
 1項9号によると、登記された敷地敷地利用権を動産登記法では「敷地権」と呼んでいますから、設問の「敷地権は、区分建物と分離して処分することができない敷地利用権であって、登記できる権利でなければならない」は正しいですが、登記されないと敷地権にはなりませんから、後半が、誤りです。
 登記官が敷地権の目的である土地の登記記録に、所有権敷地権とか、所有権x分のy敷地権とか登記します。
土地の登記記録に、敷地権として登記されると、区分建物の敷地利用権ともなり、以後、建物の専有部分と分離して処分ができなくなります。(区分所有法第22条1項)。実務上は、該当の土地の登記記録は、閉鎖されたのと同じになります。



3 区分建物が属する一棟の建物の面積及び各専有部分の面積は、いずれの面積も壁の内側線で囲まれた水平投影面積による。

X 誤っている。 一棟の建物の床面積は、壁の中心線から測るが、各専有部分(区分建物)の床面積は、壁の内のりから測る。
 建物の床面積は、不動産登記規則第115条
 「(建物の床面積)
 第百十五条
 
建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線区分建物にあっては、壁その他の区画の内側線)で囲まれた部分の水平投影面積により、平方メートルを単位として定め、一平方メートルの百分の一未満の端数は、切り捨てるものとする。」 とあり、
 少しばかり分かりにくいのですが、1棟の建物全体の床面積は、各階ごとの壁その他の区画の中心線で測り、これが1棟の建物の表示(標題部)に記載され、不動産登記法では、区分所有法での専有部分を1棟の建物を区分した建物(区分建物)と捉えており、専有部分(区分建物)にあっては、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積により測り、この床面積が、専有部分の建物の表示に記載されていますので、設問は、誤っています。



4 共用部分である旨の登記の申請が、当該区分建物の所有権の登記名義人からなされ、登記官がその申請を受理し、それに基づきその旨の登記をするときは、職権で、当該区分建物についてなされている権利に関する登記を抹消しなければならない。

○ 正しい。 平成20年マンション管理士試験 「問18」
 共用部分である旨の登記の申請は、不動産登記法第58条
 「(共用部分である旨の登記等)
 第五十八条  共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記に係る建物の表示に関する登記の登記事項は、第二十七条各号(第三号を除く。)及び第四十四条第一項各号(第六号を除く。)に掲げるもののほか、次のとおりとする。
     一  共用部分である旨の登記にあっては、当該共用部分である建物が当該建物の属する一棟の建物以外の一棟の建物に属する建物の区分所有者の共用に供されるものであるときは、その旨
     二  団地共用部分である旨の登記にあっては、当該団地共用部分を共用すべき者の所有する建物(当該建物が区分建物であるときは、当該建物が属する一棟の建物)
   2  共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記は、当該共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記をする建物の表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。
   3  共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記は、当該共用部分又は団地共用部分である建物に所有権等の登記以外の権利に関する登記があるときは、当該権利に関する登記に係る権利の登記名義人(当該権利に関する登記が抵当権の登記である場合において、抵当証券が発行されているときは、当該抵当証券の所持人又は裏書人を含む。)の承諾があるとき(当該権利を目的とする第三者の権利に関する登記がある場合にあっては、当該第三者の承諾を得たときに限る。)でなければ、申請することができない。
   
4  登記官は、共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記をするときは、職権で、当該建物について表題部所有者の登記又は権利に関する登記を抹消しなければならない。
   5  第一項各号に掲げる登記事項についての変更の登記又は更正の登記は、当該共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の所有者以外の者は、申請することができない。
   6  共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物について共用部分である旨又は団地共用部分である旨を定めた規約を廃止した場合には、当該建物の所有者は、当該規約の廃止の日から一月以内に、当該建物の表題登記を申請しなければならない。
   7  前項の規約を廃止した後に当該建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、当該建物の表題登記を申請しなければならない。」 
とあり、
 4項によれば、 「登記官は、共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記をするときは、職権で、当該建物について表題部所有者の登記又は権利に関する登記を抹消しなければならない」に該当して、正しい。

 専有部分であっても規約で共用部分(団地共用部分)とされた建物の部分は、登記をしないと第三者に対して対抗できませんから、(区分所有法第4条2項後半)必ず登記してください。この登記により、共用部分は表題部の所有者が抹消され、権利部もなくなり、以後専有部分の処分に従うことになります。(区分所有法第15条1項)


答え:4。 選択肢1は迷うかも。
       {ある受験者の感想…選択肢3は、知識が不完全で○かと思ったが、4にした。}
        別の感想:少し古い過去問をやっていた人には、楽勝の問題の様ですね。


《タグ》敷地権の登記、 床面積の測りかた、 共用部分の登記。  区分所有法 + 不動産登記法

問19

〔問 19〕 マンション建替組合(この問いにおいて「建替組合」という。)が施行するマンション建替事業に関する次の記述のうち、マンションの建替えの円滑化等に関する法律(この問いにおいて「マンション建替法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。

1 総会は、総組合員の3分の2以上の出席がなければ議事を開くことができず、その議事は、マンション建替法に特別の定めがある場合を除くほか、出席者の議決権の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

X 誤っている。 総組合員の半数以上で開催できる。 マンションの建替えの円滑化等に関する法律からも例年1問は出題されるから、眼を通しておくこと。
 別途、サイトもあります。

 総会の議事は、マンションの建替えの円滑化等に関する法律第29条
 「(総会の議事等)
 第二十九条  
総会は、総組合員の半数以上の出席がなければ議事を開くことができず、その議事は、この法律に特別の定めがある場合を除くほか、出席者の議決権の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる
   2  議長は、総会において選任する。
   3  議長は、組合員として総会の議決に加わることができない。ただし、次条の規定による議決については、この限りでない。
   4  総会においては、前条第六項の規定によりあらかじめ通知した会議の目的である事項についてのみ議決することができる。」
 とあり、
 1項によれば、総会は、総組合員の半数以上の出席があれば、開催できますから、総会は、総組合員の3分の2以上の出席がなければ議事を開くことができずは、誤りです。



2 施行再建マンションの建築工事が完了したときは、遅滞なく、施行再建マンション及び施行再建マンションに関する権利について、当該施行再建マンションの区分所有権を与えられた者が必要な登記を申請しなければならない。

X 誤っている。 権利の登記は、纏めて施工者(建替組合)がする。 マンションの区分所有権を与えられた者ではない。
 設問の登記は、マンションの建替えの円滑化等に関する法律第82条
 「(施行再建マンションに関する登記)
 第八十二条  
施行者は、施行再建マンションの建築工事が完了したときは、遅滞なく、施行再建マンション及び施行再建マンションに関する権利について必要な登記を申請しなければならない
   2  施行再建マンションに関する権利に関しては、前項の登記がされるまでの間は、他の登記をすることができない。」
 とあり、
 1項によれば、必要な権利の登記をするのは、施行者(建替組合)ですから、マンションの区分所有権を与えられた者は、誤りです。



3 建替組合は、その事業に要する経費に充てるため、賦課金として参加組合員以外の組合員に対して金銭を賦課徴収することができる。

○ 正しい。
 賦課金の徴収は、マンションの建替えの円滑化等に関する法律第35条
 「(経費の賦課徴収)
 第三十五条  
組合は、その事業に要する経費に充てるため、賦課金として参加組合員以外の組合員に対して金銭を賦課徴収することができる。
   2  賦課金の額は、組合員の有する施行マンション(権利変換期日以後においては、施行再建マンション)の専有部分の位置、床面積等を考慮して公平に定めなければならない。
   3  組合員は、賦課金の納付について、相殺をもって組合に対抗することができない。
   4  組合は、組合員が賦課金の納付を怠ったときは、定款で定めるところにより、その組合員に対して過怠金を課することができる。 」
 とあり、
 1項によれば、正しい。



4 建替組合は、権利変換計画を定めるときは、審査委員の3分の2以上の同意を得なければならない。

X 誤っている。 審査委員の過半数の同意でいい。3分の2以上はいらない。
 権利変換計画を定めるときは、マンションの建替えの円滑化等に関する法律第67条
 「(審査委員の関与)
 第六十七条  
施行者は、権利変換計画を定め、又は変更しようとするとき(国土交通省令で定める軽微な変更をしようとする場合を除く。)は、審査委員の過半数の同意を得なければならない。」 とあり、
 審査委員の過半数の同意でよく、3分の2以上の同意は、誤りです。


