★★       条 文 の 解 説        ★★

建物の区分所有等に関する法律

(この解説においては、略称:区分所有法 と言う)

第1章 建物の区分所有 第6節 管理組合法人

第四十七条 成立等
第四十八条 名称
第四十八条の二 財産目録及び区分所有者名簿
第四十九条 理事
第四十九条の二 理事の代理権
第四十九条の三 理事の代理行為の委任
第四十九条の四 仮理事
第五十条 監事
第五十一条 監事の代表権
第五十二条 事務の執行
第五十三条 区分所有者の責任
第五十四条 特定承継人の責任
第五十五条 解散
第五十五条の二 清算中の管理組合法人の能力
第五十五条の三 清算人
第五十五条の四 裁判所による清算人の選任
第五十五条の五 清算人の解任
第五十五条の六 清算人の職務及び権限
第五十五条の七 債権の申出の催告等
第五十五条の八 期間経過後の債権の申出
第五十五条の九 清算中の管理組合法人についての破産手続の開始
第五十六条 残余財産の帰属
第五十六条の二 裁判所による監督
第五十六条の三 解散及び清算の監督等に関する事件の管轄
第五十六条の四 不服申立ての制限
第五十六条の五 裁判所の選任する清算人の報酬
第五十六条の六 即時抗告
第五十六条の七 検査役の選任

Y-b.第48条(名称)から 第52条(事務の執行)まで

マンション管理士・管理業務主任者を目指す方のために、区分所有法を条文ごとに解説しました。 

試験問題は、過去の問題から出されるのではありません。条文から出題されます。

条文を勉強することが、合格への道です。

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凡例:各条文は、黒字にて表示。解説は条文の下に緑字にて表示
         

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(名称)

第四十八条

1項  管理組合法人は、その名称中に管理組合法人という文字を用いなければならない。

過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 未記入

「管理組合法人」の文字を用いなければならない...管理組合法人として登記したら必ず「○Xマンション管理組合法人」とか「管理組合法人コーポ○X」のようにどこかに必ず「管理組合法人」の名称を入れること。

★第48条は管理組合法人の名称に関する規定です。

 我が国では、法的に認められた様々な法人の名称を、各自が勝手に使用することをみとめず、各々の法律によって○○株式会社や公益財団法人XX、宗教法人▲▲、医療法人**病院のように一般に法人の種類をその名称中に記載させるのを通例としています。

 これは「株式会社」等特定の「法人」の名称が明記されていれば、これにより取引の相手方に当該法人の概括的な権利能力の範囲(取引可能範囲)や代表者の肩書き(誰と取引すればよいか。)を予め予告することになりますから、取引の円滑に有益な手段といえるでしょう。

 例えば、株式会社や過去に設立が認められていた有限会社のような営利法人では一般にその権利能力は広範に及びますから、代表取締役(株式会社の場合)や取締役(有限会社の場合)と取引すればその取引が否認されるおそれは余りありませんが、一定の目的のために結合した人の団体である社団法人や、一定の財産を集めた財団法人のような場合にはその権利能力の範囲はその法人の目的に強く制約されていて理事と取引しても目的外取引として否認されるおそれがあります。

 そこで、区分所有法によりその設立が認められた管理組合法人は、名称の中に「○▲マンション管理組合法人」と明記すれば、このマンションの管理組合法人は公益法人でもなく株式会社のような営利を目的としたものでもない、中間目的の法人として、その管理組合法人の設立目的は限定された建物の管理というための法人として、権利能力の範囲は公益法人と同様狭いと一般的に判断されることになるでしょう。

 従って、取引の安全性などの目的を達成するために、該当する法人にはその法人の種類の表示を強制し(1項)、且つその法人に該当しない他の法人や個人にはその法人の種類の表示をしてはならない(2項)ことを強制する必要があります。
 第48条の1項および2項はこのような趣旨の規定です。

      ★法人となると事務所も登記して、使う名称も指定されている。

       例:○Xマンション管理組合法人、 管理組合法人コーポ○X, とか。

         「管理組合」と「法人」とを離して用いてはいけないようだ。

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第四十八条

2項  管理組合法人でないものは、その名称中に管理組合法人という文字を用いてはならない。

過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 未記入

★「管理組合法人」という名称は、登記された管理組合法人のみが使える。登記していないマンションでも「管理組合法人」を使わずに「管理組合」だけの文字なら使える。

◎「管理組合法人」でないものが、「管理組合法人」の名称を使うと、過料 ¥10万以下 がある(第72条参照)。(ここだけやや軽い過料 ¥10万以下。他の過料は ¥20万以下) 

<参照> 区分所有法 第72条:

 第四十八条第二項(第六十六条において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、十万円以下の過料に処する。

★過料...刑法上の罰ではない。同じ読み方の科料は刑法上の罰。

この「管理組合法人」の名称違反だけ過料 ¥10万以下。 ほかの過料は全部 ¥20万以下。

        刑法上の刑の種類...重い順に  @死刑 A懲役(無期、有期。監獄で作業) B禁錮(無期、有期。監獄で拘置)

                               C罰金(1万円以上) D拘留(拘留場に30日未満拘置) E科料(千円以上〜1万円未満)

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(財産目録及び区分所有者名簿)

第四十八条の2 (*注: 平成20年12月1日施行内容。第四十八条の次に次の一条を加える。)

1項  管理組合法人は、設立の時及び毎年一月から三月までの間に財産目録を作成し、常にこれをその主たる事務所に備え置かなければならない。ただし、特に事業年度を設けるものは、設立の時及び毎事業年度の終了の時に財産目録を作成しなければならない。

2項  管理組合法人は、区分所有者名簿を備え置き、区分所有者の変更があるごとに必要な変更を加えなければならない。

過去出題 マンション管理士 R03年、H30年、H26年、
管理業務主任者 H26年、H22年、H21年、

★この第48条の2 は、平成20年12月に、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」が施行されたことにより、区分所有法第46条10項で準用していた旧民法第51条の規定が削除されたことにより、旧民法第51条の規定を区分所有法上で追加・明文化したものです。

 <参考> 旧民法第51条

第五十一条: 財産目録及び社員名簿;
 
法人は、設立の時及び毎年一月から三月までの間に財産目録を作成し、常にこれをその主たる事務所に備え置かなければならない。ただし、特に事業年度を設けるものは、設立の時及び毎事業年度の終了の時に財産目録を作成しなければならない。

  2  社団法人は、社員名簿を備え置き、社員の変更があるごとに必要な変更を加えなければならない。


★管理組合法人となると、財産目録と区分所有者名簿を作らなければいけない。
 本第48条の2 は、区分所有者の団体(管理組合)が法人となると、
  @財産目録 と 
  A区分所有者名簿 
 を作成することを義務付けています。

★法人となると、財産目録を作成しなければならない。(1項)

財産目録とは...管理組合法人が保有する総財産の明細書です。
             ここには、動産(パソコン、テレビなど)、不動産(土地・建物)、債権(賃借権など)、債務(借入金など)など、その管理組合法人が保有する全ての資産と負債(プラスもマイナスも)を区分ごとに明確に一覧で記載し管理組合法人の財産状況を明瞭にして、第三者に知らせるとともに、理事個人の財産と管理組合法人との財産の混同を防ぐ目的があります。

*財産目録作成の時期
   管理組合法人が設立された際には、理事は基本となる財産目録を作成し、その後
毎年初3ヶ月以内(1月から3月までの間)に、昨年度末の状態を明瞭にするため、財産目録を新しく作成する必要があります。
   ただし、事業年度(会計年度)が定められている場合には、その事業年度の終わりの状態を明瞭にするために財産目録を新しく作成します。この場合、作成の時期は明文化されていませんが、次年度の初めから3ヶ月以内に作成すべきと考えられています。

*作成した財産目録は、常に事務所に備え付けておき、閲覧できる状況にしてあること。

*財産目録を作成しない場合、また財産目録に不正の記載をすると、理事に、過料 ¥20万以下が罰として与えられる。
   区分所有法第71条6号により、過料となります。

<参照> 区分所有法第71条

第七十一条  次の各号のいずれかに該当する場合には、その行為をした管理者、理事、規約を保管する者、議長又は清算人は、二十万円以下の過料に処する。

6号 第四十八条の二第一項(第六十六条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、財産目録を作成せず、又は財産目録に不正の記載若しくは記録をしたとき。

★管理組合法人となると、区分所有者名簿を作成し、それを事務所に備え置き、また、変更があるたびに訂正しなければならない。(2項)

  管理組合が法人化されていなければ、区分所有者(組合員)名簿の作成は任意ですが、法人化されると、理事は区分所有者名簿を作成し、また建物の専有部分が売買や相続により区分所有者が変更になると、その都度区分所有者名簿を変更することが、義務付けられます。

  ただし、管理組合法人であっても区分所有者名簿の作成については、この場合には、罰則はありませんので、注意してください。これは、下で説明する、区分所有者の氏名を管理組合法人に通知することが、法律で強制されていないためです。
 
 (法の改正があると、出題の対象になりやすい!)

★区分所有者は氏名を管理組合法人に通知することは、義務づけられていない!
  管理組合法人となると、理事は区分所有者(組合員)名簿を作成し、区分所有者に変更があれば、その都度区分所有者名簿を変更しなければならない義務がありますが、区分所有法では、区分所有者からその氏名を管理組合法人へ通知することは義務付けられてはいません。
 そのため、理事は区分所有者の変更が分かっていても、変更した区分所有者に対して、変更に関する事項の提出依頼は出来ますが、その人からの通知がないと、理事の独自の判断で区分所有者名簿は変更ができませんので、注意してください。
 理事が登記簿などで調べて、勝手に区分所有者名簿を変更すると、集会の招集通知(区分所有法第35条2項参照)と同じように、その行為は無効となります。

 実におかしな話ですが。

 なお、標準管理規約では、法人化されていなくても、区分所有者(組合員)の氏名の届出を義務付けています。

 <参照> 標準管理規約31条 (届出義務)  

第31条 新たに組合員の資格を取得し又は喪失した者は、直ちにその旨を書面により管理組合に届け出なければならない。


★「区分所有者名簿」と緊急時などの「区分所有者の名簿」について
 区分所有者の団体が管理組合法人として法人化されれば、明確にこの区分所有法第48条の2 2項により「区分所有者(組合員)の名簿」を作成しますが、法人化されていないマンションの管理組合でも、集会の連絡用として区分所有者の名簿は作成しています。(区分所有法第35条3項参照

  そこで、この区分所有者名簿に、火災や地震など緊急事態での連絡用として、区分所有者以外の同居している家族の氏名や、専有部分が賃貸借関係にあれば、賃借人の氏名や賃借人と同居している人の氏名も記入し、さらに連絡先としての電話番号や勤務先及び勤務先の電話番号も記載された「区分所有者等の名簿」も作成している管理組合がかなりあります。

 しかし、これら「区分所有者名簿」や「区分所有者等の名簿」の取り扱い方については、慎重さが求められます。

 マンションでの適正な管理や、火災や地震などの災害の発生時に緊急連絡を行うために、「区分所有者名簿」や「区分所有者等の名簿」を整備しておくことは重要ですが、個人情報の保護という面から、これらの名簿の利用・保管方法や管理業者に対する名簿の取り扱いのルールは、使用細則を設けて管理組合として明確にすることです。

 なお、個人情報保護法の改正があり、平成29年5月30日施行で、改正前は5,000件以下の個人情報を取り扱う事業者には個人情報保護法の適用はありませんでしたが、改正では、この要件がなくなり、小さな管理組合にも個人情報保護法が適用されますから、注意してください。

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(理事)

第四十九条

1項  管理組合法人には、理事を置かなければならない。

第四十九条  (*注:平成20年12月1日施行内容。) 第四十九条第一項の次に次の一項を加える。

2項  理事が数人ある場合において、規約に別段の定めがないときは、管理組合法人の事務は、理事の過半数で決する。

過去出題 マンション管理士 H28年、H25年、H23年、H18年、H15年、
管理業務主任者

H23年、H19年、H17年、H16年、H15年、H14年、H13年

理事を置かなければならない...区分所有者の団体(管理組合)が法人となると理事の設置は必須となる。(1項)また、監事も置くこと(第50条)。
 ただし、理事・監事を置かないときの罰則はない。人数の制限もない。資格の制限もないが、管理者と違って、法人は理事になれないと解釈されている。(旧
民法第52条1項参照)

 ただし、理事の任期は、管理者と違って、制限があり、原則2年、規約で3年までと決められている。ただし、再選は可能。

<参考>旧民法第52条(理事)

第五十二条  法人には、一人又は数人の理事を置かなければならない。

2  理事が数人ある場合において、定款又は寄附行為に別段の定めがないときは、法人の事務は、理事の過半数で決する。

★役職名「理事」とは → 団体の執行機関

 第49条は、区分所有者の団体(管理組合)が法人になったときの、理事に関する規定です。

 管理組合法人は一定の目的(建物並びにその敷地及び附属施設の管理)をもった人の集団ですから社団法人という団体です。しかし、団体はそれ自体では自然人のように判断し行動できる頭脳や肉体を持たないため、団体を動かすためには自然人の行動が必要になります。
 このような団体を動かす行為を団体事務の執行といい、団体や法人の行動を議決したり意思決定を行う自然人の地位を団体の「
執行機関」といいい、一般社団や財団では、多くの場合、役職名として「理事」とも呼ばれます。
 なお、株式会社では取締役が理事に該当します。


 通常、理事は、対外的には法人を代表し、対内的には法人の業務執行をすることになります。

 *区分所有法では、「理事会」の規定はないことに注意してください。

★理事の資格

 区分所有法では、理事の資格については、特に規定がありませんが、旧民法(第52条)の法人で考えられていた
 1.自然人に限られ、法人は理事になることができない
 2.成年披後見人は理事になることができない
   未成年者および披保佐人は、法定代理人・保佐人の同意を得た上で、理事になれる
 と解釈されます。




 ●法人の理事は自然人に限られ、法人は理事になることができない。
  理事に選任されるということは、その人(自然人)が持つ、意思決定力や業務執行力など個人的な経験や能力が評価されたということです。(現実は、輪番制で、能力を問われずに理事になっていても。)

  個人(自然人)であれば責任関係も明確ですから、適正な業務の執行が図れます。
  他方、法人は人の集団であって、法人の現実の行為は法人を構成しています自然人によって行われ、実体が明確でなく、活動も定款や業務の目的の変更により大きく変わることも多々あります。
  そして、団体である法人においては、責任を追及することが難しいことも多く、法人を理事とすることはできないとなっています。(昭和2年5月19日、大審院刑事部判決)
  
  これを受け、法人では役員や取締役(区分所有法での管理組合法人の理事にあたる)については、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」の役員の資格(第65条1項1号)や会社法の取締役の資格(第331条1項1号)では、法人は役員や取締役になれないと明確に規定しています。

< 参考> 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第65条 及び 第65条の2

 (役員の資格等)
 第六十五条  次に掲げる者は、役員となることができない。
     一  法人

     二  削除 成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者

     三 この法律若しくは会社法(平成十七年法律第八十六号)の規定に違反し、又は民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百五十五条、第二百五十六条、第二百五十八条から第二百六十条まで若しくは第二百六十二条の罪、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律(平成十二年法律第百二十九号)第六十五条、第六十六条、第六十八条若しくは第六十九条の罪、会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第二百六十六条、第二百六十七条、第二百六十九条から第二百七十一条まで若しくは第二百七十三条の罪若しくは破産法(平成十六年法律第七十五号)第二百六十五条、第二百六十六条、第二百六十八条から第二百七十二条まで若しくは第二百七十四条の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
    四 前号に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)

2 監事は、一般社団法人又はその子法人の理事又は使用人を兼ねることができない。

3 理事会設置一般社団法人においては、理事は、三人以上でなければならない。

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第六十五条の二 成年被後見人が役員に就任するには、その成年後見人が、成年被後見人の同意(後見監督人がある場合にあっては、成年被後見人及び後見監督人の同意)を得た上で、成年被後見人に代わって就任の承諾をしなければならない。

2 被保佐人が役員に就任するには、その保佐人の同意を得なければならない。

3 第一項の規定は、保佐人が民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百七十六条の四第一項の代理権を付与する旨の審判に基づき被保佐人に代わって就任の承諾をする場合について準用する。この場合において、第一項中「成年被後見人の同意(後見監督人がある場合にあっては、成年被後見人及び後見監督人の同意)」とあるのは、「被保佐人の同意」と読み替えるものとする。

4 成年被後見人又は被保佐人がした役員の資格に基づく行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。

 < 参考> 会社法 第331条

 (取締役の資格等)
 第三百三十一条  次に掲げる者は、取締役となることができない。
     一  法人

     二  成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者
     三  この法律若しくは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)の規定に違反し、又は金融商品取引法第百九十七条、第百九十七条の二第一号から第十号の三まで若しくは第十三号から第十五号まで、第百九十八条第八号、第百九十九条、第二百条第一号から第十二号の二まで、第二十号若しくは第二十一号、第二百三条第三項若しくは第二百五条第一号から第六号まで、第十九号若しくは第二十号の罪、民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百五十五条、第二百五十六条、第二百五十八条から第二百六十条まで若しくは第二百六十二条の罪、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律(平成十二年法律第百二十九号)第六十五条、第六十六条、第六十八条若しくは第六十九条の罪、会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第二百六十六条、第二百六十七条、第二百六十九条から第二百七十一条まで若しくは第二百七十三条の罪若しくは破産法(平成十六年法律第七十五号)第二百六十五条、第二百六十六条、第二百六十八条から第二百七十二条まで若しくは第二百七十四条の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
    四 前号に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)

(以下、略)

 


★理事は管理組合法人の「執行機関」であり「代表機関」といえる

 法人における執行機関の名称はたとえば、株式会社であれば、取締役のように、法人の種類に応じて様々ですが、管理組合法人では改正前の民法の公益法人と同様の「理事」という名称を採用しています。
 理事は、対内的には、管理組合法人たる社団法人の常設の執行機関(1項)であり、対外的には法人としての代表機関(
新3項)です。

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★理事の員数・管理組合法人の事務新2項

<参照> 区分所有法第49条2項

2 理事が数人ある場合において、規約に別段の定めがないときは、管理組合法人の事務は、理事の過半数で決する。

 管理組合法人においてその業務を執行する理事の数は1名でも複数でもかまいませんが、区分所有法では、たびたび言いますが、区分所有者の団体(第3条参照)とあるだけで管理組合法人においても、理事が集まって会議をする「理事会」という組織が法定化されていません。

★管理組合法人には「理事会」がない!
 理事会を法定化しなかったのは、マンションでは小規模の管理組合もあり、また目的が様々なため、あまり複雑な組織を強制することを区分所有法が嫌った結果といえます。


 しかし、区分所有法が制定され多くのマンションでも「規約」が整備されている現在、区分所有法においても、理事の資格や「理事会」についての規定も必要です。

改正の前には旧民法第52条2項が準用されていました。
 平成20年12月1日に施行された「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」により、
民法の法人の規定が大幅に変更・削除され、該当の民法第52条も削除されたことに伴い、区分所有法で、第49条2項が旧民法第52条2項の条文の「定款又は寄附行為に別段の定めがないとき」が、区分所有法では「規約に別段の定めがないときは」とほぼ条文のまま追加されました。

