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平成29年(2017年) 管理業務主任者 試験問題 及び 解説

ページ1(問1より問25まで)

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謝辞:当問題の作成にあたっては、GORO様のご協力を戴いております。
テキスト文への変更など、ご助力を心から感謝いたします。

※ 出題当時以後の法令等の改正には、一部は対応していません。

*試験に臨んで、お節介なアドバイス
  1.設問にあわせて、問題用紙に ○(まる)、X(ばつ)をつける。
    殆どの設問が、「正しい」か「間違い」かを訊いてきますので、設問により、問題の頭に、○かXをつけます。
    そして、各選択肢を読み、○かXをつけます。
    問題の○なりXと、選択肢の○かXが一致したものを、マークシートに記入してください。

  2.疑問な問題は、とりあえず飛ばす。
    回答の時間は限られています。
    そこで、回答として、○かXかはっきりしないものがでたら、「?」マークをつけて、次の問題に移ります。
    全部の回答が終わってから、再度戻って決定してください。

  3.複雑な問は、図を描く。
    甲、乙、A、B、Cなど対象が多い問題もでます。
    この場合、問題用紙の空いているところに、図を描いてください。

   重要な点が分かってきます。

出題者からの注意

平成29年(2017年)度 管理業務主任者試験  問題
 実施:平成29年12月 3日

次の注意事項をよく読んでから、始めてください。

(注意)

1 これは試験問題です。問題は、1ページから32ページまで50問です。
2 試験の開始の合図と同時に、問題のページ数を確認してください。もし落丁や乱丁があった場合は、ただちに試験監督員に申し出てください。
3 解答は、別紙の解答用紙に記入してください。
4 正解は、各問題とも1つだけです。複数の解答をしたもの、判読が困難なものは、正解としません。
  解答は、解答用紙の注意事項をよく読み、所定の要領で記入してください。
5 問題中の法令等に関する部分は、平成29年4月1日現在で施行されている規定に基づいて出題されています。

 本試験問題では、以下の法律等について、それぞれ右欄に記載の略称を使用しています。

 

 ※マンション標準管理規約(団地型)及びマンション標準管理規約(団地型)コメントについては、略称を使用していません。


解説者(マンション管理士 香川)からのコメント:あやふやな出題、適切でない出題もあって、解答ができないのもあります。

※  ・マンション標準管理委託契約書は、平成30年3月9日付で24条に「反社会勢力の排除」などの改正があり、平成30年度の試験から出題適用となるので注意のこと。

   ・マンション標準管理規約は、平成29年8月29日付で「民泊」で12条に改正があり、平成30年度の試験から出題適用となるので注意のこと。

    ・マンションの管理の適正化に関する指針(国土交通省告示第490号)及びマンション標準管理規約は、平成28年3月14日付で大幅な改正があった。
  
   ・マンション標準管理委託契約書は、平成28年7月に改正があり、平成29年度の試験から出題適用となるので注意のこと。
   
   ・マンション標準管理規約は、平成16年に改正があった。また、平成23年7月にも小幅な改正があった。
   ・マンション標準管理委託契約書は、平成15年に改正があった。また、平成22年5月にも改正があった。

問1

【問 1】 A、B及びCは、マンション(マンション管理適正化法第2条第1号に規定するものをいう。以下同じ。)の一住戸を共有しており、その持分は、Aが3分の2、BとCがそれぞれ6分の1である。この場合に関する次の記述のうち、民法、区分所有法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 Aは、BとCの同意を得なくても、当該住戸について、単独で抵当権を設定できる。

X 誤っている。 抵当権の設定は、変更行為に該当し、全員の同意が必要となる。 過半数を持っていても単独ではできない。

 平成28年 管理業務主任者試験 「問4」 、平成28年 マンション管理士試験 「問12」 、平成26年 マンション管理士試験 「問26」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問3」 、 平成24年マンション管理士試験 「問10」 、平成21年管理業務主任者試験 「問4」、 平成20年マンション管理士試験 「問15」

 このような、設問に対しては、図を描きましょう。
 民法での共有関係では、各自の持分は、非常に重要な意味を持ちます。

 

 まず、共有関係なら、民法第251条 と 第252条が重要です。

 「(共有物の変更)
 第二百五十一条 
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない
 とあり、
 変更行為に該当すると、単独ではなにもできず、他の共有者全員の同意(合意)が必要です。


 そして、民法第252条
 「
(共有物の管理)
 第二百五十二条
 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

 とあり、
 管理行為に関するなら、持分価格の過半数で決し、保存行為なら、単独でできるということです。


 そこで、これらを纏めますと、共有関係にあると、
  @
変更行為…共有物の性質もしくは、形状または、その両者を変更する行為だけでなく、全体を処分する(譲渡、抵当権の設定など)なら、全員の同意(合意)が必要で、
  A
管理行為…利用、改良、賃貸借契約の解除なら、持分価格の過半数で行い
  B
保存行為…現状維持、修繕、無権限の第三者に対する共有物の返還請求、などなら、各人が単独でできる
 ということですが、何が管理行為で何が保存行為かの判断が難しく、基準は裁判での判例によります。 

 設問の「抵当権を設定」する行為は、
変更行為に該当しますから、民法第251条により、これは、共有者全員の合意(同意)が必要となり、「2/3を有するAであっても、他の共有者BとCの同意を得なくては、当該住戸について、単独で抵当権を設定」できず、誤りです。


2 Cが当該住戸を単独で占有している場合に、AとBは、Cの持分が少ないからといって、Cに対して明渡しを請求できるとは限らない。

〇 正しい。 多数持分権者が少数持分権者に対して共有物の明渡を求めることができるためには、”その明渡を求める理由を主張し立証”しなければいけない。
 平成28年 マンション管理士試験 「問12」 、平成28年 管理業務主任者試験 「問37」 、 平成27年 マンション管理士試験 「問14」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問3」 、平成24年 マンション管理士試験 「問12」 、平成21年 管理業務主任者試験 「問4」 、平成20年 マンション管理士試験 「問15」 、平成19年 管理業務主任者試験 「問5」

 共有者は、基本的に民法第249条
 「(共有物の使用)
 第二百四十九条 
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる
 とあり、
 持分が少なくても、共有している物を全部使用できます。 

 それなら、持分1/6であるCが単独で”占有”している家の場合には、他の持分の過半数を有している共有者は、管理行為として、Cに明渡し(立ち退き)を迫れるのかということです。


 民法の条文に規定されていない文章が国家資格で出題された時には、その正誤を訊く根拠は、判例にあります。
 民法は、その設定が、明治29年ですから、条文に規定されていない争いに対して多くの判例があり重要な判例も記憶しておいてください。

 該当の事件は、昭和41年5月19日:最高裁判所の判決 があります。
 それによりますと、
持分の価格の過半数を超える共有者(多数持分権者)であっても、少数の持分を持っている共有者(少数持分権者)が単独に目的物を占有していても、”当然”には明渡しを求めることはできないと いうことです。
 当然ではなく、多数持分権者が少数持分権者に対して共有物の明渡を求めることができるためには、”その明渡を求める理由を主張し立証”しなければいけないとあります

 よって「Cが当該住戸を単独で占有している場合に、AとBは、Cの持分が少ないからといって、Cに対して明渡しを請求できるとは限らない」は、正しい。



3 Bが、自らの専有部分の共有持分を放棄したときは、その共有持分は、共用部分及び敷地のBの共有持分とともに、AとCにそれぞれの持分に応じて帰属する。

〇 正しい? 共有者が専有部分の持分を放棄すると、他の共有者に共用部分と敷地利用権も移る。
  平成28年 マンション管理士試験 「問12」  、平成26年 管理業務主任者試験 「問3」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問4」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問3」 、平成19年マンション管理士試験 「問6」 、 平成17年 管理業務主任者試験 「問4」 

 まず、民法で共有持分の放棄は、民法第255条
 「(持分の放棄及び共有者の死亡)
 第二百五十五条 
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する
 とあり、
 Bが、自ら建物の専有部分(マンションの1住戸)の共有持分を放棄したときは、その共有持分は、他の共有者であるAとCにそれぞれの持分に応じて帰属します。


 そこで、マンションでの共用部分と敷地はどうなるかといいますと、今度は、区分所有法となり、まず建物の「共用部分」は、区分所有法第15条
 「
共用部分の持分の処分
 第十五条 
共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う
2 共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。

 とあり、
 区分所有法第15条1項により、共用部分も専有部分と共に、他の共有者であるAとCにそれぞれの持分に応じて帰属します。


 そして、敷地は、ここは、設問では敷地について厳格にどうなっているのか、分離処分ができる規約の有無など条件の設定がないのですが、マンションにおける敷地利用権と考えると、区分所有法第22条
 「(分離処分の禁止)
 第二十二条 
敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
2 前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第十四条第一項から第三項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。
3 前二項の規定は、建物の専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合に準用する。

 とあり、
 区分所有法第22条1項の規定により、敷地(敷地利用権)も、専有部分と共に、他の共有者であるAとCにそれぞれの持分に応じて帰属すると考えられますから、全体として、正しいとします。


 


4 Cは、当該住戸を不法占拠する第三者に対し、単独で、その明渡しを請求することができる。

〇 正しい。 保存行為なら、単独でできる。
 平成28年 マンション管理士試験 「問12」 、成24年 マンション管理士試験 「問11」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問4」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問15」 、平成19年 管理業務主任者試験 「問5」 、平成16年 マンション管理士試験 「問14」  

 不法占拠者に対する明渡しなら、選択肢1で説明しましたように。民法第252条に定める「保存行為」と解されていて、共有持分が少なくても共有者の一人であるCが単独で明渡し請求ができますから、正しい。
 
  保存行為…現状維持、修繕、無権限の第三者に対する共有物の返還請求、などなら、各人が単独でできる

答え:1

 殆ど、平成28年 マンション管理士試験 「問12」 の出題のままとは、言いようがないけど。

 判例は、リンクを張っていますように、政府から、判例検索システム  
 http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search2
 がありますので、見てください。

 選択肢3の「敷地」の帰属については、もっと条件を設定して欲しいところです。

《タグ》民法 共有 変更行為 管理行為 保存行為 明渡し 判例 持分放棄 

問2

【問 2】 甲マンション(以下、本問において「甲」という。)において生じた不法行為に関する次の記述のうち、民法、区分所有法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 甲の管理組合法人の防災担当理事Aが、過失により防災訓練実施中に区分所有者Bにけがをさせた場合、甲の管理組合法人とともにAもBに対して損害賠償責任を負う。

〇 正しい。 法人の不法行為なら、理事として、また個人としても損害賠償責任を負う。
  平成28年 マンション管理士試験 「問16」 、平成26年 マンション管理士試験 「問14」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問16」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問16」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問12」 、平成21年 管理業務主任者試験 「問3」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問17」、 平成16年 マンション管理士試験 「問16」 他多数。

 行為者の故意または過失により、他人に損害を与えると、これは不法行為となり、民法第709条
 「(不法行為による損害賠償)
 第七百九条 
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う
 とあり、
 不法行為が成立するには、故意(損害の発生を知っていながらあえて行う)又は過失(注意義務違反)が必要です。
 そこで、民法第709条により、防災担当理事Aは、個人として、過失により防災訓練実施中に区分所有者Bにけがをさせた場合には、B(被害者)に対して損害賠償責任を負います。


 そして、管理組合が法人だと、理事は区分所有法第49条
 「(理事)
 第四十九条 管理組合法人には、理事を置かなければならない。
2 理事が数人ある場合において、規約に別段の定めがないときは、管理組合法人の事務は、理事の過半数で決する。
3 理事は、管理組合法人を代表する
4 理事が数人あるときは、各自管理組合法人を代表する
5 前項の規定は、規約若しくは集会の決議によつて、管理組合法人を代表すべき理事を定め、若しくは数人の理事が共同して管理組合法人を代表すべきことを定め、又は規約の定めに基づき理事の互選によつて管理組合法人を代表すべき理事を定めることを妨げない。
6 理事の任期は、二年とする。ただし、規約で三年以内において別段の期間を定めたときは、その期間とする。
7 理事が欠けた場合又は規約で定めた理事の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した理事は、新たに選任された理事(第四十九条の四第一項の仮理事を含む。)が就任するまで、なおその職務を行う。
8 第二十五条の規定は、理事に準用する。

 とあり、
 区分所有法第49条3項、及び4項により、管理組合法人の理事は、原則:各自が法人の代表です。


 また、管理組合法人なら、区分所有法第47条
 「(成立等)
 第四十七条 第三条に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによつて法人となる。
2 前項の規定による法人は、管理組合法人と称する。
3 この法律に規定するもののほか、管理組合法人の登記に関して必要な事項は、政令で定める。
4 管理組合法人に関して登記すべき事項は、登記した後でなければ、第三者に対抗することができない。
5 管理組合法人の成立前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人につき効力を生ずる。
6 管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
7 管理組合法人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
8 管理組合法人は、規約又は集会の決議により、その事務(第六項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
9 管理組合法人は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合においては、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。
10 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第四条及び第七十八条の規定は管理組合法人に、破産法(平成十六年法律第七十五号)第十六条第二項の規定は存立中の管理組合法人に準用する。
11 第四節及び第三十三条第一項ただし書(第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。)の規定は、管理組合法人には、適用しない。
12 管理組合法人について、第三十三条第一項本文(第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定を適用する場合には第三十三条第一項本文中「管理者が」とあるのは「理事が管理組合法人の事務所において」と、第三十四条第一項から第三項まで及び第五項、第三十五条第三項、第四十一条並びに第四十三条の規定を適用する場合にはこれらの規定中「管理者」とあるのは「理事」とする。
13 管理組合法人は、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)その他法人税に関する法令の規定の適用については、同法第二条第六号に規定する公益法人等とみなす。この場合において、同法第三十七条の規定を適用する場合には同条第四項中「公益法人等(」とあるのは「公益法人等(管理組合法人並びに」と、同法第六十六条の規定を適用する場合には同条第一項及び第二項中「普通法人」とあるのは「普通法人(管理組合法人を含む。)」と、同条第三項中「公益法人等(」とあるのは「公益法人等(管理組合法人及び」とする。
14 管理組合法人は、消費税法(昭和六十三年法律第百八号)その他消費税に関する法令の規定の適用については、同法別表第三に掲げる法人とみなす。

 とあり、

 区分所有法第47条10項の、
 「10 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第四条及び
第七十八条の規定は管理組合法人に、破産法(平成十六年法律第七十五号)第十六条第二項の規定は存立中の管理組合法人に準用する。」
 での、準用されています、
 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第4条と78条は、
 「(住所)
 第四条 一般社団法人及び一般財団法人の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとする。


 同第78条
 「(代表者の行為についての損害賠償責任)
 第七十八条 
一般社団法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う
 です。


 設問の理事の不法行為に関係しているのは、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第78条で、ここでの代表理事など代表機関の行為には、民法第709条と同様に、「故意または過失により他人の権利を侵害するもの」の要件が必要と考えられていますから、管理組合法人も代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負うことになります。

 そこで、設問に戻り、管理組合法人の損害賠償責任と加害者としての損害賠償責任の両方が発生するのかですが、これについては、大審院 昭和7年5月27日:「法人が代表者の行為について不法行為責任を負う場合には、代表者個人も民法第709条によって不法行為責任を負う」が、ありますので、甲の管理組合法人の防災担当理事Aが、過失により防災訓練実施中に区分所有者Bにけがをさせた場合、甲の管理組合法人とともにAもBに対して損害賠償責任を負うは、正しい。


2 甲の管理組合法人から設備点検を受託している設備会社Cの従業員が、過失により甲の施設を点検中に設備を損傷した場合、Cは、その従業員の選任及び監督について過失がなかったときでも、甲に生じた損害について損害賠償責任を負う。

X 誤っている? 判例では、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでないは、認められない傾向にはあるが。

 従業員(被用者)が、過失で損害を与えた場合の使用者の責任は、民法第715条
 「(使用者等の責任)
 第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

 とあり、
 使用者責任は、他人を使用して事業を営む者に対して、その被用者の加害行為について、賠償責任を負わせるものです。


 民法第715条1項ただし書きの「ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない」の免責事由ですが、判例や学説では、これを容易には認めていません。

 例えば、これは失火の例ですが、最高裁判所 判決: 昭和42年6月30日: 
選任監督について重大な過失ある場合にのみ使用者は責任を負うものと解すべきではない(大正二年二月五日大審院判決)
 とか、最高裁判所 判決:平成4年10月6日
私立大学の応援団員が上級生から暴行を受けて死亡した事故につき学校法人の使用者責任が認められた事例 などです。

 この出題では、疑問がありますが、一応、民法第715条1項但し書きにより、C(使用者)は、その従業員の選任及び監督について過失が無ければ、甲に生じた損害について損害賠償責任を負わないということで、誤りにします。


3 甲の区分所有者Dが、過失により浴室から漏水させ、階下の区分所有者Eに損害を与えた場合、EがDに対して損害賠償請求をした時からDは遅滞の責任を負う。

X 誤っている。 不法行為での履行遅滞は、発生時から。損害賠償請求をした時からではない。
  平成26年マンション管理士試験 「問14」 、 平成15年 管理業務主任者試験 「問9」 

 履行遅滞は、民法第412条
 「(履行期と履行遅滞)
 第四百十二条 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。
3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

 とあります。

 そこで、不法行為なら、判例:最高裁判所:昭和37年9月4日
 「
不法行為に基づく損害賠償債務は、なんらの催告を要することなく、損害の発生と同時に遅滞に陥るものと解すべきである。」
 とあり、
 判例によれば、不法行為での損害賠償における履行遅滞は、損害の発生と同時であるとのことですから、EがDに対して”損害賠償請求をした時から”は、誤りです。



4 甲の大規模修繕工事に際し、同工事を請け負った建設会社の従業員が、過失により建築資材を地上に落下させ、通行人が負傷した場合、甲の管理組合法人は、注文又は指図について過失がない場合でも、当該通行人に対して損害賠償責任を負う。

X 誤っている。 注文主は、注文又は指図について過失が無ければ、損害賠償責任はない。
  平成22年 マンション管理士試験 「問16」 、 平成17年 管理業務主任者試験 「問6」 、 平成16年 マンション管理士試験 「問17」 

 注文主の責任は、民法第716条
 「(注文者の責任)
 第七百十六条 
注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない
 とあり、
 民法第716条の但し書きにより、請負会社の従業員が過失で怪我をさせても、甲の管理組合法人は、注文又は指図について過失がない場合なら、当該通行人に対して損害賠償責任を負いませんから、誤りです。



答え:1

 不法行為と賠償はよく出題があるので、かなり詳細に説明し、また、管理組合の法人での理事なども入れので、時間がかかった!
 