 なお、審査委員は、3人以上で構成されます。参考同第37条
 「(審査委員)
  第三十七条
   組合に、この法律及び定款で定める権限を行わせるため、
審査委員三人以上を置く。
   2 審査委員は、土地及び建物の権利関係又は評価について特別の知識経験を有し、かつ、公正な判断をすることができる者のうちから総会で選任する。
   3 前二項に規定するもののほか、審査委員に関し必要な事項は、政令で定める。」
 


答え:3。 新しい条文から出ている。条文を知っているかどうかです。
       {ある受験者の感想…消去法で3にした。}

《タグ》マンションの建替え、 議事、 賦課金の徴収、 権利変換計画の審査。  マンションの建替えの円滑化等に関する法律

問20

〔問 20〕 違反建築物等に対する措置に関する次の記述のうち、建築基準法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 特定行政庁は、建築基準法令の規定に違反することが明らかな建築工事中の共同住宅について、緊急の必要がある場合においても、通知、意見の聴取等の手続きをとらなければ、建築主、工事請負人又は工事現場管理者に対して工事の施工の停止を命ずることができない。

X 誤っている。 緊急の必要がある場合においては、手続きを省略できる。 平成23年マンション管理士試験 「問20」、 平成21年マンション管理士試験 「問20」 。
 まず、違反建築物等とは、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物や敷地です。
具体的には、建ぺい率超過、容積率超過、各種斜線制限の違反、用途制限違反、接道義務違反などのほか、建築基準法上の手続き(建築確認申請など)を行なわずに建築されたもの(無確認建築)も「違反建築物」となります。
 また、特定行政庁とは、建築基準法第2条35号
 「(用語の定義)
 第二条
 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
     三十五 
特定行政庁 建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長をいい、その他の市町村の区域については都道府県知事をいう。ただし、第九十七条の二第一項又は第九十七条の三第一項の規定により建築主事を置く市町村の区域内の政令で定める建築物については、都道府県知事とする。」 とあり、
 建築確認などをする建築主事が置かれている地方自治体の長を指しています。行政機関です。


 設問の違反建築物に対しては、建築基準法第9条
 「(違反建築物に対する措置)
 第九条
 特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対して、当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために
必要な措置をとることを命ずることができる
   2 特定行政庁は、前項の措置を命じようとする場合においては、あらかじめ、その措置を命じようとする者に対して、その命じようとする措置及びその事由並びに意見書の提出先及び提出期限を記載した
通知書を交付して、その措置を命じようとする者又はその代理人に意見書及び自己に有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。
   3 前項の通知書の交付を受けた者は、その交付を受けた日から三日以内に、特定行政庁に対して、意見書の提出に代えて公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。
   4 特定行政庁は、前項の規定による
意見の聴取の請求があつた場合においては、第一項の措置を命じようとする者又はその代理人の出頭を求めて、公開による意見の聴取を行わなければならない。
   5 特定行政庁は、前項の規定による意見の聴取を行う場合においては、第一項の規定によつて命じようとする措置並びに意見の聴取の期日及び場所を、期日の二日前までに、前項に規定する者に通知するとともに、これを公告しなければならない。
   6 第四項に規定する者は、意見の聴取に際して、証人を出席させ、かつ、自己に有利な証拠を提出することができる。
   7 特定行政庁は、緊急の必要がある場合においては、前五項の規定にかかわらず、これらに定める手続によらないで、仮に、使用禁止又は使用制限の命令をすることができる。
   8 前項の命令を受けた者は、その命令を受けた日から三日以内に、特定行政庁に対して公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。この場合においては、第四項から第六項までの規定を準用する。ただし、意見の聴取は、その請求があつた日から五日以内に行わなければならない。
   9 特定行政庁は、前項の意見の聴取の結果に基づいて、第七項の規定によつて仮にした命令が不当でないと認めた場合においては、第一項の命令をすることができる。意見の聴取の結果、第七項の規定によつて仮にした命令が不当であると認めた場合においては、直ちに、その命令を取り消さなければならない。
   
10 特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反することが明らかな建築、修繕又は模様替の工事中の建築物については、緊急の必要があつて第二項から第六項までに定める手続によることができない場合に限り、これらの手続によらないで、当該建築物の建築主又は当該工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者に対して、当該工事の施工の停止を命ずることができる。この場合において、これらの者が当該工事の現場にいないときは、当該工事に従事する者に対して、当該工事に係る作業の停止を命ずることができる。
   11 第一項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができず、かつ、その違反を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、特定行政庁は、その者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、特定行政庁又はその命じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない。
   12 特定行政庁は、第一項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、みずから義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。
   13 特定行政庁は、第一項又は第十項の規定による命令をした場合(建築監視員が第十項の規定による命令をした場合を含む。)においては、標識の設置その他国土交通省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。
   14 前項の標識は、第一項又は第十項の規定による命令に係る建築物又は建築物の敷地内に設置することができる。この場合においては、第一項又は第十項の規定による命令に係る建築物又は建築物の敷地の所有者、管理者又は占有者は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。
   15 第一項、第七項又は第十項の規定による命令については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三章(第十二条及び第十四条を除く。)の規定は、適用しない。」 
とあり、
 原則は1項や2項、4項の手続きにより、通知をだしたり、意見を聞くのですが、緊急時には、そんな悠長な手続きをとってはいられません。そこで、10項
 
「 10 特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反することが明らかな建築、修繕又は模様替の工事中の建築物については、緊急の必要があつて第二項から第六項までに定める手続によることができない場合に限り、これらの手続によらないで、当該建築物の建築主又は当該工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者に対して、当該工事の施工の停止を命ずることができる。この場合において、これらの者が当該工事の現場にいないときは、当該工事に従事する者に対して、当該工事に係る作業の停止を命ずることができる。 
により、
 通知、意見の聴取等の手続きをとらずに、建築主、工事請負人又は工事現場管理者に対して工事の施工の停止を命ずることができますから、誤りです。


2 建築監視員は、建築基準法違反の共同住宅について、緊急の必要がある場合でなければ、当該建築物の所有者等に対して、仮に、使用禁止又は使用制限の命令をすることはできない。

○ 正しい。 建築監視員では、現場を現状のままの凍結命令だけで、除去・移転・改築・増築などの命令は、緊急でなければできない。
 まず、建築監視員とは、建築基準法施行令第14条
 「(建築監視員の資格)
 第十四条
 建築監視員は、次の各号の一に該当する者でなければならない。
     一 三年以上の建築行政に関する実務の経験を有する者
     二 建築士で一年以上の建築行政に関する実務の経験を有するもの
     三 建築の実務に関し技術上の責任のある地位にあつた建築士で国土交通大臣が前各号の一に該当する者と同等以上の建築行政に関する知識及び能力を有すると認めたもの」 
です。
 そして、建築基準法第9条の2
 「(建築監視員)
 第九条の二
 
特定行政庁は、政令で定めるところにより、当該市町村又は都道府県の職員のうちから建築監視員を命じ、前条第七項及び第十項に規定する特定行政庁の権限を行なわせることができる。」 とあり、
 選択肢1で引用しました、建築基準法第9条の(違反建築物に対する措置)の内、次の7項から10項までの権限を有しています。
 「
7 特定行政庁は、緊急の必要がある場合においては、前五項の規定にかかわらず、これらに定める手続によらないで、仮に、使用禁止又は使用制限の命令をすることができる。
  8 前項の命令を受けた者は、その命令を受けた日から三日以内に、特定行政庁に対して公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。この場合においては、第四項から第六項までの規定を準用する。ただし、意見の聴取は、その請求があつた日から五日以内に行わなければならない。
  9 特定行政庁は、前項の意見の聴取の結果に基づいて、第七項の規定によつて仮にした命令が不当でないと認めた場合においては、第一項の命令をすることができる。意見の聴取の結果、第七項の規定によつて仮にした命令が不当であると認めた場合においては、直ちに、その命令を取り消さなければならない。
  10 特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反することが明らかな建築、修繕又は模様替の工事中の建築物については、緊急の必要があつて第二項から第六項までに定める手続によることができない場合に限り、これらの手続によらないで、当該建築物の建築主又は当該工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者に対して、当該工事の施工の停止を命ずることができる。この場合において、これらの者が当該工事の現場にいないときは、当該工事に従事する者に対して、当該工事に係る作業の停止を命ずることができる。」 
です。
 設問の「仮に、使用禁止又は使用制限の命令」は、7項に該当していますから、緊急の必要がある場合には、当該建築物の所有者等に対して、仮に、使用禁止又は使用制限の命令をすることができ、正しい。



3 特定行政庁は、違反建築物ではない床面積の合計が100uを超える共同住宅について、著しく保安上危険であると認める場合であっても、当該建築物の所有者等に対して、勧告をした後でなければ、除却等の命令をすることはできない。

