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平成30年(2018年) 管理業務主任者 試験問題 及び 解説

ページ1(問1より問25まで)

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謝辞:当問題の作成にあたっては、しおちゃん様、高井様のご協力を戴いております。
テキスト文への変更など、ご助力を心から感謝いたします。

※ 出題当時以後の法令等の改正には、一部は対応していません。

*試験に臨んで、お節介なアドバイス
  1.設問にあわせて、問題用紙に ○(まる)、X(ばつ)をつける。
    殆どの設問が、「正しい」か「間違い」かを訊いてきますので、設問により、問題の頭に、○かXをつけます。
    そして、各選択肢を読み、○かXをつけます。
    問題の○なりXと、選択肢の○かXが一致したものを、マークシートに記入してください。

  2.疑問な問題は、とりあえず飛ばす。
    回答の時間は限られています。
    そこで、回答として、○かXかはっきりしないものがでたら、「?」マークをつけて、次の問題に移ります。
    全部の回答が終わってから、再度戻って決定してください。

  3.複雑な問は、図を描く。
    甲、乙、A、B、Cなど対象が多い問題もでます。
    この場合、問題用紙の空いているところに、図を描いてください。
    重要な点が分かってきます。

出題者からの注意

平成30年(2018年)度 管理業務主任者試験  問題
 実施:平成30年12月 2日(日) 13時から15時まで(2時間)

次の注意事項をよく読んでから、始めてください。

(注意)
1 これは試験問題です。問題は、 1ページから37ページまで50問です。
2 試験の開始の合図と同時に、問題のページ数を確認してください。もし落丁や乱丁があった場合は、ただちに試験監督員に申し出てください。
3 解答は、別紙の解答用紙に記入してください。
4 正解は、各問題とも1つだけです。複数の解答をしたもの、判読が困難なものは、正解としません。
  解答は、解答用紙の注意事項をよく読み、所定の要領で記入してください。
5 問題中の法令等に関する部分は、平成30年4月1日現在で施行されている規定に基づいて出題されています。


*解説者:香川より...私も、出題者と同じ、略称を使います。

解説者(マンション管理士 香川)からのコメント:あやふやな出題、適切でない出題もあって、解答ができないのもあります。

  *この解説の利用方法:過去に出題された年度が、リンクされていますから、出題の仕方、解説文も参考にしてください。

  *判例や、根拠となる告示なども、リンクしていますから、これも、確認してください。


民法(債権関係)は、2020年4月1日施行で、大幅に改正があるので、注意のこと。

※  ・マンション標準管理委託契約書は、平成30年3月9日付で24条に「反社会勢力の排除」などの改正があり、平成30年度の試験から出題適用となるので注意のこと。

   ・マンション標準管理規約は、平成29年8月29日付で「民泊」で12条に改正があり、平成30年度の試験から出題適用となるので注意のこと。
    ・マンションの管理の適正化に関する指針(国土交通省告示第490号)及びマンション標準管理規約は、平成28年3月14日付で大幅な改正があった。  
   ・マンション標準管理委託契約書は、平成28年7月に改正があり、平成29年度の試験から出題適用となるので注意のこと。
   ・マンション標準管理規約は、平成16年に改正があった。また、平成23年7月にも小幅な改正があった。
   ・マンション標準管理委託契約書は、平成15年に改正があった。また、平成22年5月にも改正があった。

問1

【問1】 委任契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1.委任とは、当事者の一方が相手方のために法律行為をすることを約し、相手方がこれに対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる契約である。

X 誤っている。 委任は、原則:無償契約である。
  平成30年 マンション管理士試験 「問16」、 平成29年 管理業務主任者試験 「問6」 、平成24年 管理業務主任者試験 「問6」平成23年 管理業務主任者試験 「問2」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問2」 
 委任の成立要件は、民法第643条、
 「(委任)
  
第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
 とあり、
 委託と承諾があれば、成立します。原則、無償契約ですから、成立要件として、報酬の支払は必要なく、設問の「委任とは、当事者の一方が相手方のために法律行為をすることを約し、
相手方がこれに対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる契約である」の、「その報酬を支払うことを約すること」が誤りです。

 なお、特約があれば、受任者は報酬を請求できます(民法第648条)


 


2.受任者が、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者は、現に利益を受けている限度において受任者に対して費用の償還義務を負う。

X 誤っている。 委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。現に利益を受けている限度ではない。
  平成29年 管理業務主任者試験 「問6」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問4」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問2」 

 委任関係で、受任者が、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは民法第650条
 「(受任者による費用等の償還請求等)
  第六百五十条 
受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
 2 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
 3 受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。

 とあり、
 民法第650条1項によれば、受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができるのであり、”
委任者は、現に利益を受けている限度において受任者に対して費用の償還義務を負う”は、誤りです。


3.委任契約が解除された場合に、解除の効力は将来に向かってのみ生じる。

〇 正しい。 委任契約の解除は、賃貸借の解除と同様に、解除の効力は将来に向かってのみ生じる。

  
  委任契約の解除は、民法652条
 「(委任の解除の効力)
  第六百五十二条 第六百二十条の規定は、委任について準用する。
 とあり、
 準用されています、民法620条は、
 「(賃貸借の解除の効力)
  
第六百二十条 賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合において、当事者の一方に過失があったときは、その者に対する損害賠償の請求を妨げない。
 とあり、
 委任契約が解除された場合に、解除の効力は将来に向かってのみ生じるは、正しい。


 準用例にあがっています、賃貸借契約と同様に、多くの継続的な契約は解除しても、原則は、不遡及です。

 では、例外は?



4.受任者が、委任者に引き渡すべき金額を自己のために消費した場合でも、委任者に損害が生じていないときは、受任者は、利息を支払う義務を負わない。

X 誤っている。 委任者に損害が生じていないときでも、その消費した日以後の利息を支払わなければならない。

  受任者が、委任者に引き渡すべき金額を自己のために消費した場合は、民法第647条
 「(受任者の金銭の消費についての責任)
  
第六百四十七条 受任者は、委任者に引き渡すべき金額又はその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
 とあり、
 受任者は、委任者の損害の発生の有無に係わらず、利息を払うことになっていますから、受任者が、委任者に引き渡すべき金額を自己のために消費した場合でも、委任者に損害が生じていないときは、受任者は、利息を支払う義務を負わないは、誤りです。

 なお、民事なら利息は、5%となります。(改正 2020年4月1日から、 3% へ)



答え: 3 
 
 出だしの出題としては、難しくない。

  注:民法の債権関係は、2020年4月1日施行で、大幅に変更されますから、注してください。
    改正 民法について 参照

  *この解説の利用方法:過去に出題された年度が、リンクされていますから、出題の仕方、解説文も参考にしてください。

  *判例や、根拠となる告示なども、リンクしていますから、これも、確認してください。

《タグ》 民法 委任 原則:無償契約 費用 解除 利息の支払
問2

【問2】 AB間で、Aの所有するマンション(マンション管理適正化法第2 条第1号に規定するものをいう。以下同じ。)の 住戸甲(以下、本問において「甲」という。)をBに売却する契約(以下、本問において「本件契約」という。)が締結され、AB間の協議により、BはAに解約手付としての手付金を交付した。また、本件契約において、Aは、契約締結の日から1 か月後に代金と引換えに甲を引き渡すことが約定されていた。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1.Bが本件契約の履行に着手していない場合、Aは、Bに対し、手付金の倍額を償還することにより本件契約を解除する旨の通知を送達すれば、本件契約を解除することができる。

X 誤っている。 売主からの金銭の提供は、現実の提供が無いと、契約は解除できない。 通知の送達だけでは足りない。
  平成28年 マンション管理士試験 「問14」 、 平成25年 マンション管理士試験 「問14」  、 平成24年 管理業務主任者試験 「問45」

 このような設問では、問題用紙の片隅に、下のような、図を書き確認しましょう。

 
 
 売買での手付金の規定は、民法第557条
 「(手付)
  第五百五十七条 
買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
 2 第五百四十五条第三項の規定は、前項の場合には、適用しない

 とあり、
 適用されない、民法第545条の規定は、
 「(解除の効果)
  第五百四十五条 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
 2 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
 
3 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
 です。

 「契約の履行に着手する」までであれば、
 @買主は手付の放棄(手付流し)
 A売主は、手付の金の倍額の償還(売主の手付倍返し)
 で売買契約を解除できます。

 そこで、この条文の鍵である「契約の履行に着手」は、「客観的に外部から認識できるような形で、契約の履行行為の一部をなしたこと、または履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をしたこと」と解釈されていますが、(最高裁判所:判決 昭和40年11月24日)、具体的にはどのような内容であるのかについては、争いが多くあります。
  
 また、売主からは、受け取った手付の倍額を買主にかえせば、契約の解除ができるのですが、これには、単なる口頭の提供では足りず、
現実に金銭の提供が必要とされていますから、設問の、B(買主)が本件契約の履行に着手していない場合、A(売主)は、B(買主)に対し、手付金の倍額を償還することにより本件契約を解除する旨の通知を送達すれば、本件契約を解除することができるは、解除する旨の通知を送達だけでは、本件契約を解除することができず、誤りです。

 参考:最高裁判所 平成6年3月22日の判決要旨
 「売主が手付けの倍額を償還して売買契約を解除するためには、買主に対して右額の現実の提供をすることを要する。 」

 なお、民法第557条1項は、2020年の4月1日から、次のように、「当事者の一方」を改め、具体的に改正されます。
   「買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。



2.Aが本件契約の履行に着手していない場合、BがAに対し、手付金を放棄し、本件契約を解除する旨の意思表示をしたときは、Aは、Bに対して損害賠償を請求することができない。

〇 正しい。 解約手付による契約の解除では、損害賠償請求はできない。

 買主Bが、手付金を放棄し、本件契約を解除する旨の意思表示をしたときは、選択肢1で引用しました、民法第557条2項
 「
2 第五百四十五条第三項の規定は、前項の場合には、適用しない。
 とあり、
 民法第545条3項の規定は
 
「3 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
 とあり、
 手付放棄では、損害賠償を請求することができないため、A(売主)が本件契約の履行に着手していない場合、B(買主)がA(売主)に対し、手付金を放棄し、本件契約を解除する旨の意思表示をしたときは、A(売主)は、B(買主)に対して損害賠償を請求することができないは、正しい。

 これは、”解約手付”の規定は、債務不履行での”違約手付”でないためと解されているからです。



3.契約締結の日から 1か月後に、Aが甲の引渡しの準備をしていなかった場合でも、Bが代金の支払の準備を整えていたときは、AとBはいずれも、解約手付による解除権を行使することができない。

X 誤っている。 手付放棄や手付倍返しによる売買契約の解除をしようとする場合、たとえ自分が契約の履行に着手していたとしても、契約相手が着手していなければ、解除は可能。


 設問は、選択肢1でも紹介しました、最高裁判所:判決 昭和40年11月24日
  判決文要旨:
 「
解約手附の授受された売買契約において、当事者の一方は、自ら履行に着手した場合でも、相手方が履行に着手するまでは、民法第五五七条第一項に定める解除権を行使することができるものと解するのを相当とする
 とあり、
 この判例によると、引渡しの約束をした、契約締結の日から 1か月後に、A(売主)が甲の引渡しの準備をしていなかった場合なら、B(買主)が代金の支払の準備を整えていたときは、B(買主)からは、解約手付による解除権を行使することができるため、”AとBはいずれも、解約手付による解除権を行使することができない”は、誤りです。



4.BがAの債務不履行により売買契約を解除した場合、Bは、Aに対して手付金の返還を請求することができるが、損害賠償を請求することはできない。

X 誤っている。 解約手付金の返還と損害賠償を請求ができる。
  平成29年 マンション管理士試験 「問14」 、平成28年 マンション管理士試験 「問15」 平成27年 マンション管理士試験 「問12」 、 平成22年 マンション管理士試験、「問15」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問6」 

  債務不履行による、損害賠償なら、民法第557条とは別の民法第415条
 (債務不履行による損害賠償)
  
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。」
 とあり、
 B(買主)がA(売主)の債務不履行により売買契約を解除した場合なら、損害の賠償を請求することができます。
 そして、次の解約手付として支払った手付金の返還請求の検討ですが、これは、違約手付と異なり、解除の効果として原状の義務から、A(買主)に支払った手付金も返還請求ができますから、BがAの債務不履行により売買契約を解除した場合、Bは、Aに対して手付金の返還を請求することができるが、損害賠償を請求することはできないは、誤りです。


 参考判例:大判 大正7年8月9日。 最高裁判所 昭和24年10月4日

 なお、債務不履行には、
 @履行遅滞...履行が遅れる
 A履行不能...履行ができない
 B不完全履行...履行したがそれは債務の本質に反している
 があります。


 この民法第415条も、2020年4月1日から、下のように改正されます。
  「(1)  債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき(債務の履行が不能であるときを含む。)は、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
   (2)  (1)の債務の不履行が、契約その他の当該債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、債権者は、その債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求することができない。



答え:2

  簡単な出題かと思っていたら、選択肢4の債務不履行と、解約手付、違約手付の差まであり、解説に3時間もかかった。
  すこし、難しい。

  なお、2020年4月1日から改正される民法の条文も入れたので、参考にしてください。

《タグ》民法 解約手形 解除 倍返し 放棄 契約の履行に着手 債務不履行での損害保険と手付

問3

【問3】 債務不履行責任に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1.損害賠償額が予定されている場合において、債務不履行の事実があったときは、債権者は、原則として、損害の発生及び損害額を証明することなく、予定された賠償額を請求することができる。

〇 正しい。 これが、賠償額の予定制度である。
  平成28年 マンション管理士試験 「問15」 、 平成28年 マンション管理士試験 「問33」 選択肢4 、  平成26年 管理業務主任者試験 「問10」 、 平成14年 管理業務主任者試験 「問4」 。

 まず、債務不履行には、
 @履行遅滞...履行が遅れる
 A履行不能...履行ができない
 B不完全履行...履行したがそれは債務の本質に反している
 があります。
 そして、損害賠償額の予定は、民法第420条
 「(賠償額の予定)
  第四百二十条 
当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。
 2 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
 3 違約金は、賠償額の予定と推定する。

 です。


  この規定「賠償額の予定」が設けられたのは、債権者が債務不履行による損害の賠償を請求するにあたり、いちいち損害やその金額を証明する困難や煩わしさを排除するためです。
 そこで、「賠償額の予定」をしておくと、債務不履行があれば、債権者は、損害の有無や金銭の多少、また、債務者の責めに帰す事情などの証明を無くし、予定された賠償額を請求することができるため、損害賠償額が予定されている場合において、債務不履行の事実があったときは、債権者は、原則として、損害の発生及び損害額を証明することなく、予定された賠償額を請求することができるは、正しい。
 なお、「現実の損害」が、予定額と異なっていても、予定額になりますし、増減は請求できません。



2.損害賠償額が予定されている場合において、債務不履行の事実があったとき、債権者は、実際の損害額が予定賠償額より大きいことを立証しても賠償額の増額を請求することができない。

〇 正しい。 損害賠償額が予定されている場合には、増減は請求できない。

 選択肢1で先走って説明しましたが、選択肢1でも引用しました民法第420条1項
 「(賠償額の予定)
  第四百二十条 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、
裁判所は、その額を増減することができない
 とあり、
 損害賠償額が予定されている場合では、債権者が実際に発生した損害額が予定額よりも大きくて、それを立証しても、増額は請求できませんから、損害賠償額が予定されている場合において、債務不履行の事実があったとき、債権者は、実際の損害額が予定賠償額より大きいことを立証しても賠償額の増額を請求することができないは、正しい。
  参考:大判 明治40年2月2日



3.債務不履行により通常生ずべき損害が生じた場合、債務者が、当該債務不履行時までにその損害が生じることを予見し、又は予見することができた場合でなければ、債権者は、損害賠償を請求することができない。

X 誤っている。 通常損害なら、相当因果関係にある損害しか請求できない。 
  平成27年 マンション管理士試験 「問10」 、平成22年 マンション管理士試験 「問15」 、 平成14年 管理業務主任者試験 「問4」 

 設問が意味することが分からない人も多いと思います。
 
 債務不履行の損害賠償では、@当然に賠償の対象となる通常発生する損害(
通常損害)と、A特別の事情によって発生する損害(特別損害)の区別があります。
 それが、民法第416条
 「(損害賠償の範囲)
 第四百十六条 
債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
 2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる

 です。
 そこで、民法第416条1項での、「通常生ずべき損害(
通常損害)」は、別に「相当の因果関係に立つ損害」ともいわれ、当該債務不履行によって現実に生じた損害のうち、当該場合に特有な場合を除き、かような債務不履行があれば一般に生ず るであろうと認められる損害(債務不履行との間に社会通念上一般に考えられる相当因果関係がある損害)だけという意味です。
 言い換えれば、賠償すべき損害は、債務不履行から通常生ずべき損害のみが賠償範囲に含まれるということです。でも、その判断は、難しいですね。
 また、同条2項での、「特別の事情によって発生する損害(
特別損害)」は、1項の「通常損害」には入らないもので、債務者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、それを立証すれば、その賠償を請求することができるとしています。

 しかし、この損害賠償額を決める基本となる民法第416条1項と同2項は、「相当因果関係説」で、不法行為への類推適用、価格の高騰等も含めて、論争が多い箇所です。

 とりあえずの解答としては、債務不履行により”通常生ずべき損害”が生じた場合なら、債務者が、当該債務不履行時までにその損害が生じることを予見し、又は予見することができた場合の損害は含まれないため、誤りです。

 なお、この民法第416条も、2020年4月1日から下の様に改正されます。
  「(1) 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。(民法第416条第1項と同文)
  (2) 特別の事情によって生じた損害であっても、債務者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。



4.金銭債務の債務者は、不可抗力により期日に金銭の支払をすることができなかったときであっても、その不履行によって生じた損害の賠償責任を免れない。 

〇 正しい。 金銭債務の不履行だと、不可抗力などの言い訳ができない。
  平成28年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成28年 マンション管理士試験 「問33」 選択肢4 、 平成27年 マンション管理士試験 「問10」 、平成26年 管理業務主任者試験 「問10」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問13」 、  平成21年 マンション管理士試験 「問12」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問6」 、 平成19年 管理業務主任者試験 「問10」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成15年 管理業務主任者試験 「問9」 

 金銭債務で、期日までに支払いができなと、民法第419条
 「(金銭債務の特則)
  第四百十九条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
 2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
 
3 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
 とあり、
 民法第419条3項によれば、金銭債務の支払が遅滞したときは、その理由が不可抗力であっても、言い訳ができないとありますから、金銭債務の債務者は、不可抗力により期日に金銭の支払をすることができなかったときであっても、その不履行によって生じた損害の賠償責任を免れないは、正しい。


 なお、この民法第419条1項も、利率の変更により、2020年4月1日から改正されます。
  「
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、当該債務につき債務者が遅滞の責任を負った時の法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、その約定利率による。」


答え:3

  選択肢3 は少し難しいか。ここの解説も、時間がかかった。

 なお、2020年4月1日から改正される民法の条文も入れたので、参考にしてください。
 今年(2018年)の民法の出題を見てみると、どことなく、2020年の民法改正を前提にしているのかな?

《タグ》民法債務不履行 損害賠償額 予定 予見 金銭債務の特則

問4

【問4】 Aは、Bに対し、Aが所有するマンションの住戸甲(以下、本問において「甲」という。)に抵当権を設定する旨の代理権を授与していた。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1.Bが、Cとの間で、甲の売買契約を締結した場合において、Bの無権代理行為について表見代理が成立するときでも、Cは、Aに対して表見代理の成立を主張せず、Bに対して、無権代理人としての責任を追及することができる。

〇 正しい。 相手方(C)は、本人に対する表見代理を主張することも、無権代理人に対して責任を追及することもできる。

  平成29年 管理業務主任者試験 「問4」 、 平成28年 管理業務主任者試験 「問2」 、 平成27年 管理業務主任者試験 「問1」 、 平成27年 マンション管理士試験 「問13」 、平成22年 管理業務主任者試験 「問6」 、 平成15年 マンション管理士試験 「問13」 

  表見代理は、よく出題されている。
 
 
 
 まず、表見代理とは、民法第109条
 「(代理権授与の表示による表見代理)
  第百九条 
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない
 とあり、
 本当は、もう代理人ではないのですが、一度、本人がある者に代理権を与えたなど特別の関係があれば、代理権限のない者(無権代理人)がした行為でも、本人に対して効力を生じさせています。これは、善意・無過失の相手方を保護するための規定です。
 これを、法律上、あたかも代理権があるように振る舞ったという意味で「
表見代理」と呼んでいます。代理権が無いのにも関わらず、代理権があると示して行った行為です。
 この表見代理が成立すれば、代理行為の相手方(第三者)が、善意・無過失であれば、民法第109条により、本人に責任を負わせることができます。
 しかし、ここで、民法第117条
 「(無権代理人の責任)
 
 第百十七条 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う
 2 前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない
。」
 の規定もあります。
 つまり、無権代理人は、代理権を持っていたと証明できなければ、相手方に責任を負うことになります。


  そこで、設問の、無権代理人Bが、第三者Cとの間で、甲の売買契約を締結した場合において、無権代理人Bの無権代理行為について表見代理が成立するときでも、第三者Cは、本人Aに対して表見代理の成立を主張せず、無権代理人Bに対して、無権代理人としての責任を追及することができるかですが、これについては、最高裁判所:昭和33年6月17日の判決 があります。
 趣旨としては
、「表見代理は、善意の相手方を保護する制度であるから、表見代理が成立すると認められる場合であつても、この主張をすると否とは、相手方たる手形所持人の自由であり、所持人としては、表見代理を主張して本人の責任を問うことができるが、これを主張しないで、無権代理人に対し手形法八条の責任を問うこともできるものと解するのが相当である」 とあり、
 この判例によりますと、相手方(C)は、表見代理の主張をせずに、無権代理人(B)に対し、無権代理人としての責任を追及することができますから、正しい。


 また、最高裁判所:昭和62年7月7日の判決
 「
無権代理人の責任の要件と表見代理の要件がともに存在する場合においても、表見代理の主張をすると否とは相手方の自由であると解すべきであるから、相手方は、表見代理の主張をしないで、直ちに無権代理人に対し同法一一七条の責任を問うことができるものと解するのが相当である
 もあります。


 なお、民法第117条も、2020年4月1日から以下のように改正されます。
 「(無権代理人の責任)
  第117条
 
1 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
 2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
   一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
   二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
   三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。



2.AがBに代理権を授与した時に、Bが制限行為能力者であった場合は、Bは、代理人となることはできない。

X 誤っている。 代理人は、制限行為能力者でもなれる。
  平成22年 管理業務主任者試験 「問6」 、平成21年 管理業務主任者試験 「問5」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問7」 

  古典的な出題。

 代理人の行為能力は、民法第102条
 「(代理人の行為能力)
  
第百二条 代理人は、行為能力者であることを要しない。」
 とあります。
 この条文の趣旨は、
 @代理行為の効果はことごとく本人に帰属するから、代理人には不利益が及ばないこと、
 A本人も代理人が制限行為能力者であることを承知の上で代理権を授与した以上、後に代理行為を取り消すことを排除する必要があること
  が挙げられます。
 なお、代理人には行為能力は要求されませんが、意思能力は必要とされます。
 意思能力がないと、法律行為が成立しないためです。
  制限行為能力者である、未成年者・成年被後見人・被保佐人 ・被補助人でもなれます。代理行為の結果は、本人に帰属し、代理人を保護する必要はありませんから、A(本人)がBに代理権を授与した時に、Bが制限行為能力者であった場合でも、Bは、代理人となることができるため、誤りです。


 なお、民法第102条も、2020年4月1日から以下のように改正されます。
  「(代理人の行為能力)
  第102条
 制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。


3.Bは、Aが復代理人の選任について拒否し、かつ、やむを得ない事由がない場合でも、自己の責任で復代理人Dを選任することができる。

X 誤っている。 復代理人は、本人の承諾、またはやむを得ない事由がないと選任できない。
  平成29年 管理業務主任者試験 「問4」 、

 まず、復代理人は、代理人と共に、本人を代理しますから、変な人が復代理人となると本人は困ります。
 そこで、(任意)代理人が、また代理人(復代理人)を選任するなら、民法第104条
 「(任意代理人による復代理人の選任)
  
第百四条 委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。
 とあり、
 民法第104条によれば、復代理人を選任できるのは、
  @本人の許諾を得たとき 又は
  Aやむを得ない事由があるとき
  に限られていますから、B(代理人)は、A(本人)が復代理人の選任について拒否し、かつ、やむを得ない事由がない場合なら、自己の責任で復代理人Dを選任することができませんから、誤りです。
 

 なお、民法第104条は、2020年4月1日での改正はありません。


4.Bがやむを得ない事由により復代理人Eを選任した場合、Eは、Bの名においてBを代理する。

X 誤っている。 復代理人も、代理人でなく、本人を代理する。
  平成29年 管理業務主任者試験 「問4」 、
  
  代理人が、選択肢3で説明しましたように、民法第105条により、つまり、やむを得ない事由により復代理人Eを選任した場合なら、民法第107条
 「(復代理人の権限等)
  第百七条 
復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。
 2 復代理人は、本人及び第三者に対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。

 とあり、
 民法第107条1項によれば、復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表するとあり、この条文での「代表」は、「代理」と解されていますから、代理人Bがやむを得ない事由により復代理人Eを選任した場合、復代理人Eは、本人Aの名において本人Aを代理しますから、Eは、代理人Bの名において代理人Bを代理するは、誤りです。


