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★★      要約 建築基準法       ★★

第2章 建築物の敷地、構造及び建築設備

V-b.第29条(地階における住宅等の居室)  から 第41条 (市町村の条例による制限の緩和)  まで

マンション管理士・管理業務主任者を目指す方のために、試験にでる建築基準法を条文ごとにイラストなどを入れて解説しました。 

試験問題は、過去の問題から出されるのではありません。条文から出題されます。

条文を勉強することが、合格への道です。

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第2章 

建築物の敷地、構造及び建築設備
説明
第29条 地階における住宅等の居室
第30条  長屋又は共同住宅の各戸の界壁
第31条 便所 
第32条 電器設備 
第33条 避雷設備 
第34条 昇降機
第35条 特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準
第35条の2 特殊建築物等の内装
第35条の3 無窓の居室等の主要構造部
第36条 この章の規定を実施し、又は補足するため必要な技術的基準
第37条 建築材料の品質
第38条 特殊の構造方法又は建築材料
第39条 災害危険区域 
第40条 地方公共団体の条例による制限の附加
第41条 市町村の条例による制限の緩和
凡例:各条文は、黒字にて表示。解説は条文の下に緑字にて表示

施行:令和元年(2019年)6月25日に対応した。
都市緑地法等の一部を改正する法律(この中に、「田園住居地域」が創設され都市計画法や建築基準法、宅地建物取引業の一部改正も入っている);
施行:平成30年(2018年)4月1日 に対応した。改正箇所をピンク字で表示
建築基準法の最終改正:交付日:平成26年(2014年)6月4日、施行:平成27年(2015年)6月1日
改正箇所をいれた
前回の改正:平成23年(2011年)12月14日


(地階における住宅等の居室)
第二十九条

 住宅の居室、学校の教室、病院の病室又は寄宿舎の寝室で地階に設けるものは、壁及び床の防湿の措置その他の事項について衛生上必要な政令で定める技術的基準に適合するものとしなければならない。

過去出題 マンション管理士  
管理業務主任者 H16年、

★29条:地階における住宅等の居室

 29条は、地下に設けられる住宅の居室などの壁・床は、どうあるべきかを規定して、地階(地下室)に特有な問題、つまり換気や湿度などの衛生面を考慮します。

地階とは...では、地階とは何かですが、これは、建築基準法には定義がありません。
          施行令1条2号に定められています。

建築基準法施行令第1条2号

二  地階 床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの三分の一以上のものをいう。

★地階(地下室ともいう)の要件

  1.床が地盤面(建築基準法第52条4項)下にあること
  2.天井までの高さの1/3以上が地盤面下にあること 
  です。

★湿度や換気が問題となる地階では、からぼり(ドライエリア)や換気設備、湿度調整設備などが必要となります。(施行令22条の2)

建築基準法施行令第22条の2

 (地階における住宅等の居室の技術的基準)
第二十二条の二 法第二十九条(法第八十七条第三項において準用する場合を含む。)の政令で定める技術的基準は、次に掲げるものとする。
   一 居室が、次のイからハまでのいずれかに該当すること。
     イ 国土交通大臣が定めるところにより、からぼりその他の空地に面する開口部が設けられていること。
     ロ 第二十条の二に規定する技術的基準に適合する換気設備が設けられていること。
     ハ 居室内の湿度を調節する設備が設けられていること。

   二 直接土に接する外壁、床及び屋根又はこれらの部分(以下この号において「外壁等」という。)の構造が、次のイ又はロのいずれかに適合するものであること。
     イ 外壁等の構造が、次の(1)又は(2)のいずれか(屋根又は屋根の部分にあつては、(1))に適合するものであること。ただし、外壁等のうち常水面以上の部分にあつては、耐水材料で造り、かつ、材料の接合部及びコンクリートの打継ぎをする部分に防水の措置を講ずる場合においては、この限りでない。
      (1) 外壁等にあつては、国土交通大臣が定めるところにより、直接土に接する部分に、水の浸透を防止するための防水層を設けること
      (2) 外壁又は床にあつては、直接土に接する部分を耐水材料で造り、かつ、直接土に接する部分と居室に面する部分の間に居室内への水の浸透を防止するための空隙げき(当該空隙げきに浸透した水を有効に排出するための設備が設けられているものに限る。)を設けること。
   ロ 外壁等の構造が、外壁等の直接土に接する部分から居室内に水が浸透しないものとして、国土交通大臣の認定を受けたものであること。

 

★地階には容積率の特例がある(建築基準法第52条)

  容積率の算定において、地階の天井が地盤面から1m以下であれば、床面積の1/3を限度として、延べ面積への算入から外されます。(建築基準法52条3項、4項参照)

建築基準法第52条3項、4項

  (容積率)
3 第一項(ただし書を除く。)、前項、第七項、第十二項及び第十四項、第五十七条の二第三項第二号、第五十七条の三第二項、第五十九条第一項及び第三項、第五十九条の二第一項、第六十条第一項、第六十条の二第一項及び第四項、第六十八条の三第一項、第六十八条の四、第六十八条の五(第二号イを除く。第六項において同じ。)、第六十八条の五の二(第二号イを除く。第六項において同じ。)、第六十八条の五の三第一項(第一号ロを除く。第六項において同じ。)、第六十八条の五の四(ただし書及び第一号ロを除く。)、第六十八条の五の五第一項第一号ロ、第六十八条の八、第六十八条の九第一項、第八十六条第三項及び第四項、第八十六条の二第二項及び第三項、第八十六条の五第三項並びに第八十六条の六第一項に規定する建築物の容積率(第五十九条第一項、第六十条の二第一項及び第六十八条の九第一項に規定するものについては、建築物の容積率の最高限度に係る場合に限る。第六項において同じ。)の
算定の基礎となる延べ面積には、建築物の地階でその天井が地盤面からの高さ一メートル以下にあるもの
の住宅又は老人ホーム、福祉ホームその他これらに類するもの(以下この項及び第六項において「老人ホーム等」という。)の用途に供する部分(第六項の政令で定める昇降機の昇降路の部分又は共同住宅若しくは老人ホーム等の共用の廊下若しくは階段の用に供する部分を除く。以下この項において同じ。)の床面積(当該床面積が当該建築物の住宅及び老人ホーム等の用途に供する部分の床面積の合計の三分の一を超える場合においては、
当該建築物の住宅及び老人ホーム等の用途に供する部分の床面積の合計の三分の一)は、算入しないものとする。

4 前項の地盤面とは、建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい、その接する位置の高低差が三メートルを超える場合においては、その高低差三メートル以内ごとの平均の高さにおける水平面をいう。

★建築物の延べ面積に不算入の他の例

  それでは、ここで、建築物の基本となる床面積、延べ面積を見て見ましょう。

床面積とは...建築物の各階又はその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積です。(施行令2条1項3号)

★床面積の基本は分かるが、現場でのピロティ、ポーチ、バルコニー、エレベーターシャフト、出窓、機械式駐車場、機械式駐輪場などで扱いが曖昧で、問題がある。(これについての詳細は、昭和61年4月30日建設省住指発第115号を参照のこと)

建設省住指発第一一五号  昭和六一年四月三〇日  特定行政庁建築主務部長あて 
住宅局建築指導課長通知

床面積の算定方法について

床面積の算定方法については、建築基準法施行令第二条第一項第三号に規定されており、また、「昭和三二年一一月一二日住指発第一一三二号新潟県土木部長あて」、「昭和三九年二月二四日住指発第二〇号各特定行政庁建築主務部局長あて」例規が示され、従来、これらに基づいて取り扱われてきたところであるが、ピロティ、吹きさらしの廊下、屋外階段等の床面積の算定及び区画の中心線の設定について、なお、地方により統一を欠く向きがある。

今般、ピロティ、吹きさらしの廊下、屋外階段等の床面積の算定及び壁その他の区画の中心線の設定について、左記のとおり取り扱うこととしたので、通知する。
なお、本通達は、昭和六一年八月一日以後確認申請書又は計画通知書が提出されるものから適用する。

        記
1 建築物の床面積の算定
建築物の床面積は、建築物の各階又はその一部で、壁、扉、シャッター、手摺、柱等の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積によるものであるが、ピロティ、ポーチ等で壁、扉、柱等を有しない場合には、床面積に算入するかどうかは、当該部分が居住、執務、作業、集会、娯楽、物品の保管又は格納その他の屋内的用途に供する部分であるかどうかにより判断するものとする。
例えば、次の各号に掲げる建築物の部分の床面積の算定は、それぞれ当該各号に定めるところによるものとする。
   (1) ピロティ
     十分に外気に開放され、かつ、屋内的用途に供しない部分は、床面積に算入しない。
   (2) ポーチ
     原則として床面積に算入しない。ただし、屋内的用途に供する部分は、床面積に算入する。
   (3) 公共用歩廊、傘型又は壁を有しない門型の建築物
     ピロティに準じる。
   (4) 吹きさらしの廊下
     外気に有効に開放されている部分の高さが、一・一m以上であり、かつ、天井の高さの二分の一以上である廊下については、幅二mまでの部分を床面積に算入しない。
   (5) バルコニー・ベランダ
     吹きさらしの廊下に準じる。
   (6) 屋外階段
     次の各号に該当する外気に有効に開放されている部分を有する階段については、床面積に算入しない。
      イ 長さが、当該階段の周長の二分の一以上であること。
      ロ 高さが、一・一m以上、かつ、当該階段の天井の高さの二分の一以上であること。
   (7) エレベータシャフト
     原則として、各階において床面積に算入する。ただし、着床できない階であることが明らかである階については、床面積に算入しない。
     (平成26年7月1日施行から改正あり:エレベーターシャフトは、床面積に参入しないへ)
   (8) パイプシャフト等
     各階において床面積に算入する。