 この規定にあるように、理事が複数いる場合は理事の過半数で法人の事務を決定するので、事実上「理事会」のようなものを認めているともいえます。
この点、現実に、マンションでは、複数の理事による理事会を構成して管理を行っている管理組合が殆んどですから、立法論的には、度々述べていますが、区分所有者の団体である管理組合をきちんと法制化するべきであったといえます。

 この考え方ををうけ標準管理規約(単棟型)では、理事の集まりである「理事会」を認め、理事を役員として、資格、業務内容などを詳細に規定しています。(ただし、標準管理規約は「法人」を前提としていませんので注意のこと。)

<参考>標準管理規約51条から55条:第5節 理事会  

(理事会)
第51条 理事会は、理事をもって構成する。

理事会は、次に掲げる職務を行う。
   一 規約若しくは使用細則等又は総会の決議により理事会の権限として定められた管理組合の業務執行の決定
   二 理事の職務の執行の監督
   三 理事長、副理事長及び会計担当理事の
選任及び解任

3 理事会の議長は、理事長が務める。


<参考>標準管理規約35条:(役員) 

(役員)
第35条 管理組合に次の役員を置く。
   一 理事長
   二 副理事長 ○名
   三 会計担当理事 ○名
   四 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) ○名
   五 監事 ○名

2 理事及び監事は、総会の決議によって、組合員のうちから選任し、又は解任する

3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事会の決議によって、理事のうちから選任し、又は解任する。

外部専門家を役員として選任できることとする場合

2 理事及び監事は、総会の決議によって、選任し、又は解任する。

3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事会の決議によって、理事のうちから選任し、又は解任する。

組合員以外の者から理事又は監事を選任する場合の選任方法については細則で定める。

注:平成28年3月の改正で、役員になり手がいないこと、またマンションの管理は、普通の区分所有者には難しいことを受け、マンション管理士など外部の専門家も役員になれるように改正した。

<参考>「標準管理規約(単棟型) 第35条関係コメント

第35条関係
@ 管理組合は、建物、敷地等の管理を行うために区分所有者全員で構成される団体であることを踏まえ、役員の資格要件を、当該マンションへの居住の有無に関わりなく区分所有者であるという点に着目して、「組合員」としているが、全般関係Bで示したとおり、
必要に応じて、マンション管理に係る専門知識を有する外部の専門家の選任も可能とするように当該要件を外すことも考えられる。この場合においては、「外部専門家を役員として選任できることとする場合」の第4項のように、選任方法について細則で定める旨の規定を置くことが考えられる。この場合の専門家としては、マンション管理士のほか弁護士、建築士などで、一定の専門的知見を有する者が想定され、当該マンションの管理上の課題等に応じて適切な専門家を選任することが重要である。
 なお、それぞれのマンションの実態に応じて、「○○マンションに現に居住する組合員」((注)平成23年改正前の標準管理規約における役員の資格要件)とするなど、居住要件を加えることも考えられる。

A 理事の員数については次のとおりとする。
  1 おおむね10〜15戸につき1名選出するものとする。
  2 員数の範囲は、最低3名程度、最高20名程度とし、○〜○名という枠により定めることもできる。

B 200戸を超え、役員数が20名を超えるような大規模マンションでは、理事会のみで、実質的検討を行うのが難しくなるので、理事会の中に
部会を設け、各部会に理事会の業務を分担して、実質的な検討を行うような、複層的な組織構成、役員の体制を検討する必要がある。
 この場合、理事会の運営方針を決めるため、理事長、副理事長(各部の部長と兼任するような組織構成が望ましい。)による幹部会を設けることも有効である。なお、理事会運営細則を別途定め、
部会を設ける場合は、理事会の決議事項につき決定するのは、あくまで、理事全員による理事会であることを明確にする必要がある

C 本標準管理規約における管理組合は、
権利能力なき社団であることを想定しているが(コメント第6条関係参照)、役員として意思決定を行えるのは自然人であり、法人そのものは役員になることができないと解すべきである。したがって、法人が区分所有する専有部分があるマンションにおいて、法人関係者が役員になる場合には、管理組合役員の任務に当たることを当該法人の職務命令として受けた者等を選任することが一般的に想定される。外部専門家として役員を選任する場合であって、法人、団体等から派遣を受けるときも、同様に、当該法人、団体等から指定された者(自然人)を選任することが一般的に想定される。なお、法人の役職員が役員になった場合においては、特に利益相反取引について注意が必要である(第37条の2関係参照)。

D 第4項の選任方法に関する細則の内容としては、選任の対象となる外部の専門家の要件や選任の具体的な手続等を想定している。なお、E及び第36条の2関係Aについて併せて参照のこと。

E 外部の専門家を役員として選任する場合には、その者が期待された能力等を発揮して管理の適正化、財産的価値の最大化を実現しているか監視・監督する仕組みが必要である。このための一方策として、法人・団体から外部の専門家の派遣を受ける場合には、派遣元の法人・団体等による報告徴収や業務監査又は外部監査が行われることを選任の要件として、第4項の細則において定めることが考えられる。

*管理組合法人における事務の執行について

 新しく追加された区分所有法第49条2項(元の民法第52条2項)によれば管理組合法人の事務は理事が一人なら単独で、理事が複数ならその過半数で決定し執行することができることになりますが、他方で区分所有法第52条によれば”管理組合法人の
事務はすべて「集会決議」による”とされ、理事の過半数でも決定できないため一見矛盾する両条の関係が問題となります。

<参考>旧民法第52条(理事)

第五十二条  法人には、一人又は数人の理事を置かなければならない。

2  理事が数人ある場合において、定款又は寄附行為に別段の定めがないときは、法人の事務は、理事の過半数で決する。

<参考>区分所有法第52条(事務の執行)

第五十二条  管理組合法人の事務は、この法律に定めるもののほか、すべて集会の決議によつて行う
ただし、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項及び第五十七条第二項に規定する事項を除いて、規約で、理事その他の役員が決するものとすることができる。

<参考>区分所有法第57条(共同の利益に反する行為の停止等の請求)

第五十七条  区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。

2  前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。

3  管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
4  前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。

 これについては区分所有者の団体(管理組合)が法人化前と後で社団組織や権限が変わってしまうのは不当ですから、法人化前と同様に集会が管理組合という社団の最高かつ唯一の意思決定機関であることが原則と理解するべきでしょう。
 従って、管理組合法人の場合は区分所有法第52条が原則規定と考えるべきであり、例外規定(補充規定)たる新しく追加された区分所有法第49条2項(旧民法第52条2項)が準用されるのは区分所有法第52条で事務の決定を複数の理事に委託した場合に適用されるものと考えるべきでしょう。

★理事の代表権とその制限 → 善意の第三者には、対抗(主張)できない

 区分所有法上は「理事会」という組織・機関はありませんから、標準管理規約のように理事が理事会を構成するとしても理事会は管理組合法人の任意組織・機関であり、その理事会の業務範囲は法律の規定に反しない限り自由に設定することができます。

一般には、理事会は集会(総会)決議事項ほどのことではない日常的事項の決議機関と各理事の監督機関という位置付けとなりますが、区分所有法での法定機関でないことから理事会の理事に対する監督としての代表権の制限も善意(事情をしらない)の相手方には対抗できないということになります(新49条の2、旧民法 第54条)。

<参考>旧民法第54条(理事の代理権の制限)

第五十四条  理事の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

★また、理事は複数いても区分所有法上は各自が同等の権限を持ちますので、各自が単独で管理組合法人を代表することになります新4項)。

 ただし、区分所有法では規定されていませんが、通常は、理事は理事会を組織して、理事の互選により理事長を定め、理事長が管理組合法人を代表して、一般理事には代表権を与えないとしますから、理事長等の代表理事を定めること(この結果一般理事は代表が原則としてできなくなる。)や、2名以上の理事が共同してのみ代表権を持つこと(一般には、理事長・副理事長のように2名の共同代表が通常です)が可能です(新5項)。

 理事が行った管理組合法人の業務に関して得た債権や負うことになった債務は、区分所有者(組合員)全員に及びます。

★代表理事や共同代表を定めると、法人登記方法が変わる
  管理組合法人の登記を規定する「組合等登記令」による法人登記では、代表理事を定めた時には、代表理事のみが登記され、共同代表を定めた時には、その旨が登記され、他の理事は登記されませんので、注意してください。(参考 区分所有法47条3項)

★理事の選任・解任

 理事の選任に関しては新8項区分所有法第25条の「管理者の選任・解任」の規定を準用していますから、管理者の場合と同様、理事は規約または集会の普通決議で選任されまたは解任されます。
 理事に不正な行為があるときには、各区分所有者が、裁判所に理事の解任を請求するの場合も管理者の時と同様です(区分所有法第25条2項)。

<参考>区分所有法第25条 (選任及び解任)

第二十五条  区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。

2  管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。

★.理事の任期 〜原則2年間〜 → 規約があれば、最長3年以内まで伸ばせる

 理事の任期即ち管理組合法人と理事たる個人との委任契約の期間は原則2年間とされます(新6項)。
 そこで、2年が経過すれば委任契約は終了しますから理事は当然に退任することになります。(なお、退任は解任ではありません。)

★任期の例外@
   ただし、理事の任期には例外があって、その一つは当該理事の退任により理事がいなくなってしまう場合や、理事の定数に欠員が生じる場合には後任の理事が選任されるまで退任した理事は従前どおりの権利義務をそのまま保有して理事の職務を行うということです(
新7項)。

 このことは理事という執行機関がなくなったことによる委任者の損害を防止するための対策であって、他の法律での委任ついての本質的な取扱い(参照 民法第654条、商法第258条)となっています。

<参考>民法第654条 (委任の終了後の処分)

第六百五十四条  委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者又はその相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない

 ◎理事の解任  〜解任と退任は違う〜
  同様の取扱いは理事の辞任による退任(自らの意思で辞める)の場合も同じですが、
「解任(その職を辞めさせる)」の場合には当該人に理事の職務を認めることは不適当ですから新7項の適用はありません。

 従って、速やかに後任の理事を選任することになります。
 この場合に、後任の理事が選任できない時点で緊急の必要があるときは、裁判所に申し立てて仮理事を選任することも可能です(
新第49条の4 1項、旧民法 第56条)。
この仮理事の選任申立ては区分所有者に限らず管理組合法人に利害関係を持つ相手方もまた可能であり、仮理事選任の管轄裁判所は管理組合法人の事務所(所在地)を管轄する地方裁判所です(
新第49条の4 2項)。

★任期の例外A 〜規約で3年以内まで延長可〜
  もう一つの理事の任期の例外は、実務上理事が通常総会で選任されその開催日時が必ずしも常に365日後とは限らず、また初年度会計期間が1年間より長短の場合には、理事の任期満了までに通常総会が開催されない不都合な事態が起こりうるということです。

 そのときには、
新7項の取扱いとなるわけですが、新7項の例外的救済規定の適用が常に起こるというのも不適当ですから、理事の任期の法定期間を多少延長することにより正規に理事任期と選任のための通常総会の開催との整合を取るほうが望ましいことになります。
 このため、理事の任期:原則2年の法定期間は3年を最長期として規約で延長することができることとし、これにより例えば、2年と厳密に定めず、「理事の任期は2年後の通常総会終結の日までとする」、等の定めが可能です。

 なお、規約で理事の任期を3年以上(例えば、4年)と定めてもその規定は無効で、理事の任期は3年になります。

  なお、多くの場合規約等で「再任は妨げない」となっていれば、該当の理事は2年なり最長の3年の任期が終わり、また理事に選任されれば、理事となります。

 

 現実的には、多くの管理組合(法人も)の理事・監事(通常、役員)の任期は1年が多数です。
 しかし、マンションの管理は様々な問題を抱えていますので、1年の任期中では内情把握で終わり、問題は殆ど解決できません。
 できれば、役員としての継続性を考えると、任期は2年とし、半数は再任された方が、管理組合の運営がスムーズに行えます。

 また、この業務の継続性を考えると、「マンション管理士 香川事務所」 を顧問にすると、管理組合の運営が、スムーズに行われます。

★理事(役員)のなり手がいない
 規約や理事会運営細則などと名目上は、いろいろと取り決めても、現実には、無報酬でトラブルだけを持ち込まれ、個人的な時間をとられる役員になるという奇特な区分所有者は殆どいません。
管理会社も理事長や理事がいないと交渉や関係書類の提出先などで不便なため、役員選出には大いに力をそそぎますが、本来はそのマンションの居住者(区分所有者)が管理の重要性を自覚し解決すべき事項です。

 役員のなり手がいないマンションでは、室ごとの輪番制で強制的に役員にしていますが、積極的に参加する意欲がないため管理はおろそかになります。
独身者が理事長になっても、多忙なため理事会活動が行われないこともあります。
 管理は、他の人がやってくれるものと思って、自分が管理するという意識が区分所有者に欠けているのが現状です。

 何千万円もかけて購入したマンションの管理を、他人任せにするなら、信頼のおけるマンション管理士を顧問として採用することです。

 標準管理規約(単棟型)では、役員は半数が改選で、2年の任期を勧めています。(標準管理規約(単棟型)36条のコメント参照)

<参考>標準管理規約(単棟型)36条:(役員の任期)  

(役員の任期)
第36条 役員の任期は○年とする。ただし、再任を妨げない。

2 補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。

3 任期の満了又は辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任するまでの間引き続きその職務を行う。

4 役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。

外部専門家を役員として選任できることとする場合

4 選任(再任を除く。)の時に組合員であった役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。

---------------------------------------------------

(役員の欠格条項)
第36条の2 次の各号のいずれかに該当する者は、役員となることができない。
   一 精神の機能の障害により役員の職務を適正に執行するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者又は破産者で復権を得ないもの
   二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
   三 暴力団員等(暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者をいう。)

<参考>「標準管理規約(単棟型) 第36条関係コメント 


第36条関係
@ 役員の任期については、組合の実情に応じて1〜2年で設定することとし、選任に当たっては、その就任日及び任期の期限を明確にする。

A 業務の継続性を重視すれば、役員は半数改選とするのもよい。この場合には、役員の任期は2年とする。

B 第4項は、組合員から選任された役員が組合員でなくなった場合の役員の地位についての規定である。第35条第2項において組合員要件を外した場合には、「外部専門家を役員として選任できることとする場合」のような規定とすべきである。それは、例えば、外部の専門家として選任された役員は、専門家としての地位に着目して役員に選任されたものであるから、当該役員が役員に選任された後に組合員となった場合にまで、組合員でなくなれば当然に役員としての地位も失うとするのは相当でないためである。

C 役員が任期途中で欠けた場合、総会の決議により新たな役員を選任することが可能であるが、外部の専門家の役員就任の可能性や災害時等緊急時の迅速な対応の必要性を踏まえると、規約において、あらかじめ補欠を定めておくことができる旨規定するなど、補欠の役員の選任方法について定めておくことが望ましい。また、組合員である役員が転出、死亡その他の事情により任期途中で欠けた場合には、組合員から補欠の役員を理事会の決議で選任することができると、規約に規定することもできる。
 なお、理事や監事の員数を、○〜○名という枠により定めている場合には、その下限の員数を満たさなくなったときに、補欠を選任することが必
要となる。

---------------------------------------

第36条の2関係

@ 選択肢として、役員の資格を組合員に限定することを改め外部の専門家を役員に選任することができるようにしたことを踏まえ、役員の欠格条項を定めるものである。なお、暴力団員等の範囲については、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号)を参考にした。

A 外部の専門家からの役員の選任について、第35条第4項として細則で選任方法を定めることとする場合、本条に定めるほか、細則において、次のような役員の欠格条項を定めることとする。
  ア 個人の専門家の場合
    ・ マンション管理に関する各分野の専門的知識を有する者から役員を選任しようとする場合にあっては、マンション管理士の登録の取消し又は当該分野に係る資格についてこれと同様の処分を受けた者

  イ 法人から専門家の派遣を受ける場合(アに該当する者に加えて)次のいずれかに該当する法人から派遣される役職員は、外部専門家として役員となることができない。
    ・ 銀行取引停止処分を受けている法人
    ・ 管理業者の登録の取消しを受けた法人

 また、「マンション管理標準指針」(平成17年12月)では、理事の任期・改選方法に付き、以下のようにしています。
     ◎標準的な対応...理事の任期が1〜2年の間で定められており、かつ、各理事の就任日及び任期の期限が明確となっている。
     ◎望ましい対応...理事の改選は概ね半数ずつとし、任期は2年となっている。

     総合調査: 役員任期 1年:69.0%
             役員任期 2年:26.9%
             理事は半数ずつ改正:18.6%

★理事の代理

 ところで、理事は民法での委任契約の受任者ですから原則として自らその業務を執行しなければならず、本人(委任者)の承諾なく委任事務を他人に処理させると本旨に添った履行とはなりません。

 この点に関し、新しく設けられた区分所有法
第49条の3(旧民法 第55条と同じ)では規約や総会決議で禁止されていない限り特定の行為の代理(特定の事務)を他人に委任(実質上の再委任)することができるとされています。
 このことは、当該理事の監督下、責任の下であれば具体的事務を他人にさせても委任の本旨に反しないということです。現実にも理事長が他の理事に具体的な事務の一部を分担させていることがこれに該当します。

<参考>旧民法第55条(理事の代理行為の委任)

第五十五条  理事は、定款、寄附行為又は総会の決議によって禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができる。

 問題は、理事の地位全般の代理が認められるかですが、法人の執行機関等の原則的な委任にあっては当然否定することになります。

 しかし、管理組合の場合にはその目的の範囲が明確で、理事については一般に区分所有者であれば特に資格や資質を問わず就任できる地位であることや、区分所有者とその同居の親族ではその資質はもとより当該建物の管理に関して利害関係が共通していることから、区分所有者と一定の関係にあるものとの間で地位の互換性が肯定でき、且つこの地位の互換が実質上の本人たる他の区分所有者の信頼を裏切らない特別の事情が肯定できると思われます。

 従って、一般には、管理組合(法人)の理事は自己の地位を包括的に他人に代理させることは禁止されますが、同居の親族(配偶者等)に委任することは可能であると考えます。
 

★標準管理規約(単棟型)53条のコメントは、この考えを取り入れています。

<参考>標準管理規約(単棟型) 第53条関係コメント  

第53条関係
@
理事は、総会で選任され、組合員のため、誠実にその職務を遂行するものとされている。このため、理事会には本人が出席して、議論に参加し、議決権を行使することが求められる。

A したがって、理事の代理出席(議決権の代理行使を含む。以下同じ。)を、規約において認める旨の明文の規定がない場合に認めることは適当でない。

B 「
理事に事故があり、理事会に出席できない場合は、その配偶者又は一親等の親族(理事が、組合員である法人の職務命令により理事となった者である場合は、法人が推挙する者)に限り、代理出席を認める」旨を定める規約の規定は有効であると解されるが、
 あくまで、やむを得ない場合の代理出席を認めるものであることに留意が必要である。この場合においても、あらかじめ、総会において、それぞれの理事ごとに、理事の職務を代理するにふさわしい資質・能力を有するか否かを審議の上、その職務を代理する者を定めておくことが望ましい。
 なお、外部専門家など当人の個人的資質や能力等に着目して選任されている理事については、代理出席を認めることは適当でない。

