★★       条 文 の 解 説        ★★

建物の区分所有等に関する法律

(この解説においては、略称:区分所有法 と言う)

第2章 団地

第六十五条 団地建物所有者の団体
第六十六条 建物の区分所有に関する規定の準用
第六十七条 団地共用部分
第六十八条 規約の設定の特例
第六十九条 団地内の建物の建替え承認決議
第七十条 団地内の建物の一括建替え決議
   
都市再開発法による団地一括建替え

\-b.第69条(団地内の建物の建替え承認決議)から 第70条(団地内の建物の一括建替え決議)まで

マンション管理士・管理業務主任者を目指す方のために、区分所有法を条文ごとに解説しました。 

試験問題は、過去の問題から出されるのではありません。条文から出題されます。

条文を勉強することが、合格への道です。

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(団地内の建物の建替え承認決議)

第六十九条

1項  一団地内にある数棟の建物(以下この条及び次条において「団地内建物」という。)の全部又は一部が専有部分のある建物であり、かつ、その団地内の特定の建物(以下この条において「特定建物」という。)の所在する土地(これに関する権利を含む。)が当該団地内建物の第六十五条に規定する団地建物所有者(以下この条において単に「団地建物所有者」という。)の共有に属する場合においては、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める要件に該当する場合であつて当該土地(これに関する権利を含む。)の共有者である当該団地内建物の団地建物所有者で構成される同条に規定する団体又は団地管理組合法人の集会において議決権の四分の三以上の多数による承認の決議(以下「建替え承認決議」という。)を得たときは、当該特定建物の団地建物所有者は、当該特定建物を取り壊し、かつ、当該土地又はこれと一体として管理若しくは使用をする団地内の土地(当該団地内建物の団地建物所有者の共有に属するものに限る。)に新たに建物を建築することができる。

 一  当該特定建物が専有部分のある建物である場合 その建替え決議又はその区分所有者の全員の同意があること。

 二  当該特定建物が専有部分のある建物以外の建物である場合 その所有者の同意があること。

過去出題 マンション管理士 R02年、R01年、H30年、H25年、H22年、H17年、
管理業務主任者 H19年、H17年、

*この条文も一度で理解できる人は少ない。 やたら”当該”と”建物”が多く、またカッコ書きもありで分かり難い。でも、団地の建替えも必ず、出題されるので読んでおくこと。

★区分所有法が規定する団地内には、区分所有建物と戸建てが含まれているので、以下の条文においても、「専有部分のある建物=区分所有建物」と「専有部分がある建物以外の建物=戸建てなど」と取り扱い方に、区別をしているので、規定が面倒になっている。

★特定建物=建替えを希望する建物

★土地「これに関する権利を含む」...土地に対する所有権の「共有」の場合と借地権・地上権などの「準共有」を含むということ。

★前提となるのは、多数決による区分所有法第62条で定める一棟の「建替え決議。それを何とか「団地」関係でも応用できないかと苦労した規定。

<参照>区分所有法 第62条:(建替え決議)

第六十二条  集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。


民法からの脱出 〜「全員の合意」から「多数決原理の採用」〜


 一棟での建替えを定めている区分所有法第62条の規定もそうですが、民法の考え方では、共有している建物を壊すことになる建替えなどは、1つの物を複数の人が所有するという「共有」の考えでの「共有物の変更」に該当し、「共有物の変更」行為は「他の共有者の同意(全員の賛成)」が無ければできなません。
 しかし、マンション(区分所有建物)という、多数の人々が団体で共同生活をする建物の持つ特異性から、
民法で規定する共有している全員の合意は得難いとの現実的な認識で、区分所有法では、民法の「共有者全員の合意」を変更し一棟の建替えにおいては、「区分所有者及び議決権の各4/5以上」の多数決で共有物である建物を壊すことができることにしています。(第62条)

 1つの棟の建替えの場合でも指摘しましたが、この民法の共有の考えと団体での多数決という特別な状況を扱う区分所有法の折衷を図ったことで、多数による、少数の人の所有権や財産権など権利侵害の問題はあります。
 1つの棟以上に複数の棟を抱える団地では、1つの棟よりも区分所有者(個人)の権利保護が必要となりますので注意してください。

<参考>民法 第251条:(共有物の変更)

第二百五十一条  各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

 

  


★団地内の建物も建替えができる

  団地内であっても団地外でもあっても、建物は老朽化だけでなく、地震や津波、土砂崩れ、ガス爆発などの災害によっても、建物としての終わりが来て「建替え」が必要となります。
 また、老朽化していなくても、多くの建物の所有者が建替えを希望すれば、建替えはできます。
 それに備えた規定です。
 

★言葉の使い分け、「建替え決議」と「建替え承認決議」に注意

  法律ですから、まず、言葉の使い分けに注意してください。そこで、定義に戻ります。

 ◎ 「建替え決議」...建替えが議題のとき、該当の建物の区分所有者が、区分所有者及び議決権の各4/5以上の賛成で行う集会の決議。この集会には、該当の建物の区分所有者以外は参加できない。(第62条)

 ◎ 「建替え承認決議」...ある棟が団地関係にある場合には、勝手にその棟の建替え決議だけで建替えを認めることはできません。
   その棟の建替えにより、今までより高い階数の建物が建てば、近辺の棟への日照や風害の問題も新しく発生し、また奇抜なデザインの建物が建つと、団地全体の景観が変わるなど、団地内の他の棟の区分所有者や団地を構成している戸建の所有者の利害に大きくかかわります。
   そこで、区分所有法で定める団地関係にあれば、ある棟の建替え決議の他に、団地全体の敷地共有者(団地管理組合)の集会において、議決権の3/4以上がその棟の建替えに賛成することも必要としました。
 それが、「建替え
承認決議」です。(第69条) ある棟が建替えをすることを団地全体の集会で認めた・承認したということです。
   団地では団地全体での、この「建替え承認決議」がなければ、ある棟が「建替え決議」をしても、建替えができないということになります。該当の建物の区分所有者以外も参加している集会で了承を得るということです。

 なお、区分所有者全員の承諾があれば、集会を開催せずに、書面または電磁的方法により決議はできます。(区分所有法第45条1項及び3項

★団地内建物の建替えパターン
 
 敷地や集会所など附属の施設が共有の関係にある団地では、団地全体の管理ができます。(第65条
  そして、団地内での建替えには、「土地が共有」であれば、本第69条と次の第70条によって3のパターンが区分所有法では規定されています。

  1.建替えを希望する一つの棟(特定建物という)だけの建替え(区分所有法第69条1項〜5項)

  2.建替えを希望する複数の棟(特定建物)の建替え(区分所有法第69条6項、7項)

  3.団地内の全部の棟の建替え(一括建替え 区分所有法第70条1項〜4項)

★団地での建替えの概要

 A.棟別建替え(1つの棟及び複数の棟の建替え)(第69条)
   上のパターンの内、1と2は、敷地を共有する団地内の特定の建物の建替えは、1つの棟でも複数の棟でも、その棟の区分所有者及び議決権の各5分の4以上の賛成による「建替え決議」のほか、団地の管理組合の全体集会で、議決権(敷地割合)だけの4分の3以上の
承認が得られれば、実施できるようにしました。
 一棟だけの建替えも、複数の棟、団地内にある戸建も建替え可能です。ここの団地内には、
区分所有建物以外の戸建が存在してもかまいません

  しかし、団地関係の中に、附属施設である集会所を共有している戸建てが入っているような場合、通常、戸建ての土地は、戸建ての人だけの個人所有でしょうから、その場合にはその個人単独所有の土地は除いて、土地が共有になっている建物だけでの適用となります。

 B.団地内の全棟一括建替え(第70条)
   上のパターン3の、団地内の全部の棟の建替えには、団地の管理組合の全体集会で、区分所有者及び議決権の各5分の4以上の賛成と、その全体集会において各棟での、それぞれ区分所有者の数と議決権(敷地割合)の3分の2以上の賛成が得られれば、全建物の一括建替えの実施も可能としました。
  なお、一括建替えができる団地関係は、全部が区分所有建物で構成されていて、さらに注意しなければならないのは「団地規約」があることが条件とされています。
戸建などの非区分所有建物が団地関係にあれば、一括建替えは出来ません。区分所有法第70条の適用は出来ません。

  団地の管理組合の集会で決議がされる状況は以下のようになります。

◎ 団 地 で の 建 替 え 条 件
対象 棟別建替え 全部の棟
1つの棟 複数の棟
区分所有法 第69条1項〜5項 第69条6項、7項 第70条1項〜4項
決議の読み方 建替え承認決議 一括建替え承認決議 一括建替え決議
団地内の建物

1.最低一棟は区分所有建物(専有部分のある建物)

2.非区分所有建物(戸建等)も可

1.最低一棟は区分所有建物(専有部分のある建物)

2.非区分所有建物(戸建等)も可

区分所有建物に限る戸建等は入らない。
全体の決議の前に

1.区分所有建物の場合...その棟の建替え決議(区分所有者の数及び議決権の数4/5以上の賛成) 又は全員の合意があること

2.非区分所有建物...その所有者の合意があること

1.区分所有建物の場合...その棟の建替え決議(区分所有者の数及び議決権の数4/5以上の賛成) 又は全員の合意があること

2.非区分所有建物...その所有者の合意があること

1.団地全体の規約があること

2.団地集会で、その棟ごとに区分所有者の数及び議決権の数各2/3以上の賛成があること(一棟でも賛成がないと、できない)

団地管理組合の決議 議決権(敷地割合)の3/4以上(注:敷地持分だけ。区分所有者の数は入っていない) 議決権(敷地割合)の3/4以上(注:敷地持分だけ。区分所有者の数は入っていない) 区分所有者の数及び議決権の数(敷地割合)の各4/5以上

 *団地内での一つの棟の建替えの場合

  

  


★団地内に複数の棟の区分所有建物があり、敷地は他の棟とも共有(準共有)しているとき

    1.その棟が区分所有の専有部分があるとき(区分所有建物)は、区分所有者及び議決権の各5分の4による建替決議が成立しているか、持主全員が同意(集会の手続きをしなくていい)していること、

    2.その棟が区分所有の建物でないとき(非区分所有建物。個人で一棟を持っているとか戸建など)は、その所有者が同意していること、

   が前提で、

    3.全体の団地管理組合の集会で議決権の4分の3(75%)以上の多数が承認すれば、建替えを希望する棟は壊して新たな建物が建築できる。

   (注)この団地の建替では、他の決議方法と違って区分所有者の数は入っていない。

       議決権(敷地の共有持分の割合 第69条2項)だけが規定されている。

★団地内建物の建替えの趣旨

 本第69条は団地内にある一部の建物の建替えを団地全体(団地管理組合)として承認する決議つまり「建替え承認決議」に関する規定です。

 この第69条(団地内の建物の建替え承認決議)の規定と次の第70条(団地内の建物の一括建替え決議)は、平成14年に新規に設定されたものです。

★全員の同意から、多数決へ 〜民法の緩和〜

  平成14年の改正前でも、単独敷地に存在する単独建物(1棟)の建替えに関しては規定がありましたが、複数の建物が存在する団地における建替えに関しては規定がなく民法第251条の「共有物の変更」などの解釈に委ねられていました。

 区分所有法第65条で規定される「団地」とは一定のまとまりのある土地及びその土地の上の建物群を指称する概念ですが、そこで規定される団地においても各建物とその敷地が完全に独立していれば問題なく「単独建物の建替え決議」で処理することができます。(区分所有法第62条参照

 

 しかし、建物群が存在する土地が他の者との共有となっている場合には、土地に関する共有者の関係は区分所有法に規定がありませんでしたから、民法の「共有の原則」で規律され、その民法によれば、共有の土地の上に建物を建築することは、土地上に永続的な工作物を設置し土地の使用を永続的に固定することになりますか、らこの行為は共有関係での「変更行為」に該当して「共有者全員の合意」が必要とされます(民法第251条)。

<参照>民法 第251条:(共有物の変更); 

 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

 従って、ある複数の建物群において殆どの所有者が建替えを希望しても敷地を共有している他のだれか一人でも、建替えを承諾(同意)しない場合は、共有物の変更行為である建替えが不可能ということになります。

 これに対しては、共有者は共有物をその用法に従い、持分に応じて使用できることもまた民法の原則であり(民法第249条)、その土地は建物の敷地として使用することが共有者全員の合意事項であるはずですから、建替えによる新築建物の敷地とすることもその用法に従った使用ということもできるようにも思われます。

<参照>民法 第249条 (共有物の使用)