   (9) 給水タンク又は貯水タンクを設置する地下ピット
  タンクの周囲に保守点検用の専用の空間のみを有するものについては、床面積に算入しない。
   (10) 出窓
  次の各号に定める構造の出窓については、床面積に算入しない。
      イ 下端の床面からの高さが、三〇cm以上であること。
      ロ 周囲の外壁等から水平距離五〇cm以上突き出ていないこと。
     ハ 見付け面積の二分の一以上が窓であること。
   (11) 機械式駐車場
     吊上式自動車車庫、機械式立体自動車車庫等で、床として認識することが困難な形状の部分については、一台につき一五m2を、床面積として算定する。なお、床としての認識が可能な形状の部分については、通常の算定方法による。
   (12) 機械式駐輪場
  床として認識することが困難な形状の部分については、一台につき一・二m2を、床面積として算定する。なお、床としての認識が可能な形状の部分については、通常の算定方法による。
   (13) 体育館等のギャラリー等
  原則として、床面積に算入する。ただし、保守点検等一時的な使用を目的としている場合には、床面積に算入しない。

2 区画の中心線の設定方法
 次の各号に掲げる建築物の壁その他の区画の中心線は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 木造の建築物
  イ 軸組工法の場合
    柱の中心線
  ロ 枠組壁工法の場合
    壁を構成する枠組材の中心線
  ハ 丸太組構法の場合
    丸太材等の中心線
(2) 鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造等の建築物
  鉄筋コンクリートの躯体、PC板(プレキャストコンクリート板)等の中心線
(3) 鉄骨造の建築物
  イ 金属板、石綿スレート、石膏ボード等の薄い材料を張った壁の場合
    胴縁等の中心線
 ロ イ以外の場合
   PC板、ALC板(高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリート板)等の中心線
(4) 組積造又は補強コンクリートブロック造の建築物

 

延べ面積とは...建築物の各階の床面積の合計です。(施行令2条1項4号)
  この「延べ面積」が、建築確認の申請手数料や、不動産登記での基礎となっています。
  階には算入されない屋上のペントハウスや地階も床面積は算入されます。
  しかし、建築基準法での容積率には算入しない特例がある。
   なお、建ぺい率に対しては、「建築面積」の言葉があります。


★容積率に算入しない特例 (平成19年度の管理業務主任者試験等にでたぞ!)

 1.自動車車庫、自転車駐車施設部分の一部不算入...自動車又は自転車の停留又は駐車のための施設の用途に供する部分の床面積については、当該敷地内の建築物の各階の床面積の合計(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、それらの建築物の各階の床面積の合計の和)の五分の一を限度として延べ面積に算入しない。(施行令2条3項)
   これは、自動車車庫などを設けさせる措置です。

 2.住宅の地階部分の一部不算入...上でも説明しましたが、算定の基礎となる延べ面積には、建築物の地階でその天井が地盤面からの高さ1m以下にあるものの住宅の用途に供する部分(共同住宅の共用の廊下又は階段の用に供する部分を除く。以下この項において同じ。)の床面積(当該床面積が当該建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計の三分の一を超える場合においては、当該建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計の三分の一)は、算入しません。(建築基準法52条3項)
   これは、住宅地の地価が高いこと、高さの制限が厳しいことをうけ、住宅の地下利用を促進させる措置です。
   なお、マンションなど共同住宅の地下部分でも適用できます。

   
   注:平成27年6月1日施行の改正により、老人ホーム等の地階でも住宅と同様に地下室には適用となりました。

 3.共同住宅の共用廊下・階段部分の全部不算入...共同住宅(マンションなど)の共用の廊下又は階段の用に供する部分の床面積は、全部算入されません。 (建築基準法52条6項)
   これは、公共の道路と同じとみて、限度がなく全てが算入されません。ただし、エレベーターは除外されていないため、算入されます


  4.平成26年7月1日施行から、エレベーターの昇降路のシャフト部分の床面積は、延べ面積に算入されません。(建築基準法第52条6項))


   



(長屋又は共同住宅の各戸の界壁)
第三十条 (改正あり、平成30年6月27日公布)

 長屋又は共同住宅の各戸の界壁は、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。
   一 その構造が、隣接する住戸からの日常生活に伴い生ずる音を衛生上支障がないように低減するために界壁に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。
   二 小屋裏又は天井裏に達するものであること。

2 
前項第二号の規定は、長屋又は共同住宅の天井の構造が、隣接する住戸からの日常生活に伴い生ずる音を衛生上支障がないように低減するために天井に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものである場合においては、適用しない


  長屋又は共同住宅の各戸の界壁は、小屋裏又は天井裏に達するものとするほか、その構造を遮音性能(隣接する住戸からの日常生活に伴い生ずる音を衛生上支障がないように低減するために界壁に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。

過去出題 マンション管理士 H29年、H24年、H15年、
管理業務主任者 R03年、H16年、

★30条:長屋又は共同住宅の各戸の界壁 〜戸建では適用はない〜

 30条は長屋(古ッ!)や、特殊建築物であるアパートマンションなど共同住宅での界壁と遮音の性能を定めています。
 当然ながら、戸建では適用されませんので、注意してください。

★長屋と共同住宅の違い
  長屋・・・2以上の住戸を有する一の建築物で、隣接する住戸間又は上下で重なり合う住戸間で内部での行き来ができない完全分離型の構造を有する建築物のうち、廊下・階段等を各住戸で共有しない形式のものをいいます。

  共同住宅・・・2戸以上の住宅を1つの建築物とし、各戸が廊下、階段又は出入口等(一定の空間を有するホール、ポーチ、風除室等)の内いずれか2つ以上を共用するものをいいます。

界壁(かいへき)とは...アパートやマンション、昔の長屋など集合(共同)住宅の住戸と住戸の境目の壁のことを指します。各戸と各戸の間を区切っている壁のことです。

   

  界壁には隣接する住戸からの火災を防ぐために、
   @耐火性能(準耐火構造、施行令114条1項)、(45分間火災による延焼を抑制する耐火性能)
    また、
   A隣戸からの音をさえぎる遮音性能
   の基準が法令により定められています。
  原則として、界壁は小屋裏または天井裏まですき間なく立ち上げることが義務づけられています。(1項2号)そして、隣接する住戸からの日常の生活音を衛生上支障がない程度になるよう、遮音構造としなければなりません。
  戸境壁(こざかいへき)、戸界壁ともいいます。


 ただし、令和元年6月25日施行により、長屋又は共同住宅の各戸の界壁について、天井の構造が界壁と同等の「遮音性能」を有するものとした場合は、小屋裏又は天井裏に達しなくてもよいとする法令の改正がありました。(2項)

 また、施行令114条1項に規定する各戸の界壁についても、自動スプリンクラー設備等の設置及び天井を強化天井とすることによって、同様に小屋裏又は天井裏に達しなくてもよいとする「共同住宅等の界壁の代替措置」の政令の改正がありました。

建築基準法施行令第114条1項

(建築物の界壁、間仕切壁及び隔壁)
第百十四条 長屋又は共同住宅の各戸の界壁(自動スプリンクラー設備等設置部分その他防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分の界壁を除く。)は、
準耐火構造とし、第百十二条第四項各号のいずれかに該当する部分を除き、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。

(以下略)

★界壁に求められる耐火性能 〜準耐火構造〜

  界壁(かいへき)は、原則として、天井まででなく、小屋裏または天井裏まで到達させることです。天井まででは、延焼防止になりません。
 準耐火構造
45分間火災による延焼を抑制する耐火性)とすることが求められています。
  

★界壁に求められる遮音性能 〜隣の音を低減する〜

  建物内の音を制御する方法として、遮音・吸音・防振の3種類があります。しかし、これらの技術的対策は騒音対策のひとつであり、全てではありません。これをしたからといって、騒音がなくなるというわけではないということです。

 一般的に建物の壁は天井や床との取り合い部などに隙間がある場合が多く、ここから音がもれている場合があります。音は空気の振動なので、界壁が天井の下までしかない場合だと、上の方に隙間ができ、音が天井裏を回って伝わるので聞こえます。遮音で最も重要なことは、隙間をなくすことです。

 また、遮音と吸音は、まったく別の機能を持ちますが、実際には、これらが混用されている場合が少なくありません。この区別を明確にして扱わないとその効果はほとんど得られません。

  隣接する住戸からもれてくる音は、発生する低音(振動数=ヘルツ が低い)から高音(振動数=ヘルツ が高い)により3つの規制があります。(施行令22条の3)