  なお、民法第105条が、2020年4月1日で削除され、旧第106条は、繰り上がって第107条になり、この旧107条も、繰り上がって第106条になります。
 
  参考:旧第106条が、繰り上がり、第105条になる。
  @復代理人を選任した任意代理人の責任について定めた旧民法105条は削除
  A旧民法106条は新民法105条に繰り上げ
  B旧民法106条ただし書が引用していた「前条」が削除されたので、新民法105条ただし書では、「その選任及び監督についての責任」とはっきり書くことになった
  改正後の第105条
  「(法定代理人による復代理人の選任)
  第105条
 法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。」


答え: 1

 過去問題をやっていれば、かなり易しい。
 しかし、2020年の民法改正情報も入れているので、解説は、時間がかかった(約3時間)

《タグ》民法 無権代理 表見代理 制限行為能力者 復代理人

問5

【問5】 AとBとの間で、Aが所有するマンションの 住戸甲(以下、本問において「甲」という。)についての賃貸借契約が締結され、AはBに甲を引き渡した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1.Bが、Aの承諾を得ないで、甲をCに転貸した場合であっても、Bの行為についてAに対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、Aは、Bとの間の賃貸借契約を、無断転貸を理由として解除することができない。

〇 正しい。 判例では、背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、無断転貸を理由として解除することができない。

  平成29年マンション管理士試験 「問13」 、平成28年 管理業務主任者試験 「問40」 、 平成27年 管理業務主任者試験 「問6」 、平成26年 マンション管理士試験 「問15」、 平成25年 管理業務主任者試験 「問42」 。

 

 無断転貸、よく出題される。

  まず基本となる、転貸(又貸し)は、民法第612条
 「(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
 第六百十二条 
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない
2 
賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。」

 とあり、
 民法第612条1項によれば、賃借人は、賃貸人(大家)の承諾がないと賃借権の譲渡や転貸(又貸し)は出来ません。
 そして、同条2項によれば、賃借人は賃貸人に無断で転貸をすると、賃貸人(大家)は、契約の解除が出来るとなっています。
 この条文なら、どうして設問に「借家人Bの転貸が賃貸人Aに対する背信行為と認めるに足りない特段の事情の存在」なんて面倒なものを入れているのか、と疑問が湧きます。


 このような、単純な条文にもかかわらず、出題がある場合には、判例でこの条文の解釈が単純でなくなっていると気付けば、あなたは、もう民法では、合格圏にいます。

 この判例は、最高裁判所 昭和28年 9月25日の判決
  裁判趣旨:賃借人が賃貸人の承諾なく第三者に賃借物を使用させたときは賃貸人は常に契約を解除しうるか
       
 賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用または収益をなさしめた場合でも、賃借人の当該行為を賃貸人に対する背信的行為と認めるにたらない本件の如き特段の事情があるときは、賃貸人は民法第六一二条第二項により契約を解除することはできない。(少数意見および補足意見がある。)
 とあり、
 この判例によれば、民法第612条の根本には、賃貸人と賃借人、当事者間の個人的な信頼関係がある。そこで、単に無断転貸であっても、直ちに契約の解除はできず、賃借人に「背信的行為」がないと賃貸人の解除権は発生しないというものです。

 よって、賃借人Bが、賃貸人Aの承諾を得ないで、甲を第三者Cに転貸した場合であっても、賃借人Bの行為について賃貸人Aに対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、賃貸人Aは、賃借人Bとの間の賃貸借契約を、無断転貸を理由として解除することができないは、正しい。

 しかし、「背信的行為」ってどう判断するのでしょうか。曖昧な判決です。

 なお、民法第612条は、2020年でも改正は、ありません。


2.Bが、Aの承諾を得て、甲をCに転貸した場合、Bの債務不履行を理由としてAが賃貸借契約を解除したときは、Cの転借権も消滅する。

〇 正しい。 賃貸人の承諾を得ていても、賃借人の債務不履行での、契約解除なら、転貸借も無くなる。


 

 今度は、適法な転貸で、これは、民法第613条
 「(転貸の効果)
 第六百十三条 
賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
2 前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない

 とあります。
 
 ただし、この規定は、転借人から、賃貸人に対して、転貸借の権利があることを主張できるものとは解されていません。
 例えば、最高裁判所:平成9年2月25日の判決:
  要旨:
賃貸借が賃借人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、転貸人の転借人に対する債務の履行不能により終了する。」
 とあります。
 この判例によれば、賃借人Bが、賃貸人Aの承諾を得て、甲をCに転貸した場合、賃借人Bの債務不履行(賃料の未払など)を理由として賃貸人Aが賃貸借契約を解除したときは、転借人Cの転借権も、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に消滅すますから、正しい。


 なお、民法第613条も、2020年4月1日から以下のように改正されます。
 民法第613条の規律を次のように改めるものとする。
 「(1) 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と転貸人との間の賃貸借に基づく債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。
 (2) (1)の場合において、転借人は、転貸借契約に定めた当期の賃料を前期の賃料の弁済期以前に支払ったことをもって賃貸人に対抗することができない。
 (3) (1)及び(2)の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。
 (4) 賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、転貸人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、当該解除の当時、転貸人の債務不履行により賃貸人と転貸人との間の賃貸借を解除することができたときは、この限りでない。



3.Bが、Aの承諾を得て、甲をCに転貸した場合、Cは、Aに対して直接に義務を負う。

〇 正しい。 適法な転貸なら、転借人は、賃貸人に対して、直接に義務を負う。

 設問は、選択肢2で引用しました、民法第613条1項
 「(転貸の効果)
  
第六百十三条 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。」
 とあり、
 賃借人Bが、賃貸人Aの承諾を得て、甲を転借人Cに転貸した場合、転借人Cは、賃貸人Aに対して直接に義務を負うは、正しい。 



4.Bが、Aの承諾を得て、甲の賃借権をCに譲渡した場合、BがAに交付した敷金に関する権利義務関係は、当然にCに承継される。 

X 誤っている。 賃借権の譲渡なら、敷金は、新しい賃借人に受け継がれない。

 現行の民法では、「敷金」に関する規定がないのですが、敷金を入れていた大家(賃貸人)が変更した場合などで、新旧の大家のどちらに返還請求すればいいのか、で争いがあり、最高裁判所:昭和44年7月17日:判決では、
 「敷金は、賃貸借契約終了の際に賃借人の賃料債務不履行があるときは、その弁済として当然これに充当される性質のものであるから、建物賃貸借契約において、該建物の所有権移転に伴い賃貸人たる地位に承継があつた場合には、旧賃貸人に差し入れられた敷金は、未払賃料債務があればこれに当然充当され、残額についてその権利義務関係が新賃貸人に承継される。 」
と判断しています。
 つまり、大家(賃貸人)の地位が移転した場合は、これに伴い敷金に関する権利義務関係は新しい大家(新賃貸人)に承継されるとしています。


 しかし、賃貸人の承諾があった、適法な転貸において、賃借権が、第三者に譲渡されたとなると、今度は、最高裁判所:昭和53年12月22日:判決では、
 「
敷金は、賃貸借に従たる契約ではあるが、賃貸借とは別個の契約である。土地賃借権が賃貸人の承諾を得て旧賃借人から新賃借人に移転された場合であつても、敷金に関する敷金交付者の権利義務関係は、敷金交付者において賃貸人との間で敷金をもつて新賃借人の債務の担保とすることを約し又は新賃借人に対して敷金返還請求権を譲渡するなど特段の事情のない限り、新賃借人に承継されない。」
 と判断しています。
 つまり、賃借権の譲渡では、敷金は、特別の事情が無い限り、新しい賃借人に受け継がれないということです。賃貸人は、旧賃借人からの敷金返還に応じなければなりません。

 そこで、設問の、賃借人Bが、賃貸人Aの承諾を得て、甲の賃借権を第三者Cに譲渡した場合、旧賃借人Bが賃貸人Aに交付した敷金に関する権利義務関係は、当然には、新賃借人Cに承継されませんから、誤りです。 


 なお、敷金については、規定がなかったため、2020年4月1日施行の改正民法では、以下のように新設されます。
 改正:民法622条の2(敷金)
 1賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
   一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
   二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
 2賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。



答え: 4

 他の選択肢は、過去問題からわかるが、選択肢4 は、かなり悩む。

 ここも、2020年4月1日施行の改正民法の情報もいれたので、解説に3時間もかかる。

《タグ》民法 転貸借 解除 賃借権の譲渡

問6

【問6】 不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1.不法行為の時点で胎児であった被害者は、出生後、加害者に対して財産的損害の賠償を請求することはできない。

X 誤っている。 不法行為での財産的損害の賠償なら、胎児でも請求できる。
  
 不法行為で胎児とは、民法第721条からでここからの出題は、珍しい。

 不法行為と胎児の関係は、民法第721条
 「(損害賠償請求権に関する胎児の権利能力)
  
第七百二十一条 胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。」
 とあります。
 まず、民法を勉強し始めると、民法第3条
 「第一節 権利能力
 第三条 
私権の享有は、出生に始まる。
 2 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

 とあり、
 民法第3条1項により、人(自然人→、法人に対する言葉)が様々な権利能力を取得するのは、出生(母親の胎内から胎児の体が全部でてきたとき)から、と教わります。
 つまり、胎児には、権利能力がありません。
 
 しかしながら、これでは例えば胎児である時に父親が生命侵害など他人からの不法行為で亡くなったというような場合に、生まれてきた胎児には、損害賠償の請求ができなくなり、これでは不当な結果を招いてしまいます。
つまり、父親の死がその胎児の出生より少しでも早かった場合に、その赤ん坊は、父親の死亡よりわずか遅く生まれてきたという偶然的な事情によって、加害者に対して父親を失ったことによる損害賠償請求権を取得できないという不公平が生じてしまうということです。
 そこで民法では第721条によって例外的に、不法行為などでの損害賠償請求について胎児を生まれたものとしてみなすとしています。
 よって、民法第721条によれば、不法行為の時点で胎児であった被害者は、出生後、加害者に対して財産的損害の賠償を請求することが、
できるため、できないは、誤りです。


2.不法行為による慰謝料請求権は、被害者がこれを行使する意思を表明し、又はこれを表明したと同視すべき状況にあったときはじめて相続の対象となる。

X 誤っている。 不法行為で財産以外でも損害が発生すれば、損害の発生と同時に慰謝料請求権を取得する。被害者が表明しなくても、相続の対象となる。

  不法行為からの出題は、多い。
  平成29年 管理業務主任者試験 「問2」 、平成28年 マンション管理士試験 「問16」 、平成26年 マンション管理士試験 「問14」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問16」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問16」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問12」 、平成21年 管理業務主任者試験 「問3」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問17」、 平成16年 マンション管理士試験 「問16」 他多数。


 まず、行為者の故意または過失により、他人に損害を与えると、これは不法行為となり損害賠償責任は、民法第709条
 「(不法行為による損害賠償)
  
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 です。
 また、被害者が亡くなったときの、相続については、民法第711条
 「(近親者に対する損害の賠償)
 
 第七百十一条 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
 があります。

 そこで、設問については、最高裁判所:昭和42年11月1日の判決: があります。
  判決文:
 「
ある者が他人の故意過失によつて財産以外の損害を被つた場合には、その者は、財産上の損害を被つた場合と同様、損害の発生と同時にその賠償を請求する権利すなわち慰藉料請求権を取得し、右請求権を放棄したものと解しうる特別の事情がないかぎり、これを行使することができ、その損害の賠償を請求する意思を表明するなど格別の行為をすることを必要とするものではない。そして、当該被害者が死亡したときは、その相続人は当然に慰藉料請求権を相続するものと解するのが相当である。」
 です。
 この判決によれば、不法行為による慰謝料請求権は、被害者がこれを行使する意思を表明しなくても損害の発生と同時に慰藉料請求権を取得し、被害者が死亡すれば、その相続人は当然に慰藉料請求権を相続しますから、又はこれを表明したと同視すべき状況にあったときはじめて相続の対象となるは、誤りです。

 以前は、慰藉料請求権は一身専属権であり、被害者の請求の意思の表明があつたときはじめて相続の対象となると解したのが、変更されました。



3.使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたこと、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったことを証明できなければ、被用者に故意又は過失がなくても、使用者は、被用者がその事業の執行につき第三者に加えた損害を賠償しなければならない。

X 誤っている。 被用者に故意・過失が無ければ、不法行為は成立しないため、使用者も責任が無い。
  平成28年 マンション管理士試験 「問16」 、 平成26年 マンション管理士試験 「問14」 、 平成25年管理業務主任者試験 「問6」、 平成24年 マンション管理士試験 「問16」 、平成22年マンション管理士試験 「問16」平成21年マンション管理士試験 「問15」、 平成21年管理業務主任者試験 「問3」 、平成16年 マンション管理士試験 「問17」 など。

 被用者が損害を与えたときの使用者の責任は、民法第715条
 「(使用者等の責任)
  第七百十五条 
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない
 2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
 3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

 とあり、
 本来、責任を負うのは、不法行為を起こした加害者であるべきですが、他人を使用して、利益を得ているなら、被用者(従業員)が起こした損害の賠償責任を使用者(企業)が特別に負担すべきという考え方にたって、民法第715条はあります。

 ここでの、「被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」の解釈が、判例ではかなり広く解釈され、勤務時間外の私用車での事故も事業の執行にはいるなど、但し書きを含めて、使用者が免責されることが少なくなっています。
 使用者が被用者の選任・事業の監督について過失がなかったり、相当の注意をしても損害を免れないと認められるときは、当然、その責任を免れます。なお、免責事項に該当することの立証責任は使用者に課せられています。

 そこで、設問の、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたこと、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったことを証明できなければ、被用者に故意又は過失がなくても、使用者は、被用者がその事業の執行につき第三者に加えた損害を賠償しなければならない、の検討ですが、使用者の責任が問われるのは、選択肢1で引用しましたように、民法第709条
 「(不法行為による損害賠償)
  
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
 です。
  設問が入り組んでいて、つい使用者責任の追及かと誤解しやすいのですが、被用者に故意又は過失がなければ、不法行為そのものが成立していません。そこで、使用者責任も発生していませんので、使用者は、被用者がその事業の執行につき第三者に加えた損害を賠償しませんから、誤りです。



4.土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者がその損害を賠償する責任を負うが、当該占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

〇 正しい。 土地の工作物の瑕疵責任は、1次的には、占有者、次に所有者。
  平成27年 管理業務主任者試験 「問37」 、 平成25年管理業務主任者試験 〔問6」 、平成24年マンション管理士試験 「問16」 、 平成23年マンション管理士試験 「問2」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問16」 など

 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があるとなると、民法第717条
 「(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
  第七百十七条 
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
 2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
 3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

 です。

 民法第717条1項では、建物の設置や保存に瑕疵があり、他人に損害を与えたときは、
  @第一次としてその建物の占有者が、必要な注意をしていないと、占有者が
  A占有者が必要な注意をしていれば、第二次として所有者が、無過失でも
  損害賠償責任を負うことになっています。
 そこで、民法第717条1項により、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者がその損害を賠償する責任を負うが、当該占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならないは、正しい。


 では、マンションならどうなりますか? 参考:区分所有法第9条


答え: 4

 選択肢3 は、文章に誤魔化される!
 選択肢4 の正解は、難しくはない。

 ここの解説は、丁度 2019年 1月18日で、管理業務主任者試験の合格発表があり、「問50」 の 選択肢 ウ の出題ミスから、ブログ 「目指せ! マンション管理士・管理業務主任者」 のサイトの更新もしていたため、実に時間がかかった。(約4時間)

《タグ》民法 不法行為 胎児 慰謝料請求 相続 使用者責任 土地工作物責任

問7

*注:マンション標準管理委託契約書(以下、「標準管理委託契約書」は、平成30年3月9日付で、改正があった。


【問7】 次の記述のうち、標準管理委託契約書によれば、適切なものはいくつあるか。

ア. 基本的にマンション管理業者(マンション管理適正化法第2条第8号に規定する者をいう。以下同じ。)の管理対象部分は敷地及び共用部分等であるが、専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった配管や配線は共用部分と一体で管理を行う必要があるため、管理組合が管理を行うとされている場合において、管理組合から依頼があるときに管理委託契約に含めることも可能である。

〇 適切である。

  平成24年 管理業務主任者試験 「問7」 、平成21年 マンション管理士試験 「問33」 。

 平成30年3月9日改正でのコメントの追加箇所。

 まず、マンション標準管理規約(以下、本解説では「標準管理規約」という)も、設問のマンション標準管理委託契約書(以下、本解説では「標準管理委託契約書」という)も、民法や区分所有法などの法律ではありませんから、これに従ってやらないと、違法ですといえるものではありません。
 あくまでも国土交通省という役所が任意に、こうあったらいいと思っているだけのガイド・ライン(指針)に過ぎない存在であることは、これから、マンション管理士や管理業務主任者として行動するときには、特に注意してください。


 管理事務の内容は、標準管理委託契約書3条
 「(管理事務の内容及び実施方法)
 第3条 管理事務の内容は、次のとおりとし、別表第1から別表第4に定めるところにより実施する。
   一 事務管理業務(別表第1に掲げる業務)
   二 管理員業務(別表第2に掲げる業務)
   三 清掃業務(別表第3に掲げる業務)
   四 建物・設備管理業務(別表第4に掲げる業務)」
 とあり、
 設問に該当するのは、平成30年で追加された、標準管理委託契約書3条 コメント
 「B マンション管理業者が各区分所有者から専有部分内の設備の修繕等で対応を求められるケースがある。
 
基本的にマンション管理業者の管理対象部分は敷地及び共用部分等であるが、専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分(配管、配線等)は共用部分と一体で管理を行う必要があるため、管理組合が管理を行うとされている場合において、管理組合から依頼があるときに本契約に含めることも可能である。
 また、こうした業務以外にもマンション管理業者によって専有部分内を対象とする業務が想定されるが、費用負担をめぐってトラブルにならないよう、基本的に便益を受ける者が費用を負担することに留意した契約方法とする必要がある。」
 とあり、
 基本的にマンション管理業者の管理対象部分は敷地及び共用部分等であるが、専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった配管や配線は共用部分と一体で管理を行う必要があるため、管理組合が管理を行うとされている場合において、管理組合から依頼があるときに管理委託契約に含めることも可能であるは、適切です。

 専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分などは、規約との関係で、重要です。



イ. マンション管理業者は、管理組合の組合員等に関する個人情報について、その適正な取扱いを確保しなければならない。

〇 適切である。 個人情報の取扱いは、気を付けること。
 平成28年 管理業務主任者試験 「問8」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問8」 、

 管理業者の個人情報の取扱いは、標準管理委託契約書16条は、平成30年の改正箇所です。
 「(守秘義務等)
 第 16 条 乙(注:管理業者)及び乙の従業員は、正当な理由がなく、管理事務に関して知り得た甲(注:管理組合)及び甲の組合員等の秘密を漏らしてはならない。この契約が終了した後においても、同様 とする。
 
2 乙(注:管理業者)は、甲(注:管理組合)の組合員等に関する個人情報について、その適正な取扱いを確保しなけれ ばならない。
 とあり、
 標準管理委託契約書16条2項によれば、マンション管理業者は、管理組合の組合員等に関する個人情報について、その適正な取扱いを確保しなければならないは、適切です。

 しかし、適切な取り扱いの”確保”って、どのようにするのでしょうか?

 標準管理委託契約書16条2項は、改正前は「乙(「マンション管理業者)は、甲(管理組合)の組合員等に関する個人情報について、その適正な取扱いの確保に”
努めなければならない”、でした。


ウ. マンション管理業者は、管理組合に対し、自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員ではないことを確約するが、管理委託契約の有効期間内に、当該確約に反する申告をしたことが判明した場合、管理組合が当該契約を解除するには、マンション管理業者に対して相当の期間を定めて催告しなければならない。

X 適切でない。 この場合、管理組合は、催告なしに、契約を解除できる。

 ここ暴力団関係の24条も、平成30年で新しく追加された箇所です。

 暴力団(反社会的勢力)関係は、標準管理委託契約書24条、
 「(反社会的勢力の排除)
  第 24 条
乙(注:管理業者)は、甲(注:管理組合)に対し、次の各号の事項を確約する。
   
一 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下これらを総称して「反社会的勢力」という。)ではないこと。
   二 自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。) が反社会的勢力ではないこと。
   三 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、本契約を締結するものではないこと。
   四 本契約の有効期間内に、自ら又は第三者を利用して、次の行為をしないこと。
     イ 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為
     ロ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を棄損する行為
 
2 乙(注:管理業者)について、本契約の有効期間内に、次の各号のいずれかに該当した場合には、甲(注:管理組合) は何らの催告を要せずして、本契約を解除することができる。
   
一 前項第 1 号又は前項第 2 号の確約に反する申告をしたことが判明した場合
   二 前項第 3 号の確約に反し契約をしたことが判明した場合
   三 前項第 4 号の確約に反する行為をした場合 」
 とあり、
 標準管理委託契約書24条1項及び2項によれば、マンション管理業者は、管理組合に対し、自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員ではないことを確約するが、管理委託契約の有効期間内に、当該確約に反する申告をしたことが判明した場合、管理組合が当該契約を解除するには、マンション管理業者に対して、
何らの催告を要せずして、本契約を解除することができるため、”相当の期間を定めて催告しなければならない”は、適切ではありません。


エ. マンション管理業者は、管理組合が、管理委託契約にかかるマンションの維持又は修繕(大規模修繕を除く修繕又は保守点検等。)を外注により、当該マンション管理業者以外の業者に行わせる場合、見積書の受理を行うが、当該見積書の内容に対する助言は含まれない。

〇 適切である。 外注では、自社の儲けがないので、助言まではしない。

 ここも、平成30年で新しく追加された箇所です。

 この、作業内容は、別表第1 1  



 とあり、
  コメント
 28 別表第1 1(3)関係
 @ 長期修繕計画案の作成及び見直しは、長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン、長期修繕計画作成ガイドラインコメント(平成 20 年6月国土交通省公表)を参考にして作成することが望ましい。
 A 長期修繕計画案の作成業務(長期修繕計画案の作成のための建物等劣化診断業務を含む。)以外にも、必要な年度に特別に行われ、業務内容の独立性が高いという業務の性格から、以下の業務をマンション管理業者に委託するときは、本契約とは別個の契約にすることが望ましい。
   一 修繕工事の前提としての建物等劣化診断業務(耐震診断を含む。)
   二 大規模修繕工事実施設計及び工事監理業務
   三 建物・設備の性能向上に資する改良工事の企画又は実施の調整(耐震改修工事、防犯化工事、バリアフリー化工事、IT化工事等)
   四 マンション建替え支援業務
 B 1(3)三の「本マンションの維持又は修繕(大規模修繕を除く修繕又は保守点検等)を外注により乙以外の業者に行わせる場合」とは、本契約以外に管理組合が自ら本マンションの維持又は修繕(日常の維持管理として管理費を充当して行われる修繕、保守点検、清掃等)を第三者に外注する場合をいう。
 C 1(3)三の「大規模修繕」とは、建物の全体又は複数の部位について、修繕積立金を充当して行う計画的な修繕又は特別な事情により必要となる修繕等をいう。
 D 1(3)三の「見積書の受理」には、見積書の内容に対する助言等は含まれない。
 とあり、
 別表第1 1(3)関係 コメントDによれば、
 マンション管理業者は、管理組合が、管理委託契約にかかるマンションの維持又は修繕(大規模修繕を除く修繕又は保守点検等。)を外注により、当該マンション管理業者以外の業者に行わせる場合、見積書の受理を行うが、当該見積書の内容に対する助言は含まれないは、適切です。

 まあ、管理業者にすれば、自社が引き受けない修繕工事は、儲けがないので、いまさら”助言”はしないということです。



一つ
二つ
三つ
四つ


答え: 3 適切なものは、 ア、イ、エ の3つ
     個数問題となると、正解率は低くなる。 改正文を読んでいないと、かなり難しい。業者と管理組合の立場を理解すること。


  しかし、出題が平成30年3月の改正箇所ばかりとは、脳が無い。
 過去から指摘していますが、出題する側としては、問題を作成する際に、改正等がある箇所は、過去問題にとらわれずに作れますから、簡単に飛びつきます。

《タグ》標準管理委託契約書 コメント 一体管理 個人情報の保護 暴力団の排除 他社の見積書

問8

*注:マンション標準管理委託契約書(以下、「標準管理委託契約書」は、平成30年3月9日付で、改正があった。


【問8】 マンションの維持又は修繕に関する企画又は実施の調整の業務に関する次の記述のうち、標準管理委託契約書によれば、最も不適切なものはどれか。

1.マンション管理業者は、管理組合が、管理委託契約にかかるマンションの維持又は修繕(大規模修繕を除く修繕又は保守点検等。)を外注により、当該マンション管理業者以外の業者に行わせる場合、実施の確認を行うこととされているが、当該実施の確認は、管理員が外注業務の完了の立会いにより確認できる内容のものをいう。

