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令和1年(2019年) マンション管理士 試験問題 及び 解説

ページ2(問26より問50まで)

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謝辞:問題文の作成には、 高井さまの協力を得ています。

*現在、問題文を作成中です。変換等おかしな箇所があれば、 「マンション管理士 香川事務所」 まで、連絡ください。


※ 出題当時以後の法令等の改正には、一部は対応していません。

*試験に臨んで、お節介なアドバイス
  1.設問にあわせて、問題用紙に ○(まる)、X(ばつ)をつける。
    殆どの設問が、「正しい」か「間違い」かを訊いてきますので、設問により、問題の頭に、○かXをつけます。
    そして、各選択肢を読み、○かXをつけます。
    問題の○なりXと、選択肢の○かXが一致したものを、マークシートに記入してください。

  2.疑問な問題は、とりあえず飛ばす。
    回答の時間は限られています。
    そこで、回答として、○かXかはっきりしないものがでたら、「?」マークをつけて、次の問題に移ります。
    全部の回答が終わってから、再度戻って決定してください。

  3.複雑な問は、図を描く。
    甲、乙、A、B、Cなど対象が多い問題もでます。
    この場合、問題用紙の空いているところに、図を描いてください。
    重要な点が分かってきます。

(出題者からの注意
次の注意事項をよく読んでから、始めてください。
(注意事項)
1 これは試験問題です。問題は、1 ペ−ジから 30 ペ−ジまでの 50 問です。
2 試験開始の合図と同時に、問題のペ−ジ数を確認してください。
 もし落丁や乱丁があった場合は、ただちに試験監督員に申し出てください。また、法律等の略称及び用語の定義について、裏面の記載を確認してください。
3 解答は、別の解答用紙に記入してください。
 解答用紙に記入する際は、解答用紙の注意事項をよく読み、所定の要領で記入してください。
4 正解は、各問題とも 1 つだけです。
 2 つ以上の解答をしたもの、判読が困難なものは、正解としません。
5 問題中法令等に関する部分は、平成 31 年 4 月 1 日現在において施行中の規定に基づいて出題されています。
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 問題及びこのページの中で使用している主な法律等の略称及び用語の定義について は、各問題において特に記述している場合を除いて以下のとおりとします。

・「区分所有法」………………… 建物の区分所有等に関する法律 (昭和37年法律第69号)
  ☆マンション管理士 香川より;この解説においては、私も略称「区分所有法」といいます。

・「マンション管理適正化法」… マンションの管理の適正化の推進に関する法律 (平成12年法律第149号)
 
 ☆マンション管理士 香川より;この解説においては、私も略称「マンション管理適正化法」といいます。

・「標準管理規約」………………  マンション標準管理規約(単棟型)及び マンション標準管理規約(単棟型)コメント  (最終改正平成 29 年8月 29 日 国住マ第 33 号)
  
☆マンション管理士 香川より、この解説においては、私も略称「標準管理規約」といいます。

・「標準管理規約」………………  マンション標準管理規約(単棟型)及び マンション標準管理規約(単棟型)コメント  (平成28年3月14日国土交通省土地・建設産業局長・ 同住宅局長通知)
  ☆マンション管理士 香川より、この解説においては、私も略称「標準管理規約」といいます。

・「マンション」…………………  「マンション管理適正化法第2条第1号イに 規定するマンション」をいう。
 
☆マンション管理士 香川より;
  初めての人には、分かり難い引用方法です。

  そこで、 私の過去の年度の解説を読んでいる人には、度々となりますが、これは、受験での基本ですから、解説します。 

 建物の区分所有等に関する法律(以下、当解説では、「区分所有法」といいます)では、法律用語として「マンション」の定義がありません。しかし、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下、当解説では、「マンション管理適正化法」といいます)第2条では、以下のように定義されていますので、マンションの用語を試験で使用する際にはこのような「マンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「マンション管理適正化法」という。)第2条第1号イに規定するマンションをいう」の表現が使用されます。

 
  そこで、マンション管理適正化法第2条とは、
 
「(定義) 
  第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
     一
 マンション 次に掲げるものをいう
       イ 
二以上の区分所有者(建物の区分所有等に関する法律 (昭和三十七年法律第六十九号。以下「区分所有法」という。)第二条第二項 に規定する区分所有者をいう。以下同じ。)が存する建物で人の居住の用に供する専有部分(区分所有法第二条第三項 に規定する専有部分をいう。以下同じ。)のあるもの並びにその敷地及び附属施設」

 です。マンション管理適正化法第2条1号イによれば、「マンション」であるための要件は、
    @2人以上の区分所有者 がいて、 
    A人の居住用の専有部分が1つでもあればいい 
 です。マンションの建物には、専有部分と共用部分しかなく、そして、マンションは専有部分と共用部分を含んだ建物と敷地及び附属施設の全体的なものであることに注意してください。

 

・「管理組合」……………………  「区分所有法第3条に規定する区分所有者の団体」 をいう。
  ☆マンション管理士 香川より;毎年ながら、 この定義の仕方には問題があります。
  まず、区分所有法第3条とは、
 
 「(区分所有者の団体)
   
第三条  区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。 」
 です。

  このマンション管理士試験では、区分所有法第3条前半に規定される区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を”即=管理組合”に置き換えていますが、区分所有法では、法人化された場合には、「管理組合法人」の規定はありますが、管理組合だけの規定は1つも存在しません。
 法律で定義がされていない管理組合を国家試験として、直ちに「区分所有法第 3条に規定する区分所有者の団体をいう」は、適切ではありません。

・「管理組合法人」……………… 「区分所有法第 47 条第1項に規定する法人」をいう。
 
・「団地管理組合」……………… 「区分所有法第65条に規定する団地建物所有者の団体」をいう。

解説者(マンション管理士 香川)からのコメント:あやふやな出題、適切でない出題もあって、解答ができないのもあります。

※主な法改正など。
  ・令和2年(2020年)4月1日施行で、民法が大幅に改正されるので、留意のこと。

  ・マンション標準管理委託契約書は、平成30年3月9日付で24条に「反社会勢力の排除」などの改正があり、平成30年度の試験から出題適用となるので注意のこと。

  ・マンション標準管理規約は、平成29年8月29日付で「民泊」で12条に改正があり、平成30年度の試験から出題適用となるので注意のこと。

  ・マンションの管理の適正化に関する指針(国土交通省告示第490号)及びマンション標準管理規約は、平成28年3月14日付で大幅な改正があった。
  
  ・マンション標準管理委託契約書は、平成28年7月に改正があり、平成29年度の試験から出題適用となるので注意のこと。
   
  ・マンション標準管理規約は、平成16年に改正があった。また、平成23年7月にも小幅な改正があった。
 ・マンション標準管理委託契約書は、平成15年に改正があった。また、平成22年5月にも改正があった。

問26

〔問 26〕 規約が標準管理規約の定めと同一である甲マンション管理組合では、計画修繕工事で給水管の更新工事を行う予定である。これに関し、理事長が理事会の席上で行った次の説明のうち、標準管理規約によれば、適切なものはどれか。

1 給水管の更新工事に際し、共用部分である本管と専有部分である枝管の工事を一体として行う場合には、現規約には一体として管理組合が工事を行う旨の規定がないため、規約をその旨変更した上で当該工事を実施する必要があります。

X 適切でない。 標準管理規約では、給水管など、専有部分と共用部分が構造上一体となっている場合には、その工事は管理組合ができると規定されている。

 平成24年 マンション管理士試験 「問27」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問29」

 共用部分である本管と専有部分である枝管の工事を一体として行う場合なら、標準管理規約21条、
「(敷地及び共用部分等の管理)
 第21条 敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負 担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の保存行為(区分所有法第18条第1項ただし書の「保存行為」をいう。以下同じ。)のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。
2 専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を 共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行 うことができる。
3 区分所有者は、第1項ただし書の場合又はあらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けた場合を除き、敷地及び共用部分等の保存行為を行 うことができない。ただし、専有部分の使用に支障が生じている場合に、 当該専有部分を所有する区分所有者が行う保存行為の実施が、緊急を要するものであるときは、この限りでない。
4 前項の申請及び承認の手続については、第17条第2項、第3項、第5 項及び第6項の規定を準用する。ただし、同条第5項中「修繕等」とあるのは「保存行為」と、同条第6項中「第1項の承認を受けた修繕等の工事後に、当該工事」とあるのは「第21条第3項の承認を受けた保存行為後 に、当該保存行為」と読み替えるものとする。
5 第3項の規定に違反して保存行為を行った場合には、当該保存行為に要 した費用は、当該保存行為を行った区分所有者が負担する。
6 理事長は、災害等の緊急時においては、総会又は理事会の決議によらず に、敷地及び共用部分等の必要な保存行為を行うことができる。」
 とあり、
 また、標準管理規約第21条関係 のコメント
F 第2項の対象となる設備としては、配管、配線等がある。」
 とある。
 そこで、標準管理規約21条2項に「2 専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を 共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行 うことができる」と規定があるため、規約の変更は不要ですから、設問の「給水管の更新工事に際し、共用部分である本管と専有部分である枝管の工事を一体として行う場合には、現規約には一体として管理組合が工事を行う旨の規定がないため、規約をその旨変更した上で当該工事を実施する必要があります」は、適切ではありません。



2 給水管の更新工事に際し、共用部分である本管と専有部分である枝管の工事を一体として行う場合には、専有部分に係るものの費用については各区分所有者が実費に応じて負担すべきです。

〇 適切である。 工事は一体として行っても、専有部分なら、各区分所有者が負担する。 
 よく出る。 平成28年 マンション管理士試験 「問29」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問30」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問27」

 一体として繋がった管なら、どこまでが、専有部分の管か、共用部分の管か、区分けの判断が難しいといいながら、選択肢1で引用しました、標準管理規約21条2項でのコメントG
 「第21条関係
 G 配管の清掃等に要する費用については、第27条第三号の「共用設備の保守維持費」として管理費を充当することが可能であるが、
配管の取替え等に要する費用のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきものである。」
 とあるため、
 「給水管の更新工事に際し、共用部分である本管と専有部分である枝管の工事を一体として行う場合には、専有部分に係るものの費用については各区分所有者が実費に応じて負担すべきです」は、適切としますが、これって、実際の作業工事でどう区分けするの?


3 給水管の更新工事には修繕積立金を充当することになりますが、修繕積立金を取り崩すには、総会で組合員総数及び議決権総数の各4分の3以上の決議が必要となります。

X 適切でない。 給水管の更新工事費は、修繕積立金からだすが、総会では出席組合員の過半数でいい。 組合員総数及び議決権総数の各4分の3以上の決議事項では、ない。
 標準管理規約の複数の規定にまたがる出題。
 令和01年 管理業務主任者試験 「問12」 、 平成28年 管理業務主任者試験 「問12」 、 平成26年 マンション管理士試験 「問31」 、

 まず修繕積立金は、標準管理規約28条、
「(修繕積立金)
 第28条
管理組合は、各区分所有者が納入する修繕積立金を積み立てるも のとし、積み立てた修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する 経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。
   一 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕

   二 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
   三 敷地及び共用部分等の変更
   四 建物の建替え及びマンション敷地売却(以下「建替え等」という。) に係る合意形成に必要となる事項の調査
   五 その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のた めに特別に必要となる管理
2 前項にかかわらず、区分所有法第62条第1項の建替え決議(以下「建 替え決議」という。)又は建替えに関する区分所有者全員の合意の後であ っても、マンションの建替え等の円滑化に関する法律(平成14年法律第 78号。以下「円滑化法」という。)第9条のマンション建替組合の設立 の認可又は円滑化法第45条のマンション建替事業の認可までの間におい て、建物の建替えに係る計画又は設計等に必要がある場合には、その経費 に充当するため、管理組合は、修繕積立金から管理組合の消滅時に建替え不参加者に帰属する修繕積立金相当額を除いた金額を限度として、修繕積 立金を取り崩すことができる。
3 第1項にかかわらず、円滑化法第108条第1項のマンション敷地売却 決議(以下「マンション敷地売却決議」という。)の後であっても、円滑 化法第120条のマンション敷地売却組合の設立の認可までの間において、 マンション敷地売却に係る計画等に必要がある場合には、その経費に充当 するため、管理組合は、修繕積立金から管理組合の消滅時にマンション敷 地売却不参加者に帰属する修繕積立金相当額を除いた金額を限度として、 修繕積立金を取り崩すことができる。
4 管理組合は、第1項各号の経費に充てるため借入れをしたときは、修繕 積立金をもってその償還に充てることができる。
5 修繕積立金については、管理費とは区分して経理しなければならない。 」
 とあり、
 設問の「計画修繕工事で給水管の更新工事」であれば、標準管理規約28条1項1号の「一
一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕 」に該当してますから、修繕積立金を取り崩すことは、適切です。

 そこで、総会での決議は、標準管理規約48条
「(議決事項)
 第48条
次の各号に掲げる事項については、総会の決議を経なければなら ない。
   一 収支決算及び事業報告
   二 収支予算及び事業計画
   三 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
   四 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止
   五 長期修繕計画の作成又は変更
   
六 第28条第1項に定める特別の管理の実施並びにそれに充てるための 資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し
   七 第28条第2項及び第3項に定める建替え等に係る計画又は設計等の 経費のための修繕積立金の取崩し
   八 修繕積立金の保管及び運用方法
   九 第21条第2項に定める管理の実施
   十 区分所有法第57条第2項及び前条第3項第三号の訴えの提起並びに これらの訴えを提起すべき者の選任
   十一 建物の一部が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
   十二 区分所有法第62条第1項の場合の建替え及び円滑化法第108条 第1項の場合のマンション敷地売却
   十三 役員の選任及び解任並びに役員活動費の額及び支払方法
   十四 組合管理部分に関する管理委託契約の締結
   十五 その他管理組合の業務に関する重要事項 」
 とあり、
 標準管理規約48条6号により、「標準管理規約28条1項1号」に該当する「計画修繕工事で給水管の更新工事」は、総会の決議を経なければなりません。


 では、決議には、いくらの組合員や議決権が必要かといいますと、それは、標準管理規約47条
「(総会の会議及び議事)
 第47条 総会の会議は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有す る組合員が出席しなければならない。
2 総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。
3 次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。
   一 規約の制定、変更又は廃止
   二 敷地及び
共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わな いもの及び建築物の耐震改修の促進に関する法律第25条第2項に基づ く認定を受けた建物の耐震改修を除く。)
   三 区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項の訴 えの提起
   四 建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の滅失した共用部 分の復旧
   五 その他総会において本項の方法により決議することとした事項 4 建替え決議は、第2項にかかわらず、組合員総数の5分の4以上及び議 決権総数の5分の4以上で行う。
5 マンション敷地売却決議は、第2項にかかわらず、組合員総数、議決権総数及び敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上で行う。
 * (ア)電磁的方法が利用可能ではない場合
6 前5項の場合において、書面又は代理人によって議決権を行使する者 は、出席組合員とみなす。
7 第3項第一号において、規約の制定、変更又は廃止が一部の組合員の権 利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。こ の場合において、その組合員は正当な理由がなければこれを拒否してはな らない。
8 第3項第二号において、敷地及び共用部分等の変更が、専有部分又は専 用使用部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分を所有 する組合員又はその専用使用部分の専用使用を認められている組合員の承 諾を得なければならない。この場合において、その組合員は正当な理由が なければこれを拒否してはならない。
9 第3項第三号に掲げる事項の決議を行うには、あらかじめ当該組合員又 は占有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。
10 総会においては、第43条第1項によりあらかじめ通知した事項につい てのみ、決議することができる。 」
 とあり、
 「計画修繕工事で給水管の更新工事」は標準管理規約47条3項2号の「
共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わな いもの)」に該当するかの検討が、必要です。

 この規定の「共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わな いもの)」は、分かり難い内容ですが、これは、区分所有法第17条1項の規定
「1項 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
 を受けたものです。
 これは、平成14年の区分所有法の改正で、「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く(
軽微な変更)」は普通決議でできるようにしたため、面倒な表現になりました。
  ここは、「共用部分の重大な変更をするときには、特別な決議が必要。だけど、規約で定めれば、議決権の数の3/4以上は変えられないが、区分所有者の数の方は、3/4以上を、過半数まで減らすことができる」ということです。


 

 では、何が軽微の変更で、何が重大変更か、判断に悩みます。

 そこで、国土交通省では、標準管理規約47条関係のコメントDとして、以下のような例示をしています。
「D このような規定の下で、各工事に必要な総会の決議に関しては、例えば 次のように考えられる。ただし、基本的には各工事の具体的内容に基づく 個別の判断によることとなる。
   ア)バリアフリー化の工事に関し、建物の基本的構造部分を取り壊す等の 加工を伴わずに階段にスロープを併設し、手すりを追加する工事は普通 決議により、階段室部分を改造したり、建物の外壁に新たに外付けした りして、エレベーターを新たに設置する工事は特別多数決議により実施 可能と考えられる。
   イ)耐震改修工事に関し、柱やはりに炭素繊維シートや鉄板を巻き付けて 補修する工事や、構造躯体に壁や筋かいなどの耐震部材を設置する工事 で基本的構造部分への加工が小さいものは普通決議により実施可能と考 えられる。
   ウ)防犯化工事に関し、オートロック設備を設置する際、配線を、空き管 路内に通したり、建物の外周に敷設したりするなど共用部分の加工の程 度が小さい場合の工事や、防犯カメラ、防犯灯の設置工事は普通決議に より、実施可能と考えられる。
   エ)IT化工事に関し、光ファイバー・ケーブルの敷設工事を実施する場 合、その工事が既存のパイプスペースを利用するなど共用部分の形状に 変更を加えることなく実施できる場合や、新たに光ファイバー・ケーブ ルを通すために、外壁、耐力壁等に工事を加え、その形状を変更するよ うな場合でも、建物の躯体部分に相当程度の加工を要するものではなく、 外観を見苦しくない状態に復元するのであれば、普通決議により実施可 能と考えられる。
   
オ)計画修繕工事に関し、鉄部塗装工事、外壁補修工事、屋上等防水工事、 給水管更生・更新工事、照明設備、共聴設備、消防用設備、エレベータ ー設備の更新工事は普通決議で実施可能と考えられる。
   カ)その他、集会室、駐車場、駐輪場の増改築工事などで、大規模なもの や著しい加工を伴うものは特別多数決議により、窓枠、窓ガラス、玄関 扉等の一斉交換工事、既に不要となったダストボックスや高置水槽等の 撤去工事は普通決議により、実施可能と考えられる。 」
 この判断の基準は、よく出題されますから、記憶してください。

 標準管理規約47条関係のコメントD オ)によれば、「計画修繕での給水管更生・更新工事」であれば、「普通決議(総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数)」で、いいとのことですから、設問の「給水管の更新工事には修繕積立金を充当することになりますが、修繕積立金を取り崩すには、総会で組合員総数及び議決権総数の各4分の3以上の決議が必要となります」は、前半の「給水管の更新工事には修繕積立金を充当することになります」は、適切ですが、後半の「修繕積立金を取り崩すには、総会で組合員総数及び議決権総数の各4分の3以上の決議が必要となります」は、「出席組合員の議決権の過半数の決議」でいいため、適切ではありません。

 そこで、選択肢3は全体として、適切ではありません。


4 給水管の更新工事は共用部分の変更に該当するので、工事を実施するには、総会で組合員総数及び議決権総数の各4分の3以上の決議が必要となります。

X 適切でない。 共用部分の変更に該当しても、総会では、出席組合員の議決権の過半数の決議でいい。 総数及び議決権総数の各4分の3以上の決議は、不要。

 選択肢3と重なった設問で面白くはないが。
 
 設問の「給水管の更新工事は共用部分の変更に該当する」は、選択肢3で説明しましたように、修繕積立金の取り崩し(標準管理規約28条1号)に該当し、これも、選択肢3で引用しました標準管理規約48条6号
「(議決事項)
 第48条 次の各号に掲げる事項については、総会の決議を経なければなら ない。
 六 第28条第1項に定める特別の管理の実施並びにそれに充てるための 資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し」
 に、該当しますから、総会の決議が必要です。

 そこで、これも、選択肢3で説明しました、標準管理規約47条3項2号との関係で、
「3 次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。
   二 敷地及び
共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わな いもの及び建築物の耐震改修の促進に関する法律第25条第2項に基づ く認定を受けた建物の耐震改修を除く。)」
 に該当するか、どうかを再び聞いています。

 「給水管の更新工事は共用部分の変更」には、該当していますが、これも選択肢3で引用しました47条関係コメントD オ)
「オ)
計画修繕工事に関し、鉄部塗装工事、外壁補修工事、屋上等防水工事、 給水管更生・更新工事、照明設備、共聴設備、消防用設備、エレベータ ー設備の更新工事は普通決議で実施可能と考えられる。 」
 によれば、
 「給水管の更新工事は共用部分の変更」は、「出席組合員の議決権の過半数の決議(普通決議)」でいいため、設問の「総会で組合員総数及び議決権総数の各4分の3以上の決議が必要」は、適切ではありません。

 そこで、選択肢4は全体として、適切ではありません。



答え: 2

 標準管理規約規約の各条文やコメントにまたがっているので、かなり詳細に説明しましたが、ここは、過去問題をやっていれば、難しくはない。

《タグ》標準管理規約 管 本管と枝管 費用負担 修繕積立金 総会決議 出席組合員の議決権の過半数 共用部分の変更とは


*2020年 1月13日:このマンション管理士試験の解説は、「問39」まで終わっていたが、ファイルの保存で、プログラム・ソフトのエラーにより、「問26」以下が無くなってしまっていた。

 かなりのハイ・テンションで解説をしてきたため、前と同じテンションでは、さすがにできず、随分と、落ち込んでしまった。

 でも、どうにか、この解説を見てくれる受験生の存在を思い、また、解説をすることにした。
問27

〔問 27〕 1棟 300 戸の住宅のみで構成されるマンションの管理組合で、理事の定数が25 名である理事会の効率的な運営の在り方として理事会の中に部会を設置することについて理事長から相談を受けたマンション管理士の次の発言のうち、標準管理規約によれば、適切でないものはどれか。

1 貴マンションのような大規模なマンションの管理組合では、理事会のみで実質的検討を行うのが難しくなるので、理事会の中に部会を設け、各部会に理事会の業務を分担して実質的な検討を行うことが考えられます。

〇 適切である。 大規模なマンションでは、なかなか決まらないので、別途、部会を設けて、事前に検討すること。
  平成23年 マンション管理士試験 「問29」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問12」 、

 まず、理事(役員)は、標準管理規約35条、
「(役員)
 第35条 管理組合に次の役員を置く。
   一 理事長    二 副理事長 ○名
   三 会計担当理事 ○名
   四 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) ○名
   五 監事 ○名
2 理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する。 」
 とあります。