建築基準法施行令第22条の3 

第二節の三 長屋又は共同住宅の界壁の遮音構造等
第二十二条の三 法第三十条第一項第一号(法第八十七条第三項において準用する場合を含む。)の政令で定める技術的基準は、次の表の上欄に掲げる振動数の音に対する透過損失がそれぞれ同表の下欄に掲げる数値以上であることとする。

振動数(単位 ヘルツ) 透過損失(単位 デシベル)
一二五 二五
五〇〇 四〇
二、〇〇〇 五〇
2 法第三十条第二項(法第八十七条第三項において準用する場合を含む。)の政令で定める技術的基準は、前項に規定する基準とする。 

透過損失とは...壁などの材料層への入射音と、それによる材料層からの音圧レベルの差のことで、単位記号にdB(デシベル)を使います。

 例えば、入射音に対して透過音が1/10のときは、透過損失は10dB、1/100のときは、透過損失は20dB、1/1000のときは、透過損失は30dBとなります。その値が大きいほど遮音性能が優れていることを示します。

 

★遮音材料について

  遮音に適した材料の基本条件の1つは、単位面積あたりの重量が大きいことです。そこで、遮音には、コンクリートのように硬くて重い材料が適しています。重く面密度の高い材料ほど、より多くの音を反射し、音の透過を防ぐことができるからです。また、重く硬い材料は、振動させるのに多くのエネルギーを必要とし、振動することでエネルギーを消費するために、伝わる音エネルギーが少なくなります。同じ材料であれば、厚くすることによって多少の効果があります。

  2つ目の基本条件は、隙間や通気性がないということです。木材やコンクリートブロックなどの多孔質の材料は、表面にモルタルやプラスター(鉱物の粉末や石こうを主成分とする、壁、天井の塗り仕上げ材料のこと。石こうプラスター、ドロマイトプラスターなどがあります)を塗って孔を埋めないかぎり、遮音壁としては機能しません。

★一般に人の話し声の振動数は、100〜800ヘルツと言われてます。
  この帯域での透過損失は 40dB(デシベル)です。
  表によると、 界壁に求められるのは、隣戸の人の話し声をさえぎる程度でいいってことです。

★平成30年6月27日公布について
  
天井の構造が、遮音性能に関して一定の技術的基準に適合し、国土交通大臣が定めた構造方法なら、長屋又は共同住宅の各戸の界壁は、小屋裏又は天井裏に達しなくても良くなりました。(2項)



★2018年6月8日 追記: 界壁が小屋裏に達していない共同住宅があった。 レオパレス21事件

 共同住宅の賃貸業を営む株式会社レオパレス21で建てた物件において、調査を終えた290棟のうち、何と 17棟に界壁がなく、21棟において界壁部分の施行不備があり、今後の全部の棟の調査でまだ増える可能性があると報告があった。(2018年5月26日時点)

 共同住宅では界壁が小屋裏又は天井裏までに達していないと、基本となる延焼防止と遮音性能がなくなりますが、建築時に天井裏にまで入って確認をすることはほとんどないため、建築業者が手抜きをしたことになっていますが、建築基準法違反であり、株式会社レオパレス21の検査の不十分さが指摘されています。

 また、被害を受けた共同住宅のオーナー達は、被害者の会をつくって、株式会社レオパレス21と交渉をすることになりました


(便所)
第三十一条

 下水道法 (昭和三十三年法律第七十九号)第二条第八号 に規定する処理区域内においては、便所は、水洗便所(汚水管が下水道法第二条第三号 に規定する公共下水道に連結されたものに限る。)以外の便所としてはならない

2  便所から排出する汚物を下水道法第二条第六号 に規定する終末処理場を有する公共下水道以外に放流しようとする場合においては、屎尿浄化槽(その構造が汚物処理性能(当該汚物を衛生上支障がないように処理するために屎尿浄化槽に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を設けなければならない。

過去出題 マンション管理士  
管理業務主任者 H29年、

★31条:便所

 31条は、便所を規定しています。

   

★便所には、2種類ある
  最初から、都会で生活している人は、@水洗便所 しか知らないでしょうが、田舎では、A汲み取り式の便所もあります。

★1項の下水道法2条8号に規定する「処理区域」とは

 下水道法第2条8号

  八  処理区域 排水区域のうち排除された下水を終末処理場により処理することができる地域で、第九条第二項において準用する同条第一項の規定により公示された区域をいう。

★1項の水洗便所(汚水管が下水道法第二条第三号に規定する公共下水道で下水道法2条3号の規定「公共下水道」とは

下水道法第2条3号

三  公共下水道 主として市街地における下水を排除し、又は処理するために地方公共団体が管理する下水道で、終末処理場を有するもの又は流域下水道に接続するものであり、かつ、汚水を排除すべき排水施設の相当部分が暗渠である構造のものをいう。

★では、2項の下水道法第二条第六号に規定する「終末処理場」とは

下水道法第2条6号

六  終末処理場 下水を最終的に処理して河川その他の公共の水域又は海域に放流するために下水道の施設として設けられる処理施設及びこれを補完する施設をいう。

★公共下水道がある場合 〜水洗便所にすること〜
 市町村が管理する公共下水道は、各家庭からでる、トイレ排水、また台所からの排水を、終末処理場へ集め、汚水処理をしてから、河川や海に流します。
 このような公共下水道が設置されている排水区域では、トイレ(便所)は水洗式にしなければなりません。(1項)

★これらは、雨水以外の下水の処理です。

★公共下水道がない場合 〜し尿浄化槽を設けること〜

 公共下水道がない場合の便所は、屎尿(しにょう)浄化槽を設けて、汚水を綺麗にしてから河川などに流します。(2項)

   *屎尿浄化槽の規定は、生物化学的酸素有効量(BOD)の除去率として定められている。(施行令32条 参照)

   

  注:浄化槽については、下の「過去問題」の解説を読んでください。

★汲み取り式便所の規制は

  *採光及び換気のため直接外気に接する窓を設けること(施行令28条)
  *便槽から漏水しないこと(施行令29条1号)
  *トイレの臭いが屋外の漏れないようにすること(施行令29条2号)
  *便槽に雨水、土砂等が流入しないこと(施行令29条3号)

建築基準法施行令第28条

 (便所の採光及び換気)
第二十八条  便所には、採光及び換気のため直接外気に接する窓を設けなければならない。ただし、水洗便所で、これに代わる設備をした場合においては、この限りでない。

建築基準法施行令第29条

 (くみ取便所の構造)
第二十九条  くみ取便所の構造は、次に掲げる基準に適合するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
  一  屎尿に接する部分から漏水しないものであること。
  二  屎尿の臭気(便器その他構造上やむを得ないものから漏れるものを除く。)が、建築物の他の部分(便所の床下を除く。)又は屋外に漏れないものであること。
  三  便槽に、雨水、土砂等が流入しないものであること。

   *他にも、都市計画区域や準都市計画区域内における学校、病院、劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂などには、規定がある。(施行令30条から)

   *また、汲み取り式便所と井戸は、原則5m以上離して設けること。(施行令34条)


設問−1} 平成29年 管理業務主任者試験  【23}

【問 23】 浄化槽に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1 建築基準法によれば、屎(し)尿浄化槽の漏水検査は、満水して12時間以上漏水しないことを確かめなければならない。

X 適切でない。誤っている。 屎(し)尿浄化槽の漏水検査は、満水して24時間以上漏水しないこと。 12時間以上ではない。
  浄化槽に関しては、 平成21年 管理業務主任者試験 「問25」 、 平成14年 管理業務主任者 「問28」 選択肢3がある。

  この細かな12時間とか、24時間とかの設問も、管理業務主任者試験として適切ではないと、判断しますが、
  屎(し)尿浄化槽については、建築基準法第31条
 
「(便所)
 第三十一条 下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)第二条第八号に規定する処理区域内においては、
便所は、水洗便所(汚水管が下水道法第二条第三号に規定する公共下水道に連結されたものに限る。)以外の便所としてはならない
2 便所から排出する汚物を下水道法第二条第六号に規定する終末処理場を有する公共下水道以外に放流しようとする場合においては、
屎し 尿浄化槽(その構造が汚物処理性能(当該汚物を衛生上支障がないように処理するために屎し 尿浄化槽に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を設けなければならない。」

 とあり、
 これを受けた政令は、建築基準法施行令第33条
 
「(漏水検査)
 第三十三条 第三十一条の改良便槽並びに前条の
屎尿浄化槽及び合併処理浄化槽は、満水して二十四時間以上漏水しないことを確かめなければならない。

  とあり、
 建築基準法施行令第33条によれば、屎(し)尿浄化槽の漏水検査は、満水して”
24時間以上”漏水しないことであり、”12時間以上”では、適切ではありません。誤りです。

 


2 建築基準法によれば、地下浸透方式を除く合併処理浄化槽の汚物処理性能に関して、放流水に含まれる大腸菌群数の個数についての技術的基準がある。

〇 適切である。 正しい。 放流水に含まれる大腸菌群数が、一立方センチメートルにつき三千個以下とする性能を有するものであること。


 放流水に含まれる大腸菌群数は、建築基準法施行令第32条
 「(法第三十一条第二項等の規定に基づく汚物処理性能に関する技術的基準)
 第三十二条  屎し 尿浄化槽の法第三十一条第二項の政令で定める技術的基準及び合併処理浄化槽(屎し 尿と併せて雑排水を処理する浄化槽をいう。以下同じ。)について法第三十六条の規定により定めるべき構造に関する技術的基準のうち処理性能に関するもの(以下「汚物処理性能に関する技術的基準」と総称する。)は、次のとおりとする
   一 通常の使用状態において、次の表に掲げる区域及び処理対象人員の区分に応じ、それぞれ同表に定める性能を有するものであること
。 