〇 適切である。 管理員の確認作業は、常に立ち会わない程度の内容。

 この設問も、平成30年3月の改正箇所。 前の 「問7」  選択肢エ も参考に。

 設問は、別表第1 1 (3)
 「(3) 本マンション(専有部分を除く。以下同じ。)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整
   一 乙(注:管理業者)は、甲(注:管理組合)の長期修繕計画の見直しのため、管理事務を実施する上で把握した本マンションの劣化等の状況に基づき、当該計画の修繕工事の内容、実施予定時期、工事の概算費用等に、改善の必要があると判断した場合には、書面をもって甲(注:管理組合)に助言する。
   二 長期修繕計画案の作成業務及び建物・設備の劣化状況等を把握するための調査・診断を実施し、その結果に基づき行う当該計画の見直し業務を実施する場合は、本契約とは別個の契約とする。
   
三 乙(注:管理業者)は、甲(注:管理組合)が本マンションの維持又は修繕(大規模修繕を除く修繕又は保守点検等。)を外注により乙(注:管理業者)以外の業者に行わせる場合の見積書の受理、発注補助、実施の確認を行う。
 なお、「実施の確認」とは、別表第2 2(3)一に定める管理員が外注業務の完了の立会いにより確認できる内容のものをいう
。」
 とあり、
 設問の前半、マンション管理業者は、管理組合が、管理委託契約にかかるマンションの維持又は修繕(大規模修繕を除く修繕又は保守点検等。)を外注により、当該マンション管理業者以外の業者に行わせる場合、実施の確認を行うこととされているは、適切です。
 そして、設問の後半、当該実施の確認は、管理員が外注業務の完了の立会いにより確認できる内容のものをいうも、別表第1 1 (3) 3号により、適切です。



2.マンション管理業者は、管理組合の長期修繕計画の見直しのため、管理事務(マンション管理適正化法第 2条第6 号に規定するものをいう。以下同じ。)を実施する上で把握したマンションの劣化等の状況に基づき、当該計画の修繕工事の内容に改善の必要があると判断した場合には、書面又は口頭により当該管理組合に助言をする。

X 適切でない。 助言は、必ず書面で行うこと。 口頭ではダメ。
  平成29年 管理業務主任者試験 「問8」 、平成29年 管理業務主任者試験 「問26」 、平成20年 管理業務主任者試験 「問7」 、 平成19年 管理業務主任者試験 「問9」 

 設問は、選択肢1でも引用しました、別表第1 1 (3)
 「(3) 本マンション(専有部分を除く。以下同じ。)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整
   
一 乙(注管理業者)は、甲(注:管理組合)の長期修繕計画の見直しのため、管理事務を実施する上で把握した本マンションの劣化等の状況に基づき、当該計画の修繕工事の内容、実施予定時期、工事の概算費用等に、改善の必要があると判断した場合には、書面をもって甲(注:管理組合)に助言する。」
 とあり、
 マンション管理業者は、管理組合の長期修繕計画の見直しのため、管理事務を実施する上で把握したマンションの劣化等の状況に基づき、当該計画の修繕工事の内容に改善の必要があると判断した場合には、
書面をもって当該管理組合に助言をしますから、書面又は口頭により当該管理組合に助言をするの、口頭は、適切ではありません。

 通常、契約は自由ですが、国家がからむ規制が厳しいマンション管理のビジネスの世界では、口頭で許されていることはほとんどありません。



3.長期修繕計画案の作成業務以外にも、必要な年度に特別に行われ、業務内容の独立性が高いという業務の性格から、建物・設備の性能向上に資する改良工事の企画又は実施の調整の業務をマンション管理業者に委託するときは、管理委託契約とは別個の契約にすることが望ましい。

〇 適切である。 管理会社との契約には、全ての作業がはいっているわけではない。
  平成29年 管理業務主任者試験 「問26」 、 平成28年 管理業務主任者試験 「問9」

 設問は、コメント
 「28 別表第1 1(3)関係
  @ 長期修繕計画案の作成及び見直しは、長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン、長期修繕計画作成ガイドラインコメント(平成 20 年6月国土交通省公表)を参考にして作成することが望ましい。
  
A 長期修繕計画案の作成業務(長期修繕計画案の作成のための建物等劣化診断業務を含む。)以外にも、必要な年度に特別に行われ、業務内容の独立性が高いという業務の性格から、以下の業務をマンション管理業者に委託するときは、本契約とは別個の契約にすることが望ましい。
    一 修繕工事の前提としての建物等劣化診断業務(耐震診断を含む。)
    二 大規模修繕工事実施設計及び工事監理業務
    
三 建物・設備の性能向上に資する改良工事の企画又は実施の調整(耐震改修工事、防犯化工事、バリアフリー化工事、IT化工事等)
    四 マンション建替え支援業務」
 とあり、
 当コメントによれば、長期修繕計画案の作成業務以外にも、必要な年度に特別に行われ、業務内容の独立性が高いという業務の性格から、建物・設備の性能向上に資する改良工事の企画又は実施の調整の業務をマンション管理業者に委託するときは、管理委託契約とは別個の契約にすることが望ましいは、適切です。


 なお、長期修繕計画案の作成業務は、平成21年に改正があり以前の標準管理委託契約書では、管理業者の業務に入っていましたが、作成に手間がかかることが分かり、別契約となりました。つまり、別途料金を請求されます。


4.長期修繕計画案の作成及び見直しは、長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン、長期修繕計画作成ガイドラインコメント(平成20年6月国土交通省公表)を参考にして作成することが望ましい。

〇 適切である。 折角、国土交通省が作成したのだから長期修繕計画作成ガイドライン等を利用しましょう。
  平成22年 管理業務主任者試験 「問9」

 設問は、選択肢3で引用しました、コメント
 「28 別表第1 1(3)関係
  
@ 長期修繕計画案の作成及び見直しは、長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン、長期修繕計画作成ガイドラインコメント(平成 20 年6月国土交通省公表)を参考にして作成することが望ましい。
 とあり、
 長期修繕計画案の作成及び見直しは、長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン、長期修繕計画作成ガイドラインコメント(平成20年6月国土交通省公表)を参考にして作成することが望ましいは、適切です。



答え: 2 

  ここは、過去問題からも出ている。 易しい。

《タグ》標準管理委託契約書 管理委員の立ち合い 長期修繕計画の見直し 別契約 長期修繕計画作成ガイドライン

問9

*注:マンション標準管理委託契約書(以下、「標準管理委託契約書」は、平成30年3月9日付で、改正があった。


【問9】 次の記述のうち、標準管理委託契約書によれば、最も不適切なものはどれか。

1.宅地建物取引業者(宅地建物取引業法第2 条第3 号に規定する者をいう。以下同じ。)が媒介等の業務のために、管理規約等の提供・開示を求めてきた場合に、マンション管理業者が、当該宅地建物取引業者に対して、管理規約等の提供・開示を行うときは、管理規約等において宅地建物取引業者等への提供・開示に関する根拠が明確に規定されるとともに、これと整合的に管理委託契約書においてマンション管理業者による提供・開示に関して規定されることが必要である。

〇 適切である。 宅地建物取引業者との関係は、規約や管理委託契約書に規定されていること。

  平成29年 マンション管理士試験 「問32」 、 平成22年 管理業務主任者試験 「問7」 

 まず、設問の、宅地建物取引業者の規定は、標準管理委託契約書14条
 「(管理規約の提供等)
 第14条
乙(注:管理業者)は、宅地建物取引業者が、甲(注:管理組合)の組合員から、当該組合員が所有する専有部分 の売却等の依頼を受け、その媒介等の業務のために、理由を付した書面又は電磁的 方法により管理規約の提供及び別表第5に掲げる事項の開示を求めてきたときは、 甲(注:管理組合)に代わって、当該宅地建物取引業者に対し、管理規約の写しを提供し、及び別表 第5に掲げる事項について書面をもって、又は電磁的方法により開示するものとする。甲の組合員が、当該組合員が所有する専有部分の売却等を目的とする情報収集 のためにこれらの提供等を求めてきたときも、同様とする。
 2 乙(注:管理業者)は、前項の業務に要する費用を管理規約の提供等を行う相手方から受領 することができるものとする。
 3 第1項の場合において、乙(注:管理業者)は、当該組合員が管理費等を滞納しているときは、甲(注:管理組合)に代わって、当該宅地建物取引業者に対し、その清算に関する必要な措置を求めること ができるものとする。 」
 とあります。
 そして、 コメント 13 第 14 条関係
 
A 本来、宅地建物取引業者への管理規約等の提供・開示は組合員又は管理規約等の規定に基づき管理組合が行うべきものであるため、これらの事務をマンション管理 業者が行う場合にあっては、管理規約等において宅地建物取引業者等への提供・開示に関する根拠が明確に規定されるとともに、これと整合的に管理委託契約書においてマンション管理業者による提供・開示に関して規定されることが必要である。
 また、マンション管理業者が提供・開示できる範囲は、原則として管理委託契約書に定める範囲となる。管理委託契約書に定める範囲外の事項については、組合員又は管理組合に確認するよう求めるべきである。マンション管理業者が受託した管理事務の実施を通じて知ることができない過去の修繕の実施状況に関する事項等については、マンション管理業者は管理組合から情報の提供を受けた範囲でこれら の事項を開示することとなる。 なお、管理委託契約書に定める範囲内の事項であっても、「敷地及び共用部分における重大事故・事件」のように該当事項の個別性が高いと想定されるものについ ては、該当事項ごとに管理組合に開示の可否を確認し、承認を得た上で開示することとすることも考えられる。」
 とあり、
 これらによれば、宅地建物取引業者が媒介等の業務のために、管理規約等の提供・開示を求めてきた場合に、マンション管理業者が、当該宅地建物取引業者に対して、管理規約等の提供・開示を行うときは、管理規約等において宅地建物取引業者等への提供・開示に関する根拠が明確に規定されるとともに、これと整合的に管理委託契約書においてマンション管理業者による提供・開示に関して規定されることが必要であるは、適切です。

 なお、 宅地建物取引業者もマンション管理業者も監督官庁は同じ国土交通省であるため、このように便宜を図るようにしたものです。



2.マンション管理業者は、理事会支援業務や総会支援業務について、区分所有法及び管理組合の管理規約に照らし、当該管理組合の管理者以外に、正規に招集の権限があると考えられる者から当該支援業務に関する契約書に規定する業務の履行の要求があった場合は、これを拒否すべき正当な理由がある場合を除き、業務を履行すべきである。

〇 適切である。 管理組合の管理者以外に、正規に招集の権限があると考えられる者にも、支援業務をおこなうこと。
 
 ここも、平成30年3月での、追加箇所。

 設問は、コメント 29 別表第1 2関係
 「F
理事会支援業務や総会支援業務について、区分所有法及び甲(注:管理組合)の管理規約に照らし、 管理組合の管理者以外の正規に招集の権限があると考えられる者から当該支援業務に関する契約書に規定する業務の履行の要求があった場合にも、これを拒否すべき正当な理由がある場合を除き、マンション管理業者は業務を履行すべきものである。
 ただし、あらかじめ定めた理事会等支援業務の頻度を超える場合の費用負担については、別途、甲(注:管理組合)及び乙(注:管理業者)が協議して定めるものとする。」
 とあり、
 マンション管理業者は、理事会支援業務や総会支援業務について、区分所有法及び管理組合の管理規約に照らし、当該管理組合の管理者以外に、正規に招集の権限があると考えられる者から当該支援業務に関する契約書に規定する業務の履行の要求があった場合は、これを拒否すべき正当な理由がある場合を除き、業務を履行すべきであるは、適切です。

 なお、「管理組合の管理者以外の正規に招集の権限があると考えられる者」とは、区分所有法第34条3項の規定だと浮かばないとダメですよ。



3.理事会及び総会の議事録については、議事の経過の要点及びその結果を記載する必要があり、「議事の経過」とは議題、議案、討議の内容及び採決方法等を指すところ、それらの要点を記載することで足り、すべての発言を一言一句記録するものではないが、議事に影響を与える重要な発言は記録することに留意する必要がある。

〇 適切である。 議事録は、音声記録器ではない。

  ここも、平成30年3月での、追加箇所。

 設問は、コメント 29 別表第1 2関係
 「B 理事会及び総会の議事録は、管理組合の活動の重要な資料となることを踏まえ、 マンション管理業者に議事録の案の作成を委託する場合は、その内容の適正さにつ いて管理組合がチェックする等、十分留意する。
 
議事録については、議事の経過の 要点及びその結果を記載する必要がある。 「議事の経過」とは議題、議案、討議の内容及び採決方法等を指すが、それらの要点を記載することで足り、すべての発言を一言一句記録するものではない。しかし、議事に影響を与える重要な発言は記録することに留意する。
 また、マンション管理業者は、管理組合がチェックする上で十分な余裕をもって 議事録の案を提出する。」
 とあり、
 事会及び総会の議事録については、議事の経過の要点及びその結果を記載する必要があり、「議事の経過」とは議題、議案、討議の内容及び採決方法等を指すところ、それらの要点を記載することで足り、すべての発言を一言一句記録するものではないが、議事に影響を与える重要な発言は記録することに留意する必要があるは、適切です。



4.マンション管理業者が管理事務の一部を第三者に再委託した場合においては、当該マンション管理業者は、再委託した管理事務の適正な処理について、管理組合に対する責任を免れる。

X 適切でない。 再委託して、責任を逃れることはない。

 平成30年 マンション管理士試験 「問33」 、 平成29年 マンション管理士試験 「32」 、 平成28年 管理業務主任者試験 「問7」 、平成24年 管理業務主任者試験 「問9」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問8」 

 まず、マンション管理業者は、マンション管理適正化法第74条により、
 「(再委託の制限)
 
第七十四条  マンション管理業者は、管理組合から委託を受けた管理事務のうち基幹事務については、これを一括して他人に委託してはならない。
 と規定され、
 管理組合から委託をうけているマンションの管理において、 基幹事務である「管理組合の会計の収入及び支出の調定及び出納並びにマンション(専有部分を除く。)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整をいう」については、これらの”一部は再委託ができます”が、”まるごと全部を再委託してはいけない”ということになっています。

 これを受け、標準管理委託契約書4条
 「(第三者への再委託)
 第4条 乙(注:管理業者)は、前条第1号の管理事務の一部又は同条第2号、第3号若しくは第4号の 管理事務の全部若しくは一部を、第三者に再委託することができる。
 
2 乙(注:管理業者)が前項の規定に基づき管理事務を第三者に再委託した場合においては、乙(注:管理業者)は、再委託した管理事務の適正な処理について、甲(注:管理組合)に対して、責任を負う。」
 とあり、
 マンション管理業者が管理事務の一部を第三者に再委託した場合においては、当該マンション管理業者は、再委託した管理事務の適正な処理について、管理組合に対する”責任を負います”から、”責任を免れる”は、適切ではありません。



答え: 4

  易しいが、参考版にしか過ぎない標準管理委託契約書からの、しかも、コメントからの出題ばかりとは、適切な出題方法ではない。

《タグ》標準管理委託契約書 宅地建物取引業者 総会 理組合の管理者以外の正規に招集の権限があると考えられる者 議事録 管理事務の一部を第三者に再委託

問10

【問 10】 マンションの管理費の滞納等に関して、管理業務主任者(マンション管理適正化法第 2条第 9号に規定する者をいう。以下同じ。)が管理組合の管理者等に対して行った次のア〜エの説明のうち、誤っているものの組み合わせはどれか。

ア. 滞納管理費の額が60万円以下のときは、民事訴訟法に定める「少額訴訟」の手続によらなければなりません。

X 誤っている。 滞納管理費等の回収は、特に、少額訴訟でなくてもいい。
 少額訴訟からは、最近出題が多い。 平成29年 管理業務主任者試験 「問10」 、平成28年 管理業務主任者試験 「問10」 、平成27年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「10」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「10」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問10」

 平成10年1月1日から、少額(訴額が60万円以下)で、あまり複雑でない事件は、一般市民が迅速に解決することを目的として、民事訴訟法第368条以下に「少額訴訟に関する特則」が創設されています。

 それが、民事訴訟法第368条
 「 (少額訴訟の要件等)
 第三百六十八条 
簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数(注:年間10回)を超えてこれを求めることができない。
 2 少額訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、訴えの提起の際にしなければならない。
 3 前項の申述をするには、当該訴えを提起する簡易裁判所においてその年に少額訴訟による審理及び裁判を求めた回数を届け出なければならない。

 とあり、
 民事訴訟法第368条1項によれば、訴額が60万円以下なら、少額訴訟による裁判を求めることが
”できる”のであり、60万円以下でも、相手が異議を申し立てるとかで審理が複雑なら通常の裁判にしてもかまいませんから、誤りです。
 なお、少額訴訟は、サラ金などの金融業者が多く利用するので、年間10回までとしてます。

 


イ .管理費を滞納している区分所有者が死亡した場合、当該区分所有権を取得する相続人が決定していなくても、すべての相続人に対し、その法定相続分に応じて滞納管理費を請求することができます。

▲ ここの正誤は、微妙。複雑に考えないなら、正しいとする。
 平成27年 マンション管理士試験 「問16」 、平成26年 マンション管理士試験 「問16」、 平成26年 管理業務主任者試験 「問10」平成23年 マンション管理士試験 「問16」選択肢3、 平成21年マンション管理士試験 「問14」、 平成17年マンション管理士試験 「問18」

 突き詰めると、管理費債務は、全部が支払われないと目的が達せられない「可分債務」か、それとも一部の分割支払ができる「不可分債務」かでの争いがあります。

 また、遺産相続については、共有か合有かの議論があるので、出題として適切でないが、ここでは、単純に、共有説をとる最高裁判所の:昭和30年5月31日の判決
 「相続財産の共有(民法八九八条、旧法一〇〇二条)は、民法改正の前後を通じ、民法二四九条以下に規定する「共有」とその性質を異にするものではないと解すべきである。
相続財産中に金銭その他の可分債権があるときは、その債権は法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するとした新法についての当裁判所の判例(昭和二七年(オ)一一一九号同二九年四月八日第一小法廷判決、集八巻八一九頁)及び旧法についての大審院の同趣旨の判例(大正九年一二月二二日判決、録二六輯二〇六二頁)は、いずれもこの解釈を前提とするものというべきである。
 それ故に、遺産の共有及び分割に関しては、共有に関する民法二五六条以下の規定が第一次的に適用せられ、遺産の分割は現物分割を原則とし、分割によつて著しくその価格を損する虞があるときは、その競売を命じて価格分割を行うことになるのであつて、民法九〇六条は、その場合にとるべき方針を明らかにしたものに外ならない」 
 と述べています。  
 この時点(昭和30年)での最高裁の判決によれば、滞納されている管理費等も「可分債務」であり、共同相続人は、その相続分に応じた支払義務を負うとする理論により、管理費を滞納している区分所有者が死亡した場合、当該区分所有権を取得する相続人が決定していなくても、すべての相続人に対し、その法定相続分に応じて滞納管理費を請求することができますは、一応、正しいとします。

 また、相続人が滞納管理費の支払義務を負うのは、民法第899条
 「第八百九十九条  各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。」
 とあり、
  判例:最高裁判所:昭和29年4月8日
 「相続人が数人ある場合において、その相続財産中に金銭その他の可分債権があるときは、その債権は法律上当然に分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する」とある。

 しかし、最新の判例:、平成28年12月19日の最高裁判所の判決 で、過去の判例が変更になりましたので、受験生は注意してください。

 今までは、共同相続の場合、被相続人が死亡すれば、その遺産である預貯金は可分債権として”当然”に、他の相続人の同意がなくても、各相続人は単独で、その相続分に応じて預貯金の引き出し(払い戻し)ができていたのを変更し、預貯金を遺産分割の対象にして、各相続人が単独では、預貯金の引き出しができなくしたものです。

 ・争点:共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は遺産分割の対象となるか
 ・判決要旨:共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,
いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となる


ウ. 専有部分の売買契約によって、区分所有権を取得した買主は、売主が滞納していた管理費の支払債務を負いますが、売主の支払債務がなくなるわけではありません。

〇 正しい。 滞納した管理費等は、新しい買主(特定承継人)にも、前の区分所有者にも請求できる。
  平成28年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成27年 マンション管理士試験 「問26」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問11」 、  平成21年 マンション管理士試験 「問3」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問11」 、平成20年 マンション管理士試験 「問2」 、平成20年 管理業務主任者試験 「問10」 、平成19年 管理業務主任者試験 「問10」 、 平成18年 マンション管理士試験 「問14」 、 平成17年 マンション管理士試験 「問15」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成15年 管理業務主任者試験 「問9」 、 平成14年 マンション管理士試験 「問31」 、 平成13年 管理業務主任者試験 「問9」

 マンションにおいて、管理費や修繕積立金は、マンションの管理・運営の根幹をなしていますから、その滞納があるとマンションの管理・運営ができなくなります。
 そこで、区分所有法の立法者は、区分所有法第8条
 「(特定承継人の責任)
 
第八条  前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。
 としています。
 前条1項とは、区分所有法第7条
 「(先取特権)
 第七条  区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。
 です。
 通常の民法での債権関係なら、滞納した管理費等の支払い義務は、滞納した人(前の区分所有者)にあり後にその専有部分を購入した人(買主:特定承継人)にはありませんが、区分所有法では、売買で買った人(特定承継人)にも、前の区分所有者が滞納した管理費等が請求できるとしていますから、正しい。


 


エ .区分所有者が破産手続開始の決定を受けたときは、当該区分所有者は、破産手続開始決定の日の翌日以降の管理費の支払債務を負わなくてよいことになります。

X 誤っている。 破産では、破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権が、対象で、破産手続開始決定の日の翌日以降なら、対象でない。

  平成28年 管理業務主任者試験 「問11」、 平成22年 管理業務主任者試験 「問10」 選択肢ウ

  時々、破産法などと滞納を絡めた出題がありますから、破産法などの基本の流れは、勉強しておいてください。

 債務を負った人が経済的に苦しい状況になり、債権者に対する返済が事実上できなくなったときに、債務者が立ち直るための裁判上の倒産手続として「破産手続」や「民事再生手続」があります。

 そこで、破産手続の開始を申立てると、裁判所による審査の後、要件を満たしていると判断された場合には、破産手続開始の決定(旧破産宣告。平成16年に新破産法の制定)で変更)がなされ、破産手続が開始されることになります。
 破産手続開始の決定を受けると、破産したことが官報に公告され、破産者は、居住の制限や一定の資格(弁護士、宅地建物取引主任士、管理業務主任者など。マンション管理士は?)が復権するまで使用できなくなります。
 また、破産手続開始の決定がなされると、破産債権者は、破産手続開始後に強制執行等をして債権の回収を図ることは制限されることになります。
 そこで、破産法での支払の制限を受ける「破産債権」とは、
 破産法第2条5項
 「(定義)
  第二条
 「5 この法律において「破産債権」とは、
破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(第九十七条各号に掲げる債権を含む。)であって、財団債権に該当しないものをいう。」
 とあり、
 破産法第2条5項によれば、免責の対象は、”
破産手続開始前”の原因に基づいて生じた財産上の請求権ですから、設問の、破産手続開始決定の日の”翌日以降”の管理費の支払債務は、破産債権に該当しないため、支払債務を負わないは、誤りです。

 破産法などは、その仕組みを理解することが、肝心です。



1 ア・ウ
2 ア・エ
3 イ・ウ
4 イ・エ


答え: 2 (誤っているのは、ア と エ)

 それほど難しくはないが、個数問題や組み合わせ問題は、正解率が低くなる。 

《タグ》少額訴訟 民法 滞納 相続 区分所有法 特定承継人 破産法

 ここは、某管理組合から規約改正の依頼が入り、解説を10日ほど中断した。

問11

【問 11】 マンションの管理費の滞納に対する対策及び法的手続に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1.管理組合が管理費を滞納している区分所有者に書面で督促する場合、内容証明郵便で行わなければ、「催告」に該当せず、時効の中断の効力を生じない。

X 適切でない。 催告は請求であり、その方法は、口頭でも書面でもいい。特に内容証明郵便でなくてもいい。 しかし、催告だけでは、時効は中断しない。

 どうして、この「問11」では、法律からの出題なのに、設問では「正しい」、でなくて、「適切なもの」となっているのか、不思議だ。

 時効の中断からの出題は、マンション管理士・管理業務主任者試験とも多い。
 平成29年 管理業務主任者試験 「問11」 、平成29年 マンション管理士試験 「問12」 、 平成25年 管理業務主任者試験 「問10」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問13」 、  平成18年 管理業務主任者試験 「問10」 、、平成24年 マンション管理士試験 「問13」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問7」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問13」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問11」

 いまさらながら、”時効の中断”とは、時効の基礎である事実状態をくつがえすような事実が生じた場合に、時効の進行が阻止されることを言います。
 時効の中断があると、それまで進行していた時効期間はまったく無意味になり、中断後、改めて時効の進行が開始します。
 そして、民法第147条
 「(時効の中断事由)
 第百四十七条 時効は、次に掲げる事由によって中断する。
   
一 請求
   二 差押え、仮差押え又は仮処分
   三 承認」

 とあり、
 催告は、民法第147条1号の「請求」に該当します。催告の方法としては、口頭でも書面でもよく、設問の前半、内容証明郵便で行わなければ、「催告」に該当せずは、誤りです。
 そして、催告なら、民法第153条
 「(催告)
 
第百五十三条 催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法若しくは家事事件手続法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。
 とあり、
 催告を繰り返していても、時効は中断しませんから、注意してください。催告は、時効中断のための予備的な措置にしか過ぎません。これ自体では、時効の中断事由ではありません。