 でも、選択肢2の、「使用者責任」の出題は、適切ではない。
 
 ここで、法人化された管理組合と法人でない管理組合の違いを、「マンション管理士 香川事務所」 が無料で提供しています、「超解説 区分所有法」 で勉強しておいてください。

 少し、難しいか。

《タグ》民法 区分所有法 判例 不法行為 法人の理事 使用者責任 履行遅滞 注文主の責任 

問3

【問 3】 売主Aと買主Bが、マンションの一住戸甲(以下、本問において「甲」という。)の売買契約(以下、本問において「本件契約」という。)を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 本件契約が、AとBの通謀虚偽表示により締結された場合、Bが甲の所有者と称して、甲を、その事情を知らないCに譲渡したときであっても、AはCに対し、自己の所有権を主張することができる。

X 誤っている。 通謀虚偽表示では、善意の第三者に対して、無効を主張でない。

  平成26年 管理業務主任者試験 「問1」 、 平成22年管理業務主任者試験 「問6」平成20年管理業務主任者試験 「問2」平成17年管理業務主任者試験 「問2」 

 このような時も、図を描きましょう。

 

 仮装の売買など通謀虚偽表示(相手方と通じてした虚偽の意思表示)により締結された契約は、民法第94条
 「(虚偽表示)
 第九十四条 
相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない

 とあり、
 民法第94条1項により、仮装の売買など相手方と通謀して行った嘘の意思表示は”無効(法律行為の効力が当初からない)” です。
 しかし、その嘘の意思表示であっても、その後の取引をする人の保護も考える必要もありますから、同条2項で、「善意の第三者に対抗することができない」として、最初に通謀して行った嘘の意思表示でも、それを知らない(善意といいます)人には、その無効を主張できない(対抗できない)としていますから、通謀した元の売主Aは善意の買主Cに対し、自己の所有権を主張することができるは、誤りです。


2 本件契約が、Bの強迫により締結された場合、Bが、甲を、その事情を知らないDに譲渡したときは、Aは、Bに対する意思表示を取り消したことをDに対抗することができない。

X 誤っている。 強迫による取り消しなら、善意の第三者に主張(対抗)できる。(注:詐欺なら、善意の第三者に、主張できない。)

 平成28年 管理業務主任者試験 「問2」 、平成27年 マンション管理士試験 「問13」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問1」 、平成25年 管理業務主任者試験 「問1」 、 平成22年 管理業務主任者試験 「問3」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問5」 平成20年管理業務主任者試験 「問2」 、 平成14年 管理業務主任者試験 「問5」

 
 
 

 詐欺と強迫は、民法第96条
 「(詐欺又は強迫)
 第九十六条 
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による
詐欺による意思表示の取り消しは、善意の第三者に対抗することができない。
 とあり、
 民法第96条によれば、詐欺(相手を欺くこと)又は強迫(脅かして強迫者の思いとおりにすること)による意思表示は、”取り消し(取り消しがあるまで、法律行為の効力が一応は認められるが、取り消されると当初にさかのぼって効力が否定される)”ができますが、同条2項及び3項により、詐欺と強迫では扱いが異なることに注意してください。
 詐欺なら、
 民法第96条1項により、詐欺でも強迫によるものでもその意思表示は、取り消すことができますが、原則:詐欺があったことを知らない人(善意の第三者)には、取り消してもその主張はできません。取引での保護です。それが3項に規定されています。 
 しかし、すべての人が保護されるわけではありません。その例外が2項にあります。つまり第三者が介在していて、その人の詐欺によって、本人と相手方とで契約を結んだときなどで、その相手方も詐欺があることを知っていれば、これは保護をすべきではありませんから、その場合には、2項によって、取り消しができます。

 設問では、詐欺ではなく、”強迫”ですから、Bが、甲を、その事情を知らないD(善意の第三者)に譲渡したときは、強迫を受けたAは、Bに対する意思表示を取り消したことを、その事情を知らないDに対抗することができますから、誤りです。


3 本件契約が、Bの詐欺により締結された場合、Aに、それを信じたことに重大な過失があったときでも、Aは、売却の意思表示を取り消すことができる。

〇 正しい。 詐欺・強迫では錯誤の無効と異なり、”重大な過失”は取り消しの要件ではない。


 選択肢2でも説明しましたように、詐欺・強迫での取り消しは、民法第96条1項
 「(詐欺又は強迫)
 第九十六条 
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
 (以下、略)」
 とあり、
 と取り消しについては、「それを信じたことに重大な過失があったとき」の要件はありませんから、Aは、売却の意思表示を取り消すことができますので、正しい。

 なお、錯誤なら、民法第95条
 「(錯誤)
 第九十五条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。
ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない
 とあります。



4 本件契約が、甲とは別の住戸を購入する意思を有していたBの錯誤により締結された場合、Bにその錯誤による本件契約の無効を主張する意思がなくても、Aは、原則として本件契約の無効を主張することができる。

X 誤っている。 錯誤では、原則:相手方から無効を主張できない。

 平成28年 管理業務主任者試験 「問2」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問1」 、 平成25年 管理業務主任者試験 「問1」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問1」 、  平成23年 管理業務主任者試験 「問1」 、平成23年 マンション管理士試験 「問18」 、平成22年 管理業務主任者試験 「問6」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問2」 、平成17年 管理業務主任者試験 「問2」 、 平成15年 管理業務主任者試験 「問2」
 
 錯誤は、民法第95条
 「(錯誤)
 第九十五条 
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない
 とあり、
 錯誤とは、表意者が、心の内で意図したことと異なる表示が、外面に現れている状況です。
 その錯誤が”無効(法律行為の効力が当初からない)”となるには、
 1.法律行為の要素に重大な錯誤がある。
 2.表意者に重大な過失がないこと。
 です。

 
 そこで条文にない設問「錯誤の無効の主張は、誰ができるのか」ですが、これは、最高裁判所:昭和40年9月10日 判決;
 「
表意者自身において要素の錯誤による意思表示の無効を主張する意思がない場合には、原則として、第三者が右意思表示の無効を主張することは許されない。
 とあり、
 これによると、B(本人)にその錯誤による本件契約の無効を主張する意思がなくては、A(相手方)は、原則として本件契約の無効を主張することができないため、誤りです。



答え:3

 民法の基本である部分からの出題ということで、かなり時間をかけて解説しました。
 出題としては、難しい。

《タグ》民法 通謀虚偽表示 善意の第三者の立場 詐欺・強迫 錯誤 判例 無効 取り消し

問4

【問 4】 Aは、所有するマンションの一住戸甲(以下、本問において「甲」という。)をBに売却しようと考え、Cとの間で、甲の売却についてCを代理人とする委任契約を締結した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 AB間の売買契約の成立後に、甲についてAからBへの所有権移転登記手続を行う場合、Cは、AとBの双方を代理することができる。

〇 正しい。 移転登記手続きなら双方代理ができる。
 平成22年 管理業務主任者試験 「問4」 、

 民法では、代理人は、通常、両当事者の代理人となると、当事者の利益を損なう恐れがあるために双方の代理人になることを禁じています。
 それが、民法第108条
 「(自己契約及び双方代理)
 第百八条 
同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
 です。
 ここで、問題となるのが、但し書きの「債務の履行」に何が該当するかということで、設問があります。


 これに対しては、最高裁判所:昭和43年3月8日 判決;
  「
登記申請行為は、国家機関たる登記所に対し一定内容の登記を要求する公法上の行為であつて、民法にいわゆる”法律行為ではなく”、また、すでに効力を発生した権利変動につき法定の公示を申請する行為であり、登記義務者にとつては義務の履行にすぎず、登記申請が代理人によつてなされる場合にも代理人によつて新たな利害関係が創造されるものではないのであるから、登記申請について、同一人が登記権利者、登記義務者双方の代理人となつても、民法一〇八条本文並びにその法意に違反するものではなく、双方代理のゆえをもつて無効となるものではないと解すべきである
 とあり、
 AB間の売買契約の成立後に、甲についてAからBへの”所有権移転登記手続”なら、Aの代理人であるCであっても、AとBの双方を代理することができますから、正しい。



2 甲の売却について、Cが、Aの許諾を得てDを復代理人に選任した場合、Cは代理権を失わず、CとDの両者がAの代理人となる。

〇 正しい。 復代理人が選任されても、代理人と復代理人は共に本人を代理する。

 復代理からの出題は、過去にない?

 

 まず、復代理人の選任は、民法第104条
 「(任意代理人による復代理人の選任)
 第百四条 
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。」

 とあり、
 民法第104条により、委任で代理人となった者は、本人の許諾を得れば、復代理人を選任できます。


 そこで、元々の代理人であるCは、民法第99条
 「(代理行為の要件及び効果)
 第九十九条 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、
本人に対して直接にその効力を生ずる
2 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

 とあり、
 民法第99条により、代理人は本人を代理しています。これは、復代理人を選任してもその地位を失いません。


 また、復代理人は、民法第107条
 「(復代理人の権限等)
 第百七条 
復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。
2 復代理人は、本人及び第三者に対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。

 とあり、
 民法第107条によれば、復代理人も本人を代理していますから、甲の売却について、Cが、Aの許諾を得てDを復代理人に選任した場合、Cは代理権を失わず、CとDの両者がAの代理人となるは、正しい。



3 AC間の委任契約が解除されCの代理権が消滅した後に、CがAの代理人と称してBに対して甲を売却した場合、売買契約締結の際にCに代理権がないことをBが知っていたときは、Cは、Bに対し無権代理人の責任を負わない。

〇 正しい。 表見代理が成立しても、相手方に”悪意又は過失”があれば、本人及び代理人は責任を負わない。
 平成28年 管理業務主任者試験 「問2」 、 平成27年 管理業務主任者試験 「問1」 、平成22年 管理業務主任者試験 「問6」 、 平成15年 マンション管理士試験 「問13」 

 

 なにも代理権を持っていない人(無権代理人)が代理行為をしても、その効果は本人が追認しない限り、本人には及ばない(民法第113条参照)のですが、民法では、代理権のない者と本人との間に特殊の関係があるために、その者を本当の代理人と誤信して取引した相手方を保護するため、その代理行為を代理権のある行為として扱い、本人に対して効力を生じさせる制度があり、これを表見代理と呼んでいます。(民法第109条、第110条、第112条参照)
 
 一度、委任契約を結び代理人に代理権があると信じさせることになった後、その委任契約を解除した時は上で説明した表見代理に該当し、それは、民法第109条
 「(代理権授与の表示による表見代理)
 第百九条 
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
 とあり、
 代理権を与えた本人は、第三者が、代理権が無くなったことを知らなかったとき又は注意を払っても知らなかったときには、以前代理権を与えた者が行った代理行為に責任を負います。

 しかし、設問のように、「売買契約締結の際にCに代理権がないことをBが知っていたときは」本人は勿論のこと、以前代理人であったCも、Bに対して責任を負うことはありませんから、Cは、Bに対し無権代理人の責任を負わないは、正しい。



4 AC間の委任契約が解除されCの代理権が消滅した後に、CがAの代理人と称してBに対して甲を売却した場合、売買契約締結の際にCに代理権がないことをBが知っていたときは、Bは、Aに対し相当期間内に当該行為を追認するかどうかの催告をすることができない。

X 誤っている。 追認の催告で、”知っていたとき”には、出来ないの規定はない。 代理権が無いことを知っていても、催告はできる。
 平成26年 管理業務主任者試験 「問2」 、 平成17年 マンション管理士試験 「問13」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問1」

 まず、選択肢3で説明しましたように、AC間の委任契約が解除されCの代理権が消滅した後に、CがAの代理人と称してBに対して甲を売却した場合は、表見代理が成立します。

 この表見代理の場合、本人が、追認をすれば、効力が生じます。それは、民法第113条
 「(無権代理)
 第百十三条 
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない
2 追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

 です。


 では、その本人に対する相手方の催告の方法は、民法第114条
 「(無権代理の相手方の催告権)
 第百十四条 前条の場合において、
相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。
 とあり、
 民法第114条によれば、売買契約締結の際にCに代理権がないことをBが知っていても、Bは、Aに対し相当期間内に当該行為を追認するかどうかの催告をすることができますから、誤りです。



答え:4

 代理関係、特に表見代理、無権代理も出題が多いので、詳細に解説しました。
 当然、時間はかかりましたが。

 出題としては、易しい。

《タグ》民法 判例 代理 双方代理 復代理 表見代理 催告 追認

問5

【問 5】 AとBが、連帯債務者としてCから5,000万円の融資を受け、甲マンションの一住戸を購入した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 Cが、Aに対し5,000万円の弁済を請求した場合、これにより、Bも5,000万円の弁済の請求を受けたことになる。

〇 正しい。 連帯債務者の一人に対する弁済の請求は、他の連帯債務者にも効力がある。
  平成24年 マンション管理士試験 「問16」 

  

 債務者が複数いる場合の、連帯債務では、各債務者は、独立して全部の弁済義務があり、また債務者のうち一人でも債務を弁済すれば、他の債務者も債務を免れます。
 そこで、連帯債務者の一人に対する弁済の請求は、民法第434条
 
(連帯債務者の一人に対する履行の請求)
 第四百三十四条 
連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる。」

 とあり、
 債権者Cが、連帯債務者の一人であるAに対し5,000万円の弁済を請求した場合、これにより、もう一人の連帯債務者Bも5,000万円の弁済の請求を受けたこと(絶対的効力)になりますから、正しい。


 この結果、履行遅延や時効の中断も、連帯債務者全員に効力を生じます。


2 Bが、Cに対し、自己の300万円の反対債権をもって相殺する旨の意思表示をしたときは、これにより、300万円の範囲でAとBはともに債務を免れる。

〇 正しい。 連帯債務者の一人が相殺すれば、その分だけ全体の債務額は少なくなる。
  連帯債務の相殺からの出題は珍しい。

 連帯債務者の一人が、相殺を援用すると、民法第436条
 
「(連帯債務者の一人による相殺等)
 第四百三十六条 
連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する
2 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者が相殺を援用することができる。」

 とあり、
 民法第436条1項によれば、連帯債務者の一人であるBが、債権者であるCに対し、自己の300万円の反対債権をもって相殺する旨の意思表示をしたとき(絶対的効力)は、これにより、300万円の範囲で連帯債務者のAとBはともに債務を免れますから、正しい。

 なお相殺(そうさい)とは、債務者が債権者に対して債権を持っていれば、弁済の代わりに、自分の債権でその債務を対当額だけ差し引いて消滅させることです。



3 Cに対するAとBの連帯債務につき、Dが保証人となる旨の保証契約は、CとDの口頭による合意で成立する。

X 誤っている。 保証契約は、書面又は電磁的記録によること。

  平成28年 マンション管理士試験 「問13」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問5」 、平成20年 管理業務主任者試験 「問1」 、平成18年 管理業務主任者試験 「問6」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問6」

 保証契約は、民法第446条
 「(保証人の責任等)
 第四百四十六条 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
3 保証契約がその内容を記録した
電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。」

 とあり、
 保証契約が成立するには、民法第446条
  @2項によれば、書面が必要で、
  A同3項によれば、電磁的記録 であることになっていますから、
  債権者Cに対するAとBの連帯債務につき、Dが保証人となる旨の保証契約は、CとDの”口頭による合意”では成立しませんから、誤りです。

 なお、保証契約は、保証人と債権者の間の契約です。債務者は当事者として出てきませんから注意してください。
 また、民法第446条2項と3項は2004年の改正で追加されたものです。



4 Aが、Cに対し5,000万円を弁済したときは、Aは、Bに対し、その負担部分について求償することができる。

〇 正しい。 連帯債務者の一人が弁済すれば、他の連帯債務者に負担部分を求償できる。
  平成18年 マンション管理士試験 「問14」 

  連帯債務者の一人が弁済すると、連帯債務者間の求償権となり、民法第442条
 
「(連帯債務者間の求償権)
 第四百四十二条 
連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分について求償権を有する
2 前項の規定による求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。」

 とあり、
 民法第442条1項によれば、連帯債務者の一人であるAが、債権者Cに対し5,000万円を弁済したときは、Aは、他の連帯債務者Bに対し、その負担部分について求償することができますから、正しい。



答え:3

 連帯債務や保証契約からの出題とは、慣れないかも知れませんが、問題としては、条文をしっているかどうかで、易しい。

《タグ》民法 連帯債務 相殺 保証契約 内部求償権

問6

【問 6】 AとBが、Bを受任者とする委任契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Bは、Aの承諾がなければ、受任者たる地位を第三者に譲渡することができない。

〇 正しい。 委任契約は、委任者と受任者の信頼関係に基づいているので、委任契約では相手方の同意がないとその地位を譲渡できない。

  平成24年 管理業務主任者試験 「問6」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問2」 

 

 まず、委任は、民法第643条
 
「(委任)
 第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」

 とありますが、
 委任契約は、委任者と受任者の信頼関係に基づいているので、委任契約では相手方の同意がないとその地位を譲渡できないと解されていますから、正しい。



2 Bが後見開始又は保佐開始の審判を受けた場合、AB間の委任契約は終了する。

X 誤っている。 受任者が後見開始の審判は、該当するが、保佐開始の審判を受けた場合は規定されていない。
  平成27年 マンション管理士試験 「問6」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問5」 

 委任の終了事由は、民法第653条
 
「(委任の終了事由)
 第六百五十三条 
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
   一 委任者又は受任者の死亡
   二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
   
三 受任者が後見開始の審判を受けたこと。

 とあり、
 民法第653条3号によれば、受任者であるBが後見開始の審判を受けたことは、委任の終了事由ですが、「保佐開始の審判を受けた場合」は、規定がないため、誤りです。

 なお、後見開始の審判とは、民法第7条
 「
後見開始の審判
  第七条 
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
 であり、
 精神上の障害(認知症,知的障害,精神障害など)によって
判断能力が全くない常況にある者(本人)を保護するための手続です。

 また、
保佐開始の審判とは、民法第11条
 「(保佐開始の審判)
 第十一条 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。

 とあり、
 判断能力が著しく不十分な者を保護します。

 他には、判断能力が不十分な者については
補助開始の審判もあります。民法第15条
 「(補助開始の審判)
 第十五条 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
2 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3 補助開始の審判は、第十七条第一項の審判又は第八百七十六条の九第一項の審判とともにしなければならない。


 これを機会に纏めておいてください。
  ・成年被後見人...「痴呆」や「知的障害」「精神障害」などの重度の精神障害を持つ者で常に判断能力を欠く人を言います。 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者です。
  ・被保佐人...日常の買い物程度はできても、訴訟や新築など大きな財産を扱うことは、単独ではできない人。精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者です。
  ・被補助人...普通の生活においては問題ないが、重要な取引を行う際には、他の人の助けがあった方がいい人です。精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者です。 

 また、「委任者」が後見開始の審判を受けても、この場合には、受任者になんら損害を与えませんから、委任は終了しません。



3 Bが、委任事務の処理に際して、自己の過失によらず損害を受けた場合であっても、Aの指図について過失がなければ、Bは、Aに対し損害賠償の請求をすることができない。

X 誤っている。 受任者は、自己の過失がなくて損害を受ければ、それだけで、受任者に損害賠償請求ができる。 受任者の指図は、規定されていない。

  平成24年 管理業務主任者試験 「問4」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問2」 

 受任者の償還請求は、民法第650条
 
「(受任者による費用等の償還請求等)
第六百五十条 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
2 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
3 受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。

 とあり、
 民法第650条3項によれば、受任者Bが、委任事務の処理に際して、自己の過失によらず損害を受けた場合であれば、委任者Aに対し、その賠償を請求することができますから、特に”委任者Aの指図について過失がなければ”の要件は規定されていませんから、誤りです。

 受任者に過失がなければ、受任者の損害賠償請求権は認められます。委任者に指図や過失があることは、必要ありません。


4 Bが無償で受任した場合は、Bが委任事務の処理に際して善管注意義務に違反したときであっても、Bは、Aに対し債務不履行責任を負わない。 

X 誤っている。 受任者には、無償・有償を問わず、善管注意義務がある。

  平成26年 管理業務主任者試験 「問4」 、平成23年 管理業務主任者試験 「問2」 、平成16年 管理業務主任者試験 「問2」 、 平成15年 マンション管理士試験 「問14」 、 平成14年 マンション管理士試験 「問16」 

 委任は、原則:無償であり、その際の受任者の注意義務は、民法第644条
 
「(受任者の注意義務)
 「第六百四十四条 
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。」

 とあります。
 「委任の本旨に従い」とは、委任契約の目的に適するように、事務を処理することで、その際には、業務を委任された人の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務、つまり「善良な管理者の注意義務」を必要とされていますから、受任者Bが無償で受任した場合であっても、Bが委任事務の処理に際して善管注意義務に違反したときは、Bは、委任者Aに対し債務不履行責任を負いますから、誤りです。

 参考:自己のためにするのと同一の注意義務



答え:1

 委任の基本で、易しい。

 でも、単に委任だけの勉強をするのではなく、他の関連個所も復習して、民法全体から捉えること。

《タグ》民法 委任 地位 終了事由 損害賠償 善管注意義務

問7

注:・マンション標準管理委託契約書は平成30年3月9日付で24条に「反社会勢力の排除」などの改正があり、平成30年度の試験から出題適用となるので注意のこと。


【問 7】 次の記述のうち、標準管理委託契約書の定めによれば、最も不適切なものはどれか。

1 マンション管理業者(マンション管理適正化法第2条第8号に規定する者をいう。以下同じ。)は、管理事務(マンション管理適正化法第2条第6号に規定するものをいう。以下同じ。)を行うため必要があるときは、管理組合の組合員及びその所有する専有部分の占有者(以下「組合員等」という。)に対して、その専有部分又は専用使用部分への立入りを請求することができる。