 屎(し)尿浄化槽又は合併処理浄化槽を設ける区域  処理対象人員(単位 人)   性能
 生物化学的酸素要求量の除去率(単位 パーセント)  屎し 尿浄化槽又は合併処理浄化槽からの放流水の生物化学的酸素要求量(単位 一リットルにつきミリグラム)
 特定行政庁が衛生上特に支障があると認めて規則で指定する区域    五〇以下  六五以上  九〇以下
 五一以上
五〇〇以下
 七〇以上  六〇以下
 五〇一以上  八五以上  三〇以下
 特定行政庁が衛生上特に支障がないと認めて規則で指定する区域    五五以上  一二〇以下
 その他の区域    五〇〇以下  六五以上  九〇以下
 五〇一以上
二、〇〇〇以下
 七〇以上  六〇以下
 二、〇〇一以上  八五以上  三〇以下
   一 この表における処理対象人員の算定は、国土交通大臣が定める方法により行うものとする。

   二 この表において、生物化学的酸素要求量の除去率とは、屎し 尿浄化槽又は合併処理浄化槽への流入水の生物化学的酸素要求量の数値から屎し 尿浄化槽又は合併処理浄化槽からの放流水の生物化学的酸素要求量の数値を減じた数値を屎し 尿浄化槽又は合併処理浄化槽への流入水の生物化学的酸素要求量の数値で除して得た割合をいうものとする。
二 放流水に含まれる大腸菌群数が、一立方センチメートルにつき三千個以下とする性能を有するものであること。   

2 特定行政庁が地下浸透方式により汚物(便所から排出する汚物をいい、これと併せて雑排水を処理する場合にあつては雑排水を含む。次項及び第三十五条第一項において同じ。)を処理することとしても衛生上支障がないと認めて規則で指定する区域内に設ける当該方式に係る汚物処理性能に関する技術的基準は、前項の規定にかかわらず、通常の使用状態において、次の表に定める性能及び同項第二号に掲げる性能を有するものであることとする。

  性能
 一次処理装置による浮遊物質量の除去率
(単位 パーセント)
一次処理装置からの流出水に含まれる浮遊物質量
(単位 一リットルにつきミリグラム) 
 地下浸透能力
 五五以上  二五〇以下  一次処理装置からの流出水が滞留しない程度のものであること。
  この表において、一次処理装置による浮遊物質量の除去率とは、一次処理装置への流入水に含まれる浮遊物質量の数値から一次処理装置からの流出水に含まれる浮遊物質量の数値を減じた数値を一次処理装置への流入水に含まれる浮遊物質量の数値で除して得た割合をいうものとする。

3 次の各号に掲げる場合における汚物処理性能に関する技術的基準は、第一項の規定にかかわらず、通常の使用状態において、汚物を当該各号に定める基準に適合するよう処理する性能及び同項第二号に掲げる性能を有するものであることとする。
   一 水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第三条第一項又は第三項の規定による排水基準により、屎し 尿浄化槽又は合併処理浄化槽からの放流水について、第一項第一号の表に掲げる生物化学的酸素要求量に関する基準より厳しい基準が定められ、又は生物化学的酸素要求量以外の項目に関しても基準が定められている場合 当該排水基準
   二 浄化槽法第四条第一項の規定による技術上の基準により、屎し 尿浄化槽又は合併処理浄化槽からの放流水について、第一項第一号の表に掲げる生物化学的酸素要求量に関する基準より厳しい基準が定められ、又は生物化学的酸素要求量以外の項目に関しても基準が定められている場合 当該技術上の基準」

 とあり、
 建築基準法施行令第32条1項2号によれば、「二 
放流水に含まれる大腸菌群数が、一立方センチメートルにつき三千個以下とする性能を有するものであること」とあり、地下浸透方式を除く合併処理浄化槽の汚物処理性能に関して、放流水に含まれる大腸菌群数の個数についての技術的基準があるは、適切です。正しい。


3 「建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準(JISA3302)」によれば、「共同住宅」と「住宅」の算定基準は異なる。

〇 適切である。 「共同住宅」と「住宅」の算定基準は異なる。

 こんな箇所からの出題とは、まったく、酷い出題者だ。 こんな出題者を任命してはいけない。  建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準なんて、知らない!

 「建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準(JISA3302)」を探しました。

  http://www.pref.nara.jp/secure/12455/jis.pdf

 
  
 とあり、
 「建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準(JISA3302)」によれば、「住宅」でも、延べ面積(A)が、 
   A<= 130 なら  n(人)=5
   130< A なら n(人)=7 と 130u で違っていますし、
  「共同住宅」なら n(人)=0.05 A(延べ面積 u) となっていますから、「共同住宅」と「住宅」の算定基準は異なるは、適切です。



4 浄化槽の主たる処理方法は、生物膜法と活性汚泥法に大別される。


〇 適切である。 浄化槽の主たる処理方法は、生物膜法と活性汚泥法に大別される。

 浄化槽で使用される汚物の除去法は、大別すると、
  @
生物膜法...微生物を支持体(あるいは接触材)である固体表面に膜状に固定して処理を行う方式 と
  A
活性汚泥法(かっせいおでいほう)...汚水を活性汚泥と混ぜ、微生物の働きで有機物を分解し、沈殿池で活性汚泥を沈降除去してから上澄み液を塩素で処理する方式
  がありますから、浄化槽の主たる処理方法は、生物膜法と活性汚泥法に大別されるは、適切です。

 各々の方式の詳細は、各自勉強してください。


 


答え:1

  酷い! 選択肢1の「屎(し)尿浄化槽の漏水検査の時間」や、選択肢3の「建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準」なんて、知る訳ない! 
 何を管理業務主任者に求めての出題か! 時間がかかる。 前の「問22」 といい、ここの出題者も、常軌を逸した範囲からの出題である。
  
 こんな箇所からの出題とは、まったく、酷い出題者だ。 こんな出題者を任命してはいけない。

《タグ》建築基準法 浄化槽 屎(し)尿浄化槽の漏水検査の時間 大腸菌群数 建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準 生物膜法と活性汚泥法


(電気設備)
第三十二条

 建築物の電気設備は、法律又はこれに基く命令の規定で電気工作物に係る建築物の安全及び防火に関するものの定める工法によつて設けなければならない。

過去出題 マンション管理士 R03年、H18年、H16年、
管理業務主任者  

★32条:電気設備

 32条の条文を読むと「建築物の電気設備は、法律又はこれに基く命令の規定で電気工作物に係る建築物の安全及び防火に関するものの定める工法によつて設けなければならない。」とあり、
 これは、建築基準法2条1号及び3号で定義された、建築物に含まれる建築設備のうちの、「電気設備」については、別の法律があると言うことです。

 そこで別の法律として、電気事業法、電気用品安全法、電気工事士法、消防法、労働安全衛生法等で設置基準、技術基準が定められていて、これらの他の法令との関係を調整するための規定が、建築基準法32条となります。

 電気を作り、送り、また使う電気設備の内容を細かくしますと、
  @電気を安定的に供給するために発電から送電までの設備、
  A電気を使用する機器などの電気設備・電気工作物、
  B電話や情報通信などの通信設備、
  C消防用設備、
  D防犯設備、
 などとなり、こんにちでは、日常生活において欠かすことのできない社会基盤(インフラ)となる設備のことです。

★「電気事業法」で「電気設備の技術基準を定める省令」があります。

★建築基準法で「電気設備」に関しては、4つについて、建設省告示があります。

  1.避難施設...昭和48年建設省告示2563号。火や煙りによって自動的に閉鎖する防火設備(防火戸)の連動制御器に使用する電気配線や予備電源について

  2.排煙設備...昭和45年建設省告示1829号。排煙設備の電気配線、予備電源について

  3.非常用照明装置...非常用の照明装置、電気配線、予備電源について

  4.地下街...昭和44年建設省告示1730号。非常用の排煙設備の構造、非常用の照明設備の構造、電気配線、予備電源について

 

★ついでに、電圧の種類について

  1.低圧... 600V 以下

  2.高圧... 600V をこえ 7,000V以下

  3.特別高圧... 7,000V をこえる


設問−1 平成18年 マンション管理士 【問44}

 4 各住戸と共用部分の契約電力の総量が50kw以上のときは、一般的に高圧引込みとする。

→○  そのとおり。 電力会社から建物への電源供給には、
    @低圧引き込み...総量が50kW未満、
    A高圧引き込み...総量が50kW以上2,000kW未満
    B特別高圧引き込み...総量2,000kW以上 の
    3種類があり、 各住戸と共用部分の契約電力の総量が50kW以上の時は、一般的に高圧引き込みとする。なお、高圧引き込みの時は、変圧設備が必要となる。