2.管理規約に管理費の遅延損害金の定めがない場合には、管理組合は、民法所定の法定利率による遅延損害金を請求することができない。

X 誤っている。 遅延損害金の定めがない場合は、法定利率が適用できる。
  平成30年 管理業務主任者試験 「問3」 、 平成28年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成28年 マンション管理士試験 「問33」 選択肢4 、 平成27年 マンション管理士試験 「問10」 、平成26年 管理業務主任者試験 「問10」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問13」 、  平成21年 マンション管理士試験 「問12」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問6」 、 平成19年 管理業務主任者試験 「問10」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成15年 管理業務主任者試験 「問9」 

  決められた期日までに納めるべき管理費が滞納となると、これは、金銭債務の不履行となり、民法第419条
 「(金銭債務の特則)
 第四百十九条 
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
 2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
 3 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。

 とあり、
 民法第419条1項によれば、その損害賠償の額(遅延損害金)は、事前に決めている約定利率が法定利率よりも高ければ、約定利率が適用され、定めていなければ、法定利率が適用されますから、管理規約に管理費の遅延損害金の定めがない場合には、管理組合は、民法所定の法定利率による遅延損害金を請求することができないは、誤りです。


 なお、法定利率は、民法第404条
 「(法定利率)
 第四百四条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、
年五分とする。」
 ですが、
 ここは、改正民法:2020年4月1日付で、
 民法第404条の規律を次のように改めるものとする。

(1) 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、当該利息が生じた最初の時点における法定利率による。
(2) 
法定利率は、3%とする
(3) 
(2)にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年ごとに、3年を一期として(4)の規定により変更される。
(4) 各期の法定利率は、この(4)により法定利率に変更があった期のうち直近のもの(当該変更がない場合にあっては、改正法の施行時の期。以下この(4)において「直近変更期」という。)の基準割合と当期の基準割合との差に相当する割合(当該割合に1%未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変更期の法定利率に加算し、又は減算した割合とする。
(5) (4)の基準割合とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の[6年前の年の5月から前年の4月まで]の各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が1年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を60で除して計算した割合(当該割合に0.1%未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示する割合をいう。

(注)この改正に伴い、商法第514条を削除するものとする。


 となりますよ。



3.管理費を滞納している区分所有者が、自己破産の申立てを行い、破産手続開始の決定を受けた場合、管理組合は、先取特権の実行を除き、破産手続に参加しなければ、滞納管理費の回収をすることができない。

〇 正しい。 滞納管理費の回収には先取特権が使える。
 破産については、前の 「問10」 選択肢エ も参照。

 債務を負った人が経済的に苦しい状況になり、債権者に対する返済が事実上できなくなったときに、債務者が立ち直るための裁判上の倒産手続として「破産手続」や「民事再生手続」があります。

 そして、管理費の滞納者からは、区分所有法第7条の先取特権の規定により、管理組合は、一般の債権に優先して自分の債権を回収できます。
 その先取特権の実行以外には、破産手続開始の決定を受けた場合には、破産手続に参加し、破産財団からでなければ、滞納管理費の回収をすることができないため、正しい。


 破産法第2条14項
 「(定義)
  第二条
  14 この法律において「
破産財団」とは、破産者の財産又は相続財産若しくは信託財産であって、破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するものをいう。

 区分所有法第7条
 「(先取特権)
  第七条 区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に
先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。
 2 前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなす。
 3 民法(明治二十九年法律第八十九号)第三百十九条の規定は、第一項の先取特権に準用する。


  民法第303条
 「(先取特権の内容)
第三百三条 
先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する

 破産法第98条
 「(優先的破産債権)
  第九十八条 
破産財団に属する財産につき一般の先取特権その他一般の優先権がある破産債権(次条第一項に規定する劣後的破産債権及び同条第二項に規定する約定劣後破産債権を除く。以下「優先的破産債権」という。)は、他の破産債権に優先する。
2 前項の場合において、優先的破産債権間の優先順位は、民法、商法その他の法律の定めるところによる。

3 優先権が一定の期間内の債権額につき存在する場合には、その期間は、破産手続開始の時からさかのぼって計算する。



4.管理費を滞納している区分所有者が行方不明の場合は、管理組合は、その者に対して、滞納管理費の支払請求についての訴えを提起することはできない。

X 誤っている。 債務者が行方不明でも、公送達達により訴えの提起はできる。
  平成26年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問10」、 平成22年 管理業務主任者試験 「問10」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問10」 、平成17年管理業務主任者試験 「問11」 、平成14年管理業務主任者試験 「問9」

   通常、裁判の提起は、相手方にも訴えの内容を知らせることが必要ですから、訴訟上の書類を当事者や利害人などに送ります。これを
送達と呼んでいます。送達は、原則として送達を受けるべき者の住所、居所、営業所又は事務所にしますが、これでも送達出来ないときには、公示送達という方法が、民事ではあります。

 それが、民法第98条
 「(公示による意思表示)
 第九十八条 
意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。
 2 前項の公示は、
公示送達に関する民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも一回掲載して行う。ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。
 3 公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。
 4 公示に関する手続は、相手方を知ることができない場合には表意者の住所地の、相手方の所在を知ることができない場合には相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄に属する。
 5 裁判所は、表意者に、公示に関する費用を予納させなければならない。

 とあり、
 民法第98条1項(具体的には、民亊訴訟法第110条〜)によれば、管理費を滞納している区分所有者が行方不明の場合は、管理組合は、その者に対して、公示送達の方法により、滞納管理費の支払請求についての訴えを提起することは”
できる”ため、”できない”、は誤りです。

 行方不明の者に対して、この公示送達の方法で、実際に滞納管理費や債権の回収ができるかは、大いに疑問ですが、一応、時効の中断や、債権回収の行動をしたという、証にはなります。



答え:3 

  
ここは、易しい。

《タグ》民法 時効の中断 滞納 催告 区分所有法 先取特権 破産法 公示送達

問12

注:マンション標準管理規約(単棟型)は以下、当解説では、「単棟型」を略して、「標準管理規約」といいます。

  標準管理規約は、平成28年3月14日に大幅な改正があり、また、平成29年8月29日付で「民泊」で12条に改正があったので、注意のこと。


【問 12】 管理組合の会計等における理事長の職務に関する次の記述のうち、標準管理規約によれば、最も不適切なものはどれか。

1.毎会計年度の収支予算案を通常総会に提出し、その承認を得なければならない。

〇 適切である。
  
  うっ、珍しい。改正箇所でもないところからの出題とは。

 設問は、標準管理規約58条
 「(収支予算の作成及び変更)
 第58条
理事長は、毎会計年度の収支予算案を通常総会に提出し、その承認を得なければならない。
 2 収支予算を変更しようとするときは、理事長は、その案を臨時総会に提出し、その承認を得なければならない。
 3 理事長は、第56条に定める会計年度の開始後、第1項に定める承認を得るまでの間に、以下の各号に掲げる経費の支出が必要となった場合には、理事会の承認を得てその支出を行うことができる。
   一 第27条に定める通常の管理に要する経費のうち、経常的であり、かつ、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められるもの
   二 総会の承認を得て実施している長期の施工期間を要する工事に係る経費であって、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められるもの
 4 前項の規定に基づき行った支出は、第1項の規定により収支予算案の承認を得たときは、当該収支予算案による支出とみなす。
 5 理事会が第54条第1項第十号の決議をした場合には、理事長は、同条第2項の決議に基づき、その支出を行うことができる。
 6 理事長は、第21条第6項の規定に基づき、敷地及び共用部分等の保存行為を行う場合には、そのために必要な支出を行うことができる。」
 とあり、
 標準管理規約58条1項によれば、理事長は、毎会計年度の収支予算案を通常総会に提出し、その承認を得なければならないは、適切です。



2.会計年度の開始後、収支予算案が通常総会で承認を得るまでの間に、通常の管理に要する経費のうち、経常的であり、かつ、収支予算案が通常総会で承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められるものについては、理事会の承認を得ずに支出を行うことができる。

X 適切でない。 理事会の承認が必要。 理事長単独ではできない。
  平成27年 マンション管理士試験 「問31」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問12」

 設問は、選択肢1で引用しました、標準管理規約58条3項
 「3 理事長は、第56条に定める会計年度の開始後、第1項に定める承認を得るまでの間に、以下の各号に掲げる経費の支出が必要となった場合には、
理事会の承認を得てその支出を行うことができる
   
一 第27条に定める通常の管理に要する経費のうち、経常的であり、かつ、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められるもの」
 とあり、
 理事長は、理事会の承認なしでは、支出できませんから、理事会の承認を得ずに支出を行うことができる、適切ではありません。

 なお、この規定は、会計年度と総会開催までの間に時間があるため、設けられたものです。



3.収支予算を変更しようとするときは、その案を臨時総会に提出し、その承認を得なければならない。

〇 適切である。 収支予算は、勝手に変更できない。

 設問は、選択肢1で引用しました、標準管理規約58条2項
 「
2 収支予算を変更しようとするときは、理事長は、その案を臨時総会に提出し、その承認を得なければならない。
 とあり、
 適切です。



4.毎会計年度の収支決算案を監事の会計監査を経て、通常総会に報告し、その承認を得なければならない。

〇 適切である。決算報告をして、総会の承認が必要。
  平成26年 マンション管理士試験 「問29」 

 毎会計年度の収支決算案なら、標準管理規約59条
 「(会計報告)
 
第59条 理事長は、毎会計年度の収支決算案を監事の会計監査を経て、通常総会に報告し、その承認を得なければならない。
 とあり、
 適切です。



答え:2 

  
まったく、易しい。 なお、理事長が単独でできるものと理事会の承認を必要とするものは、よく出題されますから、整理しておくこと。

 また、標準管理規約は、条文の下にコメントを入れ、改正箇所が分かるようにした、「マンション管理士 香川事務所」 が作成した、 「改正標準管理規約 (WORD版)」 もありますから、利用してください。

《タグ》標準管理規約 理事長の業務 収支予算案 暫定支出 収支予算案の変更 年度末

問13

注:マンション標準管理規約(単棟型)は以下、当解説では、「単棟型」を略して、「標準管理規約」といいます。

  標準管理規約は、平成28年3月14日に大幅な改正があり、また、平成29年8月29日付で「民泊」で12条に改正があったので、注意のこと。


【問 13】 標準管理規約によれば、管理費等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1.管理費等に不足を生じた場合には、管理組合は組合員に対して、管理費等の負担割合により、その都度必要な金額の負担を求めることができる。

〇 適切である。管理費等が不足したら、当然に負担すること。
  平成30年 マンション管理士試験 「問30」  、平成26年 管理業務主任者試験 「問12」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問13」 、

 管理費等に不足を生じた場合は、標準管理規約61条
 「(管理費等の過不足)
 第61条 収支決算の結果、管理費に余剰を生じた場合には、その余剰は翌年度における管理費に充当する。
 
2 管理費等に不足を生じた場合には、管理組合は組合員に対して第25条第2項に定める管理費等の負担割合により、その都度必要な金額の負担を求めることができる。」
 とあり、
 標準管理規約61条2項によれば、管理費等に不足を生じた場合には、管理組合は組合員に対して、管理費等の負担割合により、その都度必要な金額の負担を求めることができるは、適切です。



2.管理費等の負担割合を定めるに当たっては、共用部分等の使用頻度等は勘案しない。

〇 適切である。 エレベーター等で使用頻度を測りきれない
  平成30年 マンション管理士試験 「問25」 、平成29年 管理業務主任者試験 「問12」 平成24年 マンション管理士試験 「問4」 、平成24年 管理業務主任者試験 「問12」 、平成20年 管理業務主任者試験 「問14」 、 平成17年 マンション管理士試験 「問28」

 管理費等の規定は、標準管理規約25条
 「(管理費等)
 第25条 区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てる ため、次の費用(以下「管理費等」という。)を管理組合に納入しなけれ ばならない。
   一 管理費
   二 修繕積立金
 
2 管理費等の額については、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて 算出するものとする。」
 とあり、
 どうやって 、管理費等の負担割合を決めるかは、コメント 第25条関係
  「
@ 管理費等の負担割合を定めるに当たっては、使用頻度等は勘案しない。」
 とあり、
 コメント 第25条関係@によれば、管理費等の負担割合を定めるに当たっては、共用部分等の使用頻度等は勘案しないは、適切です。



3.管理費のうち、管理組合の運営に要する費用については、組合費として管理費とは分離して徴収することができる。

〇 適切である。
  平成24年 管理業務主任者試験 「問12」

  設問は、第25条関係
 「
A 管理費のうち、管理組合の運営に要する費用については、組合費として管理費とは分離して徴収することもできる。」
 とあり、
 適切です。
 どうして、管理費と分離徴収ができるのでしょうか?


4.議決権割合の設定方法について、 1戸1議決権や価値割合を採用する場合、管理費等の負担もこの割合によらなければならない。

X 適切でない。 管理費は議決権とは別に、共用部分の共有持分に応じて算出することが考えられる。
  平成30年 マンション管理士試験 「問25」 、 平成29年 管理業務主任者試験 「問12」 、平成28年 マンション管理士試験 「問29」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問13」

  管理費の額の決め方は、選択肢1でも引用しました、標準管理規約25条
 「(管理費等)
 第25条 区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、次の費用(以下「管理費等」という。)を管理組合に納入しなければならない。
   一 管理費
   二 修繕積立金
2 管理費等の額については、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するものとする。 」
 とあり、
 コメント 第25条関係
 「
B 議決権割合の設定方法について、一戸一議決権(第46条関係A)や価値割合(第46条関係B)を採用する場合であっても、これとは別に管理費等の負担額については、第2項により、共用部分の共有持分に応じて算出することが考えられる。」
 とあり、
 コメント 第25条関係Bによれば、議決権割合の設定方法について、 1戸1議決権や価値割合を採用する場合でも、管理費等の負担はこの割合とは別に、共用部分の共有持分に応じて算出することも考えられるため、管理費等の負担もこの割合によらなければならないは、適切ではありません。



答え: 4 

  
ここも、易しい。

 しかし、コメントからの出題は、不適切だ。

《タグ》標準管理規約 管理費の不足 使用頻度 組合費 割合

問14

【問 14】 管理組合の活動における以下の取引に関して、平成30年3月分の仕訳として最も適切なものは次のうちどれか。ただし、この管理組合の会計年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までとし、期中の取引においても、企業会計原則に基づき厳格な発生主義によって経理しているものとする。


 
 

★会計は、管理業務主任者試験だけでなく、マンション管理士試験においても、必ず2問は出るので、勉強のこと。
  平成30年 マンション管理士試験 「問34」 、 平成29年 管理業務主任者試験 「問14」 、 平成29年 マンション管理士試験 「問34」 、  平成28年 マンション管理士試験 「問34」 、 平成27年 マンション管理士試験 「問34」 、平成27年 管理業務主任者試験 「問14」 、 平成26年 マンション管理士試験 「問34」 、 平成25年 マンション管理士試験 「問35」 など。 

*私の過去問題の解説を読んでいる人には、度々の重なる説明で恐縮ですが、マンションの管理組合では、明確な会計基準がありません
 でも、営利を目的とした企業活動ではないことは明らかです。そこで、非営利団体と似ている公益法人の会計方法を基にしています。
 その最大の特徴が、「
発生主義」の採用です。
 
 
★マンションの会計処理で発生主義ということの重要性は、
   まず、発生主義とは、全ての費用・収益は、その支出・収入に基づいて計上し、その発生した期間
     *収入については、請求権が生じた月、
     *支出については、支出が労役などの提供又は工事などである場合は、その労役などの提供又は工事等が完了した月、物品の購入なら、その物品が納入された月に正しく割り当てるように処理すること です。

 この発生主義により、管理費や修繕積立金は該当月に徴収することになっているなら、未収入金(滞納)があっても、全額計上されている。
 この辺りが、企業の会計処理を知っている人には、なかなか理解できない個所です。
 
 また、「資金の範囲は、現金預金、未収金、未払金、前受金及び前払金とする」も、重要な前提です。資金の範囲同士の取引は、「収支計算書」には、反映されません。
 
収支決算書に反映されるのは、収入の発生と費用の発生です。

会計処理は、以下の原則があります。

仕訳での記帳の仕方    
 勘定科目など 借方   貸方
 資産勘定     現金預金 増加  減少 
未収金 
前払金
損害保険の積立部分
 負債勘定  未払金  減少 増加
前受金など
 費用の発生   管理業務費 支払有     
修繕費
保険料 など
 収入の発生   管理費収入   収入有  
修繕積立金収入
駐車場使用料など

*では、設問を見て行きましょう。
 求められているのは、平成30年(平成29年度)3月の仕訳ということです。

 取引は、翌年度の4月に普通預金から支払ったです。

 @5月分の委託業務費・・・5月分なら、4月に支払っても、3月の処理ではありませんので、3月の仕訳には、無関係です。
   なお、4月の仕訳では、前払金となります。
 A3月分電話料(通信費)・・・これは、発生主義により、3月の仕訳に該当します。
   しかし、3月では、実際には支払っていないため、 未払金として、以下のようになります。 

借方  貸方 
 通信費 15,000
(費用の発生)
未払金 15,000 
(負債の増加)

 B3月分電気料(水道光熱費)・・・これも、発生主義により、3月の仕訳に該当します。
   しかし、3月では、実際には支払っていないため、 これも、未払金として、以下のようになります。

借方   貸方  
 水道光熱費 175,000
(費用の発生)
 未払金 175,000 
(負債の増加)

 C5月分のコピーリース料・・・これも5月分ですから、4月に支払っても、3月の処理ではありませんので、3月の仕訳には、無関係です。
   なお、4月の仕訳では、前払金となります。

 これらから、3月の仕訳は、AとBになり、

借方    貸方   
 通信費      15,000  未払金  15,000
 水道光熱費  175,000  未払金 175,000

 つまり、

借方    貸方   
 通信費      15,000  未払金 190,000 
 水道光熱費  175,000
 となります。


答え: 2

 まったく、4月に3月の仕訳を想定させるとは、面倒な出題方法だ。 
 簿記に詳しくない人は、時間がかかるので、後から、戻ってやるのも、手です。

《タグ》 会計 仕訳 発生主義 未払金

問15

【問 15】 管理組合の活動における以下の取引に関して、平成30年3月分の仕訳として最も適切なものは次のうちどれか。ただし、この管理組合の会計年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までとし、期中の取引においても、企業会計原則に基づき厳格な発生主義によって経理しているものとする。


 



 
 *発生主義や過去問題については、前の 「問14」 を参照。

*この設問でも、求められているのは、平成30年3月の仕訳です。

 1.外壁補修工事 と 2.防犯カメラ設置の 2つがありますので、別々に見て行きましょう。

 1.外壁補修工事(修繕費)
  工事完了、引渡し・・・3月なら、発生主義により、3月に仕訳をしますが、支払条件は、1ヵ月後でいいとなると、仕訳は、未払金となり、次のようになります。

借方  貸方 
 修繕費 250,000
(費用の発生)
 未払金  250,000
(負債の増加)

2.防犯カメラ設置(什器備品)
  設置完了、引渡し・・・3月なら、発生主義により、3月に仕訳をしますが、支払条件は、
   @2月に手付として、500,000を支払った(普通預金から)
  これは、2月度の仕訳として、前払金として仕訳けたものです。 

借方    貸方 
 前払金 500,000
(資産の増加)
 普通預金 500,000
(資産の減少)

  A残金は、3月5日の10日後に振り込むは、発生主義により、3月の仕訳になります。
    全額 3,500,000円 内 500,000円は、2月に前払金として仕訳済みで、逆仕訳(取崩し)になります。

 借方   貸方  
 什器備品 3,500,000
(費用の発生) 
 普通預金 3,000,000
(資産の減少)
 前払金     500,000

 そこで、最終的に3月の仕訳は、1 と 2のAから、

借方    貸方   
 修繕費     250,000  未払金     250,000
 什器備品  3,500,000  普通預金  3,000,000
   前払金     500,000

 となります。


答え: 1

  ここも、仕訳を知らない人は、後回しにした方がいい。
 2月の仕訳も入るとは、面倒。
 しかし、管理業務主任者とマンション管理士は、仕訳は、当然に知らなければ、管理組合に説明できないので、チャンと勉強すること。

《タグ》会計 仕訳 発生主義 前払金 未払金 普通預金

問16

【問 16】 次のうち、消費税法によれば、管理組合が当課税期間において、必ず消費税の課税事業者となるものはどれか。

1.基準期間における管理組合が運営する売店の売上高は820万円、組合員以外の第三者からの駐車場使用料収入は120万円であり、特定期間の当該売店の売上高は750万円、組合員以外の第三者からの駐車場使用料収入は60万円であったが、特定期間の給与等支払額は1,025万円であった。

X 課税事業者とならない。 基準期間も特定期間も共に売上高は、1,000万円以下である。
  平成30年 マンション管理士試験 「35」 、 平成29年 管理業務主任者試験 「問16」 、平成28年 管理業務主任者試験 「問16」 、平成27年 マンション管理士試験 「問35」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問16」 、 平成23年管理業務主任者試験 「問16」、 平成22年管理業務主任者試験 「問16」平成18年管理業務主任者試験 「問16」平成16年管理業務主任者試験 「問16」

 まず、消費税では、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税の義務が免除されます。
 基準期間における課税売上高とは、個人事業者の場合は原則として”前々年の課税売上高”のことをいい、法人の場合は原則として前々事業年度の課税売上高のことをいいます。

 課税売上高は、輸出などの免税取引を含め、返品、値引き、割戻しをした対価の返還等の金額を差し引いた額(税抜き)です。

 しかし、この規定では、新規開業では、設立年度と翌年、翌々年度は基準期間が存在しないことから、課税売上高が1000万円をこえても、消費税の免税事業者となることが分かりました。

 そこで、平成25年1月1日以後に開始する年又は事業年度については、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても
特定期間(※)における課税売上高が1,000万円を超えた場合、当課税期間から課税事業者となります。なお、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできます。

 ※
特定期間とは、個人事業者の場合は、その年の前年の1月1日から6月30日までの期間をいい、法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間をいいます。

 つまり、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間における課税売上高及び特定期間に支払った給与等の額がいずれも1,000万円超となる場合には、その年又はその事業年度は消費税の納税義務が免除されず課税事業者になります。



  
 

 これらは、具体的には、消費税法第9条及び第9条の2 に規定があります。
 「(小規模事業者に係る納税義務の免除)
 第九条 事業者のうち、その
課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
 2 前項に規定する基準期間における課税売上高とは、次の各号に掲げる事業者の区分に応じ当該各号に定める金額をいう。
   一 個人事業者及び基準期間が一年である法人 基準期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額(第二十八条第一項に規定する対価の額をいう。以下この項、次条第二項、第十一条第四項及び第十二条の三第一項において同じ。)の合計額から、イに掲げる金額からロに掲げる金額を控除した金額の合計額(以下この項及び第十一条第四項において「売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額」という。)を控除した残額
     イ 基準期間中に行つた第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額
     ロ 基準期間中に行つた第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額に六十三分の八十を乗じて算出した金額
   二 基準期間が一年でない法人 基準期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から当該基準期間における売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額を当該法人の当該基準期間に含まれる事業年度の月数の合計数で除し、これに十二を乗じて計算した金額
 3 前項第二号の月数は、暦に従つて計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを一月とする。
 4 第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除されることとなる事業者が、その基準期間における課税売上高(同項に規定する基準期間における課税売上高をいう。第十一条第四項及び第十二条第三項を除き、以下この章において同じ。)が千万円以下である課税期間につき、第一項本文の規定の適用を受けない旨を記載した届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出した場合には、当該提出をした事業者が当該提出をした日の属する課税期間の翌課税期間(当該提出をした日の属する課税期間が事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間である場合には、当該課税期間)以後の課税期間(その基準期間における課税売上高が千万円を超える課税期間を除く。)中に国内において行う課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、同項本文の規定は、適用しない。
 5 前項の規定による届出書を提出した事業者は、同項の規定の適用を受けることをやめようとするとき、又は事業を廃止したときは、その旨を記載した届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出しなければならない。
 6 前項の場合において、第四項の規定による届出書を提出した事業者は、事業を廃止した場合を除き、同項に規定する翌課税期間の初日から二年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、同項の規定の適用を受けることをやめようとする旨を記載した届出書を提出することができない。
 7 第五項の場合において、第四項の規定による届出書を提出した事業者は、同項に規定する翌課税期間の初日から同日以後二年を経過する日までの間に開始した各課税期間(第三十七条第一項の規定の適用を受ける課税期間を除く。)中に国内における調整対象固定資産の課税仕入れ又は調整対象固定資産に該当する課税貨物(他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。第九項、第十二条の二第三項及び第十二条の四において同じ。)の保税地域からの引取り(以下この項、第十二条の二第二項及び第十二条の三第三項において「調整対象固定資産の仕入れ等」という。)を行つた場合(第四項に規定する政令で定める課税期間において当該届出書の提出前に当該調整対象固定資産の仕入れ等を行つた場合を含む。)には、前項の規定にかかわらず、事業を廃止した場合を除き、当該調整対象固定資産の仕入れ等の日(当該調整対象固定資産の仕入れ等に係る第三十条第一項各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日をいう。以下この項及び第十二条の二第二項において同じ。)の属する課税期間の初日から三年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、第四項の規定の適用を受けることをやめようとする旨を記載した届出書を提出することができない。この場合において、当該調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日から当該調整対象固定資産の仕入れ等の日までの間に同項の規定の適用を受けることをやめようとする旨を記載した届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出しているときは、次項の規定の適用については、その届出書の提出は、なかつたものとみなす。
 8 第五項の規定による届出書の提出があつたときは、その提出があつた日の属する課税期間の末日の翌日以後は、第四項の規定による届出は、その効力を失う。
 9 やむを得ない事情があるため第四項又は第五項の規定による届出書を第四項の規定の適用を受けようとし、又は受けることをやめようとする課税期間の初日の前日までに提出できなかつた場合における同項又は前項の規定の適用の特例及び第七項に規定する調整対象固定資産の仕入れ等が特例申告書の提出に係る課税貨物の保税地域からの引取りである場合その他の場合における同項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。」