〇 適切である。 管理業者は、管理事務を行う範囲で、専有部分への立入が請求できる。

  成23年 管理業務主任者試験 「問9」 、平成20年 管理業務主任者試験 「問8」   

 他人の部屋に立ち入るなんてことは、通常は出来ませんが、管理事務内で必要があると、マンション標準管理委託契約書(以下、この解説では、「標準管理委託契約書」といいます)13条
 「(専有部分等への立入り)
 第 13 条
乙(管理業者)は、管理事務を行うため必要があるときは、甲(管理組合)の組合員等に対して、その有部分又は専用使用部分(以下「専有部分等」という。)への立入りを請求することができる
2 前項の場合において、乙は、甲の組合員等がその専有部分等への立入りを拒否したときは、その旨を甲に通知しなければならない。
3 第1項の規定にかかわらず、乙は、第8条第1項各号に掲げる災害又は事故等の由により、甲のために緊急に行う必要がある場合、専有部分等に立ち入ることができる。この場合において、乙は、甲及び乙が立ち入った専有部分等に係る組合員等に対 し、事後速やかに、報告をしなければならない。」
 とあり、
 標準管理委託契約書13条1項によれば、マンション管理業者は管理事務を行うため必要があるときは、管理組合の組合員及びその所有する専有部分の占有者に対して、その専有部分又は専用使用部分への立入りを請求することができますから、適切です。

 なお、管理組合員等とは、
 「標準管理委託契約書11条1項
(有害行為の中止要求) 第 11 条 乙は、管理事務を行うため必要なときは、甲の組合員及びその所有する専有部分の占有者(以下「組合員等」という。)に対し、甲に代わって、次の各号に掲げ る行為の中止を求めることができる。」
 です。



2 マンション管理業者は、地震等の災害により、管理組合のために、緊急に行う必要がある業務で、管理組合の承認を受ける時間的な余裕がないものについては、管理組合の承認を受けないで実施することができるが、この場合において、マンション管理業者は、速やかに、書面をもって、その業務の内容及び実施に要した費用の額を管理組合に通知しなければならない。

〇 適切である。 緊急時の対応。
  平成26年 管理業務主任者試験 「問7」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問8」 、平成20年 管理業務主任者試験 「問8」 

 設問は、標準管理委託契約書8条
 「(緊急時の業務)
 第8条
乙(管理業者)は、第3条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる災害又は事故等の事由により、甲(管理組合)のために、緊急に行う必要がある業務で、甲の承認を受ける時間的な余裕がないものについては、甲の承認を受けないで実施することができる。この場合において、乙は、速やかに、書面をもって、その業務の内容及びその実施に要した費用の額 を甲に通知しなければならない
   一
地震、台風、突風、集中豪雨、落雷、雪、噴火、ひょう、あられ等
   二 火災、漏水、破裂、爆発、物の飛来若しくは落下又は衝突、犯罪等
2 甲は、乙が前項の業務を遂行する上でやむを得ず支出した費用については、速やかに、乙に支払わなければならない。ただし、乙の責めによる事故等の場合はこの限りでない。 」
 とあり、
 標準管理委託契約書8条1項によれば、マンション管理業者は、地震等の災害により、管理組合のために、緊急に行う必要がある業務で、管理組合の承認を受ける時間的な余裕がないものについては、管理組合の承認を受けないで実施することができるが、この場合において、マンション管理業者は、速やかに、書面をもって、その業務の内容及び実施に要した費用の額を管理組合に通知しなければならないは、適切です。



3 マンション管理業者は、火災等の事故(マンション管理業者の責めによらない場合に限る。)により管理組合又は管理組合の組合員等が受けた損害について、その損害額が一定額を超えるときは、その一定額を超える損害部分については、賠償する責任を負わない。

X 適切でない。 管理業者の責任でなければ、全額責任を負わない。
 
 平成20年 管理業務主任者試験 「問8」 、 平成15年 管理業務主任者試験 「問7」 

 免責は、標準管理委託契約書17条
 「(免責事項)
 第 17 条
乙(管理業者)は、甲(管理組合)又は甲の組合員等が、第8条第1項各号に掲げる災害又は事故等(乙の責めによらない場合に限る。)による損害及び次の各号に掲げる損害を受けたとき は、その損害を賠償する責任を負わないものとする
   一 乙が善良なる管理者の注意をもって管理事務を行ったにもかかわらず生じた管理対象部分の異常又は故障による損害
   二 乙が、書面をもって注意喚起したにもかかわらず、甲が承認しなかった事項に起因する損害
   三 前各号に定めるもののほか、乙の責めに帰することができない事由による損害」
 とあり、
  標準管理委託契約書17条によれば、管理業者の責めに帰さない事由で、管理組合又は管理組合の組合員等が受けた損害なら、損害賠償の責任はありませんから、「その損害額が一定額を超えるときは、その一定額を超える損害部分については、賠償する責任を負わない」は、適切ではありません。

 当然ですが。


4 マンション管理業者は、管理事務を行うため必要なときは、管理組合の組合員等に対し、管理組合に代わって、建物の保存に有害な行為の中止を求めることができるが、マンション管理業者が中止を求めても、なお管理組合の組合員等がその行為を中止しないときは、マンション管理業者はその責めを免れる。

〇 適切である。 注意してもきかなければ、管理業者の業務から外れる

  平成20年 管理業務主任者試験 「問8」 、 平成18年 管理業務主任者試験 「問8」 、 平成17年 管理業務主任者試験 「問8」 

 有害行為の中止要求は、標準管理委託契約書11条
 「(有害行為の中止要求)
 第 11 条
乙(管理業者)は、管理事務を行うため必要なときは、甲(管理組合)の組合員及びその所有する専有部分の占有者(以下「組合員等」という。)に対し、甲に代わって、次の各号に掲げる行為の中止を求めることができる。
   一 法令、管理規約又は使用細則に違反する行為
   二 建物の保存に有害な行為
   三 所轄官庁の指示事項等に違反する行為又は所轄官庁の改善命令を受けるとみられる違法若しくは著しく不当な行為
   四 管理事務の適正な遂行に著しく有害な行為
   五 組合員の共同の利益に反する行為
   六 前各号に掲げるもののほか、共同生活秩序を乱す行為
2 乙が、前項の規定により中止を求めても、なお甲の組合員等がその行為を中止しな いときは、乙はその責めを免れるものとし、その後の中止等の要求は甲が行うものとする。」
 とあり、
  標準管理委託契約書11条1項及び2項によれば、マンション管理業者は、管理事務を行うため必要なときは、管理組合の組合員等に対し、管理組合に代わって、建物の保存に有害な行為の中止を求めることができるが、マンション管理業者が中止を求めても、なお管理組合の組合員等がその行為を中止しないときは、マンション管理業者はその責めを免れるは、適切です。



答え:3

 標準管理委託契約書は、当然な事柄を記載していますから、気を抜かずに読んでおくこと。

 易しい出題です。 過去から出ている条文のとおりです。

《タグ》標準管理委託契約書 専有部分等への立入り 緊急時の業務 有害行為の中止要求 

問8

【問 8】 次の記述のうち、標準管理委託契約書の定めによれば、最も適切なものはどれか。

1 マンション管理業者は、管理組合の管理規約の原本、総会議事録、総会議案書等を、マンション管理業者の事務所で保管する。

X 適切でない。 規約等は”管理組合の事務所”で保管する。 業者の事務所では、閲覧が大変。

  平成15年 管理業務主任者試験 「問6」 
 
  標準管理委託契約書 別表第1 事務管理業務 のB図書等の保管 
  「二 
乙(管理業者)は、甲(管理組合)の管理規約の原本、総会議事録、総会議案書等を、甲の事務所で保管する。」
 とあり、
  管理組合の管理規約の原本、総会議事録、総会議案書等は、当然ながら、”
管理組合の事務所”で保管しますから、マンション管理業者の事務所で保管するは、適切ではありません。




2 マンション管理業者は、当該業者の従業員が、その業務の遂行に関し、管理組合又は管理組合の組合員等に損害を及ぼしたときは、管理組合又は管理組合の組合員等に対し、使用者としての責任を負う。

〇 適切である。 管理業者には使用者責任がある。
  平成21年 管理業務主任者試験 「問8」 

 設問は、標準管理委託契約書15条
 「(乙の使用者責任)
 第 15 条
乙(管理業者)は、乙の従業員が、その業務の遂行に関し、甲(管理組合)又は甲の組合員等に損害を 及ぼしたときは、甲又は甲の組合員等に対し、使用者としての責任を負う。」
 とあり、
 標準管理委託契約書15条によれば、マンション管理業者は、当該業者の従業員が、その業務の遂行に関し、管理組合又は管理組合の組合員等に損害を及ぼしたときは、管理組合又は管理組合の組合員等に対し、使用者としての責任を負いますから、適切です。



3 マンション管理業者は、管理対象部分に係る各種の点検、検査等を実施した場合、その結果を管理組合に口頭で報告すると共に、改善等の必要がある事項については、書面をもって、具体的な方策を管理組合に助言する。

X 適切でない。 ビジネスの世界で、口頭で報告するを認めるのは少ない。 報告と助言は書面で行うこと

  平成20年 管理業務主任者試験 「問7」 、 平成19年 管理業務主任者試験 「問9」 

  標準管理委託契約書 別表第1 事務管理業務
  「(3) その他
   @ 各種点検、検査等に基づく助言等
     管理対象部分に係る各種の点検、検査等の結果を甲に報告すると共に、改善等の必要がある事項については、具体的な方策を甲に助言する。
この報告及び助言は、書面をもって行う。」
 とあり、
  標準管理委託契約書 別表第1 によれば、点検・検査等の報告と助言は共に書面で行いますから、「その結果を管理組合に
”口頭で報告する”と共に、改善等の必要がある事項については、書面をもって、具体的な方策を管理組合に助言する」は、適切ではありません。

 当然です。





4 管理組合は、マンション管理業者がマンション管理業(マンション管理適正化法第2条第7号に規定するものをいう。)の登録の取り消しの処分を受けたとしても、管理委託契約を解除することはできない。

X 適切でない。 登録の取り消しは、重大。 催告なしに管理委託契約を解除出来る。

 平成26年 管理業務主任者試験 「問8」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問8」 、 平成15年 管理業務主任者試験 「問8」

 契約の解除は、標準管理委託契約書18条
 「(契約の解除)
 第 18 条 甲(管理組合)及び乙(管理業者)は、その相手方が、本契約に定められた義務の履行を怠った場合は、相当の期間を定めてその履行を催告し、相手方が当該期間内に、その義務を履行しないときは、本契約を解除することができる。この場合、甲又は乙は、その相手方に対し、損害賠償を請求することができる。
2 甲(管理組合)は、乙(管理業者)が次の各号のいずれかに該当するときは、本契約を解除することができる
   一 乙が銀行の取引を停止されたとき、若しくは破産、会社更生、民事再生の申立てをしたとき、又は乙が破産、会社更生、民事再生の申立てを受けたとき
   二 乙が合併又は破産以外の事由により解散したとき
   
三 乙(管理業者)がマンション管理業の登録の取り消しの処分を受けたとき
 とあり、
  標準管理委託契約書18条2項3号によれば、「三 乙(管理業者)がマンション管理業の登録の取り消しの処分を受けることは、重大な処分ですから、催告もいらずに、管理委託契約を解除することができますから、登録の取り消しの処分を受けたとしても、管理委託契約を解除することはできないは、適切ではありません。



答え:2

  ここも、常識程度で、標準管理委託契約書の基本。易しい。

《タグ》標準管理委託契約書 図書等の保管 使用者責任 点検の報告 書面 契約の解除

問9

【問 9】 宅地建物取引業者(宅地建物取引業法第2条第3号に規定する者をいう。以下同じ。)が、管理組合の組合員から、当該組合員が所有する専有部分の売却の依頼を受け、その媒介等の業務のために、宅地建物取引業法施行規則第16条の2に定める事項等について、マンション管理業者に確認を求めてきた場合等の当該管理組合に代わって行うマンション管理業者の対応に関する次の記述のうち、標準管理委託契約書の定めによれば、最も不適切なものはどれか。

1 管理組合の組合員が、当該組合員が所有する専有部分の売却等を目的とする情報収集のために、理由を付した書面により管理組合の収支及び予算の状況の開示を求めてきたときは、マンション管理業者はそのことについて開示するものとする。

〇 適切である。 規約以外にも、管理組合の収支及び予算の状況の開示も管理業者が行うことができる。

 平成29年 マンション管理士試験 「問32」 、平成27年 管理業務主任者試験 「問8」 

  標準管理委託契約書14条は、平成28年(2016年)に改正があった規定です。 ここで、新しく「別表5」が追加されています。


 まず、設問は、標準管理委託契約書14条
 「(管理規約の提供等)
 第14条 乙(管理業者)は、宅地建物取引業者が、甲(管理組合)の組合員から、当該組合員が所有する専有部分の売却等の依頼を受け、その媒介等の業務のために、
理由を付した書面又は電磁的方法により管理規約の提供及び別表第5に掲げる事項の開示を求めてきたときは、甲に代わって、当該宅地建物取引業者に対し、管理規約の写しを提供し、及び別表第5 に掲げる事項について書面をもって、又は電磁的方法により開示するものとする
 
甲の組合員が、当該組合員が所有する専有部分の売却等を目的とする情報収集のためにこれらの提供等を求めてきたときも、同様とする
2 乙は、前項の業務に要する費用を管理規約の提供等を行う相手方から受領することができるものとする。
3 第1項の場合において、乙は、当該組合員が管理費及び修繕積立金等を滞納しているときは、甲に代わって、当該宅地建物取引業者に対し、その清算に関する必要な措置を求めることができるものとする。」
 とあり、
 別表第5は、


 別表第5
  
  
  
  
 とあり、
 「別表第5 
  5 管理組合収支関係
  (1)
収支及び予算の状況(@〜Iの項目について直近の収支報告(確定額)を記載し、@〜B及びE〜Gについては当年度の収支予算(予算額)も併せて記載」
  とありますから、
  標準管理委託契約書14条1項 及び別表第5 によれば、管理組合の組合員が、当該組合員が所有する専有部分の売却等を目的とする情報収集のために、理由を付した書面により管理組合の収支及び予算の状況の開示を求めてきたときは、マンション管理業者はそのことについて開示するものとするは、適切です。

 本来このような情報の提供は、該当の組合員または管理組合が行うものですが、宅地建物取引業者とマンション管理業者の両方を監督している国土交通省が、まとめて面倒を見ているため、便利をはかっています。

 
 なお、宅地建物取引業法施行規則第16条の2は、以下のとおりです。
 「(法第三十五条第一項第六号の国土交通省令・内閣府令で定める事項)
 第十六条の二 法第三十五条第一項第六号の国土交通省令・内閣府令で定める事項は、建物の貸借の契約以外の契約にあつては次に掲げるもの、建物の貸借の契約にあつては第三号及び第八号に掲げるものとする。
   一 当該建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する権利の種類及び内容
   二 建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号。以下この条、第十六条の四の三、第十六条の四の六及び第十九条の二の五において「区分所有法」という。)第二条第四項に規定する共用部分に関する規約の定め(その案を含む。次号において同じ。)があるときは、その内容
   三 区分所有法第二条第三項に規定する専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めがあるときは、その内容
   四 当該一棟の建物又はその敷地の一部を特定の者にのみ使用を許す旨の規約(これに類するものを含む。次号及び第六号において同じ。)の定め(その案を含む。次号及び第六号において同じ。)があるときは、その内容
   五 当該一棟の建物の計画的な維持修繕のための費用、通常の管理費用その他の当該建物の所有者が負担しなければならない費用を特定の者にのみ減免する旨の規約の定めがあるときは、その内容
   六 当該一棟の建物の計画的な維持修繕のための費用の積立てを行う旨の規約の定めがあるときは、その内容及び既に積み立てられている額
   七 当該建物の所有者が負担しなければならない通常の管理費用の額
   八 当該一棟の建物及びその敷地の管理が委託されているときは、その委託を受けている者の氏名(法人にあつては、その商号又は名称)及び住所(法人にあつては、その主たる事務所の所在地)
   九 当該一棟の建物の維持修繕の実施状況が記録されているときは、その内容」



2 宅地建物取引業者が、理由を付した書面により管理規約の提供を求めてきたときは、マンション管理業者は管理規約の写しを提供するものとする。

〇 適切である。 規約の提供は、管理業者も行える。

 規約の提供は、選択肢1で引用しました、標準管理委託契約書14条1項
 「(管理規約の提供等)
 第14条 乙(管理業者)は、
宅地建物取引業者が、甲(管理組合)の組合員から、当該組合員が所有する専有部分の売却等の依頼を受け、その媒介等の業務のために、理由を付した書面又は電磁的方法により管理規約の提供及び別表第5に掲げる事項の開示を求めてきたときは、甲に代わって、当該宅地建物取引業者に対し、管理規約の写しを提供し、及び別表第5 に掲げる事項について書面をもって、又は電磁的方法により開示するものとする。
  (以下、略)」
 とあり、
 標準管理委託契約書14条1項によれば、宅地建物取引業者が、理由を付した書面により管理規約の提供を求めてきたときは、マンション管理業者は管理規約の写しを提供するものとするは、適切です。



3 マンション管理業者は、管理規約の提供等に要する費用を、管理規約の提供等を行う相手方である宅地建物取引業者から受領することができる。

〇 適切である。 かかった費用は、請求していい。

 かかった費用の請求は、選択肢1で引用しました、標準管理委託契約書14条2項
 「2
乙(管理業者)は、前項の業務に要する費用を管理規約の提供等を行う相手方から受領することができるものとする。」
 とあり、
  標準管理委託契約書14条2項によれば、マンション管理業者は、管理規約の提供等に要する費用を、管理規約の提供等を行う相手方である宅地建物取引業者から受領することができるは、適切です。



4 宅地建物取引業者が、理由を付した書面により管理費等の変更予定等について開示を求めてきたときは、変更予定の有無のいずれかを記載するが、変更について検討中の場合は、「変更予定有」と記載する。

X 適切でない。 変更について検討中の場合は、「検討中」と記載する。 「変更予定有」ではない。

  選択肢1で引用しました、標準管理委託契約書 別表第5
 「(3)管理費等の変更予定等(@〜Lについて、
変更予定有(平成 年 月から)、 変更予定無検討中の別を記載)」
 とあり、
  同表のコメント:
 「31 別表第5 5(3)関係 5(3)の
「変更予定有」とは、値上げ等が総会で承認されている場合又は総会に上程されることが決定している場合「検討中」とは、値上げ等が理事会で検討されている場合であって、いずれもマンション管理業者が把握できている場合をいう。」
 とあり、
 「変更予定有」は、値上げ等が総会で承認されている場合又は総会に上程されることが決定している場合であり、変更について検討中の場合は、「検討中」と記載するため、適切ではありません。



答え:4


 選択肢4の「検討中」は、実に細かな箇所からの出題で、根拠を探すのに時間がかかる(約2時間かかった)。 さらっと読むと、何か変とは気づくが まったく、面倒!