X 誤っている。著しく保安上危険であると認める場合には、床面積が100uを超えると、除却等の命令を出せる。また、勧告の手続きは省ける。
 保安上危険であると認める場合の措置は、建築基準法第10条
 「(保安上危険な建築物等に対する措置)
 第十条
 特定行政庁は、第六条第一項第一号に掲げる建築物その他政令で定める建築物の敷地、構造又は建築設備(いずれも第三条第二項の規定により第二章の規定又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の適用を受けないものに限る。)について、損傷、腐食その他の劣化が進み、そのまま放置すれば著しく保安上危険となり、又は著しく衛生上有害となるおそれがあると認める場合においては、当該建築物又はその敷地の所有者、管理者又は占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用中止、使用制限その他保安上又は衛生上必要な措置をとることを勧告することができる。
   2 特定行政庁は、前項の勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかつた場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる。
   
3 前項の規定による場合のほか、特定行政庁は、建築物の敷地、構造又は建築設備(いずれも第三条第二項の規定により第二章の規定又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の適用を受けないものに限る。)が著しく保安上危険であり、又は著しく衛生上有害であると認める場合においては、当該建築物又はその敷地の所有者、管理者又は占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他保安上又は衛生上必要な措置をとることを命ずることができる
   4 第九条第二項から第九項まで及び第十一項から第十五項までの規定は、前二項の場合に準用する。」
 とあり、
 3項によれば、特定行政庁は、違反建築物でなくても、特殊建築物などで、その用途に供する部分の床面積が100uを超えるものが、著しく保安上危険であると認める場合には、勧告でなく、命令ができますから、誤りです。
 既存不適格建築物である共同住宅(マンション)も該当します。 (2015年 2月4日:”規模に係わらず”を削除した。加筆訂正)


4 特定行政庁がそのまま放置すれば著しく保安上危険となると認めた共同住宅の所有者等に対して保安上必要な措置を命じた場合においては、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないときであっても、行政代執行法の定めるところに従って特定行政庁が自ら当該所有者等のなすべき行為をすることはできない。

X 誤っている。特定行政庁は行政代執行ができる。
 そのまま放置すれば著しく保安上危険となると認めた共同住宅の所有者等に対して保安上必要な措置を命じた場合は、選択肢3でも引用しました、建築基準法第10条、
 「(保安上危険な建築物等に対する措置)
 第十条  特定行政庁は、第六条第一項第一号に掲げる建築物その他政令で定める建築物の敷地、構造又は建築設備(いずれも第三条第二項の規定により第二章の規定又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の適用を受けないものに限る。)について、損傷、腐食その他の劣化が進み、そのまま放置すれば著しく保安上危険となり、又は著しく衛生上有害となるおそれがあると認める場合においては、当該建築物又はその敷地の所有者、管理者又は占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用中止、使用制限その他保安上又は衛生上必要な措置をとることを
勧告することができる
   2  特定行政庁は、前項の勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかつた場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを
命ずることができる
   3  前項の規定による場合のほか、特定行政庁は、建築物の敷地、構造又は建築設備(いずれも第三条第二項の規定により第二章の規定又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の適用を受けないものに限る。)が著しく保安上危険であり、又は著しく衛生上有害であると認める場合においては、当該建築物又はその敷地の所有者、管理者又は占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他保安上又は衛生上必要な措置をとることを命ずることができる。
   
4  第九条第二項から第九項まで及び第十一項から第十五項までの規定は、前二項の場合に準用する。」 とあり、
 1項により、 特定行政庁は、保安上又は衛生上必要な措置をとることを勧告することができ、2項により、勧告を受けても、措置をとらなかつた場合は、その勧告に係る措置をとることを命ずることができます。
 それでも、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないときは、4項により、建築基準法第9条12項
 「12 特定行政庁は、第一項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、
行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、みずから義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。」 が準用されていますから、行政代執行法により、みずから義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができますから、誤りです。


答え:2  新しい箇所からの出題で根拠を探すのに、時間がかかった。選択肢2と選択肢3は判断が難しい。

《タグ》違反建築物等に対する措置、建築監視員、 行政代執行。 建築基準法 

問21

〔問 21〕 都市計画法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 市街化調整区域については、現に市街地を形成している区域には、原則として用途地域を定めなければならない。

X 誤っている。 市街化調整区域については、原則として用途地域を定めない。 都市計画法からも毎年1問はでます。参考:出題分析。 平成25年マンション管理士試験 「問21」平成24年マンション管理士試験 「問21」平成23年マンション管理士試験 「問21」、など。
 
 

 まず、市街化調整区域とは、都市計画法第7条
 「(区域区分)
 第七条
  都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分(以下「区域区分」という。)を定めることができる。ただし、次に掲げる都市計画区域については、区域区分を定めるものとする。
     一 次に掲げる土地の区域の全部又は一部を含む都市計画区域
       イ 首都圏整備法第二条第三項に規定する既成市街地又は同条第四項に規定する近郊整備地帯
       ロ 近畿圏整備法第二条第三項に規定する既成都市区域又は同条第四項に規定する近郊整備区域
       ハ 中部圏開発整備法第二条第三項に規定する都市整備区域
    二 前号に掲げるもののほか、大都市に係る都市計画区域として政令で定めるもの
   
2 市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする
   
3 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。」 とあり、
 3項にあるように、市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域です。なお、市街化調整区域は市街化を抑制すべきで、市街化を禁止をしてはいません。
 そこで、用途地域(都市計画地域内での都市計画に定める用途に応じた地域です。第一種低層住居専用地域〜工業専用地域等)は、都市計画法第13条1項7号
 「(都市計画基準)
 第十三条
     七 
地域地区は、土地の自然的条件及び土地利用の動向を勘案して、住居、商業、工業その他の用途を適正に配分することにより、都市機能を維持増進し、かつ、住居の環境を保護し、商業、工業等の利便を増進し、良好な景観を形成し、風致を維持し、公害を防止する等適正な都市環境を保持するように定めること。この場合において、市街化区域については、少なくとも用途地域を定めるものとし、市街化調整区域については、原則として用途地域を定めないものとする。」
 とあり、
 市街化区域では、地域地区を定めますが、市街化調整区域については、原則として用途地域を定めず、設問のような、「現に市街地を形成している区域には、原則として用途地域を定めなければならないの規定はありません」から、誤りです。



2 市街化区域は、すでに市街地を形成している区域であり、市街化調整区域は、おおむね10年以内に計画的に市街化を図る予定の区域である。

X 誤っている。市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域である。
 市街化区域と市街化調整区域の違いは、選択肢1でも引用しました都市計画法第7条2項及び3項
 「(区域区分)
 第七条2項、3項
   
2 市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする
   
3 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。」 とあり、
 市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域で、市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域ですから、誤りです。



3 市街地開発事業は、市街化調整区域内において、一体的に開発し、又は整備する必要がある土地の区域について定めることができる。

X 誤っている。市街地開発事業は、市街化調整区域内においては定められない。
 市街地開発事業とは、都市計画法第4条7項
 「(定義)
 第四条
   7 この法律において「
市街地開発事業」とは、第十二条第一項各号に掲げる事業をいう。」 とあり、
 引用されています、第12条は、
 「(市街地開発事業)
 第十二条  都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる事業を定めることができる。
     一  土地区画整理法 (昭和二十九年法律第百十九号)による土地区画整理事業
     二  新住宅市街地開発法 (昭和三十八年法律第百三十四号)による新住宅市街地開発事業
     三  首都圏の近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関する法律(昭和三十三年法律第九十八号)による工業団地造成事業又は近畿圏の近郊整備区域及び都市開発区域の整備及び開発に関する法律 (昭和三十九年法律第百四十五号)による工業団地造成事業
     四  都市再開発法 による市街地再開発事業
     五  新都市基盤整備法 (昭和四十七年法律第八十六号)による新都市基盤整備事業
     六  大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法 による住宅街区整備事業
     七  密集市街地整備法 による防災街区整備事業
   2  市街地開発事業については、都市計画に、市街地開発事業の種類、名称及び施行区域を定めるものとするとともに、施行区域の面積その他の政令で定める事項を定めるよう努めるものとする。
   3  土地区画整理事業については、前項に定めるもののほか、公共施設の配置及び宅地の整備に関する事項を都市計画に定めるものとする。
   4  市街地開発事業について都市計画に定めるべき事項は、この法律に定めるもののほか、別に法律で定める。
   5  第一項第二号、第三号又は第五号に掲げる市街地開発事業については、第十二条の三第一項の規定により定められる場合を除き、これらの事業に関する法律(新住宅市街地開発法第四十五条第一項 を除く。)において施行者として定められている者のうちから、当該市街地開発事業の施行予定者を都市計画に定めることができる。
   6  前項の規定により施行予定者が定められた市街地開発事業に関する都市計画は、これを変更して施行予定者を定めないものとすることができない。」 
です。
 そして、市街地開発事業を定められるのは、都市計画法第13条1項12号、
 「(都市計画基準)
 第十三条
     