 「(前年又は前事業年度等における課税売上高による納税義務の免除の特例)
  第九条の二 個人事業者のその年又は法人の
その事業年度の基準期間における課税売上高が千万円以下である場合において、当該個人事業者又は法人(前条第四項の規定による届出書の提出により消費税を納める義務が免除されないものを除く。)のうち、当該個人事業者のその年又は法人のその事業年度に係る特定期間における課税売上高が千万円を超えるときは、当該個人事業者のその年又は法人のその事業年度における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、同条第一項本文の規定は、適用しない。
 2 前項に規定する特定期間における課税売上高とは、当該特定期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した金額の合計額を控除した残額をいう。
   一 特定期間中に行つた第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額
   二 特定期間中に行つた第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額に六十三分の八十を乗じて算出した金額
 3 第一項の規定を適用する場合においては、前項の規定にかかわらず、第一項の個人事業者又は法人が同項の特定期間中に支払つた所得税法第二百三十一条第一項(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)に規定する支払明細書に記載すべき同項の給与等の金額に相当するものとして財務省令で定めるものの合計額をもつて、第一項の特定期間における課税売上高とすることができる。
 4 前三項に規定する特定期間とは、次の各号に掲げる事業者の区分に応じ当該各号に定める期間をいう。
   一 個人事業者 その年の前年一月一日から六月三十日までの期間
   二 その事業年度の前事業年度(七月以下であるものその他の政令で定めるもの(次号において「短期事業年度」という。)を除く。)がある法人 当該前事業年度開始の日以後六月の期間
   三 その事業年度の前事業年度が短期事業年度である法人 その事業年度の前々事業年度(その事業年度の基準期間に含まれるものその他の政令で定めるものを除く。)開始の日以後六月の期間(当該前々事業年度が六月以下の場合には、当該前々事業年度開始の日からその終了の日までの期間)
 5 前項第二号又は第三号に規定する六月の期間の末日がその月の末日でない場合における当該期間の特例その他前各項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。」


 これを前提に設問をみましょう。

 ア。基準期間の課税売上高は、
  @売店が ・・・・・・・・・       820万円
  A第三者からの駐車場収入(これは、課税対象になります)・・・120万円
  ---------------------------------------------------------------
  合計 940万円 (1千万円以下)

 イ。特定期間の課税売上高は、
  @売店が ・・・・・・・・・       750万円
  A第三者からの駐車場収入(これは、課税対象になります)・・・60万円
  ---------------------------------------------------------------
  合計 810万円 (1千万円以下)      

  ということで、ア基準期間の課税売上高、イ特定期間の課税売上高 が共に、1千万円以下となり、課税事業者になりません。

 なお、設問の、特定期間の給与等支払額は1,025万円であったは、イの810万円があるため、選択使用で対象にしません。



2.基準期間における管理組合の全収入は1,120万円で、その内訳は、管理費等収入が950万円、駐車場使用料収入が145万円(組合員以外の第三者からのもの28万円を含む)、専用庭使用料収入が25万円であったが、基準期間以降についても、同額の収入構成であった。

X 課税事業者とならない。

  まず、マンションの管理組合では、 国税庁の判断  により、
   管理費収入・・・ 950万円
   組合員からの駐車場使用料収入・・・145万円 − 28万円 = 117万円
   専用庭使用料収入・・・25万円
   は、課税売上の対象外となります。

  そこで、
  ア。基準期間の課税売上高は、
     @第三者からの駐車場収入(これは、課税対象になります)・・・28万円
  ---------------------------------------------------------------
  合計 28万円 (1千万円以下)

 イ。特定期間の課税売上高は、
   @第三者からの駐車場収入(これは、課税対象になります)・・・28万円
  ---------------------------------------------------------------
  合計 28万円 (1千万円以下)

   ということで、ア基準期間の課税売上高、イ特定期間の課税売上高 が共に、1千万円以下となり、課税事業者になりません。



3.基準期間における管理組合の課税売上高は890万円、特定期間の課税売上高は1,020万円であったが、特定期間の給与等支払額は650万円であった。

X 課税事業者とならない。

 ア。基準期間の課税売上高は、
     @890万円
  ---------------------------------------------------------------
  合計 890万円 (1千万円以下)

 イ。特定期間の課税売上高は、
   @1,020万円 又は
   A給与等支払額は650万円
  ---------------------------------------------------------------
   特定期間の課税売上高は、どちらか納税者が選べるため、 650万円 (1千万円以下)

   ということで、ア基準期間の課税売上高、イ特定期間の課税売上高 が共に、1千万円以下となり、課税事業者になりません。



4.基準期間における管理組合の課税売上高は850万円、特定期間の課税売上高は1,050万円であったが、特定期間の給与等支払額は1,020万円であった。

〇 課税事業者となる。

 ア。基準期間の課税売上高は、
     @850万円
  ---------------------------------------------------------------
  合計 850万円 (1千万円以下)

 イ。特定期間の課税売上高は、
   @1,050万円 又は
   A給与等支払額は1,020万円
   ---------------------------------------------------------------
    特定期間の課税売上高は、どちらとも、1千万円を超えている

   ということで、ア基準期間の課税売上高は、1千万円以下ですが、イ特定期間の課税売上高 が 給与等支払額を採用しても、共に、1千万円超えとなり、課税事業者になります。



答え: 4

 いやはや、何という実務作業で、難しいし、解説にも時間がかかる。
 一度、やれば、分かるが、税理士でもない、管理業務主任者やマンション管理士に対する出題としては、実に不適切。
 出題元の 管理業協会 の試験問題に対する姿勢は、間違っている。

《タグ》消費税法 基準期間 特定期間 1000万円 課税売上高 給与等支払額

問17

【問 17】 建築基準法による「日影による中高層の建築物の高さの制限」(以下、本問において「日影規制」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1.日影規制の対象区域とは、同法別表第 4に掲げる地域又は区域の全部又は一部で、地方公共団体の条例で指定する区域をいう。

〇 正しい。 日影規制の対象区域は、地方公共団体の条例で指定する。

 建築基準法からの出題で、日影規制とは、新しい!

 設問は、建築基準法第56条の2
 「(日影による中高層の建築物の高さの制限)
 第五十六条の二 
別表第四(い)欄の各項に掲げる地域又は区域の全部又は一部で地方公共団体の条例で指定する区域(以下この条において「対象区域」という。)内にある同表(ろ)欄の当該各項(四の項にあつては、同項イ又はロのうちから地方公共団体がその地方の気候及び風土、当該区域の土地利用の状況等を勘案して条例で指定するもの)に掲げる建築物は、冬至日の真太陽時による午前八時から午後四時まで(道の区域内にあつては、午前九時から午後三時まで)の間において、それぞれ、同表(は)欄の各項(四の項にあつては、同項イ又はロ)に掲げる平均地盤面からの高さ(二の項及び三の項にあつては、当該各項に掲げる平均地盤面からの高さのうちから地方公共団体が当該区域の土地利用の状況等を勘案して条例で指定するもの)の水平面(対象区域外の部分、高層住居誘導地区内の部分、都市再生特別地区内の部分及び当該建築物の敷地内の部分を除く。)に、敷地境界線からの水平距離が五メートルを超える範囲において、同表(に)欄の(一)、(二)又は(三)の号(同表の三の項にあつては、(一)又は(二)の号)のうちから地方公共団体がその地方の気候及び風土、土地利用の状況等を勘案して条例で指定する号に掲げる時間以上日影となる部分を生じさせることのないものとしなければならない。ただし、特定行政庁が土地の状況等により周囲の居住環境を害するおそれがないと認めて建築審査会の同意を得て許可した場合又は当該許可を受けた建築物を周囲の居住環境を害するおそれがないものとして政令で定める位置及び規模の範囲内において増築し、改築し、若しくは移転する場合においては、この限りでない。
 2 同一の敷地内に二以上の建築物がある場合においては、これらの建築物を一の建築物とみなして、前項の規定を適用する。
 3 建築物の敷地が道路、川又は海その他これらに類するものに接する場合、建築物の敷地とこれに接する隣地との高低差が著しい場合その他これらに類する特別の事情がある場合における第一項本文の規定の適用の緩和に関する措置は、政令で定める。
 4 対象区域外にある高さが十メートルを超える建築物で、冬至日において、対象区域内の土地に日影を生じさせるものは、当該対象区域内にある建築物とみなして、第一項の規定を適用する。
 5 建築物が第一項の規定による日影時間の制限の異なる区域の内外にわたる場合又は建築物が、冬至日において、対象区域のうち当該建築物がある区域外の土地に日影を生じさせる場合における同項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

 とあり、
 別表第4は、
 

★別表第4 日影による中高層の建築物の制限(第五十六条、第五十六条の二関係)

  (い) (ろ) (は) (に)
  地域又は区域 制限を受ける建築物 平均地盤面からの高さ   敷地境界線からの水平距離が十メートル以内の範囲における日影時間 敷地境界線からの水平距離が十メートルを超える範囲における日影時間
第一種低層住居専用地域、 第二種低層住居専用地域又は田園住居地域 軒の高さが七メートルを超える建築物又は地階を除く階数が三以上の建築物 一・五メートル (一) 三時間(道の区域内にあつては、二時間) 二時間(道の区域内にあつては、一・五時間)
(二) 四時間(道の区域内にあつては、三時間) 二・五時間(道の区域内にあつては、二時間)
(三) 五時間(道の区域内にあつては、四時間) 三時間(道の区域内にあつては、二・五時間)
第一種中高層住居専用地域又は第二種中高層住居専用地域 高さが十メートルを超える建築物 四メートル又は六・五メートル (一) 三時間(道の区域内にあつては、二時間) 二時間(道の区域内にあつては、一・五時間)
(二) 四時間(道の区域内にあつては、三時間) 二・五時間(道の区域内にあつては、二時間)
(三) 五時間(道の区域内にあつては、四時間) 三時間(道の区域内にあつては、二・五時間)
第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域又は準工業地域 高さが十メートルを超える建築物 四メートル又は六・五メートル (一) 四時間(道の区域内にあつては、三時間) 二・五時間(道の区域内にあつては、二時間)
(二) 五時間(道の区域内にあつては、四時間) 三時間(道の区域内にあつては、二・五時間)
用途地域の指定のない区域 軒の高さが七メートルを超える建築物又は地階を除く階数が三以上の建築物 一・五メートル (一) 三時間(道の区域内にあつては、二時間) 二時間(道の区域内にあつては、一・五時間)
(二) 四時間(道の区域内にあつては、三時間) 二・五時間(道の区域内にあつては、二時間)
(三) 五時間(道の区域内にあつては、四時間) 三時間(道の区域内にあつては、二・五時間)
高さが十メートルを超える建築物 四メートル (一) 三時間(道の区域内にあつては、二時間) 二時間(道の区域内にあつては、一・五時間)
(二) 四時間(道の区域内にあつては、三時間) 二・五時間(道の区域内にあつては、二時間)
(三) 五時間(道の区域内にあつては、四時間) 三時間(道の区域内にあつては、二・五時間)
この表において、平均地盤面からの高さとは、当該建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面からの高さをいうものとする。

 です。

 そこで、設問は、建築基準法第56条の2 1項によれば、日影規制の対象区域とは、同法別表第 4に掲げる地域又は区域の全部又は一部で、地方公共団体の条例で指定する区域をいうは、正しい。


 なお、解説として、
  ★いつが基準時か?
  北半球で一番昼が短い
冬至(とうじ)日(大体、12月22日頃)の真太陽時による午前8時から午後4時まで(北海道の区域内にあつては、午前9時から午後3時まで)の間において建築物が発生する日影の量を制限することで建築物の形態を制限します。
    よく読むと、用途地域の内、商業地域、工業地域、工業専用地域では基本的に日影規制の適用がありません。
    しかし、対象地域外でも高さ10mを超える建築物について、規制の対象区域に日影を発生させる場合は日影規制が適用されます。
 ★日影制限を満たすためには、建物の高さの抑制と、隣地境界線との距離を充分にとる必要があります。
 ★日影規制は、全国一律の適用ではありません。地方公共団体が、その地方の気候及び風土などを勘案して条例で定めます。制限をするのは、地方公共団体の条例です。
 ★地域によって、高さや日影の時間が違います。




2.日影規制の対象となる用途地域には、中高層住居専用地域は含まれるが、近隣商業地域、準工業地域は含まれない。

X 誤っている。 日影規制の対象には、中高層住居専用地域も近隣商業地域、準工業地域は含まれる。含まれないのは、用途地域の内、商業地域、工業地域、工業専用地域。

 選択肢1で引用しました、建築基準法第56条の2 1項
 「(日影による中高層の建築物の高さの制限)
 第五十六条の二 
別表第四(い)欄の各項に掲げる地域又は区域の全部又は一部で地方公共団体の条例で指定する区域(以下この条において「対象区域」という。)内にある同表(ろ)欄の当該各項(四の項にあつては、同項イ又はロのうちから地方公共団体がその地方の気候及び風土、当該区域の土地利用の状況等を勘案して条例で指定するもの)に掲げる建築物は、冬至日の真太陽時による午前八時から午後四時まで(道の区域内にあつては、午前九時から午後三時まで)の間において、それぞれ、同表(は)欄の各項(四の項にあつては、同項イ又はロ)に掲げる平均地盤面からの高さ(二の項及び三の項にあつては、当該各項に掲げる平均地盤面からの高さのうちから地方公共団体が当該区域の土地利用の状況等を勘案して条例で指定するもの)の水平面(対象区域外の部分、高層住居誘導地区内の部分、都市再生特別地区内の部分及び当該建築物の敷地内の部分を除く。)に、敷地境界線からの水平距離が五メートルを超える範囲において、同表(に)欄の(一)、(二)又は(三)の号(同表の三の項にあつては、(一)又は(二)の号)のうちから地方公共団体がその地方の気候及び風土、土地利用の状況等を勘案して条例で指定する号に掲げる時間以上日影となる部分を生じさせることのないものとしなければならない。ただし、特定行政庁が土地の状況等により周囲の居住環境を害するおそれがないと認めて建築審査会の同意を得て許可した場合又は当該許可を受けた建築物を周囲の居住環境を害するおそれがないものとして政令で定める位置及び規模の範囲内において増築し、改築し、若しくは移転する場合においては、この限りでない
 (以下、略)」
 とあり、
 「別表第四(い)欄の各項に掲げる地域又は区域の全部」は、表を取り出すと、

 別表第四
  (い)
  地域又は区域
 一  第一種低層住居専用地域、 第二種低層住居専用地域又は田園住居地域
 二  第一種中高層住居専用地域又は第二種中高層住居専用地域
 三  第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域又は準工業地域 
 四  用途地域の指定のない区域

 となり、設問の、(第一種、第二種)中高層住居専用地域、近隣商業地域、準工業地域は、日影による中高層の建築物の高さの制限の対象となりますから、日影規制の対象となる用途地域には、中高層住居専用地域は含まれるが、近隣商業地域、準工業地域は含まれないは、誤りです。

 用途地域の内、商業地域、工業地域、工業専用地域では基本的に日影規制の適用がありません。

 

 なお、用途地域は、都市計画法の地域地区のひとつで、用途の混在を防ぐことを目的として、住居、商業、工業など市街地の大枠としての土地利用を定めるもので、第一種低層住居専用地域など13種類があります。
 用途地域として、指定されると、
  1.建物の種類
  2.建ぺい率
  3.容積率
  4.高さ制限(第一種・第二種低層住居専用地域・田園住居地域)
  5.前面道路幅員別容積率制限(道路幅員に乗ずる数値)
  6.道路斜線制限
  7.隣地斜線制限
  8.日影規制
  などが決められます。



3.同法によれば、日影は、冬至日の日本標準時による午前8時から午後5時までの間において、平均地盤面に生ずるもので判断する。

X 誤っている。 冬至日の真太陽時による午前8時から午後4時まで(道の区域内にあつては、午前9時から午後3時まで)の間の平均地盤面に生ずるもので判断する。冬の午後5時では、もう暗い。

 選択肢1で引用しました、建築基準法第56条の2 1項
 「(日影による中高層の建築物の高さの制限)
 第五十六条の二 別表第四(い)欄の各項に掲げる地域又は区域の全部又は一部で地方公共団体の条例で指定する区域(以下この条において「対象区域」という。)内にある同表(ろ)欄の当該各項(四の項にあつては、同項イ又はロのうちから地方公共団体がその地方の気候及び風土、当該区域の土地利用の状況等を勘案して条例で指定するもの)に掲げる建築物は、
冬至日の真太陽時による午前八時から午後四時まで(道の区域内にあつては、午前九時から午後三時まで)の間において、それぞれ、同表(は)欄の各項(四の項にあつては、同項イ又はロ)に掲げる平均地盤面からの高さ(二の項及び三の項にあつては、当該各項に掲げる平均地盤面からの高さのうちから地方公共団体が当該区域の土地利用の状況等を勘案して条例で指定するもの)の水平面(対象区域外の部分、高層住居誘導地区内の部分、都市再生特別地区内の部分及び当該建築物の敷地内の部分を除く。)に、敷地境界線からの水平距離が五メートルを超える範囲において、同表(に)欄の(一)、(二)又は(三)の号(同表の三の項にあつては、(一)又は(二)の号)のうちから地方公共団体がその地方の気候及び風土、土地利用の状況等を勘案して条例で指定する号に掲げる時間以上日影となる部分を生じさせることのないものとしなければならない。ただし、特定行政庁が土地の状況等により周囲の居住環境を害するおそれがないと認めて建築審査会の同意を得て許可した場合又は当該許可を受けた建築物を周囲の居住環境を害するおそれがないものとして政令で定める位置及び規模の範囲内において増築し、改築し、若しくは移転する場合においては、この限りでない。
 (以下、略)

 とあり、
 日影は、冬至日の真太陽時による午前8時から午後4時まで(道の区域内にあつては、午前9時から午後3時まで)の間において、平均地盤面からの高さで判断しますから、午前8時から”午後5時”までの間では、誤りです。

 東京でも冬の午後5時では、もう暗い、4時半でも暗い。



4.建築物が日影規制の対象区域外にあれば、高さが10mを超える建築物でも日影規制は適用されない。

X 誤っている。 日影規制の対象区域外でも、高さが10mを超える建築物で冬至日に日影がでれば、日影規制は適用される。

 選択肢1で引用しました、建築基準法第56条の2 4項
 「
4 対象区域外にある高さが十メートルを超える建築物で、冬至日において、対象区域内の土地に日影を生じさせるものは、当該対象区域内にある建築物とみなして、第一項の規定を適用する。」
 とあり、
 建築物が日影規制の対象区域外でも、高さが10メートルを超える建築物で、冬至日において、対象区域内の土地に日影を生じさせるものには、日影規制は適用されるため、”日影規制は適用されない”は、誤りです。



答え: 1

 日影規制からの出題とは、まったく難しい。
 解説も表を作ったりして、時間が4時間もかかっている。

  なお、マンション管理士・管理業務主任者試験の過去問題において、建築基準法、都市計画法、水道法、消防法は、出題傾向が高いので、各々、別途取り出して、解説していますから、ご利用ください。

  http://www.higuchi-fit.co.jp/mezase/kako-mon/kako-table.html

  また、建築基準法を解説したサイトもありますから、しっかりと勉強してください。
   http://www.higuchi-fit.co.jp/mezase/kenki-hou/kenki-p01.htm

《タグ》建築基準法 日影規制 用途地域 基準時=冬至 午前8時から午後4時まで

問18

【問 18】 補強コンクリートブロック造の塀に関する次の記述のうち、建築基準法によれば、誤っているものはどれか。ただし、国土交通大臣が定める基準に従った構造計算によって構造耐力上安全であることの確認はしていないものとする。

1.塀の高さは 3m以下とする。

X 誤っている。 補強コンクリートブロック造の高さは、2.2m以下。 3m以下ではない。

 宮城県沖地震等の被害を踏まえて、1981年(昭和56年)6月1日、建築基準法施行令が大幅に改正されました。補強コンクリートブロック造の塀の高さは3mから2.2m(標準10段積)に、石造やれんが造等の組積造の塀の高さの上限は2mから1.2mになりました。
  また、2018年(平成30年)6月18日には、大阪府北部を震源とする震度6弱の地震により、大阪府高槻市の小学校のブロック塀が倒壊し、女児がその下敷きとなって死亡した事件もあります。

  

  補強コンクリートブロック造の法的には、建築基準法施行令第62条の2

 第四節の二 補強コンクリートブロック造
 「(適用の範囲)
  第六十二条の二 この節の規定は、補強コンクリートブロツク造の建築物又は補強コンクリートブロツク造と鉄筋コンクリート造その他の構造とを併用する建築物の補強コンクリートブロツク造の構造部分に適用する。
 2 高さが四メートル以下で、かつ、延べ面積が二十平方メートル以内の建築物については、この節の規定中第六十二条の六及び第六十二条の七の規定に限り適用する。」
 
とあり、
 具体的な、塀の高さは、建築基準法施行令第62条の8
 「(塀)
 第六十二条の八 
補強コンクリートブロック造の塀は、次の各号(高さ一・二メートル以下の塀にあつては、 第五号及び第七号を除く。)に定めるところによらなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。
   
一 高さは、二・二メートル以下とすること。
   二 壁の厚さは、十五センチメートル(高さ二メートル以下の塀にあつては、十センチメートル)以上とすること。
   三 壁頂及び基礎には横に、壁の端部及び隅角部には縦に、それぞれ径九ミリメートル以上の鉄筋を配置すること。
   四 壁内には、径九ミリメートル以上の鉄筋を縦横に八十センチメートル以下の間隔で配置すること。
   五 長さ三・四メートル以下ごとに、径九ミリメートル以上の鉄筋を配置した控壁で基礎の部分において壁面から高さの五分の一以上突出したものを設けること。
   六 第三号及び第四号の規定により配置する鉄筋の末端は、かぎ状に折り曲げて、縦筋にあつては壁頂及び基礎の横筋に、横筋にあつてはこれらの縦筋に、それぞれかぎ掛けして定着すること。ただし、縦筋をその径の四十倍以上基礎に定着させる場合にあつては、縦筋の末端は、基礎の横筋にかぎ掛けしないことができる。
  七 基礎の丈は、三十五センチメートル以上とし、根入れの深さは三十センチメートル以上とすること。

 とあり、
 建築基準法施行令第62条の8 1号によれば、補強コンクリートブロック造の塀の高さは、”
2.2m以下”ですから、塀の高さは ”3m以下”とするは、誤りです。

  


2.塀の高さが1.2mを超える場合には、長さ3.4m以下ごとに、所定の基準に従った控壁を設ける。

〇 正しい。 塀の高さが、1.2m超だと、控え壁や、基礎の丈等が必要となる。


 設問は、選択肢1で引用しました、建築基準法施行令第62条の8 5号
 「  「(塀)
 第六十二条の八 
補強コンクリートブロック造の塀は、次の各号高さ一・二メートル以下の塀にあつては、 第五号及び第七号を除く。)に定めるところによらなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。
  
五 長さ三・四メートル以下ごとに、径九ミリメートル以上の鉄筋を配置した控壁で基礎の部分において壁面から高さの五分の一以上突出したものを設けること。」
 とあり、
 塀の高さが1.2mを超える場合には、特別の規定として、長さ3.4m以下ごとに、所定の基準に従った控壁(ひかえかべ)を設けるは、正しい。



3.塀の高さが1.2mを超える場合には、塀の基礎の丈は35p以上とし、根入れの深さは30p以上とする。

〇 正しい。 塀の高さが、1.2m超だと、控え壁や、基礎の丈等が必要となる。 用語は、選択肢1の図をみて。

 設問は、選択肢1で引用しました、建築基準法施行令第62条の8 7号
 「第六十二条の八 補強コンクリートブロック造の塀は、次の各号(高さ一・二メートル以下の塀にあつては、 第五号及び第七号を除く。)に定めるところによらなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。
 
七 基礎の丈は、三十五センチメートル以上とし、根入れの深さは三十センチメートル以上とすること
 とあり、
 塀の高さが1.2mを超える場合には、特別の規定として、塀の基礎の丈は35p以上とし、根入れの深さは30p以上とするは、正しい。



4.同法第12条に基づく定期調査報告の対象となる塀についての劣化及び損傷の状況は、目視、下げ振り等により確認する。

〇 正しい。 塀の調査は、目視、下げ振り等により確認する。

 まず、建築基準法第12条
 「(報告、検査等)
  