第二百四十九条  各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

 しかし、その土地を建物の敷地として使うということはあくまでも現在の建物に関する合意であり、新規に建築される、今までとは異なった建物についての合意はされていないといわざるを得ませんから、建物を「建替えること」は建物の敷地としての利用からみると、これは民法の規定に従うことになり、建替えは共有物の変更というべきで、土地の共有者全員の「合意」が必要となります。 
 しかし、現実に土地共有者全員の合意を得ることは、至難の業でこれでは共有者の多数が建替えを希望しても先に進めません。
 そこで、区分所有法での建物の区分所有権と土地の敷地利用権が分離処分ができないという点からも、建物の建替えを促進するため土地共有者全員の「合意」という民法の要件を緩和し、「特別多数決」にした規定が区分所有法第69条です。


 この条件に合致すれば、区分所有法が民法の規定に先立って適用される、つまり、民法の特別法として制定されているということです。

★団地内での建替えの要件

 団地内のある建物を取り壊して新しい建物を建築するという建替えに対する団地での承認決議が成立する要件は、まず

   @敷地を共有又は準共有(借地権等の場合)する2棟以上の建物が存在し、

   Aそのうちの少なくとも一棟は区分所有建物となっている建物である ことです。

   @の要件は、1筆の土地の上に複数の建物が建っている場合にその土地が団地建物所有者全員の共有(または賃借権などでの準共有)になっている場合や、数筆の土地の上に別々の建物が建っていても、その数筆の土地が団地を構成する建物所有者の全員の共有(または準共有)になっている場合ですが、これらは団地関係の規定として当然であり、Aの要件も区分所有法として民法の規定の変更ですからこれまた当然です。

  

   従って、「@敷地を共有又は準共有(借地権等の場合)する2棟以上の建物が存在」を満たしても全部単独所有の一棟の建物の場合でAの「そのうちの少なくとも一棟は区分所有建物となっている建物である」要件を満たさない場合は、第69条の適用はなく民法の原則どおりの取扱いとなります。

 例えば、1筆の土地を、親族達で共有していて、各自が戸建てをその土地の上に建てている場合には、区分所有建物ではないため、本第69条の適用がなく、この場合は、民法の共有に基づき「全員の合意」がなければ、建替えはできません。

 もっとも、区分所有法第1条の要件(大まかにいうと、構造上の独立性と利用上の独立性)を満たせば戸建ての建物も区分所有建物に変更できますから、建物のうちのどれか一棟が区分所有建物になれば本第69条の適用が受けられます。

 次に、@とAの要件を満たすと、団地を定義する第65条の要件も土地の共有ということにより当然満たしていますから、これらの建物所有者は当然に団体(団地管理組合)を構成するため、
 B番目として、その団地建物所有者の団体(団地管理組合)又は団地管理組合が法人化されていれば団地管理組合法人の集会で議決権の3/4以上の多数の決議を得ることが必要です(1項)。
 ただ、建替え承認決議の場合の議決権は、通常の団地規約で定める区分所有者及び議決権という原則的な建物の管理に関する議決権ではなく、共有土地(敷地)の利用に関することから、別途に規約が存在しても、それとは無関係に「土地の持分」による議決権となることに注意が必要です(2項)。

団地では、議決権は、土地の持分割合による...一般の議決方法は、規約に別段の定めが無ければ、専有部分の床面積比(第30条、第38条、→第14条)だけど、団地全体の建替えなので敷地の共有持分の割合にした。規約での別段の定めは、無視される。
  団地規約でいかなる規定があっても、土地の持分割合であるため、事前に団地建物所有者ごとに、土地の持分割合を調査しておくこと。

団地建物所有者の数は、入っていない

 団地建物所有者の団体(団地管理組合)の集会の決議といっても、「建替え承認決議」が得られると、新たに建築される建物は、必ずしも現在の位置のままや同じ高さまた同じ大きさである必要はなく、既存の建物と比べて新しい建物では、建物の大きさや容積率は通常変動しますから、団地管理組合の集会の対象は共有関係にある土地の変更を承認しようとする場合であり、その当事者は本来土地の所有者であるべきですから、団地管理組合という組織やその集会という機関、更にはその議決という手段を用いていることは、すべて土地共有者とこの団地管理組合の構成員が同一であることから、土地共有者集会という別箇の組織を作るまでもないとして、法文上(形式上)建替え承認決議を団地管理組合の権限としたものに過ぎません。

 従って、団地管理組合集会の議決といっても実質的には、民法を基本とし、管理に関する事項ではなく、その「土地の変更行為」として全共有者の合意が必要ですから、この場合の議決権は団地管理組合の議決権一般とは異なり、その割合は建物共用部分の共有持分割合ではなく、「土地の共有持分の割合による」のであり(2項)、団地建物所有者数(区分所有者数)という頭数要件も採用されてはいません(1項)。

 即ち、区分所有法第69条は民法第251条の「全員の”持分”での合意」を、特例として「持分の”3/4以上”の合意」に緩和しただけであるといえますが、共有地の建替えの促進には一つの条件緩和として一応有効なものといえるでしょう。
 なお、この議決権の必要数を3/4以上にしたという数字は、区分所有法でいえば、エントランスや廊下などの建物の共用部分の変更(第17条1項)や規約の設定・変更(第31条1項)でも採用されている数字で、一応妥当性はあると支持されています。

 また、団地内建物の建替えが、団地内にある他の建物の将来の建替えに特別の影響を及ぼす場合には、影響を受けるのが区分所有建物なら、影響を受ける区分所有建物の議決権を有する3/4以上の賛成が必要などの制約があります。(5項)

★なお、団地での建替え承認決議の前に、当然ながら、棟での建替えが決まっていること

  C番目として、説明が後になりましたが、団地全体の建替え承認決議を受ける前に、建替えを希望する建物について、区分所有者及び議決権の各4/5以上による建替え決議、または所有者全員の建替えの同意(集会が不要)があることが必要です(1項)。

 これは、団地内で建替えを希望する建物が区分所有建物の場合は、その棟での建替え決議または建替えについて全員の同意が必要で、また、区分所有建物以外の場合(賃貸専用建物・戸建など)はその所有者の同意がこれにあたりますが、区分所有建物で管理組合がある場合や、それ以外の建物の場合で単に共有の場合には、当事者が複数ですからその同意は何らかの同意文書でその存在を証明できるでしょうが、区分所有建物でもその全部を1人の者が所有する場合や単独所有建物の場合には同意する相手方が不存在ですから、建替えの意思を外部に表示する何らかの方法がこれにあたるものといえるでしょう。

★建替え事業の進め方

 区分所有法では、一棟においても団地でも「建替え決議」までは定めていますが、その後の建替え事業の実施方法は規定されていません。
 そこで、建替え参加者の団体の存在、外部からの融資の問題などが浮上していました。

  それをうけ、平成14年「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」が制定されました。

「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」の概要はこちらを参照。


 


★団地での建替えの問題点

★ある棟は「建替え決議」をしたのに、団地総会で「建替え承認」がされなかったとき(否決)はどうなるのか

 区分所有法第69条は、団地全体としての建替え承認決議があれば、建替えを希望する棟の建替えができることを規定していますが、建替えを希望する棟の建替え決議があったのに、団地総会では認められないときは、その棟の建替えはできないのかの問題があります。

  ◎これは、かなり高度な問題のようで、解釈も確定していないようだ。
    しかし、建替えを希望する棟も団地として、全体の中の1つのであるため、個々の権利が優先するのではなく、団地全体の計画(マスタープラン)が優先するという解釈がある。
   これによると、建替えを希望する棟の建替えはできなく、ほったらかしとなるが。
  今後、議論される事項だ。

   *コンメンタール区分所有法や他の参考書も随分読んだが、この問題には触れていない。

★@各棟の建替え決議と、A団地総会での建替え承認決議の順序はあるのか。(どちらかが先行するのか)

 この第69条では、建替えを希望する棟での建替え決議(区分所有者及び議決権の各4/5以上の賛成)又は全員の同意があり、団地総会で建替え承認決議ができると規定していますが、先ず、団地総会で承認をして、あとから、建替えを希望する棟で建替え決議しても、この決議は有効でしょうが、本来は、建替えを希望する棟の建替え決議があることを前提に草案されたようです。(参考:マンション管理の知識 3訂版 P.166 ) 


★国土交通省が作成しています標準管理規約(団地型)は、団地内の数棟の建物は全部が区分所有建物を前提にしています。戸建の住宅は含まれていないことに注意してください。

<参考>標準管理規約(団地型) 49条: (団地総会の会議及び議事) 

第49条 団地総会の会議(WEB会議システム等を用いて開催する会議を含む。)は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。

団地総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。

3 次の各号に掲げる事項に関する団地総会の議事は、前項にかかわらず、 組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。
   一 規約の制定、変更又は廃止(第72条第一号の場合を除く。)
   二 土地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの及び建築物の耐震改修の促進に関する法律第25条第2項に基づ
く認定を受けた建物の耐震改修を除く。)
   三 その他団地総会において本項の方法により決議することとした事項

建替え承認決議は、第2項にかかわらず、議決権(第48条第1項にかかわらず、建替えを行う団地内の特定の建物(以下「当該特定建物」という。)の所在する土地(これに関する権利を含む。)の持分の割合による。第6項において同じ。)総数の4分の3以上で行う。

5 当該特定建物の建替え決議又はその区分所有者の全員の合意がある場合における当該特定建物の団地建物所有者は、建替え承認決議においては、いずれもこれに賛成する旨の議決権を行使したものとみなす

6 建替え承認決議に係る建替えが当該特定建物以外の建物(以下「当該他の建物」という。)の建替えに特別の影響を及ぼすべきときは、建替え承認決議を会議の目的とする総会において、当該他の建物の区分所有者全員の議決権の4分の3以上の議決権を有する区分所有者が、建替え承認決議に賛成しているときに限り、当該特定建物の建替えをすることができる。

一括建替え決議は、第2項にかかわらず、組合員総数の5分の4以上及び議決権(第48条第1項にかかわらず、当該団地内建物の敷地の持分の割合による。)総数の5分の4以上で行う。ただし、当該団地総会において、当該各団地内建物ごとに、それぞれその区分所有者の3分の2以上及び議決権(第48条第1項に基づき、別表第5に掲げる議決権割合による。)総数の3分の2以上の賛成がなければならない。

敷地分割決議は、第2項にかかわらず、組合員総数の5分の4以上及び議決権(第48条第1項にかかわらず、当該団地内建物の敷地の持分の割合による。)総数の5分の4以上で行う。

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〔※管理組合における電磁的方法の利用状況に応じて、次のように規定〕

 (ア)電磁的方法が利用可能ではない場合


9 前8項の場合において、書面又は代理人によって議決権を行使する者は、出席組合員とみなす。


 (イ)電磁的方法が利用可能な場合

9 前8項の場合において、書面、電磁的方法又は代理人によって議決権を行使する者は、出席組合員とみなす。

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10 第3項第一号において、規約の制定、変更又は廃止が一部の組合員の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。この場合において、その組合員は正当な理由がなければこれを拒否してはならない。

11 第3項第二号において、土地及び共用部分等の変更が、専有部分又は専用使用部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分を所有する組合員又はその専用使用部分の専用使用を認められている組合員の承諾を得なければならない。この場合において、その組合員は正当な理由がなければこれを拒否してはならない。

12 団地総会においては、第45条第1項によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる。

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第六十九条

2項  前項の集会における各団地建物所有者の議決権は、第六十六条において準用する第三十八条の規定にかかわらず、第六十六条において準用する第三十条第一項の規約に別段の定めがある場合であつても、当該特定建物の所在する土地(これに関する権利を含む。)の持分の割合によるものとする。

過去出題 マンション管理士 R02年、
管理業務主任者 未記入

★第38条の規定にもかかわらず、議決権は、規約で別段の定めがあっても、土地の持分の割合

 <参照>区分所有法 第38条:(議決権) ; 

各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による。


区分所有法 第十四条:(共用部分の持分の割合) ; 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。

★団地での建替え承認の集会における議決権 〜敷地持分とした〜 区分所有者の数は入っていない



★団地では、議決権は、土地の持分割合による 〜規約での別段の定めができない〜

 一般の区分所有者の団体(管理組合)の集会(総会)での議決方法は、原則として、専有部分の床面積比(第30条、第38条、→第14条1項)だけど、規約で別段の定めができる(第14条3項)。

 しかし、共有している土地の上にある特定の建物を取り壊して、新たに建物を建築することは、もっぱら土地の共有持分権の問題であり、共有物の日常的な利用や管理のありかたを問題としていない。
そこで、議決権は、
民法の考えを尊重して、敷地の共有持分の割合にした。規約での別段の定めは、無視される。