C 理事がやむを得ず欠席する場合には、代理出席によるのではなく、事前に議決権行使書又は意見を記載した書面を出せるようにすることが考えられる。これを認める場合には、理事会に出席できない理事が、あらかじめ通知された事項について、書面をもって表決することを認める旨を、規約の明文の規定で定めることが必要である。

D 理事会に出席できない理事に対しては、理事会の議事についての質問機会の確保、書面等による意見の提出や議決権行使を認めるなどの配慮をする必要がある。
また、
WEB会議システム等を用いて開催する理事会を開催する場合は、当該理事会における議決権行使の方法等を、規約や第70条に基づく細則において定めることも考えられ、この場合においても、規約や使用細則等に則り理事会議事録を作成することが必要となる点などについて留意する必要がある。
 なお、第1項の定足数について、理事がWEB会議システム等を用いて出席した場合については、定足数の算出において出席理事に含まれると考えられる。

E 第2項は、本来、@のとおり、理事会には理事本人が出席して相互に議論することが望ましいところ、例外的に、第54条第1項第五号に掲げる事項については、申請数が多いことが想定され、かつ、迅速な審査を要するものであることから、書面又は電磁的方法による決議を可能とするものである。

F 第3項については、第37条の2関係を参照のこと。

 この点、規約にそのような代理の規定が明記された事例(最高裁:平成2年11月26日)で肯定的な判例があり、規約で明記することが望ましいことは確かですが、規約になくとも同様に取り扱うことができると思われます。

{判例}
*事件のあらまし 
 和歌山県内のあるリゾートマンションでは管理規約により、数名の理事が理事会を構成し、理事会の定めるところにより管理組合(但し、この管理組合は法人化されていました。)の業務を行うこととされていました。
しかし、リゾートマンションなので理事が多府県にわたって居住しており、他に職業を持つ人も多かったので、従来から必ずしも理事本人が出席せず、配偶者などの代理人が出席することがしばしばでした。
 そこで、管理組合では臨時総会を開き、満場一致で、「理事に事故があり、理事会に出席できないときは、その配偶者又は一親等の親族に限り、これを代理出席させることができる。」という定めを管理規約に新設する決議をしました。
 これに対し、区分所有者の1人が、そのような管理規約の定めは、旧民法55条(代理権の委任)に違反するから無効であるとして、総会決議無効確認の裁判を起こしたのがこの事件の始まりです。

*判決
〜判決要旨〜 
 区分所有法四七条二項の管理組合法人の規約中、理事に事故があり、理事会に出席できないときは、その配偶者又は一親等の親族に限り、その理事を代理して理事会に出席させることができる旨を定めた条項は、違法でない。

 管理組合法人(以下「管理組合」という。)が、その規約によって、代表権のある理事以外に複数の理事を定め、理事会を設けた場合において、「理事に事故があり、理事会に出席できないときは、その配偶者又は一親等の親族に限り、これを代理出席させることができる」と規定する規約の条項(以下「本件条項」という。)は、区分所有法49条7項の規定により管理組合の理事について準用される民法55条に違反するものでなく、他に本件条項を違法とすべき理由はないと解するのが相当である。
 したがって、理事会における出席及び議決権の行使の代理を許容する定款又は寄付行為が、同条の規定から直ちに違法となるものではない。
 理事会を設けた場合の出席の要否及び議決権の行使方法については、法は、これを自治的規範である規約に委ねているものとすると解するのが相当である。

 (最高裁:平成2年11月26日)

    ★管理組合法人に理事は必須。監事も必ず置くこと(第50条1項)。

   ★理事の資格:規約で制限の無い限り、原則、区分所有者以外(占有者=借りている人)でも理事になれるが、管理者と違って「法人」は理事にできないと解されている。
     しかし、法人が区分所有者であることが多いマンションでは、規約で定めてもよいと思われる。


*以下は、標準管理規約35条の平成23年の改正前の記述です。参考までに。

★標準管理規約(単棟型)旧:35条では、理事と監事の資格を、区分所有法と違って、「そのマンションに居住する区分所有者」に制限している

  区分所有法では、理事(監事も)の資格についての制限は、ありませんが、標準管理規約では、 「理事及び監事は、○○マンションに現に居住する組合員(区分所有者)のうちから、総会で選任する。」と明確に制限していますので注意してください。(標準管理規約(単棟型)35条2項 参照)
  これは、マンション管理は、外部にいる人より内部の人にやらせた方が適切との判断です。

<参考>標準管理規約 旧:35条:(役員) 平成23年の改正前の規約です。 この35条は、また、平成28年3月に改正されています。

第35条 管理組合に次の役員を置く。
   一  理事長
   二  副理事長 ○名
   三  会計担当理事 ○名
   四  理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。)  ○名
   五  監事 ○名

2. 理事及び監事は、○○マンションに現に居住する組合員のうちから、総会で選任する。

3. 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事の互選により選任する。

-----------------------------------------------------------

*平成28年 3月14日の改正の規定

第35条 管理組合に次の役員を置く。
   一 理事長
   二 副理事長 ○名
   三 会計担当理事 ○名
   四 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) ○名
   五 監事 ○名
理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する

*外部専門家を役員として選任できることとする場合

理事及び監事は、総会で選任する
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する。
4 組合員以外の者から理事又は監事を選任する場合の選任方法については細則で定める。

 注:平成28年3月の改正では、外部の専門家(マンション管理士等)が、役員になれるように考えている。

<参照>標準管理規約(単棟型) 旧:第35条関係コメントB 平成23年の改正前のコメントです。 

B 法人が区分所有する専有部分があるマンションにおいては、当該専有部分をどのように利用している場合に、
  第2項の「現に居住する組合員」が存在するとみなして法人関係者から役員になることを認めるか
  法人関係者が役員になる場合には、管理組合役員の任務に当たることを当該法人の職務命令として受けた者に限定する等どのような資格を有する者が実際に役員業務を行うことができるかについて、
あらかじめ規約や細則に定めておくことが望ましい。


 ★理事:マンションの管理を行うので、区分所有者の団体(管理組合)が法人化される前に存在した管理者は、管理組合が法人化されたときは理事となり、管理者と理事は重なることになる。そこで、法人になる前に管理者がいれば、法人になった時に、管理者は自動的に退任したことになる。(第47条11項参照

 ★理事の選任・解任:規約がなければ、集会の普通決議(過半数)で行う。(新8項

1.理事の職務上の権限について
  管理組合法人の理事が管理組合が法人化されていない場合の管理者と違う点は、管理者は区分所有者の代理です(第26条2項)が、管理組合法人では、区分所有者を代理しているのは「管理組合法人」であり、理事は管理組合法人の代表として行う点です。(第47条6項、第49条2項)
 なお、管理組合法人では、区分所有法第27条
「管理所有」は認められていない点も注意してください。

  通常、理事の職務権限は、以下のようになります。

   @ 建物の共用部分(エントランスや階段、廊下など)、敷地、附属施設(駐車場や集会所など)の保存行為を行う権限を有します。
 保存行為とは日常の軽微な修繕、施設の点検等共有財産の現状を維持するために必要な行為をいいます。

   A 管理組合法人の集会の決議を実行し、規約で管理者(理事)の職務権限に属するとされている事項を実施しなければなりません。

   B 損害保険契約に基づく保険金額並びに共有部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求および受領につき区分所有者を代理する管理組合法人の代表として権限を有します。(区分所有法第47条6項)

   C 規約または集会の決議により、その職務に関し、管理組合法人の代表として区分所有者のために裁判の原告または被告になることができます(区分所有法第47条8項)

   D 集会の招集権を有します。なお少なくとも毎年1回は集会を招集する義務があります。(区分所有法第47条12項 -> 準用 第34条第1項、2項)

2.職務上の義務について (管理者と同じである)

  @ 集会において毎年1回一定時期に、その事務に関する報告をしなければなりません。(区分所有法第47条12項 -> 準用 第43条)

  A 規約、議事録、書面決議の書面を保管し、利害関係人から請求があった場合は閲覧させなければなりません(区分所有法第47条12項 ->準用 第33条1項、2項、第42条3項、)

  B 管理者(理事)は民法の委任の規定により、その事務を処理するにつき善良な管理者の注意義務を負い、その義務を怠って区分所有者に損害を与えたときは、これを賠償する責任を負うほか、事務の処理に当たって受け取った金銭その他の物を区分所有者に引き渡す義務等を負います。

 

 

 「質問」
 私どものマンションでは、役員の引き受け手がなかなかいなくて困っています。この際、区分所有者と同居している家族の方も役員に含めたらという意見が出てきました。問題はないでしょうか。

 答え:管理組合は、マンションの区分所有者が自己の責任において維持管理し、その価値を保全していくことを目的としています。区分所有者以外の方が管理組合に加入することはできませんが、役員になることも望ましくないと、考えます。しかしながら、マンションの実情を考慮し、同居の配偶者や親子等を認めるケースも考えられます。その場合は必ず総会の特別決議で規約を改正してから行わなければなりません。

{例}「理事に事故があり、理事会に出席できないときは、その配偶者または一親等の親族に限り、これを代理出席させることができる」旨の規約は違法ではないとした判例がある。


{設問-1} 規約を改正すれば、理事及び監事の資格を区分所有者と同居する親族に広げることができるか。

答え:できる。 
 理事および監事の役員資格に関して、区分所有法には特に規定がないので、規約で可能。
なお、マンション標準管理規約旧:35条では、資格を:理事・監事は○○マンションに現に居住する組合員とされていた。


{設問-2} 規約を改正しても、理事及び監事の資格を区分所有者以外の占有者に広げることはできないか。

答え:できる。
 これも、区分所有法には特に規定がないので、規約を改正すれば、理事・監事の資格を区分所有者以外の占有者に広げることができる。


{設問-3} 規約を改正しても、理事及び監事の資格を法人である区分所有者に広げることはできないか。

答え:できる。 
 管理組合法人でれば理事・監事は自然人でなければならないと解釈されているが
  法人格をもたない管理組合(権利能力なき社団)にあっては、理事・監事は自然人である必要はなく、法人であってもよい。また、規約があれば 「法人である区分所有者に広げること」は、できる。


{設問-4}規約を改正すれば、理事及び監事の資格要件を広げることはできるが、理事長以外の者を区分所有法に定める管理者とすることはできないか。

答え:できる。 
 規約を改正すれば、理事・監事の資格要件を広げることができる。
また、区分所有法では、管理者の資格要件は特に規定がないことから、規約を改正すれば、理事長以外の者を管理者とすることができる。理事長と管理者が並立してもいい。

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第四十九条  (*注:平成20年12月1日施行内容。) 第四十九条第一項の次に次の一項を加える。

2項  理事が数人ある場合において、規約に別段の定めがないときは、管理組合法人の事務は、理事の過半数で決する。

過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者

未記入

●この区分所有法第49条2項の追加は、以前は旧民法第52条2項が準用されていたのが、平成20年12月1日に施行された「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」により、民法の法人の規定が大幅に変更・削除され、、該当の民法第52条も削除されたことに伴い、区分所有法として、旧民法第52条2項の条文の「定款又は寄附行為」「規約」に一部置き換えて追加されたものです。

<参考>旧民法第52条(理事)

第五十二条  法人には、一人又は数人の理事を置かなければならない。

2  理事が数人ある場合において、定款又は寄附行為に別段の定めがないときは、法人の事務は、理事の過半数で決する。


★ 管理組合法人においては、理事の設置は必須で、また複数の理事がいてもかまいません。
  複数の理事が存在して、各理事が勝手に事務を処理したのでは、団体としての統一がとれませんから、理事間で協議し、特に規約で定めていない限り、理事の多数決に従います。

 また、管理組合法人の事務とは、理事の職務として第49条1項で説明しましたように、建物のエントランスや階段・廊下などの共用部分、敷地、集会所などの附属施設の保存行為や、集会の招集などのことで、これらをやるかどうかを、理事の過半数をもって決めます。
なお、保存行為については、各理事が単独でできるかどうかは、区分所有法第52条との関係で争いのあるところです。

 そして、各理事は連帯して責任を負い、職務を執行します。

 なお、区分所有法第52条の「管理組合法人の事務は、この法律に定めるもののほか、すべて集会の決議によつて行う」との関係については、1項の解説を読んでください。

<参照> 区分所有法第52条 (事務の執行)

第五十二条  管理組合法人の事務は、この法律に定めるもののほか、すべて集会の決議によつて行う。ただし、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項及び第五十七条第二項に規定する事項を除いて、規約で、理事その他の役員が決するものとすることができる。

2  前項の規定にかかわらず、保存行為は、理事が決することができる。


*マンション管理士試験の争点 〜保存行為は、理事が単独で行えるか〜

{設問-1} 平成28年 マンション管理士試験 「問9」

〔問 9〕管理組合法人の事務に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 管理組合法人の事務のうちの保存行為について、複数の理事がいる場合、規約に別段の定めがないときは、各理事が単独で決することができる。

X 誤っている?  稲本洋之助・鎌野邦樹氏の解釈では、保存行為でも複数の理事がいれば、規約に別段の定めがないときは、理事の過半数で決する?
 平成23年 マンション管理士試験 「問6」 

 誤っているとする根拠が不明で、図書館に行って、区分所有法の基本となっている、今は削除された民法の法人の規定を、我妻 栄版や川島武則版など多くの参考書を読んだが、明確な解答は無かった。

 まずマンションでの保存行為とは、区分所有法第18条1項
 「(共用部分の管理)
 第十八条  共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。」
 とあるように、保存行為とは、共用部分ならびに建物の敷地および附属施設を維持する行為です。
 基本的に保存行為であれば、各共有者ができる程度のものです。

 そこで、管理組合が法人となると基本となるのは、区分所有法第49条2項
 「(理事)
  
2  理事が数人ある場合において、規約に別段の定めがないときは、管理組合法人の事務は、理事の過半数で決する。
 この規定に、保存行為も入ると解釈されているのかどうかということです。

 参考になるのは、今は削除された、旧民法第52条2項に、
 「1法人には、1人又は数人の理事を置かなければならない。
 2  理事が数人ある場合において、定款又は寄附行為に別段の定めがないときは、法人の事務は、理事の過半数で決する。 」
 とあり、
 区分所有法第49条2項は、旧民法にあった法人の規定が削除されたことにより、以前は準用とあったものが、新設されたものです。
 そこで、旧民法第52条2項にある「法人の事務は、理事の過半数で決する」に、保存行為も入るかどうかを図書館などで調べたのですが、昔の民法の参考書にも明確にはないし、また新しい民法の参考書にも、法人での「保存行為」も理事の過半数を要するとはありませんでした。

 そして、一方、区分所有法第52条
 「(事務の執行)
 第五十二条  管理組合法人の事務は、この法律に定めるもののほか、すべて集会の決議によつて行う。ただし、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項及び第五十七条第二項に規定する事項を除いて、規約で、理事その他の役員が決するものとすることができる。
 
2  前項の規定にかかわらず、保存行為は、理事が決することができる。
 とあります。
 区分所有法第52条によれば、原則として管理組合法人の事務は、集会の決議に基づかなければならないが、2項では、保存行為の例外を認め、理事が決することができるとあります。
 
 では、区分所有法第49条2項の
 「2  理事が数人ある場合において、規約に別段の定めがないときは、管理組合法人の事務は、理事の過半数で決する」
 と区分所有法第52条2項の
 「2  前項の規定にかかわらず、保存行為は、理事が決することができる」
 との関係はどうなるかということです。

  マンション管理士 香川 としては、管理組合法人での「保存行為」は、その性質上、各共有者もできることなどから、法人においても各理事が、単独でできると解釈します。

 但し、「コンメンタール マンション区分所有法」:稲本洋之助・鎌野邦樹著(日本評論社版)によると、「保存行為の決定:理事が数人ある場合には、旧民法52条2項(区分所有法第49条2項)により、規約に別段の定めがない限り、理事の過半数をもって決定する」との記載があった。
 しかし、その「コンメンタール マンション区分所有法」においても、「管理組合法人の事務のうち、保存行為については、法律上当然に、理事が決することができる」とあり、それなら理事が複数であっても、保存行為は理事が単独でできると矛盾を感じる。

 出題としても、不適切だ。


★理事の責任
 @民事責任...理事(役員)がその任務に背いて、管理組合に損害を与えた時には、その理事(役員)は、管理組合に対して損害賠償責任があります。
 A刑事責任...管理組合の業務上、理事(役員)が関係する刑事責任としては、業務上横領(刑法第253条)と背任罪(刑法第247条)が考えられます。

 <参照> 刑法第253条:(業務上横領)

第二百五十三条  業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

<参照>刑法第247条:(背任)

第二百四十七条  他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

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第四十九条

(旧2項)  理事は、管理組合法人を代表する。

第四十九条  (*注:平成20年12月1日施行内容。)

3項  理事は、管理組合法人を代表する。

第二項を第三項とする。

過去出題 マンション管理士 H24年、H22年、H21年、H15年、
管理業務主任者 H25年、H22年、H19年、H17年、

代表とは...甲がある行為をしたときに、法律上、乙がしたのと同じ効果を生じることのできるときの甲のことを言う。
          私法上、代理人と代表の明確な違いはないとされる。

★区分所有法では、理事は管理組合法人を代表(管理組合法人の仕事=業務を行う権限と責任がある)するが、マンションの区分所有者から与えられている代理権の帰属先はあくまでも管理組合法人の方にあり、理事個人ではない。
 区分所有者の団体(管理組合)が法人化される前の「管理者」は、区分所有者を代理する。(第26条2項)

 
「理事が区分所有者を代理する」となっていないことに注意。

    ★理事の行為の効果がすべて法人に及ぶ。

    ★代表権の範囲:規約・集会の決議の制限範囲内。また管理組合法人と理事の利益が相反する場合を除いて、管理組合法人の一切の事務に及ぶ。

★管理組合法人には、理事の設置が必須なので法人化されていない場合に同じような職務を行う管理者は置けない。(管理者の規定:第4節(第25条から、第27条の管理所有を含めて、第29条まで)が適用外になっている。11項参照)

 

 

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第四十九条

(旧3項)  理事が数人あるときは、各自管理組合法人を代表する。

第四十九条   (*注:平成20年12月1日施行内容。)

4項  理事が数人あるときは、各自管理組合法人を代表する。

第三項を第四項とする。

過去出題 マンション管理士 H25年、H18年、
管理業務主任者 R02年、H22年、H20年、H17年、H14年、

★理事は複数いてもいい。代表権を特定の理事に与えるなら、次の新5項に規定される。

      通常、各理事が管理組合法人を代表している。

★理事の人数の目安:
  最低、理事には、理事長、理事、会計担当理事を考慮し、区分所有者の数に関係なく3名は欲しいところですが、なかなか、なり手がいないのが実情です。
 監事は、業務が異なるため、通常役員とされますが、理事の一人ではありません。別に1名必要です。

<参照>標準管理規約;第35条のコメントA 

  A理事の員数については次のとおりとする。
   1 おおむね10〜15戸につき1名選出するものとする。
   2 員数の範囲は、最低3名程度、最高20名程度とし、○〜○名という枠により定めることもできる。