第十二条 第六条第一項第一号に掲げる建築物で安全上、防火上又は衛生上特に重要であるものとして政令で定めるもの(国、都道府県及び建築主事を置く市町村の建築物(以下この項及び第三項において「国等の建築物」という。)を除く。)及び当該政令で定めるもの以外の特定建築物(同号に掲げる建築物その他政令で定める建築物をいう。以下この条において同じ。)で特定行政庁が指定するもの(国等の建築物を除く。)の所有者(所有者と管理者が異なる場合においては、管理者。第三項において同じ。)は、これらの建築物の敷地、構造及び建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築物調査員資格者証の交付を受けている者(次項及び次条第三項において「建築物調査員」という。)にその状況の調査(これらの建築物の敷地及び構造についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含み、これらの建築物の建築設備及び防火戸その他の政令で定める防火設備(以下「建築設備等」という。)についての第三項の検査を除く。)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。
 2 国、都道府県又は建築主事を置く市町村の特定建築物の管理者である国、都道府県若しくは市町村の機関の長又はその委任を受けた者(以下この章において「国の機関の長等」という。)は、当該特定建築物の敷地及び構造について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築物調査員に、損傷、腐食その他の劣化の状況の点検(当該特定建築物の防火戸その他の前項の政令で定める防火設備についての第四項の点検を除く。)をさせなければならない。ただし、当該特定建築物(第六条第一項第一号に掲げる建築物で安全上、防火上又は衛生上特に重要であるものとして前項の政令で定めるもの及び同項の規定により特定行政庁が指定するものを除く。)のうち特定行政庁が安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て指定したものについては、この限りでない。
 3 特定建築設備等(昇降機及び特定建築物の昇降機以外の建築設備等をいう。以下この項及び次項において同じ。)で安全上、防火上又は衛生上特に重要であるものとして政令で定めるもの(国等の建築物に設けるものを除く。)及び当該政令で定めるもの以外の特定建築設備等で特定行政庁が指定するもの(国等の建築物に設けるものを除く。)の所有者は、これらの特定建築設備等について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築設備等検査員資格者証の交付を受けている者(次項及び第十二条の三第二項において「建築設備等検査員」という。)に検査(これらの特定建築設備等についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含む。)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。
 4 国の機関の長等は、国、都道府県又は建築主事を置く市町村の建築物の特定建築設備等について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築設備等検査員に、損傷、腐食その他の劣化の状況の点検をさせなければならない。ただし、当該特定建築設備等(前項の政令で定めるもの及び同項の規定により特定行政庁が指定するものを除く。)のうち特定行政庁が安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て指定したものについては、この限りでない。
 5 特定行政庁、建築主事又は建築監視員は、次に掲げる者に対して、建築物の敷地、構造、建築設備若しくは用途、建築材料若しくは建築設備その他の建築物の部分(以下「建築材料等」という。)の受取若しくは引渡しの状況、建築物に関する工事の計画若しくは施工の状況又は建築物の敷地、構造若しくは建築設備に関する調査(以下「建築物に関する調査」という。)の状況に関する報告を求めることができる。
   一 建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者、建築主、設計者、建築材料等を製造した者、工事監理者、工事施工者又は建築物に関する調査をした者
   二 第七十七条の二十一第一項の指定確認検査機関
   三 第七十七条の三十五の五第一項の指定構造計算適合性判定機関
 6 特定行政庁又は建築主事にあつては第六条第四項、第六条の二第六項、第七条第四項、第七条の三第四項、第九条第一項、第十項若しくは第十三項、第十条第一項から第三項まで、前条第一項又は第九十条の二第一項の規定の施行に必要な限度において、建築監視員にあつては第九条第十項の規定の施行に必要な限度において、当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者、建築主、設計者、建築材料等を製造した者、工事監理者、工事施工者又は建築物に関する調査をした者に対し、帳簿、書類その他の物件の提出を求めることができる。
 7 建築主事又は特定行政庁の命令若しくは建築主事の委任を受けた当該市町村若しくは都道府県の職員にあつては第六条第四項、第六条の二第六項、第七条第四項、第七条の三第四項、第九条第一項、第十項若しくは第十三項、第十条第一項から第三項まで、前条第一項又は第九十条の二第一項の規定の施行に必要な限度において、建築監視員にあつては第九条第十項の規定の施行に必要な限度において、当該建築物、建築物の敷地、建築材料等を製造した者の工場、営業所、事務所、倉庫その他の事業場、建築工事場又は建築物に関する調査をした者の営業所、事務所その他の事業場に立ち入り、建築物、建築物の敷地、建築設備、建築材料、建築材料等の製造に関係がある物件、設計図書その他建築物に関する工事に関係がある物件若しくは建築物に関する調査に関係がある物件を検査し、若しくは試験し、又は建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者、建築主、設計者、建築材料等を製造した者、工事監理者、工事施工者若しくは建築物に関する調査をした者に対し必要な事項について質問することができる。ただし、住居に立ち入る場合においては、あらかじめ、その居住者の承諾を得なければならない。
 8 特定行政庁は、確認その他の建築基準法令の規定による処分並びに第一項及び第三項の規定による報告に係る建築物の敷地、構造、建築設備又は用途に関する台帳を整備し、かつ、当該台帳(当該処分及び当該報告に関する書類で国土交通省令で定めるものを含む。)を保存しなければならない。
 9 前項の台帳の記載事項その他その整備に関し必要な事項及び当該台帳(同項の国土交通省令で定める書類を含む。)の保存期間その他その保存に関し必要な事項は、国土交通省令で定める。」

 とあり、

 建築基準法第12条1項の
 「国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築物調査員資格者証の交付を受 けている者(次項及び次条第三項において「建築物調査員」という。 )にその状況の調査(これらの建築物の敷地及び構造についての損傷 、腐食その他の劣化の状況の点検を含み、これらの建築物の建築設備及び防火戸その他の政令で定める防火設備(以下「建築設備等」という。)についての第三項の検査を除く。)をさせて、その結果を特定 行政庁に報告しなければならない。 」

 を受けた、
  国土交通省告示282号(最終改正:平成28年4月25日)に寄りますと、
 建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件
 として、
 調査は、
定期調査報告の対象となる塀についての劣化及び損傷の状況は、目視、下げ振り等により確認するとあり、正しい。

 

    下げ振りにより、垂直(鉛直)かどうか分かる。


答え: 1

  塀からの出題とは、時機を得ているが、まったく新しい箇所からの出題で、しかも、専門的で余りにも細かい。
  かなりの難問だ。

 また、図や該当の国土交通省告示282号を探すのに、また2時間もかかる。

《タグ》建築基準法 塀 高さ=2.2m以下 控え壁 根入れ 調査方法 目視 下げ振り


*2019年2月4日:ここまで、出題順に解説してきたが、気分的に、以下の問は、過去問題とのリンク先を探すのが面倒なので飛ばして、「問29」の区分所有法と規約の解説に移ります。

問19

【問 19】 鉄筋コンクリートに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1.中性化とは、硬化したコンクリートが空気中の炭酸ガス(CO2)の作用によって次第にアルカリ性を失って中性に近づく現象をいう。

〇 適切である。 鉄筋コンクリートが中性化すると、中の鉄筋がさびやすくなる。
  平成27年 マンション管理士試験 「問37」 、 同「問36」 、平成26年 マンション管理士試験 「問36」 、平成24年 マンション管理士試験 「問36」 、平成19年 管理業務主任者試験 「問26」 、  

 コンクリートの中性化とは、元々アルカリ性であったコンクリートが、大気中の二酸化炭素(CO2)がコンクリート内に侵入し、炭酸化反応を引き起こすことにより、本来アルカリ性であるコンクリートのph(ペーハー)値を下げる現象ですから、設問は適切です。
 そこで、コンクリートの中性化が鉄筋位置まで達すると、鉄筋の被膜が破壊され、水や酸素の浸透によって鉄筋が錆び構造物の耐久性が損なわれますから、コンクリートの中性化を調査することは大切です。

 なお、コンクリートの中性化深さを調査する方法には、@コア採取法、Aドリル削孔(粉末)法、Bはつり による方法があり、ドリル削孔(粉末)法があります。


  

 また、pH値が10を下回ると中性化と判断されます。


2.中性化の進行を遅らせるためには、モルタル塗り等の仕上げが有効である。

〇 適切である。 コンクリートの中性化を遅らせるのには、コンクリートの表面を覆えばいい。

  モルタルとは、コンクリートから粗骨材(砂利)を除いたものです。細骨材(砂)とセメントと水で構成されます。
 コンクリートの中性化における設計・施工面からの予防対策としては、中性化速度を遅らせ、構造物の長寿命化を図ることに重点が置かれます。
 まず、水セメント比の小さい密実なコンクリートは、劣化因子である空気中の炭酸ガス(CO2)の侵入を抑える効果があります。
 また、養生期間を長く取り、コンクリート表面の乾燥を防ぐことも重要です。
 一応、かぶりを大きく取ること、コンクリート表面の塗装を行うことも、中性化による劣化を遅らせ、構造物の延命を図ることができますから、中性化の進行を遅らせるためには、モルタル塗り等の仕上げが有効であるは、適切です。



3.アルカリ骨材反応とは、アルカリ反応性骨材と鉄筋が長期にわたって反応し、その鉄筋が発錆し膨張することにより、コンクリートにひび割れを生じたり崩壊したりする現象をいう。

X 適切でない。 アルカリ骨材反応とは、コンクリートと骨材が反応するもの。骨材と鉄筋の反応ではない。
  平成24年 マンション管理士試験 「問36」 、

  アルカリ骨材反応とは、”コンクリート(セメント)”に含まれるアルカリ性の水溶液と”骨材(砂利や砂)”中の成分が化学反応を起こし、その生成物の膨張によってコンクリートがひび割れを起こしたり、劣化したりする現象です。
 紛らわしい設問ですが、”骨材”と”鉄筋”が反応するのではありませんから、適切ではありません。


  


4.アルカリ骨材反応を抑制するためには、「コンクリート中のアルカリ総量の抑制」、「抑制効果のある混合セメントの使用」、「安全と認められる骨材の使用」の抑制対策のうち、いずれか一つについて確認をとらなければならない。

〇 適切である。 

 国土交通省の「アルカリ骨材反応抑制対策について」 平成14年8月1日付:によると、
 アルカリ骨材反応抑制対策(土木・建築共通)

 「2.
抑制対策 構造物に使用するコンクリートは、アルカリ骨材反応を抑制するため、次の3つの 対策の中のいずれか1つについて確認をとらなければならない。
   なお、土木構造物に ついては 2.1、2.2 を優先する。   
   2.1
コンクリート中のアルカリ総量の抑制  アルカリ量が表示されたポルトランドセメント等を使用し、コンクリート1m3に 含まれるアルカリ総量を Na2O 換算で 3.0kg 以下にする。
   2.2
抑制効果のある混合セメント等の使用  JIS R 5211 高炉セメントに適合する高炉セメント[B種またはC種]あるいは JIS R 5213 フライアッシュセメントに適合するフライアッシュセメント[B種またはC 種]、もしくは混和材をポルトランドセメントに混入した結合材でアルカリ骨材反 応抑制効果の確認されたものを使用する。
   2.3
安全と認められる骨材の使用  骨材のアルカリシリカ反応性試験(化学法またはモルタルバー法)の結果で無害 と確認された骨材を使用する。 」
 とあり、
 アルカリ骨材反応を抑制するためには、「コンクリート中のアルカリ総量の抑制」、「抑制効果のある混合セメントの使用」、「安全と認められる骨材の使用」の抑制対策のうち、いずれか一つについて確認をとらなければならないは、適切です。



答え: 3

 選択肢3 は、何となく分かったが、選択肢4 は、まったく初めての出題で、真面目に考えると、難しい。

《タグ》コンクリート 中性化 モルタル塗り アルカリ骨材反応 アルカリ骨材反応の抑制


2019年 2月22日:「問18」から、気分的に、「問28」に飛んで、先に解説したが、また、「問19」に戻ってきた。

問20

【問 20】 給排水衛生設備に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1.飲料水の給水タンク等の天井が蓋を兼ねていない場合に当該給水タンク等に設けるマンホールは、外部から内部の保守点検を容易かつ安全に行うことができる小規模な給水タンク等を除き、直径60p以上の円が内接できるものとする。

〇 適切である。  給水タンク等の天井が蓋を兼ねていない場合には、マンホールを設け、その直径は、60cm以上の円であること
  平成30年 マンション管理士試験 「問43」 、平成25年 管理業務主任者試験 「問28」 、 平成23年 マンション管理士試験 「問43」 、 平成23年 マンション管理士試験 「問45」 選択肢4 、平成15年 マンション管理士試験 「問45」

 マンションでは、水道の水を一度貯水槽(受水槽、タンク)に溜めてから各室に送る方式がとられていることが多く、そのため過去から、給水タンク(受水槽)は、試験でもよく出ます。
 下の図を参考に、吐水口空間、オーバーフロー管、排水口空間、水抜管などを記憶のこと。


 

  設問の根拠としては、建築基準法第36条、建築基準法施行令第129条の2の5、 建設省告示2379号(平成6年)があります。

  建築基準法第36条
 「(この章の規定を実施し、又は補足するため必要な技術的基準)
 第三十六条 居室の採光面積、天井及び床の高さ、床の防湿方法、階段の構造、便所、防火壁、防火区画、消火設備、避雷設備及び
給水、排水その他の配管設備の設置及び構造並びに浄化槽、煙突及び昇降機の構造に関して、この章の規定を実施し、又は補足するために安全上、防火上及び衛生上必要な技術的基準は、政令で定める。
  とあり、
 建築基準法第36条を受けて、建築基準法施行令第129条の2の5
 「(給水、排水その他の配管設備の設置及び構造)
  第百二十九条の二の五 建築物に設ける給水、排水その他の配管設備の設置及び構造は、次に定めるところによらなければならない。
   一 コンクリートへの埋設等により腐食するおそれのある部分には、その材質に応じ有効な腐食防止のための措置を講ずること。
   二 構造耐力上主要な部分を貫通して配管する場合においては、建築物の構造耐力上支障を生じないようにすること。
   三 第百二十九条の三第一項第一号又は第三号に掲げる昇降機の昇降路内に設けないこと。ただし、地震時においても昇降機の籠(人又は物を乗せ昇降する部分をいう。以下同じ。)の昇降、籠及び出入口の戸の開閉その他の昇降機の機能並びに配管設備の機能に支障が生じないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの及び国土交通大臣の認定を受けたものは、この限りでない。
   四 圧力タンク及び給湯設備には、有効な安全装置を設けること。
   五 水質、温度その他の特性に応じて安全上、防火上及び衛生上支障のない構造とすること。
   六 地階を除く階数が三以上である建築物、地階に居室を有する建築物又は延べ面積が三千平方メートルを超える建築物に設ける換気、暖房又は冷房の設備の風道及びダストシュート、メールシュート、リネンシュートその他これらに類するもの(屋外に面する部分その他防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分を除く。)は、不燃材料で造ること。
   七 給水管、配電管その他の管が、第百十二条第十四項の準耐火構造の防火区画、第百十三条第一項の防火壁、第百十四条第一項の界壁、同条第二項の間仕切壁又は同条第三項若しくは第四項の隔壁(以下この号において「防火区画等」という。)を貫通する場合においては、これらの管の構造は、次のイからハまでのいずれかに適合するものとすること。ただし、一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で建築物の他の部分と区画されたパイプシャフト、パイプダクトその他これらに類するものの中にある部分については、この限りでない。
     イ 給水管、配電管その他の管の貫通する部分及び当該貫通する部分からそれぞれ両側に一メートル以内の距離にある部分を不燃材料で造ること。
     ロ 給水管、配電管その他の管の外径が、当該管の用途、材質その他の事項に応じて国土交通大臣が定める数値未満であること。
     ハ 防火区画等を貫通する管に通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後二十分間(第百十二条第一項から第四項まで、同条第五項(同条第六項の規定により床面積の合計二百平方メートル以内ごとに区画する場合又は同条第七項の規定により床面積の合計五百平方メートル以内ごとに区画する場合に限る。)、同条第八項(同条第六項の規定により床面積の合計二百平方メートル以内ごとに区画する場合又は同条第七項の規定により床面積の合計五百平方メートル以内ごとに区画する場合に限る。)若しくは同条第十二項の規定による準耐火構造の床若しくは壁又は第百十三条第一項の防火壁にあつては一時間、第百十四条第一項の界壁、同条第二項の間仕切壁又は同条第三項若しくは第四項の隔壁にあつては四十五分間)防火区画等の加熱側の反対側に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じないものとして、国土交通大臣の認定を受けたものであること。
   八 三階以上の階を共同住宅の用途に供する建築物の住戸に設けるガスの配管設備は、国土交通大臣が安全を確保するために必要があると認めて定める基準によること。
 2 建築物に設ける飲料水の配管設備(水道法第三条第九項に規定する給水装置に該当する配管設備を除く。)の設置及び構造は、前項の規定によるほか、次に定めるところによらなければならない。
   一 飲料水の配管設備(これと給水系統を同じくする配管設備を含む。この号から第三号までにおいて同じ。)とその他の配管設備とは、直接連結させないこと。
   二 水槽そう 、流しその他水を入れ、又は受ける設備に給水する飲料水の配管設備の水栓せん の開口部にあつては、これらの設備のあふれ面と水栓せん の開口部との垂直距離を適当に保つ等有効な水の逆流防止のための措置を講ずること。
   三 飲料水の配管設備の構造は、次に掲げる基準に適合するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。
     イ 当該配管設備から漏水しないものであること。
     ロ 当該配管設備から溶出する物質によつて汚染されないものであること。
   四 給水管の凍結による破壊のおそれのある部分には、有効な防凍のための措置を講ずること。
   
五 給水タンク及び貯水タンクは、ほこりその他衛生上有害なものが入らない構造とし、金属性のものにあつては、衛生上支障のないように有効なさび止めのための措置を講ずること。
   六 前各号に定めるもののほか、安全上及び衛生上支障のないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものであること。

 3 建築物に設ける排水のための配管設備の設置及び構造は、第一項の規定によるほか、次に定めるところによらなければならない。
   一 排出すべき雨水又は汚水の量及び水質に応じ有効な容量、傾斜及び材質を有すること。
   二 配管設備には、排水トラップ、通気管等を設置する等衛生上必要な措置を講ずること。
   三 配管設備の末端は、公共下水道、都市下水路その他の排水施設に排水上有効に連結すること。
   四 汚水に接する部分は、不浸透質の耐水材料で造ること。
   五 前各号に定めるもののほか、安全上及び衛生上支障のないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものであること
。」
 です。


 建築基準法施行令129条の2の5によって、設置や構造が細かく規定され、建設省告示1597号や改正の建設省1406号 にも規定されています。
 昭和50年建設省告示第1597号
 「2. 給水タンク及び貯水タンク
   イ. 建築物の内部、屋上又は下階の床下に設ける場合においては、次に定める ところによること。
     
(4)内部の保守点検を容易かつ安全に行うことができる位置に、次に定める構造としたマンホールを設けること。ただし、給水タンク等の天井がふたを 兼ねる場合においては、この限りでない。
       (い)内部が常時加圧される構造の給水タンク等(以下「圧力タンク等」とい う。)に設ける場合を除き、ほこりその他衛生上有害なものが入らないよ うに有効に立ち上げること。
       (
ろ)直径60 センチメートル以上の円が内接することができるものとすること。 ただし、外部から内部の保守点検を容易かつ安全に行うことができる 小規模な給水タンク等にあっては、この限りでない。」
 とあり、
  建設省告示第1597号によれば、飲料水の給水タンク等の天井が蓋を兼ねていない場合に当該給水タンク等に設けるマンホールは、外部から内部の保守点検を容易かつ安全に行うことができる小規模な給水タンク等を除き、直径60p以上の円が内接できるものとするは、適切です。



2.飲料水の給水タンクの局部震度法による設計用標準震度は、同じ耐震クラスでは、地階よりも屋上の方が大きい。

〇 適切である。 給水タンクの局部震度法での設計用標準震度は、地階よりも屋上の方が大きい。
  
 給水タンクの局部震度法とは、新しい出題だ。
  
 給水タンクの耐震基準は、1950年に建築基準法が制定され、過去大きく2度見直し強化されています。 1980年に建築基準法施行令改正によって、水平震度が見直され、 その後兵庫県南部地震を機に、1997年耐震基準はさらに強化されています。


 そこで、給水タンクの局部震度法とは、
 設備機器に作用する地震力の計算は一般的に局部震度法により行われ、設備機器には設計用水平震度(KH)に機器の重量(W)を掛けあわせた「設計用水平地震力(FH=KH・W)」が機器の重心に作用するものとして考え、要求する耐震クラスや地域などを考慮し求められます。
具体的には、下表のような設計用標準震度(KS)から要求する耐震クラスにより数値を選定します。よく、水槽などで1.0G仕様、1.5G仕様などと呼ばれる数値はこの表のことです。

  具体的には、設省告示2379号(平成6年)

 
 

 とあり、
 飲料水の給水タンクの局部震度法による設計用標準震度は、同じ耐震クラス(例えば、一般の施設での、一般水槽なら、1階及び地下なら 0.6G ですが、 屋上なら 1.0G のようになっていて、地階よりも屋上の方が大きいは、適切です。
 これは、地下などの方が、屋上よりも揺れの幅が小さい違いに気が付けば、解答は易しい。



3.ガス瞬間式給湯器の能力表示は、一般に「号」で表され、 1号は、流量毎分 1リットルの水の温度を25 ℃上昇させる能力を表している。

〇 適切である。 ガス瞬間式給湯器の能力表示は、号。 1号は、流量毎分 1リットルの水の温度を25 ℃上昇させる能力を表す。

  平成27年 マンション管理士試験 「問45」 平成17年 管理業務主任者試験 「問25」 、 平成15年 管理業務主任者試験 「問22」 
 
 ガス給湯器の給湯能力を示す単位として「号数」という用語があります。これは「水温+25℃」のお湯を1分間に何リットル出せるかということを示すものです。
 号数が大きいほど一度に大量のお湯を使うことができます。
例えば、24号の場合は、「水温+25℃」のお湯を1分間に24リットル出せる能力となります(但し、使用する水栓の種類や数、配管条件、水圧などにより実際に使える水量は制限を受けます)。
24号給湯器では、冬場でもキッチンとシャワーなど、2カ所でお湯を同時に使っても湯温・湯量が変化しにくく、便利にお湯が使えます。
 よって、ガス瞬間式給湯器の能力表示は、一般に「号」で表され、 1号は、流量毎分 1リットルの水の温度を25 ℃上昇させる能力を表しているは、適切です。

 


4.排水横管の必要最小こう配は、管径が大きくなるほど大きくなる。

X 適切でない。 管径が大きくなればなるほど、勾配は小さく(緩く)ていい。

  平成30年 マンション管理士試験 「問44」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問44」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問44」 、 平成18年マンション管理士試験 「問44」  、平成17年 管理業務主任者試験 「問23」 

 排水横枝管(横管)とは、 器具排水管から、排水立て管、または排水横主管までの排水管をいいます。 排水横管の勾配が過大である場合には、管内流速が早くなり汚物が取り残されやすい。また、勾配が過小である場合には、管内流速が遅く固形物やスケールが付着しやすくなります。
 したがって、管内流速は0.6〜1.5メートル(秒速)と規定されており、管径に応じて適した勾配にする必要があります。通常は、管径(mm)に対して、およそ1/(管径)程度の勾配とします。(管径が65ミリ以下の場合は1/50以上、管径100ミリ以下の場合は1/100以上、管径150ミリ以上は1/200以上と規定されています。) 

 
そこで、設問の、排水横管の必要最小こう配は、管径が大きくなるほど大きくなるは、適切ではありません。
 管径が大きくなるほど、勾配は小さく(緩く)なります。

管径(mm) 勾配
65以下 最小 1/50
75〜100 最小 1/100
125 最小 1/150
150以上 最小 1/200



答え: 4

  管理業務主任者試験では、選択肢2の「給水タンクの局部震度法」のように、まったく、新しい設問があるので、注意の事。
  選択肢2は、まあ、常識的に、建物の上部の方が、下部より揺れが大きいとは分かるが。
  他は、過去問題をやっていれば、易しい。

《タグ》給水タンク マンホール 60cm以上 局部震度法 ガス瞬間式給湯器 1号 排水横管 勾配

問21

【問 21】 給水装置に関する次の記述のうち、水道法によれば、正しいものはどれか。

1.水道水を受水槽に受けて給水しているマンションにおいては、水道事業者の施設した配水管から分岐して設けられた給水管及びこれに直結している受水槽の給水用具までが給水装置に該当する。

〇 正しい。 受水槽があれば、水道事業者の施設した配水管から分岐して設けられた給水管及びこれに直結している受水槽の給水用具までが給水装置に該当する。

 水道法からの出題は、 平成29年 マンション管理士試験 「問22」 、 平成28年 管理業務主任者試験 「問21」 、 平成28年 マンション管理士試験 「問22」 、 平成27年 マンション管理士試験 「問22」、 平成26年 マンション管理士試験 「問22」 、平成23年 マンション管理士試験 「問22」 、平成21年 マンション管理士試験 「問22」 、 平成16年 マンション管理士試験 「問23」 など。

 過去問題では、管理業務主任者試験においては、水道法からの出題は、殆どなかったが、傾向が変わった?