 そこで、設問のように戸数300戸と戸数が多いマンションでは、役員の数が多くなり、纏めるのが大変になることが考えられます。では、どのように対応したらいいのかが、標準管理規約35条関係コメントBにあります。
「B 200戸を超え、役員数が20名を超えるような大規模マンションでは、 理事会のみで、実質的検討を行うのが難しくなるので、
理事会の中に部会 を設け、各部会に理事会の業務を分担して、実質的な検討を行うような、 複層的な組織構成、役員の体制を検討する必要がある。 この場合、理事会の運営方針を決めるため、理事長、副理事長(各部の部長と兼任するような組織構成が望ましい。)による幹部会を設けることも有効である
 なお、理事会運営細則を別途定め、部会を設ける場合は、 理事会の決議事項につき決定するのは、あくまで、理事全員による理事会 であることを明確にする必要がある。 」
 とあり、
 理事会の”
下(した”に別途部会を設けてやるのは、どうかと提案しています。
 そこで、標準管理規約35条関係コメントBによれば、設問の「大規模なマンションの管理組合では、理事会のみで実質的検討を行うのが難しくなるので、理事会の中に部会を設け、各部会に理事会の業務を分担して実質的な検討を行うことが考えられます」は、適切です。



2 部会を設ける場合、理事会の運営方針を決めるため、理事長及び副理事長により構成される幹部会を設けることが考えられます。

〇 適切である。 理事長や副理事長が部会に絡んだ方が、スムーズに運ぶ。

 設問は、選択肢1で引用しました、標準管理規約35条関係コメントB
この場合(注:部会を設ける場合)、理事会の運営方針を決めるため、理事長、副理事長(各部の部長と兼任するような組織構成が望ましい。)による幹部会を設けることも有効である。」
 とあり、
 標準管理規約35条関係コメントBによれば、設問の「部会を設ける場合、理事会の運営方針を決めるため、理事長及び副理事長により構成される幹部会を設けることが考えられます」は、適切です。


 特にコメントで指摘されることでもなく、当然ですが。


3 部会を設ける場合、部会の担当業務とされた事項の決議は、そのまま理事会決議に代えることができます。

X 適切でない。 部会の決議だけでは、理事会の決議にはならない。 ちゃんと、理事会を開いて決議すること。
  平成21年 マンション管理士試験 「問31」 、

 部会は理事会では、ありませんから、部会の他に、理事会で決議をしないとダメです。
 それは、標準管理規約規約53条
「(理事会の会議及び議事)
 第53条
理事会の会議は、理事の半数以上が出席しなければ開くことができず、その議事は出席理事の過半数で決する
2 次条第1項第五号に掲げる事項については、理事の過半数の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議によることができる。
3 前2項の決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。
 (ア)電磁的方法が利用可能ではない場合
4 議事録については、第49条(第4項を除く。)の規定を準用する。た だし、第49条第2項中「総会に出席した組合員」とあるのは「理事会に出席した理事」と読み替えるものとする。」
 とあり、
  標準管理規約規約53条1項によれば、理事会の決議には、「出席理事の過半数」が必要であり、設問のように、「部会の担当業務とされた事項の決議は、そのまま理事会決議に代えることができます」は、適切ではありません。

 部会は、あくまでも、理事会の「専門委員会」的な存在です。


 参考:標準管理規約55条2項
「(専門委員会の設置)
 第55条 理事会は、その責任と権限の範囲内において、専門委員会を設置 し、特定の課題を調査又は検討させることができる。
2 専門委員会は、調査又は検討した結果を理事会に具申する。 」



4 部会を設ける場合、副理事長が各部の部長を兼任するような組織体制を構築することが考えられます。

〇 適切である。 この方が組織がスムーズになる。

 また、選択肢2と重なった設問で、つまらないが。

 設問は、選択肢2で引用しました、標準管理規約35条関係コメントB
「この場合(注:部会を設ける場合)、理事会の運営方針を決めるため、理事長、
副理事長(各部の部長と兼任するような組織構成が望ましい。)による幹部会を設けることも有効である。」
 とあり、
 標準管理規約35条関係コメントBによれば、設問の「部会を設ける場合、副理事長が各部の部長を兼任するような組織体制を構築することが考えられます」は、適切です。



答え: 3

 標準管理規約からは、よくコメントからも出題があるが、だいたい、法律でなく、国土交通省の役人が考えた、”マンション管理の参考版”にしか過ぎない「標準管理規約」からの出題があたかも、法律と同様な扱いで、出題されることは、国家資格の出題方法としては、適切でないだろう。

 そして、また、標準管理規約の説明にしか過ぎないコメントにあっているかどうかを訊くなんて、本当にこのマンション管理士・管理業務主任者試験は、どこかおかしい。

《タグ》標準管理規約 大規模 役員 部会 理事会の決議 コメント

問28

〔問 28〕 役員資格について、規約により区分所有者であることを要件としている管理組合において、理事の1名が2年間の任期の途中で住宅を売却して外部に転出した場合の取扱いに関する次の記述のうち、標準管理規約によれば、適切なものはどれか。

1 外部に転出した理事が理事長であった場合、改めて総会で後任の理事長の選任を決議する必要があるが、それまでの間は理事会の決議で仮の理事長を選任してその職に当たらせる。

X 適切でない。 理事長の選任は、理事会でできる。 理事長不在時は、副理事長が職務を行う。
  平成26年 マンション管理士試験 「問29」 、 平成24年 マンション管理士試験、「問31」 、

 役員資格について、規約により区分所有者であることを要件としている管理組合なら、標準管理規約36条、 
「(役員の任期)
 第36条 役員の任期は○年とする。ただし、再任を妨げない。
2 補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
3 任期の満了又は辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任するま での間引き続きその職務を行う。
4 役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。
 とあり、
 標準管理規約36条4項により、設問の「理事の1名が2年間の任期の途中で住宅を売却して外部に転出した場合」は、組合員でなくったので、役員がいなくなったことになります。

 そこで、理事長の選任は、標準管理規約35条、
「(役員)
 第35条 管理組合に次の役員を置く。
   一 理事長
   二 副理事長 ○名
   三 会計担当理事 ○名
   四 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) ○名
   五 監事 ○名
2 理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する。
 とあり、
 標準管理規約35条3項によれば、理事長は、理事のうちから、
理事会で選任 しますから、設問の「外部に転出した理事が理事長であった場合、改めて”総会で後任の理事長の選任を決議する必要がある”」は、適切ではありません。総会での決議は不要です

 なお、理事長が不在なら、副理事長が、理事長の職務を代理します。標準管理規約39条
「(副理事長)
 第39条 副理事長は、理事長を補佐し、理事長に事故があるときは、その 職務を代理し、理事長が欠けたときは、その職務を行う。」



2 外部に転出した理事は、後任の理事が就任するまでの間は、引き続き理事として理事会に参加し、議決権を行使することができる。

X 適切でない。 組合員でなくなれば、もう、管理組合の業務とは、無関係。

 
 役員資格について、規約により区分所有者であることを要件としている管理組合なら、選択肢1で引用しました標準管理規約35条2項、
2 理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
 とあり、
 役員であるためには、組合員(区分所有者)であることが、必須条件です。
 そこで、外部に転出した理事となると、もう組合員ではないため、そのマンション内での決め事である「規約」は、効力が及びませんから、設問のような「外部に転出した理事は、後任の理事が就任するまでの間は、引き続き理事として理事会に参加し、議決権を行使することができる」は、適切ではありません。


 

参考:標準管理規約36条
「(役員の任期)
 第36条 役員の任期は○年とする。ただし、再任を妨げない。
2 補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
3 任期の満了又は辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任するま での間引き続きその職務を行う
4 役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。」
 での、3項の規定は、まだ、組合員であることが、前提です。



3 外部に転出した理事の補欠となった役員の任期は、補欠として就任した時点からの2年間となる。

X 適切でない。 補欠役員の任期は、前任者の残りの期間。

 先走って、選択肢2で引用しました標準管理規約36条2項、
2 補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
 とあり、
 標準管理規約36条2項によれば、外部に転出した理事の補欠となった役員の任期は、補欠として就任した時点から、”
残りの(残任)期間”」ですから、設問の「補欠として就任した時点からの2年間」は、適切ではありません。


4 外部に転出した理事の補欠について、組合員から補欠の役員を理事会の決議で選任することができると、規約に規定することもできる。

〇 適切である。
 毎回総会で欠員となった役員を選任するのは、面倒。 補欠として規約で、理事会での選任を決めておいた方がいい。
  平成30年 マンション管理士試験 「問30」 、 
 
 最近のマンションでは、役員のなり手がいません。

 そこで、もう、マンション管理の専門家である「マンション管理士 香川事務所」を役員にする方法も考えられますが、標準管理規約36条関係コメントCでは、
「C 役員が任期途中で欠けた場合、総会の決議により新たな役員を選任する ことが可能であるが、外部の専門家の役員就任の可能性や災害時等緊急時 の迅速な対応の必要性を踏まえると、
規約において、あらかじめ補欠を定 めておくことができる旨規定するなど、補欠の役員の選任方法について定めておくことが望ましい
 また、組合員である役員が転出、死亡その他の事情により任期途中で欠けた場合には、組合員から補欠の役員を理事会の決議で選任することができると、規約に規定することもできる。
 なお、理事や監事の員数を、○〜○名という枠により定めている場合に は、その下限の員数を満たさなくなったときに、補欠を選任することが必要となる。 」
 ともあり、
 選択肢1でも引用しました標準管理規約35条2項、
「2 理事及び監事は、組合員のうちから、
総会で選任する。」
 では、役員の欠員が出るたびに総会を開かねばなりません。
  こんな、面倒な規約なら、変更して「組合員である役員が転出、死亡その他の事情により任期途中で欠けた場合には、組合員から補欠の役員を
理事会の決議で選任することができる」とした方がいいでしょう。

 そこで設問の「外部に転出した理事の補欠について、組合員から補欠の役員を理事会の決議で選任することができると、規約に規定することもできる」は、適切です。



答え: 4

  この問題も、難しくはない。


  本当に、最近の管理組合では、組合員の高齢化も伴い、役員のなり手不足問題は深刻で、よく、「マンション管理士 香川事務所」 にも相談が寄せられます。

 ここは、もう、「マンション管理士 香川事務所」に役員を任せるほうが、マンションの管理・運営がスムーズにいくでしょう。

《タグ》標準管理規約 役員 転出 理事長の選任 任期 補欠 規約の改正

問29

〔問 29〕 管理組合の総会及び理事会の決議に関する次の記述のうち、標準管理規約によれば、適切なものはどれか。

1 理事会において総会に提出する規約変更案を決議する場合には、理事総数の4分の3以上の賛成が必要である。

X 適切でない。 理事会の決議は、出席理事の過半数でいい。 理事総数の4分の3以上の賛成は不要。

  平成21年 マンション管理士試験 「問31」 、

 設問が、「規約の変更案」となっていて、知識が少しある受験生を惑わすようにしていますが、基本的に理事会の決議方法は、標準管理規約53条、
「(理事会の会議及び議事)
 第53条
理事会の会議は、理事の半数以上が出席しなければ開くことができず、その議事は出席理事の過半数で決する
2 次条第1項第五号に掲げる事項については、理事の過半数の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議によることができる。
3 前2項の決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。
 *(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合
4 議事録については、第49条(第4項を除く。)の規定を準用する。ただし、第49条第2項中「総会に出席した組合員」とあるのは「理事会に 出席した理事」と読み替えるものとする。」
 とあり、
 規約の改正案であっても、予算案であっても、標準管理規約53条1項によれば、 「
その議事は出席理事の過半数で決する」ため、設問の「理事会において総会に提出する規約変更案を決議する場合には、”理事総数の4分の3以上の賛成が必要である”」は、適切ではありません。


2 総会の前の日に共用部分の漏水で緊急に工事が必要となった場合、理事長が、総会当日に理事会を開催し、工事の実施等を議案とする旨の決議を経て総会に提出したとしても、その総会で緊急の工事の実施を決議することはできない。

〇 適切である。 総会では、抜き打ち決議はできない。
  平成30年 マンション管理士試験 「28」 

 総会の開催が既に予定されていて、緊急事態が発生し、理事会の決議があれば、その総会の緊急議題にしてみたいところですが、マンションでは、そんなことはできません。

 それが、 標準管理規約47条10項、
「(総会の会議及び議事)
 第47条
   10
総会においては、第43条第1項によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる。
 です。
 この標準管理規約47条10項によれば、総会では「あらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる」となっていて、これは、総会に出席できない人を考慮したものです。
 そこで、設問のような「総会の前の日に共用部分の漏水で緊急に工事が必要となった場合、理事長が、総会当日に理事会を開催し、工事の実施等を議案とする旨の決議を経て総会に提出したとしても、その総会で緊急の工事の実施を決議することはできない」は、適切です。

 では、2019年の巨大台風による被害発生のように緊急に修理が必要なら、標準管理規約21条6項、
「(敷地及び共用部分等の管理)
 第21条
   6 理事長は、災害等の緊急時においては、総会又は理事会の決議によらず に、敷地及び共用部分等の必要な保存行為を行うことができる。」
 で、対応することになりますか。


3 各戸の議決権割合が同一である管理組合で、書面決議をすることにつきあらかじめ全員の承諾を得ている普通決議事項の議案は、総戸数の過半数の賛成書面が集まらなければ可決とはならない。

X 適切でない。 書面決議は、提出された書面の過半数があれば、可決となる。 総戸数の過半数まではいらない。

 書面による決議からの出題は、初めて?

 
でも、普通決議事項って何だ! どこかで定義されたか?

 書面による決議は、標準管理規約50条3項、
「(書面による決議)
 第50条 規約により総会において決議をすべき場合において、組合員全員の承諾があるときは、書面による決議をすることができる。
2 規約により総会において決議すべきものとされた事項については、組合員全員の書面による合意があったときは、書面による決議があったも のとみなす。
3 規約により総会において決議すべきものとされた事項についての書面による決議は、総会の決議と同一の効力を有する

4 前条第3項及び第4項の規定は、書面による決議に係る書面について準用する。
5 総会に関する規定は、書面による決議について準用する。」
 とあり、
 マンションの管理組合では、様々なことを決めるなら、原則として総会を開き、その場で討論をして決めなさいとなっていますが、組合員全員が納得(承諾)するなら、もう総会を開かずに、書面をやり取りして、総会の規定を準用しましょうとなっています。

 そこで、設問の「普通決議事項」が、具体的に定義されていないのが、問題ですが、これは、多分、標準管理規約47条2項の
「(総会の会議及び議事)
 第47条 総会の会議は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。
2 総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。
3 次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。
   一 規約の制定、変更又は廃止
 (以下、略)」
 の「総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する」を指していると、捉えるなら、
 標準管理規約50条は、
 「総戸数の過半数の書面で総会に準じたものが成立し、特に規約の制定・変更・廃止のように、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する事項でなければ、
提出された書面の”過半数の賛成”があれば、可決します」から、設問の「各戸の議決権割合が同一である管理組合で、書面決議をすることにつきあらかじめ全員の承諾を得ている普通決議事項の議案は、”総戸数の過半数の賛成書面”が集まらなければ可決とはならない」は、適切ではありません。


4 理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始以後1か月以内に招集しなければならない。

X 適切でない。 標準管理規約では、新会計年度開始以後2か月以内に招集となっている。 1か月以内ではない。

 通常総会の招集は、標準管理規約42条3項
「(総会)
 第42条 管理組合の総会は、総組合員で組織する。
2 総会は、通常総会及び臨時総会とし、区分所有法に定める集会とする。
3 理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始以後2か月以内に招集 しなければならない。
4 理事長は、必要と認める場合には、理事会の決議を経て、いつでも臨時 総会を招集することができる。
5 総会の議長は、理事長が務める。」
 とあり、
 標準管理規約42条3項によれば、「理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始以後”
2か月以内”に招集 しなければならない」ため、設問の「”1か月”以内に招集しなければならない」は、適切ではありません。


答え: 2

  選択肢3の「普通決議」を使うのは、実に不適切。

  以前もこれは指摘したが、出題元の 公益財団法人 マンション管理センター は、注意力がない。

  選択肢2は、悩まず選べたか。
  選択肢3の書面決議は、難問か?

《タグ》標準管理規約 理事会の決議 緊急動議 書面決議 通常総会 毎年1回新会計年度開始以後2か月以内に招集

問30

〔問 30〕 監事の職務や権限に関する次の記述のうち、標準管理規約によれば、適切なものの組合せはどれか。

ア 監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならず、また、理事が不正の行為をし、又は当該行為をするおそれがあると認めるときは、遅滞なく、その旨を理事会に報告しなければならない。

〇 適切である。 監事の職務。
 平成29年 管理業務主任者試験 「問13」 

 組合せ問題か。 ここは、標準管理規約の改正点からの出題。

 監事の職務は、標準管理規約41条、
「(監事)
 第41条 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。
2 監事は、いつでも、理事及び第38条第1項第二号に規定する職員に対 して業務の報告を求め、又は業務及び財産の状況の調査をすることができ る。
3 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認 めるときは、臨時総会を招集することができる。
4 監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。
5 監事は、理事が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令、規約、使用細則等、総会の決議若しくは理事会の決議に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、 遅滞なく、その旨を理事会に報告しなければならない。
6 監事は、前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、理 事長に対し、理事会の招集を請求することができる。
7 前項の規定による請求があった日から5日以内に、その請求があった日 から2週間以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられな い場合は、その請求をした監事は、理事会を招集することができる。 」
 とあり、
 標準管理規約41条4項及び同条5項によれば、設問の「監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならず、また、理事が不正の行為をし、又は当該行為をするおそれがあると認めるときは、遅滞なく、その旨を理事会に報告しなければならない」は、適切です。



イ 理事が不正な行為をし、又は当該行為をするおそれがあると認めるときは、監事は、理事長に対し理事会を招集するよう請求することができるが、一定期間内に理事長が招集しないときは、その請求をした監事が理事会を招集することができる。

〇 適切である。 監事の職務。

 設問は、選択肢アで引用しました標準管理規約41条6項及び同条7項、
6 監事は、前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、理 事長に対し、理事会の招集を請求することができる。
7 前項の規定による請求があった日から5日以内に、その請求があった日 から2週間以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられな い場合は、その請求をした監事は、理事会を招集することができる
。」
 によれば、
 設問の「理事が不正な行為をし、又は当該行為をするおそれがあると認めるときは、監事は、理事長に対し理事会を招集するよう請求することができるが、一定期間内に理事長が招集しないときは、その請求をした監事が理事会を招集することができる」は、適切です。


ウ 監事は理事会への出席義務があるが、監事が出席しなかった場合には、理事の半数以上が出席していたとしても、理事会における決議等は無効となる。

X 適切でない。 監事は理事会への出席義務があるが、理事会での議決権は、ない。 理事会の決議は、出席理事の過半数でいい。有効である。


 まず、設問の前半「監事は理事会への出席義務がある」は、選択肢アで引用しました標準管理規約41条4項
「4
監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなけ ればならない。 」
 により、適切です。

 では、設問の後半「監事が出席しなかった場合には、理事の半数以上が出席していたとしても、理事会における決議等は無効となる」の検討ですが、理事会の決議は、標準管理規約53条、
「(理事会の会議及び議事)
 第53条
理事会の会議は、理事の半数以上が出席しなければ開くことができず、その議事は出席理事の過半数で決する
2 次条第1項第五号に掲げる事項については、理事の過半数の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議によることができる。
3 前2項の決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。
 *(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合
4 議事録については、第49条(第4項を除く。)の規定を準用する。ただし、第49条第2項中「総会に出席した組合員」とあるのは「理事会に 出席した理事」と読み替えるものとする。」
 とあり、
 標準管理規約53条1項によれば、 「問29」 など他の問題でも解説しましたが、
理事会の決議は、出席理事がしますので、監事の出席の有無は、理事会の決議には、無関係であり、設問の「監事が出席しなかった場合には、理事の半数以上が出席していたとしても、理事会における決議等は無効となる」は、適切ではありません。

 そこで、選択肢ウは、全体として、適切ではありません。

 なお、準管理規約41条関係コメントA
「A 第4項は、従来「できる規定」として定めていたものであるが、監事に よる監査機能の強化のため、理事会への出席義務を課すとともに、必要があるときは、意見を述べなければならないとしたものである。ただし、理事会は第52条に規定する招集手続を経た上で、第53条第1項の要件を 満たせば開くことが可能であり、
監事が出席しなかったことは、理事会における決議等の有効性には影響しない。」
 もあります。

 しかし、標準管理規約を改正して、監事に理事会への出席義務を追加したため、実際の役員会では、監事の扱い方で混乱が生じています。



エ 監事は、理事長が解任され、後任の理事長が選任されていない間に、区分所有者の一人が、規約で禁止している民泊事業(住宅宿泊事業法(平成 29 年法律第 65 号)に定める住宅宿泊事業をいう。)を行っていることが確認できたときは、当該区分所有者に対し、規約違反行為の是正等のために必要な勧告等を行うことができる。

X 適切でない。 標準管理規約に、監事の職務として、こんな規定はない。

 監事の職務として、標準管理規約には、設問のような規定はありませんから、適切ではありません。

 理事長が不在なら、副理事長がいます。

 参考:標準管理規約67条1項
「(理事長の勧告及び指示等)
 第67条 区分所有者若しくはその同居人又は専有部分の貸与を受けた者若 しくはその同居人(以下「区分所有者等」という。)が、法令、規約又は 使用細則等に違反したとき、又は対象物件内における共同生活の秩序を乱 す行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経てその区分所有者等 に対し、その是正等のため必要な勧告又は指示若しくは警告を行うことが できる。
(以下、略)」



1 アとイ
2 イとウ
3 ウとエ
4 エとア


答え: 1 (適切なのは、 ア と イ)

  組合せ問題とか、個数問題は、4択といっても、精度が必要とされます。
 このような、出題方法は、国家資格の出題方法としては、適切でありません。

 監事はなんで存在しているかを、理論的に考えれば、答えは、早い。

《タグ》組合せ問題 標準管理規約 監事の職務 改正点 理事会への出席義務 議決権はない

問31

〔問 31〕 管理組合における組合員の氏名等の取扱いに関する次の記述のうち、標準管理規約及び個人情報の保護に関する法律(平成 15 年法律第 57 号)によれば、適切なものはどれか。

1 組合員の氏名は個人情報の保護に関する法律で保護される個人情報に当たることから、新たに区分所有権を取得して組合員となった区分所有者は、その氏名を管理組合に届け出ることを拒否することができる。

X 適切でない。 区分所有者は、その氏名を管理組合に届け出ることを拒否することは、できない。
  令和01年 管理業務主任者試験 「問44」 、平成30年 管理業務主任者試験 「問43」 、平成27年 管理業務主任者試験 「問43] 」 、平成25年 管理業務主任者試験 「問41」 、平成22年 管理業務主任者試験 「問45」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問44」 、 平成17年 管理業務主任者試験 「問45」

 出題そのものが、適切でない。  

 「個人情報の保護に関する法律(以下、「個人情報保護法」といいます)」という法律に対して「正誤(適切かどうか)」を設問にしていながら、その根拠を国土交通省の人が、「マンション管理の参考版」として作成しているにすぎない、法律でない「標準管理規約」を根拠に論議してもそれでは、世間一般に通用しない。

 ここでは、マンション管理を目的としている法律の「区分所有法」において、「個人情報保護法」との関係で、管理組合の組合員(区分所有者)の氏名をどうして区分所有者から拒否されることなく届け出が得られるのかを、検討しなければいけない。

 まず、個人情報保護法が、平成29年5月30日に改正・施行され、今までは、扱う個人情報が5,000人以下の場合には、この法律の対象とならなかったのが、扱う個人情報が一人でも、個人情報保護法の適用の対象となりました。
 だいたい、法律適用の対象を、個人情報の内容でなく、取り扱う人数で、線引きしていたという適当さがこの法律が制定された当時の曖昧さを示しています。