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第四十九条

(旧4項) 前項の規定は、規約若しくは集会の決議によって、管理組合法人を代表すべき理事を定め、若しくは数人の理事が共同して管理組合法人を代表すべきことを定め、又は規約の定めに基づき理事の互選によって管理組合法人を代表すべき理事を定めることを妨げない。

第四十九条  (*注:平成20年12月1日施行内容。)

5項  前項の規定は、規約若しくは集会の決議によって、管理組合法人を代表すべき理事を定め、若しくは数人の理事が共同して管理組合法人を代表すべきことを定め、又は規約の定めに基づき理事の互選によって管理組合法人を代表すべき理事を定めることを妨げない。

第四項を第五項とする。

過去出題 マンション管理士 H27年、H23年、H15年、H14年、
管理業務主任者 R03年、R01年、H23年、H20年、H17年、

★規約・集会の決議で、管理組合法人を代表する理事=理事長を1人、または複数(共同代表制)決めていい。

★代表権のない理事もあり得る。

★管理組合(法人)における役員の構成と職務内容

 法人化に関係なく管理組合では、通常、集会(総会)において役員(理事・監事)を選出します。この役員は標準管理規約35条では、次のような構成と職務内容になります。

<参考>標準管理規約 35条:(役員)  

(役員)
第35条 管理組合に次の役員を置く。
   一 理事長
   二 副理事長 ○名
   三 会計担当理事 ○名
   四 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) ○名
   五 監事 ○名

2 理事及び監事は、総会の決議によって、組合員のうちから選任し、又は解任する

3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事会の決議によって、理事のうちから選任し、又は解任する

外部専門家を役員として選任できることとする場合

2 理事及び監事は、総会の決議によって、選任し、又は解任する。

3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事会の決議によって、理事のうちから選任し、又は解任する。

4 組合員以外の者から理事又は監事を選任する場合の選任方法については細則で定める。


 注:平成28年3月の改正では、外部の専門家(マンション管理士等)が、役員になれるように考えている。

 ★理事長の職務は、標準管理規約では次のように規定しています。

<参考>標準管理規約38条(理事長)  

(理事長)
第38条 理事長は、
管理組合を代表し、その業務を統括するほか、次の各号に掲げる業務を遂行する。
   一 規約、使用細則等又は総会若しくは理事会の決議により、理事長の職務として定められた事項
   二 理事会の承認を得て、職員を採用し、又は解雇すること。

理事長は、区分所有法に定める管理者とする

3 理事長は、
通常総会において、組合員に対し、前会計年度における管理組合の業務の執行に関する報告をしなければならない。

4 理事長は、○か月に1回以上、職務の執行の状況を
理事会に報告しなければならない。

5 理事長は、理事会の承認を受けて、他の理事に、その職務の一部を委任することができる。

6 管理組合と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合においては、監事又は理事長以外の理事が管理組合を代表する。

<参考>「標準管理規約(単棟型) 第38条関係コメント 

第38条関係
@ 例えば植栽による日照障害などの日常生活のトラブルの対応において、日照障害における植栽の伐採などの重要な問題に関しては
総会の決議により決定することが望ましい。

A 第3項について、
WEB会議システム等を用いて開催する通常総会において、理事長が当該システム等を用いて出席し報告を行うことも可能であるが、WEB会議システム等を用いない場合と同様に、各組合員からの質疑への応答等について適切に対応する必要があることに留意すべきである。

B 第4項は、理事長が職務の執行の状況を理事会に定期的に(例えば、「3か月に1回以上」等)報告すべき旨を定めたものである。なお、
WEB会議システム等を用いて開催する理事会において、理事長が当該システム等を用いて出席し報告を行うことも可能であるが、WEB会議システム等を用いない場合と同様に、各理事からの質疑への応答等について適切に対応する必要があることに留意すべきである。

C 第6項については、第37条の2関係を参照のこと。


★他の具体的な、理事長の職務は、

        *管理組合規約の保管と閲覧

        *管理組合理事長の公印の保管

        *各契約書類、協定書等承継書類の保管

        *管理委託業務契約、修繕請負工事契約、駐車場利用契約、保険契約などの契約締結と各契約書の保管

        *請求書等支払に関する決裁

        *理事長名による受発信文書の処理および保管

        *管理費等の未納者に対する法的措置に伴う原告

        *通常総会において、前会計年度における管理組合の業務の執行に関する報告と議事録の作成と保管

        *総会、理事会の議長

        *必要の都度理事会を招集する、なお招集について監事に通知する

        *理事会の議事録を事務所(管理組合法人の時)において保管し、組合員の請求があったときは、閲覧させる

        *会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿の作成と保管と利害関係人への閲覧

        *領収書や請求書の保管

        *理事会の決議を経て、共同生活の秩序を乱す行為者(区分所有者、同居人、占有者など)への必要な勧告、指示

        *訴訟における原告、被告 (この場合には、遅滞無く区分所有者に通知のこと)

★代表の理事(理事長)を定めたときには、登記では、代表理事だけの氏名、住所及び資格が登記事項となります。(参照:組合等登記令。区分所有法第47条3項))

  そのその場合には、他の理事の氏名などは、登記されませんので注意してください。

  また、複数の人が共同で代表する場合には、共同代表として記載されます。

<参照>組合等登記令 (設立の登記)

第二条  組合等の設立の登記は、その主たる事務所の所在地において、設立の認可、出資の払込みその他設立に必要な手続が終了した日から
二週間以内にしなければならない。

2  前項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
  一  目的及び業務
  二  名称
  三  事務所の所在場所
 
 四  代表権を有する者の氏名、住所及び資格

  五  存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由

  六  別表の登記事項の欄に掲げる事項

*説明
1.目的及び業務...「建物並びにその敷地及び附属施設の管理」
2.名称....必ず○Xマンション「管理組合法人」または「団地管理組合法人」の名称を入れること
3.事務所の所在場所...普通、マンションの建物内になる。管理事務所があればそこにしていいが、管理事務所がない時は、通常、理事長の部屋番号となり、この場合、理事長が変わると、事務所の変更届けも出さなければいけない。
4.代表権を有する者の氏名、住所及び資格...理事が数人あれば、その全員を記載するが、代表理事が選任されたときは、その代表理事についてだけ記載する。それ以外の理事については記載されない。証明の書面としては、通常、議事録が必要で、また、代表権を有する理事の承諾書も必要。
 また、監事は登記事項ではない。

 これが、面倒な手続きです。
5.存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由...これは、通常、定めませんから、記入なしです。

6.別表の登記事項の欄に掲げる事項... 別表は、以下の内容です。

<参照>組合等登記令 別表 (第一条、第二条、第六条、第十七条、第二十条関係)

 名称 : 管理組合法人、団地管理組合法人
 根拠法:   建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)
 登記事項: 
共同代表の定めがあるときは、その定め

*説明
共同代表の定めがあるときは、その定め ...役員に関する事項の最後に、たとえば、「理事 甲野太郎 及び 理事 乙野二郎 は共同して代表する」のように記載する。

 ★理事の変更など、登記事項に変更があれば、2週間以内にその変更をすること(組合等登記令第3条1項)

<参照>組合等登記令第3条 (変更の登記)

第三条  組合等において前条第二項各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その主たる事務所の所在地において、変更の登記をしなければならない。

2  前項の規定にかかわらず、出資若しくは払い込んだ出資の総額又は出資の総口数の変更の登記は、毎事業年度末日現在により、当該末日から四週間以内にすれば足りる。
3  第一項の規定にかかわらず、資産の総額の変更の登記は、毎事業年度末日現在により、当該末日から二月以内にすれば足りる。

★区分所有法には規定がありませんが、副理事長の職務は、標準管理規約では次のように規定しています。

<参考>標準管理規約39条:(副理事長) 

第39条 副理事長は、理事長を補佐し、理事長に事故があるときは、その職務を代理し、理事長が欠けたときは、その職務を行う。

★一般の理事、会計担当理事の職務は、標準管理規約では次のように規定しています。

<参考>標準管理規約40条:(理事) 

第40条 理事は、理事会を構成し、理事会の定めるところに従い、管理組合の業務を担当する。

2 理事は、管理組合に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、直ちに、当該事実を監事に報告しなければならない。

3 会計担当理事は、管理費等の収納、保管、運用、支出等の会計業務を行う。

★監事の職務は、標準管理規約では以下のとおりです。

<参考>標準管理規約41条:(監事) 

第41条 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。
   ★単に管理組合の財産の監査だけでなく、管理組合の業務の執行状況も含まれていることに注意

2 監事は、いつでも、理事及び第38条第1項第二号に規定する職員に対して業務の報告を求め、又は業務及び財産の状況の調査をすることができる。

3 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる。
  *注意:監事は、特別に「臨時総会」を招集するだけで、「通常総会」ではありません。

4 監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。
  *注:ただし、議決権はない。

5 監事は、理事が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令、規約、使用細則等、総会の決議若しくは理事会の決議に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を理事会に報告しなければならない。

6 監事は、前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、理事長に対し、理事会の招集を請求することができる。

7 前項の規定による請求があった日から
5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合は、その請求をした監事は、理事会を招集することができる。

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第四十九条

(旧5項)  理事の任期は、二年とする。ただし、規約で三年以内において別段の期間を定めたときは、その期間とする。

第四十九条  (*:平成20年12月1日施行内容。)

6項  理事の任期は、二年とする。ただし、規約で三年以内において別段の期間を定めたときは、その期間とする。

第四十九条第五項を第四十九条第六項とする。

過去出題 マンション管理士 R01年、H27年、H23年、H22年、H19年、H18年、
管理業務主任者 R02年、R01年、H26年、H22年、H17年、H14年、

★.理事の任期 〜原則2年〜 規約で3年まで伸ばせる(短くすることもできる)。ただし、3年を超える期間が規約で定められている時には、3年に短縮される。

  なお、この第49条6項と次の7項の規定は、監事にも準用されます。(第50条4項参照)

★管理組合法人の理事の任期即ち管理組合法人と理事たる個人との委任契約の期間は、原則、2年間とされます。
 2年経過すれば委任契約は終了しますから理事は当然に退任することになります。 なお、どうして1年でなく2年としたのかは、立法者の気分のようです。

★退任と解任は違う
 ただし、理事の任期には、例外があって、その一つは当該理事の退任により理事がいなくなってしまう場合や理事の定数に欠員が生じる場合には後任の理事が選任されるまで退任した理事は従前どおりの権利義務をそのまま保有して理事の職務を行うということです(新7項)。
 このことは執行機関不存在の空白期間による委任をした本人の損害を防止するための対策であって、他の法律の委任に本質的な取扱い(民法 第654条、商法第258条)となっています。

 同様の取扱いは理事の辞任による退任の場合も同じですが、「解任」の場合にはその人に理事の職務を認めることは不適当ですから新7項の適用はありません。
従って、解任の場合には、速やかに後任の理事を選任することになります。
 理事を解任した場合に、後任の理事が選任できない時点で緊急の必要があるときは、裁判所に申し立てて仮理事を選任することも可能です(新49条の4 1項、旧民法 第56条)。
 この仮理事の選任申立ては区分所有者に限らず管理組合法人と利害関係がある相手方もまた可能であり、仮理事選任の管轄裁判所は管理組合法人の事務所(所在地)を管轄する地方裁判所です(新49条の4 2項)。

規約で3年まで伸ばせる
 理事(監事)の任期が2年である原則に対するもう一つの例外は、実務上理事が通常総会で選任されその開催日時が必ずしも常に1年の365日後とは限らず、また初年度会計期間が1年間より長短の場合には、理事の任期満了までに通常総会が開催されない不都合な事態が起こりうるということです。
そのときには、新7項の取扱いとなるわけですが、新7項の例外的救済規定の適用が常に起こるというのも不適当ですから、理事の任期の法定期間を多少延長することにより正規に理事任期と選任のための通常総会の開催との整合を取るほうが望ましいことになります。
このため、理事の任期の法定期間は3年を最長期として規約で延長することができることとし、これにより例えば「理事の任期は2年後の通常総会終結の日までとする」、等の定めが可能です。

   ★理事の任期:原則2年だけど、規約で最長3年まで可能。(注意:1年とか短くもできる。伸ばす方だけを覚えないように!)

    現実には役員の任期は、規約で1年交代制が多い。しかし、理事会の継続性を保つため、任期は2年とし、うち半数は再任とするのが望ましい。

<参考>標準管理規約36条:(役員の任期) 及び第36条の2 

第36条 役員の任期は○年とする。ただし、再任を妨げない。

2 補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。

3 任期の満了又は辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任するまでの間引き続きその職務を行う。

4 役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。

*外部専門家を役員として選任できることとする場合

4 選任(再任を除く。)の時に組合員であった役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。

---------------------------------------

(役員の欠格条項)
第36条の2 次の各号のいずれかに該当する者は、役員となることができない。
   一 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
   二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
   三 暴力団員等(暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者をいう。)

<参考>「標準管理規約(単棟型) 第36条関係コメント 

@ 役員の任期については、組合の実情に応じて1〜2年で設定することと し、選任に当たっては、その就任日及び任期の期限を明確にする。

A 業務の継続性を重視すれば、役員は半数改選とするのもよい。この場合には、役員の任期は2年とする。

B 第4項は、組合員から選任された役員が組合員でなくなった場合の役員の地位についての規定である。第35条第2項において組合員要件を外 た場合には、「外部専門家を役員として選任できることとする場合」のような規定とすべきである。それは、例えば、外部の専門家として選任された役員は、専門家としての地位に着目して役員に選任されたものであるから、当該役員が役員に選任された後に組合員となった場合にまで、組合員でなくなれば当然に役員としての地位も失うとするのは相当でないためである。

C 役員が任期途中で欠けた場合、総会の決議により新たな役員を選任することが可能であるが、外部の専門家の役員就任の可能性や災害時等緊急時の迅速な対応の必要性を踏まえると、規約において、あらかじめ補欠を定めておくことができる旨規定するなど、補欠の役員の選任方法について定めておくことが望ましい。また、組合員である役員が転出、死亡その他の事情により任期途中で欠けた場合には、組合員から補欠の役員を理事会の決議で選任することができると、規約に規定することもできる。
 なお、理事や監事の員数を、○〜○名という枠により定めている場合には、その下限の員数を満たさなくなったときに、補欠を選任することが必要となる。

---------------------------------
第36条の2関係
@ 選択肢として、役員の資格を組合員に限定することを改め外部の専門家を役員に選任することができるようにしたことを踏まえ、役員の欠格条項を定めるものである。なお、暴力団員等の範囲については、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号)を参考にした。

A 外部の専門家からの役員の選任について、第35条第4項として細則で選任方法を定めることとする場合、本条に定めるほか、細則において、次のような役員の欠格条項を定めることとする。
   ア 個人の専門家の場合
    ・ マンション管理に関する各分野の専門的知識を有する者から役員を選任しようとする場合にあっては、マンション管理士の登録の取消し又は当該分野に係る資格についてこれと同様の処分を受けた者
  イ 法人から専門家の派遣を受ける場合(アに該当する者に加えて)次のいずれかに該当する法人から派遣される役職員は、外部専門家として役員となることができない。
   ・ 銀行取引停止処分を受けている法人
   ・ 管理業者の登録の取消しを受けた法人

★「マンション管理標準指針」での望ましい対応
 国土交通省の調べでは、(平成17年)、役員の任期は 1年が 69.0%、 2年が 26.9% である。
 できれば、理事の改選は概ね半数ずつとし、任期は2年としたい。

*注意:管理組合法人での理事については区分所有法で任期を定めているが、法人でないときの「管理者」には、区分所有法では任期の規定はない。
     出題された文章をよく読んで法人かどうかを区別のこと。

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第四十九条 (*注1:改正 下線部 挿入された。)

(旧6項)  理事が欠けた場合又は規約で定めた理事の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した理事は、新たに選任された理事(次項において準用する民法第五十六条 の仮理事を含む。)が就任するまで、なおその職務を行う。

第四十九条  (*:平成20年12月1日施行内容。)

7項  理事が欠けた場合又は規約で定めた理事の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した理事は、新たに選任された理事(第四十九条の四第一項の仮理事を含む。)が就任するまで、なおその職務を行う。

第四十九条第六項中「次項において準用する民法第五十六条」を「第四十九条の四第一項」に改める。

第四十九条第六項を第四十九条第七項とする。

過去出題 マンション管理士 H29年、H27年、H25年、H19年、H15年、
管理業務主任者 H22年、

★理事がいなくった時:以前の理事が新しく理事の選任があるまで、職務を行う。

  なお、本7項の規定は、前の6項と共に監事にも準用されます。(第50条4項参照)

★管理組合法人においては、理事(監事も)もその設置は必須です。(第49条1項参照)
 そこで、ある理事が退任して、理事が一人もいなくなってしまう場合や理事の定数に欠員が生じる場合には後任の理事が選任されるまで
退任した理事は従前どおりの権利義務をそのまま保有して理事の職務を行います。

このことは執行機関不存在の空白期間による委任した本人の損害を防止するための対策であって、委任に本質的な取扱い(民法第654条、商法第258条)となっています。

<参考>民法 第654条(委任の終了後の処分)

第六百五十四条  委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者又はその相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。

★「解任」と「退任」は事情が違う

 同様の取扱いは理事の辞任による退任の場合も同じですが、「解任」の場合にはその人に理事の職務を認めることは不適当ですから新7項の適用はありません。

従って、速やかに後任の理事を選任することになります。
 また、規約で理事の資格を定めていて(例えば、理事は区分所有者(組合員)に限るとの規約がある場合、理事が専有部分を譲渡して区分所有者でなくなった場合など)、「資格の喪失」に該当するときには新7項の適用はありません。
 この場合に、後任の理事が選任できない時点で緊急の必要があるときは、裁判所に申し立てて仮理事を選任することも可能です(新第49条の4 1項、旧民法 第56条)。

<参考>旧民法56条(仮理事)

第五十六条  理事が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、仮理事を選任しなければならない。

 この仮理事の選任申立ては区分所有者に限らず、管理組合法人と利害がある相手方もまた可能であり、仮理事選任の管轄裁判所は管理組合法人の事務所(所在地)を管轄する地方裁判所です(新第49条の4 2項)

      ここの条件は@任期の満了 と A辞任 の時にだけ、新たに選任された理事が就任するまで、その職務を行う で、解任や資格の喪失で退任したら、もうその職はない


{設問} 管理組合法人の理事に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。

1 区分所有者である法人を理事に選任することはできない。

答え:正しい。 
 理事の規定は、区分所有法第49条にあり、規定では、法人が理事になることは、禁止されていないが、現在の解釈上、法人の機関は自然人であることを有するから区分所有者である法人を理事に選任することはできない。(旧民法52条1項参照)。なお、法人化されていない場合の管理者には法人も可能。また、規約があれば、法人化された管理組合においても、法人でも理事は可能である。

2 区分所有者の配偶者を理事に選任することはできる。

答え:正しい。 
 区分所有法第49条によれば、理事の資格に制限は無いから区分所有者の配偶者を理事に選任することはできる。

3 規約により、理事が事故により理事会に出席できないときは、その配偶者を理事会に代理出席させることとすることはできる。

答え:正しい。 
 判例によれば、規約により、理事が事故により理事会に出席できないときは、その配偶者を理事会に代理出席させることとすることはできる。(最高裁 平成2年11月26日)