設問−2 平成16年 マンション管理士 {問45}

3.電気設備には、パットマウント、遮断器及び自動点滅器が含まれる。

→○ そのとおり。電気設備とは、一般的には、建物内で使用する電気機器や機械設備へ電気を供給するための設備のことで、主なものとしては、受変電設備(高電圧を低電圧に下げ、この設備から各部屋に電気を配電するもの)、動力設備(空調機やモーターに電源を供給するもの)、照明、コンセント、電話設備、放送設備、テレビ共聴設備、自動火災報知設備、自家発電設備、避雷針などのことを総称して電気設備と呼んでいます。太陽光発電設備、コージェネレーション設備(発電機で電気を作り、その際にできた温水を給湯や冷暖房に利用する省エネルギー設備)を設けたりすることもしています。
 パットマウントは変圧器のこと。
 遮断器は平常状態及び短絡・過電流・地絡状態の電路を投入・遮断できる装置です。遮断器の2次側で短絡・過電流・地絡が発生したときに電路を保護するために、過電流継電器や地絡継電器など保護継電器と組み合わせたり、過電流や地絡を検出する装置を内蔵しています。


 


(避雷設備)
第三十三条

 高さ二十メートルをこえる建築物には、有効に避雷設備を設けなければならない。ただし、周囲の状況によつて安全上支障がない場合においては、この限りでない。

過去出題 マンション管理士 R03年、H27年、H24年、H22年、H18年、H14年、
管理業務主任者 H28年、H24年、H20年、H16年、H14年、H13年

★33条:避雷設備
 
 33条の避雷設備も、次の非常用エレベーター(34条2項)と共に、よく出題されています。

避雷設備とは...
   @受雷部(落雷を受け止める)、
   A避雷導線(雷電流を安全に伝達させる) 及び
   B接地極(雷電流を大地に逃がす)
   からなるもので、電撃による火災、破損又は人畜への傷害を防止するために設置するものです。(JIS規格 A4201)

  

  基本的な考え方として、避雷設備は雷を避けるために設置する設備ではありません。
  建物に落ちた雷(雷撃)を安全な通り道に誘導し、建築物や建築設備に悪影響を及ぼすこと無く大地に逃がすことに雷撃による損傷を最小限に抑え、人や建物の損害や電気設備などを保護するための設備です。
 
  避雷設備を設置していれば、建物に雷が落ちないということではなく、いつどこに雷が落ちるかわからない状態を避け、雷が落ちても、それを安全な通り道に誘導することで建物利用者や設備などの安全を確保します。

★避雷針(受電部)の役割

  雷は、鉄塔、高層ビル、高いアンテナ、樹木など高い所に落ちやすいといいますが、そ の被害を防ぐのが避雷針です。避雷針は太い電線で地面とつながっています。地面の 電気は避雷針から少しづつ放電し、落雷を防いでいます。万一落雷しても、その電流は 大地に流れ、設備に影響しないようになっています。避雷針の先端から45度〜60度の内側は 落雷から免れるといわれており、この角度を「保護角」といっています。

   避雷針は私たちの住まいや商業ビルのほか、文化財としての現存する神社仏閣、歴史 ある近代建築、煙突、古い樹齢の木、大きな橋、発電所、珍しいところではロケットの 発射台などにも設けられています。

★避雷設備の詳細は...建築基準法では定めがなく、設置方法,施工法等は日本工業規格JISA4201(建築物等の雷保護)(1992,2003)によることが、建設省の告示で指定されています。(平成12年建設省告示1425号)
   平成15年7月8日に改正され旧JISA4201「建築物等の避雷設備(避雷針)」が、新JISA4201「建築物等の雷保護」に改正されています。

★施行令は以下のように定めています。(施行令129条の14、及び 129条の15)

建築基準法施行令第129条の14

第三節 避雷設備
(設置)
第百二十九条の十四  法第三十三条 の規定による避雷設備は、建築物の高さ二十メートルをこえる部分を雷撃から保護するように設けなければならない。

建築基準法施行令第129条の15

(構造)
第百二十九条の十五  前条の避雷設備の構造は、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。
   一  雷撃によつて生ずる電流を建築物に被害を及ぼすことなく安全に地中に流すことができるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。
   二  避雷設備の雨水等により腐食のおそれのある部分にあつては、腐食しにくい材料を用いるか、又は有効な腐食防止のための措置を講じたものであること。

★避雷針の保護角度

  1.一般は60度...避雷針の先を中心に下の方60度で回転した円錐状の中に、20mを超える建築物の部分が入らなければならないということです。

  2.危険物の貯蔵庫の保護角度は、45度...一般より狭くなるということです。

★規定が古い!

  避雷針の保護角は、一般建築物では60度以下、火薬および可燃物性ガス・液体などの 危険物を扱う製造所、貯蔵所の場合は少し狭くなり45度とJISで規定されていました。
ただし、この規定は古くからのもので、高さについての考慮がなされていないため、現在 ではこの保護角は広すぎて、保護角内であっても安全であるとはいえないという指摘が 出ていました。

 2003年に新しくJIS化されました。これは、IEC規格で1990年に制定されていたもの(JIS A 4201)です。避雷針の保護角は高さと保護効率が考慮されたものになり、保護する構造物が高くなるほど保護角は狭くなっていき、どの保護レベルにおいても60m以上の構造物は保護角でのの制定はなされていません。これは構造物の側面に落雷する側撃雷は、60m 以上の建物になると避雷針で受雷できないからです。

 


(昇降機)
第三十四条

 建築物に設ける昇降機は、安全な構造で、かつ、その昇降路の周壁及び開口部は、防火上支障がない構造でなければならない。

2  高さ三十一メートルをこえる建築物(政令で定めるものを除く。)には、非常用の昇降機を設けなければならない。

過去出題 マンション管理士 R02年、H28年、H18年、H14年、
管理業務主任者 H27年、H24年、H23年、H19年、H18年、H16年、H13年

★34条:昇降機

★この、非常用昇降機も前の(33条)「避雷設備」と共に、出題傾向が高い条文です。

★昇降機の種類には、@エレベーター、Aエスカレーター、B小荷物専用昇降機 の3種がある

 34条での昇降機とは、一定の昇降路、経路その他これに類する部分を介して、動力を用いて人又は物を建築物のある階又はある部分から他の階又は他の部分へ移動・運搬するための設備です。

 昇降機には、@エレベーター、Aエスカレーター、B小荷物専用昇降機 の3種があります。

   

 なお、以下の施設は「昇降機」には、該当しません。
   ・工場、作業場等の生産設備又は搬送設備として専らそれらの過程の一部に組み込まれる施設で、人が搬器への物品の搬出、搬入に直接介入せずに使用され、かつ、人が乗り込んだ状態で運転されるおそれがない構造となっているもの(垂直搬送機)
   ・機械式駐車場、立体自動倉庫等の物品の保管のための施設(当該施設に搬入された物品等が自動的に搬出位置に運搬される構造となっているものに限る。)の一部を構成するもので、人が乗り込んだ状態で運転されるおそれがない構造となっているもの。
   ・舞台装置であるせり上げ装置

  1.エレベーターとは...人又は人及び物を運搬する昇降機(エスカレーターを除く)並びに物を運搬するための昇降機でかごの水平投影面積が一平方メートルを超え、又は天井の高さが一・二メートルを超えるもの(施行令129条の3,1項1号)。床面積1u超で天井の高さ1.2m超。

    エレベーターの種類は、
     @乗用エレベーター.....人の輸送を主目的とするもので、他の用途のエレベーターと比べて床面積に対する積載荷重や安全装置等、厳しい条件で設計することが要求されています。
     A人荷用エレベーター...人と荷物の輸送を目的とするもので、法規上の取扱いは乗用エレベーターと同じですが、床面積に対する積載荷重を、運搬する荷物に合せて大きく設定することが出来ます。
     B荷物用エレベーター...荷物の輸送を目的とするもので、扱う荷物の種類によって床面積に対する積載荷重を設定します。荷扱者またはエレベーターの運転者以外の人はかご内に乗れません。荷物以外に乗客も利用する場合は人荷用エレベーターとする必要があります。
     Cその他のエレベーター...寝台用エレベーター、自動車用エレベーター、ホームエレベーターなどがあります。

  2.エスカレーターとは...特に定義はされていない。一般には、階段状の階段に人を乗せて、斜めに昇降する昇降機。動く歩道も含まれる。

  3.小荷物専用昇降機とは...人は乗らないで物を運搬するための昇降機で、かごの水平投影面積が一平方メートル以下で、かつ、天井の高さが一・二メートル以下のもの(施行令129条の3,1項3号)。床面積1u以下でで天井の高さ1.2m以下。
    かご内に人が乗ることができず、かご外で運転操作を行い、専ら小荷物を運搬するもので、テーブルタイプとフロアタイプに分類されます。
     @テーブルタイプ・・・出し入れ口の下端が床面より50センチメートル以上高い位置にあるものをいい、設置する場合には、届出が必要です。
     Aフロアタイプ...テーブルタイプ以外のものをいい、一般的には出し入れ口の下端が床面にあり、手押し車に乗せた荷物などを運搬する用途に用いられるもので、設置する場合にはエレベーターと同じく建築確認申請が必要です。

★エレベーターの構造等については、施行令129条の4から129条の11までがある。

★カゴ(ケージ)の構造の規定(建築基準法施行令129条の6)