  なお、平成28年に宅地建物取引業法 の改正があり、一部は平成30年4月1日施行ですから、平成30年の受験生は、注意してください。

 関係する条文は、宅地建物取引業法  既存建物取引時の情報提供の充実に関する規定

 第三十四条の二 1項 4号の追加 など
 「四 当該建物が既存の建物であるときは、依頼者に対する建物状況調査(建物の構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として国土交通省令で定めるもの(第三十七条第一項第二号の二において「建物の構造耐力上主要な部分等」という。)の状況の調査であつて、経年変化その他の建物に生じる事象に関する知識及び能力を有する者として国土交通省令で定める者が実施するものをいう。第三十五条第一項第六号の二イにおいて同じ。)を実施する者のあつせんに関する事項」

 既存(中古)住宅での、
依頼者に対する建物状況調査(インスペクション)です。

《タグ》標準管理委託契約書 宅地建物取引業者への提供 規約 収支・予算の状況 費用の請求 検討中

問10

【問 10】 管理組合Aが、区分所有者Bに対してマンションの滞納管理費を請求するために、民事訴訟法に定められている「少額訴訟」を利用する場合に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 AとBは、口頭弁論が続行された場合を除き、第1回口頭弁論期日前又はその期日において、すべての主張と証拠を提出しなければならない。

〇 正しい。 すべての主張と証拠(攻撃と防御)は、期日前又はその期日に提出する。
  少額訴訟からは、最近出題が多い。
  平成28年 管理業務主任者試験 「問10」 、平成27年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「10」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「10」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問10」
 
  少額訴訟の制度は、民事訴訟のうち、少額(60万円以下)の金銭の支払を求める訴えについては、簡単に解決しようとするものです。
 その概要は、簡易裁判所で、相手方(被告)が異議を申し立てないと一回の審理で終了し、確定判決として、強制執行ができます。手数料も訴額の約1%と低額です。
 しかし、滞納額が、60万円以下といっても、必ずしも、少額訴訟制度によることを強制される規定ではありません。例えば、明らかに滞納者が異議を申しだてることが分かっていれば、「通常の訴訟」を起こすことになります。
 迅速・簡便・低費用での強制執行手続きを目指して、平成16年の改正で、簡易裁判所およびその裁判所書記官を執行機関として行えるようにしました。

 その法廷では,基本的には,裁判官と共に丸いテーブル(ラウンド・テーブル)に着席する形式で審理が進められます。

 具体的には、民事訴訟法 第6編 第368条〜第381条に定められています。


 
 では、設問は、民事訴訟法第370条
 「第三百七十条 少額訴訟においては、特別の事情がある場合を除き、最初にすべき口頭弁論の期日において、審理を完了しなければならない。
2 当事者は、前項の期日前又はその期日において、すべての攻撃又は防御の方法を提出しなければならない。ただし、口頭弁論が続行されたときは、この限りでない。」

 とあり、
 民事訴訟法第370条1項によれば、原則:審理は1日で完了することを予定しています。
 そこで、同2項にありますように、「すべての”
攻撃又は防御の方法”」これは民事訴訟法での概念で、言い換えますと、主張や証拠のことです。
 そこで、AとBは、口頭弁論が続行された場合を除き、第1回口頭弁論期日前又はその期日において、すべての主張と証拠を提出しなければならないは、正しい。



2 Bは、所定の時期までは、少額訴訟を通常の訴訟手続に移行させる旨の申述をすることができる。

〇 正しい。 被告が、少額訴訟を嫌がれば、通常の訴訟に移行できる。

 被告(滞納者など)が1回の審理で終わらせたくない時などは、通常の訴訟に移せます。
 それが、民事訴訟法第373条
 
「(通常の手続への移行)
 第三百七十三条 
被告は、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができるただし、被告が最初にすべき口頭弁論の期日において弁論をし、又はその期日が終了した後は、この限りでない
2 訴訟は、前項の申述があった時に、通常の手続に移行する。
3 次に掲げる場合には、裁判所は、訴訟を通常の手続により審理及び裁判をする旨の決定をしなければならない。
   一 第三百六十八条第一項の規定に違反して少額訴訟による審理及び裁判を求めたとき。
   二 第三百六十八条第三項の規定によってすべき届出を相当の期間を定めて命じた場合において、その届出がないとき。
   三 公示送達によらなければ被告に対する最初にすべき口頭弁論の期日の呼出しをすることができないとき。
   四 少額訴訟により審理及び裁判をするのを相当でないと認めるとき。
4 前項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
5 訴訟が通常の手続に移行したときは、少額訴訟のため既に指定した期日は、通常の手続のために指定したものとみなす。」

 とあり、
 民事訴訟法第373条1項によれば、被告Bは、所定の時期までは、少額訴訟を通常の訴訟手続に移行させる旨の申述をすることができますから、正しい。



3 Aが、同一の年に同一の簡易裁判所において、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる回数には制限がある。

〇正しい。 少額訴訟は、サラ金などの金融業者が多く利用するので、年間10回までとした。

 設問は、民事訴訟法第368条 
 
「(少額訴訟の要件等)
 第三百六十八条 
簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができるただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない
2 少額訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、訴えの提起の際にしなければならない。
3 前項の申述をするには、当該訴えを提起する簡易裁判所においてその年に少額訴訟による審理及び裁判を求めた回数を届け出なければならない。」

 とあり、
 民事訴訟法第368条1項によれば、「ただし、同一の簡易裁判所において同一の年(注:1月1日から12月31日まで)に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない」とあり、
 
最高裁判所規則で定める回数:10回 です。
 「(民事訴訟規則第223条
  (少額訴訟を求め得る回数・法第三百六十八条)
  第二百二十三条 法第三百六十八条(少額訴訟の要件等)第一項ただし書の最高裁判所規則で定める回数は、
十回とする。」

  よって、民事訴訟法第368条1項によれば、Aが、同一の年に同一の簡易裁判所において、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる回数には制限があるは、正しい。



4 A又はBが、少額訴訟の終局判決に対する不服申立てをするには、地方裁判所に控訴をしなければならない。

X 誤っている。 不服の申立て(異議)は、その判決をした”簡易裁判所”にする。地方裁判所に控訴はできない。


 少額訴訟の終局判決に対しては、別の上級裁判所に対する”控訴”ができません(民事訴訟法第377条)が、判決書又は調書の送達を受けた日から2週間内なら、その同一の簡易裁判所に対して不服として異議(上級裁判所に対する上訴(控訴など)ではありません)は申立てられます。
 具体的には、民事訴訟法第378条
 「(異議)
 第三百七十八条 
少額訴訟の終局判決に対しては、判決書又は第二百五十四条第二項(第三百七十四条第二項において準用する場合を含む。)の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に、その判決をした裁判所に異議を申し立てることができる。ただし、その期間前に申し立てた異議の効力を妨げない。
2 第三百五十八条から第三百六十条までの規定は、前項の異議について準用する。」

 とあり、
 民事訴訟法第378条1項によれば、A又はBが、少額訴訟の終局判決に対する不服申立てをするには、その判決をした簡易裁判所に”異議を申し立てる”ことができますが、地方裁判所に控訴はできませんから、誤りです。



答え:4 

  過去問題をやっていれば、易しい。

  なお、「少額訴訟」は、出題が多いので、別途、私のサイト 「超解説 区分所有法」 でも取り上げていますから、参考にしてください。

《タグ》民事訴訟法 少額訴訟 1日で終了 通常訴訟への移行 回数制限 不服申し立て 

問11

【問 11】 マンションの管理組合が区分所有者に対して有する管理費支払請求権の消滅時効の中断に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 支払督促は、所定の期間内に仮執行の宣言の申立てをしないことによりその効力を失うときは、時効の中断の効力を生じない。

〇 正しい。 簡易な支払命令(支払督促)なので、強制執行をするために、所定の期間内(30日以内)に仮執行の宣言の申立てをすること。

  平成14年 マンション管理士試験 「問11」

  時効の中断からの出題は、マンション管理士・管理業務主任者試験とも多い。
  平成29年 マンション管理士試験 「問12」 平成25年 管理業務主任者試験 「問10」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問13」 、  平成18年 管理業務主任者試験 「問10」 など。
 他にも、平成24年 マンション管理士試験 「問13」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問7」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問13」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問11」 

 
 いまさらながら、”時効の中断”とは、時効の基礎である事実状態をくつがえすような事実が生じた場合に、時効の進行が阻止されることを言います。
 時効の中断があると、それまで進行していた時効期間はまったく無意味になり、中断後、改めて時効の進行が開始します。
 
 そして、時効の中断は、民法第147条
 「(時効の中断事由)
 第百四十七条 時効は、次に掲げる事由によって中断する。
   一 請求
   二 差押え、仮差押え又は仮処分
   三 承認」

 とあります。


  支払督促(旧支払命令)とは、民事訴訟法第382条から第402条にあり、
  金銭,有価証券,その他の代替物の給付に係る請求について,債権者が簡易裁判所の書記官に申立てることにより,その主張から請求に理由があると認められる場合に,債務者を審尋しないで債務者(滞納者)に支払督促(支払命令)を発する簡易な方法です。
 債権者にとって、少ない費用で、早く簡易裁判所の書記官から債務名義を得られる利点があります。
 債務者が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議の申立てをしなければ,裁判所は,債権者の申立てにより,支払督促に仮執行宣言を付さなければならず,債権者はこれに基づいて強制執行の申立てをすることができます。

  そこで、支払督促は時効の中断との関係では、民法第147条の「請求」に該当し、さらに、民法第150条
 
「(支払督促)
 第百五十条 
支払督促は、債権者が民事訴訟法第三百九十二条に規定する期間内(注:30日以内)に仮執行の宣言の申立てをしないことによりその効力を失うときは、時効の中断の効力を生じない。」

 とあり、
 民法第150条によれば、支払督促は、所定の期間内に仮執行の宣言の申立てをしないことによりその効力を失うときは、時効の中断の効力を生じないは、正しい。

 支払督促を確定させ、強制執行に持って行く為には、前もって債権者(管理組合)は、仮執行の宣言の申し立てをしておくことが必要です。



2 民事調停が調わないときは、6箇月以内に訴えを提起しなければ、時効の中断の効力を生じない。

X 誤っている。 民事調停が調わないときは、”1ヵ月以内”に訴えないと、時効の中断の効力を生じない。”6ヵ月以内”ではない。

  平成21年 マンション管理士試験 「問13」 

 民事調停は、当事者が裁判所で話し合い、合意すれば訴訟の判決と同じ効力を持ちますが、訴訟ではありませんので、調停が調わないと、民法第151条
 「
(和解及び調停の申立て)
 第百五十一条 和解の申立て又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停の申立ては、相手方が出頭せず、又は和解若しくは
調停が調わないときは、一箇月以内に訴えを提起しなければ、時効の中断の効力を生じない。」

 とあり、
 民法第151条によれば、調停が調わないときは、”
一箇月以内に訴えを提起”しなければ、時効の中断の効力を生じないため、”6箇月以内に訴えを提起”しなければ、時効の中断の効力を生じないは、誤りです。


3 管理費を滞納している区分所有者が、滞納の事実を認める承認書を管理組合の管理者あてに提出したときは、管理費支払請求権の時効が中断する。

〇 正しい。 滞納を認めるのは、「承認」で、時効が中断する。
 
 滞納の事実を認める承認書を管理組合の管理者あてに提出したときは、選択肢1で引用しました、民法第147条
 「(時効の中断事由)
 第百四十七条 時効は、次に掲げる事由によって中断する。
   一 請求
   二 差押え、仮差押え又は仮処分
   
三 承認

 での、3号の「承認」に該当しますから、管理費を滞納している区分所有者が、滞納の事実を認める承認書を管理組合の管理者あてに提出したときは、管理費支払請求権の時効が中断するは、正しい。



4 管理組合の管理者が死亡し、後任の管理者が決まらなかったとしても、管理費支払請求権の時効は中断しない。

〇 正しい。 管理者の死亡は、時効の中断事由ではない。

 時効の中断事由は、選択肢1で引用しました、民法第147条
 「
(時効の中断事由)
 第百四十七条 
時効は、次に掲げる事由によって中断する。
   一 請求
   二 差押え、仮差押え又は仮処分
   三 承認」

 です。
 管理組合の管理者が死亡し、後任の管理者が決まらなかったとしても、それは、時効の中断事由には該当しないため、管理費支払請求権の時効は中断しないは、正しい。



答え:2

 選択肢2のように、ちゃんと 「1ヵ月以内」を憶えていないと、正解は難しい。

《タグ》民法 時効の中断事由 支払督促 民事調停 承認 

問12

注:マンション標準管理規約(単棟型)は以下、当解説では、「単棟型」を略して、「標準管理規約」といいます。

  標準管理規約は、平成28年3月14日に大幅な改正があり、また、平成29年8月29日付で「民泊」で12条に改正があったので、注意のこと。


【問 12】 標準管理規約によれば、管理費等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1 管理費等の負担割合を定めるに当たっては、共用部分等の使用頻度等は勘案しない。

〇 適切である。 
 平成20年 管理業務主任者試験 「問14」 、 平成17年 マンション管理士試験 「問28」

 管理費等の規定は、標準管理規約25条
 「(管理費等)
 第25条 区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てる ため、次の費用(以下「管理費等」という。)を管理組合に納入しなけれ ばならない。
   一 管理費
   二 修繕積立金
2 管理費等の額については、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて 算出するものとする。」
 とあり、
 どうやって 、管理費等の負担割合を決めるかは、同条のコメント@
 「
@ 管理費等の負担割合を定めるに当たっては、使用頻度等は勘案しない。」
 とあり、
 標準管理規約25条のコメントによれば、管理費等の負担割合を定めるに当たっては、共用部分等の使用頻度等は勘案しないは、適切です。


 どうして、共用部分等(エレベーターやエントランス)の使用頻度等を勘案しないのでしょうか?


2 管理組合は、目的を問わず、必要な範囲内において借入れをすることができる。

X 適切でない。 目的を問わずなんて、無茶な借入れはできない。 修繕積立金としての管理の範囲に限り借入れができる。

 借入れは、標準管理規約63条
 「(借入れ)
 第63条
管理組合は、第28条第1項に定める業務を行うため必要な範囲内において、借入れをすることができる。」
 とあり、
 引用されています、標準管理規約28条1項は、
 「(修繕積立金)
 第28条 管理組合は、各区分所有者が納入する修繕積立金を積み立てるものとし、
積み立てた修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。
   一 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
   二 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
   三 敷地及び共用部分等の変更
   四 建物の建替え及びマンション敷地売却(以下「建替え等」という。) に係る合意形成に必要となる事項の調査
   五 その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のた めに特別に必要となる管理
 (以下、略)」
 ですから、
 ”修繕積立金としての経費に充当する業務を行う場合に限って”、借入れができますので、管理組合は、”
目的を問わず”必要な範囲内において借入れをすることができるは、適切ではありません。

 なお、管理費が不足する時は、管理費を値上げをしてください。不足して借入れると、財務状態が悪くなります。



3 収支決算の結果、管理費に余剰を生じた場合には、その余剰は翌年度における管理費に充当する。

〇 適切である。 基本として管理費勘定と修繕積立金勘定は別に管理する。

  平成28年 管理業務主任者試験 「問13」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問13」 、平成21年 管理業務主任者試験 「問36」

 管理費に余剰がでると、標準管理規約61条
 「(管理費等の過不足)
 第61条
収支決算の結果、管理費に余剰を生じた場合には、その余剰は翌年度における管理費に充当する
2 管理費等に不足を生じた場合には、管理組合は組合員に対して第25条 第2項に定める管理費等の負担割合により、その都度必要な金額の負担を 求めることができる。」
 とあり、
  標準管理規約61条1項によれば、収支決算の結果、管理費に余剰を生じた場合には、その余剰は翌年度における管理費に充当するは、適切です。



4 管理費等の額については、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出する。

〇 適切である。 
  平成28年 マンション管理士試験 「問29」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問13」

 管理費の額の決め方は、選択肢1でも引用しました、標準管理規約25条
 「(管理費等)
 第25条 区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、次の費用(以下「管理費等」という。)を管理組合に納入しなければならない。
   一 管理費
   二 修繕積立金

2 管理費等の額については、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するものとする
。 」
 とあり、
 標準管理規約25条2項によれば、管理費等の額については、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するは、適切です。



答え:2

 易しい問題です。

 なお、標準管理規約は、条文の下にコメントを入れ、改正箇所が分かるようにした、「マンション管理士 香川事務所」が作成した、 「改正標準管理規約 (WORD版)」 もありますから、利用してください。

《タグ》標準管理規約 管理費の負担割合 借入れ 管理費の余剰 

問13

注:マンション標準管理規約(単棟型)は以下、当解説では、「単棟型」を略して、「標準管理規約」といいます。

  標準管理規約は、平成28年3月14日に大幅な改正があり、また、平成29年8月29日付で「民泊」で12条に改正があったので、注意のこと。


【問 13】 管理組合の監事に関する次の記述のうち、標準管理規約の定めによれば、適切なものはいくつあるか。

ア 監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。

〇 適切である。
  平成28年の改正点がまだ出題される。
 
 監事は、標準管理規約41条
 「(監事)
 第41条 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。
2 監事は、いつでも、理事及び第38条第1項第二号に規定する職員に対して業務の報告を求め、又は業務及び財産の状況の調査をすることができる。
3 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる。
4 監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。
5 監事は、理事が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令、規約、使用細則等、総会の決議若しくは理事会の決議に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を理事会に報告しなければならない。
6 監事は、前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、理事長に対し、理事会の招集を請求することができる。
7 前項の規定による請求があった日から5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合は、その請求をした監事は、理事会を招集することができる。」
 とあり、
 標準管理規約41条4項によれば、監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならないは、適切です。



イ 監事は、理事が不正の行為をするおそれがあると認めるときは、理事長に対し、臨時総会の招集を求めなければならない。

X 適切でない。 理事が不正の行為をするおそれがあると認めるときで”必要なら”、監事は、理事長に対し理事会を招集することが”できる”であり、またこの場合、臨時総会の招集を求める規定はない。

  設問は、選択肢アで引用しました、標準管理規約41条5項、6項そして7項
 「5 監事は、理事が不正の行為をし、若しくは
当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令、規約、使用細則等、総会の決議若しくは理事会の決議に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を理事会に報告しなければならない。
6 監事は、前項に規定する場合において、
必要があると認めるときは、理事長に対し、理事会の招集を請求することができる
7 前項の規定による請求があった日から5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合は、その請求をした
監事は、理事会を招集することができる。」
 とあり、
 監事は、理事が不正の行為をするおそれがあると認めるときは、標準管理規約41条5項により、その報告は、理事会に対して行い、
必要なら、同条6項により、「理事長に対し、理事会の招集を請求することができる」であり、また同条7項によれば、理事長に請求しても、理事会が招集されなければ、監事は「理事会を招集することができる」であり、「理事長に対し、臨時総会の招集を求めなければならない」の規定はないため、適切ではありません。


ウ 監事は、いつでも、理事に対して業務の報告を求め、又は業務及び財産の状況の調査をすることができる。

〇 適切である。 

 設問は、選択肢アで引用しました、標準管理規約41条2項
 「2
監事は、いつでも、理事及び第38条第1項第二号に規定する職員に対して業務の報告を求め、又は業務及び財産の状況の調査をすることができる。」
 とあり、
 標準管理規約41条2項によれば、監事は、いつでも、理事に対して業務の報告を求め、又は業務及び財産の状況の調査をすることができるは、適切です。



エ 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。

〇 適切である。 これが、監事の基本的な業務。
  平成27年 マンション管理士試験 「問27」 平成23年 管理業務主任者試験 「問20」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問21」 

 設問は、選択肢アで引用しました、標準管理規約41条1項
 「第41条
監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。
 とあり、
 標準管理規約41条1項によれば、監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならないは、適切です。

 この監事の総会における監査報告は、重要です。



1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ


答え:3 適切なのは ア ウ エ の3つ

 
個数問題にされると面倒だけど、難しくはない。

《タグ》標準管理規約 監事の業務 理事会の招集 総会での報告

問14

【問 14】 管理組合の活動における以下の取引に関して、平成29年3月分の仕訳として最も適切なものは次のうちどれか。ただし、この管理組合の会計年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までとし、期中の取引においても、企業会計原則に基づきき厳格な発生主義によって経理しているものとする。

 