4 集会の決議による解任で退席をした理事は、後任者が就任するまでの間は、引き続きその職務を行う義務を負う。

答え:間違い。 
 区分所有法第49条新7項によれば、任期の満了または辞任により退任した理事は、後任者が就任するまでの間は、引き続きその職務を行う義務を負うことが規定されているが、集会の決議による解任で退席をした理事は、後任者が就任するまでの間は、引き続きその職務を行う義務を負うことは規定されておらず、その結果は解任の趣旨に反する。

正解:4

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第四十九条

(旧7項)  第二十五条、民法第五十二条第二項 及び第五十四条 から第五十六条 まで並びに非訟事件手続法 (明治三十一年法律第十四号)第三十五条第一項 の規定は、理事に準用する。

第四十九条 (*:平成20年12月1日施行内容。)

8項  第二十五条 の規定は、理事に準用する。

第四十九条第七項中「、民法第五十二条第二項及び第五十四条から第五十六条まで並びに非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第三十五条第一項」を削る。

第四十九条第七項を第四十九条第八項とする。

過去出題 マンション管理士 H24年、H19年、H17年、H15年、
管理業務主任者 H18年、H17年、H14年、

★この第49条8項は、平成20年12月に、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」が施行されたことにより、準用していた旧民法第52条2項から第56条の規定が削除されたことにより、変更されたものです。
 なお、準用していた旧
民法第52条2項の規定

 <参考> 旧民法第52条;

2  理事が数人ある場合において、定款又は寄附行為に別段の定めがないときは、法人の事務は、理事の過半数で決する。


  は、区分所有法第49条2項に挿入されています。

 また、旧民法第54条から第56条、及び非訴訟事件手続法第35条1項は、新しく区分所有法第49条の2 から 同第49条の4 として追加・明文化されています


★管理組合法人の理事は、法人化されていない場合の管理者と同じ扱いで解任・選任される。(第25条参照)。
  しかし、管理者には、個人以外の自然人でない法人もなれるが、原則、、管理組合法人の理事には、法人はなれないと解される。
  ただし、規約で法人も理事に認めることは可能である。


★準用内容
  準用されています、区分所有法第25条は、管理者の選任・解任の規定です。なお、この規定は、監事にも準用されています。(第50条2項)

 <参照> 区分所有法 第25条(管理者の選任・解任):

 区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者(準用:理事と監事にも)を選任し、又は解任することができる。

2  管理者(準用:理事と監事にも)に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。

 この規定により、管理組合法人でも、区分所有者は、原則として、集会の普通決議で理事(監事も)を選任し、また解任します。
なお、集会で理事(監事)に選任されても、当然それだけで、理事(監事)になるわけではなく、選任された者の「承諾」は必要です。(
民法の委任から)

 理事は、準用されています区分所有法第25条1項により集会(総会)の決議で解任することが可能ですが、その解任を目的とする集会(総会)は、通常、理事が招集します(第47条12項、準用→第34条参照)から、管理組合法人の運営が適切に機能していない場合には、理事の解任を目的とする集会(総会)の開催が行われないことも有り得ますし、また、集会(総会)は多数決原理で運営されるため、仮に理事に不正行為その他その地位にそぐわない行為があっても解任の議案が可決されるという保証はありません。
そこで、集会以外の方法でも区分所有者による理事の解任ができることを定めておく必要性があります。それが、第25条2項の主旨です。

    ★原則:建物のエントランスや廊下などの共用部分、敷地、駐車場などの附属施設の管理は、区分所有者が行う。規約で管理者(理事)を選任する(任意)。個人でも法人(管理者はいいが、法人化された時の理事に法人はなれないと解される)でもいい。

      理事の資格は、特に区分所有者でなくてもいい。普通決議(区分所有者および議決権の各過半数)で選び解任される。(委任契約となる。)

      ただし、規約の規定の中にAさん(またはB会社(理事では法人はだめ))を管理者(理事)とするとなっていると、規約の変更になるので、区分所有者および議決権の4分の3以上の多数決でないと解任できない。

      管理者(理事)に不利な時期に解任すると、損害賠償の責任がでる。

<参照> 民法 第651条2項:委任の解除

第六百五十一条 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。

2 前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、
相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
   一 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。
   二 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。

     ★逆に、管理者(理事)はいつでも、辞任できる。但し、区分所有者に不利な時期に解任すると、損害賠償の責任がでる。

       管理者(理事)の死亡、破産、後見開始の審判を受けると委任契約は、自動的に終了する。

<参照> 民法 第653条: 委任の終了事由

  委任は、次に掲げる事由によって終了する。
    一  委任者又は受任者の
死亡
    二  委任者又は受任者が
破産手続開始の決定を受けたこと
    三  受任者が
後見開始の審判を受けたこと

<参照> 後見開始の審判:精神障害などで、正常な判断力がなくなったときに、その者を保護するために家庭裁判所に申し出て、後見人という保護者をつける。民法  第7条:成年被後見人。

     ★他に委任として 民法 第643条〜 の規定は 第28条にもある。

     ★集会での理事の解任決議が不成立や、集会を招集しない時には、各区分所有者が提訴できる。


*ここからは、民法が準用されていました、平成20年12月以前の説明です。
 参考にしてください。

<参照> 旧民法 第52条2項:理事
法人には、一人又は数人の理事を置かなければならない。

2  理事が数人ある場合において、定款又は寄附行為に別段の定めがないときは、法人の事務は、理事の過半数で決する。

    ★複数の理事をおいたときは、事務のやりかたは過半数できめる。(新2項)

<参照> 旧民法 第54条から第56条:

(理事の代理権の制限)
第五十四条  理事の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

(理事の代理行為の委任)
第五十五条  理事は、定款、寄附行為又は総会の決議によって禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができる。

(仮理事)
第五十六条  理事が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、仮理事を選任しなければならない。

<参照> 旧非訟事件手続法35条:
第三十五条1項 仮理事又ハ特別代理人ノ選任ハ法人ノ主タル事務所所在地ノ地方裁判所ノ管轄トス

*ここまで、平成20年12月以前の解説です。


◎区分所有法における管理者と法人化の理事のまとめ

◎管理者と管理組合法人の理事の比較
  管理者 理事
基本的な立場 法人格のない管理組合の執行機関 管理組合法人の執行機関
設置の必要性 任意 必須
任期 法律に定めがない 原則2年。規約で3年以内
法人がなれる 可能 認められない
その他の資格 制限なし 制限なし
人数 制限なし 制限なし

◎平成20年12月1日施行内容 第四十九条の次に次の三条を加える。

(理事の代理権)

第四十九条の二 (*:平成20年12月1日施行内容。)

1項  理事の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 R03年、

★第49条の2 は平成20年12月に、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」が施行されたことにより、区分所有法第49条旧7項で準用していた旧民法第52条2項から第56条の規定が削除されたことにより、区分所有法に追加・明文化されたものです。
 ここは、
旧民法第54条

<参考> 旧民法第54条(理事の代理権の制限);

第五十四条  理事の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

 に対応しています。


★ここ、第49条の2 では「理事の代理権」といっていますが、前の第49条3項で「理事は、管理組合法人を代表する。」とあり、代理権の制限は代表権の制限と同様に考えられます。民法では代理と代表を明確に区分していないためこの表現となっています。

 管理組合法人として、理事の代理権を規約や集会の決議で内部的に制限することは可能です。
 例えば、規約で「100万円以上の取引を行うには、必ず集会の決議が必要である」とか、「代表理事(理事長)が代表権を行使するには、理事会の決議を経なければならない」とかの場合です。
しかし、外部に対しては、取引の安全性から、通常理事の業務範囲と考えられる場合にはその制限内容を知らない(善意の)第三者には主張できませんので注意してください。

これは、管理組合が法人化されていない場合に区分所有者を代理していた管理者に加えた制限が善意の第三者に対抗することができなかったのと同じ考えです。(第26条3項参照

 逆の解釈として、悪意(制限内容を知っていた)の第三者には、対抗できます。

 また、代理権の制限は、理事だけでなく法人であっても、善意の第三者に対抗できません。(第47条7項参照)

<参照> 区分所有法第26条3項

3  管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

<参照> 区分所有法第47条7項

7 管理組合法人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

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(理事の代理行為の委任)

第四十九条の三  (*:平成20年12月1日施行内容。)

1項  理事は、規約又は集会の決議によつて禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができる。

過去出題 マンション管理士 R01年、H23年、H21年、
管理業務主任者 H29年、H27年、H24年、H21年、

★第49条の3 は平成20年12月に、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」が施行されたことにより、区分所有法第49条旧7項で準用していた旧民法第52条2項から第56条の規定が削除されたことにより、区分所有法に追加・明文化されたものです。
 ここは、旧
民法第55条

<参考> 旧民法第55条(理事の代理行為の委任);

 第五十五条 理事は、定款、寄附行為又は総会の決議によって禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができる。

 に対応しています。


★理事は原則として、自ら業務を行うことが求められていますが、規約または集会の決議で禁止されていない場合に限り、特定の具体的な行為を他人に委任することが許されています。

 逆の解釈として、代表権の全てを包括して他人に委任することはできません。
 また、理事の特定の行為であっても、監事には、監事の職務上委任できないと解釈されます。

★代理と代表が区別されていない
  本1項でも、理事は管理組合法人の代表(第49条3項)ですから、その特定の行為とは、代表権の一部を指しており、ここでの代理は代表をも含んだ表現です。

★理事が委任した者の過失により、管理組合法人に損害を与えた場合
  委任を受けた者には、過失の程度により、損害賠償責任等が発生しますが、理事にもその選任・監督に過失があれば責任を負います。


{設問} 平成23年 マンション管理士試験 「問6」

〔問 6〕管理組合法人の理事に関する規約の定めについての次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。


1 理事が数人ある場合の管理組合法人の事務について、規約によって、理事の過半数ではなく、理事全員の合意で決する旨を定めることはできない。

X 誤っている。 できる。 
 ここは、もう区分所有法第49条2項のまま。
 「(理事)
  第四十九条
   2  理事が数人ある場合において、規約に別段の定めがないときは、管理組合法人の事務は、理事の過半数で決する。」により、
原則、事務は、理事の過半数で決しますが、規約での別段の定めが可能なため、 理事の過半数ではなく、理事全員の合意で決する旨を定めることもできます。


2 理事が数人ある場合の管理組合法人を代表すべき理事の選定について、規約によって、理事の互選により選出する旨を定めることはできない。


X 誤っている。 できる。 
 法人を代表する理事(代表理事)については、区分所有法第49条5項。
 「(理事)
 第四十九条
   5  前項の規定は、規約若しくは集会の決議によつて、管理組合法人を代表すべき理事を定め、若しくは数人の理事が共同して管理組合法人を代表すべきことを定め、又は規約の定めに基づき理事の互選によつて管理組合法人を代表すべき理事を定めることを妨げない。」 とあり、
代表理事は、規約によって、理事の互選により選出する旨を定めることはできます。


3 理事が数人ある場合の理事の任期について、規約によって、半数の理事の任期を2年とし、残りの半数の理事の任期を3年とする旨を定めることはできない。

X 誤っている。 できる。 
 理事の任期は、区分所有法第49条6項。
 「(理事)
  第四十九条
   6  理事の任期は、二年とする。ただし、規約で三年以内において別段の期間を定めたときは、その期間とする。 」とあり、
原則2年ですが、規約で3年まで伸ばすことができます。
 設問のような、理事の任期が2年の人と3年の人がいるという、バラバラの規約では、理論的には可能でも、実務においては、どのようになるのか非常に面倒で曖昧ですが、この出題者のレベルでは、そこまで検討されていないと判断します。


4 理事の行為の委任について、規約によって、理事は包括的に理事の行為を他人に委任することができる旨を定めることはできない。

○ 正しい。 
 理事と区分所有者との関係は、民法の委任が原則です。 そこで、委任を受けた人(受任者=理事)は、原則として、自分で処理をするのが原則です。
 民法第644条
 「(受任者の注意義務)
  第六百四十四条  受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。」
 しかし、理事も多忙な時もあるでしょうから、区分所有法第49条の3。
 「(理事の代理行為の委任)
  第四十九条の三  理事は、規約又は集会の決議によつて禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができる。 」とあり、
規約又は集会の決議によつて禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができます。その場合、包括的に他人に委任することはできません。特定の行為だけです。


答え:4 

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(仮理事)

第四十九条の四  (*:平成20年12月1日施行内容。)

1項   理事が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、仮理事を選任しなければならない。

2項  仮理事の選任に関する事件は、管理組合法人の主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

過去出題 マンション管理士 H30年、H29年、H26年、
管理業務主任者 H26年、

★第49条の4 は平成20年12月に、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」が施行されたことにより、区分所有法第49条旧7項で準用していた旧民法第52条2項から第56条の規定が削除されたこと、また非訟事件手続法第三十五条第一項も削除されたことにより、区分所有法に追加・明文化されたものです。
 1項は、旧
民法第56条

<参考> 旧民法第56条(仮理事):

第五十六条  理事が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、仮理事を選任しなければならない。

 2項は、旧非訟事件手続法第三十五条第一項

<参考> 旧非訟事件手続法35条:

第三十五条1項 仮理事又ハ特別代理人ノ選任ハ法人ノ主タル事務所所在地ノ地方裁判所ノ管轄トス

 に対応しています。


★第49条の4 は、管理組合法人の事務を執行する理事が欠けて、管理組合法人の事務が進まないときには、裁判所により仮の理事を選任してもらい、事務処理に対応する規定です。 なお、本第49条の2 は1項、2項とも、監事にも準用されます。(第50条4項参照)

★仮理事とは...正式の理事が選任されるまでの、一時的なものです。
 理事は管理組合法人において必須の機関ですが、理事が一時的に欠けても、管理組合法人は消滅するものではありません。

 理事の任期の満了や辞任によって理事が欠けた場合には、元の理事が次の理事が選任されるまで、もとの職務を行うことになっています(区分所有法第49条7項参照)し、また、理事が複数人いれば、一人の理事が欠けても他の理事が事務を行い、遅滞での損害を生ずるおそれはあまりないでしょうが、理事の処理能力を超えるような大量の事務量が発生し、事務処理が遅滞して損害が発生する場合も考えられます。
 この状態を防ぐために、裁判所は、利害関係人または検察官の請求で仮の理事を選任して、この仮の理事に理事の職務を行わせることになります。(1項)

★仮理事の選任を管轄するのは、管理組合法人の事務所を管轄する地方裁判所です。(2項)

★裁判所には管轄がある
  裁判所には、簡易裁判所、家庭裁判所、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所があり、どの裁判所が裁判権を行使するかを、その事務や事件の性質、土地などで分担しています。
 これを、裁判管轄と呼んでいます。

★管理組合法人として登記した事務所を管轄する「地方裁判所の管轄」となる
  裁判所には、簡易裁判所、家庭裁判所、地方裁判所などいろいろあります。
  そこで、どこの裁判所の管轄にするか決めなければなりません。
  管理組合法人はその設立において、事務所を定めて登記していますから(区分所有法第47条1項参照)、その事務所を管轄する「地方裁判所」の担当にしました。
  この地方裁判所が管轄するのは、管理組合法人が解散して、清算の段階に入った時と同様です。(参照:区分所有法第56条の3

★注:清算人の選任の場合と異なり、仮理事を選任する場合には、地方裁判所の職権が入っていないことに注意!

*この新しい条文は、出題の対象にし易いので注意のこと。
  たとえば、仮理事を選任するのは、簡易裁判所であるとか。(正解は、地方裁判所です。)


{設問} 平成29年 マンション管理士試験 「問7」

〔問 7〕 管理組合法人に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 区分所有者以外の利害関係人は、裁判所に対する仮理事の選任の請求を行うことができない。

X 誤っている。 区分所有者以外でも、利害関係人と検察官は仮理事の選任の請求ができる。

  平成26年 マンション管理士試験 「問3」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問37」。

  管理組合法人で一時的な仮理事の規定は、区分所有法第49条の4
 「(仮理事)
  第49条の4 理事が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、仮理事を選任しなければならない。
2 仮理事の選任に関する事件は、管理組合法人の主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。」
 とあり、
 区分所有法第49条の4 1項によれば、特に区分所有者以外でも、利害関係人又は検察官であれば、裁判所に対して仮理事を選任してくれと請求できますから、誤りです。
 なお、法人において仮理事などがどうして必要かなどは、私の「超解説 区分所有法」で勉強してください。


2 管理組合法人の成立前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人には効力を生じない。

X 誤っている。 法人成立前の決議等は法人化されても効力がある。承継される。
  平成28年 マンション管理士試験 「問8」 、 平成27年 マンション管理士試験 「問2」 、平成20年 マンション管理士試験 「問8」 。

 管理組合法人の規定は、区分所有法第47条
 「(成立等)
  第47条 第3条に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによつて法人となる。
2 前項の規定による法人は、管理組合法人と称する。
3 この法律に規定するもののほか、管理組合法人の登記に関して必要な事項は、政令で定める。
4 管理組合法人に関して登記すべき事項は、登記した後でなければ、第三者に対抗することができない。
5 管理組合法人の成立前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人につき効力を生ずる。
6 管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する。第18条第4項(第21条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
7 管理組合法人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
8 管理組合法人は、規約又は集会の決議により、その事務(第6項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
9 管理組合法人は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合においては、第35条第2項から第4項までの規定を準用する。
10 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)第4条及び第78条の規定は管理組合法人に、破産法(平成16年法律第75号)第16条第2項の規定は存立中の管理組合法人に準用する。
11 第4節及び第33条第1項ただし書(第42条第5項及び第45条第4項において準用する場合を含む。)の規定は、管理組合法人には、適用しない。
12 管理組合法人について、第33条第1項本文(第42条第5項及び第45条第4項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定を適用する場合には第33条第1項本文中「管理者が」とあるのは「理事が管理組合法人の事務所において」と、第34条第1項から第3項まで及び第5項、第35条第3項、第41条並びに第43条の規定を適用する場合にはこれらの規定中「管理者」とあるのは「理事」とする。
13 管理組合法人は、法人税法(昭和40年法律第34号)その他法人税に関する法令の規定の適用については、同法第2条第6号に規定する公益法人等とみなす。この場合において、同法第37条の規定を適用する場合には同条第4項中「公益法人等(」とあるのは「公益法人等(管理組合法人並びに」と、同法第66条の規定を適用する場合には同条第1項及び第2項中「普通法人」とあるのは「普通法人(管理組合法人を含む。)」と、同条第3項中「公益法人等(」とあるのは「公益法人等(管理組合法人及び」とする。
14 管理組合法人は、消費税法(昭和63年法律第108号)その他消費税に関する法令の規定の適用については、同法別表第3に掲げる法人とみなす。」
 とあり、
 区分所有法第47条5項によれば、
 管理組合法人の成立前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人につき効力を生ずるため、”効力を生じない”は、誤りです。

 


3 管理組合法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、規約に別段の定めがない限り、区分所有者は等しい割合でその債務の弁済の責めに任ずる。

X 誤っている。 規約で別段の定めがないときは、負担割合は、「専有部分の床面積を基にした共用部分の持分割合(第14条)」による。等しい割合ではない。
 平成27年 管理業務主任者試験 「問37」 、 平成27年 マンション管理士試験 「問2」 、平成25年 「管理業務主任者試験 「問5」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問8」 、平成23年 マンション管理士試験 「問2」 。