 では、「個人情報」とは、個人情報保護法第2条によれば、
  @生存する個人に関する情報であって、
  A当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの
  B他の情報と簡単に照合することができて、それによって特定の個人を識別できるもの
  のことです。


 この「個人情報」に該当する事項を取り扱えば、法人格がないマンションの管理組合、自治会(町会)、各種の小さなサークルも「個人情報取扱事業者」として個人情報保護法が適用されますから、心してください。。

 ◎問題点:改正された(当初もそうだけど)個人情報保護法は規定はあるが、各条文に、具体的な判断事例がなく、今後の政令や規則に委ねる部分が多い為、プライバシーの保護を優先するのか、管理組合全体の立場を優先するのかなど、問題が先送りされており、専門家でも意見が分かれていて、今後の争点となる。
 また、マンションの管理組合などが法改正により、急遽、対象となったため、法の適用範囲において疑問点が多いのが指摘される。
 今後、マンションの管理組合など、中小の個人情報取扱事業者に対しては、法の改正がある予定。

 それらを前提に、管理組合(区分所有者の団体)は、どうして組合員名簿(区分所有者名簿)を作成できるのか、の検討。

 *まず、管理組合においては、区分所有法第6条で規定される「
共同の利益」を守ることが、その団体の主要な目的であり、その目的を達成するために、廊下や階段など「共用部分の負担」として、管理費や修繕積立金の負担を義務付けられている。(区分所有法第19条)
  そこで、組合員の氏名が分からないと、管理費や修繕積立金が適正に徴収できなくなるため、組合員名簿の作成は、管理組合の運営・活動に不可欠であり、組合員名簿の作成は、「
区分所有法により可能」である。
  また、管理費や修繕積立金の徴収の他、区分所有法第35条に規定される集会(総会)の招集通知や議決権者の確認、議事録の送付などにおいても、組合員名簿は必要なため、「
区分所有法において作成していい」。
   なお、組合員名簿は、組合員や利害関係者の閲覧が許されている名簿と区分所有法では解釈されている。

  参考として、管理組合が法人化された場合の規定だが、区分所有法第48条の2 2項
(財産目録及び区分所有者名簿)
 第四十八条の二 管理組合法人は、設立の時及び毎年一月から三月までの間に財産目録を作成し、常にこれをその主たる事務所に備え置かなければならない。ただし、特に事業年度を設けるものは、設立の時及び毎事業年度の終了の時に財産目録を作成しなければならない。
2 管理組合法人は、区分所有者名簿を備え置き、区分所有者の変更があるごとに必要な変更を加えなければならない。
 もある。

  しかし、区分所有法の規定にあるのは「組合員名簿(区分所有者の名簿)」であり、同居人を含む「居住者名簿」となると、法的な扱いが、異なるので注意のこと。
 また、災害時に対応した「全家族の氏名や勤務先・緊急連絡先」までのデータを集めるとなると、これは、区分所有法とは、別の対応になります。

 ・個人情報保護法第15条で規定される「利用目的」は、区分所有法第3条に明記されている「管理組合の運営」と考えられる。

 そこで、本人の同意が必要かにおいて、個人情報保護法第16条3項1号が適用できるかの検討
(利用目的による制限)
 第十六条 
個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない
2 個人情報取扱事業者は、合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはならない。
3 前二項の規定は、次に掲げる場合については、適用しない
   
一 法令に基づく場合
   二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
   三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
   四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき
。」

 個人情報保護法第16条3項1号によれば、「法令に基づけば、個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ない」でいいとなっている。

 上に述べたように、区分所有法においては、区分所有者の団体(管理組合)での区分所有者(組合員)の氏名取得の利用目的は、「法令に基づく場合」と考えれば、
 設問の前半「組合員の氏名は個人情報の保護に関する法律で保護される個人情報に当たる」は、適切ですが、設問の後半「新たに区分所有権を取得して組合員となった区分所有者は、その氏名を管理組合に届け出ることを拒否することができない」ため「できる」は、適切ではないとなり、選択肢1は、全体として、適切でない。


  検討した資料等:
 * 国土交通省所管分野における個人情報保護に関するガイドライン
(平成 24 年国土交通省告示第三百六十三号。最終改正平成 27 年国土交通省告示第四百六十四号) 〜 解説・事例集 〜
 これは、国土交通省内部用で、使えない。

  *マンション管理業における個人情報保護に関するガイドライン
  これも、使えない。

  *「不動産業における個人情報保護のあり方に関する研究会」報告
(不動産流通業における個人情報保護法の適用の考え方)  
 平 成 1 7 年 1 月 (改 正:平 成 2 4 年 6 月)
 これも、使えない。

 *「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」及び 「個人データの漏えい等の事案が発生した場合等の対応について」 に関するQ&A
 平成 29 年2月 16 日 (平成 30 年7月 20 日更新) 個人情報保護委員会

 これは、以下の、事項で使える。
 (第三者に該当しない場合)
Q5−37 :
マンション管理組合とマンション管理会社の間で居住者の氏名等の情報を共有することは可能ですか
A5−37: 個人データを第三者に提供する際には、原則としてあらかじめ本人の同意が必要となりますので、本人の同意を取得している場合はマンション管理組合とマンション管理会社の間で居住者の氏名等の個人データを共有することは可能です。なお、管理組合 が管理会社に対して、利用目的の達成に必要な範囲内において個人データの取扱いに関し委託(法第 23 条第5項第1号)をする場合には、第三者提供に該当しないため、本人の同意がなくとも、個人データの提供を受けることが可能です。
 ただし、委託者は個人データの取扱いについて、委託先を監督する義務があります(個人情報保護法第 22 条)。

(第三者に該当しない場合)
Q5−38 :
マンション管理組合がマンション管理会社に管理業務を委託している場合に、管理組合が保有する組合員名簿を管理会社が提供してもらうよう求めることは可能ですか
A5−38 :マンション管理規約や管理業務委託契約の内容にもよりますが、一般的に利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データの取扱いに関する業務を委託する場合には、
第三者提供には該当しません。また、委託内容に組合員名簿の作成・保管等が含ま れている場合に管理会社から管理組合に名簿を提供することも第三者提供にはなりません。したがって、この委任の範囲内であれば、個人情報保護法上、管理組合が管理会社へ本人の同意を取得することなく名簿を提供することは可能と解されます。ただし、委託者は個人データの取扱いについて、委託先を監督する義務があります(個人情報保護法第 22 条)。


*当「問31」については、高井さまからの解説が寄せられましたので、記載します。

≪総合コメント≫
 マンション管理士試験で個人情報保護法に関して出題されるのは初めてであるが、「管理組合における組合員の氏名等の取扱いに関する次の記述」とかなり限定した場面を設定しており、今回の出題に関しては個人情報保護法を熟知していなくても管理組合業務を経験していれば常識的判断で正解は得られそうだ。AI時代が進展するに伴い、個人情報保護の重要性が叫ばれている昨今、今後注目すべきテーマである。
 また、選択肢4が適切であることに気が付けば個人情報保護法を意識することなく正解は得られる

X 適切でない。
≪コメント≫
 標準管理規約の第31条に「新たに組合員の資格を取得し又は喪失した者は、直ちにその旨を書面により管理組合に届け出なければならない」と規定されており、本選択肢は不適切である。
なお、個人情報保護法第15条第1項には「個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的をできる限り特定しなければならない」と規定されているが、具体的な利用目的については「区分所有法」及び「標準管理規約」に規定されておりこれで十分である。
 なお、平成29年5月30日に改正個人情報保護法が全面施行され、現行法では対象外だった5,000人分以下の個人情報を取り扱う小規模な事業者も改正法の対象となり管理組合も規模の大小を問わず個人情報保護法が適用される。



2 高齢者等の災害弱者に係る情報は、個人のプライバシーに深く関わるため、災害時等の、人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であっても、あらかじめ本人の同意を得ていない限り、地域の防災関係組織等に提供することはできない。

X 適切でない。 災害時なら、適用外。

 設問は、個人情報保護法第16条、
(利用目的による制限)
 第十六条 
個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。
2 個人情報取扱事業者は、合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはならない。
3 前二項の規定は、次に掲げる場合については、適用しない。
   一 法令に基づく場合
   
二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
   三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
   四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。

 とあり、
 個人情報保護法第16条3項2号によれば、設問の「高齢者等の災害弱者に係る情報は、個人のプライバシーに深く関わるため、災害時等の、人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であれば」、本人の同意を得ることが困難なときと判断されますから「あらかじめ本人の同意を得ていなくても、地域の防災関係組織等に提供することはできますから、「提供できない」は、適切では、ありません。


 なお、 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)   平成 28 年 11 月 (平成 29 年3月一部改正) 個人情報保護委員会  P.30 に、
 個人情報保護法第16条3項の例として、
 「事例 2)大規模災害や事故等の緊急時に、被災者情報・負傷者情報等を家族、行政機関、 地方自治体等に提供する場合 」
 もあります。



*高井様のコメント

X 適切でない。
≪コメント≫
 個人情報保護法第23条第1項に「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき、個人データを第三者に提供してはならない」と規定されているが、同意に関してはただし書きで「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるときは除く」とされており、当選択肢は不適切である。
 常識的に考えても上記の場合は対象外とすべきであるが、世間では個人情報保護法をたてに緊急時でも個人情報が取得できていないため適切な対処ができない事例を耳にする。



3 組合員名簿の管理を管理会社に委託するに当たっては、氏名の届出の際に、管理会社に対し情報提供することの同意をあらかじめ得ていない区分所有者の氏名については、第三者提供に当たるので、管理会社に提供することはできない。

X 適切でない。 提供していい。 委託関係なら、管理会社は第三者に該当しない。

 第三者提供は、個人情報保護法第23条
(第三者提供の制限)
 第二十三条 
個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
   一 法令に基づく場合
   二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
   三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
   四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
2 個人情報取扱事業者は、第三者に提供される個人データ(要配慮個人情報を除く。以下この項において同じ。)について、本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止することとしている場合であって、次に掲げる事項について、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置くとともに、個人情報保護委員会に届け出たときは、前項の規定にかかわらず、当該個人データを第三者に提供することができる。
   一 第三者への提供を利用目的とすること。
   二 第三者に提供される個人データの項目
   三 第三者への提供の方法
   四 本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止すること。
   五 本人の求めを受け付ける方法
3 個人情報取扱事業者は、前項第二号、第三号又は第五号に掲げる事項を変更する場合は、変更する内容について、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置くとともに、個人情報保護委員会に届け出なければならない。
4 個人情報保護委員会は、第二項の規定による届出があったときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該届出に係る事項を公表しなければならない。前項の規定による届出があったときも、同様とする。
5 次に掲げる場合において、当該個人データの提供を受ける者は、前各項の規定の適用については、第三者に該当しないものとする。
   
一 個人情報取扱事業者が利用目的の達成に必要な範囲内において個人データの取扱いの全部又は一部を委託することに伴って当該個人データが提供される場合
   二 合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合
   三 特定の者との間で共同して利用される個人データが当該特定の者に提供される場合であって、その旨並びに共同して利用される個人データの項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的及び当該個人データの管理について責任を有する者の氏名又は名称について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いているとき。
6 個人情報取扱事業者は、前項第三号に規定する利用する者の利用目的又は個人データの管理について責任を有する者の氏名若しくは名称を変更する場合は、変更する内容について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置かなければならない。

 とあり、
 設問の「組合員名簿の管理を管理会社に委託」であれば、個人情報保護法第23条5項1号に該当していると解釈され、「氏名の届出の際に、管理会社に対し情報提供することの同意をあらかじめ得ていない区分所有者の氏名については、第三者提供に当たるので、管理会社に提供することはできます」から、設問の「管理会社に提供することはできない」は、適切ではありません。


  参考:設問の解釈は、選択肢2でも取り上げました 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)  第23条5項1号関係 P.51
 (1)委託(法第 23 条第 5 項第 1 号関係)
 
利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データの取扱いに関する業務の全部又は一部を委託することに伴い、当該個人データが提供される場合は、当該提供先は第三者に該当しない
なお、個人情報取扱事業者には、法第 22条により、委託先に対する監督責任が課される。」

  もあります。


*高井様のコメント

X 適切でない。
≪コメント≫
 個人情報保護法第23条第1項に「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき、個人データを第三者に提供してはならない」と規定されているが、同法第23条第5項に「一 個人情報取扱事業者が利用目的の達成に必要な範囲内において個人データの取扱いの全部又は一部を委託することに伴って当該個人データが提供される場合、第三者に該当しないものとする」と規定されており、区分所有者の同意を得なくても管理会社に提供できるので当選択肢は不適切である。 



4 区分所有者の親族を名乗る者から組合員名簿につき閲覧請求を受けた理事長は、その者が親族関係にあることが確認できた場合においても、直ちに閲覧請求に応じることはできない。

〇 適切である。 区分所有者の親族は、利害関係人ではない。

 ここは、単純に、標準管理規約から。
 基本となっているのは、標準管理規約第64条1項、
「(帳票類等の作成、保管)
 第64条 理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を、書面又は電磁的記録により作成して保管し、
組合員又は利害関係人の理由を付した書面又は電磁的方法による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。
 (以下、略)」
 とあり、
 利害関係者の範囲は、標準管理規約64条関係コメントB
「B
組合員名簿の閲覧等に際しては、組合員のプライバシーに留意する必要 がある
 そして、第49条関係 にも同様の「利害関係人」があり、
 @ 第3項の「
利害関係人」とは、敷地、専有部分に対する担保権者、差押え債権者、賃借人、組合員からの媒介の依頼を受けた宅地建物取引業者等 法律上の利害関係がある者をいい、単に事実上利益や不利益を受けたりする者、親族関係にあるだけの者等は対象とはならない。」
 とあり、
 設問の「区分所有者の親族を名乗る者」では、「利害関係人」に該当しないため、「その者が親族関係にあることが確認できた場合においても、直ちに閲覧請求に応じることはできない」は、適切です。

 なお、この「利害関係人」の範囲は、特に「標準管理規約」の独自の解釈によるものでなく、区分所有法での解釈を、採用したものです。


*高井様のコメント

〇 適切である。
標準管理規約第64条第1項に「理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を、書面又は電磁的記録により作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面又は電磁的方法による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない」と規定されているが、同規則コメント第49条関係に「利害関係人とは、敷地、専有部分に対する担保権者、差押え債権者、賃借人、組合員からの媒介の依頼を受けた宅地建物取引業者等法律上の利害関係がある者をいい、単に事実上利益や不利益を受けたりする者、親族関係にあるだけの者等は対象とはならない」とコメントさせており当選択肢は適切である。


答え: 4

 正式な法律である「個人情報保護法」との関係を、法律でない「標準管理規約」において、設問をするとは、根拠として、実に不適切な出題。

 しかし、選択肢1は、「適切でない」としたが、区分所有者が管理組合に氏名の届け出を拒んだときに、どこまで、強硬に届出をさせらるかとなると、現在の区分所有法の構成では、個人情報保護法との関係で、かなり議論が必要だ。
 区分所有法を改正して、利用目的、区分所有者の氏名などの規定も明確に規定しないと、個人情報保護法との解釈で問題がでる。


《タグ》個人情報保護法 組合員の氏名 届出は拒否できるか 高齢者等の災害弱者に係る情報 合員名簿の管理を管理会社に委託 利害関係人のの範囲


*2020年 2月18日:解説。 これで、一応、マンション管理士の試験問題の解説は、終わり。

問32

〔問 32〕 専有部分のある建物であるA棟、B棟及びC棟並びに集会所からなる団地における総会決議に関する次の記述のうち、「マンション標準管理規約(団地型)及びマンション標準管理規約(団地型)コメント」(最終改正平成 30 年3月 30 日国住マ第 60 号)によれば、適切なものはどれか。

1 集会所を大規模に増改築する場合には、各棟の棟総会での決議が必要である。

X 適切でない。 団地共用部分の変更は、団地総会で決する。 棟の総会は不要。

 標準管理規約(団地型)からも、最近は、出題がある。
  令和01年 管理業務主任者試験 「問30」 、 平成30年 マンション管理士試験 「問31」 、平成27年 マンション管理士試験 「問32」 、平成27年 管理業務主任者試験 「問32」 、  平成26年 マンション管理士試験 「問33」 
 
 まず、標準管理規約(団地型)の前提は、団地全体での一元管理とし、多くの事項は、団地総会で決めるようにしていますが、区分所有法との関係で、団地には準用が無い規定(義務違反者に対する措置、復旧及び建替えなど)があるため、棟の総会も開く規定があります。
 そこで、区分所有法で団地総会に準用されていない条文が狙われることになります。

 
 それは、全般関係コメントD
「D
この規約では、団地建物所有者の共有物である団地内の土地、附属施設及び団地共用部分のほか、それぞれの棟についても団地全体で一元的に管理するものとし、管理組合は団地全体のものを規定し、棟別のものは特に規定していない
 ただし、区分所有法で棟ごとに適用されることとなっている事項(義務違反者に対する措置、復旧及び建替え)については、棟ごとの棟総会で決議するものである。
 なお、棟の管理は各棟の管理組合で行うことと規約で位置づけた場合であっても、団地全体としての管理水準の統一、効率的な管理の確保等の観点から、全棟で管理のための連絡協議会のような組織を設置し、緩やかな形での統合的な管理を行っていくことが考えられる。」
 ともあります。


 では、 標準管理規約(団地型)での、団地の共用部分の範囲は、標準管理規約(団地型)8条
「(共用部分の範囲)
 第8条 対象物件のうち共用部分の範囲は、
別表第2に掲げるとおりとす る。 」
 とあり、
 別表第2は、
「別表第2 共用部分の範囲
1 棟の共用部分
  エントランスホール、廊下、
階段、エレベーターホール、エレベーター室、共用トイレ、屋上、 屋根、塔屋、ポンプ室、自家用電気室、機械室、受水槽室、高置水槽室、パイプスペース、メータ ーボックス(給湯器ボイラー等の設備を除く。)、内外壁、界壁、床スラブ、基礎部分、床、天井、 柱、バルコニー等専有部分に属さない「建物の部分」 エレベーター設備、電気設備、給水設備、排水設備、消防・防災設備、インターネット通信設備、 テレビ共同受信設備、オートロック設備、宅配ボックス、避雷設備、集合郵便受箱、各種の配線配 管(給水管については、本管から各住戸メーターを含む部分、雑排水管及び汚水管については、配 管継手及び立て管)等専有部分に属さない「建物の附属物」
2 団地共用部分
  管理事務所、
集会所、管理用倉庫等「団地内の附属施設たる建物」
 です。
 設問の「集会所を大規模に増改築する場合」は、
団地共用部分の変更となります。

 これを元に、団地総会の決議事項は、標準管理規約(団地型)50条
「(議決事項)
 第50条
次の各号に掲げる事項については、団地総会の決議を経なければ ならない。
   一 収支決算及び事業報告
   二 収支予算及び事業計画
   三 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
   四 規約(第72条第一号の場合を除く。)及び使用細則等の制定、変更又は廃止
   五 長期修繕計画の作成又は変更
   
六 第28条第1項又は第29条第1項に定める特別の管理の実施(第72条第三号及び第四号の場合を除く。)並びにそれに充てるための資金の借入れ及び団地修繕積立金又は各棟修繕積立金の取崩し
   七 第28条第2項若しくは第3項又は第29条第2項若しくは第3項に定める建替え等に係る計画又は設計等の経費のための団地修繕積立金又は各棟修繕積立金の取崩し
   八 団地修繕積立金及び各棟修繕積立金の保管及び運用方法
   九 第21条第2項に定める管理の実施
   十 区分所有法第69条第1項の場合の建替えの承認
   十一 区分所有法第70条第1項の場合の一括建替え
   十二 役員の選任及び解任並びに役員活動費の額及び支払方法
   十三 組合管理部分に関する管理委託契約の締結
   十四 その他管理組合の業務に関する重要事項 」
 とあり、
 お金がからむので、これは、標準管理規約(団地型)50条6号と同条7号で引用されています、標準管理規約(団地型)28条を見てみましょう。


 標準管理規約(団地型)28条は、団地の修繕積立金です。
「(団地修繕積立金)
 第28条 管理組合は、各団地建物所有者が納入する団地修繕積立金を積み立てるものとし、積み立てた団地修繕積立金は、土地、附属施設及び団地共用部分の、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。
   一 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
   二 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
   
三 土地、附属施設及び団地共用部分の変更
   四 建物の建替え及びマンション敷地売却(以下「建替え等」という。) に係る合意形成に必要となる事項の調査
   五 その他土地、附属施設及び団地共用部分の管理に関し、団地建物所有 者全体の利益のために特別に必要となる管理
2 前項にかかわらず、区分所有法第70条第1項の一括建替え決議(以下 「一括建替え決議」という。)又は一括建替えに関する団地建物所有者全 員の合意の後であっても、マンションの建替え等の円滑化に関する法律 (平成14年法律第78号。以下「円滑化法」という。)第9条のマンシ ョン建替組合(以下「建替組合」という。)の設立の認可又は円滑化法第 45条のマンション建替事業の認可までの間において、建物の建替えに係 る計画又は設計等に必要がある場合には、その経費に充当するため、管理 組合は、団地修繕積立金から管理組合の消滅時に建替え不参加者に帰属す る団地修繕積立金相当額を除いた金額を限度として、団地修繕積立金を取 り崩すことができる。
3 第1項にかかわらず、円滑化法第108条第1項のマンション敷地売却 決議(以下「マンション敷地売却決議」という。)の後であっても、円滑 化法第120条のマンション敷地売却組合(以下「マンション敷地売却組 合」という。)の設立の認可までの間において、マンション敷地売却に係 る計画等に必要がある場合には、その経費に充当するため、管理組合は、 団地修繕積立金から管理組合の消滅時にマンション敷地売却不参加者に帰 属する団地修繕積立金相当額を除いた金額を限度として、団地修繕積立金 を取り崩すことができる。
4 管理組合は、第1項各号の経費に充てるため借入れをしたときは、団地 修繕積立金をもってその償還に充てることができる。 」
 とあり、
 設問の「集会所を大規模に増改築する場合」なら、標準管理規約(団地型)
28条1項3号の「三 土地、附属施設及び団地共用部分の変更」に該当します。

 そこで、 標準管理規約(団地型)50条6号の「六
第28条第1項又は第29条第1項に定める特別の管理の実施(第72条第三号及び第四号の場合を除く。)並びにそれに充てるための資金の借入れ及び団地修繕積立金又は各棟修繕積立金の取崩し 」
 に該当し、
 これは、「団地総会」の決議事項ですから、設問の「各棟の棟総会での決議が必要である」は、適切ではありません。



2  A棟の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査の実施及びその経費に充当する場合のA棟の修繕積立金の取崩しをするときは、団地総会での決議が必要である。

X 適切でない。 この場合は、棟総会の決議となる。 団地総会は不要。

 A棟の建替えでの合意形成なら、今度は、棟総会の規定、標準管理規約(団地型)72条、
「(議決事項)
 第72条
次の各号に掲げる事項については、棟総会の決議を経なければな らない
    一 区分所有法で団地関係に準用されていない規定に定める事項に係る規 約の制定、変更又は廃止
    二 区分所有法第57条第2項、第58条第1項、第59条第1項又は第 60条第1項の訴えの提起及びこれらの訴えを提起すべき者の選任
   三 建物の一部が滅失した場合の滅失した棟の共用部分の復旧
   