  1.難燃材料でつくる

  2.天井に救出口を設ける

  3.乗用エレベーターの出入り口は1ヶ所とする

  4.かご内に、用途・積載荷重・最大定員(65kg/一人)・定格速度などを表示する

★昇降路(エレベーターシャフト)の構造の規定(建築基準法施行令129条の7)

  1.耐火構造の壁でつくる

  2.シャフト内には、エレベーター用以外の配管設備は設けてはいけない(原則)(光ファイバー程度はいい。平成17年6月1日 国土交通省告示第570号)

  3.ハッチドア(出入り口)とケージドア(かご)の敷居との隙間は、4cm以下とする

★安全装置の規定(建築基準法施行令129条の10) 平成21年9月28日の改正あり

  1.かごの扉と乗り場の扉のすべての出入り口の扉が閉じていなければ、かごを昇降されられない装置を設ける

  2.乗り場の扉は、鍵がなければ外から開かない装置にする

  3.地震等の衝撃を検知(地震時管制運転装置)し、自動的に出入り口の戸の位置に停止させ、その戸を開くことができること((平成20年12月26日国土交通省告示第1536号 )

  4.停電のときに、床面1ルクス以上となる照明装置や連絡装置を設ける

  5.乗用は各階ごとに停止し、自動開放することができる装置を備える

  6.積載荷重を超過したときの警報と扉の閉鎖を制止する装置を備える

 このうち、過去に出題された項目として、施行令129条の6、129条の7、129条の10の内容は以下のとおりです。

建築基準法 施行令第129条の6

  (エレベーターのかごの構造)
第百二十九条の六  エレベーターのかごは、次に定める構造としなければならない。
   一  各部は、かご内の人又は物による衝撃に対して安全なものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとすること。
   二  構造上軽微な部分を除き、難燃材料で造り、又は覆うこと。ただし、地階又は三階以上の階に居室を有さない建築物に設けるエレベーターのかごその他防火上支障のないものとして国土交通大臣が定めるエレベーターのかごにあつては、この限りでない。
   三  かご内の人又は物が釣合おもり、昇降路の壁その他のかご外の物に触れるおそれのないものとして国土交通大臣が定める基準に適合する壁又は囲い及び出入口の戸を設けること。
   四  非常の場合においてかご内の人を安全にかご外に救出することができる開口部をかごの天井部に設けること。
   五  用途及び積載量(キログラムで表した重量とする。以下同じ。)並びに乗用エレベーター及び寝台用エレベーターにあつては最大定員(積載荷重を前条第二項の表に定める数値とし、重力加速度を九・八メートル毎秒毎秒と、一人当たりの体重を六十五キログラムとして計算した定員をいう。第百二十九条の十三の三第三項第九号において同じ。)を明示した標識をかご内の見やすい場所に掲示すること。

    *エレベーターの一人当たりの体重は、65kg として計算されています。これは、あなたの体重とは、無関係です。

建築基準法 施行令第129条の7
 
(エレベーターの昇降路の構造)
第百二十九条の七  エレベーターの昇降路は、次に定める構造としなければならない。
   一  昇降路外の人又は物がかご又は釣合おもりに触れるおそれのないものとして国土交通大臣が定める基準に適合する壁又は囲い及び出入口(非常口を含む。以下この節において同じ。)の戸を設けること。
   二  構造上軽微な部分を除き、昇降路の壁又は囲い及び出入口の戸は、難燃材料で造り、又は覆うこと。ただし、地階又は三階以上の階に居室を有さない建築物に設けるエレベーターの昇降路その他防火上支障のないものとして国土交通大臣が定めるエレベーターの昇降路にあつては、この限りでない。
   三  昇降路の出入口の戸には、かごがその戸の位置に停止していない場合において昇降路外の人又は物の昇降路内への落下を防止することができるものとして国土交通大臣が定める基準に適合する施錠装置を設けること。
   四  出入口の床先とかごの床先との水平距離は、四センチメートル以下とし、乗用エレベーター及び寝台用エレベーターにあつては、かごの床先と昇降路壁との水平距離は、十二・五センチメートル以下とすること。
   五  昇降路内には、次のいずれかに該当するものを除き、突出物を設けないこと。
   イ レールブラケット又は横架材であつて、次に掲げる基準に適合するもの
     (1) 地震時において主索その他の索が触れた場合においても、かごの昇降、かごの出入口の戸の開閉その他のエレベーターの機能に支障が生じないよう金網、鉄板その他これらに類するものが設置されていること。
     (2) (1)に掲げるもののほか、国土交通大臣の定める措置が講じられていること。
   ロ 第百二十九条の二の五第一項第三号ただし書の配管設備で同条の規定に適合するもの
   ハ イ又はロに掲げるもののほか、係合装置その他のエレベーターの構造上昇降路内に設けることがやむを得ないものであつて、地震時においても主索、電線その他のものの機能に支障が生じないように必要な措置が講じられたもの

    *エレベーターの出入口の床先とかごの床先との水平距離は、4cm以下です。6cm以下ではありません。

建築基準法 施行令第129条の10

 (エレベーターの安全装置)
第百二十九条の十  エレベーターには、制動装置を設けなければならない。

2  前項のエレベーターの制動装置の構造は、次に掲げる基準に適合するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
  一  かごが昇降路の頂部又は底部に衝突するおそれがある場合に、自動的かつ段階的に作動し、これにより、かごに生ずる垂直方向の加速度が九・八メートル毎秒毎秒を、水平方向の加速度が五・〇メートル毎秒毎秒を超えることなく安全にかごを制止させることができるものであること。
  二  保守点検をかごの上に人が乗り行うエレベーターにあつては、点検を行う者が昇降路の頂部とかごの間に挟まれることのないよう自動的にかごを制止させることができるものであること。

3  エレベーターには、前項に定める制動装置のほか、次に掲げる安全装置を設けなければならない。
  一  次に掲げる場合に自動的にかごを制止する装置
   イ 駆動装置又は制御器に故障が生じ、かごの停止位置が著しく移動した場合
   ロ 駆動装置又は制御器に故障が生じ、かご及び昇降路のすべての出入口の戸が閉じる前にかごが昇降した場合
  二  地震その他の衝撃により生じた国土交通大臣が定める加速度を検知し、自動的に、かごを昇降路の出入口の戸の位置に停止させ、かつ、当該かごの出入口の戸及び昇降路の出入口の戸を開き、又はかご内の人がこれらの戸を開くことができることとする装置
  三  停電等の非常の場合においてかご内からかご外に連絡することができる装置
  四  乗用エレベーター又は寝台用エレベーターにあつては、次に掲げる安全装置
   イ 積載荷重に一・一を乗じて得た数値を超えた荷重が作用した場合において警報を発し、かつ、出入口の戸の閉鎖を自動的に制止する装置
   ロ 停電の場合においても、床面で一ルクス以上の照度を確保することができる照明装置

4  前項第一号及び第二号に掲げる装置の構造は、それぞれ、その機能を確保することができるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。

 

★エスカレーター(動く歩道も)の構造などは、施行令129条の12にあります。

建築基準法 施行令第129条の12

  (エスカレーターの構造
第百二十九条の十二  エスカレーターは、次に定める構造としなければならない。
  一  国土交通大臣が定めるところにより、通常の使用状態において人又は物が挟まれ、又は障害物に衝突することがないようにすること。
  二  勾配は、三十度以下とすること
  三  踏段(人を乗せて昇降する部分をいう。以下同じ。)の両側に手すりを設け、手すりの上端部が踏段と同一方向に同一速度で連動するようにすること。
  四  踏段の幅は、一・一メートル以下とし、踏段の端から当該踏段の端の側にある手すりの上端部の中心までの水平距離は、二十五センチメートル以下とすること。
  五  踏段の定格速度は、五十メートル以下の範囲内において、エスカレーターの勾配に応じ国土交通大臣が定める毎分の速度以下とすること。
  六  地震その他の震動によつて脱落するおそれがないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとすること。

2  建築物に設けるエスカレーターについては、第百二十九条の四(第三項第五号から第七号までを除く。)及び第百二十九条の五第一項の規定を準用する。この場合において、次の表の上欄に掲げる規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。

第百二十九条の四の見出し、同条第一項各号列記以外の部分、第二項及び第三項並びに第百二十九条の五の見出し及び同条第一項 エレベーター エスカレーター
第百二十九条の四 かご 踏段
第百二十九条の四第一項第二号 主索でつるエレベーター、油圧エレベーターその他国土交通大臣が定めるエレベーター くさりでつるエスカレーターその他国土交通大臣が定めるエスカレーター
第百二十九条の四第一項第二号及び第二項 エレベーター強度検証法 エスカレーター強度検証法
第百二十九条の四第二項第一号 次条 次条第一項及び第百二十九条の十二第三項
第百二十九条の四第二項第二号 次条第二項に規定する積載荷重 第百二十九条の十二第三項に規定する積載荷重

3  エスカレーターの踏段の積載荷重は、次の式によつて計算した数値以上としなければならない。
   P=2,600A
   この式において、P及びAは、それぞれ次の数値を表すものとする。
   P エスカレーターの積載荷重(単位 ニュートン)
   A エスカレーターの踏段面の水平投影面積(単位 平方メートル)