  水道法での給水装置の定義は、水道法第3条9項
 「(用語の定義)
 第三条
 9 この法律において「給水装置」とは、需要者に水を供給するために水道事業者の施設した配水管から分岐して設けられた給水管及びこれに直結する給水用具をいう。
 とあり、
 水道水を受水槽に受けて給水しているマンションにおいては、水道事業者の施設した配水管から分岐して設けられた給水管及びこれに直結している受水槽の給水用具までが給水装置に該当するは、正しい。


 


2.水道事業者は、当該水道によって水の供給を受ける者の給水装置の構造及び材質が、政令で定める基準に適合していないときであっても、その者に対する給水を停止することはできない。

X 誤っている。 基準に適合していないなら、給水は停止できる。

 設問は、水道法第16条
 「(給水装置の構造及び材質)
 
第十六条 水道事業者は、当該水道によつて水の供給を受ける者の給水装置の構造及び材質が、政令で定める基準に適合していないときは、供給規程の定めるところにより、その者の給水契約の申込を拒み、又はその者が給水装置をその基準に適合させるまでの間その者に対する給水を停止することができる。
 とあり、
 水道事業者は、当該水道によって水の供給を受ける者の給水装置の構造及び材質が、政令で定める基準に適合していないときであっても、その者に対する給水を停止することはできないは、誤りです。
 この場合、給水は停止できます。



3.「給水装置の構造及び材質の基準に関する省令」では、一定のものを除く給水装置は、厚生労働大臣が定める耐圧に関する試験により1.0メガパスカルの静水圧を1分間加えたとき、水漏れ、変形、破損その他の異常を生じないこととしている。

X 誤っている。 異常を生じないのは、1.75メガパスカルの静水圧を1分間加えたときで、1.0メガパスカルではない。


  細かい! 知らない。 1,75 パスカルと 1,0 パスカルの差が分からないけど。

 給水装置の耐圧は、
 平成9年3月19日付厚生省令第14号: 「給水装置の構造及び材質の基準に関する省令」
 「(耐圧に関する基準)
 第一条 給水装置(最終の止水機構の流出側に設置されている給水用具を除く。以下この条において同じ。)は、次に掲げる耐圧のための性能を有するものでなければならない。
  一 
給水装置(次号に規定する加圧装置及び当該加圧装置の下流側に設置されている給水用具並びに第三号に規定する熱交換器内における浴槽内の水等の加熱用の水路を除く。)は、厚生労働大臣が定める耐圧に関する試験(以下「耐圧性能試験」という。)により一・七五メガパスカルの静水圧を一分間加えたとき、水漏れ、変形、破損その他の異常を生じないこと。
 (以下、略)」
 とあり、
 「給水装置の構造及び材質の基準に関する省令」によると、耐圧性能試験での静止圧は、1.75 メガパスカル であり、1.0 メガパスカルは、誤りです。

 なお、水圧などで使用される圧力の単位 
パスカル(Pa) とは、

  パスカル (Pa) = 面を垂直に押す力(N ニュートン) ÷ 力が働く面積 (u)

  1ニュートン=質量約100gの物体に働く重力の大きさ  例:50Kg=約500N

  1Pa=1N/u  1MPa(メガパスカル)=1,000、000 Pa です。



4.「給水装置の構造及び材質の基準に関する省令」では、給水装置から金属等が浸出し、汚染されることを防止するために、「水質基準に関する省令」に定められる51種類の水質基準項目について、浸出液の濃度が基準値以下であることを確認しなければならないとしている。

X 誤っている。 水質基準では51項目あるが、浸透液などの確認は、44項目である。

  平成28年 管理業務主任者試験 「問22」 

 こんな基準は、知る訳ないって設問。

  選択肢3でも引用しました、 平成9年3月19日付厚生省令第14号: 「給水装置の構造及び材質の基準に関する省令」

 「 (浸出等に関する基準)
 第二条 飲用に供する水を供給する給水装置は、厚生労働大臣が定める浸出に関する試験(以下「浸出性能試験」という。)により供試品(浸出性能試験に供される器具、その部品、又はその材料(金属以外のものに限る。)をいう。)について浸出させたとき、その浸出液は、
別表第一の上欄に掲げる事項につき、水栓その他給水装置の末端に設置されている給水用具にあっては同表の中欄に掲げる基準に適合し、それ以外の給水装置にあっては同表の下欄に掲げる基準に適合しなければならない。
 (以下、略)」
 とあり、
 その、別表第一


 とあります。
 そこで、給水装置から金属等が浸出し、汚染されることを防止するために、浸出液の濃度が基準値以下であることを確認する事項として挙げられているのは、全部で「44種類」であり、設問の水質基準項目で定められた「51種類」について、ではないため、誤っています。


答え: 1 

  選択肢3の静止圧が、1.75 メガパスカルとは、細かすぎて、まったく、適切な出題ではない。 管理業務主任者試験の出題範囲を超えている。
  また、パスカル や ニュートン となると、説明が難しい!

 そして、選択肢4も知らない! 根拠が探しきれない。ここも、管理業務主任者試験の出題範囲を超えている。
 かなりの難問だ。解説に4時間もかかった。
 
《タグ》水道法 給水装置 給水装置の構造及び材質の基準に関する省令 基準 構造・材質基準 静水圧 1.75メガパスカル 金属等の浸出:44項目  水質基準:51項目

問22

【問 22】 住宅用分電盤に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1.分電盤内に設置されている漏電遮断器(漏電ブレーカー)及び配線用遮断器(安全ブレーカー)は、電力会社の所有物である。

X 適切でない。 漏電遮断器(漏電ブレーカー)及び配線用遮断器(安全ブレーカー)は、利用者の所有物。電力会社の所有物ではない。
  平成25年 管理業務主任者試験 「問23」 、 平成22年 管理業務主任者試験 「問21」 、

  まず、屋外から家庭に送られてきた電気は、玄関、トイレなど各部屋へ、また1階と2階などいくつもの通路(回路)にわけられます。それぞれの部屋へ電気をわけているのが分電盤です。分電盤は電気の分配のほか、使い過ぎや漏電で事故にならないよう、家庭内で使う電気をチェックする大切な役目をしています。
 そこで、アンペアブレーカー、漏電遮断器(漏電ブレーカー)、配線用遮断器(安全ブレーカー)との違いが分からないといけません。
 分電盤の内部は、下の図のようになっています。

 

 アンペアブレーカー(サービスブレーカー)は、電力会社が契約した家庭との間で取り決めた最大のアンペアを超えると(例えば、30Aでの契約なら30Aの使用を超えた時)自動的に電気を止める「契約用遮断器」とも、また「リミッター」とも呼ばれるものです。
 一方、漏電遮断器(漏電ブレーカー)、配線用遮断器(安全ブレーカー)は、漏電や電気回路の故障があったときに、感電防止や電気機器が壊れるのを防ぐものです。これは、一度、各家庭でも確認できますから、分電盤を開けてみてください。

  そこで、アンペアブレーカーは電力会社の所有ですが、その先にある、漏電遮断器(漏電ブレーカー)、配線用遮断器(安全ブレーカー)は、利用者の所有ですから、分電盤内に設置されている漏電遮断器(漏電ブレーカー)及び配線用遮断器(安全ブレーカー)は、電力会社の所有物であるは、適切ではありません。



 

 ※なお、最近は、検針業務が遠隔からできる電力量計「スマートメーター」が導入され、スマートメーターで契約アンペアを設定する場合は、アンペアブレーカーの取り付けを行いません。

 

 電力計(メーター)までが、電力会社の所有物で、それから先は、取り付けた人の物。ただし、アンペアブレーカーがあれば、それは、電力会社の所有物です。


2.電気設備の技術上必要な事項を規定した民間規格である内線規程(以下、本問において「内線規程」という。)によれば、単相3線式電路に施設する漏電遮断器は、中性線欠相保護機能付きのものとすることが望ましいとされている。

〇 適切である。 電気配線で、単相3線式なら、漏電遮断器は、中性線欠相保護機能付きがいい。
  平成25年 管理業務主任者試験 「問23」 、平成22年 管理業務主任者試験 「問21」 平成20年 マンション管理士試験 「問45」 

  最初に電線の配線で単相3線式だとか、中性線欠相保護機能が出題された時は、戸惑ったが今は、もうすぐに解説ができる。
 まず、一般住宅への配線方式には、単相2線式と単相3線式があります。


 

 単相3線式とは、交流の電力を3本の電線(赤・白(中性線)・黒)で供給します。従来の電圧100ボルト対応の家庭用電気機器の使用ができるだけでなく、ルーム・エアコンやIH調理器などの200ボルト対応の高電圧機器の使用にも対応しています。
 単相3線式の3本の配線は、各々100ボルトの電圧が流れる2本の電圧線と1本の中性線で構成され、電圧線をもう一本の電圧線と結ぶと200ボルトの電圧が得られ、電圧線と中性線を結ぶと100ボルトの電圧が得られます。
 単相2線式では、100ボルトの電圧が流れる1本の電圧線と中性線の合計2本の線(黒・白)を利用するので、100ボルトしか使用することができません。
 なお、単相3線式を家庭内に受電するには、分電盤や漏電遮断器も単相3線式にします。(選択肢1の図 参照)
 最近の電気の配線では、ほとんどが、単相3線式になっています。


 この単相3線式では、100ボルトの負荷が2本の電圧線に”均等”にかかっていないと、中性線が断線(欠相です)して、100ボルトで使用している電気機器に200ボルトの電圧がかかってその機器が燃え出したという事故が相次ぎ、そこで、設問の「中性線欠相保護機能付」の漏電遮断器が開発されています。

 そして、電気工事に必要な事項を規定した民間規格となる 内線規程(1360-3-3、1375-2-5?) では 1995年(平成7年)の改定から、単相3線式電路に施設する漏電遮断器は中性線欠相保護機能付きのものとすることを定めており、1995年以降に建てられた家屋のほとんどには中性線欠相保護機能付きの漏電遮断器が取り付けられていますから、電気設備の技術上必要な事項を規定した民間規格である内線規程(以下、本問において「内線規程」という。)によれば、単相 3線式電路に施設する漏電遮断器は、中性線欠相保護機能付きのものとすることが望ましいとされているは、適切です。


 この、中性線欠相保護機能付き漏電遮断器により、電気機器の損傷事故が防げます。

 なお、中性線欠相保護機能付きの漏電遮断器は、構造や外形は漏電遮断器とほぼ同等で、過電圧検出機能を有しています。
また、遮断器側面には過電圧検出リード線があり、中性線欠相を検出する位置に結線することで、その結線位置から電源側の欠相を検出します。過電圧検出の動作電圧はAC120Vを超えAC135V以下で動作時間は1秒以内となっています。


 


3.内閣府等が推奨している感震遮断機能付住宅用分電盤は、安全確保を行うことを目的に、揺れを感知すると警報を発し、一定時間を経過してから電気が遮断されるものである。

〇 適切である。 感
震遮断機能付住宅用分電盤は、安全確保を行うことを目的に、揺れを感知すると警報を発し、一定時間を経過してから電気が遮断され、内閣府も推奨している。

  この設問は、新しい。

 まず、感震遮断機能付住宅用分電盤が生まれた背景には、1995年(平成7年)1月17日に起きました阪神・淡路大震災、また、2011年(平成23年)3月11日に起きました東日本大震災など、大きな地震により、電気器具の転倒による火災(一次災害)が発生し、また、地震が収まり電気が復旧すると、倒れた電気ストーブなどが燃え出した火災(二次災害)が発生しました。
 これらの教訓をへて、通電火災を防ぐのが、感震遮断機能付住宅用分電盤です。

 具体的な仕組みの例としては、感震動作機能として、震度5強以上の地震波を感知したとき、ランプ・ブザー又は音声などにより警報を発し、3分後に主開閉器を遮断する信号を出力します。


 

 内線規程が2016年(平成28年3月)に改定され、JEAC8001 2011 2016追補版に「感震遮断機能付住宅用分電盤」設置の表記が追加されました。

 

 内閣府の「感震ブレーカーの普及に向けた取組状況 」平成28年3月 もあります。

 そこで、設問の、内閣府等が推奨している感震遮断機能付住宅用分電盤は、安全確保を行うことを目的に、揺れを感知すると警報を発し、一定時間を経過してから電気が遮断されるものであるは、適切です。



4.内線規程によれば、「地震時等に著しく危険な密集市街地」の住宅などには、感震遮断機能付住宅用分電盤を施設することが勧告的事項とされている。

〇 適切である。 「地震時等に著しく危険な密集市街地」の住宅などには、感震遮断機能付住宅用分電盤を施設した方がいい。

 参考:選択肢3の  内閣府の「感震ブレーカーの普及に向けた取組状況 」平成28年3月

  内線規程
 「1365-10 感震遮断機能付住宅用分電盤
  1. 〔「地震時等に著しく危険な密集市街地」の住宅などへの施設〕
    「地震時等に著しく危険な密集市街地」の住宅などには,感震遮断機能付住宅用分電盤を施設すること。(勧告) 」
 とあり、
 内線規程によれば、「地震時等に著しく危険な密集市街地」の住宅などには、感震遮断機能付住宅用分電盤を施設することが勧告的事項とされているは、適切です。


答え: 1

  選択肢1の分電盤の中身、選択肢2の単相3線の中性線欠相などは、過去問題からもわかるが、管理業務主任者試験では、前の「問21」の出題と言い、選択肢3や選択肢4の出題は、新しい。
  根拠が探しきれない。
  解説にも5時間かかった。

《タグ》電気 分電盤 ブレーカーの種類 単相3線 中性線欠相 感震遮断機能 

問23

【問 23】 次の記述のうち、「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」によれば、誤っているものはどれか。

1.「特定共同住宅等」には、ホテルも含まれる。

X 誤っている。 特定共同住宅等には、旅館、ホテル、宿泊所は含まれていない(令別表第一(五)項イ)である。 マンション(共同住宅)(令別表第一(五)項ロ)は、「特定共同住宅等」に該当する。
  平成28年管理業務主任者試験 「問22」 、 

  消防法からも、例年1問はでます。

  まず、  「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令 とは、
 平成16年まで、消防用設備等に係る技術上の基準は、材料・寸法などを仕様書的に規定しているものが多かったため、十分な性能を有する場合であっても、新たな技術を受け入れにくいという面がありました。
そこで消防庁では、消防防災分野における技術開発を促進するとともに、一層効果的な防火安全対策を構築するために、平成15年6月に消防法を、平成16年2月に消防法施行令を改正し、消防用設備等に係る技術上の基準に性能規定を導入しています。
 消防用設備等の技術基準に性能規定を導入するに当たっての基本的な考え方は、従来の技術基準に基づき設置されている消防用設備等と同等以上の性能を有するかどうかについて判断し、同等以上の性能を有していると確認できた設備については、それらの消防用設備等に代えて、その設置を認めることとしたものです。
 (平成十七年三月二十五日総務省令第四十号) 最終改正:平成二七年二月二七日総務省令第一〇号)
  
 概要は、以下のとおりです。

 

 これを、読むと、主に共同住宅を対象にした内容であることが分かるでしょう。

 そこで、「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」は、以下も定めています。


 
 
  では、「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令 (平成17年3月 総務省令第40号)第2条
 「 (用語の意義)
 第二条 
この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
   一 
特定共同住宅等 令別表第一(五)項ロに掲げる防火対象物及び同表(十六)項イに掲げる防火対象物(同表(五)項ロ並びに(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物(同表(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物にあっては、有料老人ホーム、福祉ホーム、老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の二第六項に規定する認知症対応型老人共同生活援助事業を行う施設又は障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第五条第十五項に規定する共同生活援助を行う施設に限る。以下同じ。)の用途以外の用途に供される部分が存せず、かつ、同表(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物の用途に供する各独立部分(構造上区分された数個の部分の各部分で独立して住居その他の用途に供されることができるものをいう。以下同じ。)の床面積がいずれも百平方メートル以下であるものに限る。)であって、火災の発生又は延焼のおそれが少ないものとして、その位置、構造及び設備について消防庁長官が定める基準に適合するものをいう。
   一の二 福祉施設等 特定共同住宅等の部分であって、令別表第一(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物の用途に供されるものをいう。
   一の三 特定福祉施設等 福祉施設等のうち、次に掲げる部分で、消防法施行規則(昭和三十六年自治省令第六号。以下「規則」という。)第十二条の二第一項又は第三項に規定する構造を有するもの以外のものをいう。
     イ 令別表第一(六)項ロ(1)に掲げる防火対象物の用途に供される部分
     ロ 令別表第一(六)項ロ(5)に掲げる防火対象物の用途に供される部分(規則第十二条の三に規定する者を主として入所させるもの以外のものにあっては、床面積が二百七十五平方メートル以上のものに限る。)
   二 住戸等 特定共同住宅等の住戸(下宿の宿泊室、寄宿舎の寝室及び各独立部分で令別表第一(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物の用途に供されるものを含む。以下同じ。)、共用室、管理人室、倉庫、機械室その他これらに類する室をいう。

   三 共用室 特定共同住宅等において、居住者が集会、談話等の用に供する室をいう。
   
四 共用部分 特定共同住宅等の廊下、階段、エレベーターホール、エントランスホール、駐車場その他これらに類する特定共同住宅等の部分であって、住戸等以外の部分をいう。
   五 階段室等 避難階又は地上に通ずる直通階段の階段室(当該階段が壁、床又は防火設備(建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第九号の二ロに規定するものをいう。)等で区画されていない場合にあっては当該階段)をいう。
   六 開放型廊下 直接外気に開放され、かつ、特定共同住宅等における火災時に生ずる煙を有効に排出することができる廊下をいう。
   七 開放型階段 直接外気に開放され、かつ、特定共同住宅等における火災時に生ずる煙を有効に排出することができる階段をいう。
   八 二方向避難型特定共同住宅等 特定共同住宅等における火災時に、すべての住戸、共用室及び管理人室から、少なくとも一以上の避難経路を利用して安全に避難できるようにするため、避難階又は地上に通ずる二以上の異なった避難経路を確保している特定共同住宅等として消防庁長官が定める構造を有するものをいう。
   九 開放型特定共同住宅等 すべての住戸、共用室及び管理人室について、その主たる出入口が開放型廊下又は開放型階段に面していることにより、特定共同住宅等における火災時に生ずる煙を有効に排出することができる特定共同住宅等として消防庁長官が定める構造を有するものをいう。
   十 二方向避難・開放型特定共同住宅等 特定共同住宅等における火災時に、すべての住戸、共用室及び管理人室から、少なくとも一以上の避難経路を利用して安全に避難できるようにするため、避難階又は地上に通ずる二以上の異なった避難経路を確保し、かつ、その主たる出入口が開放型廊下又は開放型階段に面していることにより、特定共同住宅等における火災時に生ずる煙を有効に排出することができる特定共同住宅等として消防庁長官が定める構造を有するものをいう。
   十一 その他の特定共同住宅等 前三号に掲げるもの以外の特定共同住宅等をいう。
   
十二 住宅用消火器 消火器の技術上の規格を定める省令(昭和三十九年自治省令第二十七号)第一条の二第二号に規定するものをいう。
   十三 共同住宅用スプリンクラー設備 特定共同住宅等における火災時に火災の拡大を初期に抑制するための設備であって、スプリンクラーヘッド(閉鎖型スプリンクラーヘッドの技術上の規格を定める省令(昭和四十年自治省令第二号)第二条第一号の二に規定する小区画型ヘッドをいう。以下同じ。)、制御弁、自動警報装置、加圧送水装置、送水口等で構成され、かつ、住戸、共用室又は管理人室ごとに自動警報装置の発信部が設けられているものをいう。

   
十四 共同住宅用自動火災報知設備 特定共同住宅等における火災時に火災の拡大を初期に抑制し、かつ、安全に避難することを支援するために、特定共同住宅等における火災の発生を感知し、及び当該特定共同住宅等に火災の発生を報知する設備であって、受信機(受信機に係る技術上の規格を定める省令(昭和五十六年自治省令第十九号)第二条第七号に規定するものをいう。以下同じ。)、感知器(火災報知設備の感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令(昭和五十六年自治省令第十七号。以下「感知器等規格省令」という。)第二条第一号に規定するものをいう。以下同じ。)、戸外表示器(住戸等の外部において、受信機から火災が発生した旨の信号を受信し、火災の発生を報知するものをいう。以下同じ。)等で構成され、かつ、自動試験機能(中継器に係る技術上の規格を定める省令(昭和五十六年自治省令第十八号。以下「中継器規格省令」という。)第二条第十二号に規定するものをいう。)又は遠隔試験機能(中継器規格省令第二条第十三号に規定するものをいう。以下同じ。)を有することにより、住戸の自動試験機能等対応型感知器(感知器等規格省令第二条第十九号の三に規定するものをいう。以下同じ。)の機能の異常が当該住戸の外部から容易に確認できるものをいう。
   十五 住戸用自動火災報知設備 特定共同住宅等における火災時に火災の拡大を初期に抑制し、かつ、安全に避難することを支援するために、住戸等における火災の発生を感知し、及び当該住戸等に火災の発生を報知する設備であって、受信機、感知器、戸外表示器等で構成され、かつ、遠隔試験機能を有することにより、住戸の自動試験機能等対応型感知器の機能の異常が当該住戸の外部から容易に確認できるものをいう。
   十六 共同住宅用非常警報設備 特定共同住宅等における火災時に安全に避難することを支援するための設備であって、起動装置、音響装置、操作部等で構成されるものをいう。
   
十七 共同住宅用連結送水管 特定共同住宅等における消防隊による活動を支援するための設備であって、放水口、配管、送水口等で構成されるものをいう。
   十八 共同住宅用非常コンセント設備 特定共同住宅等における消防隊による活動を支援するための設備であって、非常コンセント、配線等で構成されるものをいう。

 とあり、
 「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」第2条1号によれば、
 「特定共同住宅等 令別表第一(五)項ロに掲げる防火対象物・・・」とあります。

 このように、消防法では、「令別表第一」と呼ばれる防火対象物を細かく規定している消防法施行令での「別表第一」の存在は重要です。令別表第一は、 
 

  とあり、「令 別表第一(5)項ロ」とは、 「寄宿舎、下宿又は共同住宅(マンションも該当する)」 のことですから、設問の「特定共同住宅等」には、ホテルは含まれないため、ホテルも含まれるは、誤りです。

  なお、上の定義で、区分所有法にも関係する「共用部分」や、「開放型廊下」なども良く読むといいでしょう。



2.住居専用のマンションにおいて、住宅用消火器及び消火器具は、火災の拡大を初期に抑制する性能を主として有する「通常用いられる消防用設備等」に代えて用いることのできる設備等に含まれる。

〇 正しい。 住居専用のマンション(特定共同住宅等)なら、住宅用消火器及び消火器具は、火災の拡大を初期に抑制する性能を主として有する「通常用いられる消防用設備等」に代えて用いることのできる設備等に含まれる。

 まず、住居専用のマンションは、選択肢1で引用しましたように、共同住宅として、「令 別表第一(5)項ロ」として、「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」での、「特定共同住宅等」に該当します。

 すると、特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令 第3条
 「第三条 
特定共同住宅等(福祉施設等を除く。)において、火災の拡大を初期に抑制する性能(以下「初期拡大抑制性能」という。)を主として有する通常用いられる消防用設備等に代えて用いることができる必要とされる初期拡大抑制性能を主として有する消防の用に供する設備等は、次の表の上欄に掲げる特定共同住宅等の種類及び同表中欄に掲げる通常用いられる消防用設備等の区分に応じ、同表下欄に掲げる必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等とする。

特定共同住宅等の種類
通常用いられる消防用設備等
必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等
構造類型
階数
二方向避難型特定共同住宅等
地階を除く階数が五以下のもの
消火器具
自動火災報知設備
屋外消火栓設備
動力消防ポンプ設備
住宅用消火器及び消火器具
共同住宅用自動火災報知設備又は住戸用自動火災報知設備及び共同住宅用非常警報設備
地階を除く階数が十以下のもの
消火器具
自動火災報知設備
屋外消火栓設備
動力消防ポンプ設備
住宅用消火器及び消火器具
共同住宅用自動火災報知設備
地階を除く階数が十一以上のもの
消火器具
屋内消火栓設備(十一階以上の階に設置するものに限る。)
スプリンクラー設備
自動火災報知設備
屋外消火栓設備
動力消防ポンプ設備
住宅用消火器及び消火器具
共同住宅用スプリンクラー設備
共同住宅用自動火災報知設備
開放型特定共同住宅等
地階を除く階数が五以下のもの
消火器具
屋内消火栓設備
自動火災報知設備
屋外消火栓設備
動力消防ポンプ設備
住宅用消火器及び消火器具
共同住宅用自動火災報知設備又は住戸用自動火災報知設備及び共同住宅用非常警報設備
地階を除く階数が十以下のもの
消火器具
屋内消火栓設備
自動火災報知設備
屋外消火栓設備
動力消防ポンプ設備
住宅用消火器及び消火器具
共同住宅用自動火災報知設備
地階を除く階数が十一以上のもの
消火器具
屋内消火栓設備
スプリンクラー設備
自動火災報知設備
屋外消火栓設備
動力消防ポンプ設備
住宅用消火器及び消火器具
共同住宅用スプリンクラー設備
共同住宅用自動火災報知設備
二方向避難・開放型特定共同住宅等
地階を除く階数が十以下のもの
消火器具
屋内消火栓設備
自動火災報知設備
屋外消火栓設備
動力消防ポンプ設備
住宅用消火器及び消火器具
共同住宅用自動火災報知設備又は住戸用自動火災報知設備及び共同住宅用非常警報設備
地階を除く階数が十一以上のもの
消火器具
屋内消火栓設備
スプリンクラー設備
自動火災報知設備
屋外消火栓設備
動力消防ポンプ設備
住宅用消火器及び消火器具
共同住宅用スプリンクラー設備
共同住宅用自動火災報知設備
その他の特定共同住宅等
地階を除く階数が十以下のもの
消火器具
自動火災報知設備
屋外消火栓設備
動力消防ポンプ設備
住宅用消火器及び消火器具
共同住宅用自動火災報知設備
地階を除く階数が十一以上のもの
消火器具
屋内消火栓設備(十一階以上の階に設置するものに限る。)
スプリンクラー設備
自動火災報知設備
屋外消火栓設備
動力消防ポンプ設備
住宅用消火器及び消火器具
共同住宅用スプリンクラー設備
共同住宅用自動火災報知設備