  団地規約でいかなる規定があっても、議決権は土地の持分割合であるため、事前に団地建物所有者ごとに、土地の持分割合を調査しておくこと。

★土地「これに関する権利を含む」...土地に対する所有権の「共有」の場合と借地権・地上権などの「準共有」を含むということ。

★また、団地建物所有者の数は、議決権には入っていないことにも注意。

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第六十九条

3項  第一項各号に定める要件に該当する場合における当該特定建物の団地建物所有者は、建替え承認決議においては、いずれもこれに賛成する旨の議決権の行使をしたものとみなす。ただし、同項第一号に規定する場合において、当該特定建物の区分所有者が団地内建物のうち当該特定建物以外の建物の敷地利用権に基づいて有する議決権の行使については、この限りでない。

過去出題 マンション管理士 R02年、R01年、H22年、
管理業務主任者 未記入

★建替えの対象となった棟の各持主は、たとえ反対でも多数決の原理で、建替え賛成と”みなされる”

    でも、この建替対象棟以外の棟にも室(専有部分)を持って(別の敷地利用権がある)いる人は、別の棟の敷地利用権についての、議決権は別に行使できる。
 建替えを希望する棟では、建替え賛成とみなされるだけ。

★賛成とみなす 〜擬制の必要性が何故必要か〜

 建替え承認決議の議決権は、2項のとおり、土地持分の割合となりますが、建替え対象建物が区分所有建物の場合にはその棟の建替え決議での反対者の議決権も含めて建替え承認会議での議決権行使では全ての議決権が賛成票にカウントされる(”みなす”です)ものとして一棟の票の総取り方式が採用されています(3項)。

 これは、建替えを希望する棟での建替え決議に反対や無回答の人が、再度、団地全体の集会で反対をすることができるとすると、決着がつかない。また建替えしようとする棟から反対票がでるのはおかしいという趣旨で、建替え反対者も売渡請求権の行使等により、やがていなくなるというのもその理由の一つでしよう。

 なお、「みなす」ついての同じような規定は、一棟での建替えに関する合意(区分所有法第64条)も参考にしてください。

<参照>区分所有法 第64条 (建替えに関する合意)

第六十四条  建替え決議に賛成した各区分所有者、建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者及び区分所有権又は敷地利用権を買い受けた各買受指定者(これらの者の承継人を含む。)は、建替え決議の内容により建替えを行う旨の合意をしたものとみなす

 

  


区分所有建物以外の建物(戸建てなど)の建替えの場合は、そもそも民法第251条により共有者全員の合意(賛成)が必要ですから、全員が賛成しているため「みなす」必要はありません。
建替えに同意したらみなすことにより、もはやその撤回は許さないという効果はどの場合でも期待はできません。
このように区分所有建物以外の建物(戸建てなど)の場合も含めて”みなし”ている趣旨は不明です。

★建替えを希望する棟の議決権はすべて賛成となる

  団地の建替え承認決議で必要とされる土地の持分割合の3/4以上のうち、建替えを希望する棟の議決権は、たとえ反対者がいても、全部賛成として扱われますから、集計でも注意が必要です。

 ただし、賛成として総取りされる議決権はあくまでも建替えをする建物についての議決権ですから、同一人が団地の他の建物も所有している場合にはこの議決権は総取りの対象(みなし)とはならず自由に行使できることは上記の趣旨から当然です(3項但書)。

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第六十九条

4項  第一項の集会を招集するときは、第六十六条において準用する第三十五条第一項の通知は、同項の規定にかかわらず、当該集会の会日より少なくとも二月前に、同条第五項に規定する議案の要領のほか、新たに建築する建物の設計の概要(当該建物の当該団地内における位置を含む。)をも示して発しなければならない。ただし、この期間は、第六十六条において準用する第三十条第一項の規約で伸長することができる。

過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 未記入

★区分所有法第35条1項の通知:集会招集の通知原則少なくとも1週間前にだすこと → 2ヶ月前にする

<参照>区分所有法 第35条1項:(招集の通知);

 集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。

★団地での建替え承認を求める集会の招集: 一棟の建替え決議集会に合わせて、2ヶ月前にだすこと。
  

 団地での建物の建替え承認の集会もその重要性から、一棟の建替え決議の集会の通知と同じように(第62条4項)集会日(会日)より少なくとも、2ヶ月前(初日は不算入)に(規約でプラスだけ可)招集の通知を出すことになっています。建替え承認をするか否か十分にその内容を検討する時間を与えます。
 通知の相手方は、団地の敷地を共有している団地建物の全所有者です。

★集会の招集者

 団地の建物の建替え承認決議を求める集会の招集も、通常の団地集会と同じように団地の管理者が招集します。(区分所有法第66条-->第34条1項)。
 また、団地建物所有者の1/5以上で議決権(区分所有法第66条-->第38条)の1/5以上を有する者が、団地の管理者に対して集会の招集を請求できます。(区分所有法第66条-->第34条3項)

★招集通知の通知事項

 団地でのある建物の建替え承認を求める集会の通知を出す際には、以下の項目が必要です。

 1.会議の目的たる事項
  団地の建物の建替え承認決議を求める集会の招集の通知には、会議の目的として
  「○○団地のXX棟の建替え承認決議に関する件」
  などこの集会は団地で建替え承認決議を行う集会であることを明確に示します。

 2.議案の要領
 
その際には、議案の要点と主な内容を示します。
  具体的には、
  「建替えを望んでいる特定の建物(XX棟)を取り壊し、またその建物がある土地と共に一体として管理・使用する団地内に新たに建物を建築することに賛成か反対か」
  をきくことになります。

 3.新たに建築する建物の設計の概要(当該建物の当該団地内における位置を含む。)
   建替えを希望する建物の設計の概要と、団地内における位置や形状を計画図などを添付します。
   
新たに建築される建物は、現在の土地と同一の場所だけに限らず、同じ団地内であれば、移動して建築することも可能なだけでなく、広さや階数も変更が可能ですから、この設計の概要は、非常に重要です。

   (注:参考)一棟の建替えでは、議案の要領のほかに

<参照>区分所有法 第62条5項

   一  建替えを必要とする理由
   二  建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
   三  建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
   四  建物につき修繕積立金として積み立てられている金額

と、集会日の前1ヶ月前に、「説明会」も必要。(第62条6項)

      

★団地全体での”建替え承認決議”の集会では、説明会の開催は義務付けられていない

  団地の建替え承認を求める集会では、建替えについての説明会は、もう該当の棟で済んでいると法の創案者は考えているようで、説明会の開催は義務付けられていません。
  団地としては、建替えるのはあくまでも、他人が入っている建物であって、自分が権利を持っている建物の取壊しや費用の負担の問題がないため団地全体の建替え承認の集会では説明会の開催が求められていないようです。
  団地全体の中で新しく建てる棟がどう影響するかを審議することになっています。(法の規定では、棟別集会と団地全体の集会の開催の前後関係が明確ではないが。)

 しかし、ある棟の建替えは団地全体に影響を与えますから、できるだけ、団地全体を対象とした説明会も開催する方がいいと思います。

       ◎建替集会の通知―(2ヶ月以上 プラスは可) ――>◎開催日(会日)

★招集等の特則

 建替え承認集会を招集する場合は、通常の集会の招集手続きにはよらず、その重要性から一棟の建替え決議の場合と同様に特別なものが規定されています。
 まず招集通知は会日より2ヶ月前(初日不算入)までに発することが必要で、この期間は規約で伸長(伸ばすこと)は認めますが短縮を認めません。

 更に、招集には「議案の要領」の他「新築建物の設計の概要」(敷地のどの位置に建てるかも含む。)をも通知する必要があります

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第六十九条

5項  第一項の場合において、建替え承認決議に係る建替えが当該特定建物以外の建物(以下この項において「当該他の建物」という。)の建替えに特別の影響を及ぼすべきときは、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者が当該建替え承認決議に賛成しているときに限り、当該特定建物の建替えをすることができる。

  一  当該他の建物が専有部分のある建物である場合 第一項の集会において当該他の建物の区分所有者全員の議決権の四分の三以上の議決権を有する区分所有者

  二  当該他の建物が専有部分のある建物以外の建物である場合 当該他の建物の所有者

過去出題 マンション管理士 H22年、H17年、
管理業務主任者 H17年、

★1号:当該他の建物が専有部分のある建物...影響を受けるのが、区分所有建物
★2号:当該他の建物が専有部分のある建物以外の建物...影響を受けるのが、区分所有建物以外の建物=戸建てや賃貸棟など

★特別の影響をうける建物の所有者の保護 〜団地全体での議決権の3/4以上の建替え承認を受ける前に〜

  ある棟の建替えが、団地内の既存の他の棟(当該他の建物)の将来の建替えに特別の影響を及ぼすような場合、例えば、建替える建物の容積が、今までよりも大きくて、将来残りの棟が建替えをするときに容積が不足して、小さな建物しか建てられないなど、には、

     1.影響を受ける建物が区分所有建物なら、他の棟の全体で議決権の3/4(75%)以上の賛成 (複数の棟が影響を受けることもある)

     2.影響を受ける建物が区分所有建物でない(単独所有の戸建や賃貸専用のマンションなど)なら、その所有者の賛成

    がなければ、その棟は建替えできない。

他の建物に特別の影響を及ぼす場合  〜判断は難しいが〜

 建替えを希望する建物(特定建物)は、建築基準法や都市計画法に従い、一団地認定・総合設計等各種の手法を用いて建替えを行うこととなりますが、その建替え希望の建物が、極論をすれば、団地内の容積率全部を使用しての建替えや、他の建物に十分な敷地(仮想敷地)を残さない計画も立てることができますから、これをそのまま承認すると残された他の建物に不利益な場合も生じてきます。

 そこで、建替え計画が団地内の他の建物の建替えに特別の影響を及ぼす(及ぼすべきとき)場合とは、建替えを希望する特定建物の建替えによって団地内の他の建物の建替えに顕著な支障が生じ、それがその建物の団地建物所有者の有する敷地利用権の具体的な侵害に当たると評価できる場合といえます。

  例えば、建替えを希望している建物の床面積が建替えによって大幅に増加し、敷地利用権の持分割合から、本来、他の建物に割り付けられる容積を浸食し、将来、団地内の他の建物が建替えをしようとした時に、制限を受けるような場合が考えられます。

 特別な影響ですから、単なる日照や騒音被害などの影響では足らず、裁判の判決でよく使われる「受忍限度を越える程度のもの」が必要です。

 この場合には、団地全体での建替え承認集会の際に、その特別の影響を蒙る建物所有者の同意(それが区分所有建物の場合はその議決権(土地持分)の3/4以上の賛成が必要となります(5項)。
 逆の捉え方として、特別の影響を受ける建物の1/4以上の反対があれば、建替えを希望しても建替えはできないということです。

 ただし、本5項は「当該建物全体」の建替えに支障という理由による規定であり、新築建物が「個々の建物所有者」に「受忍限度を越える」、例えば、日影(日照)被害とか通風や採光の悪化が生じる等の個別の問題は、人格的な利益にかかわりますので、団地の敷地の共有者で構成される集会の多数決で決定するのは無理があります。
 建替え承認決議がなされても、このような被害を受けた他の建物の団地建物所有者や賃借人、また他の居住者であっても、損害賠償や差止め請求など別途解決が図れる必要があり、建替え承認集会がそれらの被害を適法化するものではないことは勿論です。
 ただし、その影響が「受忍限度をこえない」軽微な場合には、これらの請求は認められないでしょう。
 しかし、「受忍限度を超える」と、例えば、建替えをしない棟の1階の住人から日照権の侵害による差止め請求などが認められると、たとえ、団地集会で建替え承認の決議がなされても、その建替えはできなくなります。

★団地集会での「承認」をする際に、確認すればいい

  影響を受ける建物の賛成・反対は、その団地での建替え承認を求める集会(総会)で、承認決議の際に確認をします。
 別途、影響を受ける建物(棟)ごとの集会は必要ありませんが、団地集会ではこの辺りの進行に注意が必要です。

★特別な影響がないのに、建替えに賛成しないと、権利濫用にもなることもある

  建替えによる影響が軽微な場合や一時的な場合に、建替えに反対を主張すると権利濫用となることもあります。


{設問}一団地内にA、B、Cの3棟の区分所有建物が存在し、その団地内の土地が3棟の区分所有者全員の共有になっている場合の建替え決議において、

A棟を建替えることによってB棟及びC棟の建替えに特別の影響を及ぼすべきときは、A棟のみの建替え決議のほか、B棟及びC棟において、それぞれ建替え承認決議が必要である。正しいか?