十二 市街地開発事業は、市街化区域又は区域区分が定められていない都市計画区域内において、一体的に開発し、又は整備する必要がある土地の区域について定めること。」 とあり、
 市街化区域又は区域区分が定められていない都市計画区域内において定められますから、市街化調整区域内では定められず、誤りです。



4 準都市計画区域には、風致地区を定めることができる。

○ 正しい。
 まず、準都市計画区域とは、都市計画法第5条の2
 「(準都市計画区域)
 「第五条の二  都道府県は、都市計画区域外の区域のうち、相当数の建築物その他の工作物(以下「建築物等」という。)の建築若しくは建設又はこれらの敷地の造成が現に行われ、又は行われると見込まれる区域を含み、かつ、自然的及び社会的条件並びに農業振興地域の整備に関する法律(昭和四十四年法律第五十八号)その他の法令による土地利用の規制の状況その他国土交通省令で定める事項に関する現況及び推移を勘案して、そのまま土地利用を整序し、又は環境を保全するための措置を講ずることなく放置すれば、将来における一体の都市としての整備、開発及び保全に支障が生じるおそれがあると認められる一定の区域を、
準都市計画区域として指定することができる
   2  都道府県は、前項の規定により準都市計画区域を指定しようとするときは、あらかじめ、関係市町村及び都道府県都市計画審議会の意見を聴かなければならない。
   3  準都市計画区域の指定は、国土交通省令で定めるところにより、公告することによつて行う。
   4  前三項の規定は、準都市計画区域の変更又は廃止について準用する。
   5  準都市計画区域の全部又は一部について都市計画区域が指定されたときは、当該準都市計画区域は、前項の規定にかかわらず、廃止され、又は当該都市計画区域と重複する区域以外の区域に変更されたものとみなす。」
 とあり、
 都市計画区域の外であっても無秩序な開発が行われる可能性がある区域(高速道路のインター・チェンジの付近など)は,都道府県は準都市計画区域として指定し,土地利用に一定の規制をかけることができます。将来、都市計画区域に編入される可能性のある区域と考えます。

 
 

 また、風致地区とは、都市計画法第9条21項
 「第九条
   21 風致地区は、都市の風致を維持するため定める地区とする。」 です。
 そこで、地域、地区を定められるのは、都市計画法第8条
 「(地域地区)
 第八条
 
都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる地域、地区又は街区を定めることができる。
     一 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域又は工業専用地域(以下「用途地域」と総称する。)
     二 特別用途地区
     二の二 特定用途制限地域
     二の三 特例容積率適用地区
     二の四 高層住居誘導地区
     三 高度地区又は高度利用地区
     四 特定街区
     四の二 都市再生特別措置法(平成十四年法律第二十二号)第三十六条第一項の規定による都市再生特別地区、同法第八十九条の規定による居住調整地域又は同法第百九条第一項の規定による特定用途誘導地区
     五 防火地域又は準防火地域
     五の二 密集市街地整備法第三十一条第一項の規定による特定防災街区整備地区
     六 景観法(平成十六年法律第百十号)第六十一条第一項の規定による景観地区
     
七 風致地区
     八 駐車場法(昭和三十二年法律第百六号)第三条第一項の規定による駐車場整備地区
     九 臨港地区
     十 古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法(昭和四十一年法律第一号)第六条第一項の規定による歴史的風土特別保存地区
     十一 明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法(昭和五十五年法律第六十号)第三条第一項の規定による第一種歴史的風土保存地区又は第二種歴史的風土保存地区
     十二 都市緑地法(昭和四十八年法律第七十二号)第五条の規定による緑地保全地域、同法第十二条の規定による特別緑地保全地区又は同法第三十四条第一項の規定による緑化地域
     十三 流通業務市街地の整備に関する法律(昭和四十一年法律第百十号)第四条第一項の規定による流通業務地区
     十四 生産緑地法(昭和四十九年法律第六十八号)第三条第一項の規定による生産緑地地区
     十五 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第百四十三条第一項の規定による伝統的建造物群保存地区
     十六 特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法(昭和五十三年法律第二十六号)第四条第一項の規定による航空機騒音障害防止地区又は航空機騒音障害防止特別地区
   
2 準都市計画区域については、都市計画に、前項第一号から第二号の二まで、第三号(高度地区に係る部分に限る。)、第六号、第七号、第十二号(都市緑地法第五条の規定による緑地保全地域に係る部分に限る。)又は第十五号に掲げる地域又は地区を定めることができる。
   3 地域地区については、都市計画に、第一号及び第二号に掲げる事項を定めるものとするとともに、第三号に掲げる事項を定めるよう努めるものとする。
     一 地域地区の種類(特別用途地区にあつては、その指定により実現を図るべき特別の目的を明らかにした特別用途地区の種類)、位置及び区域
     二 次に掲げる地域地区については、それぞれ次に定める事項
       イ 用途地域 建築基準法第五十二条第一項第一号から第四号までに規定する建築物の容積率(延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。以下同じ。)並びに同法第五十三条の二第一項及び第二項に規定する建築物の敷地面積の最低限度(建築物の敷地面積の最低限度にあつては、当該地域における市街地の環境を確保するため必要な場合に限る。)
       ロ 第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域 建築基準法第五十三条第一項第一号に規定する建築物の建ぺい率(建築面積の敷地面積に対する割合をいう。以下同じ。)、同法第五十四条に規定する外壁の後退距離の限度(低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため必要な場合に限る。)及び同法第五十五条第一項に規定する建築物の高さの限度
       ハ 第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、準工業地域、工業地域又は工業専用地域 建築基準法第五十三条第一項第一号から第三号まで又は第五号に規定する建築物の建ぺい率
       ニ 特定用途制限地域 制限すべき特定の建築物等の用途の概要
       ホ 特例容積率適用地区 建築物の高さの最高限度(当該地区における市街地の環境を確保するために必要な場合に限る。)
       ヘ 高層住居誘導地区 建築基準法第五十二条第一項第五号に規定する建築物の容積率、建築物の建ぺい率の最高限度(当該地区における市街地の環境を確保するため必要な場合に限る。次条第十六項において同じ。)及び建築物の敷地面積の最低限度(当該地区における市街地の環境を確保するため必要な場合に限る。次条第十六項において同じ。)
       ト 高度地区 建築物の高さの最高限度又は最低限度(準都市計画区域内にあつては、建築物の高さの最高限度。次条第十七項において同じ。)
       チ 高度利用地区 建築物の容積率の最高限度及び最低限度、建築物の建ぺい率の最高限度、建築物の建築面積の最低限度並びに壁面の位置の制限(壁面の位置の制限にあつては、敷地内に道路(都市計画において定められた計画道路を含む。以下この号において同じ。)に接して有効な空間を確保して市街地の環境の向上を図るため必要な場合における当該道路に面する壁面の位置に限る。次条第十八項において同じ。)
       リ 特定街区 建築物の容積率並びに建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限
    三 面積その他の政令で定める事項
   4 都市再生特別地区、特定用途誘導地区、特定防災街区整備地区、景観地区及び緑化地域について都市計画に定めるべき事項は、前項第一号及び第三号に掲げるもののほか、別に法律で定める。」 
 とあり、
 準都市計画区域には、2項により、1項7号の風致地区を定めることができますから、正しい。



答え:4  都市計画法の市街化区域、市街化調整区域は基本です。 消去法から選択肢4は選べる。

《タグ》市街化区域、市街化調整区域、準都市計画区域、風致地区。  都市計画法

問22

〔問 22〕 貯水槽水道に関する次の記述のうち、水道法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 簡易専用水道の設置者は、給水栓における水質の検査として、給水栓における臭気、味、色、濁りに関する検査及び大腸菌に関する検査を受けなければならない。