 会計は、管理業務主任者試験だけでなく、マンション管理士試験においても、必ず2問は出るので、勉強のこと。
 平成29年 マンション管理士試験 「問34」 、  平成28年 マンション管理士試験 「問34」 、 平成27年 マンション管理士試験 「問34」 、平成27年 管理業務主任者試験 「問14」 、 平成26年 マンション管理士試験 「問34」 、 平成25年 マンション管理士試験 「問35」 など。 

*私の過去問題の解説を読んでいる人には、度々の重なる説明で恐縮ですが、マンションの管理組合では、明確な会計基準がありません
 でも、営利を目的とした企業活動ではないことは明らかです。そこで、非営利団体と似ている公益法人の会計方法を基にしています。
 その最大の特徴が、「
発生主義」の採用です。
 
 
★マンションの会計処理で発生主義ということの重要性は、
   まず、発生主義とは、全ての費用・収益は、その支出・収入に基づいて計上し、その発生した期間
     *収入については、請求権が生じた月、
     *支出については、支出が労役などの提供又は工事などである場合は、その労役などの提供又は工事等が完了した月、物品の購入なら、その物品が納入された月に正しく割り当てるように処理すること です。

 この発生主義により、管理費や修繕積立金は該当月に徴収することになっているなら、未収入金(滞納)があっても、全額計上されている。
 この辺りが、企業の会計処理を知っている人には、なかなか理解できない個所です。
 
 また、「資金の範囲は、現金預金、未収金、未払金、前受金及び前払金とする」も、重要な前提です。資金の範囲同士の取引は、「収支計算書」には、反映されません。
 
収支決算書に反映されるのは、収入の発生と費用の発生です。

 会計処理は、以下の原則があります。

仕訳での記帳の仕方    
 勘定科目など 借方   貸方
 資産勘定     現金預金 増加  減少 
未収金 
前払金
損害保険の積立部分
 負債勘定  未払金  減少 増加
前受金など
 費用の発生   管理業務費 支払有     
修繕費
保険料 など
 収入の発生   管理費収入   収入有  
修繕積立金収入
駐車場使用料など

 これを前提に、設問を見ていきましょう。
 *平成29年3月31日(まだ、年度は28年度です)までに、
  @¥690,000 を普通預金から振り込んだ、ということは、資産勘定の普通預金勘定の減少ということで、
貸方に仕訳されます。

借方  貸方 
  普通預金  690,000

 *その明細については、発生主義により、
 A損害保険料、¥240,000。 但し、次年度(平成29年4月から)分、ということで、3月においての処理は、まだ発生していないため、
前払保険料勘定の増加として、借方に仕訳します。

借方  貸方 
前払保険料 240,000 普通預金  690,000
 なお、この前払保険料は、4月から毎月相手勘定は、「支払保険料」として、月額の ¥20,000 が支払の対象となります。

 B平成29年4月予定の漏水補修工事費用 ¥200,000 の着手金を払ったは、4月では、まだ発生していないため、勘定科目は「
前払金」の増加として、借方に仕訳けます。

借方  貸方 
前払保険料 240,000 普通預金  690,000
前払金 200,000

 C2月に完了した雑排水管清掃費用 ¥100,000 を3月に支払ったは、 完了して請求を受けた2月に「未払金」の増加として、貸方に仕訳がされたものを、3月には借方に反対仕訳をします。

借方  貸方 
前払保険料 240,000 普通預金  690,000
前払金 200,000
未払金 100,000

 D3月分(当月)の水道光熱費 ¥150,000 を支払ったは、発生主義により、このまま費用の発生として、借方に仕訳けます。

借方  貸方 
前払保険料 240,000 普通預金  690,000
前払金 200,000
未払金 100,000
水道光熱費 150,000

 そこで、適切なものは、1 です。

答え:1

  勘定科目名をどうするのかの疑問はありますが、前払、未払などから、すぐに分かる。 易しい。

《タグ》会計 発生主義 仕訳 前払保険料 前払金 未払金 

問15

【問 15】 管理組合の活動における以下の取引に関して、平成29年3月分の仕訳として最も適切なものは次のうちどれか。ただし、この管理組合の会計年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までとし、期中の取引においても、企業会計原則に基づき厳格な発生主義によって経理しているものとする。



 発生主義や過去問題については、前の 「問15」 を参照。

 最近の設問としては、明細が羅列される以外に、「なお、3月分の駐車場使用料は、入金がない」などのようによく設問を読まないと間違えるので注意のこと。
 *設問を見て行きましょう。
 @平成29年3月に、普通預金に、¥950,000 の入金があった、ということで、普通預金勘定に資産の増加として「
借方」に仕訳けます

借方 貸方 
 普通預金 950,000  
 *その明細は、
  A2月分の ¥100,000 ということは、2月に 未収金として借方で処理された分が、当月入金ということで、3月では、反対の
貸方に仕訳されます。

借方 貸方 
 普通預金 950,000  未収金 100,000

 B3月分の駐車場使用料 ¥240,000 。 ここで、本文に、「なお、3月分駐車場使用料のうち 80,000円は、まだ入金されてていない」と変な記述があります。
 そこで、本来の3月の駐車場使用料は、
 ¥240,000 + ¥80,000 = ¥320,000 であることが分かります。

 すると、これは、発生主義により、3月の駐車場使用料収入は、¥320,000 と貸方に計上して、不足の ¥80,000 は「
未収金」勘定となり、借方に仕訳します。

借方 貸方 
 普通預金 950,000  未収金 100,000
 未収金   80,000  駐車場使用料収入 320,000
 
 C4月分の駐車場使用料 ¥560、000 。 これは、まだ、3月では発生していませんから、単純に「
前受金」として、貸方に仕訳けます。

借方 貸方 
 普通預金 950,000  未収金 100,000
 未収金  80,000  駐車場使用料収入 320,000
   前受金 560,000

 D新規契約分敷金 ¥50,000 がある。 ここで、「敷金」の性格を考えなくてはいけません。
  「敷金」は、将来返還するものですから、「
預り金」としなければならないということです。これは、「貸方」に仕訳けます。

借方 貸方 
 普通預金 950,000  未収金 100,000
 未収金  80,000  駐車場使用料収入 320,000
   前受金 560,000
   預り金  50,000

 よって、適切なものは、 3 となります。


答え:3

  設問本文にある記述に注意すれば、ここも易しい。

  勘定科目の前受金や預り金は、過去問題を参考のこと。

《タグ》 会計 発生主義 仕訳 未収金 前受金 預り金 

問16

【問 16】 管理組合の活動に係る税務の取扱いに関する記述のうち、最も適切なものはどれか。

1 消費税法上、消費税の納税義務者は事業者とされ、法人格を有しない管理組合及び管理組合法人は納税義務者とはならない。

X 適切でない。(誤りである。) 法人格の有無にかかわらず、管理組合は、消費税法上の事業者となり、納税義務者である。
  平成28年 管理業務主任者試験 「問16」 、平成27年 マンション管理士試験 「問35」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問16」 、 平成23年管理業務主任者試験 「問16」、 平成22年管理業務主任者試験 「問16」平成18年管理業務主任者試験 「問16」平成16年管理業務主任者試験 「問16」

  設問の解説の前に、法人化されていないマンションの管理組合という区分所有者の団体の扱い方は、民法上でも明確でないために、過去の判例(最高裁:昭和39年10月15日)によって、「法人格のない社団・財団」とか「権利能力のない社団・財団」と呼ばれることになります。
 この詳細は、「マンション管理士 香川事務所」が無料で提供しています、「超解説 区分所有法」の第3条にありますから、参考にしてください。


  これを元に、消費税での、事業者とは、消費税法第2条4号
 
「(定義)
  第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
    四 
事業者 個人事業者及び法人をいう。」

 とあり、
 課税の対象は、消費税法第4条
 
「(課税の対象)
  第四条 
国内において事業者が行つた資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。第三項において同じ。)及び特定仕入れ(事業として他の者から受けた特定資産の譲渡等をいう。以下この章において同じ。)には、この法律により、消費税を課する。

 とありますから、
 設問の前半、「消費税法上、消費税の納税義務者は事業者とされ」は、正しい。

 そこで、マンションの管理組合の場合は、管理組合法人であれば、区分所有法第47条14項
 「(成立等)
 14 
管理組合法人は、消費税法(昭和六十三年法律第百八号)その他消費税に関する法令の規定の適用については、同法別表第三に掲げる法人とみなす。」

  とあり、
  一般社団法人や学校法人、健康組合などと同じ法人とみなされ、消費税法上の納税義務があります。


  次に、法人格のないマンションの管理組合(人格のない社団)の立場ですが、これは、消費税法上、第3条
 「第三条 
人格のない社団等は、法人とみなして、この法律(第十二条の二及び別表第三を除く。)の規定を適用する。
 とあり、
 法人格が無くても、こちらも法人とみなされ、消費税法上の納税義務があります。

 よって、設問の後半、「法人格を有しない管理組合及び管理組合法人は納税義務者とはならない」は、誤りです。



2 消費税法上、管理組合が、組合員との駐車場使用契約に基づき収受した使用料は、課税取引として課税対象となる。

X 適切でない。 組合員と管理組合での駐車場使用料なら、不課税となる。

  この回答は、国税庁のQ&Aより、(消費税法第2条第1項第8号)
 「マンション管理組合は、その居住者である区分所有者を構成員とする組合であり、その組合員との間で行う取引は営業に該当しません。
 したがって、マンション管理組合が収受する金銭に対する消費税の課税関係は次のとおりとなります。
  
イ 駐車場の貸付け………組合員である区分所有者に対する貸付けに係る対価は不課税となりますが、組合員以外の者に対する貸付けに係る対価は消費税の課税対象となります
  ロ 管理費等の収受………不課税となります。」
 とあり、
 消費税法上、管理組合が共用部分である駐車場を有償で使用させる場合、使用者が組合員であれば、使用料は課税の対象となりませんから、適切ではありません。

 ただし、駐車場を組合員以外の人に貸し出して収入を得ると、課税対象となり、収入の合計が 1,000万円を超えると納税義務が生じますので、注意してください。



3 消費税法上、管理組合の支出のうち、火災保険料等の損害保険料は、課税取引として課税対象となる。

X 適切でない。 火災保険料等の損害保険は、非課税である。

  消費税には、非課税となっているものがあります。それが、消費税法第6条
 「(非課税)
  第六条 
国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さない
2 保税地域から引き取られる外国貨物のうち、別表第二に掲げるものには、消費税を課さない。」

 とあり、
 「別表第一
    一 土地(土地の上に存する権利を含む。)の譲渡及び貸付け(一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)
    二 金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第一項(定義)に規定する有価証券その他これに類するものとして政令で定めるもの(ゴルフ場その他の施設の利用に関する権利に係るものとして政令で定めるものを除く。)及び外国為替及び外国貿易法第六条第一項第七号(定義)に規定する支払手段(収集品その他の政令で定めるものを除く。)その他これに類するものとして政令で定めるもの(別表第二において「有価証券等」という。)の譲渡
    三 利子を対価とする貸付金その他の政令で定める資産の貸付け、信用の保証としての役務の提供、所得税法第二条第一項第十一号(定義)に規定する合同運用信託、同項第十五号に規定する公社債投資信託又は同項第十五号の二に規定する公社債等運用投資信託に係る信託報酬を対価とする役務の提供及び保険料を対価とする役務の提供(当該保険料が当該役務の提供に係る事務に要する費用の額とその他の部分とに区分して支払われることとされている契約で政令で定めるものに係る
保険料(当該費用の額に相当する部分の金額に限る。)を対価とする役務の提供を除く。)その他これらに類するものとして政令で定めるもの
  (以下、省略)」
 とあり、
 これを読んでも「火災保険料等の損害保険料」は、別表第一 の 3号 での課税の対象になるのかどうか、はっきりしませんね。


 そこで、この判断は、
 https://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6157.htm
 それによりますと、
 「消費税は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡や貸付け、役務の提供が課税の対象となります。 
したがって、次のような取引は、課税の対象となりません
   (1) 給与・賃金・・・・雇用契約に基づく労働の対価であり、「事業」として行う資産の譲渡等の対価に当たらないからです。
   (2) 寄附金、祝金、見舞金、補助金等・・・・一般的に対価として支払われるものではないからです。
   (3) 無償による試供品や見本品の提供・・・・対価の支払いがないからです。
   
(4) 保険金や共済金・・・・資産の譲渡等の対価といえないからです
   (5) 株式の配当金やその他の出資分配金・・・・株主や出資者の地位に基づいて支払われるものであるからです。
   (6) 資産について廃棄をしたり、盗難や滅失があった場合・・・・資産の譲渡等に当たらないからです。
   (7) 心身又は資産について加えられた損害の発生に伴い受ける損害賠償金・・・・対価として支払われるものではないからです。
  しかし、損害賠償金でも、例えば次のような場合は対価性がありますので、課税の対象となります。
   イ 損害を受けた棚卸資産である製品が加害者に引き渡される場合で、その資産がそのままで使用できる場合や、軽微な修理をすれば使用できる場合
   ロ 無体財産権の侵害を受けたために受け取る損害賠償金が権利の使用料に相当する場合
   ハ 事務所の明渡しが期限より遅れたために受け取る損害賠償金が賃貸料に相当する場合」
 
 とあり、
 (4)によれば、 「保険金や共済金・・・・資産の譲渡等の対価といえないから」 課税対象ではなく、適切ではありません。



4 法人税法上、管理組合法人が、その共用部分を携帯電話基地局設置のために通信事業者に賃貸することは、収益事業に該当する。

〇 適切である。 収益事業である。

 管理組合法人なら、法人税法は、区分所有法第47条13項
 「
13 管理組合法人は、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)その他法人税に関する法令の規定の適用については、同法第二条第六号に規定する公益法人等とみなす。この場合において、同法第三十七条の規定を適用する場合には同条第四項中「公益法人等(」とあるのは「公益法人等(管理組合法人並びに」と、同法第六十六条の規定を適用する場合には同条第一項及び第二項中「普通法人」とあるのは「普通法人(管理組合法人を含む。)」と、同条第三項中「公益法人等(」とあるのは「公益法人等(管理組合法人及び」とする。」
 とあり、
 法人税法では、公益法人等とみなされます。


 そこで、設問に対しては、質疑応答事例 「マンション管理組合が携帯電話基地局の設置場所を貸し付けた場合の収益事業判定」(平成26年7月25日)があります。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/21/11-2.htm

 この場合の、【照会要旨】
  「Aマンション管理組合は、移動体通信業者Xとの間で、携帯電話基地局(アンテナ)設置のためにマンション屋上(共用部分)の使用を目的として、建物賃貸借契約を締結することとなりました。今後、Aマンション管理組合は、当該建物賃貸借契約に基づきマンション屋上の使用の対価として設置料収入を得ることとなりますが、当該設置料収入は、法人税法上の収益事業(不動産貸付業)に該当することとなりますか。
  なお、Aマンション管理組合は、法人税法上、人格のない社団等又は
公益法人等に該当することを照会の前提とします。
 そして、【回答要旨】
  
収益事業たる不動産貸付業に該当します
  (理由)
   1 人格のない社団等及び公益法人等の課税関係
     法人税法上、内国法人(人格のない社団等を含みます。)に対しては、各事業年度の所得について法人税を課することとされており(法法3、5)、このうち人格のない社団等及び公益法人等に対しては、各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得以外の所得には法人税を課さないこととされています(法法7)。
    したがって、マンション管理組合(人格のない社団等又は公益法人等)に対する法人税は、収益事業から生じた所得にのみ課されることとなります。
  2 収益事業の範囲
   法人税法上の収益事業とは、販売業、製造業その他の一定の事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいい(法法2十三)、この一定の事業には不動産貸付業が含まれています(法令51五)。
   したがって、マンション管理組合が賃貸借契約に基づいてマンション(建物)の一部を他の者に使用させ、その対価を得た場合には、収益事業(不動産貸付業)に該当し、その収益事業から生じた所得に対して法人税が課されることになります。」 
  とありますから、
  公益法人等である管理組合法人でも、その共用部分を携帯電話基地局設置のために通信事業者に賃貸することは、不動産貸付業として収益事業に該当するため、適切です。



答え:4 

  解説は、消費税や法人税が初めての人も対象に、かなり詳細にしましたが、ここは、過去問題をやっていれば、解答は易しく、すぐに次の問題に移れる箇所です。

《タグ》消費税 人格のない社団 駐車場使用料 課税対象 保険料の扱い 法人税 収益事業

問17

*問17から問21については、長見様から解説を頂きましたので、記載します。

 長見様、ご協力ありがとうございます。


【問 17】 建築物の階数等に関する次の記述のうち、建築基準法によれば、誤っているものはどれか。

1 建築物の敷地が斜面又は段地である場合で、建築物の部分によって階数を異にする場合においては、これらの階数のうち最大のものが、その建築物の階数となる。

〇 正しい。 斜面や段がある土地に建築された建物で、見様によっては階数が違っていたり、吹き抜けがあったり、中二階があるときは、階数は、最高値をとる。

  平成27年 管理業務主任者試験 「問18」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問22」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問17」 

  建築基準法では、用語の定義にあたる条文は、建築基準法本文第2条の他に、建築基準法施行令第1条及び第2条にもありますから注意してください。

 そこで、階数の出し方は、建築基準法施行令第2条1項8号に記載。
 「(面積、高さ等の算定方法)
 第二条 次の各号に掲げる面積、高さ及び階数の算定方法は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 
八 階数 昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物の屋上部分又は地階の倉庫、機械室その他これらに類する建築物の部分で、水平投影面積の合計がそれぞれ当該建築物の建築面積の1/8以下のものは、当該建築物の階数に算入しない。また、建築物の一部が吹抜きとなっている場合、建築物の敷地が斜面又は段地である場合その他建築物の部分によって階数を異にする場合においては、これらの階数のうち最大なものによる。」

 とあり、
 建築基準法施行令第2条1項8号によれば、建築物の敷地が斜面又は段地である場合で、建築物の部分によって階数を異にする場合においては、これらの階数のうち最大のものが、その建築物の階数となるは、正しい。


 


2 昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物の屋上部分の水平投影面積の合計が、当該建築物の建築面積の8分の1以下のものは階数に算入しない。

〇 正しい。
  
 設問は、選択肢1で引用しました建築基準法施行令第2条1項8号前半に記載。
 「
八 階数 昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物の屋上部分又は地階の倉庫、機械室その他これらに類する建築物の部分で、水平投影面積の合計がそれぞれ当該建築物の建築面積の1/8以下のものは、当該建築物の階数に算入しない。」
 とあり、
 建築基準法施行令第2条1項8号によれば、昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物の屋上部分の水平投影面積の合計が、当該建築物の建築面積の8分の1以下のものは階数に算入しないは、正しい。



3 地階の倉庫、機械室その他これらに類する部分の水平投影面積の合計が、当該建築物の建築面積の8分の1以下のものは階数に算入しない。

〇 正しい。

 設問は、選択肢1で引用しました建築基準法施行令第2条1項8号前半に記載。
 「八 階数昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物の屋上部分又は地階の倉庫、機械室その他これらに類する建築物の部分で、水平投影面積の合計がそれぞれ当該建築物の建築面積の1/8以下のものは、当該建築物の階数に算入しない。」
 とあり、
 建築基準法施行令第2条1項8号によれば、地階の倉庫、機械室その他これらに類する部分の水平投影面積の合計が、当該建築物の建築面積の8分の1以下のものは階数に算入しないは、正しい。


4 地階とは、床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの2分の1以上のものをいう。

X 誤っている。 地階とは、床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの”1/3以上”のもので、”1/2以上”のものではない。

  平成25年 管理業務主任者試験 「問17」 、平成21年 管理業務主任者試験 「問17」 、 平成17年 管理業務主任者試験 「問18」 など

  地階とは、建築基準法施行令第1条1項2号。
 「(用語の定義)
 第一条 この政令において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 二 
地階 床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの三分の一以上のものをいう。」
  とあり、
 建築基準法施行令第1条1項2号によれば、地階とは、床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの”3分の1以上”のものですから、床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの”2分の1以上”のものをいうは、誤りです。

    