四 建替え等に係る合意形成に必要となる事項の調査の実施及びその経費 に充当する場合の各棟修繕積立金の取崩し
   五 区分所有法第62条第1項の場合の建替え及び円滑化法第108条第 1項の場合のマンション敷地売却
   六 区分所有法第69条第7項の建物の建替えを団地内の他の建物の建替 えと一括して建替え承認決議に付すこと 」
 とあり、
 標準管理規約(団地型)72条4号によれば、設問の「A棟の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査の実施及びその経費に充当する場合のA棟の修繕積立金の取崩しをするとき」なら「棟の総会の決議事項」ですから、「団地総会での決議が必要である」は、適切ではありません。



3 B棟の階段室部分を改造し、エレベーターを新たに設置する場合には、B棟の棟総会での決議が必要である。

X 適切でない。 棟の共用部分の変更だけど、これも、団地総会で決する。 棟の総会ではない。

 B棟の階段室部分を改造し、エレベーターを新たに設置する場合は、選択肢1で引用しました標準管理規約(団地型)8条での別表第2
「「別表第2 共用部分の範囲
1 棟の共用部分
  エントランスホール、廊下、
階段、エレベーターホール、エレベーター室、共用トイレ、屋上、 屋根、塔屋、ポンプ室、自家用電気室、機械室、受水槽室、高置水槽室、パイプスペース、メータ ーボックス(給湯器ボイラー等の設備を除く。)、内外壁、界壁、床スラブ、基礎部分、床、天井、 柱、バルコニー等専有部分に属さない「建物の部分」 エレベーター設備、電気設備、給水設備、排水設備、消防・防災設備、インターネット通信設備、 テレビ共同受信設備、オートロック設備、宅配ボックス、避雷設備、集合郵便受箱、各種の配線配 管(給水管については、本管から各住戸メーターを含む部分、雑排水管及び汚水管については、配 管継手及び立て管)等専有部分に属さない「建物の附属物」 」
 とあり、
 確かに、階段の改造は、棟の共用部分の変更になりますが、これも選択肢1で引用しました標準管理規約(団地型)50条6号
「(議決事項)
 第50条 次の各号に掲げる事項については、団地総会の決議を経なければ ならない。
   六 第28条第1項又は
第29条第1項に定める特別の管理の実施(第72条第三号及び第四号の場合を除く。)並びにそれに充てるための資金の借入れ及び団地修繕積立金又は各棟修繕積立金の取崩し」
 とあるのです。


 そこで、棟の修繕積立金の標準管理規約(団地型)29条
「(各棟修繕積立金)
 第29条 管理組合は、それぞれの棟の各区分所有者が納入する各棟修繕積立金を積み立てるものとし、積み立てた各棟修繕積立金は、それぞれの棟 の共用部分の、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合 に限って取り崩すことができる。
   一 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
   二 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
  
 三 棟の共用部分の変更
   四 建替え等に係る合意形成に必要となる事項の調査
   五 その他棟の共用部分の管理に関し、その棟の区分所有者全体の利益の ために特別に必要となる管理
2 前項にかかわらず、区分所有法第62条第1項に規定する建替え決議 (以下「建替え決議」という。)、一括建替え決議又は建替えに関する区 分所有者全員の合意の後であっても、円滑化法第9条の建替組合の設立の 認可又は円滑化法第45条のマンション建替事業の認可までの間におい て、建物の建替えに係る計画又は設計等に必要がある場合には、その経費 に充当するため、管理組合は、各棟修繕積立金から建物の取壊し時に建替 え不参加者に帰属する各棟修繕積立金相当額を除いた金額を限度として、 各棟修繕積立金を取り崩すことができる。
3 第1項にかかわらず、マンション敷地売却決議の後であっても、マンシ ョン敷地売却組合の設立の認可までの間において、マンション敷地売却に 係る計画等に必要がある場合には、その経費に充当するため、管理組合 は、各棟修繕積立金から管理組合の消滅時にマンション敷地売却不参加者 に帰属する各棟修繕積立金相当額を除いた金額を限度として、各棟修繕積 立金を取り崩すことができる。
4 管理組合は、第1項各号の経費に充てるため借入れをしたときは、各棟 修繕積立金をもってその償還に充てることができる。」
 とあり、
 設問の「B棟の階段室部分を改造し、エレベーターを新たに設置する場合」は、標準管理規約(団地型)29条1項3号に該当していますから、
 標準管理規約(団地型)50条6号により、これも「団地総会で決します」から、設問の「B棟の棟総会での決議が必要である」は、適切ではありません。



4 計画修繕工事によりC棟の外壁補修を行う場合には、団地総会での決議が必要である。

〇 適切である。 計画修繕工事によりC棟の外壁補修を行う場合でも、団地総会の決議でいい。

 計画修繕工事とは、長期修繕工事(大規模修繕工事)計画に基づいて、一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕です。

 そこで、設問の「計画修繕工事によりC棟の外壁補修を行う場合」は、選択肢3で引用しました標準管理規約(団地型)29条1項1号の
「(各棟修繕積立金)
 第29条 管理組合は、それぞれの棟の各区分所有者が納入する各棟修繕積立金を積み立てるものとし、積み立てた各棟修繕積立金は、それぞれの棟 の共用部分の、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合 に限って取り崩すことができる。
   
一 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
 に該当し、
 29条1項ならば、選択肢1で引用しました標準管理規約(団地型)50条
「(議決事項)
 第50条 次の各号に掲げる事項については、
団地総会の決議を経なければならない
   六 第28条第1項又は
第29条第1項に定める特別の管理の実施(第72条第三号及び第四号の場合を除く。)並びにそれに充てるための資金の借入れ及び団地修繕積立金又は各棟修繕積立金の取崩し 」
 により、
 設問の「計画修繕工事によりC棟の外壁補修を行う場合には、団地総会での決議が必要である」は、適切です。



答え: 4 

 標準管理規約(団地型)では、多くの事項は、団地総会で決することに留意の事。
 適当に標準管理規約(団地型)を読んでるだけでは、難しいか。

 解説は、詳細にしたので、時間がかかったが。

《タグ>標準管理規約(団地型) 一元管理 共用部分の範囲 集会所の増改築 棟の建替えの合意費用 棟の階段の変更 棟の外壁補修 

問33

〔問 33〕 甲管理組合と乙管理会社との間の管理委託契約に関する次の記述のうち、「マンション標準管理委託契約書及びマンション標準管理委託契約書コメント」(最終改正平成 30 年3月9日 国土動指第 97 号)によれば、適切でないものはいくつあるか。

ア 甲と乙は、その相手方に対し、少なくとも3月前に書面で解約の申入れを行うことにより、管理委託契約を終了させることができる。

〇 適切である。 解約は3ヵ月前に必ず書面で申し入れること。

 平成26年 管理業務主任者試験 「問8」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問8」 、

 出題法方法として、組合せ問題と同じように、納得のいかない個数問題だ。
 
 管理委託契約の解約は、マンション標準管理委託契約書(以下、この解説では、「標準管理委託契約書」といい、同契約書内では、
「甲」は管理組合を指し、「乙」は管理会社を指します。)19条
「(解約の申入れ)
 第 19 条
前条の規定にかかわらず、甲及び乙は、その相手方に対し、少なくとも三月前に書面で解約の申入れを行うことにより、本契約を終了させることができる。」
 とあり、
  標準管理委託契約書19条によれば、設問の「甲と乙は、その相手方に対し、”少なくとも3月前に書面で解約の申入れを行うこと”により、管理委託契約を終了させることができる」は、適切です。



イ 乙が反社会的勢力に自己の名義を利用させ管理委託契約を締結するものではないことを確約し、乙がその確約に反し契約をしたことが判明したときは、甲は何らの催告を要せずして、当該契約を解除することができる。

〇 適切である。 この場合、催告なしに契約の解除ができる。

 平成30年3月9日付の改正点(追加)

 反社会的勢力の規定は、標準管理委託契約書24条
「(反社会的勢力の排除)
 第 24 条
乙は、甲に対し、次の各号の事項を確約する
   一 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下これらを総称して 「反社会的勢力」という。)ではないこと。
   二 自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。)が反社会的勢力ではないこと。
   
三 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、本契約を締結するものではないこと。
   四 本契約の有効期間内に、自ら又は第三者を利用して、次の行為をしないこと。
     イ 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為
     ロ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を棄損する行為
乙について、本契約の有効期間内に、次の各号のいずれかに該当した場合には、甲は何らの催告を要せずして、本契約を解除することができる。
   一 前項第 1 号又は前項第 2 号の確約に反する申告をしたことが判明した場合
   
二 前項第 3 号の確約に反し契約をしたことが判明した場合
   三 前項第 4 号の確約に反する行為をした場合」
 とあり、
  標準管理委託契約書24条1項3号及び同条2項2号によれば、設問の「乙が反社会的勢力に自己の名義を利用させ管理委託契約を締結するものではないことを確約し、乙がその確約に反し契約をしたことが判明したときは、甲は何らの催告を要せずして、当該契約を解除することができる」は、適切です。



ウ 乙は、管理事務を行うため必要なときは、甲の組合員及びその所有する専有部分の占有者に対し、甲に代わって、組合員の共同の利益に反する行為の中止を求めることができる。

〇 適切である。 この場合、管理会社もできる。
  平成29年 管理業務主任者試験 「問7」 、
 
 設問は、標準管理委託契約書11条
「(有害行為の中止要求)
 第 11 条
乙は、管理事務を行うため必要なときは、甲の組合員及びその所有する専有部分の占有者(以下「組合員等」という。)に対し、甲に代わって、次の各号に掲げ る行為の中止を求めることができる
   一 法令、管理規約又は使用細則に違反する行為
   二 建物の保存に有害な行為
   三 所轄官庁の指示事項等に違反する行為又は所轄官庁の改善命令を受けるとみら れる違法若しくは著しく不当な行為
   四 管理事務の適正な遂行に著しく有害な行為
  
 五 組合員の共同の利益に反する行為
   六 前各号に掲げるもののほか、共同生活秩序を乱す行為
2 乙が、前項の規定により中止を求めても、なお甲の組合員等がその行為を中止しな いときは、乙はその責めを免れるものとし、その後の中止等の要求は甲が行うものと する。」
 とあり、
  標準管理委託契約書11条1項5号によれば、設問の「乙は、管理事務を行うため必要なときは、甲の組合員及びその所有する専有部分の占有者に対し、甲に代わって、組合員の共同の利益に反する行為の中止を求めることができる」は、適切です。



エ 乙が行う管理事務の内容は、事務管理業務、管理員業務、清掃業務及び建物・設備管理業務となっているが、それぞれの業務について、管理事務の全部又は一部を第三者に再委託することができる。

X 適切でない。 事務管理業務は、一部しか第三者へ再委託できない。
 平成30年 マンション管理士試験 「問33」 、 平成30年 管理業務主任者試験 「問9」 、

 よく出題される。

 まず、管理会社の請負う業務内容は、標準管理委託契約書3条、
「(管理事務の内容及び実施方法)
第3条 管理事務の内容は、次のとおりとし、別表第1から別表第4に定めるところに より実施する。
   
一 事務管理業務(別表第1に掲げる業務)
   二 管理員業務(別表第2に掲げる業務)
   三 清掃業務(別表第3に掲げる業務)
   四 建物・設備管理業務(別表第4に掲げる業務) 」
 です。


 そして、第三者への再委託は、標準管理委託契約書4条、
「(第三者への再委託)
 第4条 乙は、前条第1号の管理事務の一部又は同条第2号、第3号若しくは第4号の 管理事務の全部若しくは一部を、第三者に再委託することができる。
2 乙が前項の規定に基づき管理事務を第三者に再委託した場合においては、乙は、再 委託した管理事務の適正な処理について、甲に対して、責任を負う。」
 です。

 第4条の1項の解釈は、
 @事務管理業務なら一部の再委託はいいが全部の再委託はできない
 A管理員業務、B清掃業務、C建物・設備管理業なら、全部でも再委託ができる
 ということです。


  そこで、設問の前半「乙が行う管理事務の内容は、@事務管理業務、A管理員業務、B清掃業務及びC建物・設備管理業務となっている」は、適切です。
 後半の「それぞれの業務について、
管理事務の全部又は一部を第三者に再委託することができる」の内、@事務管理業務だけは、全部の第三者への再委託はできませんから、適切ではありません。

 よって、選択肢エは、全体として適切ではありません。

 どうして、このような規定になっているかというと、コメント
「4 第4条関係 @ 第1項は、適正化法第 74 条で
基幹事務の一括再委託を禁 止していることを踏まえ、第3条第1号の事務管理業務の一括再委託ができないよう定めたものである。 」
 ということですよ。


 マンション管理適正化法第74条
(再委託の制限)
 第七十四条 マンション管理業者は、管理組合から委託を受けた
管理事務のうち基幹事務については、これを一括して他人に委託してはならない。


1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ


答え: 1 (適切でないのは、 エ の1つ)

 過去問題をやっていれば、正解は早い。

《タグ》標準管理委託契約書 解約 3ヵ月前 反社会的勢力 管理組合に代わって 一部委託 全部委託 基幹事務

問34

〔問 34〕 甲マンション管理組合の平成 30 年度(平成 30 年4月1日から平成 31 年3月31 日まで)の会計に係る次の仕訳のうち、適切なものはどれか。ただし、会計処理は毎月次において発生主義の原則によるものとする。

1 平成31年3月に、組合員Aから、平成29年10月分から平成31年4月分まで の19ヵ月分の管理費総額38万円(月額2万円)が、甲の口座にまとめて入金 された。


X 適切でない。 発生主義では、4月分は、前受金とすること。
  平成30年 マンション管理士試験 「問34」 、平成29年 管理業務主任者試験 「問14」 、  平成28年 マンション管理士試験 「問34」 、 平成27年 マンション管理士試験 「問34」 、平成27年 管理業務主任者試験 「問14」 、 平成26年 マンション管理士試験 「問34」 、 平成25年 マンション管理士試験 「問35」 など。

*私の過去問題の解説を読んでいる人には、度々の重なる説明で恐縮ですが、マンションの管理組合では、明確な会計基準がありません。  
 でも、営利を目的とした企業活動ではないことは明らかです。そこで、非営利団体と似ている「公益法人の会計方法」を基にしています。  
 その会計の最大の特徴が、あまり耳慣れない「発生主義」の採用です。    

★マンションの会計処理で「
発生主義」ということの重要性は、
   まず、発生主義とは、全ての費用・収益は、その支出・収入に基づいて計上し、その発生した期間  
    *収入については、請求権が生じた月、  
    *支出については、支出が労役などの提供又は工事などである場合は、その労役などの提供又は工事等が完了した月、物品の購入なら、その物品が納入された月に正しく割り当てるように処理すること
   です。

 この発生主義により、管理費や修繕積立金は該当月に徴収することになっているなら、
未収入金(滞納)があっても、全額計上されている
  この辺りが、企業の会計処理を知っている人には、なかなか理解できない個所です。

   また、「資金の範囲は、現金預金、未収金、未払金、前受金及び前払金とする」も、重要な前提です。資金の範囲同士の取引は、「収支計算書」には、反映されません。  
  収支決算書に反映されるのは、収入の発生と費用の発生です。  
 会計処理は、以下の原則があります。


仕訳での記帳の仕方    
 勘定科目など 借方   貸方
 資産勘定     現金預金 増加  減少 
未収金 
前払金
損害保険の積立部分
 負債勘定  未払金  減少 増加
前受金など
 費用の発生   管理業務費 支払有     
修繕費
保険料 など
 収入の発生   管理費収入   収入有  
修繕積立金収入
駐車場使用料など

 では、設問を検討すると、「平成31年3月に、組合員Aから、平成29年10月分から平成31年4月分まで の19ヵ月分の管理費総額38万円(月額2万円)が、甲の口座にまとめて入金 された。」
 発生主義により、3月が中心になります。
 そこで、
  *平成29年10月から平成31年4月分までの 380,000円を分ける必要があります。
   @平成31年2月までの 17ヶ月分 340,000円 は過去に管理費の未収金として仕訳されたもの
     未収金の減少で、貸方に記帳
   A3月分 20,000円は、当月の 管理費収入 になる
     収入の発生で、 貸方記帳
   B4月分 20,000円は、まだ発生していないので、前受金 として処理する
     負債勘定の増加で、貸方記帳

    なお、入金の 380,000円 は、資産勘定の増加で、借方記帳です。
 これにより、適切な仕訳は、
借方  貸方 
 現金預金 380,000
(資産の増加)
  
 未収金   340,000
(減少)
 管理費収入  20,000
(収入有)
 前受金    20,000
(負債の増加)
 となり、設問の

 は、適切ではありません。 前受金の処理がありません。



2 平成31年3月末の帳簿上のB銀行預金残高よりB銀行発行の預金残高証明書の金額が5万円少なかったため調査したところ、同年3月に支払った損害保険料5万円の処理が計上漏れとなっていたためであることが判明した。このため、必要な仕訳を行った。



X 適切でない。 この仕訳では、銀行残高に影響しない。


 支払った銀行預金が 50,000円 記帳されていなかったなら、
 @借方に、費用の発生として、保険料 50,000円
 A貸方に、銀行預金の減少として、現金預金 50,000円となります。
 借方 貸方 
 保険料 50,000
(費用の発生)
現金預金 50,000
(預金の減少)

 よって、設問は、適切ではありません。


3 平成29年度決算の貸借対照表に修繕工事の着手金60万円が前払金として計上されていたが、その修繕工事が平成30年6月に完了し、総額200万円の工事費の残額140万円を請負業者へ同月に支払った。


〇 適切である。 6月度処理として、前年に、前払金 として支払った着手金と、完成で支払った残金の処理として適切。

 細かな説明が必要なら、
 @平成29年度決算の貸借対照表に修繕工事の着手金60万円が前払金として計上は、 
 借方 貸方 
 前払金 600,000 現金預金 600,000 

 Aその修繕工事が平成30年6月に完了し、総額200万円の工事費の残額140万円を請負業者へ同月に支払った、は、
借方   貸方 
 修繕費 1,400,000 現金預金 1,400,000 

 B工事完成により、以前処理した@の前払金を取り崩す
 借方  貸方 
 修繕費 600,000 前払金 600,000 

 これらを纏めると、
 借方   貸方 
 修繕費 2,000、000  現金預金  1,400,000 
前払金       600,000
 となります。


4 平成31年3月に、組合員Cから、3月分管理費2万円と3月分駐車場使用料1万円の合計3万円が甲の口座に入金されたが、誤って全額が管理費として計上されていた。このため、必要な仕訳を行った。


X 適切でない。 これでは、管理費収入が、さらに、10,000円 増える。

 誤った仕訳は、以下のようです。
 @全額 30,000円を 管理費収入 とした。
借方  貸方 
 現金預金 30,000
(預金の増加)
 管理費収入 30,000
(収入の発生)

 本当は、30,000円は、 管理費収入 20,000円 と、 駐車場使用料収入 10,000円 だった。
 @貸方に記帳した 管理費収入 を 10,000円 減少させるために、 借方に 管理費収入 10,000円 を持ってきます。
 Aその 10,000円は、駐車場使用料収入 だった、により、 貸方に、収入の発生として、 10,000円 を記入します。
 それは、
 借方  貸方 
 管理費収入 10,000
(減少させる)
 駐車場使用料収入 10,000
(適正に計上する)
 ですから、設問は、適切ではありません。


答え:3

 この程度の仕訳は、できて欲しいものです。

《タグ》会計 仕訳 発生主義 未収金 前受金  修正仕訳 前払金 

問35

〔問 35〕 規約が標準管理規約の定めと同一である甲マンション管理組合の平成 30 年度(平成 成 30 年4月1日から平成 31 年3月 31 日まで)の収支予算案に関連し、平30 年4月に開催された理事会において、会計担当理事が行った次の説明のうち、適切なものはいくつあるか。ただし、会計処理は発生主義の原則によるものとする。

ア 平成 29 年度の管理費に未収金があったため、その未収金相当額については、平成 30 年度収支予算案の管理費に上乗せして計上し、不足が生じないようにしてあります。

X 適切でない。 発生主義では、管理費の未収金は、すでに、収入として処理されている。 翌年に上乗せしない。


 あれ、例年、「問34」と「問35」の2問は、会計として仕訳や比較貸借対照表などが出ていたが、平成27年あたりから、出題方法が、変わったようだ。

 個数問題か。

 *マンションの会計で「
発生主義」については、上の 「問34」 を参照。

 マンションの会計では、「発生主義」により、管理費や修繕積立金は該当月に徴収することになっているなら、未収入金(滞納)があっても、全額収入としてその該当月に計上されていますから、未収金相当額を、翌年の収支予算案に上乗せは、致しませんから、設問の「平成 29 年度の管理費に未収金があったため、その未収金相当額については、平成 30 年度収支予算案の管理費に上乗せして計上し、不足が生じないようにしてあります」は、適切ではありません。

 なお、収支決算書に反映されるのは、収入の発生と費用の発生です。



イ 今年度は、管理規約改正原案の作成に係る業務で専門的知識を有する者の活用を予定していますので、それに必要な費用については平成 30 年度収支予算案の管理費会計に計上してあります。

〇 適切である。 専門家の活用にかかる費用は、管理費会計から出す。

 設問は、まったく、仕訳など関係なく、管理費会計からだすのか、修繕積立金会計からだすのかの検討です。

 そこで、標準管理規約27条
「(管理費)
 第27条
管理費は、次の各号に掲げる通常の管理に要する経費に充当する
   一 管理員人件費
   二 公租公課
   三 共用設備の保守維持費及び運転費
   四 備品費、通信費その他の事務費
   五 共用部分等に係る火災保険料、地震保険料その他の損害保険料
   六 経常的な補修費
   七 清掃費、消毒費及びごみ処理費
   八 委託業務費
  
 九 専門的知識を有する者の活用に要する費用
   十 管理組合の運営に要する費用
   十一 その他第32条に定める業務に要する費用(次条に規定する経費を 除く。)」
 とあり、
 設問の「管理規約改正原案の作成に係る業務で”
専門的知識を有する者の活用”」は、標準管理規約27条9号に該当しますから、「管理費会計に計上してあります」は適切です。


ウ 平成 29 年度の総会で承認され平成 29 年 11 月に工事が開始された大規模修繕工事が、予定どおり平成 30 年4月 20 日に完了しました。前年度に前払した工事費の残額の支払を5月 10 日に予定していますが、5月 27 日に開催予定の通常総会で収支予算案の承認を得る前に支払う必要があるため、規約に基づき、理事会の承認を得てその支出を行うこととします。

〇 適切である。 前の総会の承認を得た長期修繕工事の費用であれば、次の総会までに支払う必要があれば、理事会の承認で支払うことが、できると規約にある
  平成27年 マンション管理士試験 「問31」 、 平成27年 管理業務主任者試験 「問13」 、

 通常、理事会は、総会の承認なしに、管理費や修繕積立金を使うことはできません。
 それが、標準管理規約58条、
「(収支予算の作成及び変更)
 第58条
理事長は、毎会計年度の収支予算案を通常総会に提出し、その承認を得なければならない。
2 収支予算を変更しようとするときは、理事長は、その案を臨時総会に提出し、その承認を得なければならない。
3 理事長は、第56条に定める会計年度の開始後、第1項に定める承認を得るまでの間に、以下の各号に掲げる経費の支出が必要となった場合には、 理事会の承認を得てその支出を行うことができる。
   一 第27条に定める通常の管理に要する経費のうち、経常的であり、かつ、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められる もの
  