X 誤っている。 水質の検査でも、大腸菌は、入っていない。 水道法からも、時々出題があるので、注意のこと。 平成25年マンション管理士試験 「問22」、 平成23年 マンション管理士 「問22」選択肢3 、平成22年 マンション管理士試験 「問22」 など。
 出題の意図の把握が難しい。
 まず、簡易専用水道とは、都や市町村など地方公共団体の水道から供給される水だけを水源として、その水をいったん受水槽にためてから給水する水道のうち、受水槽の有効容量の合計が10m3を超えるもの(受水槽の有効容量の合計が10m3以下なら該当しません)を「簡易専用水道」といいます。ただし、工場に設置しているなど、全く飲み水として使用しない場合も、簡易専用水道には該当しません。
 貯水槽水道の管理は、設置者(建物所有者や分譲マンションでは管理組合等)が行うこととされています。
 ビル、マンション等の貯水槽水道の管理について、その設置者の責任を水道事業者が定める供給規定上明確にし、その管理の徹底を図るために平成15年の改正水道法で設けられました。


 
 
参考:水道法第3条7項
 「(用語の定義)
 第三条
   7 この法律において「簡易専用水道」とは、水道事業の用に供する水道及び専用水道以外の水道であつて、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするものをいう。ただし、その用に供する施設の規模が政令で定める基準以下のものを除く。」

 引用されます、政令は、水道法施行令2条
 「(簡易専用水道の適用除外の基準)
 第二条
 法第三条第七項ただし書に規定する政令で定める基準は、水道事業の用に供する水道から水の供給を受けるために設けられる水槽の有効容量の合計が十立方メートルであることとする。」
 です。

 
 そこで、簡易専用水道の設置者は、水道法第三十四条の二
 
簡易専用水道の設置者は、厚生労働省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならない。
   2 簡易専用水道の設置者は、当該簡易専用水道の管理について、厚生労働省令の定めるところにより、定期に、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならない。」 
とあり、
  厚生労働省令の定めるところとは、水道法施行規則第55条
 「(管理基準)
 第五十五条
 法第三十四条の二第一項に規定する厚生労働省令で定める基準は、次の各号に掲げるものとする。
     一 水槽の掃除を一年以内ごとに一回、定期に、行うこと。
     二 水槽の点検等有害物、汚水等によつて水が汚染されるのを防止するために必要な措置を講ずること。
     三
 給水栓における水の色、濁り、臭い、味その他の状態により供給する水に異常を認めたときは、水質基準に関する省令の表の上欄に掲げる事項のうち必要なものについて検査を行うこと
     四 供給する水が人の健康を害するおそれがあることを知つたときは、直ちに給水を停止し、かつ、その水を使用することが危険である旨を関係者に周知させる措置を講ずること。」
 とあり、
 水道法施行規則第55条3号の「三 給水栓における水の色、濁り、臭い、味その他の状態により供給する水に異常を認めたときは、水質基準に関する省令の表の上欄に掲げる事項のうち必要なものについて検査を行うこと」 は、管理の基準であって、出題の「給水栓における水質検査」とは、別のようです。


 そこで、水質検査は、水道法第20条
 「(水質検査)
 第二十条
 
水道事業者は、厚生労働省令の定めるところにより、定期及び臨時の水質検査を行わなければならない。
   2 水道事業者は、前項の規定による水質検査を行つたときは、これに関する記録を作成し、水質検査を行つた日から起算して五年間、これを保存しなければならない。
   3 水道事業者は、第一項の規定による水質検査を行うため、必要な検査施設を設けなければならない。ただし、当該水質検査を、厚生労働省令の定めるところにより、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者に委託して行うときは、この限りでない。」 
とあり、
 1項によれば、水質検査は、水道事業者が行うもので、簡易専用水道の設置者は入っていないとでもいうのでしょうか?

 水道法施行規則第55条3号の簡易専用水道の設置者が行う、「給水栓における水の色、濁り、臭い、味その他の状態により供給する水に異常を認めたときは、水質基準に関する省令の表の上欄に掲げる事項のうち必要なものについて検査を行うこと」も水質検査ですから、大変曖昧な出題です。

参考:水質基準に関する省令 の表 (平成十五年五月三十日厚生労働省令第百一号) 「水質基準に関する省令」
    簡易専用水道の管理について 1.簡易専用水道の管理に係る検査の方法その他必要な事項(平成15年7月23日厚生労働省告示第262号
 水道法施行規則第56条第2項の規定に基づき、簡易専用水道の管理に係る検査の方法その他必要な事項を定め、平成15年10月1日から適用することとしました。

  追記:水質検査に、大腸菌に関する検査は入っていない、ことが出題の意図だった。



2 簡易専用水道の設置者は、水槽の掃除を、1年以内ごとに一回、定期に行うとともに、水槽の点検等有害物、汚水等によって水が汚染されるのを防止するために必要な措置を講じなければならない。

○ 正しい。
 簡易専用水道の設置者は、選択肢1でも引用しました、水道法施行規則第55条
 「(管理基準)
 第五十五条
 法第三十四条の二第一項に規定する厚生労働省令で定める基準は、次の各号に掲げるものとする。
     
一 水槽の掃除を一年以内ごとに一回、定期に、行うこと。
     
二 水槽の点検等有害物、汚水等によつて水が汚染されるのを防止するために必要な措置を講ずること
     三 給水栓における水の色、濁り、臭い、味その他の状態により供給する水に異常を認めたときは、水質基準に関する省令の表の上欄に掲げる事項のうち必要なものについて検査を行うこと。
     四 供給する水が人の健康を害するおそれがあることを知つたときは、直ちに給水を停止し、かつ、その水を使用することが危険である旨を関係者に周知させる措置を講ずること。」
 とあり、
 1号及び2号に該当し、正しい。



3 簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態に関する検査では、水槽だけでなく、その周辺の清潔の保持についても、検査の対象となっている。

○ 正しい。 
 簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態に関する検査は、水道法施行規則第56条
 「(検査)
 第五十六条 法第三十四条の二第二項の規定による検査は、一年以内ごとに一回とする。
   2 検査の方法その他必要な事項については、
厚生労働大臣が定めるところによるものとする。」 とあり、
 厚生労働大臣が定めるところを受けた、「簡易専用水道の管理について
 簡易専用水道の管理に係る検査の方法その他必要な事項(平成15年7月23日厚生労働省告示第262号)  の
  「第3 1 水槽その他当該簡易専用水道に係る施設の中に汚水等の衛生上有害なものが混入するおそれの有無についての検査
     
2 水槽及びその周辺の清潔の保持についての検査
     3 水槽内における沈積物、浮遊物質等の異常な物の有無についての検査 」
 とあり、
 簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態に関する検査では、水槽だけでなく、その周辺の清潔の保持についても、検査の対象となっていて、正しい。



4 水道事業者から供給を受ける水のみを水源としている貯水槽水道の設置者は、その水槽の有効容量の合計が10立方m以下でも、当該水道事業者の定める供給規程に基づき、水槽の管理責任を負う。

○ 正しい。
 貯水槽水道とは、水道法第14条2項5号
 「五 
貯水槽水道(水道事業の用に供する水道及び専用水道以外の水道であつて、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするものをいう。以下この号において同じ。)が設置される場合においては、貯水槽水道に関し、水道事業者及び当該貯水槽水道の設置者の責任に関する事項が、適正かつ明確に定められていること。」 とあり、
 「貯水槽水道」は、水道局からのみ供給される水を一時、ビルやマンション等の建物内に設置されている受水槽に受けて、利用者に給水する設備の総称として、平成13年に改正された水道法で定められたものです。水槽内で井戸水等と混合されて使用される施設は該当しません。
 貯水槽水道の管理は、設置者(建物所有者や分譲マンションでは管理組合等)が行うこととされています。
 そこで、貯水槽水道には,
 1.「簡易専用水道」(受水槽の有効容量が10m3を超えるもの) と
 2.「小規模貯水槽水道」(受水槽の有効容量が10m3以下のもの) 

 がありますから、 その水槽の有効容量の合計が10立方m以下でも、当該水道事業者の定める供給規程に基づき、水槽の管理責任を負う、は正しい。


答え:1。  しかし、選択肢1の「水質の検査」とは、かなり疑問のある出題だ。
       {ある受験者の感想…選択肢3は初見。○といわれれば、その通りだが、3にしてしまった。}

《タグ》簡易専用水道、水槽の検査、貯水槽水道。 水道法

問23

〔問 23〕 高さ31mを超えるマンションにおける防炎対象物品の防炎性能に関する次の記述のうち、消防法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 7階の住戸で使用される寝具は、政令で定める基準以上の防炎性能(以下、単に「防炎性能」という。)を有するものでなければならない。