 設問は、区分所有法第53条
 「(区分所有者の責任)
  第53条 管理組合法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、区分所有者は、第14条に定める割合と同一の割合で、その債務の弁済の責めに任ずる。ただし、第29条第1項ただし書に規定する負担の割合が定められているときは、その割合による。
2 管理組合法人の財産に対する強制執行がその効を奏しなかつたときも、前項と同様とする。
3 前項の規定は、区分所有者が管理組合法人に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、適用しない。」
 とあり、
 区分所有法第53条1項によれば、
 管理組合法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、区分所有者は、第14条に定める割合と同一の割合で、その債務の弁済の責めに任ずる。ただし、第29条第1項ただし書に規定する負担の割合が定められているときは、その割合によるとあるため、規約に別段の定めがなければ、
 区分所有法第14条
 「(共用部分の持分の割合)
  第十四条 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
2 前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。
3 前二項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。
4 前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。」
 により、
 管理組合法人の財産をもつてその債務を完済することができないときの、その負担は、規約が無ければ「各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による」ため、区分所有者は”等しい割合”でその債務の弁済の責めに任ずるは、誤りです。


4 理事が欠けた場合又は規約で定めた理事の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した理事は、新たに選任された理事(仮理事を含む。)が就任するまで、なおその職務を行う。

〇 正しい。 理事としての責任がある。 
 平成27年 マンション管理士試験 「問5」 、 平成25年 マンション管理士試験 「問8」 。
 
  設問は、区分所有法第49条
 「(理事)
  第49条 管理組合法人には、理事を置かなければならない。
2 理事が数人ある場合において、規約に別段の定めがないときは、管理組合法人の事務は、理事の過半数で決する。
3 理事は、管理組合法人を代表する。
4 理事が数人あるときは、各自管理組合法人を代表する。
5 前項の規定は、規約若しくは集会の決議によつて、管理組合法人を代表すべき理事を定め、若しくは数人の理事が共同して管理組合法人を代表すべきことを定め、又は規約の定めに基づき理事の互選によつて管理組合法人を代表すべき理事を定めることを妨げない。
6 理事の任期は、2年とする。ただし、規約で3年以内において別段の期間を定めたときは、その期間とする。
7 理事が欠けた場合又は規約で定めた理事の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した理事は、新たに選任された理事(第49条の4第1項の仮理事を含む。)が就任するまで、なおその職務を行う。
8 第25条の規定は、理事に準用する。」
 とあり、
 区分所有法第49条7項によれば、
 理事が欠けた場合又は規約で定めた理事の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した理事は、新たに選任された理事(仮理事を含む。)が就任するまで、なおその職務を行いますから、正しい。

 注:今話題となっている、大相撲の貴乃花親方の理事問題にあるように、解任と辞任は違いますよ。


答え:4

 法文を知っているか、どうかで、易しい。


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(監事)

第五十条

1項  管理組合法人には、監事を置かなければならない。

過去出題 マンション管理士 H25年、H14年、
管理業務主任者 H26年、H23年、H21年、H14年、H13年

監事は置かなければならない...法人となった区分所有者の団体(管理組合)には、理事と並んで監事の設置も必須。ただし、置かないときの罰則はない。監事の人数の制限はない。資格の制限もない。任期は理事と同じ(原則、2年、規約で最長3年まで可能)。

 また、監事の氏名・住所は登記事項ではない。(第三者に影響を及ぼすおそれがないため)

★監事制度の必要性 → 理事の業務の監督・監査をす

 第50条は監事に関する規定です。

 監事は管理組合法人では必要的且つ常設の監督・監査機関です。

 管理組合法人はその業務の執行を全てその執行機関たる理事に委託することになりますが、理事の権限が大きければ大きいほど、理事が職権を濫用したり、また実際に起きた事件ですが、理事長が管理組合の修繕積立金を私的に流用するなど、不正を働く危険性も増すことになります。

 理事の業務の内容に対しては、各区分所有者は集会(総会)で理事の人事権・事務報告聴取権や予算・決算の審議権等を通じて理事の業務内容を監督できることなっていますが、集会は常設の機関ではなく、さらに集会は理事等の招集があって開催されるという一時的なものでしかありませんから、通年にわたり理事の活動を監督するには「常設の監督機関」が必要となります。
 
 そのために置かれるものが「監事」という機関です。

★役職名「監事」とは → 団体の業務・財産等を監査する職
 区分所有法では、非営利法人である区分所有者の団体(管理組合)を法人化した際に、業務を執行する機関を「理事」と呼んだように、管理組合法人の業務や財産を監査する役職名も、非営利団体で以前から使用されています「監事」を使用することにしています。
 これら、理事、監事の名称は、今は削除された改正前の民法が基本になっています。

 <参考> 旧 民法 (現在は、削除されている)
第二節 法人の管理

理事
第五十二条 法人には、一人又は数人の
理事を置かなければならない。

2  理事が数人ある場合において、定款又は寄附行為に別段の定めがないときは、法人の事務は、理事の過半数で決する。

------------------------------------------------------------------

監事
第五十八条 法人には、定款、寄附行為又は総会の決議で、一人又は数人の
監事を置くことができる。

 なお、株式会社等では、管理組合法人の理事に該当する取締役の職務を監督・監査する役職として「監査」が置かれますが、「監査役」は、区分所有法での管理組合法人の「監事」と同じです。

★監事の必要性
 区分所有法で成立する管理組合法人では、他の多くの法人にみられる行政上での監督もありませんから、管理組合法人の財産の状況と理事の業務状況を監視する監事の役目は大変に重要です。

 そこで、旧民法の法人の規定(第58条)では、監事の設置は任意(置きことができる)でしたが、区分所有法における、管理組合法人では、監事の設置は必須としました。


★監事の資格 〜法人はなれないか〜

 区分所有法では、監事の資格については、2項において、「理事または(理事の監督を受ける)管理組合法人の使用人との兼任が禁止されています」が、特別な経験や技能は求められていません。
 また、
旧民法では、監事も理事と同様に「自然人に限り、法人はなれないと」と解されてきて、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」の役員の資格(第65条)や会社法の取締役の資格の準用(第335条)において、法人は監事にはなれないとされています。
 しかし、管理組合(法人化にかかわらず)において、監事に求められる会計監査と業務監査の業務、特に会計監査では、簿記の知識、発生主義の原則など専門知識も求められるため、監事については、理事のように「自然人に限る」ことについては議論がある箇所です。

<参考> 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第65条 (改正有)

(役員の資格等) 第六十五条  次に掲げる者は、役員となることができない。
    一  法人
    二  削除 成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者  (削除へ
    三 この法律若しくは会社法(平成十七年法律第八十六号)の規定に違反し、又は民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百五十五条、第二百五十六条、第二百五十八条から第二百六十条まで若しくは第二百六十二条の罪、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律(平成十二年法律第百二十九号)第六十五条、第六十六条、第六十八条若しくは第六十九条の罪、会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第二百六十六条、第二百六十七条、第二百六十九条から第二百七十一条まで若しくは第二百七十三条の罪若しくは破産法(平成十六年法律第七十五号)第二百六十五条、第二百六十六条、第二百六十八条から第二百七十二条まで若しくは第二百七十四条の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
    四 前号に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)

 2  監事は、一般社団法人又はその子法人の理事又は使用人を兼ねることができない。

 3  理事会設置一般社団法人においては、理事は、三人以上でなければならない。

 <参考> 会社法 第335条 (改正有)

(監査役の資格等)

第三百三十五条 第三百三十一条第一項及び第二項並びに第三百三十一条の二の規定は、監査役について準用する

2 監査役は、株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役を兼ねることができない。

3 監査役会設置会社においては、監査役は、三人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければならない。
 
 準用の第331条
 (取締役の資格等)
 第三百三十一条  次に掲げる者は、取締役となることができない。
     一  法人
     二  削除 成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者 削除へ

 (以下、略)

★監事の選任・解任
 管理組合法人における監事の選任・解任についても、理事と同じように管理者の選任・解任の規定である第25条が準用されます(新4項)から、原則として監事も集会(総会)の普通決議で選任することになります。
なお、監事は同じ第25条1項では「規約で選任方法を定めること」も認められていますから、必ずしも集会(総会)における直接選任である必要はないでしょうが、監事の地位・性格から、規約で「理事に監事の選任権(解任権)を与える」ような選任方法は、監事が理事の使用人であることを禁止しています第50条2項の趣旨にも反し妥当とはいえないでしょう。
なお、集会で監事に選任されても、当然それだけで、監事になるわけではなく、選任された者の承諾は、理事と同様に
民法の委任により必要です。

★監事と理事は兼ねられない

 監事の資格については2項により「理事または(理事の監督を受ける)管理組合法人の使用人との兼任が禁止されています」が、理事を監督する立場にある監事が同時に理事であったり、また、理事の監督をうける使用人であったりしては、業務執行を監督する実が挙がりませんから当然の規定です。

 もっとも、理事または使用人が監事に選任された場合は、理事または使用人を辞すれば兼任という事態は回避されますから、2項は就任資格ではなく在任資格の制限というべきでしょう。

 従って、監事が理事または使用人に就任した場合に速やかに理事または使用人の職を辞さない場合には監事の職を辞したものと理解できます。

◎他に、区分所有法では監事の就任資格や員数については特に制限がありませんから、理事の場合と同様、区分所有者に限る必要もなく区分所有法上は誰でも何人でも自由に選任することができます。


*以下は、平成23年の標準管理規約の改正前の記述です。参考までに。

★ただし、標準管理規約(単棟型)旧:35条では、理事と監事の資格を、区分所有法と違って、「そのマンションに居住する区分所有者」に制限している
  区分所有法では、理事と同様に監事の資格についての制限はありませんが、標準管理規約では、 「理事及び監事は、○○マンションに現に居住する組合員(区分所有者)のうちから、総会で選任する。」と明確に制限していますので注意してください。(標準管理規約(単棟型)35条2項 参照)
  これは、マンション管理は、外部にいる人より内部の人にやらせた方が適切との判断です。

<参考>標準管理規約 旧35条:(役員) (注:ここは、平成23年の改正前の規定です。)
第35条 管理組合に次の役員を置く。

   一  理事長
   二  副理事長 ○名
   三  会計担当理事 ○名
   四  理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。)  ○名
   五  監事 ○名

2. 理事及び監事は、○○マンションに現に居住する組合員のうちから、総会で選任する。

3. 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事の互選により選任する。


★監事の任期 〜原則2年〜 規約で3年まで伸ばせる (理事と同じ)
 監事の任期は、理事と同じく2年ですが、規約で3年までの期間が定められます。欠員の場合の取扱い・仮監事・解任については理事の場合と同様です(4項での第49条6項、7項及び第49条の4 の準用)

★監事の権限

 監事の権限は、3項により、

  @管理組合法人の財産の状況を監査すること(1号)、

  A理事の業務の執行の状況を監査すること(2号)、

  B財産の状況又は業務の執行について、法令若しくは規約に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、集会に報告をすること(3号)、

  C前号の報告をするため必要があるときは、集会を招集すること(4号)、です。

★監事の権限 - @管理組合法人の財産の状況を監査すること 〜会計監査権〜

 1号の「管理組合法人の財産の状況を監査すること」。
 これは会計に関する監査権であり、日常的には管理組合法人の収入・支出や未払い・未収入金、修繕積立金等の保管・運用方法、予算実行方法等の有無や是非を監査することで、定期の業務としては予算および決算の適否の監査を行うこととなります。

 そのため、理事に対し必要な報告資料の提出を求めることができますし、更に必要があれば専門家によるチェックを依頼することも監事の善管注意義務の範囲内のものとして認められるでしょう。
  
注:管理組合(法人)の会計処理の基本となっている「発生主義」などは、株式会社の経理処理とは異なるため、不明な点があれば、お気軽に「「マンション管理士 香川事務所」へ相談ください。

 理事は明らかに不当な要求でない限り監事の請求に答える義務がありますが、監事からの請求を待っているのではなく、むしろ理事には監事に対する適時の報告義務があるというべきでしょう。

 監事が業務遂行上で要した費用(外注専門家に依頼した費用も含む)は当然償還され、必要とあれば前払いの請求も可能です(民法 委任第649条(受任者による費用の前払請求)、第650条(受任者による費用等の償還請求等))。

★監事の権限 - A理事の業務の執行の状況を監査すること 〜業務監査権〜

 監事の権限の2番目は理事に対する業務監査権です。

 日常的には、集会(総会)で承認された年間業務計画の実行および突発事項等の計画外事項の処理方法、工事や日常管理の状況の有無や是非を監査し、定期的には総会報告事項や各種議題の是非を監査することになります。

 このための報告聴取権や費用償還権は1号の会計監査権の場合と同様ですが、実務上組織される理事会が存在する場合には、監査権限の一環として当然に理事会への出席権が認められるものと思われます。

 この場合には、理事会での理事の協議内容の監査が実施されるわけですから監事は必要な発言も当然行うことができますが、業務執行の権限および責任は理事にありますから、監事が発言して理事の職責に干渉できるのは原則として対象の適法性の有無についてであって当・不当の妥当性判断についてではありません。

★監事の報告義務 〜 B財産の状況又は業務の執行について、法令若しくは規約に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、集会に報告をすること〜

 監事の権限の3番目は監事の集会(総会)への報告義務です。

 理事に対する本来の監督権限は真の委任者たる区分所有者全員がもっているものであり、理事の監督をするための組織・機関が理事の人事権(選任・解任)を持つ集会(総会)ですから、監事に集会(総会)に対する報告義務があることは当然です。

 この報告義務は、管理者の事務の報告義務を定めた第43条の準用はないものの、理事の監事に対する報告義務と同様に監事の監査業務全般に及び、監事は集会(総会)に対し自己の監査業務実施の経過およびその結果を集会(総会)に報告することになります。

 ただし、区分所有法での区分所有者の団体である管理組合の法人化において、旧
民法で規定されていたような監事の設置を任意(置くことができる)ではなく、常設とした目的は理事の業務執行の不正防止にありますから、全般的な報告義務のうちでも不正については特に報告すべきものとして明記したのがBの趣旨です。

◎なお、監事の報告義務もその報告内容については監事の権限である会計および業務執行における適法性に関するものに限られ、妥当性には及ばないことは当然ですし、監事の不正防止目的機関性から不正のおそれのあるときは総会報告前に理事に対し注意指導する等により不正行為の回避を図るべきで、そのような手段をとらず単に集会(総会)に報告すれば監事の善管注意義務を果たしたというものではありません。

★監事の総会招集権 〜 C前号の報告をするため必要があるときは、集会を招集すること〜

 監事の権限で4番目は監事の集会(総会)招集権を認めた規定です。

 上の3番目の集会(総会)での報告義務を認めて集会(総会)による理事の監督権の発動を期するためには、その手段として集会(総会)が開催されなければなりませんが、集会(総会)を招集できるのは第一次的には理事に属しますから、理事の不正を追求する集会(総会)をその理事が招集しないおそれがあります。
かといって単独に区分所有者権による裁判所に対する申し立て方法では、監事という立場を考慮すると迂遠な手続きとなります。
そこで、監事に集会(総会)の招集権を認めたのがこの規定の趣旨です。
 勿論、理事が招集するのならそれでよく、集会(総会)招集に至らない段階で問題が解決すればそのほうが望ましいことは当然です。

   ★管理組合法人には、理事と並んで必ず監事も必ず置くこと。

      区分所有法で成立する管理組合法人には、他の法律のような行政上の監督がないから、監事の存在は大きい。

      なお、旧民法上の法人には、監事の設置は任意で、必須ではなかったことに注意。

<参照>旧民法 第58条(監事)

第五十八条  法人には、定款、寄附行為又は総会の決議で、一人又は数人の
監事を置くことができる

★ 監事の職務は、次のとおりです。

    1.監事は、@管理組合法人の財産の状況 および
            A管理組合法人の業務の執行状況を監査し、
            その結果を集会(総会)において報告しなければならない。

   2.監事は管理組合法人の財産の状況および管理組合法人の業務の執行状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる。 (注:通常総会ではなく、臨時総会)

   3.監事は、理事会に出席して意見を述べることができる。ただし、理事会での議決権はない

★具体的な監査の内容
  監事が行う @管理組合法人の財産の状況は通常、会計監査と呼ばれています。
  具体的には、集会(総会)で決議された予算に基づいて、収入・支出が適正であるかを監査します。
  そのために必要な会計帳票は整っているか、管理費等の滞納があれば督促・回収状況を確認し、修繕積立金の運用を確認し、次の集会(総会)に提出される収支報告(案)や貸借対照表(案)が適正に作成されているかどうかなどを確認します。

 監事が行う A管理組合法人の業務の執行状況は通常、業務監査と呼ばれています。
 具体的には、管理組合の業務とされています、管理組合が管理する敷地や共用部分の保安、保全、保守、清掃、消毒やゴミの処理や修繕・改修、また長期修繕計画の作成や変更、建替えが必要な場合にはその合意形成に必要となる調査業務、防災に関する業務、広報や連絡業務など多くの事項が監査の対象となります。
  これら、管理組合の業務が適切に実施されているかどうかを、管理規約や使用細則、また総会決議などに照らして確認します。

 そこで、監事は、会計監査及び業務監査に必要とされる、総会の議事録や理事会の議事録、管理組合の理事長名で発信した書類、収支予算・決算関係の資料、長期修繕計画書、各種点検報告書、保険契約の書類、管理委託契約書など監査に必要な書類や資料の提出を理事長に対して要請できます。

★監事は、登記されない。
  管理組合法人では理事と監事の設置は、必須ですが、登記においては、代表理事の記載(代表がいないときは理事全員の氏名)はありますが、監事の記載はありません。

★外部監査の検討も
  監事の主な業務は、管理組合(法人化に関係なく)の会計での収支決算の監査ですが、大きな団地では、管理費の使用方法や修繕積立金の監査は膨大なものになります。
  また、管理組合(法人化に関係なく)の会計については明確な処理規定がなく、多くは、公益法人の会計を基本とした収入・支出が発生した時に計上するという「
発生主義」であるため会計にあまり詳しくない監事では、精査出来ないものもあります。
  このような、場合は外部の公認会計士などに依頼して監査をするのも一案です。


 また、「マンション管理士 香川事務所」に相談するのが、一番の解決法です。

 なお、仕訳や会計については、この「超解説 区分所有法」の 「会計処理」 を参考にしてください

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第五十条

2項  監事は、理事又は管理組合法人の使用人と兼ねてはならない。

過去出題 マンション管理士 R01年、H25年、
管理業務主任者 R01年、H17年、

使用人とは...正社員、契約社員、パート・アルバイト、請負社員、派遣社員その他当該法人又は個人から対価を受け取って業務を遂行する者をいう。監事には資格の制限がある。

★監事の資格制限
 監事が管理組合法人の理事や使用人であっては、自分の行為を自分で監査するので、意味がなくなりますから、監事と理事を兼ねることを禁止し、また、理事が代表権を持つ管理組合法人の使用人の立場では公正な、管理組合法人の業務の公正な監査ができなくなる恐れがありますから、監事の資格が制限されています。