 二 総会の承認を得て実施している長期の施工期間を要する工事に係る経費であって、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められるもの
4 前項の規定に基づき行った支出は、第1項の規定により収支予算案の承認を得たときは、当該収支予算案による支出とみなす。
5 理事会が第54条第1項第十号の決議をした場合には、理事長は、同条第2項の決議に基づき、その支出を行うことができる。
6 理事長は、第21条第6項の規定に基づき、敷地及び共用部分等の保存行為を行う場合には、そのために必要な支出を行うことができる。」
 とあり、
 標準管理規約58条3項2号によれば、設問の場合、適切です。


 これは、第58条関係のコメント@
「 @ 通常総会は、第42条第3項で新会計年度開始以後2か月以内に招集することとしているため、新会計年度開始後、予算案の承認を得るまでに一定の期間を要することが通常である。第3項及び第4項の規定は、このような期間において支出することがやむを得ない経費についての取扱いを明確化することにより、迅速かつ機動的な業務の執行を確保するものである。
 なお、第4項の規定については、公益法人における実務運用を参考として、手続の簡素化・合理化を図ったものである。
B 第3項第二号に定める経費とは、総会の承認を得て実施している工事であって、その工事の性質上、施工期間が長期となり、二つの会計年度を跨ってしまうことがやむを得ないものであり、総会の承認を得た会計年度と異なる会計年度の予算として支出する必要があるものであって、かつ、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められるものであ ることが必要である。」
 だそうです。



エ 平成 29 年度収支決算の結果、管理費に余剰が生じましたが、その余剰は平成 30 年度の管理費会計に繰入れせずに、修繕積立金会計に繰入れすることとします。

X 適切でない。 管理費会計での余剰金は、翌年も管理費に充当する。

  平成29年 管理業務主任者試験 「問12」 、 

 管理費の余剰金は、標準管理規約61条、
「(管理費等の過不足)
 第61条
収支決算の結果、管理費に余剰を生じた場合には、その余剰は翌年度における管理費に充当する
2 管理費等に不足を生じた場合には、管理組合は組合員に対して第25条 第2項に定める管理費等の負担割合により、その都度必要な金額の負担を 求めることができる。」
 とあり、
  標準管理規約61条1項によれば、管理費に余剰がでれば、翌年の管理費に充当しますから、設問の「平成 29 年度収支決算の結果、管理費に余剰が生じましたが、その余剰は平成 30 年度の管理費会計に繰入れせずに”
修繕積立金会計に繰入れすることとします”」は、適切ではありません。
 修繕積立金会計に繰入れするなら、総会の決議が必要です。



1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ


答え: 2 (適切なのは、 イ と ウ の2つ。)

 令和元年のマンション管理士試験では、会計の出題方法が、完全に変わった。
 これでは、標準管理規約からの出題だ。

 選択肢ウは、迷うか。

《タグ》個数問題 標準管理規約 発生主義 未収金 管理費からの支出 大規模修繕工事費 

問36

〔問 36〕 長期修繕計画に関する次の記述のうち、「長期修繕計画作成ガイドライン及び同コメント」(平成 20 年6月国土交通省公表)によれば、適切でないものはいくつあるか。

ア 推定修繕工事は、建物及び設備の性能・機能を修繕工事実施時点の一般的住宅水準に向上させる工事を基本とする。

X 適切でない。 推定修繕工事では、”新築時”と同等水準にする。 ”修繕工事実施時点”の一般的住宅水準に向上させる工事ではない。
  令和01年 管理業務主任者試験 「問27」 、 平成28年 マンション管理士試験 「問39」 平成26年 マンション管理士試験 「問38」 、平成26年 管理業務主任者試験 「問27」 、 平成25年マンション管理士試験 「問37」、 平成23年マンション管理士試験 「問38」、 平成21年 マンション管理士試験 「問36」 。

 また、個数問題とは、出題官のセンスを疑う。


 長期修繕計画作成ガイドライン
  https://www.mlit.go.jp/common/001172736.pdf

 設問は、長期修繕計画作成ガイドライン
「第2章 長期修繕計画の作成の基本的な考え方
 第1節 長期修繕計画の作成及び修繕積立金の額の設定の目的等
 2 基本的な考え方
 二 長期修繕計画の作成の前提条件
   長期修繕計画の作成に当たっては、次に掲げる事項を前提条件とします。
   
@推定修繕工事は、建物及び設備の性能・機能を新築時と同等水準に維持、回復さ せる修繕工事を基本とする。
 とあり、
 これによれば、「推定修繕工事は、建物及び設備の性能・機能を”
新築時と同等水準”に維持、回復さ せる修繕工事を基本とする」であり、設問の「推定修繕工事は、建物及び設備の性能・機能を”修繕工事実施時点の一般的住宅水準に向上させる工事”を基本とする」は、適切ではありません。

 なお、推定修繕工事とは、「長期修繕計画において、計画期間内に見込まれる修繕工事(補修工事(
経常的に行う補修工事を除く。)を含む。以下同じ。)及び改修工事をいい ます。 」


イ 修繕積立金の積立ては、長期修繕計画の作成時点において、計画期間に積み立てる修繕積立金の額を均等にする均等積立方式を基本とする。

〇 適切である。 長期修繕計画作成ガイドラインでは、修繕積立金の積立ては、均等積立方式が基本。
  平成26年 管理業務主任者試験 「問27」 、

 設問は、長期修繕計画作成ガイドライン
「3章 長期修繕計画の作成の方法
 第2節 修繕積立金の額の設定方法
  1 修繕積立金の積立方法
   
修繕積立金の積立ては、長期修繕計画の作成時点において、計画期間に積み立てる 修繕積立金の額を均等にする積立方式(以下「均等積立方式」という。)を基本とします。
 なお、均等積立方式による場合でも5年程度ごとの計画の見直しにより、計画期間 の推定修繕工事費の累計額の増加に伴って必要とする修繕積立金の額が増加しますので留意が必要です。
 また、計画期間に積み立てる修繕積立金の額を段階的に増額する 積立方式とする場合は、計画の見直しにより、計画の作成当初において推定した増加 の額からさらに増加しますので特に留意が必要です。
 分譲事業者は購入予定者に対して、また、専門家は業務を依頼された管理組合に対 して、修繕積立金の積立方法について十分に説明することが必要です。」
 とあり、
 設問の「修繕積立金の積立ては、長期修繕計画の作成時点において、計画期間に積み立てる修繕積立金の額を均等にする均等積立方式を基本とする」は、適切です。



ウ 計画期間における推定修繕工事には、法定点検等の点検及び経常的な補修工事を適切に盛り込む。

X 適切でない。 推定修繕工事では、経常的な補修工事などは除く。

  しかし、出題の文章が拙い。
  
 設問は、長期修繕計画作成ガイドライン
「4 用語の定義
  このガイドラインにおける用語の定義は、次の各号に掲げるところによります。
  
十三 推定修繕工事  長期修繕計画において、計画期間内に見込まれる修繕工事(補修工事(経常的に行う補修工事を除く。)を含む。以下同じ。)及び改修工事をいいます。」
 とあり、

 推定修繕工事からは、補修工事は含まれますが、そのうち”経常的に行う補修工事を除く”とありますから、設問の「計画期間における推定修繕工事には、”
法定点検等の点検及び経常的な補修工事を適切に盛り込む”」は、適切ではありません。

 しかし、
「第2章 長期修繕計画の作成の基本的な考え方
  2 基本的な考え方
   二 長期修繕計画の作成の前提条件
     長期修繕計画の作成に当たっては、次に掲げる事項を前提条件とします。
     
B計画期間において、法定点検等の点検及び経常的な補修工事を適切に実施する。 」
 とあり、
 この関係だけを読むと、選択肢ウ の表現「計画期間における推定修繕工事には、法定点検等の点検及び経常的な補修工事を適切に盛り込む」も適切と判断される誤解を招く。 



エ 推定修繕工事として設定した内容や時期等はおおよその目安であり、計画修繕工事を実施する際は、事前に調査・診断を行い、その結果に基づいて内容や時期等を判断する。

〇 適切である。 計画は目安は、当然。 実際にやる前にまた調査等を行う。
  平成29年 マンション管理士試験 「問36」 、

 設問は、常識でも分かるが、一応、長期修繕計画作成ガイドライン
「2 基本的な考え方
 二 長期修繕計画の作成の前提条件
  長期修繕計画の作成に当たっては、次に掲げる事項を前提条件とします。
  
C計画修繕工事の実施の要否、内容等は、事前に調査・診断を行い、その結果に基づいて判断する。
 三 長期修繕計画の精度
 長期修繕計画は、作成時点において、計画期間の推定修繕工事の内容、時期、概算の費用等に関して計画を定めるものです。
 推定修繕工事の内容の設定、概算の費用の算出等は、新築マンションの場合、設計図書、工事請負契約書による請負代金内訳書及び数量計算書等を参考にして、ま た、既存マンションの場合、保管されている設計図書のほか、修繕等の履歴、劣化 状況等の調査・診断の結果に基づいて行います。
 したがって、長期修繕計画は、次に掲げる事項のとおり、将来実施する計画修繕工事の内容、時期、費用等を確定するものではありません。また、一定期間ごとに 見直していくことを前提としています。 」
 とあり、
 設問の「推定修繕工事として設定した内容や時期等はおおよその目安であり、計画修繕工事を実施する際は、事前に調査・診断を行い、その結果に基づいて内容や時期等を判断する」は、適切です。



1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ


答え: 2 (適切でないのは、 ア と ウ の2つ。)

 選択肢ウ の出題文が拙くて、資格校の解答速報では、選択肢ウ は、適切である との判断もあった。

 本当に、4問択一から外れた、個数問題や、組合せ問題を出す出題委員が、未だにいるとは、このマンション管理士試験の出題委員は、よくありません。

《タグ》長期修繕計画作成ガイドライン 推定修繕工事 均等積立方式 経常的な補修工事 目安

問37

〔問 37〕 鉄筋コンクリート造のマンションの外壁に生じた劣化や不具合の現象とその原因に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

1 ポップアウトは、アルカリ骨材反応が原因の一つと考えられる。

〇 適切である。 ポップアウトは、アルカリ骨材反応が原因の一つと考えられる。
  平成22年 マンション管理士 「問38」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問26」 、 平成19年 マンション管理士 試験 「問37」 、 平成16年 マンション管理士 試験 「問37」 、平成14年 管理業務主任者 試験 「問27」 など過去問多い。

 ポップアウトとは、コンクリート内部に混入した膨張性の骨材が原因で、コンクリートの表面が部分的に円錐のくぼみ状に破壊された状態で、アルカリ骨材反応も、原因の1つと考えられますから、適切です。


 


2 さび汚れは、コンクリートの中性化が原因の一つと考えられる。

〇 適切である。 さび汚れは、コンクリートの中性化が原因の一つと考えられる。

 コンクリートのさび汚れ(錆汁)は、コンクリート中の鋼材が腐食して茶色や褐色の腐食生成物がコンクリート表面に滲み出たものです。
 その原因としては、コンクリートの中性化、塩害そして乾燥等によるひびわれが要因として考えられますから、設問は適切です。





3 白華(エフロレッセンス)は、紫外線が原因の一つと考えられる。

X 適切でない。 白華(エフロレッセン)現象は、紫外線では起きない。
  平成30年 管理業務主任者試験 「問26」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問36」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問26」 、 平成19年 マンション管理士試験 「問37」 、平成18年 管理業務主任者 試験 「問27」、 平成15年 マンション管理士 試験 「問39」

 鉄筋コンクリート造では、硬化したコンクリートの表面に白い粉状のものが付着していることがあります。この現象は、白華(エフロレッセンス)とよばれるものです。
 エフロレッセンス(Efflorescence=開花)とは、白華現象ともよばれ、外壁等表面の劣化で発生します。
 下地の可溶成分(石灰等)が表面に溶け出し、空気中の二酸化炭素(炭酸ガス)等との反応により溶けて白色の物質として、表面に沈着する現象です。
 コンクリートならセメント中の石灰等が水に溶けて表面に染み出すことも原因で、またタイルなどでも見られる現象です。
 設問のように、紫外線が原因ではありませんから、適切ではありません。


 

 なお、エフロレッセンスは、コンクリートの劣化症状のひとつです。
 また、エフロレッセンスは、シーリング材でのチョーキング現象と似ているので注意のこと。



4 ひび割れは、コールドジョイントが原因の一つと考えられる。

〇 適切である。 コンクリートのひび割れは、コールドジョイントでも起きる。

  平成19年 マンション管理士試験 「問37」 

 コンクリートのひび割れの原因としては、各種ありますが、
  @材料によるもの
   ・セメントの異常凝固、水和熱、異常膨張、
   ・骨材の低品質
  A施工によるもの
   ・コンクリートの練り方、締固め、養生、打継の不備
   ・鉄筋、型枠、
コールドジョイント
  B使用環境によるもの
   ・温度、熱、化学作用
  C構造外力によるもの
   ・荷重
   ・鉄筋量の不足
   ・構造物の不同沈下
   ・地震
  などが上げられます。

  そこで、設問の「コールドジョイント Cold Joint」とは、コンクリートを打ち重ねた場合に、適正な時間が過ぎてしまい、前の層と後から打ち足したコンクリートが一体とならないことです。
 これは、設計段階で計画的に設けられた打ち継ぎ目とは異なるものです。



 
 コールドジョイントが発生していますと、ここから、ひび割れができ、また水が入り、劣化の原因ともなりますから、設問の「ひび割れは、コールドジョイントが原因の一つと考えられる」は、適切です。


答え:3

 ここは、過去問題をやっていれば、易しい。
 ポップアウト、さび汚れ、白華(エフロレッセンス)現象、ひび割れ、コールドジョイント等の専門用語は、理解しておくこと。

《タグ》コンクリート ポップアウト さび汚れ 白華(エフロレッセンス) ひび割れ コールドジョイント

問38

〔問 38〕 マンションの建物の調査・診断に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。

1 仕上げ塗材の付着の強さを調べるプルオフ法は、金属面への塗装及びコンクリート面への塗装のいずれにも用いることができる。

〇 適切である。 プルオフ法は、多くの塗装面で使用できる。
 平成24年 マンション管理士試験 「問37」 、

 プルオフ法からは、初めての出題?

 仕上げ材(塗材や吹付け)の劣化状態を調べるには、塗膜をはがすときに必要な力や残った塗膜の状況で評価します。
 その方法としては、@クロスカット(Cross−cut test)法 と Aプルオフ(Pull−off test)法があります。
 
@クロスカット法
  クロスカット法は、評価対象である塗膜に対して、十字の格子状の切込み(cross−cut 碁盤目模様)を入れた後、テープを付着して引きはがすことにより、当該箇所における塗膜のはがれの有無(強さ)、広さを定性的に評価する方法です。試験方法が比較的簡単であるため、現地適用も可能です。ただし、塗膜の厚みによって、格子状の切込みの幅が異なるため、事前に評価対象の塗膜の厚みを調査しておくことが必要です。

 
Aプルオフ法
  プルオフ法は、引張試験機を利用して塗膜の付着性を評価する方法です。評価対象の塗膜に対して、試験円筒とよばれる治具を接着剤により貼付した後、試験円筒周辺の塗膜に切込みを入れます。そして、引張試験機を用いて、試験円筒が剥離した際の張力とを破壊状況の観察で付着性を評価します。
 塗膜の付着力を定量的に評価できる可能性はありますが、正確に評価するためには、接着剤の選定、破壊界面の解析、複数回測定の実施等の多くの留意事項があります。


 プルオフ法は、広範囲の素地に対して適用可能です。素地が変形性、例えば薄い金属板、プラスチック及び木であるか、又は堅固な、例えば厚いコンクリート及び金属板でも調べられますから、設問は、適切です。






2 外壁タイルの調査に用いる赤外線調査は、壁面に赤外線を照射して、その反射量を測定する。

X 適切でない。 赤外線調査は、外壁の浮きを健常部との熱伝導の違いでみる。 赤外線の反射量では、ない。

 平成24年 マンション管理士試験 「問37」 、 

 タイルの浮きは、温度の変化、乾燥・湿潤、建物の動き、地震などで、下地のモルタルやコンクリートとの接着力が不足し、下地と表面のタイルが分離して発生します。タイルが剥落すると危険なため、調査は重要です。
 調査の方法としては、
  @外観目視調査...肉眼や望遠鏡など、眼で調査する。判定には経験が必要。
  A打診法...テストハンマーで表面を叩いて、音の差で浮きを判断する。これも、判定には経験が必要。
  B
赤外線装置法...赤外線カメラにより、タイルやモルタルの浮いている部分と、健全な部分とを熱の伝導の差(温度差)で測定する。温度差の出やすい天候時に行うといい。
  C反発法...コンクリートの強度を調べたのと同じように、シュミットハンマー等で、タイル面に一定の衝撃を与えて、その衝撃で生じた跳ね返りの大きさや音圧の違いで、浮きを調査する。



 赤外線調査は、”熱伝導”を利用していますから、設問の「その反射量を測定する」は、適切ではありません。


3 アスファルトルーフィングの使用状態での劣化度を測定するためには、現地で針入度試験を行う。

X 適切でない。 針入度試験は、現場ではしない。 サンプルを採取して行う。

  平成26年 マンション管理士試験 「問37」 、

 まず、アスファルトルーフィングとは、板紙にアスファルトをしみこませた建築用の防水材料です。主にビルの屋上や家屋の屋根、壁に敷いて、雨水が屋内に進入するのを防ぐために用います。
 アスファルトルーフィングが劣化しますと、雨漏りの原因となります。


 
 次に、「針入度試験」とは、アスファルトの硬さを調べる試験で、舗装用石油アスファルト(ストレートアスファルト)の等級分けに使用されています。
所定の容器に入ったアスファルトが25℃のときの、標準針の貫入量を1/10mmの単位で表し、針入度が大きいほど柔らかいアスファルトとなります。




 そこで、針入度試験は試験場で行うため、設問のような「現地」では、行わないので、適切ではありません。

 防水材の試験は、サンプルを採取して、試験場で行います。



4 コンクリートの中性化の程度を調べるには、手持ち型の pH 測定器を用いることができる。

X 適切ではない。 手持ち型の pH 測定器は、水溶液でのpH を調べる。 コンクリートの中性化の程度は調べられない。


 手持ちのpH 測定器まで、出題されるとは。
 
 コンクリートの中性化は、コンクリートの内部やハツリ部分(剥がした部分)にフェノールフタレインを吹き付けて判定します。
 コンクリートはアルカリ性のため、フェノールフタレインが赤色に変色しますが、中性化した部分はフェノールフタレインが透明なままで変色しません。この変色しない部分の表面からの深さをノギスで測定し中性化深さを測定します。

 

 そこで、設問の「手持ち型の pH 測定器」ですが、これは、水溶液が酸性かアルカリ性かを測ります。排水・河川などの水質検査に使用され、硬いコンクリートの中性化の程度は、調べられないため、設問は、適切ではありません。

 


答え: 1

 選択肢1のプルオフ法は、初めてで、難しい。
 また、選択肢4の手持ち型の pH 測定器が、何となく適切でないと分かれば、正解は近いか。

 いろいろと、図も入れたので、3時間もかかった。

《タグ》コンクリート 仕上げ塗材の付着の強さを調べるプルオフ法 赤外線調査 針入度試験 コンクリートの中性化 手持ち型の pH 測定器

問39

〔問 39〕 設計監理方式で実施したマンションの大規模修繕工事に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

1 施工者が、工事工程計画、仮設計画、品質管理計画などの計画を作成した。

〇 適切である。 設計監理方式では、施工者(請負業者)が工事工程計画、仮設計画、品質管理計画などの計画を作成する。

 平成28年 マンション管理士試験 「問38」 、 平成17年 管理業務主任者試験 「問27」 、 平成15年 マンション管理士試験 「問36」 

 どこまで、設問の「設計監理方式」や「責任施行方式」が、世間一般に認知された言葉かどうかは、疑問があるが。

 大規模修繕を進めるには管理組合だけの知識と人員では到底無理です。そこで、外部の専門家の存在がどうしても必要となります。
 その外部の専門家に依頼する方式には、次の
 @設計監理方式 と
 A責任施工方式
 があります。




 各方式でのメリット、デメリットに注意してください。

 そこで、設計監理方式では、工事を請け負った施工者が、工事の実際の、工事工程計画、仮設計画や、品質管理計画などの計画を作成しますから、設問は適切です。


2 管理組合が主催者となって工事説明会を開催し、施工者と工事監理者が説明を行った。

〇 適切である。 大規模修繕工事の主体は、あくまでも管理組合。


 大規模修繕工事での主体は、管理組合であることを忘れないでください。 しかし、役員が説明できない、専門的な工事の内容は、説明会において、施工者と工事監理者から説明させますから、設問は適切です。


3 工事監理者は、引渡し後に工事監理に関する瑕疵(かし)が判明した場合に対応するため、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(平成 19 年法律第66号)に基づき、保険法人と住宅瑕疵担保責任保険契約を締結した。

X 適切でない。 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律の対象は、新築住宅。 また、工事監理者は、実際の工事をしない。 瑕疵担保は、請負業者が行う。

 まず、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律が対象としているのは、
 新築住宅については、平成12年4月に施行された「住宅の品質確保の推進等に関する法律(住宅品質確保法)」に基づき、売り主及び請負人に対し構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について10年間の瑕疵担保責任を負うことが義務付けられています。
  しかし、平成17年11月に「構造計算書偽装問題」が発覚し、こうした法制度だけでは消費者保護としては不十分であることが明らかになりました。
 こうした問題点をふまえ「住宅品質確保法」で定められた瑕疵担保責任の履行を確保するため、「特定住宅瑕疵担保責任の履行確保に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)」が制定されました。
 これにより、平成21年10月1日以降に引き渡す
新築住宅について、「保険の加入」または「保証金の供託」の資力確保が義務付けられました。
 つまり、新築住宅(新たに建設された「住宅」であって、建設工事の完了から1年以内で、かつ、人が住んだことのないものをさします(住宅品質確保法第2条第2項)に係る瑕疵担保責任の履行を確保することを目的とした法律ですから、設問のような「新築住宅」でない、「大規模修繕工事」には、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律の適用がありませんから、設問は、適切ではありません。

 また、工事監理者は、工事の請負人ではないため、「瑕疵担保」の責任は、請負業者が民法の規定(2020年4月1日施行で改正の第637条などの)で負うことになります。



4 工事完了時に 竣工(しゅんこう)検査として、施工者検査、工事監理者検査、管理組合検査の順に行った。

〇 適切である。 工事が完了したら、検査を行う。 その順番は、施工者、工事監理者そして最後に管理組合が行う。

 工事が終わりになると、検査をおこない、その順番は、施工者、工事監理者そして最後に管理組合が行うので、設問は適切です。


答え: 3

  選択肢3の特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律の内容を知らないと、難しいか?
  消去法で、選べた?