X 誤っている。 寝具は、防炎対象物品に入っていない。 平成25年マンション管理士試験 「問23」、 平成24年マンション管理士試験 「問23」平成19年マンション管理士試験 「問24」。
 高層マンション(建物の高さが31メートルを超えるもの)は、避難に時間を要すること、火災拡大時の人命危険が大きいことから、消防法により、居住している階に関係なく、使用するカーテンやじゅうたん等火が広がるもととなるものを、防炎(燃えにくい)物品にしなければならないとの規制ができました。
 カーテンやじゅたんなど燃えやすい繊維製品を燃えにくくすることによって、これらが「もえぐさ」となって発生する火災を予防します。また、燃えにくくすることによって初期消火や避難など、貴重な時間を稼ぐことができます。そこで、防炎(燃えにくさ)処理又は防炎加工された防炎対象物品は、法で定められた試験に適合することが必要です。


 まず、高層建築物が、高さ31mを超える建築物は、消防法第8条の2 1項
 「第八条の二  
高層建築物(高さ三十一メートルを超える建築物をいう。第八条の三第一項において同じ。)その他政令で定める防火対象物で、その管理について権原が分かれているもの又は地下街(地下の工作物内に設けられた店舗、事務所その他これらに類する施設で、連続して地下道に面して設けられたものと当該地下道とを合わせたものをいう。以下同じ。)でその管理について権原が分かれているもののうち消防長若しくは消防署長が指定するものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちからこれらの防火対象物の全体について防火管理上必要な業務を統括する防火管理者(以下この条において「統括防火管理者」という。)を協議して定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物の全体についての消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設の管理その他当該防火対象物の全体についての防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
 (以下、略)」 
です。

 そして、高層建築物なら使用する防炎対象物品が規制されています。それが、消防法第8条の3 
 「第八条の三  高層建築物若しくは地下街又は劇場、キャバレー、旅館、病院その他の政令で定める防火対象物において使用する防炎対象物品(どん帳、カーテン、展示用合板その他これらに類する物品で政令で定めるものをいう。以下同じ。)は、政令で定める基準以上の防炎性能を有するものでなければならない。
   2  防炎対象物品又はその材料で前項の防炎性能を有するもの(以下この条において「防炎物品」という。)には、総務省令で定めるところにより、同項の防炎性能を有するものである旨の表示を附することができる。
   3  何人も、防炎対象物品又はその材料に、前項の規定により表示を附する場合及び工業標準化法 (昭和二十四年法律第百八十五号)その他政令で定める法律の規定により防炎対象物品又はその材料の防炎性能に関する表示で総務省令で定めるもの(以下この条において「指定表示」という。)を附する場合を除くほか、同項の表示又はこれと紛らわしい表示を附してはならない。
   4  防炎対象物品又はその材料は、第二項の表示又は指定表示が附されているものでなければ、防炎物品として販売し、又は販売のために陳列してはならない。
   5  第一項の防火対象物の関係者は、当該防火対象物において使用する防炎対象物品について、当該防炎対象物品若しくはその材料に同項の防炎性能を与えるための処理をさせ、又は第二項の表示若しくは指定表示が附されている生地その他の材料からカーテンその他の防炎対象物品を作製させたときは、総務省令で定めるところにより、その旨を明らかにしておかなければならない。」 
です。
 
 1項で定める政令は、 消防法施行令第4条の3
 「(防炎防火対象物の指定等)
 第四条の三  法第八条の三第一項 の政令で定める防火対象物は、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十二)項ロ及び(十六の三)項に掲げる防火対象物(次項において「防炎防火対象物」という。)並びに工事中の建築物その他の工作物(総務省令で定めるものを除く。)とする。
    2  別表第一(十六)項に掲げる防火対象物の部分で前項の防炎防火対象物の用途のいずれかに該当する用途に供されるものは、同項の規定の適用については、当該用途に供される一の防炎防火対象物とみなす。
    
3  法第八条の三第一項 の政令で定める物品は、カーテン、布製のブラインド、暗幕、じゆうたん等(じゆうたん、毛せんその他の床敷物で総務省令で定めるものをいう。次項において同じ。)、展示用の合板、どん帳その他舞台において使用する幕及び舞台において使用する大道具用の合板並びに工事用シートとする。
    4  法第八条の三第一項 の政令で定める防炎性能の基準は、炎を接した場合に溶融する性状の物品(じゆうたん等を除く。)にあつては次の各号、じゆうたん等にあつては第一号及び第四号、その他の物品にあつては第一号から第三号までに定めるところによる。
     一  物品の残炎時間(着炎後バーナーを取り去つてから炎を上げて燃える状態がやむまでの経過時間をいう。)が、二十秒を超えない範囲内において総務省令で定める時間以内であること。
     二  物品の残じん時間(着炎後バーナーを取り去つてから炎を上げずに燃える状態がやむまでの経過時間をいう。)が、三十秒を超えない範囲内において総務省令で定める時間以内であること。
     三  物品の炭化面積(着炎後燃える状態がやむまでの時間内において炭化する面積をいう。)が、五十平方センチメートルを超えない範囲内において総務省令で定める面積以下であること。
     四  物品の炭化長(着炎後燃える状態がやむまでの時間内において炭化する長さをいう。)の最大値が、二十センチメートルを超えない範囲内において総務省令で定める長さ以下であること。
     五  物品の接炎回数(溶融し尽くすまでに必要な炎を接する回数をいう。)が、三回以上の回数で総務省令で定める回数以上であること。
   5  前項に規定する防炎性能の測定に関する技術上の基準は、総務省令で定める。」 
とあり、
 消防法第8条の3 及び消防法施行令第4条の3 1項3号によれば、 防炎対象物品とは、「どん帳、カーテン、布製のブラインド、暗幕、じゆうたん等、展示用合板、舞台において使用する幕及び舞台において使用する大道具用の合板並びに工事用シートで、
寝具は入っていませんから、防炎性能は有さなくてもよく、誤りです。
 でも、寝具でも防炎性能があれば、なお良いことですが。

 
 

2 1階の住戸で使用されるカーテンであっても、防炎性能を有するものでなければならない。

○ 正しい。 高さが31m超なら、階数に関係なく防炎性能は必要。
 選択肢1で説明しましたように、防炎対象物品とは、「どん帳、カーテン、布製のブラインド、暗幕、じゆうたん等、展示用合板、舞台において使用する幕及び舞台において使用する大道具用の合板並びに工事用シート」です。
 これらに該当しますと、高層マンション(建物の高さが31メートルを超えるもの)なら、階数に関係なく、防炎性能が求められますから、1階の住戸で使用されるカーテンであっても、防炎性能を有するものでなければならず、正しい。



3 11階の住戸にスプリンクラー設備を設置した場合、当該設備の有効範囲内の部分については、防炎性能を有しないカーテンであっても使用することができる。

X 誤っている。 スプリンクラー設備で、こんな規定はない。
 選択肢1で説明しましたように、高層マンション(建物の高さが31メートルを超えるもの)なら、階数や設備(スプリンクラー)に関係なく、防炎対象物品であるカーテンには、防炎性能が求められますから、誤っています。


4 5階の住戸で使用するために、防炎性能を有する既製品のじゅうたんを購入した場合、関係者は、総務省令で定めるところにより、販売店の名称等を明らかにしておかなければならない。