4  エスカレーターには、制動装置及び昇降口において踏段の昇降を停止させることができる装置を設けなければならない。

5  前項の制動装置の構造は、動力が切れた場合、駆動装置に故障が生じた場合、人又は物が挟まれた場合その他の人が危害を受け又は物が損傷するおそれがある場合に自動的に作動し、踏段に生ずる進行方向の加速度が一・二五メートル毎秒毎秒を超えることなく安全に踏段を制止させることができるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。

★小荷物専用昇降機の構造は、施行令129条の13にあります。

建築基準法 施行令第129条の13

  (小荷物専用昇降機の構造
第百二十九条の十三  小荷物専用昇降機は、次に定める構造としなければならない。
  一  昇降路には昇降路外の人又は物がかご又は釣合おもりに触れるおそれのないものとして国土交通大臣が定める基準に適合する壁又は囲い及び出し入れ口の戸を設けること。
  二  昇降路の壁又は囲い及び出し入れ口の戸は、難燃材料で造り、又は覆うこと。ただし、地階又は三階以上の階に居室を有さない建築物に設ける小荷物専用昇降機の昇降路その他防火上支障のないものとして国土交通大臣が定める小荷物専用昇降機の昇降路にあつては、この限りでない。
  三  昇降路のすべての出し入れ口の戸が閉じた後、かごを昇降させるものであること。
  四  昇降路の出し入れ口の戸には、かごがその戸の位置に停止していない場合においては、かぎを用いなければ外から開くことができない装置を設けること。ただし、当該出し入れ口の下端が当該出し入れ口が設けられる室の床面より高い場合においては、この限りでない。

 

★非常用の昇降機は、原則:31mを超えると設けること(2項)

★どうして、31mを越えると非常用エレベーター(昇降機)が必要か?
  31mは昔の尺貫法の約100尺(33m)に該当します。以前の高さ制限でもあります。
  消防用の避難はしご車もその高さにあわせて31mまでは、届きますがそれ以上は届きません。
  高層建築物だと外部からの進入が難しく、消火や救出活動が困難であるため、高さ31mを超える建築物には、消防隊も消火活動に使える非常用エレベーターが必要とされます。


  非常用であっても、平常時には、乗用(荷物用も)として使用されます。

 


★どうして、昇降機のなかで、エレベーターが非常用昇降機か
 説明しましたように、昇降機の種類には、@エレベーター、Aエスカレーター、B小荷物専用昇降機 の3種があります。
 この中から、エレベーターがその機能から、非常用に規定されています。(施行令129条の13の3、1項)

★非常用の昇降機の設置及び構造として、施行令129条の13の3 があります。

建築基準法 施行令第129条の13の3

 (非常用の昇降機の設置及び構造)
第百二十九条の十三の三  法第三十四条第二項 の規定による非常用の昇降機は、エレベーターとし、その設置及び構造は、第百二十九条の四から第百二十九条の十までの規定によるほか、この条に定めるところによらなければならない。

2  前項の非常用の昇降機であるエレベーター(以下「非常用エレベーター」という。)の数は、高さ三十一メートルを超える部分の床面積が最大の階における床面積に応じて、次の表に定める数以上とし、二以上の非常用エレベーターを設置する場合には、避難上及び消火上有効な間隔を保つて配置しなければならない。

高さ三十一メートルをこえる部分の床面積が最大の階の床面積 非常用エレベーターの数
(一) 千五百平方メートル以下の場合
(二) 千五百平方メートルをこえる場合 三千平方メートル以内を増すごとに(一)の数に一を加えた数

3  乗降ロビーは、次に定める構造としなければならない。
  一  各階(屋内と連絡する乗降ロビーを設けることが構造上著しく困難である階で次のイからホまでのいずれかに該当するもの及び避難階を除く。)において屋内と連絡すること。
   イ 当該階及びその直上階(当該階が、地階である場合にあつては当該階及びその直下階、最上階又は地階の最下階である場合にあつては当該階)が次の(1)又は(2)のいずれかに該当し、かつ、当該階の直下階(当該階が地階である場合にあつては、その直上階)において乗降ロビーが設けられている階
    (1) 階段室、昇降機その他の建築設備の機械室その他これらに類する用途に供する階
    (2) その主要構造部が不燃材料で造られた建築物その他これと同等以上に火災の発生のおそれの少ない構造の建築物の階で、機械製作工場、不燃性の物品を保管する倉庫その他これらに類する用途に供するもの
   ロ 当該階以上の階の床面積の合計が五百平方メートル以下の階
   ハ 避難階の直上階又は直下階
   ニ その主要構造部が不燃材料で造られた建築物の地階(他の非常用エレベーターの乗降ロビーが設けられているものに限る。)で居室を有しないもの
   ホ 当該階の床面積に応じ、次の表に定める数の他の非常用エレベーターの乗降ロビーが屋内と連絡している階

当該階の床面積 当該階で乗降ロビーが屋内と連絡している他の非常用エレベーターの数
(一) 千五百平方メートル以下の場合
(二) 千五百平方メートルを超える場合 三千平方メートル以内を増すごとに(一)の数に一を加えた数

  二  バルコニー又は外気に向かつて開くことができる窓若しくは排煙設備(国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものに限る。)を設けること。
  三  出入口(特別避難階段の階段室に通ずる出入口及び昇降路の出入口を除く。)には、第百二十三条第一項第六号に規定する構造の特定防火設備を設けること。
  四  窓若しくは排煙設備又は出入口を除き、耐火構造の床及び壁で囲むこと。
  五  天井及び壁の室内に面する部分は、仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ること。
  六  予備電源を有する照明設備を設けること
  七  床面積は、非常用エレベーター一基について十平方メートル以上とすること。
  八  屋内消火栓、連結送水管の放水口、非常コンセント設備等の消火設備を設置できるものとすること。
  九  乗降ロビーには、見やすい方法で、積載量及び最大定員のほか、非常用エレベーターである旨、避難階における避難経路その他避難上必要な事項を明示した標識を掲示し、かつ、非常の用に供している場合においてその旨を明示することができる表示灯その他これに類するものを設けること。 

4  非常用エレベーターの昇降路は、非常用エレベーター二基以内ごとに、乗降ロビーに通ずる出入口及び機械室に通ずる主索、電線その他のものの周囲を除き、耐火構造の床及び壁で囲まなければならない。

5  避難階においては、非常用エレベーターの昇降路の出入口(第三項に規定する構造の乗降ロビーを設けた場合には、その出入口)から屋外への出口(道又は道に通ずる幅員四メートル以上の通路、空地その他これらに類するものに接している部分に限る。)の一に至る歩行距離は、三十メートル以下としなければならない。

6  非常用エレベーターのかご及びその出入口の寸法並びにかごの積載量は、国土交通大臣の指定する日本工業規格(注:JIS A4301のE-17-CO)に定める数値以上としなければならない。

7  非常用エレベーターには、かごを呼び戻す装置(各階の乗降ロビー及び非常用エレベーターのかご内に設けられた通常の制御装置の機能を停止させ、かごを避難階又はその直上階若しくは直下階に呼び戻す装置をいう。)を設け、かつ、当該装置の作動は、避難階又はその直上階若しくは直下階の乗降ロビー及び中央管理室において行うことができるものとしなければならない。

8  非常用エレベーターには、かご(籠)内と中央管理室とを連絡する電話装置を設けなければならない。

9  非常用エレベーターには、第百二十九条の八第二項第二号及び第百二十九条の十第三項第二号に掲げる装置の機能を停止させ、かごの戸を開いたままかごを昇降させることができる装置を設けなければならない。

10  非常用エレベーターには、予備電源を設けなければならない。

11  非常用エレベーターのかごの定格速度は、六十メートル以上としなければならない。

12  第二項から前項までの規定によるほか、非常用エレベーターの構造は、その機能を確保するために必要があるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならない。  

13 第三項第二号の規定は、非常用エレベーターの昇降路又は乗降ロビーの構造が、通常の火災時に生ずる煙が乗降ロビーを通じて昇降路に流入することを有効に防止できるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものである場合においては、適用しない。

★JIS規格の見方...JIS A 4301 E-17−CO
               JIS 日本工業規格
               A 建築
               4301 通し番号
               E 非常用エレベーター
               17 17人乗り
               CO センター・オープン(扉の開閉)

★非常用エレベーターが要らないもの (施行令129条の13の2)

建築基準法 施行令第129条の13の2

 (非常用の昇降機の設置を要しない建築物
第百二十九条の十三の二  法第三十四条第二項 の規定により政令で定める建築物は、次の各号のいずれかに該当するものとする。
  一  高さ三十一メートルを超える部分を階段室、昇降機その他の建築設備の機械室、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する用途に供する建築物
  二  高さ三十一メートルを超える部分の各階の床面積の合計が五百平方メートル以下の建築物
  三  高さ三十一メートルを超える部分の階数が四以下の主要構造部を耐火構造とした建築物で、当該部分が床面積の合計百平方メートル以内ごとに耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備でその構造が第百十二条第十四項第一号イ、ロ及びニに掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの(廊下に面する窓で開口面積が一平方メートル以内のものに設けられる法第二条第九号の二 ロに規定する防火設備を含む。)で区画されているもの
  四  高さ三十一メートルを超える部分を機械製作工場、不燃性の物品を保管する倉庫その他これらに類する用途に供する建築物で主要構造部が不燃材料で造られたものその他これと同等以上に火災の発生のおそれの少ない構造のもの