《タグ》大規模修繕工事 設計監理方式 責任施工方式 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律 新築住宅 竣工検査  

問40

〔問 40〕 マンションの住棟形式に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

1 センターコア型は、住棟中央部に吹き抜けがあり、その吹き抜けに面した共用廊下より各住戸にアプローチできる。

X 適切でない。 センターコア型は、集合住宅やビルなどの設備部分を一ヵ所に集中させる方式のこと。 この説明は、「吹き抜け型」。

  平成27年 マンション管理士試験 「問42」 、

 英語ができれば、答えは早い。

 センターコア(Center Core 中央が核になっている)型とは、集合住宅やビルなどの設備部分を一ヵ所に集中させる方式のことです。
 この、センターコア型では、給排水、冷暖房空調、エレベーターなどの設備部分を集中させることにより、メンテナンス、室内デザイン、躯体構造など機能面、構造面を合理化できるメリットがあります。

 そこで、設問の「センターコア型は、住棟中央部に吹き抜けがあり、その
吹き抜けに面した共用廊下より各住戸にアプローチできる」は、適切ではありません。
 この説明は、吹き抜け型(ボイド型)の説明です。







2 中廊下型は、住棟を南北軸に配置することが多い。

〇 適切である。 中廊下型は、住棟を南北軸に配置することが多い。

 図は、選択肢1を参照。

 風雨が降りこまない屋内の共用廊下を中心に、その両側に住戸が配置される形式の中廊下型では、住棟を東西軸にしてしまうと、陽当たりの良い南側と、いつも、陽当たりの悪い北側の配置になってしまうため、住環境に大きな差が出来、分譲価格にも極端に差が出ます。そのため、住棟配置は南北を軸として配置(住戸は東西に配置)しますから、設問の「廊下型は、住棟を南北軸に配置することが多い」は、適切です。


 なお、中廊下型は、居住性が悪いので、採用例は少ない。


3 タウンハウス型は、戸建て住宅の独立性と集合化することによる経済性を併せ持つ。

〇 適切である。 ウンハウス型は、戸建て住宅の独立性と集合化することによる経済性を併せ持つ。


 タウンハウス型(棟割長屋とも)とは、建物は隣と繋がっていますが、多くは2階建て程度で、上下に他の住戸がなく、専用の庭があったり、出入り口(玄関)は、各戸に専用のものが付いています。
 そのため、設問の様に「戸建て住宅の独立性と集合化することによる経済性を併せ持つ」は、適切です。

 



4 階段室型は、住棟に設けられた階段室から、直接各住戸にアプローチできるものをいい、その階段室にエレベーターが設置されるものもある。

〇 適切である。 階段室型は、隣り合う2戸で、階段を使う。 以前は、エレベーターが無かったが、最近は、エレベーター付もあるようだ。


 図は、選択肢1を参照。

 階段室型は、多くの場合、隣り合う2戸で1つの共用階段を持ち、直接各住戸にアプローチできるものです。築年数の古い旧住宅公団の時代に多く、4〜5階程度の低層マンションで採用されました。
エレベーターがないため階段を上り下りして自宅へアプローチしていましたが、最近は、エレベーターが設置されるマンションもありますから、設問の「階段室型は、住棟に設けられた階段室から、直接各住戸にアプローチできるものをいい、その階段室にエレベーターが設置されるものもある」は、適切です。



答え:1

 それほど、難しくはない。

《タグ》住棟形式 センターコア型 中廊下型 タウンハウス型 階段室型

問41

〔問 41〕 マンションの構造に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

1 鉄骨鉄筋コンクリート構造は、鉄骨の骨組みの周囲に鉄筋を配しコンクリートを打ち込んだものである。

〇 適切である。 鉄骨鉄筋コンクリート構造は、鉄骨の骨組みの周囲に鉄筋を配しコンクリートを打ち込んだもの。
  平成29年 マンション管理士試験 「問40」 、平成29年 管理業務主任者試験 「問19」 、 平成23年 マンション管理士試験 「問41」 、 平成13年 管理業務主任者試験 「問26」 、

 鉄骨鉄筋コンクリート(SRC=Steel Reinforced Concrete)造とは、鉄骨骨組みの周囲に鉄筋を配しコンクリートを打ち込んだ構造です。SRC造は耐火性や耐震性の高さも大きなメリットです。
 鉄筋コンクリート造(RC造)に比べ、さらに強さとねばりをもつ構造です。

 そこで、設問の「鉄骨鉄筋コンクリート構造は、鉄骨の骨組みの周囲に鉄筋を配しコンクリートを打ち込んだものである」は、適切です。





2 建築物の地上部分に作用する地震力を計算する際に使われる地震層せん断力係数は、同じ建築物であれば上階ほど大きい。

〇 適切である。 地震層せん断力係数は、上層階で大きくなる。

 まず、「せん断力」とは、物体をはさみ切るような作用で、また物体をゆがめる力です。地震の場合、地震によって水平方向に揺れが発生しますと各階(各層)には、せん断力が発生します。

 
 また、地震層せん断力(分布)係数とは、建築物における地震層せん断力係数の高さ方向の分布を示す数値(係数)のことで、1つの建築物の中で1階と比べた際に、上階が何倍揺れるかを表し、また固有周期が長い(=建築物が高い)ほど大きくなる特徴を有するものです。すなわち、地震層せん断力(分布)係数は建築物の最上階において最大化します。

 「高さ方向の分布係数」Aiは、地上部分の最下層において1.0の値となり、上層になるにつれて大きな値となっていきますから、設問の「建築物の地上部分に作用する地震力を計算する際に使われる地震層せん断力係数は、同じ建築物であれば上階ほど大きい」は、適切です。


3 耐震改修において、免震装置を既存建築物の柱の途中に設置する工法もある。

〇 適切である。 制震装置と免震装置は、既存の建物にも設置できる

  平成30年 マンション管理士試験 「問40」 、 平成30年 管理業務主任者試験 「問27」 、  平成28年 マンション管理士試験 「問40」 選択肢2 、平成24年 管理業務主任者試験 「問20」 、平成19年 マンション管理士試験 「問40」 、 平成17年 マンション管理士試験 「問41」

  地震の被害に対する建築構造の対策としては、@耐震、A制震、B免震 の3つがあります。
  @耐震構造...地震力に耐えるようにした構造。壁、スラブ(床)、柱、梁などの剛性や靱性を高める工法。
  A制震構造...地震力をダンバーなどの部材を用いて吸収する方法で、建物が負担する地震力を低減する工法。
  B免震構造...地震力に対して建物がゆっくりと水平移動して、建物の曲げや変形を少なくする工法。家具の転倒は防ぎやすくなるが、免震装置の維持管理が必要。


 

 免震装置は、最近マンションでの採用が多くあります。
 制震装置や免震装置は、既存建物でも設置が可能で、設問の「耐震改修において、免震装置を既存建築物の柱の途中に設置する工法もある」は、適切です。





4 固定荷重とは、建築物に常時かかる躯体(くたい)、内外装の仕上げ、家具等の重量の合計である。

X 適切ではない。 固定荷重には、家具は入らない。 家具等は、積載重量。
  平成25年 マンション管理士試験 「問42」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問19」 、

 固定荷重とは、構造物における骨組み(躯体)や間仕切り壁などの自重、並びにそれに付随する仕上材料、設備関係の自重を合計した荷重で、建築物自体の重さのことですから、設問の「
家具等の重量」は入らないため、設問は適切ではありません。
 家具や調度品、また人間は移動ができるものとして、「積載荷重」となります。

 


答え: 4

 選択肢2の「地震層せん断力係数歯、上階ほど大きい」は、少し難しいか。でも、何となく、分かる? 

《タグ》マンションの構造 鉄骨鉄筋コンクリート構造 地震層せん断力係数 上階ほど大きい 免震装置 固定荷重 積載荷重

問42

〔問 42〕 マンションの各部の計画に関する次の記述のうち、下線部の数値が適切でないものはどれか。

1 車いす使用者の利用する平面駐車場において、1台当たりの駐車スペースの幅を、3.5mとした。

〇 適切である。 車いす使用者の利用する平面駐車場の幅は、350cm(3.5m)以上。


 車いす使用者の利用する平面駐車場の幅は、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令第17条、
「(駐車場)
 第十七条 不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する駐車場を設ける場合には、そのうち一以上に、車椅子使用者が円滑に利用することができる駐車施設(以下「車椅子使用者用駐車施設」という。)を一以上設けなければならない。
2 車椅子使用者用駐車施設は、次に掲げるものでなければならない。
   
一 幅は、三百五十センチメートル以上とすること
   二 次条第一項第三号に定める経路の長さができるだけ短くなる位置に設けること。」
 とあり、
 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令第17条2項1号によれば、設問の「車いす使用者の利用する平面駐車場において、1台当たりの駐車スペースの幅を、3.5mとした」は、適切です。


 


2 高低差が 50mm ある共用部分の傾斜路の勾配を、1/8 とした。

〇 適切である。 傾斜路(スロープ)の勾配は、1/8 を超えないこと。

  平成28年 マンション管理士試験 「問41」 、

 傾斜路は、建築基準法施行令第26条
(階段に代わる傾斜路)
 第二十六条 
階段に代わる傾斜路は、次の各号に定めるところによらなければならない。
   一 勾配は、八分の一をこえないこと。

   二 表面は、粗面とし、又はすべりにくい材料で仕上げること。
2 前三条の規定(けあげ及び踏面に関する部分を除く。)は、前項の傾斜路に準用する。

 とあり、
 建築基準法施行令第26条項1号によれば、設問の「高低差が 50mm ある共用部分の傾斜路の勾配を、1/8 とした」は、適切です。

 なお、勾配 1/8 とは、水平に8m進むあいだに、垂直に 1m あがるスロープとなります。



 

 なお、設問は、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法と限定してませんが、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令第18条2項4号ロ もあります。
「(移動等円滑化経路)
 第十八条 次に掲げる場合には、それぞれ当該各号に定める経路のうち一以上(第四号に掲げる場合にあっては、その全て)を、高齢者、障害者等が円滑に利用できる経路(以下この条において「移動等円滑化経路」という。)にしなければならない。


 四 当該移動等円滑化経路を構成する傾斜路(階段に代わり、又はこれに併設するものに限る。)は、第十三条の規定によるほか、次に掲げるものであること。
   イ 幅は、階段に代わるものにあっては百二十センチメートル以上、階段に併設するものにあっては九十センチメートル以上とすること。
  
 ロ 勾配は、十二分の一を超えないこと。ただし、高さが十六センチメートル以下のものにあっては、八分の一を超えないこと
   ハ 高さが七十五センチメートルを超えるものにあっては、高さ七十五センチメートル以内ごとに踏幅が百五十センチメートル以上の踊場を設けること。



3 住戸の床面積の合計が 200 m2 の階において、両側に居室がある共用廊下の幅を、1.6mとした。

〇 適切である。 両側が居室なら、廊下の幅は、1.6m以上のこと。
  平成28年 管理業務主任者試験 「問18」 、

 廊下の幅は、建築基準法施行令第119条、

 (廊下の幅)
第百十九条 廊下の幅は、それぞれ次の表に掲げる数値以上としなければならない。
 廊下の用途  廊下の配置
両側に居室がある廊下における場合(単位 メートル)  その他の廊下における場合(単位 メートル) 
 小学校、中学校、義務教育学校、高等学校又は中等教育学校における児童用又は生徒用のもの  二・三  一・八
 病院における患者用のもの、共同住宅の住戸若しくは住室の床面積の合計が百平方メートルを超える階における共用のもの又は三室以下の専用のものを除き居室の床面積の合計が二百平方メートル(地階にあつては、百平方メートル)を超える階におけるもの  一・六  一・二

 とあり、
 建築基準法施行令第119条によれば、設問の「住戸の床面積の合計が 200 m2 の階において、両側に居室がある共用廊下の幅を、1.6mとした」は、適切です。


 


4 屋外に設ける避難階段の出口から道又は公園、広場その他の空地に通ずる通路の幅員を、1.4mとした。

X 適切でない。 この場合、幅員は、1.5m以上要。 1.4mではない。

設問は、建築基準法施行令第128条
(敷地内の通路)
 第百二十八条 敷地内には、第百二十三条第二項の屋外に設ける避難階段及び第百二十五条第一項の出口から道又は公園、広場その他の空地に通ずる幅員が
一・五メートル以上の通路を設けなければならない。

 とあり、
 建築基準法施行令第128条によれば、設問の「屋外に設ける避難階段の出口から道又は公園、広場その他の空地に通ずる通路の幅員を、
1.4mとした」は、「1.5m以上」であるため、適切ではありません。


答え: 4

 
過去問題をやっていても、ここまで細かく数字は、覚えきれないか。
 難問だ。


《タグ》マンションの設備 身障者の駐車場 幅:3.5m以上 傾斜路の勾配 1/8超えない 両側に居室がある共用廊下の幅:1.6m以上 避難階段の出口から:通路の幅員:1.5m以上

問43

〔問 43〕 マンションの飲料水用の受水槽に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

1 受水槽には、給水管への逆流が生じないように、吐水口空間を設けた。

〇 適切である。 吐水口空間がないと、受水槽(タンク)から給水管に、飲料水が逆流する。

  平成28年 マンション管理士試験 「問43」 、など。



 水槽については、「給排水衛生設備規準」(空気調和・衛生工学会 SHASE−S206)に詳細な規準があります。

 受水槽の吐水口空間とは、給水管の流入口端から、オーバーフロー管下端までの空間です。この、吐水口空間が設けられていないと、受水槽の飲料水が、給水管に逆流しますから、設問の「受水槽には、給水管への逆流が生じないように、吐水口空間を設けた」は、適切です。


2 受水槽を屋内に設置する場合に、受水槽の天井、底及び周壁と建築物との間に、保守点検ができるように、全ての躯体(くたい)面で 60cm の空間を設けた。

X 適切でない。 底及び周壁と建築物との間は、60cm以上だが、天井は100cm以上。
 平成28年 マンション管理士試験 「問43」 、 平成26年 マンション管理士試験 「問43」 、平成23年 マンション管理士試験 「問45」 、平成18年 マンション管理士試験 「問43」 、 平成15年 マンション管理士試験 「問45」 

 この設問は、飲料用受水槽の通常「6面点検」と呼ばれます。根拠は、昭和50年建設省告示第1597号
 「二 給水タンク及び貯水タンク
    イ 建築物の内部、屋上又は最下階の床下に設ける場合においては、次に定めるところによること。
     (1) 外部から給水タンク又は貯水タンク(以下「給水タンク等」という。)の天井、底又は周壁の保守点検を容易かつ安全に行うことができるように設けること。
 とあり、
 受水槽(貯水タンク、給水タンク)を屋内に設置する場合においては周囲4面と、上下2面の外面6面すべてについて点検できるように設置します。具体的には、
周囲4面と下の面は60cm以上、点検用のマンホールがある上の面には100cm以上の距離を設けます



 そこで、設問の「受水槽の天井」においては、100cm以上が必要ですから、「受水槽を屋内に設置する場合に、受水槽の天井、底及び周壁と建築物との間に、保守点検ができるように、”全ての躯体面”で 60cm の空間を設けた」は、適切ではありません。

 なお、底及び周壁の間は60cm以上です。



3 受水槽内部の保守点検を行うためのマンホールは、ほこりその他衛生上有害なものが入らないように、受水槽の天井面より 10cm 以上立ち上げて設置した。

〇 適切である。 マンホールは、受水槽の天井面より 10cm 以上立ち上げて設置する。


 受水槽のマンホールは、直径60cm以上とし、周囲から10cm以上立ち上げて設け、防水パッキン入り、カギ付きとしますから、設問の「受水槽内部の保守点検を行うためのマンホールは、ほこりその他衛生上有害なものが入らないように、受水槽の天井面より 10cm 以上立ち上げて設置した」は、適切です。


4 受水槽内へ排水が逆流しないように、受水槽の下部に設置する水抜き管と排水管との間に垂直距離で 15cm 以上の排水口空間を設けた。

〇 適切である。 排水口空間は、逆流防止のため、15cm以上とする。


 給水槽の排水口空間は、水抜管及びオーバーフロー管の排水口空間が管径の二倍以上(ただし、最小は150mm)あることなっていますから、設問の「受水槽内へ排水が逆流しないように、受水槽の下部に設置する水抜き管と排水管との間に垂直距離で 15cm 以上の排水口空間を設けた」は、適切です。

 また、水抜管及びオーバーフロー管並びに水抜管、オーバーフロー管及び通気管等に取り付けられた防虫網については、詰まり及び損傷の有無を点検し、必要に応じ、掃除、補修等を行うことです。


答え: 2

 
受水槽からは、過去問題をやっていれば、正解はできる。 易しい。

《タグ》受水槽 吐水口空間 六面点検 マンホール 排水口空間

問44

〔問 44〕 マンションの排水設備に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

1 特殊継手排水システムは、排水立て管と通気立て管を接続することにより、管内の圧力を緩和する機能があるので、専有部分からの汚水系統や雑排水系統の排水を集約できる。

X 適切でない。 特殊継手排水システムは、排水立て管と通気立て管を接続しない。 伸頂通気方式の1種である。
  平成28年 マンション管理士試験 「問44」 、 平成27年 マンション管理士試験 「問44」 平成22年 マンション管理士試験 「問45」 、平成19年 マンション管理士試験 「問45」 平成15年 管理業務主任者試験 「問23」 、平成14年 マンション管理士試験 「問44」 

 特殊継手(つぎて)排水システムとは、排水がスムーズに行われるように開発された特殊な継ぎ手を用いて、衛生器具等からの排水が流れる横枝管と排水立て管が合流する時に、排水を減速して旋回させ排水立て管に沿ってらせん状に落下させることにより、排水立て管の真中に空気のコアをつくることで通気を確保し、大量の排水の流れをスムーズにします。
 つまり排水管内部を通気管としても利用できるようにしたものです。主に、高層や超高層のマンションで採用されることが多いシステムです。

 そこで、設問の前半「特殊継手排水システムは、排水立て管と通気立て管を接続すること」は、適切ではありません。
 特殊継手排水システムは、伸頂通気方式で、通気立て管は、不要です。

 なお、設問の後半「管内の圧力を緩和する機能があるので、専有部分からの汚水系統や雑排水系統の排水を集約できる」は、適切です。

 よって、選択肢1は、全体として、適切ではありません。

 


2 洗面台の洗面器にためた水を一気に流すと、接続された排水管を排水が満流状態で流れることにより、トラップ部の封水が流出してしまうことがある。

〇 適切である。 満水で流すと、封水が破れることがある。 自己サイホン作用。
  平成30年 マンション管理士試験 「44」 、 平成23年 マンション管理士試験 「問44」 、平成18年マンション管理士試験 「問44」 、 

 通常、排水管からの臭気や害虫が洗面器などから室内に侵入するのを防ぐために、トラップを設けます。
 トラップ(Trap=わな)とは、排水管や下水道からの悪臭、有毒ガス、虫などが室内に侵入するのを防ぐためのもので、具体的には、洗面器など衛生器具の排水管の途中や排水系統に設けられ、水がたまった部分のことです。
 トラップの種類としては、サイホン式と非サイホン式に大別できます。
 サイホン式トラップとは、排水管をS字型(Sトラップ)やU字型(Uトラップ)などに形成し、排水が満水状態で通過するときのサイホン作用を利用し水封部分の固形物を排出しますが、自己サイホン作用によって、破封(封水が破られる)しやすい欠点もあります。


 

 設問の「洗面台の洗面器にためた水を一気に流す」と、器具の排水管が満流状態になり、流水が引っ張る力を生じさせ、トラップにある水(封水)が少なくなったりすることがあります。
 これは、自己サイホン作用と呼ばれ、設問は、適切です。

 自己サイフォン作用 : 洗面器などの大量に水をためて使用する器具で、器具・トラップ・排水管が連続したサイフォンとして働き、内部の水が排水されることがある。



3 敷地内で雨水排水管と汚水排水横主管を接続する場合に、臭気が雨水系統へ逆流しないようにトラップを設けた。

〇 適切である。 この場合、臭気が雨水系統に逆流しないように、トラップますを設ける。

  平成26年 マンション管理士試験 「問44」 平成23年マンション管理士試験 「問44」 、平成16年管理業務主任者試験 「問23」
 
 まず、マンションでの排水には、
  @汚水(トイレの排水)
  A雑排水(台所、浴室、洗面室、洗濯機など)
  B雨水 があります。
 そして、マンションの排水方式には、
  @汚水(トイレの排水)と A雑排水(台所、浴室、洗面室、洗濯機など) を同一の排水系統で排出させる「
ア.合流式」と、@汚水(トイレの排水)と A雑排水(台所、浴室、洗面室、洗濯機など) を別々の排水系統で排出させる 「イ.分流式」があります。

  また、地方自治体の排水方法(下水道)にも@分流式 と A合流式が、あり、これが、マンション敷地内での排水と混同しやすく、面倒です。
  @
分流式とは、「汚水及び雑排水」 と「雨水」とが別々の下水系統です。
  A
合流式とは、「汚水及び雑排水」 と「雨水」を同一の管渠系統で排除します。
  
  歴史としては、古くから下水道の整備を始めた東京等の大都市は河川の下流部に位置しており、都市内の浸水防除と都市内の生活環境の改善を行うことが喫緊の課題であったため、合流式下水道が採用されていた。
 しかし、昭和45年に下水道法が改正され、下水道の役割として、公共用水域の水質保全が位置付けられ、それ以降の下水道は分流式が採用されるようになったものです。


  

 これを踏まえ、設問の「敷地内で雨水排水管と汚水排水横主管を接続する場合」は、マンション敷地内での「合流式」です。
この場合、臭気が雨水系統へ逆流しないように、雨水排水管に、トラップ機能のある排水ますを設置しますから、設問は、適切です。


 


4 台所に設置する食器洗い乾燥機の排水管に、高温の排水に耐えられるように耐熱性硬質(ポリ)塩化ビニル管を用いた。

〇 適切である。 高温に耐えられる耐熱性硬質(ポリ)塩化ビニル管を使用する。
  平成26年 マンション管理士試験 「問44」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問44」 、

 食器洗い乾燥機からの排水温度は最高80℃あります。通常使用される硬質塩化ビニル管(VP管)の耐熱温度は60℃以下です。そこで、耐熱性硬質塩化ビニル管(HTVP)を使用します。これだと耐熱90℃程度まで可能です。
よって、設問の「台所に設置する食器洗い乾燥機の排水管に、高温の排水に耐えられるように耐熱性硬質(ポリ)塩化ビニル管を用いた」は、適切です。


 


答え: 1 


 図も多く入れたので、解説に時間がかかっている。

《タグ》排水設備 特殊継手排水システム トラップ 自己サイホン作用 合流式 分流式 トラップます 食器洗い乾燥機 耐熱性硬質(ポリ)塩化ビニル管

問45

〔問 45〕 マンションの設備に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

1 居室では、シックハウス対策として、換気回数2回/h以上の機械換気設備の設置が必要である。

X 適切でない。
 居室での換気回数は、 0.5回/h 以上である。 2回/h 以上ではない。
 平成25年 マンション管理士試験 「問44」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問45」 、平成17年 管理業務主任者試験 「問24」 