X 誤っている。 販売店の名称等は防災表示とは関係がない。入っていない
 選択肢1で説明しましたように、高層マンション(建物の高さが31メートルを超えるもの)なら、5階で使用するじゅうたんは、防炎性能を有する必要があります。
 しかし、ほんとうに基準の防炎性能をもっているのかは外観だけではわかりませんから、カーテン等の防炎対象物品又はその材料で防炎性能を有するもの(防炎物品)には、表示(防炎表示)を付することになっています。 
 それが、選択肢1で引用しました、消防法第8条の3 5項
 「5  第一項の防火対象物の関係者は、当該防火対象物において使用する防炎対象物品について、当該防炎対象物品若しくはその材料に同項の
防炎性能を与えるための処理をさせ、又は第二項の表示若しくは指定表示が附されている生地その他の材料からカーテンその他の防炎対象物品を作製させたときは、総務省令で定めるところにより、その旨を明らかにしておかなければならない。」 です。
 これを受けた政令は、総務省令とは、消防法施行規則第4条の4 
 「(防炎表示等)
 第四条の四  法第八条の三第二項 の規定により防炎物品に付する防炎性能を有するものである旨の表示(以下この条及び次条において「防炎表示」という。)は、次の各号に定めるところにより付することができる。
     一  防炎表示を付する者は、消防庁長官の登録を受けた者であること。
     二  防炎表示は、別表第一の二の二に定める様式により行うこと。
     三  防炎表示は、縫付、ちよう付、下げ札等の方法により、防炎物品ごとに、見やすい箇所に行なうこと。
   2  前項第一号の登録を受けようとする者は、別記様式第一号の二の二の四の申請書に第四項の基準に適合するものである旨を証する書類を添付して、消防庁長官に申請しなければならない。
   3  消防庁長官は、第一項第一号の登録をしようとするときは、当該登録を受けようとする者の所在地を管轄する消防長にその旨を通知するものとする。この場合において、当該消防長は、当該登録について意見を述べることができる。
   4  第一項第一号の登録の基準は、消防庁長官が定める。
   5  第一項第一号の登録を受けた者(次項及び次条第一項において「登録表示者」という。)は、第二項の申請書又は添付書類(次条第二項の申込みをしたことを証する書類を含む。)に記載した事項を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を消防庁長官に届け出なければならない。ただし、軽微な変更については、この限りでない。
   6  消防庁長官は、登録表示者が次の各号の一に該当すると認めるときは、当該登録を取り消すことができる。
     一  第四項の登録の基準に適合しなくなつたとき。
     二  不正な手段により登録を受けたとき。
     三  防炎表示を適正に行なつていないとき。
   7  消防庁長官は、第一項第一号の登録又は前項の規定による登録の取消しをしたときは、その旨を公示する。
   8  法第八条の三第三項 の指定表示は、防炎性能を有する旨の表示で、同条第一項 に規定する防炎性能の基準と同等以上の防炎性能を有する防炎対象物品又はその材料に付される表示として消防庁長官が指定したものとする。
   9  法第八条の三第一項 の防火対象物の関係者は、同条第五項 に規定する
防炎性能を与えるための処理又は防炎対象物品の作製を行なわせたときは、防炎物品ごとに、見やすい箇所に、次の各号に掲げる事項を明らかにし、又は当該防炎性能を与えるための処理をし、若しくは防炎対象物品を作製した者をして防炎表示を付させるようにしなければならない
     
一  「防炎処理品」又は「防炎作製品」の文字
     二  処理をし、又は作製した者の氏名又は名称
     三  処理をし、又は作製した年月
 」 とあり
 9項によれば、防災表示は、
  一  「防炎処理品」又は「防炎作製品」の文字
  二  処理をし、又は作製した者の氏名又は名称
  三  処理をし、又は作製した年月 であり、
 設問の販売店の名称等は、防炎表示に入っていませんから、誤りです。

 
 
なお、防災表示は、防炎物品の種類によって様式が異なります。特にクリーニング(洗濯性能)は再度防炎処理が必要になる場合がありますので、ご注意ください。


答え:2  ここは、過去問題をやっていると、答えは早い。

《タグ》高層マンション、防炎対象物品、寝具、防炎表示。 消防法 

問24

〔問 24〕 マンションで行われる警備業務に関する次の記述のうち、警備業法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 マンションの警備業務の委託を受けた警備業者は、委託した者から犯罪に対する警戒強化の強い要望があれば、その警備業務に従事する警備員に公安委員会に届けていない護身用具を携帯させることができる。

X 誤っている。公安委員会に届けていない護身用具を携帯させることはできない。 平成19年マンション管理士試験 「問23」。
 警備業法からも時々は、出題がある。 なお、警備業務は、マンション標準管理委託契約には含まれてない。 それは、何故でしょうか? (管轄する役所が違うからです。)
 護身用具については、警備業法第17条
 「(護身用具)
 第十七条  警備業者及び警備員が警備業務を行うに当たつて
携帯する護身用具については、公安委員会は、公共の安全を維持するため必要があると認めるときは、都道府県公安委員会規則を定めて、警備業者及び警備員に対して、その携帯を禁止し、又は制限することができる。
   2  前条第二項の規定は警備業務を行うに当たつて携帯しようとする護身用具の届出について、第十一条第一項の規定は当該届出に係る事項の変更について準用する。この場合において、前条第二項中「用いようとする服装の色、型式」とあるのは「携帯しようとする護身用具の種類、規格」と、第十一条第一項中「主たる営業所の所在地を管轄する公安委員会」とあるのは「当該変更に係る公安委員会」と読み替えるものとする。」 
とあり、
  1項を受けた、警備業者及び警備員が携帯する護身用具の制限等に関する規則 (警視庁の場合)
 「(携帯を禁止する護身用具)
 第2条 警備業者及び讐備員が警備業務を行うに当たり携帯してはならない
護身用具は、次に掲げる護身用具(鋭利な部位がないものに限る。)以外のものとする。(以下、略)」
 とあり、
 護身用具については、警備業法第17条2項の「届出制」があり、また、警棒の長さなどにおいて厳しい制限があり、委託した者から犯罪に対する警戒強化の強い要望があっても、その警備業務に従事する警備員に公安委員会に届けていない護身用具を携帯させることはできず、誤りです。

 参考:警備業法施行規則
 「(服装及び護身用具の届出)
 第二十八条  法第十六条第二項 (法第十七条第二項 において準用する場合を含む。次条から第三十一条までにおいて同じ。)に規定する届出書の様式は、服装の届出に係る届出書にあつては別記様式第九号のとおりとし、護身用具の届出に係る届出書にあつては別記様式第十号のとおりとする。
   2  前項の届出書は、第三条第二項又は第十一条第二項の規定により経由すべきこととされる警察署長を経由して、当該警備業務の開始の日の前日までに提出しなければならない。」
 
 「第二十九条  法第十六条第二項 の内閣府令で定める事項は、服装の届出にあつては当該服装に付ける標章の位置及び型式並びに当該服装を用いて行う警備業務の内容とし、護身用具の届出にあつては護身用具の機能及び使用基準並びに当該護身用具を携帯して行う警備業務の内容とする。」



2 マンションの施設管理業務及び警備業務の委託を受けるビルメンテナンス業者が、その警備業務の全部を他の警備業者に再委託する場合、当該ビルメンテナンス業者は、警備業の認定を受ける必要がない。

X 誤っている。 警備業務の委託を受けるには、警備業の認定は必要。再委託に係わらない。
 警備業を営むには、警備業法第4条
 「(認定)
 
第四条  警備業を営もうとする者は、前条各号のいずれにも該当しないことについて、都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の認定を受けなければならない。 とあり、
 警備業の認定を受けていない会社が警備業に関わる営業行為、業務を実施することを禁じていますから、その警備業務の全部を他の警備業者に再委託する場合であっても、警備業の認定を受ける必要がありますので、誤りです。


 また、警備会社が警備業認定を受けていない他の会社に名義を貸すことも禁じています。(第13条)

 参考:BBQ様からのアドヴァイス:警察庁丁生企発第408号平成15年12月15日「警備業者に対する警備業務提供委託に関する指針について(通達)」http://www.npa.go.jp/pdc/notification/seian/seiki/seianki20031215-1.pdf
この通達の2(3)です。


3 警備業者は、マンションの警備業務を依頼した者から当該警備業務に従事する警備員に対して苦情があった場合と同様に、当該マンションの周辺住人からの苦情に対しても、適切な解決に努める義務がある。

○ 正しい。 依頼者等に近隣の住民、通行人も入る。
 苦情に対しては、警備業法第20条
 「(苦情の解決)
 第二十条  警備業者は、常に、その行う警備業務について、
依頼者等からの苦情の適切な解決に努めなければならない。 」 とあり、
  「警備業法等の解釈運用基準について」によれば、
 「警備業第20条中「
依頼者等」とは、「依頼者」の外、警備業務実施場所の周辺住民、通行者等をいう。」 とあり、
 警備業者は、警備業務を依頼した者だけでなく、当該マンションの周辺住人からの苦情に対しても、適切な解決に努める義務があり、正しい。



4 警備業者は、マンションの警備業務を委託した者からの犯罪に対する警戒強化の要望に対応するためであれば、そのマンションの警備業務に従事する警備員の服装を警察官の制服とほぼ同じものにすることができる。

X 誤っている。警備員の服装は、警察官や海上保安官の服装とは、明確に識別されなければいけない。
 警備員等の服装は、警備業法第16条
 「(服装)
 第十六条  警備業者及び警備員は、警備業務を行うに当たつては、
内閣府令で定める公務員の法令に基づいて定められた制服と、色、型式又は標章により、明確に識別することができる服装を用いなければならない。」 とあり、
 これを受けた政令は、警備業法施行規則第27条
 「(内閣府令で定める公務員)
 第二十七条  法第十六条第一項 の内閣府令で定める公務員は、警察官及び海上保安官とする。 」 
とあり、
 警備員等の服装は、例え、マンションの警備業務を委託した者からの犯罪に対する警戒強化の要望に対応するためであっても、警察官の制服とほぼ同じものにすることができませんから、誤りです。