 なお、地盤面とは、建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい、その接する 位置の高低差が3mを超える場合は、その高低差3m以内ごとの平均の高さにおける水平面をいいます(建築基準法第52条第4項)。 この地盤面が、建築物の高さを測る基準です。
 ★地階には容積率の特例がある
  容積率の算定において、地階の天井が地盤面から1m以下であれば、床面積の1/3を限度として、延べ面積への算入から外されます。(建築基準法52条3項、4項参照)



答え:4

  長見様の感想:選択肢3は、実務でもほとんど使ったことが無く、例の「地下居室の1/3容積不算入」をもじった「ひっかけ問題」だろうと思いこんでしまいました。言われてみれば昔々、油圧式EVの機械室を地下に設けた時は、階数に含まないというのが有った気もします(マンションでは無く橋上駅舎等。但し、駅舎は基本確認申請不要です。)。むしろ過去問を良くこなしていた人の方が、選択肢4が正解(誤り)と、すぐわかった問題でしょう。
 (我々、建築士も数字が全て頭の中に入っている訳では無く「建築申請memo」という本を逐一、参照しながら図面を書いています。しかも、私は設計の実務からしばらく遠ざかっていますし(言い訳)。)


 香川より:過去問題をやっていれば、易しい問題と思います。

 なお、「建築基準法の解説」 も、「マンション管理士 香川事務所」 が無料で提供していますから、ご利用ください。
 また、マンション管理士・管理業務主任者の試験においては、建築基準法からの出題も多いので、「目指せ! マンション管理士・管理業務主任者」のサイトの過去問題の解説において、「建築基準法」 だけを取り出して、解説していますから、こちらも、ご利用ください。

《タグ》建築基準法 階数とは 不算入 地階とは

問18

*問17から問21については、長見様から解説を頂きましたので、記載します。

 長見様、ご協力ありがとうございます。


【問 18】 住宅における居住のための居室に関する次の記述のうち、建築基準法によれば、誤っているものはどれか。

1 居室の天井の高さは、一室で天井の高さの異なる部分がない場合においては、2.4m以上でなければならない。

X 誤っている。 一室で天井の高さの異なる部分がない場合なら、居室の天井の高さは、”2,1m以上”でいい。 ”2.4m以上”ではない。
 
 居室の必要天井高さは、2.1m以上。建築基準法施行令第21条。
 「(居室の天井の高さ)
  第二十一条 
居室の天井の高さは、二・一メートル以上でなければならない。
2 前項の天井の高さは、室の床面から測り、一室で天井の高さの異なる部分がある場合においては、その平均の高さによるものとする。

 とあり、
 建築基準法施行令第21条1項によれば、正確には、同2項で「天井高さは平均の高さ」となっていて、設問では「高さの異なる部分がない場合」と問われていますから、居室の天井の高さは、一室で天井の高さの異なる部分がない場合においては、”
2.1m以上”でよく、”2.4m以上”でなければならないは、誤りです。

 居室とは、建築基準法第2条四号によると、「居室(とは)  居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう。」とあります。
 具体的には、居間、ダイニング、キッチン、寝室、子供部屋、応接室、書斎等 継続的に使用する部屋で人が継続的に使用するので採光・換気その他環境衛生についての決まりがあります。
 玄関、廊下や階段は居室ではありません。便所、浴室も利用時間が一時的なので居室ではありません。
 ★居室に求められる室内居住環境...良好な室内居住環境を実現するために、
採光、換気、防湿、遮音、温度調整、有害な化学物質の規制があります
 ★換気も必要です。...室内で人が呼吸をすると、酸素を消費し二酸化炭素が排出され空気が汚染されます。そこで、この規定があります。
  また、台所のガスコンロなどの燃焼器具からの排ガスは人体に有害です。トイレの臭気も室内にこもると嫌な気分になりますので、屋外に排出します。


  


2 居室を2階に設ける場合には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、当該居室の床面積に対して、7分の1以上としなければならない。

〇 正しい。 居室の採光に有効な部分の面積は、当該居室の床面積に対して、1/7以上。
  平成29年 マンション管理士試験 「問41」 、 平成27年 マンション管理士試験 「問20」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問20」 選択肢3 、 平成17年 管理業務主任者試験 「問17」 、平成14年 マンション管理士試験 「問20」 、平成14年 管理業務主任者試験 「問22」 

  居室の採光と換気は、選択肢3に換気があるように、よくセットで出題される。

 住宅の居室の必要採光率は、建築基準法第28条、
 「(居室の採光及び換気)
 第二十八条 住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの
居室(居住のための居室、学校の教室、病院の病室その他これらに類するものとして政令で定めるものに限る。)には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、住宅にあつては七分の一以上、その他の建築物にあつては五分の一から十分の一までの間において政令で定める割合以上としなければならない。ただし、地階若しくは地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室又は温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室については、この限りでない。
2 居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、二十分の一以上としなければならない。ただし、政令で定める技術的基準に従つて換気設備を設けた場合においては、この限りでない。
3 別表第一(い)欄(一)項に掲げる用途に供する特殊建築物の居室又は建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備若しくは器具を設けたもの(政令で定めるものを除く。)には、政令で定める技術的基準に従つて、換気設備を設けなければならない。
4 ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた二室は、前三項の規定の適用については、一室とみなす。

 とあり、
 建築基準法第28条1項によれば、居室を2階に設ける場合には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、当該居室の床面積に対して、7分の1以上としなければならないは、正しい。

 
 


3 政令で定める技術的基準に従った換気設備を設けない限り、居室には、換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、当該居室の床面積に対して、20分の1以上としなければならない。

〇 正しい。 居室の換気に有効な部分の面積は、当該居室の床面積に対して、1/20以上。

  平成25年 管理業務主任者試験 「問20」 、  平成19年 管理業務主任者試験 「問24」  、平成15年 マンション管理士試験 「44」 

  居室に必要な換気は、床面積の1/20。建築基準法第28条2項。1/20未満の場合、いわゆる「無窓居室」とされ、政令で定める換気設備が必要となる。

 選択肢1で引用しました、建築基準法第28条2項
 「2 居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、二十分の一以上としなければならない。ただし、政令で定める技術的基準に従つて換気設備を設けた場合においては、この限りでない。
 とあり、
 建築基準法第28条2項によれば、政令で定める技術的基準に従った換気設備を設けない限り、居室には、換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、当該居室の床面積に対して、20分の1以上としなければならないは、正しい。

  ★換気設備の必要性...居室で人間が呼吸すると二酸化炭素が排出されます。また台所で煮炊きをしても排ガスが発生します。
   このような、汚れた空気は人体に有害です。また室内の塗料や接着剤に含まれたホルムアルデヒドなどの有害な化学物質も屋外に排出しなければ、シックハウス病にもなります。 
  古い日本家屋は、あちらこちらに隙間があり、ほっておいても換気(自然換気)ができて、室内の汚れた空気は外へ排出されていましたが、気密性の高い住居(アルミサッシの使用、コンクリート造など)が多くなり、換気扇などを使用しなければ、室内の有毒なガスの排気ができなくなってきています。
 
 ★窓などの開口部で自然換気を得る...室内の汚れた空気を外に出すのに一番有効なのは、窓を開けることです。そこで、建築基準法では、採光ともに換気についても、窓などの大きさを定め、居室の場合、床面積の1/20以上としています。



4 国土交通大臣が定めるところにより、からぼりその他の空地に面する開口部を設けて直接土に接する外壁、床及び屋根又はこれらの部分に水の浸透を防止するための防水層が設けられていれば、居室を地階に設けることができる。

〇 正しい。 条件をクリアーすれば、地下に居室を設けられる。
 地下の居室の出題は、珍しい?   でもあった。 平成16年 マンション管理士試験 「問20」 選択肢4 

 まず、居室を地下に設けるは、 建築基準法第29条
 
 「(地階における住宅等の居室)
 第二十九条 
住宅の居室、学校の教室、病院の病室又は寄宿舎の寝室で地階に設けるものは、壁及び床の防湿の措置その他の事項について衛生上必要な政令で定める技術的基準に適合するものとしなければならない。」

 とあり、
 その政令は、建築基準法施行令第22条の2 に、地下居室の技術的基準が記載されています。
 
「(地階における住宅等の居室の技術的基準)
 第二十二条の二 法第二十九条(法第八十七条第三項において準用する場合を含む。)の政令で定める技術的基準は、次に掲げるものとする。
   一 
居室が、次のイからハまでのいずれかに該当すること。
     イ 国土交通大臣が定めるところにより、
からぼりその他の空地に面する開口部が設けられていること
     ロ 第二十条の二に規定する技術的基準に適合する
換気設備が設けられていること
     ハ 
居室内の湿度を調節する設備が設けられていること
   二 直接土に接する外壁、床及び屋根又はこれらの部分(以下この号において「外壁等」という。)の構造が、次のイ又はロのいずれかに適合するものであること。
     イ 
外壁等の構造が、次の(1)又は(2)のいずれか(屋根又は屋根の部分にあつては、(1))に適合するものであること。ただし、外壁等のうち常水面以上の部分にあつては、耐水材料で造り、かつ、材料の接合部及びコンクリートの打継ぎをする部分に防水の措置を講ずる場合においては、この限りでない。
     (1) 
外壁等にあつては、国土交通大臣が定めるところにより、直接土に接する部分に、水の浸透を防止するための防水層を設けること。
     (2) 外壁又は床にあつては、直接土に接する部分を耐水材料で造り、かつ、直接土に接する部分と居室に面する部分の間に居室内への水の浸透を防止するための空隙げき (当該空隙げき に浸透した水を有効に排出するための設備が設けられているものに限る。)を設けること。
     ロ 外壁等の構造が、外壁等の直接土に接する部分から居室内に水が浸透しないものとして、国土交通大臣の認定を受けたものであること。」

 とあり、
 建築基準法第29条及び建築基準法施行令第22条の2 によれば、国土交通大臣が定めるところにより、からぼりその他の空地に面する開口部を設けて直接土に接する外壁、床及び屋根又はこれらの部分に水の浸透を防止するための防水層が設けられていれば、居室を地階に設けることができるは、正しい。

 

  地階の居室には、からぼり(ドライエリアともいいます)の他に換気設備、湿度調節設備があった方がいいですね。


答え:1

  長見様の感想:管理業務主任者を目指す人に正解が1と回答させるのは酷ですね(常識的には2.4mで正しいと考えたくなる)。だいたいにして、専有部分の天井高を、わざわざ低くリフォームするような人はいない筈で、マンション管理の実務には全く関係の無い話だと感じます。選択肢2や3の「窓」の基準を、これから増えるかもしれないサッシの交換を考慮して押えておいてもらいたいのか?それにしても細か過ぎます。
 (そもそも一級建築士の試験でも、法規科目のテストは法令集持ち込み可です(今は知りませんが、20年前は))。


 香川より:確かに、管理業務主任者試験において、選択肢1のように、天井の高さが、2.1mか 2.4mか、この差 30cmを問う出題は適切ではありませんね。

   一級建築士試験での、法令集の持ち込みについて...平成29年でも法規の問題では持ち込みは可能のようですよ。
      
《タグ》建築基準法 居室 天井の高さ 採光の面積 換気のための開口部の面積 地下の居室

問19

*問17から問21については、長見様から解説を頂きましたので、記載します。

 長見様、ご協力ありがとうございます。


【問 19】 鉄骨鉄筋コンクリート造に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1 鉄骨鉄筋コンクリート造は、力学的には、鉄骨造と鉄筋コンクリート造それぞれの長所を生かした構造である。

〇 適切である。
  平成29年 マンション管理士試験 「問40」 

  まず、鉄骨(S=Steel)造は、柱と梁等の骨組みを、形鋼、鋼管、鋼板などの鋼材を用いて造ります。軽量で高層建築や大スパン(柱と柱の間、梁と梁の距離)構造が可能ですが、火に弱い欠点があります。

 そして、
鉄筋コンクリート(RC=Reinforced Concrete)造は、鉄筋とコンクリートを組み合せることにより、
  ・鉄筋...引張力(引っ張る力)には強いが、熱に弱く錆びやすい
  ・コンクリート...熱に強いが、引張力(引っ張る力)に弱い
  の互いの長所を活かし、短所を補う構造です。
  熱に弱い鉄筋をコンクリートで覆い、熱から鉄筋を守って酸化(錆び)を防ぎます。
 コンクリートは上から押さえつける「圧縮」に対する抵抗力はあるものの、「引張力の弱さ」があります。
 そのため、コンクリートを引張力に優れた鉄筋で補強します。
 
  そこで、
鉄骨鉄筋コンクリート(SRC=Steel Reinforced Concrete)造は、力学的には、鉄骨造と鉄筋コンクリート(RC=Reinforced Concrete)造のそれぞれの長所を生かした構造です。
 その構造は、あらかじめ鉄骨で骨組みを作りその周りに鉄筋を配置してコンクリ―トを打ち込んでいきます。
鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造のメリットとしては鉄筋コンクリート(RC)造と比べて鉄骨を多く配置するので柱の断面を細くする事が可能な一方で二つを組み合わせる事で変形に強くなり耐震性は高くなります。

 よって、鉄骨鉄筋コンクリート造は、力学的には、鉄骨造と鉄筋コンクリート造それぞれの長所を生かした構造であるは、適切です。


 



2 鉄骨鉄筋コンクリート造は、高層建物に適しており、柱間のスパンを大きく取ることが可能となる。

〇 適切である。

 選択肢1で説明しましたように、鉄骨鉄筋コンクリート造は、高層建物に適しており、柱間のスパン(柱と柱の間・距離)を大きく取ることが可能となりますから、適切です。


3 建築基準法によれば、国土交通大臣が定めた構造方法を用いる部材及び国土交通大臣の認定を受けた部材を用いる場合を除き、鉄骨のかぶり厚さは、鉄筋のかぶり厚さと同様に3cm以上としなければならない。

X 適切でない。 ”鉄骨”に対するコンクリートのかぶり厚さは”5cm以上”。 なお、”鉄筋”なら部位によって”3cm以上”などがある。 
  平成27年 管理業務主任者試験 「問17」 、 平成26年 マンション管理士試験 「問40」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問19」

 まず、「鉄骨のかぶり厚さ」とか、「鉄筋のかぶり厚さ」とは、鉄骨や鉄筋を覆うコンクリートの厚さのことです。
 鉄骨や鉄筋はそれだけでは、錆びやすいため、それらが錆びないように回りを、コンクリートで覆います。
 かぶり厚さは、コンクリート表面と中に入っている鉄筋の表面までの最短距離を指します。

 かぶり厚さが厚いほど、耐久性は高くなりますし、耐火性も高くなります。

  設問の、鉄骨のかぶり厚さは、建築基準法施行令第79条の3
 「(鉄骨のかぶり厚さ)
  第七十九条の三 
鉄骨に対するコンクリートのかぶり厚さは、五センチメートル以上としなければならない
2 前項の規定は、水、空気、酸又は塩による鉄骨の腐食を防止し、かつ、鉄骨とコンクリートとを有効に付着させることにより、同項に規定するかぶり厚さとした場合と同等以上の耐久性及び強度を有するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いる部材及び国土交通大臣の認定を受けた部材については、適用しない。

 とあり、
 建築基準法施行令第79条の3 によれば、国土交通大臣が定めた構造方法を用いる部材及び国土交通大臣の認定を受けた部材を用いる場合を除き、鉄骨のかぶり厚さは、”
5cm以上”であり、鉄筋のかぶり厚さと同様に”3cm以上”としなければならないでは、適切ではありません。
 
 なお、鉄筋のコンクリートのかぶり厚さは、建築基準法施行令第79条
 「(鉄筋のかぶり厚さ)
  第七十九条 
鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さは、耐力壁以外の壁又は床にあつては二センチメートル以上、耐力壁、柱又ははりにあつては三センチメートル以上、直接土に接する壁、柱、床若しくははり又は布基礎の立上り部分にあつては四センチメートル以上、基礎(布基礎の立上り部分を除く。)にあつては捨コンクリートの部分を除いて六センチメートル以上としなければならない。
2 前項の規定は、水、空気、酸又は塩による鉄筋の腐食を防止し、かつ、鉄筋とコンクリートとを有効に付着させることにより、同項に規定するかぶり厚さとした場合と同等以上の耐久性及び強度を有するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いる部材及び国土交通大臣の認定を受けた部材については、適用しない。

 とあり、
 床・屋根などは、2cm以上、柱・梁・耐力壁では、3cm以上などとなっています。部位によって、異なっていますので、注意してください。


 コンクリートの復習です。
 
 ★かぶり厚さとは、 鉄筋を覆っているコンクリートの厚さのことです。コンクリートの表面から鉄筋の表面までの最短距離をいいます。
  鉄筋コンコリートの建物は鉄筋とコンクリートが一体となって初めて地震などの外力に抵抗することができます。また、コンクリートの中の鉄筋は一切の錆止めをしていません。
 そして、コンクリートは打設当初は強アルカリ性の性質をもち、水や空気などから鉄筋が錆びるのを防いでいますが、コンクリートは年月と共に中性化が進行し、中性化と共にコンクリート内部の鉄筋が錆びやすくなっていきます。
 そのため、鉄筋にはかぶり厚さといって、コンクリートの表面から一定の距離をたもって鉄筋を組み立てていますが、それだけでは長い耐用年数を維持することはできません。
 ところが、水セメント比というコンクリートを配合するときに水とセメントの量の比率のうち、水を少なくすると中性化の進行が著しく遅らせることができます。
 そのため、鉄筋コンクリート造の耐久性対策では、単にかぶり厚さを確保するだけでなく、積極的に水分の少ないコンクリートを打設し、かぶり厚さ+水の少ないコンクリートによって長い耐久性を確保しようと考えています。

 具体的には、もっとも多く使われている水セメント比60〜65%程度のコンクリートの中性化年数はかぶり厚さ30mmの場合で約45年程度ですが、水セメント比を55%に変えるだけで、中性化年数は70年近くに達します。
 でも、水セメント比が少ないということは硬くて非常に打設しにくいコンクリートですから、注意深く作業をしないとコンクリートがうまく混ざらなかったり、隅々 まで行き渡らなかったりといったことが起こりやすく、打設する側の人間からすれば、あまり楽な作業ではありません。


4 建築基準法によれば、構造部分については、柱の防火被覆など一部の規定を除き、鉄骨造の規定が準用される。

〇 適切である。

 鉄骨鉄筋コンクリート造は、建築基準法施行令79条の4  第六節の二 鉄骨鉄筋コンクリート造
 「(鉄骨鉄筋コンクリート造に対する第五節及び第六節の規定の準用)
  第七十九条の四 
鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物又は建築物の構造部分については、前二節(第六十五条、第七十条及び第七十七条第四号を除く。)の規定を準用する。この場合において、第七十二条第二号中「鉄筋相互間及び鉄筋とせき板」とあるのは「鉄骨及び鉄筋の間並びにこれらとせき板」と、第七十七条第六号中「主筋」とあるのは「鉄骨及び主筋」と読み替えるものとする。」
 とあり、
 前二節とは、 「第五節 鉄骨造、 第六節 鉄筋コンクリート造」 のことです。
 そして、
 
 除かれる第65条は、
 「(圧縮材の有効細長比)
 第六十五条 構造耐力上主要な部分である鋼材の圧縮材(圧縮力を負担する部材をいう。以下同じ。)の有効細長比は、柱にあつては二百以下、柱以外のものにあつては二百五十以下としなければならない。


 更に、除かれる第70条とは、
 「(柱の防火被覆)
 第七十条 地階を除く階数が三以上の建築物(法第二条第九号の二イに掲げる基準に適合する建築物及び同条第九号の三イに該当する建築物を除く。)にあつては、一の柱のみの火熱による耐力の低下によつて建築物全体が容易に倒壊するおそれがある場合として国土交通大臣が定める場合においては、当該柱の構造は、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後三十分間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。