 室内の仕上げとして使用される壁紙の接着剤や建築材料に含まれるホルムアルデヒトなど、また家具に含まれる各種化学物質によって、目がチカチカしたり、めまいや吐き気など住んでいる人の健康に悪影響を与える事例を、”
シックハウス症候群”とよんでいます。
 そこで、建築基準法により、石綿の使用禁止と並んで、居室を有する建築物には、クロルピリホスを添加した建築材料の使用が禁止され、ホルムアルデヒドの使用の制限が規定されました。

 建築基準法第28条の2
 「(石綿その他の物質の飛散又は発散に対する衛生上の措置)
 第二十八条の二  建築物は、石綿その他の物質の建築材料からの飛散又は発散による衛生上の支障がないよう、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。
     一  建築材料に石綿その他の著しく衛生上有害なものとして政令で定める物質(次号及び第三号において「石綿等」という。)を添加しないこと。
     二  石綿等をあらかじめ添加した建築材料(石綿等を飛散又は発散させるおそれがないものとして国土交通大臣が定めたもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを除く。)を使用しないこと。
     
三  居室を有する建築物にあつては、前二号に定めるもののほか、石綿等以外の物質でその居室内において衛生上の支障を生ずるおそれがあるものとして政令で定める物質の区分に応じ、建築材料及び換気設備について政令で定める技術的基準に適合すること。
 とあり、

 これを受けた建築基準法施行令第20条の4、及び第20条の5
 「(著しく衛生上有害な物質)
 第二十条の四  法第二十八条の二第一号 (法第八十八条第一項 において準用する場合を含む。)の政令で定める物質は、石綿とする。
 「(居室内において衛生上の支障を生ずるおそれがある物質)
 第二十条の五  法第二十八条の二第三号 の政令で定める物質は、クロルピリホス及びホルムアルデヒドとする。

 また、室内における化学物質の人体への影響を少なくするためには、換気設備で、室内の空気をきれいにすることも必要です。

 そこで、建築基準法施行令第20条の8
 「
居室を有する建築物の換気設備についてのホルムアルデヒドに関する技術的基準)
 第二十条の八  換気設備についてのホルムアルデヒドに関する法第二十八条の二第三号 の政令で定める技術的基準は、次のとおりとする。
     一  
居室には、次のいずれかに適合する構造の換気設備を設けること。
      イ 機械換気設備(ロに規定する方式を用いるものでロ(1)から(3)までに掲げる構造とするものを除く。)にあつては、第百二十九条の二の六第二項の規定によるほか、次に掲げる構造とすること。
       (1) 有効換気量(立方メートル毎時で表した量とする。(2)において同じ。)が、次の式によつて計算した必要有効換気量以上であること。
        Vr=nAh
      この式において、Vr、n、A及びhは、それぞれ次の数値を表すものとする。
      Vr 必要有効換気量(単位 一時間につき立方メートル)
      n 前条第一項第二号の表備考一の号に規定する住宅等の居室(次項において単に「
住宅等の居室」という。)にあつては〇・五、その他の居室にあつては〇・三
      A 居室の床面積(単位 平方メートル)
      h 居室の天井の高さ(単位 メートル)
 (以下略)
」 
 とあり、
 建築基準法施行令第20条の8 1号 イ によれば、住宅の居室では、換気回数は、 ”
0.5回/h (1時間で、部屋の空気が半分入れ替わる)”のような、機械式換気設備(24時間換気システム)の設置が義務つけられていますから、設問の「居室では、シックハウス対策として、”換気回数2回/h以上”の機械換気設備の設置が必要である」は、適切ではありません。
 居室では、0.5回/h 以上の換気回数が必要です。


 


2 圧縮空気法による排水管の清掃では、付着物で閉塞した排水管内に水を注入し、圧縮空気を放出してその衝撃で付着物を除去する。

〇 適切である。 排水管の清掃で、圧縮空気法は、付着物で閉塞した排水管内に水を注入し、圧縮空気を放出してその衝撃で付着物を除去する。
  平成25年 マンション管理士試験 「問44」 、 

 排水管の清掃方法としては、機械的に取り除く方法とアルカリ性洗浄剤などを使用する化学的に取り除く方法があります。一般的には、機械的に取り除く方法が採用されます。
 その機械的に取り除く方法としては、
  1.高圧洗浄法...排水管内にホース・ノズルを挿入し高圧水をノズルから噴射して管内の付着物や閉塞物を取り除く方法
  2.(スネーク)ワイヤー法...スクリュー型などのヘッドを先端に取り付けたワイヤーを回転させながら管内に入れて、押したり引いたりして、管内の付着物や閉塞物を取り除く方法
  3.ロッド法...先端の棒(ロッド)にスネークワイヤーのようにヘッドを付けて、1mから1.8m程度の棒を繋ぎ合わせて、手動で排水管内に入れて、管内の付着物や閉塞物を取り除く方法
 
 4.ウォーターラム法(圧縮空気法)...詰まった排水管内に水を注入して、空気ポンプ(圧力ガン)で圧縮空気を一気に送り、その衝撃で管内の付着物や閉塞物を取り除く方法
 があります。

 そこで設問の「圧縮空気法(ウォーターラム法)による排水管の清掃では、付着物で閉塞した排水管内に水を注入し、圧縮空気を放出してその衝撃で付着物を除去する」は、適切です。


 


3 専有部分に設置するさや管ヘッダー方式による給水・給湯システムには、耐食性、耐熱性、可とう性に優れた水道用架橋ポリエチレン管、水道用ポリブテン管等を使用する。

〇 適切である。 さや管ヘッダー方式による給水・給湯システムでは、水道用架橋ポリエチレン管、水道用ポリブテン管等を使用する。

  平成29年 マンション敷地「43」 、 平成26年 マンション管理士試験 「問43」 平成22年マンション管理士試験 「問43」、 平成22年 管理業務主任者試験 「問24」 、 平成17年 マンション管理士試験 「問44」 、

 さや管ヘッダー方式の出題の当初は、戸惑ったが、今は、もう古典的な出題。
 
 さや管ヘッダー方式の、詳細は、平成17年 マンション管理士試験 「問44」 を読んでください。

 さや管とは、日本刀の「さや」と同じ意味で、中身を保護するためにかぶせる筒(つつ)と考えてください。
 従来工法の給湯機から一本の給湯配管が伸びて、途中で台所や浴室に分岐する工法とは異なり、さや管ヘッダー方式は、ヘッダー(一本の配管と多数の配管を分岐・合流させる装置)を給湯器やパイプシャフト周辺に設け、予めヘッダーから各給水栓までタコ足状に敷設したサヤ管(中に給湯管を通すための管)に、後から樹脂管を通管する工法をいう。「ヘッダー」で分岐するため、在来工法に比べて、複数の水栓を同時使用したときの流量変動が小さい。


  



 使用されるプラスチック製の水道用架橋ポリエチレン管や水道用ポリブテン管は、耐熱、耐寒、耐食性に優れています。そこで、専有部分内の給水湯配管、主にヘッダー集中配管に使用されます。
 なお、架橋ポリエチレン管とは、熱可塑性プラスチックとしての鎖状構造ポリエチレンの分子どうしのところどころを結合させ、立体の網目構造にした超高分子量ポリエチレンをいう。従って、架橋反応が終了した時点で、ポリエチレンはあたかも熱硬化性樹脂のような立体網目構造となり、耐熱性、クリープ性能とも向上する、のです。




 という訳で、設問の「専有部分に設置するさや管ヘッダー方式による給水・給湯システムには、耐食性、耐熱性、可とう性に優れた水道用架橋ポリエチレン管、水道用ポリブテン管等を使用する」は、適切です。


4 新設する乗用エレベーターに設置する地震時等管制運転装置には、予備電源を設ける。

〇 適切である。 新設する乗用エレベーターに設置する地震時等管制運転装置には、予備電源を設けること。

  平成29年 マンション管理士試験 「問44」 平成29年 管理業務主任者試験 「問20」 、 平成28年 マンション管理士試験 「問45」 、平成28年 管理業務主任者試験 「問19」 、 平成27年 管理業務主任者試験 「問24」 
 
  平成17年7月の千葉県北西部地震において発生したエレベーターの閉じ込め事故、平成18年6月の港区シティハイツ竹芝のシンドラー社製エレベーターの戸開走行事故等を受け、審議が進められてきた社会資本整備審議会建築分科会建築物等事故・災害対策部会において、平成20年2月26日、最終とりまとめが行われました。
 これを踏まえ、関係者等との技術的な検討を重ねた結果、エレベーターの構造等に関する建築基準法施行令・建築基準法施行規則の一部および国土交通省告示の改正等を行い、エレベーターの安全に係る技術基準の見直しが行われ、平成21年9月28日施行です。
 主な改正点は、以下のようになっています。
 (1)戸開走行保護装置の設置義務付け(令第129条の10第3項第1号関係)
 (2)地震時管制運転装置の設置義務付け(令第129条の10第3項第2号関係)

 そこで、建築基準法施行令 第129条の10 3項
(エレベーターの安全装置)
 第百二十九条の十 
エレベーターには、制動装置を設けなければならない
2 前項のエレベーターの制動装置の構造は、次に掲げる基準に適合するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
   一 かごが昇降路の頂部又は底部に衝突するおそれがある場合に、自動的かつ段階的に作動し、これにより、かごに生ずる垂直方向の加速度が九・八メートル毎秒毎秒を、水平方向の加速度が五・〇メートル毎秒毎秒を超えることなく安全にかごを制止させることができるものであること。
   二 保守点検をかごの上に人が乗り行うエレベーターにあつては、点検を行う者が昇降路の頂部とかごの間に挟まれることのないよう自動的にかごを制止させることができるものであること。
3 エレベーターには、前項に定める制動装置のほか、
次に掲げる安全装置を設けなければならない。
   一 次に掲げる場合に自動的にかごを制止する装置
     イ 駆動装置又は制御器に故障が生じ、かごの停止位置が著しく移動した場合
     ロ 駆動装置又は制御器に故障が生じ、かご及び昇降路のすべての出入口の戸が閉じる前にかごが昇降した場合
   二 地震その他の衝撃により生じた国土交通大臣が定める加速度を検知し、自動的に、かごを昇降路の出入口の戸の位置に停止させ、かつ、当該かごの出入口の戸及び昇降路の出入口の戸を開き、又はかご内の人がこれらの戸を開くことができることとする装置
   三 停電等の非常の場合においてかご内からかご外に連絡することができる装置
   四 乗用エレベーター又は寝台用エレベーターにあつては、次に掲げる安全装置
     イ 積載荷重に一・一を乗じて得た数値を超えた荷重が作用した場合において警報を発し、かつ、出入口の戸の閉鎖を自動的に制止する装置
     ロ 停電の場合においても、床面で一ルクス以上の照度を確保することができる照明装置
4 前項第一号及び第二号に掲げる装置の構造は、それぞれ、その機能を確保することができるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。

 です。

 これを受けて、国土交通省告示第1536号 平成29年12月26日付) 
「地震その他の衝撃により生じた国土交通大臣が定める加速度並びに当該加速度を検知し、自動的に、かごを昇降路の出入口の戸の位置に停止させ、かつ、当該かごの出入口の戸及び昇降路の出入口の戸を開き、又はかご内の人がこれらの戸を開くことができることとする装置の構造方法を定める件
 第二 加速度を検知し、自動的に、かごを昇降路の出入口の戸の位置に停止させ、かつ、当該かごの 出入口の戸及び昇降路の出入口の戸を開き、又はかご内の人がこれらの戸を開くことができること とする装置(以下「地震時等管制運転装置」という。)の構造方法は、次に定めるものとする。
 
四 地震時等管制運転装置には、予備電源を設けること。」
 とあり、
 設問の「新設する乗用エレベーターに設置する地震時等管制運転装置には、予備電源を設ける」は、適切です。



答え: 1 

 ここは、過去問をやっていれば、易しい。

《タグ》シックハウス対策 換気 0.5回/h 以上 排水管の清掃方法 圧縮空気法 さや管ヘッダー方式 水道用架橋ポリエチレン管、水道用ポリブテン管 乗用エレベーター 地震時等管制運転装置

問46


 *注:問46から問50までは、マンション管理士試験か管理業務主任者試験の合格者には免除される部分です。また、この問46から問50は、「マンション管理適正化法」と「同指針」からの出題と決まっていますので、出題は過去問題と似たような内容となります。過去問題はやっておくと楽です。

 *マンションの管理の適正化に関する指針(国土交通省告示第490号)は、平成28年3月に改正があったので、注意のこと。

 *勉強の仕方としては、「マンション管理適正化法」と「同施行規則」は、連動して作成されているので、「マンション管理適正化法」と「同施行規則」が左右で対照になったものがあると分かり易い。


〔問 46〕「マンションの管理の適正化に関する指針」(最終改正平成 28 年3月 14 日国土交通省告示第 490 号)において定められている「マンションの管理の適正化の推進のために管理組合が留意すべき基本的事項」に関する次の記述のうち、適切なものはいくつあるか。

ア 管理組合は、専有部分と共用部分の範囲及び管理費用を明確にすることにより、トラブルの未然防止を図ることが重要であり、併せて、これに対する区分所有者等の負担も明確に定めておくことが望ましい。

〇 適切である?  厳密にいうと”専有部分と”が気になるが。

  令和01年 管理業務主任者試験 「問46」 、 

 個数問題か! 管理業務主任者試験といい、個数問題や組合せ問題は、国家資格試験としては、良くない出題方法だ。
 
 
  ここからは、過去出題がない?

 マンションの管理の適正化に関する指針
http://www.mlit.go.jp/common/001122894.pdf

 設問は、 「マンションの管理の適正化に関する指針 二3
 3 共用部分の範囲及び管理費用の明確化
  管理組合は、マンションの快適な居住環境を確保するため、あらかじめ、
共用部分の範囲及び管理費用を明確にし、トラブルの未然防止を図ることが重要である
 特に、専有部分と共用部分の区分、専用使用部分と共用部分の管理及び駐車場の使用等に関してトラブルが生じることが多いことから、適正な利用と公平な負担が確保されるよう、各部分の範囲及び
これに対するマンションの区分所有者等の負担を明確に定めておくことが望ましい。」
 とあり、
 設問の前半、「”
専有部分と共用部分の範囲”及び管理費用を明確にすることにより、トラブルの未然防止を図ることが重要であり」が、マンションの管理の適正化に関する指針では、単に「”共用部分の範囲”及び管理費用を明確にし、トラブルの未然防止を図ることが重要である」とあり、厳密に指摘すると”専有部分と”の記載がないことは、出題文として拙い。
 特に、他の選択肢が「「マンションの管理の適正化に関する指針」をそのまま、出題文にしているだけに、不適切な文章と捉えられても、言い訳が出来ない出題だ。

  ここからは、令和01年の管理業務主任者試験 「問46」 でも出題があるが、管理業務主任者試験では、
 「ア 管理組合は、マンションの快適な居住環境を確保するため、あらかじめ、共用部分の範囲及び管理費用を明確にし、トラブルの未然防止を図ることが重要である。」
 と、素直に出題している。
 
 設問の後半「併せて、これに対する区分所有者等の負担も明確に定めておくことが望ましい」は、適切です。



イ 管理組合の管理者等は、管理組合の経理に必要な帳票類を作成してこれを保管するとともに、マンションの区分所有者等からの請求があった時は、これを速やかに開示することにより、経理の透明性を確保する必要がある。

〇 適切である。

 設問は、「マンションの管理の適正化に関する指針 二4
  4 管理組合の経理
   管理組合がその機能を発揮するためには、その経済的基盤が確立されていることが重要である。
   このため、管理費及び修繕積立金等について必要な費用を徴収するとともに、これらの費目を明確に区分して経理を行い、適正に管理する必要がある。
   また、
管理組合の管理者等は、必要な帳票類を作成してこれを保管するとともに、マンションの区分所有者等の請求があった時は、これを速やかに開示することにより、経理の透明性を確保する必要がある。」
 とあり、
 適切です。



ウ 建築後相当の年数を経たマンションにおいては、長期修繕計画の検討を行う際には、必要に応じ、建替え等についても視野に入れて検討することが望ましい。建替え等の検討にあたっては、その過程をマンションの区分所有者等に周知させるなど透明性に配慮しつつ、各区分所有者等の意向を十分把握し、合意形成を図りながら進める必要がある。

〇 適切である。 
  令和01年 管理業務主任者試験 「問46」 、

 設問は、「マンションの管理の適正化に関する指針 二5
  5 長期修繕計画の策定及び見直し等
   マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値の維持・向上を図るためには、適時適切な維持修繕を行うことが重要である。特に、経年による劣化に対応するため、あらかじめ長期修繕計画を策定し、必要な修繕積立金を積み立てておくことが必要である。
   長期修繕計画の策定及び見直しにあたっては、「長期修繕計画作成ガイドライン」を参考に、必要に応じ、マンション管理士等専門的知識を有する者の意見を求め、また、あらかじめ建物診断等を行って、その計画を適切なものとするよう配慮する必要がある。
   長期修繕計画の実効性を確保するためには、修繕内容、資金計画を適正かつ明確に定め、それらをマンションの区分所有者等に十分周知させることが必要である。
   管理組合の管理者等は、維持修繕を円滑かつ適切に実施するため、設計に関する図書等を保管することが重要である。また、この図書等について、マンションの区分所有者等の求めに応じ、適時閲覧できるようにすることが望ましい。
   なお、
建築後相当の年数を経たマンションにおいては、長期修繕計画の検討を行う際には、必要に応じ、建替え等についても視野に入れて検討することが望ましい。建替え等の検討にあたっては、その過程をマンションの区分所有者等に周知させるなど透明性に配慮しつつ、各区分所有者等の意向を十分把握し、合意形成を図りながら進めることが必要である。」
 とあり、
 適切です。



エ 管理業務の委託や工事の発注等については、利益相反等に注意して、適正に行われる必要があるが、とりわけ外部の専門家が管理組合の管理者等又は役員に就任する場合においては、マンションの区分所有者等から信頼されるような発注等に係るルールの整備が必要である。

〇 適切である。
  平成29年マンション管理士試験 「問46」 、 平成29年 管理業務主任者試験 「問46」 、 

 設問は、「マンションの管理の適正化に関する指針 二6 
  6 発注等の適正化
   
管理業務の委託や工事の発注等については、利益相反等に注意して、適正に行われる必要があるが、とりわけ外部の専門家が管理組合の管理者等又は役員に就任する場合においては、マンションの区分所有者等から信頼されるような発注等に係るルールの整備が必要である。」
 とあり、
 適切です。



1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ


答え:4 (適切なのは、 ア、イ、ウ、エ の全部。 4つ.。) マンション管理センターの答え :4 

 
 選択肢ア の表現「専有部分と」が、他の出題文が、「マンションの管理の適正化に関する指針」からそのまま持ってきているのと比べるとかなり、曖昧であることは、国家資格の出題文としては、追及される問題だ。 

  特に、令和01年の管理業務主任者試験 「問46」 選択肢ア の出題文、
 「ア 管理組合は、マンションの快適な居住環境を確保するため、あらかじめ、共用部分の範囲及び管理費用を明確にし、トラブルの未然防止を図ることが重要である。」
 と比べると、マンション管理士試験では、出題文の作成が拙い。

  資格校での速報は、 3 になっている。 私も、当初は、3 にしたが、選択肢 ア も適切にする。

《タグ》マンションの管理の適正化に関する指針 共用部分の範囲及び管理費用の明確化 管理組合の経理 長期修繕計画の策定及び見直し等 発注等の適正化

問47

〔問 47〕 マンション管理業者に関する次の記述のうち、マンション管理適正化法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 マンション管理業者は、管理組合から委託を受けた管理事務について、国土交通省令で定めるところにより、帳簿を作成し、これを保存しなければならない。

〇 正しい。 マンション管理業者は、管理事務の帳簿を作成・保存すること。

  平成28年 管理業務主任者試験 「問47」 、 平成27年 管理業務主任者試験 「問49」 など

 設問は、マンション管理適正化法第75条
「(
帳簿の作成等)
 第七十五条 マンション管理業者は、管理組合から委託を受けた管理事務について、国土交通省令で定めるところにより、帳簿を作成し、これを保存しなければならない。

 とあり、
 正しい。



2 マンション管理業者は、従前の管理受託契約と同一の条件で管理組合との管理受託契約を更新しようとするときは、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、区分所有者等全員に対し、説明会を開催しなければならない。

X 誤っている。 従前と同様なら、説明会は不要。 
  令和01年 管理業務主任者試験 「問48」 、 平成30年 管理業務主任者試験 「問48」 、 平成30年 マンション管理士試験 「問46」 など

 従前と同様の委託契約なら、マンション管理適正化法第72条、
(重要事項の説明等)
 第七十二条 マンション管理業者は、管理組合から管理事務の委託を受けることを内容とする契約(新たに建設されたマンションの当該建設工事の完了の日から国土交通省令で定める期間を経過する日までの間に契約期間が満了するものを除く。以下「管理受託契約」という。)を締結しようとするとき(
次項に規定するときを除く。)は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより説明会を開催し、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等及び当該管理組合の管理者等に対し、管理業務主任者をして、管理受託契約の内容及びその履行に関する事項であって国土交通省令で定めるもの(以下「重要事項」という。)について説明をさせなければならない。この場合において、マンション管理業者は、当該説明会の日の一週間前までに、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等及び当該管理組合の管理者等の全員に対し、重要事項並びに説明会の日時及び場所を記載した書面を交付しなければならない。
2 マンション管理業者は、従前の管理受託契約と同一の条件で管理組合との管理受託契約を更新しようとするときは、あらかじめ、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等全員に対し、重要事項を記載した書面を交付しなければならない
3 前項の場合において当該管理組合に管理者等が置かれているときは、マンション管理業者は、当該管理者等に対し、管理業務主任者をして、重要事項について、これを記載した書面を交付して説明をさせなければならない。
4 管理業務主任者は、第一項又は前項の説明をするときは、説明の相手方に対し、管理業務主任者証を提示しなければならない。
5 マンション管理業者は、第一項から第三項までの規定により交付すべき書面を作成するときは、管理業務主任者をして、当該書面に記名押印させなければならない。

 とあり、
 マンション管理適正化法第72条2項によれば、「2 マンション管理業者は、従前の管理受託契約と同一の条件で管理組合との管理受託契約を更新しようとするときは、あらかじめ、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等全員に対し、重要事項を記載した書面を交付しなければならない。」
 とあるのですが、
 では、説明会の開催が求められているかというと、マンション管理適正化法第72条1項の前段のかっこ書き「(
次項に規定するときを除く)」により、2項の「従前の管理受託契約と同一の条件で管理組合との管理受託契約を更新しようとするとき」には説明会は、不要という構成になっていますから、
 設問の「マンション管理業者は、
従前の管理受託契約と同一の条件で管理組合との管理受託契約を更新しようとするときは、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、区分所有者等全員に対し、説明会を開催しなければならない」の、「区分所有者等全員に対し、説明会を開催しなければならない」の部分が、誤っています。

 このあたりは、よく出題されますので、”あなたのため”に、表にしました。

 *新たに管理受託契約を締結する場合の重要事項説明 (注:条件の変更更新も、新規と同様)
 管理者等  管理業務主任者が記名押印した書面の交付等 相手方    管理業務主任者の説明の方法  例外事項
 管理組合の理事長(管理者等)がいる  説明会開催の1週間前までに  @理事長及び A組合員全員に交付  管理業務主任者証を提示し説明会で説明する  新築マンションなら契約期間が工事完了から1年以内なら適用しない
 管理業者が理事長(管理者等)になっている  説明会開催の1週間前までに  組合員全員に交付  管理業務主任者証を提示し説明会で説明する  新築マンションなら契約期間が工事完了から1年以内なら適用しない
 選任されていない  説明会開催の1週間前までに  組合員全員に交付  管理業務主任者証を提示し説明会で説明する  新築マンションなら契約期間が工事完了から1年以内なら適用しない
   