答え:正しくない。
区分所有法第69条5項によると、A棟の建替えが、B棟およびC棟の建替えに特別の影響をおよぼすときは、団地全体の集会で、影響を受けるB棟・C棟の区分所有者全員の議決権の4分の3以上の賛成があればいい。
「B棟、C棟において、それぞれ建替え承認決議が必要」は誤り 。

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第六十九条

6項  第一項の場合において、当該特定建物が二以上あるときは、当該二以上の特定建物の団地建物所有者は、各特定建物の団地建物所有者の合意により、当該二以上の特定建物の建替えについて一括して建替え承認決議に付することができる。

過去出題 マンション管理士 H17年、
管理業務主任者 未記入

★第1項...団地内の建物の承認決議をする場合
★特定建物...建替えを希望する建物

★複数の建物が当時に建替えを希望するなら → まとめて、1回の団地集会で、建替え承認決議をもらえる

  団地で建替え希望の棟が2つ以上になったら、各棟ごとの建替え承認決議もできるが、対象建替え希望棟の持主たちが合意すれば、団地集会で纏めて建替え承認決議をすることもできる。

 しかし、建替えを希望する区分所有建物(特定建物)は、各棟の「建替え」を目的とする集会で、前もって決議をしておくこと(次の7項参照)。建替え決議があれば、その棟の反対者も合意したものとみなされる。

★複数棟の一括決議 (これは、次の第70条に規定される団地全体の「一括建替え」とは違う。団地内の「複数の棟の一括建替え」の場合)

 団地内で建替えを希望する建物が複数ある場合には、その計画ごとに、団地集会で建替え承認集会を行うことも煩雑ですから、これらを団地全体で同一の議案として一括して議決することもできます。

 この利点としては、隣接した建物群が共同で建替えをすることにより、一棟だけの建替えに比べて建築内容が豊かになり、また屋外空間もゆとりのあるものとなり、団地全体での調和のとれた建物群として計画できることです。

 また、巨大な団地で、全棟の一括建替えが困難な場合、数棟ごとにまとめて徐々に建替えて行く時にも利用できます。

 ただし、前の5項でもあるように他の棟に特別の影響を及ぼす場合、その他の理由により、ある棟の建替え計画は否決され、他の棟の建替え計画は承認されるという事態も当然生じますから、否決される建替え計画と一括で団地の全体集会にかけると自分たちの棟の建替え計画案も一緒に否決されることもあります。

 従って、複数の計画案を一括議決とするか否かは、建替え承認決議を得ようとする各建物所有者の合意が必要とされます。そこで、みなし合意があります。 (7項)

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第六十九条

7項  前項の場合において、当該特定建物が専有部分のある建物であるときは、当該特定建物の建替えを会議の目的とする第六十二条第一項の集会において、当該特定建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、当該二以上の特定建物の建替えについて一括して建替え承認決議に付する旨の決議をすることができる。この場合において、その決議があつたときは、当該特定建物の団地建物所有者(区分所有者に限る。)の前項に規定する合意があつたものとみなす。

過去出題 マンション管理士 H22年、H17年、
管理業務主任者 未記入

★特定建物...建替えを希望する建物がこの7項では、専有部分のある建物=区分所有建物 であることに限定されている。

★まず、建替えを希望する各々の区分所有建物で、適法な、区分所有者及び議決権の各4/5以上の多数で「建替え決議」が成立していること。
  その「建替え決議」とは別に、建替えを希望する棟の区分所有者及び議決権の各4/5以上の多数で、他の建替えを希望する棟と一括して団地の建替え承認決議にかけるよう決議ができる。

合意があったとみなす...各棟で他の棟と「一括して団地の建替え承認決議にかけるよう決議」をすると、それらの棟は、6項で定める「各特定建物の団地建物所有者の合意により」が「合意のあったもの」とみなされる。建替えに対して反対を許さなくしている。

<参照>区分所有法 第62条1項:(建替え決議);

 集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。

★建替え希望の棟が2つ以上あり、各々が他の棟と共に建替えを希望していれば、各棟の建替え決議(第62条1項)の段階でもう、他の棟との一括建替え決議にしてと、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で決議すれば、反対者がいても、建替え希望棟の全員が一括決議に合意したとみなすことができる。

★特別に多数の賛成が必要で「特別決議事項」と呼ばれる。(その8の8)

★区分所有建物の場合: 建替え決議 + 一括付議

 本7項は、前の6項における建替え希望の建物(特定建物)が、区分所有建物である場合の規定です。

 建替えを希望する建物が区分所有建物の場合にはその「建替え決議」において、自己の棟の建替え計画を、他の建物の建替え計画と一括して、団地全体の「建替え承認会議」に付する旨の議決(これが合意にあたることになります。)も合わせて行うことができます。

 例えば、団地内にA・B・C棟の3つのマンションがあり、A・B棟の2棟だけが共同して、1つの棟のマンションに建替えをしたい時などに使えます。(C棟を含めた団地全体での建替えなら、次の第70条(一括建替え決議)があります。)


★団地内で、一部棟の建替えが実行されると、共用部分や敷地の持ち分などが変更になる

  団地で、ある棟の建替えが承認され建替えが完成すると、多くの場合従前の建物と階数や高さなどの規模や戸数が異なり、それにより建替えられた各区分所有者が持つ専有部分の床面積が変更になります。

 この場合、建替えられた建物での共用部分の持分の割合の変更や、それまでの団地全体での敷地の共有持分割合も変更が必要となります。
また、議決権割合にも変更が必要です。

 不動産登記簿や団地規約との整合性をとる大変な作業が発生します。


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(団地内の建物の一括建替え決議)

第七十条

1項  団地内建物の全部が専有部分のある建物であり、かつ、当該団地内建物の敷地(団地内建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により団地内建物の敷地とされた土地をいい、これに関する権利を含む。以下この項及び次項において同じ。)が当該団地内建物の区分所有者の共有に属する場合において、当該団地内建物について第六十八条第一項(第一号を除く。)の規定により第六十六条において準用する第三十条第一項の規約が定められているときは、第六十二条第一項の規定にかかわらず、当該団地内建物の敷地の共有者である当該団地内建物の区分所有者で構成される第六十五条に規定する団体又は団地管理組合法人の集会において、当該団地内建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、当該団地内建物につき一括して、その全部を取り壊し、かつ、当該団地内建物の敷地(これに関する権利を除く。以下この項において同じ。)若しくはその一部の土地又は当該団地内建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地(第三項第一号においてこれらの土地を「再建団地内敷地」という。)に新たに建物を建築する旨の決議(以下この条において「一括建替え決議」という。)をすることができる。ただし、当該集会において、当該各団地内建物ごとに、それぞれその区分所有者の三分の二以上の者であつて第三十八条に規定する議決権の合計の三分の二以上の議決権を有するものがその一括建替え決議に賛成した場合でなければならない。

過去出題 マンション管理士 H30年、H28年、H18年、H17年
管理業務主任者 H19年、H17年、

★団地内の建物の全部が専有部分のある建物...対象は区分所有建物だけで、団地の土地が共有(準共有)されていること。戸建てが団地関係に入っていては、一括建替えの決議はできない。

  

★団地内の各棟ごとに、建替えもできるが、団地内の全部の区分所有建物(戸建てが入っていないこと)を纏めて、団地集会の決議で建替えることもできる。
   逆に、一部の建物を残こした「一括建替え決議」はできない。
   キーワードは「第三十条第一項の「
規約」が定められているとき」
  (この第70条もまた、分かりにくい条文。引用されている各々の条文の内容がピンとこない。)
  でも、実務的にも理論的にも問題を含んだ条文です。

★第5条1項の規定により団地内建物の敷地とされた土地 = 規約敷地

<参照>区分所有法 第5条1項(規約による建物の敷地)

第五条  区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる。

★準用の第68条1項(第1号を除く)

<参照>区分所有法 第68条1項(規約の設定の特例)

第六十八条  次の物につき第六十六条において準用する第三十条第一項の規約を定めるには、第一号に掲げる土地又は附属施設にあつては当該土地の全部又は附属施設の全部につきそれぞれ共有者の四分の三以上でその持分の四分の三以上を有するものの同意、第二号に掲げる建物にあつてはその全部につきそれぞれ第三十四条の規定による集会における区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による決議があることを要する。

   一  一団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)が当該団地内の一部の建物の所有者(専有部分のある建物にあつては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地又は附属施設(専有部分のある建物以外の建物の所有者のみの共有に属するものを除く。)

   二  当該団地内の専有部分のある建物

★第62条1項の規定にかかわらず、一括して建替え決議ができる。

<参照>区分所有法 第62条1項(建替え決議)

第六十二条  集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。

 ★参考図:一棟の建替えの場合(区分所有法第62条)


★しかし、団地内の全部の建物を一括で建替えるには要件がある。


★団地の全ての建物の一括建替えの要件は、

       @団地内の建物は全部区分所有建物であること(一部に戸建の住宅がある団地ではこの一括決議はできない)

       A敷地が団地内建物の区分所有者の共有であること。(各々の建物の敷地は、各々が共有し、通路だけが全体の共有では、該当しない。)

       B団地全体の規約(団地管理規約)で管理を定めてあること。

★そして、次の2つの段階をクリヤーできれば、

       @団地の集会で、各棟ごとに、区分所有者の2/3以上の者であって議決権(ここは、規約がない限り共用部分に対する持分の割合 第38条―>第14条)の合計の2/3以上の議決権を有するものがその一括建替え決議に賛成した場合。

       A団地内建物の区分所有者及び議決権(ここは、敷地の共有持分の割合 第70条2項―>第69条2項)の各4/5以上の多数(建替え承認決議と異なり区分所有者数も考慮されているので注意!)

       が一括決議に賛成すれば、できる。

 

★団地内建物の一括建替えの趣旨

 本第70条は団地内の建物の全部を一括して建替え決議にできる規定です。

 この条項も前の第69条(団地内の建物の建替え承認決議)と同様に平成14年の改正で新設されたものです。

 前の第69条(団地内の建物の建替え承認決議)のように団地内の建物を一棟(または複数棟)だけ建替えるということは、通常各建物毎の敷地全体に占める容積率や建ぺい率その想定敷地たる土地の位置等が予め決められていないことから、建替えを希望しない他の建物が有すべき、容積率や建ぺい率などとの調整が非常に困難となることが予想されます。

 団地内にある複数の建物の状況はその管理状態の良し悪しで、建物ごとに多少の差はあるものの老朽化・陳腐化等を原因とする建替えが必要な時期は概ね団地全体で一致すると思われますから、そのようなときは、団地内に存在する全部の建物を一度に建替える方が権利調整の面からも望ましいことはいうまでもありません。

 ところで、団地内の全ての建物を一括して建替える場合は、何度も言っていますように民法の共有により、区分所有者の「全員が合意」すれば行えることは勿論ですが、単独棟においても建替えを希望する棟が区分所有建物の場合は、その建物所有者の全員の合意を必要とせず、区分所有者及び議決権の各4/5以上の賛成の建替え決議により行うことができ、団地内の全部の棟が区分所有建物の場合には、各建物ごとに建替え決議(第62条)をして、団地での建替え承認決議(第69条)があれば民法および平成14年の改正前の区分所有法でも可能でした。

 建替えでの要件を満たせば、元々は低層の複数の建物を、建替え後は高層の一棟にすることも、また複数棟にすることも自由であり、そして、住宅専用から住宅と店舗の併設や敷地の一部を売却して建設費用に充当するなども、第70条での一括建替えでも可能ですから、全て団地全体での建替えのマスタープランをどう作成するかの問題です。(敷地関係については、第62条を参照。)

 団地内での、全部の棟が区分所有建物の場合には、全区分所有者を構成員とする区分所有建物の一棟が一つの敷地にあるのと事情は変わりませんから、全区分所有者について一棟の建替え決議と同等の要件が備われば建替えができると考えてもよいはずです。

 そこで、団地内の全てが区分所有建物である数棟の建物が敷地を共有していれば、一棟の建替え決議(第62条)を、まとめて団地全体に認めたものが第70条の規定と考えられます。

★団地内の建物の一括建替えの要件

 団地内建物の一括建替え決議の要件は、まず

   @団地内建物の全てが専有部分のある建物(区分所有建物)であること、 であり 更には

   A敷地(団地内建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により団地内建物の敷地とされた土地(規約敷地)をいい、これに関する権利を含む。)が当該団地内建物の区分所有者の共有(建物の敷地利用権が所有権以外の権利の場合は、その権利は準共有に属していること)に属すること、