  また、除かれる第77条4号とは、
 「(柱の構造)
 第七十七条 構造耐力上主要な部分である柱は、次に定める構造としなければならない。
   一 主筋は、四本以上とすること。
   二 主筋は、帯筋と緊結すること。
   三 帯筋の径は、六ミリメートル以上とし、その間隔は、十五センチメートル(柱に接着する壁、はりその他の横架材から上方又は下方に柱の小径の二倍以内の距離にある部分においては、十センチメートル)以下で、かつ、最も細い主筋の径の十五倍以下とすること。
   四 帯筋比(柱の軸を含むコンクリートの断面の面積に対する帯筋の断面積の和の割合として国土交通大臣が定める方法により算出した数値をいう。)は、〇・二パーセント以上とすること。
   五 柱の小径は、その構造耐力上主要な支点間の距離の十五分の一以上とすること。ただし、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。
   六 主筋の断面積の和は、コンクリートの断面積の〇・八パーセント以上とすること。

 ですから、
 これら建築基準法によれば、構造部分については、柱の防火被覆など一部の規定を除き、鉄骨造の規定が準用されるは、適切です。



答え:3

  長見様の感想:以下、完全に私見です。
 私は、正解を4にしました(またも不正解。)。但し、調べてみたら、上記の様に「鉄骨のかぶり厚さ」は建築基準法施行令に規定されていました。選択肢4については、建築基準法施行令第79条の4で「前2節(鉄骨造と鉄筋コンクリート造)の規定を準用する」となっています。
 実務においては(ちなみに私は建築士の中でも、めずらしく意匠と構造の両方の設計を経験していますが)、鉄骨鉄筋コンクリート造(以下「SRC造」)は、鉄骨の周りに鉄筋を組んで、その周りにコンクリートを打設します。つまり、鉄骨と鉄筋の「かぶり厚さ」が同じになるということは構造上、有り得ない話なので、そんなことはわざわざ規定は無いだろう(有っても鉄筋と同じだろう−鉄骨の方が肉厚なのだから)と考えたのですが、何と上記のように施行令に規定されていました。
 鉄筋コンクリート造(以下「RC造」)は、本来、Reinforced Concrete Structureなので、直訳すれば「補強されたコンクリート構造」となります(実際、戦時中は鉄不足で鉄筋の代わりに「竹」を使って建物を建てていましたが、それでも「RC造」です。)。コンクリートは圧縮力に優れているが、引っ張り力には弱く、梁材や我国の様な地震の多い国の柱材には、それだけでは適さないので、引っ張り力に優れている「鉄筋」等を用いて「補強」した構造が「RC造」です。
 更に、それでもRC造は、せん断破壊(「脆性破壊」と言います)しやすく(地震の際にピロティ柱がバキッと折れてしまう現象のこと)、それを補うために靭性の高い(せん断力に強い)鉄骨も用いるSRC造(Steel Reinforced Concrete Structure)が考案された訳です。(選択肢1)
 結果、大スパンや一昔前なら高層建築にも適していることで普及した構造です。(選択肢2)(更に余談で、RC造の超高層マンションが出来る様になったのは、一昔前は認定が必要だった「高強度コンクリート」が、確認申請だけで済む「普通コンクリート」になったからです。
 私個人は、これは危ないと思っていて、確かに机上の計算では可能なのですが、現場では、鉄筋の密度が高過ぎて、くだんの「かぶり厚さ」が取れない様な設計が横行しています。法改正を仕掛けた大手ゼネコンの技量を信じる他ありませんが。)
 以上から、ご理解いただけると思いますが、構造設計の実務の人間からするとSRC造は、鉄骨造(以下「S造」)では無く、RC造の親戚として取り扱うべきものなのです。(S造は、むしろ木造に近い)。
 更に私見で、日本にはまだ「SC造」(Steel & Concrete Structure)は、ほとんど普及していないと思います。遮音性等も求められるマンション等には適さないと思いますが、基本S造の柱だけコンクリートで覆う構造は、大スパンかつ不特定多数の人が利用する(つまり高い耐震性が求められる)施設には適切だと考えられます。そういう建物が日本にも有るのなら、選択肢3が問われても納得できますが。
 いずれにしても、今時のマンションの構造には、全く無関係の設問だと思えます(正直、くやしくて書いていますが。)。


 香川より:長見様、現場からの貴重なご感想、有難うございます。
  これは、受験生にとって、かなり参考になります。

       本当に、鉄骨鉄筋コンクリート造では、コンクリートのかぶり厚さが、3cmでなく、5cmとかは、管理業務主任者(または、マンション管理士の)試験において必要なものでしょうか。
  
  問題として、実に不適切であることを指摘しておきます。 難問です。 解説に時間がかかるということです。

《タグ》建築基準法 鉄骨鉄筋コンクリート造 かぶり厚さ 準用

問20

*問17から問21については、長見様から解説を頂きましたので、記載します。

 長見様、ご協力ありがとうございます。


【問 20】 地震に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1 地震の規模を表すマグニチュードは、その値が1増えるごとにエネルギーが約10倍になる。

X 適切でない。 マグニチュードが1増えるとエネルギーは、対数計算で、約32倍になる。 約10倍ではない。

  マグニチュードは、地震のエネルギーを1000の平方根を底とした対数で表した数値で、マグニチュードが 1 増えると地震のエネルギーは約31.6倍になる。マグニチュードが 2 増えると地震のエネルギーは1000倍になる。(Wikipediaより)

  香川の解説:地震のマグニチュードとエネルギーの関係なんて知る訳のない世界からの出題です。
   まず、マグニチュード(magnitude)とは、地震そのものが地震波の形で発するエネルギーの大きさを”対数”で表した指標値です。一方、震度は、揺れの大きさを表し、震源から近ければ震度は大きく、遠くなれば震度は小さくなります。マグニチュードと震度は異なっています。

 マグニチュードの計算は、対数計算で、マグニチュードが1増えると、そのエネルギーは、約32倍になり、 マグニチュード8ならマグニチュード7より約32倍、マグニチュード6より約1000倍のエネルギーの関係になります。

 計算式は、地震が発するエネルギーの大きさを E(単位:ジュール)、マグニチュードを M とすると、
 
 だそうです。 対数や指数は、別途勉強してください。

 なお、2011年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震では、マグニチュード 9.0 で関東大震災(マグニチュード 8.2) を超えた日本での観測史上最高値とのこと。
 世界では、1960年の南米チリでの マグニチュード 9.5 がある。



2 日本では、地震による揺れの強さを表す震度を7階級としている。 

X 適切でない。 地震の階級は、震度0から、途中、震度5弱、震度5強、震度6弱、震度6強があり、最高震度7だけど、10階級ある。 7階級ではない。

  日本の気象庁震度階級は、現在では機械による計測値、いわゆる「計測震度」を使用しており、デジタル震度計が観測した計測値を10段階に換算して気象庁が発表している。(Wikipediaより)

 香川の解説:気象庁では、かつて、震度は体感および周囲の状況から推定していましたが、平成8年(1996年)4月以降は、計測震度計により自動的に観測し速報しています。
  気象庁での震度階級は「震度0」「震度1」「震度2」「震度3」「震度4」「震度5弱」「震度5強」「震度6弱」「震度6強」「震度7」の10階級となっており、「震度0」や途中で「震度5弱」「震度5強」「震度6弱」「震度6強」など、も入っていて、「震度0」から最高の「震度7」までですが”
10階級”に分かれていますから、日本では、地震による揺れの強さを表す震度を”7階級”としているは、適切ではありません。

 


3 日本では、現在でも、震度の判定は体感及び目視によっている。

X 適切でない。 今は、計測震度計により自動的に観測している。

  選択肢2の理由に記載。

  気象庁では、かつて、震度は体感および周囲の状況から推定していましたが、平成8年(1996年)4月以降は、計測震度計により自動的に観測し速報していますので、日本では、現在でも、震度の判定は体感及び目視によっているは、適切ではありません。


4 地震波にはP波とS波があり、P波の方がS波より速く伝わる性質がある。

〇 適切である。 英語を知っていると分かる。
 平成29年 マンション管理士試験 「問44」 、平成28年 マンション管理士試験 「問45」 、平成28年 管理業務主任者試験 「問19」 、 平成27年 管理業務主任者試験 「問24」  
  
  P波は、Primary Wave(第一波)のこと。S波は、Secondary Wave(第二波)のこと。よって、先に到達するのは、P波。(Wikipediaから編集)


  

答え:4

  長見様の感想:建築設計とは、ほとんど関係の無い話ですが、興味が有ったので、それぞれの設問について調べてみました。
 過去問をこなしている人には、正解が4というのは簡単だったでしょう(EVの地震管制運転の話でも出て来ますし)。
 選択肢1の「マグニチュードの大きさ」というのは、結構、大切な話だと思っていまして、マグニチュードの大きさは「対数」なので、1増えると2倍になるのでは無く、30倍以上の大きさを表すというのは、普段のニュースを見る時でも、感覚として知っていた方が良いと思います(対数なので10倍等の整数にはなりません)。自分の(または管理している)マンションで発生する震度(と言って良いか、要は地震の大きさ)は、

 震源のマグニチュード × 震源からの近さ × 地盤による増幅

となります。
 更に地震による被害は、高層であれば高周期(地盤が緩い/震源から遠い場合)か、低層であれば低周期(地盤が固い/震源に近い場合)によって、影響を受けやすくなります。
 震度は10段階というのは、わかり難いですが、震度が高くなると「震度6弱」とか放送されている話のことなのでしょう。


 香川より:確かに、雑学としては、マグニチュードの意味、地震の体感とかは、興味があっても、管理業務主任者試験でなら、別の設問が欲しいところです。
       正解の選択肢4は、過去問題をやっていれば、易しい。 英語の問題でもあります。

《タグ》地震 マグニチュードとは 震度の階級 P波 S波

問21

*問17から問21については、長見様から解説を頂きましたので、記載します。

 長見様、ご協力ありがとうございます。


【問 21】 音に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1 人間が聴き取ることのできる周波数帯は、約20ヘルツから20,000ヘルツである。

〇 適切である。
 ヒトの可聴周波数(可聴域)は20 ヘルツ(Hz)から2万 Hz(20 kHz)(ただし、ヒトの可聴域の上限は加齢と共に低下してゆく)(Wikipediaより)
 により、
 人間が聴き取ることのできる周波数帯は、約20ヘルツから20,000ヘルツであるは、適切です。

 香川より:これまた、前の 「問20」 のように、本当に雑学的な出題です。


2 加齢性難聴は、低い周波数から始まり、次第に高い周波数でもみられるようになる。

X 適切でない。 加齢性難聴(高齢になると耳が遠くなること)は、高音域(高周波数)で始まる。 低い周波数から始まりではない。

 老人性難聴などのケースでは、比較的低い周波数帯の音に対する聴力は良好に保たれている場合もあるため、張り上げた声(高い周波数の比較的強い音)はよく聞こえない。(Wikipediaより)
 により、加齢性難聴は、高い周波数から始まり、次第に低い周波数でもみられるようになるため、加齢性難聴は、低い周波数から始まり、次第に高い周波数でもみられるようになるは、適切ではありません。



3 人間が聴き取ることのできる最小の音圧は、周波数によってかなり変化する。

〇 適切である。
 人の聴覚は周波数によって感度が異なるため、物理的に同じ音圧であっても、周波数によって感じる音の大きさが異なる。この聴感上の音の大きさをラウドネスと呼ぶ。

 香川の追加解説:
 まず、音は、空気の圧力が変化している現象と捉えられます。そこで、音圧とは、音が空気中を伝わる時に起こる空気の圧力変化のことです。 音のない状態に比べて、音があるときに加わる圧力ともなり、単位は、パスカル(Pa)で表わします。
 ふつう、瞬間的な圧力の2乗平均の平方根を実効音圧として表示します。
 人間の聞くことのできる音圧は 20 マイクロ・パスカル(μPa) から 200 パスカル(Pa) と 1000 万倍にもなります。
 日常聞く音は 0.1 パスカルくらいです。



4 固体伝搬音とは、建物の躯体構造を伝わる振動によって居室内の壁面や天井面等から発生する音のことである。

〇 適切である。
    平成28年 マンション管理士試験 「問42」 、 平成27年 マンション管理士試験 「問40」 、平成21年 マンション管理士試験 「問42」 、平成21年管理業務主任者試験 「問23」 選択肢2、3、平成18年マンション管理士試験 「問42」 、 平成15年 マンション管理士試験 「問40」

  「固体伝搬音」 音の発生源から個体振動として伝搬され、建物の構造を伝わる振動によって室内に達する音をいう。(マンション管理の実務(H29年版)第3節「建築環境」1「音と遮音対策」P822 より)

  香川の追加解説:
  音は床の衝撃音のように建物の構造から伝わる固体伝搬音と、話し声や演奏音のように空気中を伝わり窓など開口部から聞こえる空気伝搬音があります。
 そこで、マンションの界壁において求められるのは、話し声など空気伝搬音が伝わりにくいことです。
 空気伝搬音は、遮音等級(D)で表され、D-50 と D-15 なら D-50 の方が遮音性が優れています。
 床の遮音等級についてJISでは、「L値」での等級を定めていて、L−40は、L−60よりも遮音性が高くなっています。

 また、界壁の遮音は、主に壁の密度と厚さによって決まります。


  


答え:2

 香川より: 選択肢2の加齢性難聴なんて、本当に管理業務主任者試験において必要とは思えません。実に無神経で、稚拙な出題です。

 問題としては、易しい。

《タグ》可聴周波数帯 加齢性難聴 音圧 固体伝搬音

問22

【問 22】 雨水排水設備に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1 1mmの雨が1m2の面積に降ったときの量は、10リットルである。

X 適切でない。 1mmの雨が1m2の面積に降ったときの量は、1リットル。 10リットルではない。

 まったく、常識的で、答えも面倒ですが、

  1リットル = 1,000cm3 です。

 そこで、設問の 1mm(0.1cm)の雨が1m2(100cmx2)の面積に降ったときの量 を計算しますと、

  0,1cm x 100cm x 100cm = 1、000cm3 =1リットル(L)

 となり、 1mmの雨が1m2の面積に降ったときの量は、1リットル ですから、 10リットルであるは、適切ではありません。

 では、 1CC(1cm3) は? 1ml 、 1L=1、000mL=、1000CC



2 敷地雨水管の流速は、毎秒2m以上になるように設計する。

X 適切でない? 雨水管の流速は、0.8〜3.0(m/秒)の範囲で設計する?


  根拠は? まったく、どこの何をもってこんな細かな出題をするのか、管理業務主任者試験において、敷地雨水管の流速の設計基準なんて必要とは思えません!

  でも、解説はします。
  まず、排水の種類は、
   1.汚水...大小便
   2.雑排水...台所、浴室
   3.雨水...屋根、ベランダなど
 に分けられ、系統として、1.汚水 と 2.雑排水 は公共下水道では、1つにできますが、 3.雨水 は 屋外で合流させる です。

 そこで、敷地雨水管の役目は、建物の屋根など、敷地内に降る雨を隣地や道路に流出させず敷地外に排除し、敷地内に滞留しないようにします。
  雨水は放流・貯留(調整放流)・浸透・再利用等により処理します。
  雨水が滞留すると、臭気やボウフラ等の幼虫が発生し周辺環境が悪化します。


  


  で、設問の、管内流速は、川崎市のホーム・ページ 「第2章 第5節 排水施設」 によると;
  「(ウ)管きょの流速は、汚水管、雨水管及び合流管とも
1.0〜1.8(m/s)程度とし、下流に行くに従い漸増させ、勾配は次第に小さくなるように設計します。
 (エ)ただし、現場状況より困難な場合は、合流管及び
雨水管の流速は0.8〜3.0(m/s)の範囲とし、汚水管は道路勾配に合わせて設計し、実流速は0.6〜3.0(m/s)の範囲で設計することとします。」
 とあり、
 これによると、雨水管の流速は、1.0〜1.8(m/s)程度で、状況により、雨水管の流速は0.8〜3.0(m/s)の範囲でいいとされていますから、敷地雨水管の流速は、毎秒2m以上になるように設計するは、適切ではありません。



3 敷地雨水管の起点や合流箇所、方向を変える箇所などに設置する雨水ますに設ける泥だまりは、100mm以上とする。

X 適切でない。 泥だまりの深さは、150mm以上とすること。 100mm以上ではない。
  平成23年 管理業務主任者試験 「問19」 、 平成23年 マンション管理士試験 「問44」 。 なお、排水設備は、平成16年 管理業務主任者試験 「問23」も参考に。

  なんとなく、過去にどこかで見た問題だと調べると、平成23年にあった。

  雨水マスは、雨水管の会合点、中間点又は屈曲する箇所に取り付けるマスで、下水道施設へ土砂が流入することを防止するため、マス底部に泥溜めを設けたマスをいいます。
 で、排水マスはなぜ必要かというと、建物の中で生じた汚水排水や雑排水、屋根に落ちた雨水排水を行う場合、排水管を通して敷地外へ流す場合、管にゴミや汚泥が流れることにより管が詰まることがあります。その場合、その都度、管を掘り出して交換したり、管内の清掃や点検をすることは事実上困難です。
そこで、そうした管の詰まりが起き易い要所に点検や清掃のためのマスを設置します。マスから管のメンテナンスを行うわけです。また、設置したマスは管を通過するゴミや汚泥を沈殿、分離させ、これらを定期的に清掃する事で、管の中の詰まりを防ぐ役割を持っています。
 
 根拠は、選択肢2でも引用しました、川崎市のホーム・ページ 「第2章 第5節 排水施設」 ページ:126 によると
 「雨水ます
  (イ)
雨水ますの底部には、深さ15p(150mm)以上の泥だめを設け、雨水と一緒に流れ込む砂礫等を沈澱させて、排水管の損傷を防ぐこと。 」
 とあり、
 敷地雨水管の起点や合流箇所、方向を変える箇所などに設置する雨水ますに設ける泥だまりは、深さ”
15p(150mm)以上”の泥だめを設けますから、”100mm以上”とするは、適切ではありません。

 


4 敷地に降る雨の排水設備を設計する場合には、その排水設備が排水すべき敷地面積に、当該敷地に接する建物外壁面積の50%を加えて計算する。

〇 適切である? 

  平成23年の 管理業務主任者試験 「問19」 でも 根拠を探しきれなかったのですが、この場合、通常壁面積の50%を下部の屋根面などの面積に加算して、降水量を算定するようです。


答え:4 

  知る訳ない箇所からの出題。 マニアックだ。 次の「問23」といい、まったく酷い出題方法だ。
 平成23年の時のように、「マンション管理の知識」には、載っているのか? 解説に時間がかかる!