 監事も理事になれますが、その際には、監事を辞任する必要があります。また、監事であって管理組合法人の使用人になった時にも、監事を辞任することになります。


第五十条  (*:平成20年12月1日施行内容。)  第五十条第二項の次に次の一項を加える。

3項  監事の職務は、次のとおりとする。
   一  管理組合法人の財産の状況を監査すること。
   二  理事の業務の執行の状況を監査すること。
   三  財産の状況又は業務の執行について、法令若しくは規約に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、集会に報告をすること。
   四  前号の報告をするため必要があるときは、集会を招集すること。

過去出題 マンション管理士 R01年、
管理業務主任者 R02年、H26年、

★この第50条3項が、加えられたのは、次の旧3項で準用されていた、旧民法第56条、第59条が、平成20年12月に、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」が施行されたことにより、削除されたため、区分所有法に追加・明文化されたものです。
 ここは、旧民法第59条

 <参考> 旧民法 第59条:監事の職務

 監事の職務は、次のとおりとする。
  一  法人の財産の状況を監査すること。
  二  理事の業務の執行の状況を監査すること。
  三  財産の状況又は業務の執行について、法令、定款若しくは寄附行為に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、総会又は主務官庁に報告をすること。
  四  前号の報告をするため必要があるときは、総会を招集すること。

に対応している。


★ 監事の職務は、次のとおりです。

    1.監事は、@管理組合法人の財産の状況 および
            A管理組合法人の業務の執行状況を監査し、その結果を集会(総会)において報告しなければならない。

   2.監事は管理組合法人の財産の状況および管理組合法人の業務の執行状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる。 (注:通常総会ではなく、臨時総会)

   3..監事は、理事会に出席して意見を述べることができる。ただし、議決権はない

  本3項の規定は、例示と考えられ、理事を監督する上で必要なら、それらの行為もできると考えられています。

★複数の監事がいたら 〜単独で職務を遂行できる〜
  通常、管理組合(法人)では、監事は1名が選任されますが、複数の監事が選任されている場合には、規約で特段の定めをしていない限り、各監事が、上記の職務を単独でできると解されます。

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第五十条

(旧3項)  第二十五条並びに前条第五項及び第六項、民法第五十六条 及び第五十九条 並びに非訟事件手続法第三十五条第一項 の規定は、監事に準用する。

第五十条  (*:平成20年12月1日施行内容。)

4項  第二十五条、第四十九条第六項及び第七項並びに前条の規定は、監事に準用する。

第五十条第三項中「並びに前条第五項及び第六項、民法第五十六条及び第五十九条並びに非訟事件手続法第三十五条第一項」を「、第四十九条第六項及び第七項並びに前条」に改める。

第五十条第三項を第五十条第四項とする。

過去出題 マンション管理士 H30年、H28年、H26年、
管理業務主任者 R03年、H26年、H22年、H17年、

★ここは、平成20年12月に、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」が施行されたことにより、民法の条文が削除されたため、区分所有法が変更されたものです
 なお、旧3項から削除された、旧民法第56条と旧非訴訟手続法第35条1項の規定は、区分所有法第49条の4 として新設され、それが、新4項で規定する「前条の規定」に対応しています。


★監事に対する準用
  本4項は、管理組合法人の監事にも、管理者の選任・解任の規定(第25条)や理事の任期、仮監事の選任などを適用する規定です。

★準用:区分所有法第25条
  監事にも理事と同じように管理者の選任・解任の規定が準用され、選任・解任は原則集会の普通決議によります。(第25条)

<参照> 区分所有法 第25条 (選任及び解任)

第二十五条  区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者(注:理事・監事にも準用)を選任し、又は解任することができる。
2  管理者
(注:理事・監事にも準用)に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。

    集会の監事解任決議が不成立や、理事が集会を招集しない時には、各区分所有者が提訴できる。(2項)

★準用:区分所有法第49条6項及び7項
  監事の任期も理事と同様に原則2年(第49条新6項、規約で3年以内可能)です。人数は制限がありません。
  また、管理組合法人に設置が必須の監事が欠けた時や任期の満了・辞任の場合も、理事と同様(第49条新7項)。
  監事がいなくった時:以前の監事が新しい監事の選任があるまで、職務を行う。(ここでは、理事ー>監事 と読み替える)

<参照> 区分所有法 第49条6項、7項

6  理事(注:監事にも準用)の任期は、二年とする。ただし、規約で三年以内において別段の期間を定めたときは、その期間とする。

7  理事
(注:監事にも準用)が欠けた場合又は規約で定めた理事(注:監事にも準用)の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した理事(注:監事にも準用)は、新たに選任された理事(注:監事にも準用)(第四十九条の四第一項の仮理事を含む。)が就任するまで、なおその職務を行う。


     

    現実には、役員(理事・監事)の任期は、規約で1年交代制が多い。

    監事(理事も)の資格は、特に区分所有者でなくてもいい。普通決議(区分所有者および議決権の各過半数)で選び解任される。(委任契約となる。)

<参考>標準管理規約 35条:(役員)  

第35条 管理組合に次の役員を置く。
   一 理事長
   二 副理事長 ○名
   三 会計担当理事 ○名
   四 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) ○名
   五 監事 ○名
2 理事及び監事は、
総会の決議によって、組合員のうちから選任し、又は解任する。

3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、
理事会の決議によって、理事のうちから選任し、又は解任する。


外部専門家を役員として選任できることとする場合

2 理事及び監事は、総会の決議によって、選任し、又は解任する。

3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事会の決議によって、理事のうちから選任し、又は解任する。

4 組合員以外の者から理事又は監事を選任する場合の選任方法については細則で定める。

 注:平成28年3月の改正では、外部の専門家(マンション管理士等)が、役員になれるように考えている。

★前条の規定の準用:区分所有法第49条の4 仮理事の規定 
  監事が欠けて、事務が遅滞し損害が発生するおそれがあれば、仮理事の選任と同じように、地方裁判所が、利害関係人または検察官の請求で仮監事を選任します。

<参照> 区分所有法第49条の4 (仮理事)

第四十九条の四  理事(注:監事にも準用)が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、仮理事(注:監事にも準用)を選任しなければならない。

2  仮理事
(注:監事にも準用)の選任に関する事件は、管理組合法人の主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

★監事の職務:
   @管理組合法人の財産の状況を監査する。(旧民法 第59条)

     予算に基づいて適正に行われているかどうか、目的別か、対象となる期間は、予算と実績の差、理由は など。

   A理事の業務執行の状況の監査

     運営計画に基づいているか、点検、清掃、改修工事などは適正か

   B財産状況または業務執行で不正な事実を発見したときは、総会に報告する。

   C前の3号の報告をするために必要があれば、総会を招集する。(臨時総会)

 ★監事が監査する主な帳票:

    @収支報告書...会計年度(期間)の収入・支出、正味財産(収入―支出)

                 一般(管理費中心)、特別(修繕積立金中心)会計分。他にも収益事業があればそれも監査する。

    A貸借対照表...期末時点での資産(現金・預金など。未集金も)、負債(未払金・前受金など)、正味財産。

                 こちらも、一般・特別会計別に監査する。

    B財産目録...。年度末の資産・負債をより詳細に(銀行名・支店名・口座番号、管理会社、未払の人数など)記載。

                  貸借対照表よりも細かく。

    C備品台帳...購入した日付、予想耐用年数などを記入。

    D金融機関からの残高証明書

    この他に、E正味財産増減計算書もあるが、これは省略できるので、作成されないことが多い。


*以下は、平成23年の標準管理規約の改正前の記述です。参考までに。

★ただし、標準管理規約(単棟型)旧35条では、理事と監事の資格を、区分所有法と違って、「そのマンションに居住する区分所有者」に制限している
  区分所有法では、理事(監事も)の資格についての制限は、ありませんが、標準管理規約では、 「理事及び監事は、○○マンションに現に居住する組合員(区分所有者)のうちから、総会で選任する。」と明確に制限していますので注意してください。(標準管理規約(単棟型)旧35条2項 参照)
  これは、マンション管理は、外部にいる人より内部の人にやらせた方が適切との判断です。

<参考>標準管理規約 35条:(役員)
第35条 管理組合に次の役員を置く。

   一  理事長
   二  副理事長 ○名
   三  会計担当理事 ○名
   四  理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。)  ○名
   五  監事 ○名

2. 理事及び監事は、○○マンションに現に居住する組合員のうちから、総会で選任する。

3. 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事の互選により選任する。

<参照>標準管理規約(単棟型)第35条関係コメントB

B 法人が区分所有する専有部分があるマンションにおいては、当該専有部分をどのように利用している場合に、
  第2項の「現に居住する組合員」が存在するとみなして法人関係者から役員になることを認めるか
  法人関係者が役員になる場合には、管理組合役員の任務に当たることを当該法人の職務命令として受けた者に限定する等どのような資格を有する者が実際に役員業務を行うことができるかについて、
あらかじめ規約や細則に定めておくことが望ましい。


★  管理者(理事と監事も)に不利な時期に解任すると、「民法の委任」から、損害賠償の責任がでる。

 <参照> 民法 第651条2項:委任の解除

委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。

2 前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、
相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
   一 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。
   二 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。

★逆に、管理者(理事・監事も)はいつでも、辞任できる。但し、区分所有者に不利な時期に解任すると、損害賠償の責任がでる。

    受任者である、管理者(理事・監事も)の死亡、破産、後見開始の審判を受けると委任契約は、自動的に終了する。

<参照> 民法 第653条:委任の終了事由

委任は、次に掲げる事由によって終了する。
 一  委任者又は受任者の死亡
 二  委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
 三  受任者が後見開始の審判を受けたこと。

 <参照> 後見開始の審判:精神障害などで、正常な判断力がなくなったときに、その者を保護するために家庭裁判所に申し出て、後見人という保護者をつける。民法  第7条:成年被後見人。


*以下は、平成20年12月以前の解説です。
  参考までに。

<参考> 旧民法 第56条:仮理事

理事が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、仮理事を選任しなければならない。

<参考> 旧民法 第56条:仮理事

理事が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、仮理事を選任しなければならない。

 旧民法
 第59条:監事の職務

 監事の職務は、次のとおりとする。
  一  法人の財産の状況を監査すること。
  二  理事の業務の執行の状況を監査すること。
  三  財産の状況又は業務の執行について、法令、定款若しくは寄附行為に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、総会又は主務官庁に報告をすること。
  四  前号の報告をするため必要があるときは、総会を招集すること。

<参照> 非訟事件手続法35条:

第三十五条1項 仮理事又ハ特別代理人ノ選任ハ法人ノ主タル事務所所在地ノ地方裁判所ノ管轄トス

*ここまで、平成20年12月以前の解説です。


<参考>標準管理規約36条:(役員の任期)  

第36条 役員の任期は○年とする。ただし、再任を妨げない。
2 補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。

3 任期の満了又は辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任するまでの間引き続きその職務を行う。

4 役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。


*外部専門家を役員として選任できることとする場合

4 選任(再任を除く。)の時に組合員であった役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。

------------------------------------

(役員の欠格条項)
第36条の2 次の各号のいずれかに該当する者は、役員となることができない。
   一 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
   二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
   三 暴力団員等(暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者をいう。)


<参考>「標準管理規約(単棟型)第36条関係コメント 

@ 役員の任期については、組合の実情に応じて1〜2年で設定することと し、選任に当たっては、その就任日及び任期の期限を明確にする。

A 業務の継続性を重視すれば、役員は半数改選とするのもよい。この場合には、役員の任期は2年とする。

B 第4項は、組合員から選任された役員が組合員でなくなった場合の役員の地位についての規定である。第35条第2項において組合員要件を外 た場合には、「外部専門家を役員として選任できることとする場合」のような規定とすべきである。それは、例えば、外部の専門家として選任された役員は、専門家としての地位に着目して役員に選任されたものであるから、当該役員が役員に選任された後に組合員となった場合にまで、組合員でなくなれば当然に役員としての地位も失うとするのは相当でないためである。

C 役員が任期途中で欠けた場合、総会の決議により新たな役員を選任することが可能であるが、外部の専門家の役員就任の可能性や災害時等緊急時の迅速な対応の必要性を踏まえると、規約において、あらかじめ補欠を定めておくことができる旨規定するなど、補欠の役員の選任方法について定めておくことが望ましい。また、組合員である役員が転出、死亡その他の事情により任期途中で欠けた場合には、組合員から補欠の役員を理事会の決議で選任することができると、規約に規定することもできる。
 なお、理事や監事の員数を、○〜○名という枠により定めている場合には、その下限の員数を満たさなくなったときに、補欠を選任することが必要となる。

------------------------------------------------------
第36条の2関係
@ 選択肢として、役員の資格を組合員に限定することを改め外部の専門家を役員に選任することができるようにしたことを踏まえ、役員の欠格条項を定めるものである。なお、暴力団員等の範囲については、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号)を参考にした。

A 外部の専門家からの役員の選任について、第35条第4項として細則で選任方法を定めることとする場合、本条に定めるほか、細則において、次のような役員の欠格条項を定めることとする。
   ア 個人の専門家の場合
    ・ マンション管理に関する各分野の専門的知識を有する者から役員を選任しようとする場合にあっては、マンション管理士の登録の取消し又は当該分野に係る資格についてこれと同様の処分を受けた者
  イ 法人から専門家の派遣を受ける場合(アに該当する者に加えて)次のいずれかに該当する法人から派遣される役職員は、外部専門家として役員となることができない。
   ・ 銀行取引停止処分を受けている法人
   ・ 管理業者の登録の取消しを受けた法人

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(監事の代表権)

第五十一条

1項  管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、監事が管理組合法人を代表する。

過去出題 マンション管理士 H30年、H26年、H25年、H23年、H18年、H13年
管理業務主任者

R02年、H27年、H26年、H22年、H21年、H15年、

★理事と監事の利益相反の場合の取扱い

 第51条は監事の代表権に関する規定です。

 管理組合法人を代表するのは原則として理事(第49条3項)ですが、管理組合法人は敷地および建物の管理という目的を達成するため管理組合法人の外部から様々な物資やサービスを調達し、敷地と建物内の管理・運営のために区分所有者や占有者と様々なかかわりを持ちます。


 この場合の管理組合法人との取引の相手方(業者)がたまたま理事である場合には、管理組合法人を代表してその利益のために行動すべき立場と、業者としての利益を追及する立場が同一人となり、管理組合法人の利益が十分に保障されない事態が生じます。

 このように同一人に利害関係の反する立場が帰属する場合には、一方の立場の利益を図ることが、相手方の利益を害する不当な結果となるため、自己契約・双方代理として原則として禁止されています。(民法 第108条)

<参考>民法 第108条(自己契約及び双方代理)

第百八条 同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

2 前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

 このことは法人の代表行為でも同様ですから、管理組合法人を代表する理事の個人的利益と管理組合法人そのものの利益が相反する事項に関しては理事に代表権はありません。

 従って、理事が代表権を持たないような場合には、その理事に代わる代表者が必要となりますが(さもないと理事個人は管理組合法人との取引が困難となる)、民法のような特別代理人を選任すること(旧民法 第57条)は面倒ですから、理事に利益相反事項に関しては代表権がないこと、およびその場合には監事に法人の代表権が認められることを定めたものがこの区分所有法第51条の規定です。

<参考>旧民法 第57条(利益相反行為)

第五十七条  法人と理事との利益が相反する事項については、理事は、代理権を有しない。この場合においては、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、特別代理人を選任しなければならない。

◎しかし、監事は本来理事の監査をやる立場ですから自ら業務執行を行うことはあまり望ましいことではありません。

 しかも、この理事に代わって監事が管理組合法人を代表する場合には、代表となった監事の業務執行に対して、他の人の監査が存在しないことも問題です。
従って、利益相反となっている理事の他に理事がいる場合には、その他の理事に管理組合法人の代表をさせるべきでしょう。
 実務的には理事長が利益相反でその代表権の行使ができないときは、理事長に事故ある時として副理事長が代表することとなります。

◎もっとも、利益相反の禁止は代理を認めた本人の利益保護のためですから、本人である区分所有者達がこれを承諾していれば問題ではありません。
 従って、利益相反取引でも集会(総会)で承認されれば、その理事が法人を代表して取引することが可能ですが、本条がある以上その場合でも監事に法人代表を認めるべきでしょう。

利益相反行為とは
 ここで利益が相反する事項とは、管理組合法人と理事との取引という形式的な利益相反行為ではなく、実質的且つ客観的に利益が相反する場合にこれに該当するとしなければ管理組合法人の保護が図れません。

 たとえば、理事が管理組合法人を代表して、この理事(区分所有者としての立場)と共用駐車場や駐輪場の使用契約を管理組合法人所定の条件で所定の契約書により契約することは、形式的には確かに利益相反とは言えますが、本条に該当せず、また、理事が経営する会社が無償で修理工事をするときも、利益相反行為ではありません。

 しかし、理事が自分の経営する会社やその配偶者が経営する会社と管理組合法人が取引を行う場合は、その理事が管理組合法人を代表して取引を行うことは、その取引内容が仮に正当であろうと客観的には利益が相反する場合ですから本条に該当し監事が代表権を行使する場合にあたります。

★監事が管理組合法人と取引をしても、これは利益相反行為ではない。
  通常、監事は、管理組合法人の代表権を有していませんから、監事が管理組合法人と取引をしても、利益相反行為にならないと解されます。

★監事が訴訟行為もできる
  理事と管理組合法人との訴訟も、利益相反行為に該当しますから、その場合には、監事が訴訟を追行できます。

★本条違反の行為

 この規定に反して理事が行った取引は、無権代表行為として原則として管理組合法人の追認(集会の決議)がなければ管理組合法人に効力が及びません(無効)。

      ★管理組合法人と理事との利益が相反すると、監事も管理組合法人を代表することがある。

        例えば、理事が社長をする会社と管理組合法人が取引をする時などは、その理事を排斥する。

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◎ 現実問題として、管理組合(法人)では、監事の業務をこなせる人はいない!