   B団地管理組合規約が定められていること

   C団地管理組合(法人を含む)の集会で、
    全区分所有者およびその議決権(土地の持分の割合)の各4/5以上の多数で一括の建替え決議を行うこと

   D各棟ごとに区分所有者およびその議決権(その棟の専有部分の床面積割合)の2/3以上の賛成があること、

 の5つが必要です。

 @の「団地内の建物がすべて区分所有建物であること」と、Aの「敷地が共有」は、全部の棟を合わせて1個の建物に擬制する前提であり、且つ組織としても1個の団地管理組合が成立する要件でもあります。

  すでに説明しましたように、区分所有法での団地を構成する場合には、区分所有建物だけでなく戸建も入ることができましたが、この一括建替え決議をする団地には、戸建があってはいけません。
  区分所有建物だけで構成される団地だけが、一括建替え決議ができます。

  また、敷地利用権が所有権以外の賃借権や地上権での準共有でも可能ですが、その場合には、土地の所有者との調整が必要なのは、一棟の建替えと同様です。単に、建物である集会所等の管理棟が共有の場合も、該当しません。

 Bの「団地での管理規約があること」要件を要求する理由は不明ですが、おそらく管理組合組織が現実に機能していることを要求するもののようです。(注:本当にこの規約があることの存在理由が分かりませんが、出題の対象によくなる。

    しかし、前述の一棟での建替え(区分所有法第62条)では要求していない規約での定めの要件をこの団地での一括建替えの場合に要求し、且つ規約制定決議と共に建替え決議をすればよいのであれば機能しているといっても形式に過ぎませんから無用な要求であったように思われます。
    規約があって管理している団地は一体性が強いので、一括建替えに馴染みやすいとの見方もあります。

 Cの「全体集会での決議の要件(全体要件)」は、@とAで擬せられた管理組合による事実上の一棟での建替え(第62条)決議に相当します。
   一括建替えでは、団地全体が一棟とみなされ、個々の棟の集会ではなく、団地全体の集会で一括建替え決議が可能となっています。
   そのため、建替え承認決議での議決権(土地の持分割合)だけでなく、区分所有者の数も4/5以上の賛成も必要としています。

   なお、区分所有者全員の承諾があれば、集会を開催せずに、書面または電磁的方法により決議はできます。(区分所有法第45条1項及び3項

 Dの「棟での決議の要件(各棟要件)」は、一括建替え決議における少数保護規定です。
  多数決制を採用する場合には、常に、少数者の保護も考慮する必要があります。
  団地全体を一棟に擬制(第64条)したといっても実際は複数棟の集合体であり、「団地全体で区分所有者及び議決権の各4/5以上の賛成」という要件は、仮に一棟が全員反対でも団地全部を合算すれば賛成の要件を満たすということも起こりえますから、それでは、個々の棟での建替え要件の「区分所有者及び議決権の各4/5以上の賛成」からみれば、多数による少数の抑圧の規定となってしまいます。
 それぞれの棟の自主性も尊重・保護されなければなりませんから、全体に対して一部の自主性を守る区分所有法第31条2項と同様の趣旨で一括建替え決議では「団地全体で区分所有者及び議決権の各4/5以上の賛成」という要件のほか、各棟でも「区分所有者及び議決権の各2/3以上(但し、ここでの議決権は原則、建物共用部分の持分割合による。)賛成」を必要としています。

 即ち、逆に、どこかの棟で区分所有者及び議決権の各1/3を超える反対があると団地での一括建替え決議は不成立ということになります

*この団地内の建物の一括建替え決議を受けて、取り壊すことのできるのは、団地内の区分所有建物(専有部分と共用部分)と区分所有法第67条によって規約で団地共用部分とされた団地内の集会所や立体駐車場などの附属施設たる建物です。
 もしも、団地内の集会所が、団地全体の規約で共用部分となっておらず、特定の棟の区分所有者達だけの共有となっている場合には、団地内の建物の一括建替え決議はできません。
 この場合の集会所を取り壊したければ、団地内の建物の一括建替え決議の前に、団地の規約を改正して、その集会所を団地共用部分とする必要があります。また、第三者に対抗するためには、登記が必要です。(区分所有法第67条参照)


★どうして、この団地の全建物の一括建替えだけを 各棟の 2/3以上 にしたのか 〜議決要件が緩和されている?〜

 他の区分所有法の条文では、重大な事項の決定には、3/4(75%)以上の多数で、さらに一棟での建替えでは、4/5(80%)以上の多数が求められています。
 それが、団地の一括建替え決議の場合には、棟では他の場合より少ない 2/3(66.6%)以上 の賛成で足ります。

  いいかえると、一棟の1/3(33.3%)未満の区分所有者が建替えに反対しても、団地全体で4/5(80%)以上の多数決で建替えができるということです。

 例えば、第31条2項等区分所有法の従来の立場からは1/4(25%)以上の反対(3/4の賛成)とした方が整合性が取れる数値のようにも思われます。
 考え方として、第31条2項では全体で3/4以上の賛成が必要なのに対し、第70条では団地全体で4/5以上の賛成がある場合ですから、単純に比較できるものではなく立法裁量の範囲内での問題のように思われます。

 平成14年の改正において立法者は、ここを、2/3以上とした説明として、「色々な考え方があるが、これまでに要求されていた建物ごとの4/5以上という決議要件を緩和する必要性は認めつつも、過半数をなお相当程度上回る賛成を要求することにより、これまでの制度との均衡の確保を図ったもの」と述べています。

 そこで、立法担当者がここだけ、2/3以上の多数にしたことにつき、合理性と、必要性から憲法29条(財産権)に違反する可能性が指摘されています。


★区分所有法第70条1項(団地内全建物一括建替え)は憲法第29条(財産権)違反か?

 たびたび説明していますが、区分所有法の特徴は、民法の共有での「全員の同意(合意)」をマンション生活では得ることは難しいとの判断から、「多数決」を採用したことです。

 しかし、多数を優先する場合には、少数の保護も必要です。
そこで、区分所有法第62条の一棟での「建替え」でも説明しましたが、第70条の「団地内全建物の一括建替え」では建替えに参加しない少数者の権利保護がなされていない、これは憲法第29条(財産権)違反であるとの裁判が起こされ、平成21年4月23日:最高裁の判決 として、「
区分所有法第70条は憲法第29条に違反しない」がでましたので紹介します。

<参照>憲法 第29条:

第二十九条  財産権は、これを侵してはならない

2  財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

3  私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

 *違反である主張:
   区分所有法第70条によれば,団地内全建物一括建替えにおいては,各建物について,当該建物の区分所有者ではない他の建物の区分所有者の意思が反映されて当該建物の建替え決議がされることになり,建替えに参加しない少数者の権利が侵害され,更にその保護のための措置も採られていないなどとして,同条が憲法第29条に違反する。

  *これに対する最高裁の判断:

 ◎まず、区分所有権の性質と行使について、次のように判断していますので、もう一度、区分所有権を理解する参考になります。

  ・区分所有権は,一棟の建物の1部分を構成する専有部分を目的とする所有権であり,共用部分についての共有持分や敷地利用権を伴うものでもある。

  ・区分所有権の行使(区分所有権の行使に伴う共有持分や敷地利用権の行使を含む。以下同じ。)は,必然的に他の区分所有者の区分所有権の行使に影響を与えるものであるから,区分所有権の行使については,他の区分所有権の行使との調整が不可欠であり,区分所有者の集会の決議等による他の区分所有者の意思を反映した行使の制限は,区分所有権自体に内在するものであって,これらは,区分所有権の性質というべきものである。

 ◎そして、マンション(区分所有建物)の建替えを次のように捉えています。
  これによると、まず区分所有法第62条1項で定める一棟の建替えの規定は合理性があると述べています。


  ・区分所有建物について,老朽化等によって建替えの必要が生じたような場合に,大多数の区分所有者が建替えの意思を有していても一部の区分所有者が反対すれば建替えができないということになると,良好かつ安全な住環境の確保や敷地の有効活用の支障となるばかりか,一部の区分所有者の区分所有権の行使によって,大多数の区分所有者の区分所有権の合理的な行使が妨げられることになるから,一棟建替えの場合に区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で建替え決議ができる旨定めた区分所有法第62条1項は,区分所有権の上記性質にかんがみて,十分な合理性を有するものというべきである。

 ◎そして、主点の団地内全建物の一括建替えについても合理性はあると、次のように述べています。

  ・区分所有法第70条1項は,団地内の各建物の区分所有者及び議決権の各3分の2以上の賛成があれば,団地内区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数の賛成で団地内全建物一括建替えの決議ができるものとしているが,団地内全建物一括建替えは,団地全体として計画的に良好かつ安全な住環境を確保し,その敷地全体の効率的かつ一体的な利用を図ろうとするものであるところ,区分所有権の上記性質にかんがみると,団地全体では同法第62条1項の議決要件と同一の議決要件を定め,各建物単位では区分所有者の数及び議決権数の過半数を相当超える議決要件を定めているのであり,同法第70条1項の定めは,なお合理性を失うものではないというべきである。

 ◎少数者(建替え反対者=建替えに参加しない人)の保護としては、売渡請求権が時価であることで相応の手当てがなされていると述べています。

  ・団地内全建物一括建替えの場合,一棟建替えの場合と同じく,上記のとおり,建替えに参加しない区分所有者は,売渡請求権の行使を受けることにより,区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すこととされているのであり(区分所有法第70条4項,第63条4項),その経済的損失については相応の手当がされているというべきである。

 ◎そして、結論として、区分所有法第70条は、憲法第29条に違反しないとのことです。

  ・規制の目的,必要性,内容,その規制によって制限される財産権の種類,性質及び制限の程度等を比較考量して判断すれば,区分所有法第70条 は,憲法第29条に違反するものではない。

★論点の 2/3以上には触れていませんが、平成14年に改正された区分所有法が一応、憲法違反ではないということでもあります。


★議決権の決め方 〜敷地の持分割合でいいのか〜
 この団地での一括建替え決議での議決権は第69条2項の準用により建物の共用部分の持分割合ではなく、「敷地の共有持分割合」とされています(2項)。

 この点に関し、民法上は、建物の建替えは既存建物の所有者による建物所有権の滅失行為(建物解体)と土地利用権者(所有者または借地権者)による建物の新築行為の複合行為と考えられますが、区分所有法は第62条(棟の建替え決議)においてそれらを一括して建物所有者(土地利用権者の位置も兼任してはおりますが)に授権する特則を置いていますから、その場合の議決権は建物共有部分の持分が基準となります。

 従って、複数の区分建物群を一棟のものに擬した第70条で第62条の建物共有部分の持分ではなく土地持分による議決権とするのは、第62条の立場と矛盾するものといわざるを得ないようです。

{一括建替え決議ができない例
一団地内に甲、乙及び丙の3棟の建物があり、甲及び乙は専有部分のある建物で、丙はAが所有する専有部分のない建物で全室が賃貸されている。この場合、一括建替えは全部の建物が区分建物(専有部分のある建物)を含む一棟の建物でなければならず、丙建物が専有部分のない建物であるので、一括建て替え決議はできない。
区分所有法第69条の建替えでは区分建物の組合毎に建替え決議、単独所有建物では所有者の承諾が必要。

{小規模滅失との関係}数棟ある団地の中で特定の棟が小規模滅失した場合でも、団地で一括建替え決議をすることができる。(注:一括建替えの決議は団地の集会で可能だが、復旧の決議(第61条)は、団地では準用されていないので、できない。用語を明確にしておくこと。)


★都市再開発法による団地の建替えについて 〜区分所有法の一括建替えに相当〜

  平成28年6月1日で、行政法である都市再開発法が改正され、この中で、住宅団地の再生として、住宅団地建替えを行う手法がありますので、紹介します。
 私法である、区分所有法とは、異なったやりかたとなります。
 なお、同法は、平成28年9月1日付で施行されています。

 *都市再開発法改正の概要 (平成28年6月の改正点)
  今までは、複数の棟で構成される団地においては、土地が共有であると、都市再開発法では、共有者全員を一人の組合員とみなしているため、建替えは民法での
「全員の合意(同意)」を必要とし、これでは、建替えの合意を得ることは、ほとんど不可能でした。

 そこで、改正をし、市街地再開発組合を設立すれば、各組合員(共有者)をそれぞれ一人の組合員とし、組合員の
3分の2以上の賛成で建替え(再開発事業)ができるようにしました。(都市再開発法第20条、同第14条1項参照)