 (以下、略)」
 とあり、
 特定共同住宅等に該当する、住居専用のマンションなら、その構造類型、階数に関係なく、住宅用消火器及び消火器具は、火災の拡大を、初期に抑制する性能(
初期拡大抑制性能)を主として有する消防の用に供する設備等として、通常用いられる消防用設備等に代えて用いることができますから、正しい。

 注:住宅用消火器・・・初期火災において、消火する人が安全にかつ確実に消火することができるもの。
   消火器具・・・消火器具とは、初期段階の火災の消火を主目的としたもので、消火器及び簡易消火用具をいう。


  


3.住居専用のマンションにおいて、共同住宅用自動火災報知設備は、火災時に安全に避難することを支援する性能を主として有する「通常用いられる消防用設備等」に代えて用いることのできる設備等に含まれる。

〇 正しい。 住居専用のマンション(特定共同住宅等。(福祉施設等を除く。))なら、共同住宅用自動火災報知設備は、火災時に安全に避難することを支援する性能を主として有する「通常用いられる消防用設備等」に代えて用いることのできる設備等に含まれる。

 共同住宅用自動火災報知設備となると、「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」 第4条
 「
第四条 特定共同住宅等(福祉施設等を除く。)において、火災時に安全に避難することを支援する性能(以下「避難安全支援性能」という。)を主として有する通常用いられる消防用設備等に代えて用いることができる必要とされる避難安全支援性能を主として有する消防の用に供する設備等は、次の表の上欄に掲げる特定共同住宅等の種類及び同表中欄に掲げる通常用いられる消防用設備等の区分に応じ、同表下欄に掲げる必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等とする。

特定共同住宅等の種類
通常用いられる消防用設備等
必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等
構造類型
階数
二方向避難型特定共同住宅等
地階を除く階数が五以下のもの
自動火災報知設備
非常警報器具又は非常警報設備
避難器具
共同住宅用自動火災報知設備又は住戸用自動火災報知設備及び共同住宅用非常警報設備
地階を除く階数が六以上のもの
自動火災報知設備
非常警報器具又は非常警報設備
避難器具
共同住宅用自動火災報知設備
開放型特定共同住宅等
地階を除く階数が五以下のもの
自動火災報知設備
非常警報器具又は非常警報設備
避難器具
誘導灯及び誘導標識
共同住宅用自動火災報知設備又は住戸用自動火災報知設備及び共同住宅用非常警報設備
地階を除く階数が六以上のもの
自動火災報知設備
非常警報器具又は非常警報設備
避難器具
誘導灯及び誘導標識
共同住宅用自動火災報知設備
二方向避難・開放型特定共同住宅等
地階を除く階数が十以下のもの
自動火災報知設備
非常警報器具又は非常警報設備
避難器具
誘導灯及び誘導標識
共同住宅用自動火災報知設備又は住戸用自動火災報知設備及び共同住宅用非常警報設備
地階を除く階数が十一以上のもの
自動火災報知設備
非常警報器具又は非常警報設備
避難器具
誘導灯及び誘導標識
共同住宅用自動火災報知設備
その他の特定共同住宅等
すべてのもの
自動火災報知設備
非常警報器具又は非常警報設備
避難器具
共同住宅用自動火災報知設備

 とあり、
 特定共同住宅等に該当する、住居専用のマンションなら、その構造類型、階数に関係なく、共同住宅用自動火災報知設備は、火災時に安全に避難することを支援する性能(避難安全支援性能)を主として有する「通常用いられる消防用設備等」に代えて用いることのできる設備等に含まれるは、正しい。

 注:共同住宅用自動火災報知設備 「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」第2条14号
  
十四 共同住宅用自動火災報知設備 特定共同住宅等における火災時に火災の拡大を初期に抑制し、かつ、安全に避難することを支援するために、特定共同住宅等における火災の発生を感知し、及び当該特定共同住宅等に火災の発生を報知する設備であって、受信機(受信機に係る技術上の規格を定める省令(昭和五十六年自治省令第十九号)第二条第七号に規定するものをいう。以下同じ。)、感知器(火災報知設備の感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令(昭和五十六年自治省令第十七号。以下「感知器等規格省令」という。)第二条第一号に規定するものをいう。以下同じ。)、戸外表示器(住戸等の外部において、受信機から火災が発生した旨の信号を受信し、火災の発生を報知するものをいう。以下同じ。)等で構成され、かつ、自動試験機能(中継器に係る技術上の規格を定める省令(昭和五十六年自治省令第十八号。以下「中継器規格省令」という。)第二条第十二号に規定するものをいう。)又は遠隔試験機能(中継器規格省令第二条第十三号に規定するものをいう。以下同じ。)を有することにより、住戸の自動試験機能等対応型感知器(感知器等規格省令第二条第十九号の三に規定するものをいう。以下同じ。)の機能の異常が当該住戸の外部から容易に確認できるものをいう。

 

4.住居専用のマンションにおいて、共同住宅用連結送水管は、消防隊による活動を支援する性能を主として有する「通常用いられる消防用設備等」に代えて用いることのできる設備等に含まれる。

〇 正しい。 住居専用のマンション(特定共同住宅等。(福祉施設等を除く。))なら、共同住宅用連結送水管は、消防隊による活動を支援する性能を主として有する「通常用いられる消防用設備等」に代えて用いることのできる設備等に含まれる。

  特定共同住宅等での、共同住宅用連結送水管は、「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」 第5条
 「(必要とされる消防活動支援性能を有する消防の用に供する設備等に関する基準)
  第五条 特定共同住宅等(住戸、共用室及び管理人室について、その主たる出入口が階段室等に面する特定共同住宅等に限る。)において、消防隊による活動を支援する性能(以下「消防活動支援性能」という。)を主として有する通常用いられる消防用設備等(
連結送水管及び非常コンセント設備に限る。)に代えて用いることができる必要とされる消防活動支援性能を主として有する消防の用に供する設備等は、共同住宅用連結送水管及び共同住宅用非常コンセント設備とする。
2 前項に規定するもののほか、特定共同住宅等における必要とされる消防活動支援性能を主として有する消防の用に供する設備等の設置及び維持に関する技術上の基準は、次のとおりとする。
   一 共同住宅用連結送水管は、次のイからハまでに定めるところによること。
     イ 放水口は、階段室等又は非常用エレベーターの乗降ロビーその他これらに類する場所ごとに、消防隊が有効に消火活動を行うことができる位置に設けること。
     ロ 放水口は、三階及び当該階から上方に数えた階数三以内ごとに、かつ、特定共同住宅等の各部分から一の放水口に至る歩行距離が五十メートル以下となるように、設けること。
     ハ イ及びロに規定するもののほか、共同住宅用連結送水管は、令第二十九条第二項第二号から第四号まで並びに規則第三十条の四及び第三十一条の規定の例により設置すること。
   二 共同住宅用非常コンセント設備は、次のイからハまでに定めるところによること。
     イ 非常コンセントは、階段室等又は非常用エレベーターの乗降ロビーその他これらに類する場所ごとに、消防隊が有効に消火活動を行うことができる位置に設けること。
     ロ 非常コンセントは、十一階及び当該階から上方に数えた階数三以内ごとに、かつ、特定共同住宅等の各部分から一の非常コンセントに至る歩行距離が五十メートル以下となるように、設けること。
     ハ イ及びロに規定するもののほか、共同住宅用非常コンセント設備は、令第二十九条の二第二項第二号及び第三号並びに規則第三十一条の二の規定の例により設置すること。

 とあり、
 共同住宅用連結送水管及び共同住宅用非常コンセント設備なら、消防隊による活動を支援する性能(
消防活動支援性能)を主として有する「通常用いられる消防用設備等」に代えて用いることのできる設備等に含まれていますから、正しい

 注:「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」第2条17号
 十七 
共同住宅用連結送水管 特定共同住宅等における消防隊による活動を支援するための設備であって、放水口、配管、送水口等で構成されるものをいう。」




答え:1

 
「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」からの出題とは、細かい!
 一応、平成28年の出題を憶えていたから、概要が分かっていた。
 でも、今回、かなり詳細に解説したので、4時間もかかった。

 かなりの、難問だ。 


  消防法 についても、出題がおおいので、過去問題から 取り出していますから、参考にしてください。

《タグ》消防法 「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」 特定共同住宅等 消火器 自動火災報知設備 連結送水管

問24

【問 24】 住生活基本法に基づき、2016年に閣議決定された「住生活基本計画(全国計画)」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1.高齢者が自立して暮らすことができる住生活の実現に関し、基本的な施策の一つに、「『新たな高齢者向け住宅のガイドライン』の検討・創設」が示された。

〇 適切である。 高齢者対策の1つとして、『新たな高齢者向け住宅のガイドライン』の検討・創設」がある。

 住生活基本法からの出題は、過去には、平成25年 管理業務主任者試験 「問44」 選択肢3 がある。

 なお、法律と異なり、閣議決定からの出題で、「正しい」とか「誤っている」を使用するのは、適切ではないため、解答は「適切である」と「適切でない」にします。
 
 まず、住生活基本法とは、もともとあった、住宅建設計画法での住宅建設5箇年計画では、日本の人口と世帯数が減少していく状況には対応できないことを背景に、2006年(平成18年)6月8日に、住宅政策の指針として、施行された法律です。
 国民の豊かな住生活の実現を図るため、住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策について、その基本理念、国等の責務、住生活基本計画の策定その他の基本となる事項について定めています。


 その、住生活基本法の基本理念には、以下の4つ、
  1.住生活の基盤である良質な住宅の供給
  2.良好な居住環境の形成
  3.居住のために住宅を購入するもの等の利益の擁護.増進
  4.居住の安定の確保
 があります。
 具体的には、耐震化率・ユニバーサルデザイン化率・省エネ率・住宅性能表示実施率などの目標値を示した「
住生活基本計画」が策定されています。

 そこで、2016年(平成28年)3月に、5年振りに「住生活基本計画」の見直しがなされ、2016年度から2025年年度までの10年間の住宅政策の指針となる住生活基本計画(全国計画)が閣議決定され、次の8つの目標が掲げられました。

  《居住者からの視点》
  目標1:結婚・出産を希望する若年・子育て世帯が安心して暮らせる住生活の実現
  
目標2:高齢者が自立して暮らすことができる住生活の実現
  目標3:住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保

  《住宅ストックからの視点》
  目標4:住宅すごろくを超える新たな住宅循環システムの構築
  
目標5:建替えやリフォームによる安全で質の高い住宅ストックへの更新
  目標6:急増する空き家の活用・除却の推進

  《産業・地域からの視点》
  目標7:強い経済の実現に貢献する住生活産業の成長
  目標8:住宅地の魅力の維持・向上


  これを踏まえて、 住生活基本計画(全国計画)  2016年(平成28年)3月18日付 の8つの目標の1つとして、
 「 
目標2 高齢者が自立して暮らすことができる住生活の実現
 (基本的な施策)
  (1)住宅のバリアフリー化やヒートショック対策を推進するとともに、高齢者の身体機能や認知機能、介護・福祉サービス等の状況を考慮した部屋の配置や設備等高齢者向けの住まいや多様な住宅関連サービスのあり方を示した「
新たな高齢者向け住宅のガイドライン」を検討・創設
  (2)まちづくりと調和し、高齢者の需要に応じたサービス付き高齢者向け住宅等の供給促進や「生涯活躍のまち」の形成
  (3)公的賃貸住宅団地の建替え等の機会をとらえた高齢者世帯・子育て世帯等の支援に資する施設等の地域の拠点の形成
  (4)公的保証による民間金融機関のバックアップなどによりリバースモーゲージの普及を図り、高齢者の住み替え等の住生活関連資金の確保
  (5)高齢者の住宅資産の活用や住み替えに関する相談体制の充実 」
 とあり、
 高齢者が自立して暮らすことができる住生活の実現に関し、基本的な施策の一つに、「『新たな高齢者向け住宅のガイドライン』の検討・創設」が示されたは、適切です。



2.建替えやリフォームによる安全で質の高い住宅ストックへの更新に関し、基本的な施策の一つに、「耐震性を充たさない住宅の建替え等による更新」が示された。

〇 適切である。 住宅ストックの更新で、「耐震性を充たさない住宅の建替え等による更新」が示された。

 選択肢1で説明しましたように、2016年の住生活基本計画(全国計画)の閣議決定の8つの目標の1つで、
 「
目標5 建替えやリフォームによる安全で質の高い住宅ストックへの更新
 (基本的な施策)
  (1)質の高い住宅ストックを将来世代へ承継するため、
耐震性を充たさない住宅の建替え等による更新
  (2)耐震化リフォームによる耐震性の向上、長期優良住宅化リフォームによる耐久性等の向上、省エネリフォームによる省エネ性の向上と適切な維持管理の促進
  (3)ヒートショック防止等の健康増進・魅力あるデザイン等の投資意欲が刺激され、あるいは効果が実感できるようなリフォームの促進
  (4)密集市街地における安全を確保するための住宅の建替えやリフォームの促進策を検討
  (5)民間賃貸住宅の計画的な維持管理を促進するため、必要となる修繕資金が確保されるための手段を幅広く検討
  (6)リフォームに関する消費者の相談体制や消費者が安心してリフォーム事業者を選択するためのリフォーム事業者団体登録制度の充実・普及
  (7)マンションに関しては、総合的な施策を講じることにより、適切な維持管理や建替え・改修を促進
    @敷地売却制度等を活用したマンションの円滑な建替え・改修や再開発事業を活用した住宅団地の再生を促進
    A空き家が多いマンションにも対応できる合意形成や団地型マンションの円滑な建替えを促進するための新たな仕組みを構築
    B管理組合の担い手不足への対応、管理費等の確実な徴収や長期修繕計画及び修繕積立金の設定により適切な維持管理を推進」
 とあり、
 建替えやリフォームによる安全で質の高い住宅ストックへの更新に関し、基本的な施策の一つに、「耐震性を充たさない住宅の建替え等による更新」が示されたは、適切です。



3.急増する空き家の活用・除却の推進に関し、基本的な施策の一つに、「良質な既存住宅が市場に流通し、空き家増加が抑制される新たな住宅循環システムの構築」が示された。

〇 適切である。 急増する空き家の活用・除却の推進に関し、「良質な既存住宅が市場に流通し、空き家増加が抑制される新たな住宅循環システムの構築」が示された。


 選択肢1で説明しましたように、2016年の住生活基本計画(全国計画)の閣議決定の8つの目標の1つで、
 「
目標6 急増する空き家の活用・除却の推進
 (基本的な施策)
  (
1)良質な既存住宅が市場に流通し、空き家増加が抑制される新たな住宅循環システムの構築
  (2)空き家を活用した地方移住、二地域居住等の促進
  (3)伝統的な日本家屋としての古民家等の再生や他用途活用を促進
  (4)介護、福祉、子育て支援施設、宿泊施設等の他用途への転換の促進
  (5)定期借家制度、DIY型賃貸借等の多様な賃貸借の形態を活用した既存住宅の活用促進
  (6)空き家の利活用や売却・賃貸に関する相談体制や、空き家の所有者等の情報の収集・開示方法の充実
  (7)防災・衛生・景観等の生活環境に悪影響を及ぼす空き家について、空家等対策の推進に関する特別措置法などを活用した計画的な解体・撤去を促進 」
 とあり、
 急増する空き家の活用・除却の推進に関し、基本的な施策の一つに、「良質な既存住宅が市場に流通し、空き家増加が抑制される新たな住宅循環システムの構築」が示されたは、適切です。



4.強い経済の実現に貢献する住生活産業の成長に関し、基本的な施策の一つに、「住生活産業の市場規模をさらに拡大するための、新築住宅の供給戸数の増大に資する支援の推進」が示された。

X 適切でない。 強い経済の実現に貢献する住生活産業の成長に関し、「住生活産業の市場規模をさらに拡大するための、新築住宅の供給戸数の増大に資する支援の推進」が示されていない。

 選択肢1で説明しましたように、2016年の住生活基本計画(全国計画)の閣議決定の8つの目標の1つに、
 「
目標7 強い経済の実現に貢献する住生活産業の成長
 (基本的な施策)
  (1)地域経済を支える地域材を用いた良質な木造住宅の供給促進やそれを担う設計者や技能者の育成等の生産体制整備
  (2)伝統的な技術を確実に承継し発展させるとともに、CLT(直交集成板)等の部材・工法等の新たな技術開発を推進
  (3)既存住宅の維持管理、リフォーム、空き家管理等のいわゆる住宅ストックビジネス※の活性化を推進するとともに、多角化する住生活産業に対応した担い手を確保し、研修等による育成を強化
   ※定期メンテナンス、建物状況調査(インスペクション)、住宅ファイル、空き家巡回サービス、DIY ビジネス、BIM データ等
  (4)生活の利便性の向上と新たな市場創出のため、子育て世帯・高齢者世帯など幅広い世帯の ニーズに応える住生活関連の新たなビジネス※市場の創出・拡大を促進するとともに、住生活産業の海外展開を支援するなど、我が国の住生活産業の成長を促進
   ※家事代行、暮らしのトラブル駆けつけ、防犯・セキュリティ技術、保管クリーニング、粗大ゴミ搬出、家具移動、食事宅配、ICT対応型住宅、遠隔健康管理、IoT 住宅、ロボット技術等 」
 とはありますが、
 設問の「住生活産業の市場規模をさらに拡大するための、新築住宅の供給戸数の増大に資する支援の推進」は、ないため、適切ではありません。

 人口が減るのに、新築住宅を増やすのはおかしいと気付くこと。


答え: 4

  住生活基本計画(全国計画)の閣議決定からの出題とは、余りにも、細かな箇所からの出題で、管理業務主任者試験としては、実に不適切な出題です。

  何となく、文章から、選択肢4は、おかしいと分かるが、ずばり「正解」となると、難しい。
 
 平成30年の管理業務主任者試験は、実に難問ばかりだ。根拠を探すのに、時間がかかる。

 解答は、法律と異なり、閣議決定からの出題で、「正しい」とか「誤っている」を使用するのは、適切ではないため、解答は「適切である」と「適切でない」にします。
 

《タグ》住生活基本法 住生活基本計画(全国計画)の閣議決定 8つの目標 

問25

【問 25】 次の記述のうち、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律によれば、誤っているものはどれか。

1.共同住宅は特定建築物であり、特定建築物には、これに附属する建築物特定施設を含む。

〇 正しい。 共同住宅は特定建築物。
  平成28年 マンション管理士試験 「問41」 、 平成28年 管理業務主任者試験 「問44」 、 平成25年 管理業務主任者試験 「問44」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問40」  、 


 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律 とは
 平成18年(2006年)12月20日に施行された「高齢者・障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」で、従来の「ハートビル法(多数の人が利用する建築物対象)平成6年制定」と「交通バリアフリー法(駅や空港といった旅客施設を対象)(平成12年制定」を一本化した法律です。
 2020年に開かれる東京オリンピック・パラリンピック競技大会を機会に、更にバリアフリー化を推進する方向で法の改正があった。2018年(平成30年)5月25日施行。


 

 既存建物の増改築(用途変更を含む、建築確認が伴うもの)を行う場合に当法の対象となります。
 特定建築物の増改築では「建築物移動等円滑化基準」への適合努力義務が、特別特定建築物の増改築では同基準への適合義務があります。

 そこで、設問の「特定建築物」は、 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律第2条16号
 「定義)
  第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 十六
 特定建築物 学校、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、ホテル、事務所、共同住宅、老人ホームその他の多数の者が利用する政令で定める建築物又はその部分をいい、これらに附属する建築物特定施設を含むものとする。
 とあり、
 共同住宅は特定建築物であり、特定建築物には、これに附属する建築物特定施設を含むは、正しい。



2.建築主等は、特定建築物(特別特定建築物を除く。)の建築をしようとするときは、当該特定建築物を建築物移動等円滑化基準に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

〇 正しい。 特定建築物では、建築物移動等円滑化基準に適合は努力義務である。


 設問は、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律 第16条
 「(特定建築物の建築主等の努力義務等)
  第十六条 建築主等は、
特定建築物(特別特定建築物を除く。以下この条において同じ。)の建築(用途の変更をして特定建築物にすることを含む。次条第一項において同じ。)をしようとするときは、当該特定建築物を建築物移動等円滑化基準に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
 2 建築主等は、特定建築物の建築物特定施設の修繕又は模様替をしようとするときは、当該建築物特定施設を建築物移動等円滑化基準に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
 3 所管行政庁は、特定建築物について前二項に規定する措置の適確な実施を確保するため必要があると認めるときは、建築主等に対し、建築物移動等円滑化基準を勘案して、特定建築物又はその建築物特定施設の設計及び施工に係る事項について必要な指導及び助言をすることができる。

 とあり、
 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律 第16条1項によれば、建築主等は、特定建築物(特別特定建築物を除く。)の建築をしようとするときは、当該特定建築物を建築物移動等円滑化基準に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならないは、正しい。


 なお、建築物移動等円滑化基準とは

 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令第10条
 「(建築物移動等円滑化基準)
 第十条 法第十四条第一項の政令で定める建築物特定施設の構造及び配置に関する基準は、次条から第二十三条までに定めるところによる。」
 とあり、
 廊下、階段、傾斜路、便所、ホテル又は旅館の客室、敷地内の通路、駐車場、移動等円滑化経路、標識、案内設備、案内設備までの経路、増築等に関する適用範囲、条例で定める特定建築物に関する読替え、また認定特定建築物の容積率の特例として、認定特定建築物の延べ面積の十分の一を限度として、当該認定特定建築物の建築物特定施設の床面積のうち、通常の建築物の建築物特定施設の床面積を超えることとなるものとして国土交通大臣が定めるものとするもある。


  


3.建築物移動等円滑化基準では、主として高齢者、障害者等が利用する階段は、回り階段以外の階段を設ける空間を確保することが困難であるときを除き、主たる階段は回り階段でないこととしている。

〇 正しい。 主たる階段は、原則として、回り階段でないこと。

 建築物移動等円滑化基準による、階段は、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令第12条
 「(階段)
 第十二条 
不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する階段は、次に掲げるものでなければならない
   一 踊場を除き、手すりを設けること。
   二 表面は、粗面とし、又は滑りにくい材料で仕上げること。
   三 踏面の端部とその周囲の部分との色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより段を容易に識別できるものとすること。
   四 段鼻の突き出しその他のつまずきの原因となるものを設けない構造とすること。
   五 段がある部分の上端に近接する踊場の部分(不特定かつ多数の者が利用し、又は主として視覚障害者が利用するものに限る。)には、視覚障害者に対し警告を行うために、点状ブロック等を敷設すること。ただし、視覚障害者の利用上支障がないものとして国土交通大臣が定める場合は、この限りでない。
   
六 主たる階段は、回り階段でないこと。ただし、回り階段以外の階段を設ける空間を確保することが困難であるときは、この限りでない
 とあり、
 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令第12条6号によれば、建築物移動等円滑化基準では、主として高齢者、障害者等が利用する階段は、回り階段以外の階段を設ける空間を確保することが困難であるときを除き、主たる階段は回り階段でないこととしているは、正しい。


 なお、回り階段は、螺旋(らせん)状に回りながら上下する階段です。段差のない「踊り場」がありません。


 


4.建築物移動等円滑化基準では、主として高齢者、障害者等が利用する駐車場を設ける場合には、そのうち1以上に、車いす使用者が円滑に利用することができる駐車施設を3 以上設けなければならない。

X 誤っている。 車いす使用者用駐車施設は、1以上でいい。 3以上ではない。

 設問の、駐車場は、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令第17条
 「駐車場)
  第十七条 
不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する駐車場を設ける場合には、そのうち一以上に、車いす使用者が円滑に利用することができる駐車施設(以下「車いす使用者用駐車施設」という。)を一以上設けなければならない
 2 車いす使用者用駐車施設は、次に掲げるものでなければならない。
   一 幅は、三百五十センチメートル以上とすること。
   二 次条第一項第三号に定める経路の長さができるだけ短くなる位置に設けること
。」
 とあり、
 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令第17条1項によれば、建築物移動等円滑化基準では、主として高齢者、障害者等が利用する駐車場を設ける場合には、そのうち1以上に、車いす使用者が円滑に利用することができる駐車施設を1以上設ければよく、3 以上設けなければならないは、誤りです。

 よく読めば、おかしいのは分かる。


答え: 4

  
選択肢3 の回り階段は、正誤が難しい。
  選択肢4 で、車いす使用者用の駐車施設を3 以上は、かなり多いと気付けば、いいが。

《タグ》高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律 特定建築物 共同住宅(マンション) 努力義務 階段 駐車場

ここまで、問25


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2019年 4月 8日:再考 終わり。
2019年 3月 7日:どうやら、「問25」まで、解説が終わった。
2019年 3月 4日:少し中断していて「問20」の解説に戻る。
2019年 2月22日:「問19」の解説に戻る。
解説:「問18」まで:2019年 2月 4日。ここから、「問29」へ飛ぶ。
解説開始:2018年12月28日
問題文Up:2018年12月27日

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