 確かに、区分所有法は、管理組合が法人化されたら、理事はこうしなさい、とか、監事はこうしなさいと、規定はありますが、法人化に関係なく、通常の区分所有者は、多くが管理組合の運営には無関心であり、また素人です。
 そして、役員(理事・監事)には輪番制で、また1年の任期で選任されているため、運営での継続性がありません。

 区分所有者は理事の役目は、だいたい分かるものの、監事の職務、特に「会計監査」となると、会計の基礎となっている「発生主義」も分からず、何となく管理会社を信頼して、総会で会計監査報告をしている状態です。

 利益相反なども知らずに、管理会社が提出する会計報告の中身をそのまま受け入れています。

 法律として、区分所有法は、マンションの管理はこうあるべきだと、きれいごとを並べ過ぎです。
 管理組合の現状を把握して、管理組合の役員だけでは、管理組合の運営が適切に行われないことに注目して、マンション管理の専門家であるマンション管理士を各管理組合の顧問として採用しなければならないと条文を加えるべきです。

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{設問} 平成23年マンション管理士試験 「問8」 

 次の記述は、正しいか。

* 管理組合法人と理事個人との売買契約に関する紛争については、監事が管理組合法人を代表して、管理組合法人の名において、訴訟を追行することができる。

○ 正しい。 
 通常、管理組合が法人化されていれば、紛争があって訴訟を提起するのは、管理組合法人ですが(区分所有法第47条6項参照)、紛争の相手が法人を代表する理事では、利益が相反する事項となり、区分所有者の利益が守られないおそれがありますので、その場合には、監事が理事の代わりに管理組合法人の代表となり、訴訟を提起することになります。
それは、区分所有法第51条
 「(監事の代表権)
  第五十一条  管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、監事が管理組合法人を代表する。」です。

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(事務の執行)

第五十二条

1項  管理組合法人の事務は、この法律に定めるもののほか、すべて集会の決議によって行う。ただし、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項及び第五十七条第二項に規定する事項を除いて、規約で、理事その他の役員が決するものとすることができる。

過去出題 マンション管理士 H28年、H21年、
管理業務主任者 未記入

管理組合法人の事務...原則、集会の決議で行う。

規約で、理事その他の役員が決するもとのすることができる...@特別の定数が定められている事項と、A区分所有法第57条第2項(訴訟の提起)は除かれている。理事が勝手にできない。

 <参照>区分所有法 第57条(共同の利益に反する行為の停止などの請求):

 区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。

2  前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない

★法人の事務処理の範囲

 第52条は管理組合法人の事務に関する規定です。

 法人の事務とは、法人としてなすべき一切の業務であり、管理組合法人は区分所有法第3条の目的で設立される法人であることから、建物、敷地および附属施設などの管理全般に関する業務がそれに該当します。

<参照>区分所有法 第3条 (区分所有者の団体)

第三条  区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。

 区分所有者の団体である管理組合の業務とその事務の決定方法は区分所有法第16条(一部共用部分の管理)から第21条(共用部分に関する規定の準用)に定められております。その対象として建物の共用部分等は、はっきりと対象とされていますが、債権関係の帰属がはっきりしません。
 しかし、管理組合法人の場合には管理組合法人に帰属する一切の債権(財産関係)の処理もその事務に該当しています。

 従って、例えば滞納管理費の請求事務は勿論その放棄も管理組合法人の事務に該当して集会議決で処理できることになります。

★規定の趣旨

 ここでの、管理組合法人の事務は「集会の決議によつて行う」との意味ですが、監査の事務を監事が行うことを除き、残りの事務は執行機関である理事が行うことが原則です。
そこで、第52条1項は集会(総会)で決定された方針に従って、理事が事務を執行することを定めた規定となります。

 このことは、法人化前の区分所有者の団体=管理組合においてもその事務たる業務執行は管理者に委託され、管理者は受託者として管理組合の委任の主旨(集会の意思)に基づきその執行を行うわけですから、業務執行者が法人化される前の管理者から法人の理事に代わっても管理組合という組織・性格に変わりがない以上、その実行方法にも変わりがないこともまた当然と言えます。

 すなわち、管理組合法人の目的は、法人化されていない区分所有者の団体(管理組合)と同様に区分所有法第3条に定める建物・敷地・附属施設など共用部分等の管理であり、管理組合が管理に関する事務を実行するのは区分所有法第18条により集会の決議に基づくのですから、登記された管理組合法人においても区分所有法第18条の原則を確認したものが第52条ということになります。

<参照> 区分所有法 第18条 (共用部分の管理)

第十八条  共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。

3 前条第二項の規定は、第一項本文の場合に準用する。

4 共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。


 なお、区分所有者全員の承諾があれば、集会を開催せずに、書面または電磁的方法により決議はできます。(区分所有法第45条1項及び3項

★理事”その他の役員”への委任とは
 また、同じく区分所有法第18条2項によれば、「規約で別段の定めをすることを妨げない」とあり、規約で集会の決議権限を他の機関に委任することができることとなりますが、第52条1項の後半では「規約で、理事その他の役員が決するものとすることができる」とあり、委任を認める一方、委任先を「理事”その他の役員”」に限定しています。

 これは各管理組合において審議内容の重要性に比例して審議決定機関の権限委譲を認めることにより円滑で柔軟な管理組合運営を決定できることを認めたもので、その点においては登記していない単なる管理組合も、登記上の管理組合法人も変りがありませんが、法人になっている場合には通常の管理組合の場合よりも組織化が高度に進んでいることが予想されるため、委譲先の機関も法人内部での調達が可能と考えられた結果と思われます。

 それは即ち、単なる管理組合でも内部機関で処理するのが所有者自治の観点から望ましいことは当然ですが、組合員数その他人的資源の関係から単なる管理組合の場合には権限委譲先を外部に求めることもやむを得ない場合があるということです。

 ここで「理事”その他の役員”」とありますが、区分所有法が明記する役員には「理事と監事」(第49条及び第50条参照)しかなく「その他の役員」が何を指すのかは明らかではありません
従って、委譲する権限の範囲・内容により、委譲先も理事長・副理事長・世話人・協議委員・評議委員その他規約で自由に”役員”を創設できるものと考えられます。
 また、規約で理事会や代議員会のような合議体を定めて、この会に決定を委ねることも出来ると解されます。

★標準管理規約(単棟型)は、区分所有法にない「理事会」を認め、なお、「専門委員会」の設置も可能にしています。
 これは、「その他の役員」の表れです。

<参考>標準管理規約55条:(専門委員会の設置) 

第55条 理事会は、その責任と権限の範囲内において、
専門委員会を設置し、特定の課題を調査又は検討させることができる。

2. 専門委員会は、調査又は検討した結果を
理事会に具申する

<参考>「標準管理規約(単棟型) 第55条関係コメント  

@ 専門委員会の検討対象が理事会の責任と権限を越える事項である場合や、理事会活動に認められている経費以上の費用が専門委員会の検討に必要となる場合、運営細則の制定が必要な場合等は、専門委員会の設置に総会の決議が必要となる。

A 専門委員会は、検討対象に関心が強い組合員を中心に構成されるものである。必要に応じ検討対象に関する専門的知識を有する者(組合員以外も含む。)の参加を求めることもできる。

★理事会への委任か理事など個人への委任か

 実務的には、集会(総会)-->理事会-->理事 の順で権限が縮小されてくる関係にありますから、集会が権限を委譲する先は理事個人よりも先ず理事会へということになるはずです。

 区分所有法第52条では権限の委譲先を「理事その他の役員が決するものとする」と役員個人に限るような表現ですが、「理事その他役員」という趣旨を「集会以外の機関を表現したものとする」と解し、または役員に共同委任することで(旧民法 第52条2項により理事に委任された事務はその過半数で決するとしますから、)事実上理事会への委任とすることが可能でしょう。

 ただし、監事は区分所有法上の役員ではあってもその職責上業務執行に係るのは忌避すべきですから委譲先機関として不適当であることは当然です。

 でも、理事と管理組合法人との利益が相反するときは、理事の職務が監事になることもあります。(第51条参照)


★さらに、ステップアップを目指す人へ 〜平成20年の改正前の話ですが〜

★委任された事務の処理が理事会で纏まらないときは、どうするのか。

 複数の理事が置かれており、規約でも理事により決することができる事務行為でも、理事間でもめることが想定されます。
区分所有法は、単に「理事その他の役員が決するものとすることができる」とあるだけで、各理事が勝手に事務処理を行った場合でも、各々が有効な行為となることが想定されます。
この点を踏まえて、区分所有法の改正予定に、以下の項目があり、改正・施行されました。

この「過半数」に保存行為が理事の単独でできるかについては、争いのあるところです。(参考:区分所有法 第52条2項

新施行 第49条2項: 

理事が数人ある場合において、規約に別段の定めがないときは、管理組合法人の事務は、理事の過半数で決する。


★管理組合法人の事務は、区分所有法か集会の決定に従わなければならない。しかし、それでは実務上不便。
  そこで、↓

★集会の決議につき特別の定数が定められている事項 + 共同の利益に反する行為の差止め等の訴訟(第57条2項) 以外は、規約で理事その他の役員が決するとしていい。 

 区分所有法で個別的に定数が定められているものは、集会の特別決議事項(定数が4分の3以上のもの) として下の@〜Gがあります。

    @共用部分の重大変更(第17条1項)...4分の3以上。ただし区分所有者数だけ過半数に減らせる。

    A規約の設定・変更・廃止(第31条1項)...4分の3以上。

    B管理組合の法人化およびその解散(第47条1項、第55条2項)...4分の3以上。

    C義務違反者に対する使用禁止請求、競売請求、引渡し請求(第58条2項、第59条2項、第60条2項)...4分の3以上。

    D大規模滅失の場合の復旧(第61条5項)...4分の3以上。

    E建替(第62条1項)...5分の4以上。

    F各棟の区分所有建物の団地管理組合への管理の委託(第68条1項)...4分の3以上。

    G団地内の2以上の特定の区分所有建物の建替について一括して建替承認決議に付す旨の決議(第69条7項)...5分の4以上。

  これに、 普通決議事項ですが

  +H区分所有者の共同の利益に反する行為の差止め訴訟の提起(第57条2項)

 
 を加えた事項以外については、集会の決議がなくても、事務の執行を規約で理事その他の役員に決定を委任できる。

     注:この訴訟の第57条2項が、規約でも理事が単独でできない。(よく試験にでる!)

 <参照>区分所有法 第57条(共同の利益に反する行為の停止などの請求):

 区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。


2項  前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。

 なお、共用部分の重大変更(第17条1項)など、特別決議事項であっても、主要な部分は集会で決議して、細部の変更や、どの業者に発注するかなどは、理事ができます。

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第五十二条

2項  前項の規定にかかわらず、保存行為は、理事が決することができる。

過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 H29年、

★保存行為...単に現状を保持するに過ぎない小さな修繕などの保存行為については集会等にかけるまでもなく全員の利益な行為ですから理事が単独でできることとされます。  

保存行為(修理、現状維持)だけは、規約や集会の決議がなくても理事が決めて行える。

  エントランスや階段室等の共用部分、建物の敷地、附属施設などの管理対象物の他に、法人として有する債権その他の財産の保存行為を含むと解される。

 また、保存行為は、管理者や理事以外にも各共有者もできます。(区分所有法第18条但し書き参照)

<参照> 区分所有法 第18条 (共用部分の管理)

第十八条  共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。
  
ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

2  前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。

3  前条第二項の規定は、第一項本文の場合に準用する。

4  共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。



{設問-1} 平成21年 管理業務主任者試験 「問32」

【問 32】 管理組合法人に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。

ア 理事は、管理組合法人との利益が相反する事項については、管理組合法人を代表することができない。

○ 正しい。 
 今年の出題傾向として、「いくつ」という個数を選ぶ問題が多い。
   通常、法人とその代表者が同じ法律行為の当事者となると、好き勝手なことができますから、これを法律上、利益相反事項として禁止しています。(参考:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第84条1項3号)
  これを受け、区分所有法第51条(監事の代表権)
 「第五十一条  管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、監事が管理組合法人を代表する。」とあり、管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、理事でなく監事が管理組合法人を代表します。


イ 管理組合法人は、設立の時及び毎事業年度の終了の時に財産目録を作成し、常にこれを主たる事務所に備え置かなければならない。

○ 正しい。 
 
ここからが、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の実施に伴い、区分所有法で準用されていました民法の規定が削除などされたため、区分所有法の管理組合法人関係で改正された部分からの出題です。
  区分所有法第48条の2 (財産目録及び区分所有者名簿)
 「第四十八条の二  管理組合法人は、設立の時及び毎年一月から三月までの間に財産目録を作成し、常にこれをその主たる事務所に備え置かなければならない。ただし、特に事業年度を設けるものは、設立の時及び毎事業年度の終了の時に財産目録を作成しなければならない。
   2  管理組合法人は、区分所有者名簿を備え置き、区分所有者の変更があるごとに必要な変更を加えなければならない。 」とあり、1項に該当します。


ウ 理事は、規約又は集会の決議によって禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができる。

○ 正しい。
 再委任は、区分所有法第49条の3(理事の代理行為の委任)
 「第四十九条の三  理事は、規約又は集会の決議によつて禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができる。」とあり、正しい。


エ 管理組合法人は、区分所有者名簿を備え置き、区分所有者の変更があるごとに必要な変更を加えなければならない。

○ 正しい。
 ここは、選択肢イで引用しました、区分所有法第48条の2 2項
 「2  管理組合法人は、区分所有者名簿を備え置き、区分所有者の変更があるごとに必要な変更を加えなければならない。」により、正しい。

1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ


答え:4 (アからエまで、4つとも正しい。 ここは、管理組合法人の規定が変わったので、出題されやすいと、「超解説 区分所有法」でも指摘した箇所です。)


{設問-2} 平成26年 管理業務主任者試験 「問32」

【問 32】 管理組合法人に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。

ア 管理組合法人は、区分所有者名簿を備え置き、区分所有者の変更があるごとに必要な変更を加えなければならない。


○ 正しい。 平成26年マンション管理士試験 「問3」、 平成22年管理業務主任者試験 「問29」
  管理組合法人の区分所有者名簿は、区分所有法第48条の2
 「(財産目録及び区分所有者名簿)
 第四十八条の二  管理組合法人は、設立の時及び毎年一月から三月までの間に財産目録を作成し、常にこれをその主たる事務所に備え置かなければならない。ただし、特に事業年度を設けるものは、設立の時及び毎事業年度の終了の時に財産目録を作成しなければならない。
   
2  管理組合法人は、区分所有者名簿を備え置き、区分所有者の変更があるごとに必要な変更を加えなければならない。」  とあり、
 2項に該当し、正しい。



イ 理事は、損害保険契約に基づく保険金額の請求及び受領のほか、共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領について、区分所有者を代理する。

X 誤っている。
 管理組合法人が、区分所有者を代理している。理事ではない。理事は、法人の代表。 平成25年管理業務主任者試験 「問36」、 平成24年管理業務主任者試験 「問34」 など多い。
 設問の管理組合法人は、区分所有法第47条
 「(成立等)
  第四十七条  第三条に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによつて法人となる。
   2  前項の規定による法人は、管理組合法人と称する。
   3  この法律に規定するもののほか、管理組合法人の登記に関して必要な事項は、政令で定める。
   4  管理組合法人に関して登記すべき事項は、登記した後でなければ、第三者に対抗することができない。
   5  管理組合法人の成立前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人につき効力を生ずる。
   
6  管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
   7  管理組合法人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
   8  管理組合法人は、規約又は集会の決議により、その事務(第六項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
   9  管理組合法人は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合においては、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。
   10  一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 (平成十八年法律第四十八号)第四条 及び第七十八条 の規定は管理組合法人に、破産法 (平成十六年法律第七十五号)第十六条第二項 の規定は存立中の管理組合法人に準用する。
   11  第四節及び第三十三条第一項ただし書(第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。)の規定は、管理組合法人には、適用しない。
   12  管理組合法人について、第三十三条第一項本文(第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定を適用する場合には第三十三条第一項本文中「管理者が」とあるのは「理事が管理組合法人の事務所において」と、第三十四条第一項から第三項まで及び第五項、第三十五条第三項、第四十一条並びに第四十三条の規定を適用する場合にはこれらの規定中「管理者」とあるのは「理事」とする。
   13  管理組合法人は、法人税法 (昭和四十年法律第三十四号)その他法人税に関する法令の規定の適用については、同法第二条第六号 に規定する公益法人等とみなす。この場合において、同法第三十七条 の規定を適用する場合には同条第四項 中「公益法人等(」とあるのは「公益法人等(管理組合法人並びに」と、同法第六十六条 の規定を適用する場合には同条第一項 及び第二項 中「普通法人」とあるのは「普通法人(管理組合法人を含む。)」と、同条第三項 中「公益法人等(」とあるのは「公益法人等(管理組合法人及び」とする。
   14  管理組合法人は、消費税法 (昭和六十三年法律第百八号)その他消費税に関する法令の規定の適用については、同法 別表第三に掲げる法人とみなす。」
 とあり、
 6項の「管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする」 によれば、区分所有者を代理しているのは、管理組合法人であって、理事ではないので、誤りです。



ウ 管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、監事が管理組合法人を代表する。


○ 正しい。法人での利益相反事項は、理事に代わって幹事が法人の代表になる。 平成26年マンション管理士試験 「問3」、 平成25年マンション管理士試験 「問8」 など。
 管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、区分所有法第51条
 「(監事の代表権)
  第五十一条  
管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、監事が管理組合法人を代表する。」 とあり、
 これに該当し、正しい。



エ 理事は、集会の決議により、管理組合法人の事務に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができるが、この場合には、遅滞なく、原告又は被告となった旨を区分所有者に通知しなければならない。


X 誤っている。 理事ではなく、管理組合法人が、原告・被告となる。また、集会の決議なら、通知は不要。
 設問は、選択肢イで引用しました、区分所有法第47条8項及び9項
 「
 管理組合法人は、規約又は集会の決議により、その事務(第六項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
  
9  管理組合法人は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合においては、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。」 とあり、
 8項によれば、区分所有者のために、原告・被告になるのは、理事ではなく、管理組合法人ですから、誤りです。
 また、9項によれば、区分所有者の通知が必要なのは、規約によって原告・被告になったときだけで、集会を開いて原告・被告になったのなら、もう区分所有者は知っていますから、この場合には、通知は不要で、ここも誤りです。



1 一つ 
2 二つ 
3 三つ 
4 四つ

答え:2  正しいのは、 ア と ウ の2つ。  また、いくつあるかの問題です。 でも平成26年は、昨年(平成25年)は個数問題が多すぎると非難したせいで、かなり個数問題は少なくなりました。
       理事と法人の違いは、もう常識です。
       代表や代理の違いも理解しておいてください。

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ページ終わり

謝辞:Kzさんの了解により一部転用・編集をしています。

最終更新日:
2022年11月23日:見直した。
2022年 1月24日:区分所有法だけでなく、見直して、参照している民法、刑法などを更新した。
標準管理規約と同コメントも令和3年6月22日版に合わせた。
2021年12月16日、20日:令和3年(2021年)の出題年を入れた。
2021年 3月20日:見直して他の法律の改正等を入れた。
2021年 3月 7日:令和2年(2020年)の出題年を入れた。
2020年 3月29日:令和元年(2019年)の出題年を入れた。
2019年 4月17日:平成30年の出題年を入れた。
2018年 3月13日:平成29年の出題年を入れた。
2017年 3月29日:平成28年の出題年を入れた。
2016年 4月10日:3月14日付の標準管理規約の改正に対応した。
2016年 2月24日;平成27年の出題年を入れた。
2015年 4月 1日:平成26年の出題年を入れた。
2014年11月16日:監事の監査の内容を追記した。
2014年 8月24日:第50条に監事の資格で「法人はなれないか」を入れた。
2014年 8月23日:第49条に理事の資格「法人はなれない」を入れた。
2014年 2月23日:平成25年の出題年を入れた。
2013年 9月25日:「第49条の2」に区分所有者等の名簿」も追記した。 
2013年 3月24日:平成24年の出題年を入。
2012年 3月 3日:法人の記述をかなり変更した個所もある。、
2012年 2月29日:平成23年の出題年、標準管理規約の改正など入。
2011年 7月15日:第49条などにかなり加筆
2011年 1月15日:平成22年の出題記入
2010年6月14日:理事・監事を組合等登記令を中心に追記。
2010年1月23日:H21年の出題年を記入
2009年7月4日:理事の責任等加筆
2009年7月23日:少し加筆

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