 但し、その前に要件として、
  ・地方公共団体が都市計画として再開発事業を決定すること
    そのためには、第一種市街地再開発事業(権利変換方式)の施行区域として、(都市再開発法第3条 参照)
    ア.高度利用地域内にあること
    イ.区域内の建築物の3分の2以上が老朽化していること
    ウ.区域内に十分な公共施設がない等により、土地利用が不健全である 等を満たすこと

  ・そして、市街地再開発組合(組合)として設立をするには、
   組合員全体の3分の2以上の合意を得れば、再開発組合が設立でき、認可されます。

<参照> 都市再開発法

 (組合員)
 第二十条  組合が施行する第一種市街地再開発事業に係る施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、すべてその組合の組合員とする。
2  宅地又は借地権が数人の共有に属するときは、その数人を一人の組合員とみなす。

------------------------------------

 (宅地の所有者及び借地権者の同意)
 第十四条  第十一条第一項又は第二項の規定による認可を申請しようとする者は、組合の設立について、施行地区となるべき区域内の宅地について所有権を有するすべての者及びその区域内の宅地について借地権を有するすべての者のそれぞれの三分の二以上の同意を得なければならない。この場合においては、同意した者が所有するその区域内の宅地の地積と同意した者のその区域内の借地の地積との合計が、その区域内の宅地の総地積と借地の総地積との合計の三分の二以上でなければならない。

2  第七条の二第五項の規定は、前項の規定により同意を得る場合について準用する。

------------------------------------

 (認可)
 第十一条  第一種市街地再開発事業の施行区域内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、五人以上共同して、定款及び事業計画を定め、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の認可を受けて組合を設立することができる。

2  前項に規定する者は、事業計画の決定に先立つて組合を設立する必要がある場合においては、同項の規定にかかわらず、五人以上共同して、定款及び事業基本方針を定め、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の認可を受けて組合を設立することができる。

3  前項の規定により設立された組合は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の認可を受けて事業計画を定めるものとする。

4  第七条の九第二項の規定は前三項の規定による認可に、同条第三項の規定は第一項又は第二項の規定による認可について準用する。この場合において、同条第二項中「施行地区となるべき区域」とあるのは、「施行地区となるべき区域(第十一条第三項の規定による認可の申請にあつては、施行地区)」と読み替えるものとする。

5  組合が施行する第一種市街地再開発事業については、第一項又は第三項の規定による認可をもつて都市計画法第五十九条第四項 の規定による認可とみなす。第七条の九第四項ただし書の規定は、この場合について準用する。

------------------------------------

 (第一種市街地再開発事業の施行区域
第三条  都市計画法第十二条第二項 の規定により第一種市街地再開発事業について都市計画に定めるべき施行区域は、第七条第一項の規定による市街地再開発促進区域内の土地の区域又は次に掲げる条件に該当する土地の区域でなければならない。
   一  当該区域が高度利用地区、都市再生特別地区又は特定地区計画等区域内にあること
   二  当該区域内にある耐火建築物(建築基準法第二条第九号の二 に規定する耐火建築物をいう。以下同じ。)で次に掲げるもの以外のものの建築面積の合計が、当該区域内にあるすべての建築物の建築面積の合計のおおむね三分の一以下であること又は当該区域内にある耐火建築物で次に掲げるもの以外のものの敷地面積の合計が、当該区域内のすべての宅地の面積の合計のおおむね三分の一以下であること。
     イ 地階を除く階数が二以下であるもの
     ロ 政令で定める耐用年限の三分の二を経過しているもの
     ハ 災害その他の理由によりロに掲げるものと同程度の機能低下を生じているもの
     ニ 建築面積が百五十平方メートル未満であるもの
     ホ 容積率(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計を算定の基礎とする容積率。以下同じ。)が、当該区域に係る高度利用地区、都市再生特別地区、地区計画、防災街区整備地区計画又は沿道地区計画に関する都市計画において定められた建築物の容積率の最高限度の三分の一未満であるもの
     ヘ 都市計画法第四条第六項 に規定する都市計画施設(以下「都市計画施設」という。)である公共施設の整備に伴い除却すべきもの
   三  当該区域内に十分な公共施設がないこと、当該区域内の土地の利用が細分されていること等により、当該区域内の土地の利用状況が著しく不健全であること。
   四  当該区域内の土地の高度利用を図ることが、当該都市の機能の更新に貢献すること。


 *区分所有法第70条(団地内建物の一括建替え決議)と都市再開発法の比較  

 区分所有法第70条の団地内建物の一括建替え決議においては、要件として 
  @団地内建物の全てが専有部分のある建物(区分所有建物)であること、 
  A敷地(団地内建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により団地内建物の敷地とされた土地(規約敷地)をいい、これに関する権利を含む。)が当該団地内建物の区分所有者の共有(建物の敷地利用権が所有権以外の権利の場合は、その権利は準共有に属していること)に属すること、
  B団地管理組合規約が定められていること、
  C団地管理組合(法人を含む)の集会で全区分所有者およびその議決権(土地の持分の割合)の各4/5以上の多数で一括の建替え決議を行うこと、
  D各棟ごとに区分所有者およびその議決権(その棟の専有部分の床面積割合)の2/3以上の賛成があること、

  と、区分所有法では多くの要件を必要としていますが、

 都市再開発法の市街地開発事業で建替えを行うと、
  @団地内の建物には区分所有建物以外の建物(戸建てなど)があってもいい
  A団地管理規約はなくていい
  B・土地が全体で一筆の場合
    同意した者の数が、全体の共有者の2/3以上および同意した土地の共有持分割合の合計が2/3以上あればいい。
   ・複数の土地に分かれている場合
    ・人数要件として、
      (土地ごとの (同意者数/当該土地の共有者数))/土地の筆数 が2/3以上 あり、 
    ・面積要件として、
      (土地ごとの (同意した者の共有持分x当該土地面積))/住宅団地の土地の面積の合計 が2/3以上 あればいい
   となります。
   ただし、都市再開発法では、一部建替えは、難しくなります。

  また、道路や公園、広場などの公共施設も造られます。

 区分所有法では、建替え決議により、建替え不参加者に対しては、「売渡請求」ができますが、市街地開発事業では、「権利変換の手法」を採用して、権利をなくして金銭を受領する場合には転出の申し出が必要で、転出の申し出を行わない者については、強制的に新たな建物及びその敷地に権利の移動を行います。売渡請求はありません。


<参考>標準管理規約(団地型) 49条7項: (団地総会の会議及び議事) 

 7 一括建替え決議は、第2項にかかわらず、組合員総数の5分の4以上及び議決権(第48条第1項にかかわらず、当該団地内建物の敷地の持分の割合による。)総数の5分の4以上で行う。ただし、当該団地総会において、当該各団地内建物ごとに、それぞれその区分所有者の3分の2以上及び議決権(第48条第1項に基づき、別表第5に掲げる議決権割合による。)総数の3分の2以上の賛成がなければならない。


{設問}一団地内に甲、乙及び丙の3棟の建物があり、甲及び乙は専有部分のある建物で、丙はAが所有する専有部分のない建物で全室が賃貸されている。この場合におけるこの団地内の建物の建替えに関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、甲、乙及び丙の3棟が所在する土地は、団地建物所有者の共有に属しており、その共有者全員で団地管理組合(区分所有法第65条に規定する団体をいう。以下この問いについて同じ。)を構成しているものとする。

1 甲、乙及び丙の一括建替えについては、団地管理組合の集会において、団地建物所有者及び議決権の各4/5以上の多数で、一括建替え決議を行うことができる。

答え:間違い。
区分所有法第70条の一括建替えで必要な要件は、全部の建物が区分建物(専有部分のある建物)を含む一棟の建物でなければならず、丙建物が専有部分のない建物であるので、一括建替え決議はできない。参考:区分所有法69条の建替えでは区分建物の組合毎に建替え決議、単独所有建物では所有者の承諾が必要。

2 甲の建替えについては、甲の集会において建替え決議を得た上で、団地管理組合の集会において、議決権の3/4以上の多数による建替え承認決議を得なければならない。

答え:正しい。
 区分所有法第69条1項1号のとおり。

3 甲及び乙の建替えについては、甲及び乙のそれぞれの建替えを会議の目的とする各集会において、区分所有者及びその議決権の各4/5以上の多数で甲及び乙を一括して建替え承認決議に付する旨の決議をすることができる。

答え:正しい。
区分所有法第69条6項、7項によれば、2棟以上の区分建物を含む一棟の建物同士は一括建替え承認決議にかけるように決議ができる。

4 甲の建替えが乙の建替えに特別の影響を及ぼすべきときは、団地管理組合の甲に係る建替え承認決議において、乙の区分所有者全員の議決権の各3/4以上の議決権を有する者の賛成を得なければならない。

答え:正しい。
区分所有法第69条5項1号のとおり。

答え:1

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第七十条

2項  前条第二項の規定は、前項本文の各区分所有者の議決権について準用する。この場合において、前条第二項中「当該特定建物の所在する土地(これに関する権利を含む。)」とあるのは、「当該団地内建物の敷地」と読み替えるものとする。

過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 未記入

★ここ一括建替え議決権も「敷地の共有持分の割合」である。

<参照>前条2項=区分所有法 第69条2項:

2  前項の集会における各団地建物所有者の議決権は、第六十六条において準用する第三十八条の規定にかかわらず、
第六十六条において準用する第三十条第一項の規約に別段の定めがある場合であつても、
当該特定建物の所在する土地(これに関する権利を含む。){読み替えー>当該団地内建物の敷地}
の持分の割合によるものとする


★議決権: 土地の持分割合。規約で別段の定めはできない

団地全体の一括建替え決議の成立は、たとえ規約で定めても「土地の持分割合」です。また、規約の定めは無効です。

 しかし、各棟での議決権は、規約に別段の定めがあれば、それに従い、無ければ専有部分の床面積の割合になります。(区分所有法第38条、第14条参照)
 実務では、棟ごとの管理規約の有無を確認し、議決権の整理をすることが必要です。

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第七十条

3項  団地内建物の一括建替え決議においては、次の事項を定めなければならない。

  一  再建団地内敷地の一体的な利用についての計画の概要

  二  新たに建築する建物(以下この項において「再建団地内建物」という。)の設計の概要

  三  団地内建物の全部の取壊し及び再建団地内建物の建築に要する費用の概算額

  四  前号に規定する費用の分担に関する事項

  五  再建団地内建物の区分所有権の帰属に関する事項

過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 H27年、

★一括建替えでは、一棟の建替え(第62条2項)の4つの決議事項のほかに、

<参照>区分所有法 第62条2項(建替決議):

    建替え決議においては、次の事項を定めなければならない。
    一  新たに建築する建物(以下この項において「再建建物」という。)の設計の概要
    二  建物の取壊し及び再建建物の建築に要する費用の概算額
    三  前号に規定する費用の分担に関する事項
    四  再建建物の区分所有権の帰属に関する事項

  「再建団地内敷地の一体的な利用についての計画の概要」(1号) がプラスされて、合計5つになっている。

 これらは、必ず定めること。(決議事項であり通知に際して議案の要領が必要。参照:区分所有法第62条2項)

★団地内での一括建替えの決議事項の内容は、

   一  再建団地内敷地の一体的な利用についての計画の概要
      全ての建物を建替えるために、団地内の敷地の効率的な利用計画が必要です。
      各棟の配置、空地、駐車場、集会所、倉庫など附属施設の配置などが計画されます。

   二  新たに建築する建物(以下この項において「再建団地内建物」という。)の設計の概要
      棟数、階数、用途、構造、仕様、延べ床面積、建築面積、専有面積などを決め、建築費用の概算が算定されます。

   三  団地内建物の全部の取壊し及び再建団地内建物の建築に要する費用の概算額
      決議時点での概算で可能です。実際にかかった費用と差異が生じても、決議は無効とならないと解されます。

   四  前号に規定する費用の分担に関する事項
      計画段階での決議のため、分担額の明細までは明示できませんが、分担の方法、分担の基準などを公平に決めておきます。

   五  再建団地内建物の区分所有権の帰属に関する事項
      区分所有権の対象となっている建物の専有部分(室)をどう扱うか、対価の清算の方法、基準を定めます。
      余剰の専有部分が生じた時には、どうするのか、売却利益がでれば、分配はどうするのかなどを定めます。
      ここも、一棟の建替え決議(第62条参照)と同じように、建物についてであり、
土地の権利の帰属は入っていないことに注意してください。