 参考:大分県警の 「○警備業法等の解釈運用基準について」



答え:3 警備業法を特に知らなくても、常識でも答えられます。

《タグ》護身用具、 苦情対応、 服装。 警備業法

問25

*注:標準管理規約は平成28年3月に改正があったので注意の事。

〔問 25〕 規約の変更に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定並びにマンション標準管理規約(単棟型)(以下「標準管理規約」という。)によれば、適切なものはどれか。

1 ペットの飼育を容認する旨変更し、ペットの飼育をする区分所有者及び占有者に対し、他の区分所有者又は占有者からの苦情の申し出があり、当該区分所有者及び占有者が改善勧告に従わない場合には、理事会が飼育禁止を含む措置をとることができる旨定めた。

○ 適切である。
 犬や猫などペットを飼うことは、マンションの居住者全員を拘束する規約に定めることができます。しかし、ペットの飼育を容認しても、ペットの鳴き声や糞尿などで、他の居住者に迷惑がかかることもあります。 そこで、管理組合としては、苦情がくれば、理事会の対応として、迷惑をかけているペットの飼育者に改善勧告をだし、それに従わないときには、理事会が飼育禁止を含む措置をとることができる旨定めることは、適切です。
 参考;規約の設定・変更 区分所有法第31条
 「(規約の設定、変更及び廃止)
 第三十一条  規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
   2  前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。」

 また、マンション標準管理規約(単棟型)(以下、この解説では、「標準管理規約」といいます。18条 コメント
 「ペットの飼育を容認する場合
 (ペットの飼育)
  
第○条 ペット飼育を希望する区分所有者及び占有者は、使用細則及びペット飼育に関する細則を遵守しなければならない。ただし、他の区分所有者又は占有者からの苦情の申し出があり、改善勧告に従わない場合には、理事会は、飼育禁止を含む措置をとることができる。」
 *ここは、平成28年3月の標準管理規約の改正には、該当しません。

2 敷地の共有持分割合を、専有部分の床面積割合から各住戸毎に均等へと変更した。

X 適切でない。敷地の共有持分割合は、規約では変更できない。 平成26年マンション管理士試験 「問26」選択肢2。 標準管理規約のコメントもある。
 区分所有法では、各区分所有者が共有しています建物の共用部分の持分の割合や、集会に必要な議決権の割合は規約によって、原則:専有部分の床面積の割合から規約があれば、各住戸毎に均等へと変更出来ます(区分所有法第14条、第38条)が、これらと異なり、敷地の共有持分割合を規約で変更できる規定は、ありませんので、適切ではありません。
 敷地の共有持分割合は、民法の建物を正当に所有するには、下にある土地の権利も正当に有する必要があるため、マンションの分譲時に、xxx分のyyy のように決められ、これが敷地権の割合として登記簿にも記載されています。 「問18」 の登記簿も確認してください。 
 参考:区分所有法第14条
 「(
共用部分の持分の割合)
 第十四条  
各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による
   2  前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。
   3  前二項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。
   4  前三項の規定は、
規約で別段の定めをすることを妨げない。」
  区分所有法第38条
 「(議決権)
 第三十八条  
各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による。

 標準管理規約 コメント10条関係
 「コメント第10条関係
 @ 共有持分の割合については、専有部分の床面積の割合によることとする。ただし、敷地については、公正証書によりその割合が定まっている場合、それに合わせる必要がある。
   登記簿に記載されている面積は、内のり計算によるが、共有持分の割合の基準となる面積は、壁心計算(界壁の中心線で囲まれた部分の面積を算出する方法をいう。)によるものとする。
 A
敷地及び附属施設の共有持分は、規約で定まるものではなく、分譲契約等によって定まるものであるが、本条に確認的に規定したものである。なお、共用部分の共有持分は規約で定まるものである。」
  *ここは、平成28年3月の標準管理規約の改正には、該当しません。

3 理事長は、マンションの敷地及び共用部分である集会室を管理所有する旨変更した。

X 適切でない。 マンションの敷地は、管理所有できない。 また、標準管理規約では、管理所有を認めていない。 管理所有からの出題も多い。平成24年マンション管理士試験 「問6」、 平成22年マンション管理士試験 「問2」、 平成21年マンション管理士試験 「問5」など
 まず、管理所有とは、区分所有法第27条
 「 (管理所有)
 第二十七条  
管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。
   2  第六条第二項及び第二十条の規定は、前項の場合に準用する。」
 です。
 この、区分所有法第27条では、区分所有者でない管理者であっても、規約があれば、建物の共用部分(法定・規約共用部分をとわず。管理人室・集会室など)を所有することができます。
 大体、区分所有法では、建物の共用部分は、同法第11条
 「(共用部分の共有関係)
 第十一条  
共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。
   2  前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第二十七条第一項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。
   3  民法第百七十七条 の規定は、共用部分には適用しない。」
 とあり、
 1項にあるように、 「共用部分は、区分所有者全員の共有」で、これを管理者のような誰かが、所有するとはまったく矛盾した法関係です。
 一応この管理者が共用部分を所有することを認めたのは、管理者が共用部分の管理を円滑にするための規定だということにしますが、実に面倒な内容を含んでいて、詳細は、私の「超解説 区分所有法」 の第27条や第11条を読んでください。
 
 そこで、設問に戻りますが、区分所有法で管理所有が認められるのは、第27条によれば、
共用部分だけで、敷地には認められれいませんので、適切ではありません。
 また、標準管理規約では、管理所有そのものを認めていませんから、こちらも適切ではありません。(但し、規約で、共用部分については、変更はできますが。)



4 理事長は、集会に代えて、文書により毎年1回一定の時期にその事務に関する報告を行うことができる旨変更した。

X 適切でない。 管理者(理事長)は、集会で、毎年1回一定の時期にその事務に関する報告を行うことは、規約では、変更できない。 平成23年管理業務主任者試験 「問30」。 
 管理者の事務の報告は、区分所有法第43条
 「(事務の報告)
 第四十三条  
管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。 とあり、
 区分所有法では、管理者が定められていると、管理者が区分所有者を代理して職務を行います。そこで、せめて年1回は、区分所有者が集まる場で、管理者が行った事務の報告をさせようとしたものです。
 この管理者の事務報告は、必ず集会で行うことになっていて、規約による別段の定めを認めていませんから、集会に代えて、文書により毎年1回一定の時期にその事務に関する報告を行うことができる旨の変更は、できず、適切ではありません。
 また、管理者と理事長の関係は、標準管理規約 38条
 「(理事長)
 第38条 理事長は、管理組合を代表し、その業務を統括するほか、次の各 号に掲げる業務を遂行する。
     一 規約、使用細則等又は総会若しくは理事会の決議により、理事長の職 務として定められた事項
     二 理事会の承認を得て、職員を採用し、又は解雇すること。
   2 理事長は、区分所有法に定める管理者とする。
   3 理事長は、通常総会において、組合員に対し、前会計年度における管理 組合の業務の執行に関する報告をしなければならない。
   4 理事長は、理事会の承認を受けて、他の理事に、その職務の一部を委任 することができる。」
 とあり、
 2項により、管理者=理事長です。

  *標準管理規約 38条は、平成28年3月の標準管理規約の改正には、該当していますが2項は変更がありません。


 


答え:1。 基本的な出題です。 
       {ある受験者の感想…選択肢2も少し迷ったが、1にした。}

《タグ》規約の変更、 ペット、 管理所有、 敷地の変更、 管理者の事務報告。  区分所有法 + 標準管理規約

ここまで、問25


次へ次へ

最終更新日:
2017年 4月 9日:平成28年3月改正の標準管理規約に対応した。
2017年 4月 9日:「問16」に相続での預貯金について最高裁の判例の変更を入れた。
2015年 2月22日:再度内容を検討した。
2015年 2月10日:過去問題へのリンクを入れた。
2015年 2月 4日:「問20」 の規模に係わらずを、「100uを超える」、に訂正した。
2015年 1月 6日:第1稿:解説済み。
解説開始:2014年12月 3日

ホームへ戻る



*総合ページへ*映画・演劇評論へ*日記へ*楽しいゴルフへ*投稿者のページへ*写真集へ*目指せ!マンション管理士・管理業務主任者へ*「超解説 区分所有法」へ、*ヨーロッパ旅行記へ*ヨーロッパ 写真集へ*ヴェトナム、アンコール・ワット旅行記へ*スリランカとインド旅行記へ*「讃岐 広島へ帰る」へ 、*金町団地の建替闘争の記録へ ★「マンション管理士 香川事務所」へ