 *従前と同一の条件で管理受託契約を更新する場合の重要事項説明
 管理者等 管理業務主任者が記名押印した書面の交付等  相手方    管理業務主任者の説明の方法
 管理組合の理事長(管理者等)がいる  更新が成立するまでに  @理事長及び A組合員全員に交付  管理業務主任者証を提示し理事長だけに説明でいい(交付は、全員にするが)
管理業者が理事長(管理者等)になっている  更新が成立するまでに  組合員全員に交付  従前と同一なので説明不要(交付だけでいい)
 選任されていない  更新が成立するまでに  組合員全員に交付  従前と同一なので説明不要(交付だけでいい)
 注:従前と同一の条件とは  「マン ション管理業者の商号又は名称、登録年月日及び登録番号」 の変更 と 以下の「契約内容の軽微な変更」も含む
 (1)従前の管理受託契約と管理事務の内容及び実施方法(法第76条の規定により 管理する財産の管理の方法を含む。以下同じ)を同一とし、管理事務に要する 費用の額を減額しようとする場合
 (2)従前の管理受託契約に比して管理事務の内容及び実施方法の範囲を拡大し、管理事務に要する費用の額を同一とし又は減額しようとする場合
 (3)従前の管理受託契約に比して管理事務に要する費用の支払いの時期を後に変更 (前払いを当月払い若しくは後払い、又は当月払いを後払い)しようとする場合
 (4)従前の管理受託契約に比して更新後の契約期間を短縮しようとする場合
 (5)管理事務の対象となるマンションの所在地の名称が変更される場合



3 マンション管理業者は、管理事務の委託を受けた管理組合に管理者等が置かれているときは、国土交通省令で定めるところにより、定期に、当該管理者等に対し、管理業務主任者をして、当該管理事務に関する報告をさせなければならない。

〇 正しい。 管理者等がいれば、管理業務主任者が報告すること。
  令和01年 管理業務主任者試験 「問49」 、 平成30年 管理業務主任者試験 「問50」 、 平成29年 管理業務主任者試験 「問47」 など。

 管理事務の報告は、マンション管理適正化法第77条、
「管理事務の報告)
 第七十七条 
マンション管理業者は、管理事務の委託を受けた管理組合に管理者等が置かれているときは、国土交通省令で定めるところにより、定期に、当該管理者等に対し、管理業務主任者をして、当該管理事務に関する報告をさせなければならない。
2 マンション管理業者は、管理事務の委託を受けた管理組合に管理者等が置かれていないときは、国土交通省令で定めるところにより、定期に、説明会を開催し、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等に対し、管理業務主任者をして、当該管理事務に関する報告をさせなければならない。
3 管理業務主任者は、前二項の説明をするときは、説明の相手方に対し、管理業務主任者証を提示しなければならない。

 とあり、
 マンション管理適正化法第77条1項によれば、設問の「マンション管理業者は、管理事務の委託を受けた管理組合に管理者等が置かれているときは、国土交通省令で定めるところにより、定期に、当該管理者等に対し、管理業務主任者をして、当該管理事務に関する報告をさせなければならない」は、正しい。



4 管理業務主任者は、重要事項について説明をするときは、説明の相手方に対し、管理業務主任者証を提示しなければならない。

〇 正しい。 重要事項の説明では、管理業務主任者証を提示すること。
  平成27年 管理業務主任者試験 「問48」 、
 
 設問は、選択肢1で引用しました、マンション管理適正化法第72条4項
「(重要事項の説明等)
 第七十二条

  4 管理業務主任者は、第一項又は前項の説明をするときは、説明の相手方に対し、管理業務主任者証を提示しなければならない。

 とあり、
 引用されています、「1項又は前項」は重要事項の説明を指していますから、設問の「管理業務主任者は、重要事項について説明をするときは、説明の相手方に対し、管理業務主任者証を提示しなければならない」は、正しい。



答え: 2

 過去問題をやっていれば、正解は早い。

 今回の解説では、選択肢1に表を作成したので、時間がかかった!

《タグ》マンション管理適正化法 マンション管理業者 帳簿の作成 従前の管理受託契約と同一の条件 説明会の開催 管理事務の報告 管理業務主任者証の提示

問48

〔問 48〕 次の記述のうち、「マンション管理適正化推進センター」が行う業務として、マンション管理適正化法第 92 条に規定されていないものはどれか。

1 マンションの管理の適正化の推進に資する啓発活動及び広報活動を行うこと。

〇 規定されている。
  平成29年 マンション管理士試験 「問49」 、

 平成29年でも指摘したが、いくら、出題のネタが無くなったからとはいえ、マンション管理適正化推進センターが行う業務なんて、まったく、マンション管理士試験には、不要な出題。

 この出題官は、もう降ろすべきだ、

 設問は、マンション管理適正化法第92条、
(業務)
 第九十二条 センターは、次に掲げる業務を行うものとする。
   
一 マンションの管理に関する情報及び資料の収集及び整理をし、並びにこれらを管理組合の管理者等その他の関係者に対し提供すること。
   
二 マンションの管理の適正化に関し、管理組合の管理者等その他の関係者に対し技術的な支援を行うこと。
   三 マンションの管理の適正化に関し、管理組合の管理者等その他の関係者に対し講習を行うこと。
   四 マンションの管理に関する苦情の処理のために必要な指導及び助言を行うこと。
   五 マンションの管理に関する調査及び研究を行うこと。
  
 六 マンションの管理の適正化の推進に資する啓発活動及び広報活動を行うこと。
   七 前各号に掲げるもののほか、マンションの管理の適正化の推進に資する業務を行うこと。

 とあり、
 マンション管理適正化法第92条6号によれば、設問の「マンションの管理の適正化の推進に資する啓発活動及び広報活動を行うこと。」は、規定されています。



2 マンションの管理に関する情報及び資料の収集及び整理をし、並びにこれらを管理組合の管理者等その他の関係者に対し提供すること。

〇 規定されている。

 選択肢1で引用しました、マンション管理適正化法第92条1号、
 「 
一 マンションの管理に関する情報及び資料の収集及び整理をし、並びにこれらを管理組合の管理者等その他の関係者に対し提供すること」、
 と規定されています。



3 マンションの管理の適正化に関し、管理組合の管理者等その他の関係者に対し技術的な支援を行うこと。

〇 規定されている。

 選択肢1で引用しました、マンション管理適正化法第92条2号、
二 マンションの管理の適正化に関し、管理組合の管理者等その他の関係者に対し技術的な支援を行うこと。
 と規定されています。



4 マンションの管理に関する紛争の処理を行うこと。

X 規定がない。

 選択肢1で引用しました、マンション管理適正化法第92条には、設問の「マンションの管理に関する紛争の処理を行うこと。」
 は、規定がありません。



答え: 4

 本当に、マンション管理士試験において、マンション管理適正化推進センターが行う業務なんて、知識として不要です。
 この試験官は、糾弾されるべきです。
 マンション管理士を目指す人たちを愚弄した出題です

《タグ》マンション管理適正化法 マンション管理適正化推進センターが行う業務 実に不適切な出題官

問49

〔問 49〕 マンション管理士に関する次の記述のうち、マンション管理適正化法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。

ア マンション管理士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。マンション管理士でなくなった後においても、同様とする。

〇 正しい。 マンション管理士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。マンション管理士でなくなった後においても、同様。
  平成30年 マンション管理士試験 「問48」 、平成29年 マンション管理士試験 「問47」 など。

 こんな、「問49」で、個数問題とは! 

 この出題は、もう鉄板。

 機密保持義務は、マンション管理適正化法第42条
(秘密保持義務)
 第四十二条 
マンション管理士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。マンション管理士でなくなった後においても、同様とする
 とあり、
 マンション管理適正化法第42条によれば、設問の「マンション管理士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。マンション管理士でなくなった後においても、同様とする」は、正しい。

 違反者は、1年以下の懲役又は、30万円以下の罰金です。



イ マンション管理士でない者は、マンション管理士又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない。

〇 正しい。 マンション管理士と名乗れるのは、マンション管理士の資格者だけです。
 平成30年 マンション管理士試験 「問48」 、平成29年 マンション管理士試験 「問47」 など。

 この出題も、鉄板だ。


 名称の使用制限は、マンション管理適正化法第43条
(名称の使用制限)
 第四十三条 
マンション管理士でない者は、マンション管理士又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない
 とあり、
 マンション管理適正化法第43条によれば、設問の「マンション管理士でない者は、マンション管理士又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない」は、正しい。

 違反者は、30万円以下の罰金です。



ウ マンション管理士試験に合格しても、国土交通大臣(指定登録機関が登録の実施に関する事務を行う場合は指定登録機関。この問いにおいて同じ。)の登録を受けなければ、マンション管理士の名称を使用することはできない。

〇 正しい。 試験合格では、まだ身元が分からない。
 
 まず、マンション管理士とは、マンション管理適正化法第2条5号、
「(定義)
 第二条 
   
五 マンション管理士 第三十条第一項の登録を受け、マンション管理士の名称を用いて、専門的知識をもって、管理組合の運営その他マンションの管理に関し、管理組合の管理者等又はマンションの区分所有者等の相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うことを業務(他の法律においてその業務を行うことが制限されているものを除く。)とする者をいう。
 とあり、
 マンション管理士試験に合格しただけでは、「資格を有するだけで」合格した後、指定の「登録」を受けて初めて、マンション管理士と名乗ることができます。

 それは、マンション管理士の試験は、禁錮刑中の人でも、心身に故障があっても受けられ、成績がいいと試験には合格できるからです。


 そこで、マンション管理士試験に合格すると、試験元の「公益財団法人 マンション管理センター」から、「登録申請書」が送られてきます。
 このマンション管理士登録申請書には、
  ・氏名 生年月日 性別 住所 本籍 試験の合格年月日 合格証書番号 を記入し
  ・添付書類として、住民票 
登録の欠格事由に該当しない誓約書 と
  また、令和2年1月現在、登録手数料 4,250円(振込)、 
登録免許税 9,000円(収入印紙) も添えて提出します。
  マンション管理士には、「登録免許税」がかかりますよ。

 登録の欠格事項は、マンション管理適正化法第30条(
改正 令和元年9月14日
(登録)
 第三十条 マンション管理士となる資格を有する者は、国土交通大臣の登録を受けることができる。ただし、次の各号のいずれかに該当する者については、この限りでない。
   一 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
     (
注:改正前は、1号に「成年被後見人又は被保佐人」があったが、削除された。6号に変更、追加された
   二 この法律の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
   三 第三十三条第一項第二号又は第二項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から二年を経過しない者
   四 第六十五条第一項第二号から第四号まで又は同条第二項第二号若しくは第三号のいずれかに該当することにより第五十九条第一項の登録を取り消され、その取消しの日から二年を経過しない者
   五 第八十三条第二号又は第三号に該当することによりマンション管理業者の登録を取り消され、その取消しの日から二年を経過しない者(当該登録を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しの日前三十日以内にその法人の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。第三章において同じ。)であった者で当該取消しの日から二年を経過しないもの)
   六 心身の故障によりマンション管理士の業務を適正に行うことができない者として国土交通省令で定めるもの(
注:追加
2 前項の登録は、国土交通大臣が、マンション管理士登録簿に、氏名、生年月日その他国土交通省令で定める事項を登載してするものとする。

 です。


  注:今回の改正により、登録の際に提出が必要であった「登記されていないことの証明書(成年後見人制度の利用者として登記していないことの証明書)」及び「本籍地の市区町村の長の証明書(身分証明書)」が不要となっています。

  マンション管理士登録申請書等によって、欠格事項が審査され(本当か?)、簡易書留で、「マンション管理士登録証」が送られてきます。

  という訳で、設問の「マンション管理士試験に合格しても、国土交通大臣(指定登録機関が登録の実施に関する事務を行う場合は指定登録機関。この問いにおいて同じ。)の登録を受けなければ、マンション管理士の名称を使用することはできない」は、正しい。


 なお、「指定登録機関」については、マンション管理適正化法第36条及び同法第37条
(指定登録機関の指定等)
 第三十六条 国土交通大臣は、国土交通省令で定めるところにより、その指定する者(以下「
指定登録機関」という。)に、マンション管理士の登録の実施に関する事務(以下「登録事務」という。)を行わせることができる。
2 指定登録機関の指定は、国土交通省令で定めるところにより、登録事務を行おうとする者の申請により行う。


第三十七条 指定登録機関が登録事務を行う場合における第三十条、第三十一条、第三十二条第一項、第三十四条及び第三十五条第二項の規定の適用については、これらの規定中「国土交通大臣」とあり、及び「国」とあるのは、「指定登録機関」とする。
2 指定登録機関が登録を行う場合において、マンション管理士の登録を受けようとする者は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を指定登録機関に納付しなければならない。
3 第一項の規定により読み替えて適用する第三十五条第二項及び前項の規定により指定登録機関に納付された
手数料は、指定登録機関の収入とする。
 とあります。



エ 国土交通大臣は、マンション管理士登録簿に、氏名、生年月日、事務所の所在地その他国土交通省令で定める事項を登載してマンション管理士の登録をする。

X 誤っている。 誰でも事務所を開設している訳ではないので、事務所の所在地は登載がない。
  平成26年 マンション管理士試験 「問48」 

 登載事項は、選択肢ウで引用しました、マンション管理適正化法第30条2項
 「2 前項の登録は、国土交通大臣が、
マンション管理士登録簿に、氏名、生年月日その他国土交通省令で定める事項を登載してするものとする
 を受けた、マンション管理適正化法施行規則第26条、
(マンション管理士登録簿の登載事項)
 第二十六条 法第三十条第二項に規定する国土交通省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
   
一 住所
   二 本籍(日本の国籍を有しない者にあっては、その者の有する国籍)及び性別
   三 試験の合格年月日及び合格証書番号
   四 登録番号及び登録年月日

2 国土交通大臣は、登録講習機関から第四十二条の十一第一項の報告書の提出があったとき、又は第四十二条の十四の規定により講習の課程を修了したことを証する書面を交付したときは、講習の修了年月日及び講習を行った機関の氏名又は名称をマンション管理士登録簿に記載するものとする。
3 マンション管理士登録簿の様式は、別記様式第五号によるものとする。

 とあり、
 マンション管理適正化法施行規則第26条1項によれば、設問の内「事務所の所在地」は、登載事項ではないため、設問は誤りです。



1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ

答え: 3 (正しいものは、ア、イ、ウ の3つ。)

 選択肢ウで詳細に解説したので、時間がかかった。
 問題としては、過去問をやっていれば、易しい。

 しかし、「問46」でも個数問題を出し、またこの「問49」でも個数問題を出すとは、出題官のセンスを大いに疑う。

 
マンション管理適正化法第30条は、令和元年9月14日施行で改正があったので、令和2年は、出題されるぞ。

《タグ》個数問題 マンション管理適正化法 マンション管理士 秘密保持義務 名称の使用制限 管理士の定義 登載事項

問50

〔問 50〕 管理業務主任者に関する次の記述のうち、マンション管理適正化法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 マンション管理業者は、既存の事務所がマンション管理適正化法第 56 条第1項の管理業務主任者の設置に関する規定に抵触するに至ったときは、3月以内に、同項の規定に適合させるため必要な措置をとらなければならない。

X 誤っている。 抵触した時は、2週間以内に適合させること。 3ヵ月以内ではない。
  平成28年 管理業務主任者試験 「問47」 

 管理業務主任者が適切に設置されていないときは、マンション管理適正化法第56条3項
(管理業務主任者の設置)
 第五十六条 マンション管理業者は、その事務所ごとに、事務所の規模を考慮して国土交通省令で定める数の成年者である専任の管理業務主任者を置かなければならない。ただし、人の居住の用に供する独立部分(区分所有法第一条に規定する建物の部分をいう。以下同じ。)が国土交通省令で定める数以上である第二条第一号イに掲げる建物の区分所有者を構成員に含む管理組合から委託を受けて行う管理事務を、その業務としない事務所については、この限りでない。
2 前項の場合において、マンション管理業者(法人である場合においては、その役員)が管理業務主任者であるときは、その者が自ら主として業務に従事する事務所については、その者は、その事務所に置かれる成年者である専任の管理業務主任者とみなす。
3 マンション管理業者は、第一項の規定に抵触する事務所を開設してはならず、既存の事務所が同項の規定に抵触するに至ったときは、二週間以内に、同項の規定に適合させるため必要な措置をとらなければならない。
 とあり、
 マンション管理適正化法第56条3項によれば、「既存の事務所が同項の規定に抵触するに至ったときは、”
二週間以内”に、同項の規定に適合させるため必要な措置をとらなければならない」とあり、設問の「3月以内に」は、誤りです。

 なお、管理業務主任者の数は、30管理組合に一人です。(マンション管理適正化法施行規則第61条)



2 管理業務主任者は、管理組合に管理事務に関する報告をするときは、説明の相手方に対し、管理業務主任者証を提示しなければならない。

〇 正しい。 理業務主任者は、管理組合に管理事務に関する報告をするときは、説明の相手方に対し、管理業務主任者証を提示しなければならない。
  平成30年 管理業務主任者試験 「問50」 、 令和01年 マンション管理士試験 「問47」 も。

  管理業務主任者証の提示は、上の「問47」でも引用しました、マンション管理適正化法第77条、
(管理事務の報告)
 第七十七条 マンション管理業者は、管理事務の委託を受けた管理組合に管理者等が置かれているときは、国土交通省令で定めるところにより、定期に、当該管理者等に対し、
管理業務主任者をして、当該管理事務に関する報告をさせなければならない
2 マンション管理業者は、管理事務の委託を受けた管理組合に管理者等が置かれていないときは、国土交通省令で定めるところにより、定期に、説明会を開催し、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等に対し、
管理業務主任者をして、当該管理事務に関する報告をさせなければならない
3 管理業務主任者は、前二項の説明をするときは、説明の相手方に対し、管理業務主任者証を提示しなければならない
 とあり、
 マンション管理適正化法第77条3項によれば、設問の「管理業務主任者は、管理組合に管理事務に関する報告をするときは、説明の相手方に対し、管理業務主任者証を提示しなければならない」は、正しい。



3 管理業務主任者は、その事務を行うに際し、マンションの区分所有者等その他の関係者から請求があったときは、管理業務主任者証を提示しなければならない。

〇 正しい。 管理業務主任者は、その事務を行うに際し、マンションの区分所有者等その他の関係者から請求があったときは、管理業務主任者証を提示しなければならない。

  平成29年 管理業務主任者試験 「問49」 、

 管理業務主任者証の提示は、マンション管理適正化法第63条
(管理業務主任者証の提示)
 第六十三条 
管理業務主任者は、その事務を行うに際し、マンションの区分所有者等その他の関係者から請求があったときは、管理業務主任者証を提示しなければならない
 とあり、
 設問の「管理業務主任者は、その事務を行うに際し、マンションの区分所有者等その他の関係者から請求があったときは、管理業務主任者証を提示しなければならない」は、正しい。



4 管理業務主任者としてすべき事務を行うことを禁止された場合において、その管理業務主任者がその事務の禁止の処分に違反したときは、国土交通大臣は、その登録を取り消さなければならない。

〇 正しい。 管理業務主任者としてすべき事務を行うことを禁止された場合において、その管理業務主任者がその事務の禁止の処分に違反したときは、国土交通大臣は、その登録を取り消さなければならない。

  平成29年 管理業務主任者試験 「問49」 、

 まず、管理業務主任者の登録の取り消しは、マンション管理適正化法第65条、
(登録の取消し)
 第六十五条 
国土交通大臣は、管理業務主任者が次の各号のいずれかに該当するときは、その登録を取り消さなければならない。
   一 第五十九条第一項各号(第五号を除く。)のいずれかに該当するに至ったとき。
   二 偽りその他不正の手段により登録を受けたとき。
   三 偽りその他不正の手段により管理業務主任者証の交付を受けたとき。
   
 前条第一項各号のいずれかに該当し情状が特に重いとき、又は同条第二項の規定による事務の禁止の処分に違反したとき
2 国土交通大臣は、第五十九条第一項の登録を受けている者で管理業務主任者証の交付を受けていないものが次の各号のいずれかに該当するときは、その登録を取り消さなければならない。
   一 第五十九条第一項各号(第五号を除く。)のいずれかに該当するに至ったとき。
   二 偽りその他不正の手段により登録を受けたとき。
   三 管理業務主任者としてすべき事務を行った場合(第七十八条の規定により事務所を代表する者又はこれに準ずる地位にある者として行った場合を除く。)であって、情状が特に重いとき。

 とあり、
 設問の「事務の禁止の処分違反」は、マンション管理適正化法第65条1項4号「四 前条第一項各号のいずれかに該当し情状が特に重いとき、又は
同条第二項の規定による事務の禁止の処分に違反したとき」にあります。

 では、前条の第64条2項は、
 「(指示及び事務の禁止)
 第六十四条 国土交通大臣は、管理業務主任者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該管理業務主任者に対し、必要な指示をすることができる。
   一 マンション管理業者に自己が専任の管理業務主任者として従事している事務所以外の事務所の専任の管理業務主任者である旨の表示をすることを許し、当該マンション管理業者がその旨の表示をしたとき。
   二 他人に自己の名義の使用を許し、当該他人がその名義を使用して管理業務主任者である旨の表示をしたとき。
   三 管理業務主任者として行う事務に関し、不正又は著しく不当な行為をしたとき。
2 国土交通大臣は、管理業務主任者が前項各号のいずれかに該当するとき、又は同項の規定による指示に従わないときは、当該管理業務主任者に対し、一年以内の期間を定めて、管理業務主任者としてすべき事務を行うことを禁止することができる
 です。

 そこで、マンション管理適正化法第65条1項4号によれば、設問の「管理業務主任者としてすべき事務を行うことを禁止された場合において、その管理業務主任者がその事務の禁止の処分に違反したときは、国土交通大臣は、その登録を取り消さなければならない」は、正しい。



答え: 1

 選択肢1の「2週間以内」など、数字は、憶える他にない。
 問題としては、易しい。

《タグ》 マンション管理適正化法 管理業務主任者の設置に関する規定に抵触 2週間以内 管理事務の報告 管理業務主任者証を提示 登録の取り消し 

ここまで、問50  解説終わり。


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2020年 2月25日:再度、見直した。
2020年 2月18日:「問31」個人情報保護法の解説も終わり。
2020年 1月29日:どうにか、第1版としての解説が終わった。
 ファイルの保存エラーがあり大変だったが。
2020年 1月14日:気を取り直して、再度「問26」〜解説を始めた。
2020年 1月13日:再度、問題文の記入。法的根拠、j条文など入。
2020年 1月13日:ファイルの保存でエラーがあり、「問26」から、全部なくなった。
「問39」まで、解説が終わったのに! また、解説をやるのは、ウンザリだけど・・・
解説開始:2019年12月 7日:法の条文、規約、根拠など入れた。次は、文章を纏めて行く。
2019年11月28日〜
問題文 Up:2019年11月25日〜27日

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