  基本的には、団地であっても、一棟の建替えのように、現在の建物を壊して、新しい建物を建築することを決定することは同じですから、団地集会での「一括建替え決議」においても、一棟での「建替え決議」と同じように、新建物の設計の概要(2号)、費用の概算とその分担(3号、4号)、新建物の権利の帰属(5号)などを決議で定めますが、団地であるため、敷地全体の一体的な利用についての計画(1号)も定められることになっています。

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第七十条

4項  第六十二条第三項から第八項まで、第六十三条及び第六十四条の規定は、団地内建物の一括建替え決議について準用する。この場合において、第六十二条第三項中「前項第三号及び第四号」とあるのは「第七十条第三項第四号及び第五号」と、同条第四項中「第一項に規定する」とあるのは「第七十条第一項に規定する」と、「第三十五条第一項」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項」と、「規約」とあるのは「第六十六条において準用する第三十条第一項の規約」と、同条第五項中「第三十五条第一項」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項」と、同条第七項中「第三十五条第一項から第四項まで及び第三十六条」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項から第四項まで及び第三十六条」と、「第三十五条第一項ただし書」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項ただし書」と、同条第八項中「前条第六項」とあるのは「第六十一条第六項」と読み替えるものとする。

過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 未記入

★団地内建物の一括建替えの決議でも、集会の招集、決議後の売渡請求権、建替えの合意などは、一棟の建替えに関する規定が準用されている。

 第62条3項の衡平の原則、4項の集会招集の特則、5項の通知事項、6項の説明会、7項の説明会の招集、8項の議事録、第62条の売渡請求権および第64条の建替え合意の擬制が準用されています。

◎準用されている条文
No. 条文 内容
第62条3項〜8項 建替え決議の衡平、招集の通知、議案の要領、説明会の開催、議事録
第63条第64条 建替えの参加、売渡請求、建替えの合意

★読み替えは省略。詳細は、各準用も参照してください。

★各区分所有者の衡平を害しないこと(第62条3項の準用)

  費用の分担や新たに建築する建物の区分所有権の帰属を定める場合には、各区分所有者での衡平がなくてはいけません。

★会議の目的たる事項

  招集の通知には、会議の目的として
  「○○団地の一括建替え決議に関する件」
  など団地内の全ての建物を取り壊して、かつ新たな建物を建築する、つまり一括建替えを行う集会であることを明確に示します。

★議案の要領

  新たに建築する建物の計画概要として、次の事項の要点と主な内容を示します。

  A.一括建替え決議で定める5つの事項を要約したもの

  1.再建団地内建物の敷地となる土地(以下「再建団地内敷地」という)の一体的な利用についての計画の概要
  2.再建団地内建物の設計の概要
  3.団地内建物の全部の取り壊しおよび再建団地内建物の建築に要する費用の概算額
  4.上記3の費用の分担に関する事項
  5.再建団地内建物の区分所有権の帰属に関する事項

  2から5は、一棟の区分所有建物の建替え決議と同じです。
  1は、団地で発生する固有の事項で、再建団地内の各建物の配置、規模、形状や空地部分等も検討できるものです。

  B.区分所有法第62条5項の事項(第70条4項で準用)

  1.(団地内区分所有建物の一括)建替えを必要とする理由  
  2.(団地内区分所有)建物の建替えをしないとした場合における効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
  3.(団地内区分所有)建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
  4.(団地内区分所有建物につき修繕積立金団地全体及び各棟別)として積み立てられている金額

★説明会の開催

 一括建替え決議の集会を招集した人は、一括建替え集会日よりも、最低1ヶ月前(初日不算入)までに、説明会を開きます。
 この説明会の通知は、普通の集会と同じように、1週間前(初日不算入)までに出せばいいが、規約でも短縮はできません。伸ばすことはできます。(第62条6項、7項が準用されている。)

 実務としては、団地全体の建替えともなると、検討事項も多く、また参加者も多くなるため、かなり前から説明会を開催(数度)して、多くの理解を得ることが肝心です。

★一括建替え決議の成立要件 〜 全体での決議(全体要件)と各棟の賛成(各棟要件)が必要 〜

  @団地での一括建替え決議が成立するためには、団地管理組合の全体集会において、区分所有者の数と議決権で各5分の4以上の賛成が必要です。(第70条1項)。
    ここでの議決権も、団地の建替え承認決議と同様に、団地内建物の敷地の持分割合です。規約で別段の定めがあっても、無効です。
  Aさらに、各棟ごとに、区分所有者及び議決権の各3分の2以上の賛成も必要です。
   各棟での議決権は面倒なことに、各棟で規約があればそれに従い、規約がなければ、専有部分の床面積の割合となるので注意のこと。一棟でも規定数の賛成が得られないと、当然、一括建替え決議は成立しません。これは、少数からなる区分所有建物の保護とみることができます。

  各建物ごとの議決権行使の集計が必要となります。

★一括建替え決議で定める事項

 上の議案の事項での説明にあるように、

  1.再建団地内建物の敷地となる土地(以下「再建団地内敷地」という)の一体的な利用についての計画の概要
  2.再建団地内建物の設計の概要
  3.団地内建物の全部の取り壊しおよび再建団地内建物の建築に要する費用の概算額
  4.上記3の費用の分担に関する事項
  5.再建団地内建物の区分所有権の帰属に関する事項
  の5項目を具体的に決議します。

★一括建替え決議の成立から建替えの合意まで

  一括建替えに参加しなかった区分所有者に対して催告をしたり、不参加が確定すれば、売渡請求をするなどは、一棟での建替え規定が準用されます。

★一括建替え決議に賛成しなかった区分所有者に対しては、区分所有権と敷地利用権を時価で売り渡すように請求できる(第63条の準用)

  この売渡請求は、同一の建物の区分所有者間で行使してもいいし、また、団地内での、異なった建物の区分所有者間でも行使できます。

参考図:一棟の場合(区分所有法第63条)

★買戻請求もできる(第63条6項の準用)

  一括建替え決議の日から2年以内に建物の取り壊しの工事の着手がなければ、売渡請求を受けた現在の権利者は、一棟の建替えと同じように、区分所有権と敷地利用権を買い戻すことができます。
  この買戻請求権が行使されると、一括建替え決議に拘束されない区分所有者が団地内に存在することになり、建替えは実施できなくなりますので、注意が必要です。

参考図:一棟の場合(区分所有法第63条)

★団地内における建物の取壊しの着手とは? 〜一棟でもいいのか、すべての棟の取壊し着手が必要か

  団地ですから、そこには複数の建物が存在してます。
 そこで、準用されています第63条6項で規定する、「建物の取壊しの工事の着手」の解釈が、団地内の一棟でも建物の取壊し工事に着手すれば足りるのか、あるいは、団地内の全ての建物の取壊しに着手する必要があるのかが問題となっています。

  これは、一棟でも建物の取壊しの着手があれば、もうその建物の区分所有権等の買戻し請求ができませんから、団地全体でも買戻し請求を認めない方が、衡平であるとの観点から、一括建替え決議の日から2年以内に団地内の一部の建物の取壊し工事に着手すれば足り、その後は買戻し請求ができないと解されています。

★建替え事業の進め方

 たびたび指摘してますが、区分所有法では、「建替え決議」までは定めていますが、その後の建替え事業の実施方法は規定されていません。
そこで、建替え参加者の団体の存在、外部からの融資の問題などが浮上していました。

それをうけ、平成14年「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」が制定されました。

マンションの建替え等の円滑化に関する法律」の概要はこちらを参照。

★「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」へ
  一括建替え決議が成立すれば、建替え事業は、 「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」によって、権利変換手続きなどがすすめられます。


★建替えは、反対者を追い出すことに注意すること!

 一棟での建替えに限らず、団地関係でも、建替えとなりますと、多数決により、少数者である建替え反対者が強制的に住み慣れた地域から、自分の意志に関係なく、立ち退きをしなければなりません。

 私の「超解説 区分所有法」を受験のために読んでいる人にとっては、建替えを条文の解釈としてあくまでも「他人事」として理解されるでしょうが、永年住み慣れた場所を自分の意志に反して、第三者から強制的に追い出しを迫られることは、ものすごく抵抗があります。

 私も、50年間住み慣れた東京の葛飾区にある「金町団地」を、昔の住宅公団(今の都市再生機構}から、家賃収入を上げるために建替えを名目にした「強制追い出し訴訟」を受けたため建替えが抱えている悲しさを、実感として持っています。

 幸い、「金町団地居住者」と都市再生機構との法廷闘争は、私たち「居住者」の勝利に終わりましたが、建替えにあたっては、マンション管理士だけでなく、管理組合の役員さんも、単に賛成を説得するだけでなく、反対せざるをえないお金のない高齢者の存在にも心を配ってください。

 参考までに;「金町団地 建替闘争の記録」 もあります。

★団地の建替えは時間がかかる。
  一棟の建替えでも、区分所有者および議決権の 4/5(80%)以上 の賛成を得ることは、建替えに直面した際に、やってみればわかりますが、現実問題として、かなり高いハードルです。

 まして、団地において、建替えは簡単には進まないことは、過去の例が示しています。ここは、居住者だけでは、どうしても乗り越えられない問題が多くありますので、早めにマンション管理の専門家である「マンション管理士」に相談した方がいいですよ。
これは、決して宣伝ではありません。マンション管理士に相談することにより、あなたのマンションや団地の建替えを進める上で、かなり時間が節約できますから。


 当然、この「超解説 区分所有法」 を解説している 「マンション管理士 香川事務所」 への相談が、一番最適な方法ですが。

  団地の建替え例:東京の多摩ニュータウンにある 「諏訪2丁目住宅マンション」ここの報告会などは、参考になりますので、NETで検索してください。


{設問-1}一団地内に、下図のとおり専有部分のあるA及びBの建物があって、甲地はAの区分所有者、乙地はBの区分所有者がそれぞれ共有しており、また、中央の通路部分をA及びBの各区分所有者が共有している。この場合に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 A及びBの区分所有者全員で構成する団体(以下この問いにおいて「団地管理組合」という。)は、通路の管理を行うことができる。

答え: 正しい。そのとおり。できる。
区分所有法第65条「一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)がそれらの建物の所有者(専有部分のある建物にあつては、区分所有者)の共有に属する場合には、それらの所有者(以下「団地建物所有者」という。)は、全員で、その団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる」の規定により、通路の共有につきABの団地管理組合が成立するので、共通管理対象の通路の管理を行える。

2 団地管理組合は、甲地及び乙地について規約を定めなければ、その管理を行うことができない。

答え: 正しい。そのとおり。できない。
区分所有法第68条1項「次の物につき第六十六条において準用する第三十条第一項の規約を定めるには、第一号に掲げる土地又は附属施設にあつては当該土地の全部又は附属施設の全部につきそれぞれ共有者の四分の三以上でその持分の四分の三以上を有するものの同意、第二号に掲げる建物にあつてはその全部につきそれぞれ第三十四条の規定による集会における区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による決議があることを要する。
  一  一団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)が当該団地内の一部の建物の所有者(専有部分のある建物にあつては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地又は附属施設(専有部分のある建物以外の建物の所有者のみの共有に属するものを除く。)」 の規定により、団地管理組合の非本来的な管理対象である土地の管理は規約の定めが必要。

3 団地管理組合は、共同の利益に反する行為をしているAの区分所有者に対し、集会の決議により、その行為の停止を請求する訴訟を提起することができる。

答え: 誤りである。できない。
区分所有法第66条では、「義務違反者に対する措置の規定の準用(区分所有法57条)はない」。義務違反者に対する措置を行うのは各棟の組合で団地管理組合ではできない。

4 団地管理組合は、A及びBを一括して建て替える旨の集会の決議をすることができない。

答え: 正しい。そのとおり。できない。
区分所有法第70条1項により、一括建替の決議の要件は、@団地内の建物の全部が区分所有建物であること(戸建などが入っているときはだめ)、A敷地が団地内建物の区分所有者の共有に属していること、B団地管理規約が定められていること、である。該当の団地は、通路は共有だが、Aの要件の敷地が甲地はAの共有、乙地はBの共有と別々になっているため、要件を満たさない。
  

答え:3 


{設問-2}平成15年 マンション管理士 〔問 11〕

A、B、C及びDの4棟のマンションで構成されている甲団地の団地管理組合(区分所有法第65条に規定する団体をいう。)の団地総会(同条に規定する集会をいう。)の議案にできないものは、区分所有法の規定によれば、次のア〜エのうち、いくつあるか。