  これは、特定の本からの出題だと、国家資格の出題としては、一般的ではないため、適切でない出題方法だ。
 根拠が分かる方は、 「マンション管理士 香川事務所」 まで連絡ください。 

《タグ》 雨水排水設備 流速 排水枡 泥だまり 敷地に降る雨の排水設備を設計する場合

問23

【問 23】 浄化槽に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1 建築基準法によれば、屎(し)尿浄化槽の漏水検査は、満水して12時間以上漏水しないことを確かめなければならない。

X 適切でない。誤っている。 屎(し)尿浄化槽の漏水検査は、満水して24時間以上漏水しないこと。 12時間以上ではない。
  浄化槽に関しては、 平成21年 管理業務主任者試験 「問25」 、 平成14年 管理業務主任者 「問28」 選択肢3がある。

  この細かな12時間とか、24時間とかの設問も、管理業務主任者試験として適切ではないと、判断しますが、
  屎(し)尿浄化槽については、建築基準法第31条
 
「(便所)
 第三十一条 下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)第二条第八号に規定する処理区域内においては、
便所は、水洗便所(汚水管が下水道法第二条第三号に規定する公共下水道に連結されたものに限る。)以外の便所としてはならない
2 便所から排出する汚物を下水道法第二条第六号に規定する終末処理場を有する公共下水道以外に放流しようとする場合においては、
屎し 尿浄化槽(その構造が汚物処理性能(当該汚物を衛生上支障がないように処理するために屎し 尿浄化槽に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を設けなければならない。」

 とあり、
 これを受けた政令は、建築基準法施行令第33条
 
「(漏水検査)
 第三十三条 第三十一条の改良便槽並びに前条の
屎尿浄化槽及び合併処理浄化槽は、満水して二十四時間以上漏水しないことを確かめなければならない。

  とあり、
 建築基準法施行令第33条によれば、屎(し)尿浄化槽の漏水検査は、満水して”
24時間以上”漏水しないことであり、”12時間以上”では、適切ではありません。誤りです。

  


2 建築基準法によれば、地下浸透方式を除く合併処理浄化槽の汚物処理性能に関して、放流水に含まれる大腸菌群数の個数についての技術的基準がある。

〇 適切である。 正しい。 放流水に含まれる大腸菌群数が、一立方センチメートルにつき三千個以下とする性能を有するものであること。


 放流水に含まれる大腸菌群数は、建築基準法施行令第32条
 「(法第三十一条第二項等の規定に基づく汚物処理性能に関する技術的基準)
 第三十二条  屎し 尿浄化槽の法第三十一条第二項の政令で定める技術的基準及び合併処理浄化槽(屎し 尿と併せて雑排水を処理する浄化槽をいう。以下同じ。)について法第三十六条の規定により定めるべき構造に関する技術的基準のうち処理性能に関するもの(以下「汚物処理性能に関する技術的基準」と総称する。)は、次のとおりとする
   一 通常の使用状態において、次の表に掲げる区域及び処理対象人員の区分に応じ、それぞれ同表に定める性能を有するものであること
。 

 屎(し)尿浄化槽又は合併処理浄化槽を設ける区域  処理対象人員(単位 人)   性能
 生物化学的酸素要求量の除去率(単位 パーセント)  屎し 尿浄化槽又は合併処理浄化槽からの放流水の生物化学的酸素要求量(単位 一リットルにつきミリグラム)
 特定行政庁が衛生上特に支障があると認めて規則で指定する区域    五〇以下  六五以上  九〇以下
 五一以上
五〇〇以下
 七〇以上  六〇以下
 五〇一以上  八五以上  三〇以下
 特定行政庁が衛生上特に支障がないと認めて規則で指定する区域    五五以上  一二〇以下
 その他の区域    五〇〇以下  六五以上  九〇以下
 五〇一以上
二、〇〇〇以下
 七〇以上  六〇以下
 二、〇〇一以上  八五以上  三〇以下
   一 この表における処理対象人員の算定は、国土交通大臣が定める方法により行うものとする。

   二 この表において、生物化学的酸素要求量の除去率とは、屎し 尿浄化槽又は合併処理浄化槽への流入水の生物化学的酸素要求量の数値から屎し 尿浄化槽又は合併処理浄化槽からの放流水の生物化学的酸素要求量の数値を減じた数値を屎し 尿浄化槽又は合併処理浄化槽への流入水の生物化学的酸素要求量の数値で除して得た割合をいうものとする。
二 放流水に含まれる大腸菌群数が、一立方センチメートルにつき三千個以下とする性能を有するものであること。   

2 特定行政庁が地下浸透方式により汚物(便所から排出する汚物をいい、これと併せて雑排水を処理する場合にあつては雑排水を含む。次項及び第三十五条第一項において同じ。)を処理することとしても衛生上支障がないと認めて規則で指定する区域内に設ける当該方式に係る汚物処理性能に関する技術的基準は、前項の規定にかかわらず、通常の使用状態において、次の表に定める性能及び同項第二号に掲げる性能を有するものであることとする。

  性能
 一次処理装置による浮遊物質量の除去率
(単位 パーセント)
一次処理装置からの流出水に含まれる浮遊物質量
(単位 一リットルにつきミリグラム) 
 地下浸透能力
 五五以上  二五〇以下  一次処理装置からの流出水が滞留しない程度のものであること。
  この表において、一次処理装置による浮遊物質量の除去率とは、一次処理装置への流入水に含まれる浮遊物質量の数値から一次処理装置からの流出水に含まれる浮遊物質量の数値を減じた数値を一次処理装置への流入水に含まれる浮遊物質量の数値で除して得た割合をいうものとする。

3 次の各号に掲げる場合における汚物処理性能に関する技術的基準は、第一項の規定にかかわらず、通常の使用状態において、汚物を当該各号に定める基準に適合するよう処理する性能及び同項第二号に掲げる性能を有するものであることとする。
   一 水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第三条第一項又は第三項の規定による排水基準により、屎し 尿浄化槽又は合併処理浄化槽からの放流水について、第一項第一号の表に掲げる生物化学的酸素要求量に関する基準より厳しい基準が定められ、又は生物化学的酸素要求量以外の項目に関しても基準が定められている場合 当該排水基準
   二 浄化槽法第四条第一項の規定による技術上の基準により、屎し 尿浄化槽又は合併処理浄化槽からの放流水について、第一項第一号の表に掲げる生物化学的酸素要求量に関する基準より厳しい基準が定められ、又は生物化学的酸素要求量以外の項目に関しても基準が定められている場合 当該技術上の基準」

 とあり、
 建築基準法施行令第32条1項2号によれば、「二 
放流水に含まれる大腸菌群数が、一立方センチメートルにつき三千個以下とする性能を有するものであること」とあり、地下浸透方式を除く合併処理浄化槽の汚物処理性能に関して、放流水に含まれる大腸菌群数の個数についての技術的基準があるは、適切です。正しい。


3 「建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準(JISA3302)」によれば、「共同住宅」と「住宅」の算定基準は異なる。

〇 適切である。 「共同住宅」と「住宅」の算定基準は異なる。

 こんな箇所からの出題とは、まったく、酷い出題者だ。 こんな出題者を任命してはいけない。  建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準なんて、知らない!

 「建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準(JISA3302)」を探しました。

  http://www.pref.nara.jp/secure/12455/jis.pdf
  

 とあり、
 「建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準(JISA3302)」によれば、「住宅」でも、延べ面積(A)が、 
   A<= 130 なら  n(人)=5
   130< A なら n(人)=7 と 130u で違っていますし、
  「共同住宅」なら n(人)=0.05 A(延べ面積 u) となっていますから、「共同住宅」と「住宅」の算定基準は異なるは、適切です。



4 浄化槽の主たる処理方法は、生物膜法と活性汚泥法に大別される。

〇 適切である。 浄化槽の主たる処理方法は、生物膜法と活性汚泥法に大別される。

 浄化槽で使用される汚物の除去法は、大別すると、
  @
生物膜法...微生物を支持体(あるいは接触材)である固体表面に膜状に固定して処理を行う方式 と
  A
活性汚泥法(かっせいおでいほう)...汚水を活性汚泥と混ぜ、微生物の働きで有機物を分解し、沈殿池で活性汚泥を沈降除去してから上澄み液を塩素で処理する方式
  がありますから、浄化槽の主たる処理方法は、生物膜法と活性汚泥法に大別されるは、適切です。

 各々の方式の詳細は、各自勉強してください。

  

 


答え:1

  酷い! 選択肢1の「屎(し)尿浄化槽の漏水検査の時間」や、選択肢3の「建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準」なんて、知る訳ない! 
 何を管理業務主任者に求めての出題か! 時間がかかる。 前の「問22」 といい、ここの出題者も、常軌を逸した範囲からの出題である。
  
 こんな箇所からの出題とは、まったく、酷い出題者だ。 こんな出題者を任命してはいけない。

《タグ》建築基準法 浄化槽 屎(し)尿浄化槽の漏水検査の時間 大腸菌群数 建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準 生物膜法と活性汚泥法

問24

【問 24】 照明用LEDランプに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1 LEDランプから放射される全光束は、ルーメン単位で表される。

〇 適切である。 LEDの明るさは、ルーメンで表される。

 今更ながら、LEDランプとは、発光ダイオード(LED = Light Emitting Diode)を使用した照明器具です。LEDを使用しているため、低消費電力で長寿命といった特徴があります。

 

 
 ルーメンとは、(lumen、 lm)は、電球など照明器具から発せられる光の量(光束)の単位です。数値が多いほど明るくなります。

 以前明るさを表わす基準としては、ワット(W)がありましたが、LEDランプでは、放射される全光束は、ルーメン単位で表されますから、適切です。 

 なお、国際単位系(SI)の単位。SIの1ルーメンは、「全ての方向に対して1カンデラの光度を持つ標準の点光源が1ステラジアンの立体角内に放出する光束」と定義される。
 
  カンデラ(cd)とは、光度。
  1ステラジアンは、球の半径 r の平方(球の半径を一辺の長さとする正方形)と等しい面積の球面上の部分 a の、中心に対する立体角[sr]と定義される。ステラジアンは平面の角ラジアンを立体に拡張したものである。

 また、ルクスとは、照度。

 そして、照明器具を選ぶ時に目安にしていた、ワット(W)は「消費電力」のこと。

 今までの電球の30W形は、325ルーメンで、60W形は810ルーメンです。



2 白色光のLEDランプは、一部の発光方式を除き、紫外線をほとんど放出しないため、照らされた物の退色を軽減できる。

〇 適切である。 多くの白色光のLEDランプは、紫外線をほとんど放出しない。自然な白に見える。


 LEDでは、白色を出すためには、2色以上の光を混ぜる必要があり、
  @青色LEDにより、黄色蛍光体を光らせる
  A光の3原色のLED(赤色・緑色・青色)を組み合わせる
  B近紫外線または紫色LEDにより、赤色・緑色・青色の蛍光体を光らせる
 の3方式があります。
  紫外線は、B近紫外線または紫色LEDにより、赤色・緑色・青色の蛍光体を光らせる場合に発生しますが、多くの場合、@青色LEDにより、黄色蛍光体を光らせる 方式を採用しているようで、紫外線をほとんど放出しません。

 そこで、白色光のLEDランプは、一部の発光方式を除き、紫外線をほとんど放出しないため、照らされた物の退色を軽減できるは、適切です。


  


3 LEDランプには、微量ながら水銀が含まれているので、破損に注意して処分しなければならない。

X 適切でない。 LEDランプには、水銀は入っていない。

 蛍光灯なら性質上、水銀を使用しなければなりませんが、LED照明は水銀が必要ありませんから、LEDランプには、微量ながら水銀が含まれているので、破損に注意して処分しなければならないは、適切ではありません。


4 直管形のLEDランプを従来の蛍光灯照明器具に設置すると、発熱発煙などの事故が起きる場合がある。

〇 適切である。 かなり、火災事故が起きている。

  既設の蛍光灯の器具に、直管型LEDランプを取り付けると、火災事故が発生した例が、かなりあります。

  例えば、
 事故例: 2016年7月
  火災発生:問題点:使用者がネット購入し、取付けを実施。既設ランプがラピッドスタート形であったことから、既設安定器もラピッド式と勘違いし、ラピッド器具専用の
直管LEDランプを購入し、誤使用に至ったと想定される。
 既設安定器が半導体式であることに気付くには、天井に取付けられた既設器具の銘板を判読する必要があり一般消費者には容易ではない。以上のように、今回の誤使用は十分に想定されるケースとも考えられ、ランプメーカとしては、これを想定して最悪でも重大事故に繋がらない設計配慮が不可欠と思われる。

 そこで、直管形のLEDランプを従来の蛍光灯照明器具に設置すると、発熱発煙などの事故が起きる場合があるは、適切です。



答え:3

  ここは、選択肢3が何となく、不適切とは、分かります。

《タグ》LEDランプ ルーメン 紫外線 水銀 火災事故

問25

【問 25】 長期優良住宅の普及の促進に関する法律によれば、次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 同法の目的には、長期にわたり良好な状態で使用するための措置がその構造及び設備について講じられた優良な住宅の普及を促進することが含まれる。

〇 正しい。 
 平成29年 マンション管理士試験 「問37」 選択肢3 、平成25年 マンション管理士試験 「問39」 、 平成23年 マンション管理士試験 「問39」

  まず、長期優良住宅の普及の促進に関する法律制定の目的は、従来の「つくっては壊す」スクラップ&ビルド型の社会から、「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」ストック活用型の社会への転換を目的として、長期にわたり住み続けられるための措置が講じられた優良な住宅(=長期優良住宅)を普及させるためです。平成20年12月5日に成立し、平成21年6月4日に施行されました。

 そして、「長期優良住宅」とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置がその構造及び設備に講じられた優良な住宅のことです。
 長期優良住宅の建築および維持保全の計画を作成して所管行政庁に申請することで、基準に適合する場合には認定を受けることができます。
 新築についての認定制度は平成21年6月4日より、既存の住宅を増築・改築する場合の認定制度は平成28年4月1日より開始しています。

  認定を受けると、税金の特例措置、補助金、融資等の優遇措置があります。
 また、計画の認定を受けた後には、計画の認定を受けた人(認定計画実施者)は、認定を受けた計画に基づき住宅を建築し、建築工事の完了後は維持保全を行うとともに、建築・維持保全の状況について記録を作成し、保存します。


  設問は、長期優良住宅の普及の促進に関する法律第1条
 「
(目的)
 第一条 
この法律は、現在及び将来の国民の生活の基盤となる良質な住宅が建築され、及び長期にわたり良好な状態で使用されることが住生活の向上及び環境への負荷の低減を図る上で重要となっていることにかんがみ、長期にわたり良好な状態で使用するための措置がその構造及び設備について講じられた優良な住宅の普及を促進するため、国土交通大臣が策定する基本方針について定めるとともに、所管行政庁による長期優良住宅建築等計画の認定、当該認定を受けた長期優良住宅建築等計画に基づき建築及び維持保全が行われている住宅についての住宅性能評価に関する措置その他の措置を講じ、もって豊かな国民生活の実現と我が国の経済の持続的かつ健全な発展に寄与することを目的とする。」

 とあり、
 長期優良住宅の普及の促進に関する法律第1条によれば、同法の目的には、長期にわたり良好な状態で使用するための措置がその構造及び設備について講じられた優良な住宅の普及を促進することが含まれるは、正しい。



2 同法における「建築」とは、住宅を新築することをいい、増築し、又は改築することを含まない。

X 誤っている。 建築には、新築、増築、改築が含まれる。


  建築とは、長期優良住宅の普及の促進に関する法律第2条
 「(定義)
 第二条 この法律において「住宅」とは、人の居住の用に供する建築物(建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第一号に規定する建築物をいう。以下この項において同じ。)又は建築物の部分(人の居住の用以外の用に供する建築物の部分との共用に供する部分を含む。)をいう。
2 この法律において「建築」とは、住宅を新築し、増築し、又は改築することをいう。
3 この法律において「維持保全」とは、次に掲げる住宅の部分又は設備について、点検又は調査を行い、及び必要に応じ修繕又は改良を行うことをいう。
   一 住宅の構造耐力上主要な部分として政令で定めるもの
   二 住宅の雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるもの
   三 住宅の給水又は排水の設備で政令で定めるもの

 (以下、略)」
 とあり、
 長期優良住宅の普及の促進に関する法律第2条2項によれば、この法律において「建築」とは、住宅を新築し、増築し、又は改築することをいうとあるため、同法における「建築」とは、住宅を新築することをいい、
増築し、又は改築することを含まないは、誤りです。


3 長期優良住宅建築等計画の認定の申請に係る共同住宅の1戸の床面積の合計(共用部分の床面積を除く。)には、一定の基準がある。

〇 正しい。 共同住宅なら、1戸の床面積の合計が55u以上であること。

 申請にあたって住宅の規模の基準は、長期優良住宅の普及の促進に関する法律第6条
 「(認定基準等)
 第六条 
所管行政庁は、前条第一項から第三項までの規定による認定の申請があった場合において、当該申請に係る長期優良住宅建築等計画が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、その認定をすることができる
   一 建築をしようとする住宅の構造及び設備が長期使用構造等であること。
   
二 建築をしようとする住宅の規模が国土交通省令で定める規模以上であること
   三 建築をしようとする住宅が良好な景観の形成その他の地域における居住環境の維持及び向上に配慮されたものであること。
   四 前条第一項又は第二項の規定による認定の申請に係る長期優良住宅建築等計画にあっては、次に掲げる基準に適合すること。
     イ 建築後の住宅の維持保全の方法が当該住宅を長期にわたり良好な状態で使用するために誘導すべき国土交通省令で定める基準に適合するものであること。
     ロ 建築後の住宅の維持保全の期間が三十年以上であること。
     ハ 資金計画が当該住宅の建築及び維持保全を確実に遂行するため適切なものであること。
   五 前条第三項の規定による認定の申請に係る長期優良住宅建築等計画にあっては、次に掲げる基準に適合すること。
     イ 建築後の住宅の維持保全の方法の概要が当該住宅を三十年以上にわたり良好な状態で使用するため適切なものであること。
     ロ 資金計画が当該住宅の建築を確実に遂行するため適切なものであること。
   六 その他基本方針のうち第四条第二項第三号に掲げる事項に照らして適切なものであること。

 (以下、略)」
 とあり、
 長期優良住宅の普及の促進に関する法律第6条1項2号での国土交通省令は、長期優良住宅の普及の促進に関する法律施行規則第4条
 「(規模の基準)
 第四条 法第六条第一項第二号の国土交通省令で定める規模は、次の各号に掲げる住宅の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める面積とする。ただし、住戸の少なくとも一の階の床面積(階段部分の面積を除く。)が四十平方メートル以上であるものとする。
   一 一戸建ての住宅(人の居住の用以外の用途に供する部分を有しないものに限る。以下同じ。) 床面積の合計が七十五平方メートル(地域の実情を勘案して所管行政庁が五十五平方メートルを下回らない範囲内で別に面積を定める場合には、その面積)
   
二 共同住宅等(共同住宅、長屋その他の一戸建ての住宅以外の住宅をいう。) 一戸の床面積の合計(共用部分の床面積を除く。)が五十五平方メートル(地域の実情を勘案して所管行政庁が四十平方メートルを下回らない範囲内で別に面積を定める場合には、その面積)」
 とあり、
 長期優良住宅の普及の促進に関する法律施行規則第4条2号によれば、共同住宅等なら一戸の床面積の合計(共用部分の床面積を除く。)が五十五平方メートルですから、長期優良住宅建築等計画の認定の申請に係る共同住宅の1戸の床面積の合計(共用部分の床面積を除く。)には、一定の基準があるは、正しい。



4 所管行政庁から長期優良住宅建築等計画の認定を受けた者は、国土交通省令で定るところにより、認定長期優良住宅の建築及び維持保全の状況に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。

〇 正しい。 記録し保存すること。


 記録の作成と保存は、長期優良住宅の普及の促進に関する法律第11条
 「(記録の作成及び保存)
第十一条 
認定計画実施者は、国土交通省令で定めるところにより、認定長期優良住宅の建築及び維持保全の状況に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。
2 国及び地方公共団体は、前項の認定長期優良住宅の建築及び維持保全の状況に関する記録の作成及び保存を容易にするため、必要な援助を行うよう努めるものとする。

 とあり、
 長期優良住宅の普及の促進に関する法律第11条1項によれば、所管行政庁から長期優良住宅建築等計画の認定を受けた者は、国土交通省令で定るところにより、認定長期優良住宅の建築及び維持保全の状況に関する記録を作成し、これを保存しなければならないは、正しい。



答え:2

 長期優良住宅の普及の促進に関する法律からの、かなり、細かな条文からの出題であるが、確信はなくても、建築基準法(第2条13号)などから、選択肢3の「建築とは」、は選べる。

《タグ》長期優良住宅の普及の促進に関する法律 目的 建築とは 申請の基準 記録の作成と保管 

ここまで、問25


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2018年 3月 9日:再度、見直して、図など入れた。
それにしても、「問20」、「問22」はマニアックな出題だ。

2018年 2月16日:どうやら、「問25」まで終わった。本当に時間がかかる。

2018年 2月 9日:取りあえず、「問15」まで終わった。
時間がかかっている。1問の解説に1時間はかかる。中には、半日(4時間程度)かかって居るものもある。

2018年 2月 2日:「問46」から「問50」などの解説を先にやって、「問1」に戻って来た。

解説開始:2017年12月14日
問題文 Up:2017年12月14日

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