ア 地震により建物の価格の1/5に相当する部分が滅失したA棟の復旧の決議に関する件
イ 建物が老朽化したB棟について、現在地で、同規模及び同形状の建物に建替えを行う場合の建替え承認決議に関する件
ウ 避難路になっているベランダに避難の妨げとなる物置を設置しているC棟の区分所有者に対し、その物置を撤去する決議に関する件
エ D棟に隣接している、区分所有者全員が共有する駐車場の使用料について、その金額を変更する決議に関する件

1 1つ
2 2つ
3 3つ
4 4つ

答え:区分所有法の規定によれば、
ア× 団地内の一棟の建物の復旧決議である。地震により建物の価格の2分の一以下である五分の一に相当する部分が滅失したA棟の復旧の決議に関する件は、建物の復旧決議の規定(第61条)であるが、この規定は第66条の団地関係に準用されておらず、団地総会の議案にできない。当該棟の管理組合の決議事項である。

イ○ 団地内の一棟の建物の建替え承認決議である。同法第69条第1項により、一棟の建物の建替えをするには、当該建物において建替え決議が成立し、かつ団地総会において、議決権の4分の3以上の多数による承認の決議を得る必要がある。よって、団地総会の議案にできる。

ウ× 義務違反者に対する措置である。第68条で団地管理組合が全ての棟を管理している場合は団地で処理できると考えることもできるが、第66条で義務違反者に対する措置(第57条)を準用していないため、避難路になっているベランダに避難の妨げとなる物置を設置しているC棟の区分所有者に対し、その物置を撤去する決議に関する件は当該棟の決議事項とするのが素直と思われる。

エ○ 団地内の附属施設の使用料の変更である。D棟に隣接している、区分所有者全員が共有する駐車場の使用料について、その金額を変更する決議に関する件は団地の管理対象である。

答え:2 (アとウが出来ない。2つ)


{設問-3} 平成28年 マンション管理士試験 「問11」

〔問 11〕一団地内に専有部分のあるA棟及びB棟の2棟の建物がある。区分所有法 第 70 条に基づき、この団地内の建物の一括建替え決議を行おうとする場合に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、 A棟及びB棟が所在する土地は、団地建物所有者の共有に属しており、その共有者全員で構成する団地管理組合(区分所有法第 65 条の団地建物所有者の団体をいう。)において、団地管理組合の規約が定められているものとする。

1 一括建替え決議を行う場合の議決権割合は、団地管理組合の規約に議決権割合に関する別段の定めがある場合にはその定めによる。


X 誤っている。 議決権割合は、規約での別段の定めを認めていない。敷地の持分の割合による。
 平成19年 管理業務主任者試験 「問38」 、平成18年 マンション管理士試験 「問11」 、 平成17年 マンション管理士試験 「問12」 平成16年 マンション管理士試験 「問11」 。
 
 団地での建物の一括建替え決議は、区分所有法第70条
 「(団地内の建物の一括建替え決議)
 第七十条  団地内建物の全部が専有部分のある建物であり、かつ、当該団地内建物の敷地(団地内建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により団地内建物の敷地とされた土地をいい、これに関する権利を含む。以下この項及び次項において同じ。)が当該団地内建物の区分所有者の共有に属する場合において、当該団地内建物について第六十八条第一項(第一号を除く。)の規定により第六十六条において準用する第三十条第一項の規約が定められているときは、第六十二条第一項の規定にかかわらず、当該団地内建物の敷地の共有者である当該団地内建物の区分所有者で構成される第六十五条に規定する団体又は団地管理組合法人の集会において、
当該団地内建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、当該団地内建物につき一括して、その全部を取り壊し、かつ、当該団地内建物の敷地(これに関する権利を除く。以下この項において同じ。)若しくはその一部の土地又は当該団地内建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地(第三項第一号においてこれらの土地を「再建団地内敷地」という。)に新たに建物を建築する旨の決議(以下この条において「一括建替え決議」という。)をすることができる。ただし、当該集会において、当該各団地内建物ごとに、それぞれその区分所有者の三分の二以上の者であつて第三十八条に規定する議決権の合計の三分の二以上の議決権を有するものがその一括建替え決議に賛成した場合でなければならない。
 2  
前条第二項の規定は、前項本文の各区分所有者の議決権について準用する。この場合において、前条第二項中「当該特定建物の所在する土地(これに関する権利を含む。)」とあるのは、「当該団地内建物の敷地」と読み替えるものとする。
 3  団地内建物の一括建替え決議においては、次の事項を定めなければならない。
   一  再建団地内敷地の一体的な利用についての計画の概要
   二  新たに建築する建物(以下この項において「再建団地内建物」という。)の設計の概要
   三  団地内建物の全部の取壊し及び再建団地内建物の建築に要する費用の概算額
   四  前号に規定する費用の分担に関する事項
   五  再建団地内建物の区分所有権の帰属に関する事項
 4  第六十二条第三項から第八項まで、第六十三条及び第六十四条の規定は、団地内建物の一括建替え決議について準用する。この場合において、第六十二条第三項中「前項第三号及び第四号」とあるのは「第七十条第三項第四号及び第五号」と、同条第四項中「第一項に規定する」とあるのは「第七十条第一項に規定する」と、「第三十五条第一項」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項」と、「規約」とあるのは「第六十六条において準用する第三十条第一項の規約」と、同条第五項中「第三十五条第一項」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項」と、同条第七項中「第三十五条第一項から第四項まで及び第三十六条」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項から第四項まで及び第三十六条」と、「第三十五条第一項ただし書」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項ただし書」と、同条第八項中「前条第六項」とあるのは「第六十一条第六項」と読み替えるものとする。」
 

 とあります。

そこで設問の「議決権の割合」は、
 「当該団地内建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数」とあり、
 区分所有法第70条2項
 
「2  前条第二項の規定は、前項本文の各区分所有者の議決権について準用する。この場合において、前条第二項中「当該特定建物の所在する土地(これに関する権利を含む。)」とあるのは、「当該団地内建物の敷地」と読み替えるものとする。 」
 により、準用されています、前条の区分所有法第69条2項の規定は、
 「2  前項の集会における各団地建物所有者の議決権は、第六十六条において準用する第三十八条の規定にかかわらず、第六十六条において準用する第三十条第一項の規約に別段の定めがある場合であつても、当該特定建物の所在する土地(これに関する権利を含む。)の持分の割合によるものとする。
 とあり、
 規約での別段の定めを認めていませんから、誤りです。土地の持分の割合です。



2 A棟の区分所有者Cが一括建替え決議に賛成しなかったときには、一括建替決議に賛成した B棟の区分所有者Dは、 Cに対して、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。

〇 正しい。 別棟の区分所有者であっても、区分所有権等の売渡し請求はできる。

 選択肢1で引用しました、区分所有法第70条4項により、第62条と第63条及び第64条の数項が準用されています。
 具体的には、

◎準用されている条文
No. 条文 内容
第62条3項〜8項 建替え決議の衡平、招集の通知、議案の要領、説明会の開催、議事録
第63条第64条 建替えの参加、売渡請求、建替えの合意

 です。

 設問の「区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきこと」は、第63条4項にあり、
 「4  第二項の期間が経過したときは、
建替え決議に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)又はこれらの者の全員の合意により区分所有権及び敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者(以下「買受指定者」という。)、同項の期間の満了の日から二月以内に、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含む。)に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。建替え決議があつた後にこの区分所有者から敷地利用権のみを取得した者(その承継人を含む。)の敷地利用権についても、同様とする。」
 とあり、
 一括建替決議に賛成した B棟の区分所有者Dは、 棟が違うA棟の区分所有者Cに対しても、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができますから、正しい。 



3 団地建物所有者の集会において、団地内建物の区分所有者及び議決権の各 5 分の 4以上の多数の賛成を得るとともに、 A棟及びB棟ごとについて、区分所有者の 3分の 2以上の者であつて議決権の合計の 3分の 2以上の議決権を有するものが賛成することが必要である。

〇 正しい。
 選択肢1で引用しました区分所有法第70条1項によれば、団地内での建物の一括建替え決議には
 ・団地管理組合(法人を含む)の集会で全区分所有者およびその議決権(土地の持分の割合)の各 4/5以上の多数で一括の建替え決議を行うこと、
  かつ
 ・各棟ごとに区分所有者およびその議決権(その棟の専有部分の床面積割合)の2/3以上の賛成があること、
  が必要ですから、正しい。



4 一括建替え決議においては、団地内建物の全部の取壊し及び再建団地内建物の建築に要する費用の概算額に加え、その費用の分担に関する事項を定める必要がある。

〇 正しい。
 一括建替え決議において定める事項は、
 選択肢1で引用しました区分所有法第70条3項によれば、
 「3  団地内建物の一括建替え決議においては、次の事項を定めなければならない。
   一  再建団地内敷地の一体的な利用についての計画の概要
   二  新たに建築する建物(以下この項において「再建団地内建物」という。)の設計の概要
   
三  団地内建物の全部の取壊し及び再建団地内建物の建築に要する費用の概算額
   
四  前号に規定する費用の分担に関する事項
   五  再建団地内建物の区分所有権の帰属に関する事項 」

 とあり、
 区分所有法第70条3項3号及び4号により、団地内建物の全部の取壊し及び再建団地内建物の建築に要する費用の概算額に加え、その費用の分担に関する事項を定める必要があるので、正しい。



答え:1

《タグ》区分所有法。 団地。一括建替え決議。 議決権
    団地で第70条の一括建替え決議からの出題は、最近は無かった。 基本的な部分を抑えていれば、易しい?


 *ある受験生の感想:選択肢2は棟をまたがってはできないとかと考えた。考え過ぎ。
   選択肢1は、団地議決権は一括建替えの場合でも規約で別段の定めができないことを知らなかった。


★団地の建替え関係のまとめ

◎ 団 地 で の 建 替 え 条 件
対象 棟別建替え 全部の棟
1つの棟 複数の棟
区分所有法 第69条1項〜5項 第69条6項、7項 第70条1項〜4項
決議の読み方 建替え承認決議 一括建替え承認決議 一括建替え決議
団地内の建物

1.最低一棟は区分所有建物(専有部分のある建物)

2.非区分所有建物(戸建等)も可

1.最低一棟は区分所有建物(専有部分のある建物)

2.非区分所有建物(戸建等)も可

区分所有建物に限る
全体の決議の前に

1.区分所有建物の場合...その棟の建替え決議(区分所有者の数及び議決権の数各4/5以上の賛成) 又は全員の合意があること

2.非区分所有建物...その所有者の合意があること

1.区分所有建物の場合...その棟の建替え決議(区分所有者の数及び議決権の数各4/5以上の賛成) 又は全員の合意があること

2.非区分所有建物...その所有者の合意があること

1.団地全体の規約があること

2.団地集会で、その棟ごとに区分所有者の数及び議決権の数各2/3以上の賛成があること(一棟でも賛成がないと、できない)

団地管理組合の決議 議決権(敷地割合)の3/4以上(注:区分所有者の数は入っていない) 議決権(敷地割合)の3/4以上(注:区分所有者の数は入っていない) 区分所有者の数及び議決権の数(敷地割合)の4/5以上

 

ページ終わり

謝辞:Kzさんの了解により一部転用・編集をしています。

最終更新:
2023年 1月 4日:再再度、見直した。
2022年 2月 2日:見直した。
標準管理規約(団地型)は、令和3年6月22日版にした。
2021年 3月 6日:令和2年(2020年)の出題年を入れた。
2020年 3月29日:令和元年(2019年)の出題年を入れた。
2019年 4月17日:平成30年の出題年を入れた。
2018年 8月 9日:文ちょろちょろと見直した。
2018年 3月27日:都市再開発法を再検討した。
2018年 3月13日:平成29年の出題を入れた。
2017年 4月 7日:平成28年の出題年を入れた。
2016年 9月 9日:都市再開発法による団地の建て替えを、第70条に追加した。
2016年 4月10日:3月31日付の標準管理規約(団地型)の改正に対応した。
2016年 2月24日;平成27年の出題年を入れた。
2015年 4月11日:平成26年の出題年を入れた。
2014年 2月23日:平成25年の出題年を入れた。
2012年 3月18日:第70条に追記、図入。
2012年 3月16日:第69条に、図や記述をかなり詳細に追記。
2011年 9月28日:第70条1項に追記
2011年 8月17日:再確認
2011年 8月12日:第69条で敷地関係の図を入れた。
2011年 8月 8日:第69条の図で附属施設の共有を削除した。
2011年 1月15日:平成22年の出題記入
2010年2月11日:ちょろちょろと加筆
2009年11月14日:あちらこちらを追記
2009年7月6日:第70条1項に憲法違反でない判例追加。
2009年3月26日

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