★法律には、例外がある
  高さが31mを超えても、非常用エレベーターを設置しなくてもいい場合がある。
  通常、人がいなくて、火災発生の可能性の低い階段室や物見塔などの用途なら高さが31mを超えても、非常用エレベーターの設置は不要です。

  条文の前半だけを憶えてはいけません。「ただし」とか「政令で定めるものを除く」などの規定は、出題者から、狙い易い条文です。

  この、非常用エレベーターの設置規定も、不要なものがあることも、勉強しておいてください。

★定期検査報告制度がある
  建物所有者は、 建築基準法第12条第3項 の規定に基づき、定期的に、昇降機を「昇降機等検査員」等の資格者に検査させ、その結果を特定行政庁に報告することが義務付けられています。
   

定期報告が必要な建築物など 調査、検査をする資格者 報告時期
6条1項1号など特定建築物 一級建築士、二級建築士、建築物調査員 6ヵ月〜
3年ごと
  特定建築設備等
建築設備 一級建築士、二級建築士、建築設備検査員 6ヵ月〜
1年ごと
防火設備 一級建築士、二級建築士、防火設備検査員
昇降機等 一級建築士、二級建築士、昇降機等検査員

 


{設問}平成23年 管理業務主任者試験 「問20」

【問 20】 エレベーターに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。


1 昇降行程が20m 以下で、かつ、かごの床面積が1.3u 以下の共同住宅のエレベータ ーについては、国土交通省(旧建設省)の告示により、積載荷重の下限値が定められている。

○ 適切である。  これもまた、知るわけないって箇所からの出題だ。 国土交通省(旧建設省)の告示とは! 4 の住宅に共同住宅も入る?
 
用途が特殊なエレベーター及び当該エレベーターのかごの積載荷重を定める件(平成12年5月31日 建設省告示第1415号、改正 平成14年5月31日 国土交通省告示 第479号、改正 平成21年8月4日国土交通省告示第859号附則による改正)
 「建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第129条の5第2項の規定に基づき、用途が特殊なエレベーター及び当該エレベーターのかごの積載荷重を次のように定める。
  建築基準法施行令(以下「令」という。)第129条の5第2項に規定する用途が特殊なエレベーターは、次の各号に掲げるエレベーターとし、同項に規定する当該用途に応じたかごの積載荷重は、それぞれ当該各号に定める数値とする。
   一 次に掲げる基準に適合するトランクを設けたエレベーター エレベーターのかごの面積をトランクの面積を除いた面積として、令第129条の5第2項の表に基づき算定した数値
      イ 床面から天井までの高さが1.2m以下であること。
      ロ かごの他の部分とトランクの床面の段差が10p以下であること。
      ハ 施錠装置を有する扉を設けること。
      ニ かごの奥行き(トランク部分の奥行きを含む。以下同じ。)が2.2m以下であり、かつ、トランク部分の奥行きがかごの奥行きの1/2以下であること。
   二 フォークリフトその他のかごに荷物を積み込む機械(以下「フォークリフト等」という。)がかごへの荷物の積込み時にかごに荷重をかける乗用及び寝台用エレベーター以外のエレベーター 次に掲げる数値のうち大きいもの
      イ 実況に応じ算定した昇降させる人又は物の荷重に、フォークリフト等の荷重(荷物の積み込み時にかごにかかる荷重に限る。)を加えたものを1.5で除した数値
      ロ 令第129条の5第2項の表に基づき算定した数値
   三 昇降行程が10m以下で、かつ、かごの床面積が1.1u以下のエレベーター 床面積1uにつき1,800として計算した数値で、かつ、1,300以上の数値
   四 昇降行程が20m以下で、かつ、かごの床面積が1.3u以下の住宅、下宿又は寄宿舎に設けるエレベーター 床面積1uにつき2,500として計算した数値で、かつ、1,300以上の数値
   五 平成12年建設省告示第1413号第1第九号に掲げるエレベーター 次に定める床面積及び種類に応じた次に定める数値
      イ かごの床面積が1u以下で住戸内に設置されるもの。床面積1uにつき1,800として計算した数値で、かつ1,300以上の数値
      ロ かごの床面積が2u以下のもの「(イに掲げるものを除く。)」 1,800
      ハ かごの床面積が2uを超え2.25u以下のもの 2,400
   六 平成12年建設省告示第1413号第1第十号に掲げるエレベーター 900」とあり、
「四 昇降行程が20m以下で、かつ、かごの床面積が1.3u以下の住宅、下宿又は寄宿舎に設けるエレベーター 床面積1uにつき2,500として計算した数値で、かつ、1,300以上の数値」とあり、下限値ととして、「かつ、1,300以上の数値」が定められている。


2 乗用エレベーターの最大定員の算定においては、重力加速度を9.8m /s2として、1人当たりの体重を60kg として計算しなければならない。

X 適切でない。 一人当たりの体重は65kg。 ここは、過去問題あり。平成19年管理業務主任者試験 「問20」 、 平成16年管理業務主任者試験 「問20」。
 建築基準法施行令第129条の6 5項
 「(エレベーターのかごの構造)
  第百二十九条の六  エレベーターのかごは、次に定める構造としなければならない。
     一  各部は、かご内の人又は物による衝撃に対して安全なものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとすること。
     二  構造上軽微な部分を除き、難燃材料で造り、又は覆うこと。ただし、地階又は三階以上の階に居室を有さない建築物に設けるエレベーターのかごその他防火上支障のないものとして国土交通大臣が定めるエレベーターのかごにあつては、この限りでない。
     三  かご内の人又は物が釣合おもり、昇降路の壁その他のかご外の物に触れるおそれのないものとして国土交通大臣が定める基準に適合する壁又は囲い及び出入口の戸を設けること。
     四  非常の場合においてかご内の人を安全にかご外に救出することができる開口部をかごの天井部に設けること。
     五  用途及び積載量(キログラムで表した重量とする。以下同じ。)並びに乗用エレベーター及び寝台用エレベーターにあつては最大定員(積載荷重を前条第二項の表に定める数値とし、重力加速度を九・八メートル毎秒毎秒と、一人当たりの体重を六十五キログラムとして計算した定員をいう。第百二十九条の十三の三第三項第九号において同じ。)を明示した標識をかご内の見やすい場所に掲示すること」とあり、
「五 一人当たりの体重を六十五キログラムとして計算した定員をいう」で、一人当たりの体重は、65kg です。60kgではありません。


3 火災時などの災害時に消防隊が人の救助活動及び消火活動に利用するための非常用エレベーターは、高さ60m を超える建築物に設置が義務付けられている。

X 適切でない。 ここは、平成18年マンション管理士試験 「問21」 など。
  非常用エレベーターの設置は、高さ
  建築基準法34条2項
 「高さ三十一メートルをこえる建築物(政令で定めるものを除く。)には、非常用の昇降機を設けなければならない。」とあり、
高さ31mを超える建築物には設置しなければなりません。60mではありません。
 昇降機には、エレベーターやエスカレーターもありますが、建築基準法施行令129条の13の3により、
   「(非常用の昇降機の設置及び構造)
   第百二十九条の十三の三  法第三十四条第二項 の規定による非常用の昇降機は、エレベーターとし、その設置及び構造は、第百二十九条の四から第百二十九条の十までの規定によるほか、この条に定めるところによらなければならない。」
とあり、非常用の昇降機は「エレベーター」と定められています。
なお、除かれる場合として、
  建築基準法施行令129条の13の2、「法第三十四条第二項 の規定により政令で定める建築物(非常用の昇降機が不要な建築物)は、次の各号のいずれかに該当するものとする。
   一  高さ三十一メートルを超える部分を階段室、昇降機その他の建築設備の機械室、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する用途に供する建築物
   二  高さ三十一メートルを超える部分の各階の床面積の合計が五百平方メートル以下の建築物
   三  高さ三十一メートルを超える部分の階数が四以下の主要構造部を耐火構造とした建築物で、当該部分が床面積の合計百平方メートル以内ごとに耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備でその構造が第百十二条第十四項第一号イ、ロ及びニに掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの(廊下に面する窓で開口面積が一平方メートル以内のものに設けられる法第二条第九号の二 ロに規定する防火設備を含む。)で区画されているもの
   四  高さ三十一メートルを超える部分を機械製作工場、不燃性の物品を保管する倉庫その他これらに類する用途に供する建築物で主要構造部が不燃材料で造られたものその他これと同等以上に火災の発生のおそれの少ない構造のもの 」
 も、記憶しておくこと。
★どうして、31mを越えると非常用エレベーターが必要か?
  31mは昔の尺貫法の約100尺(33m)に該当します。以前の高さ制限でもあります。
  消防用の避難はしご車もその高さにあわせて31mまでは、届きますがそれ以上は届きません。
  そこで、消防隊も消火活動に使える非常用エレベーターが必要とされます。  


4 機械室不要の、いわゆる機械室レスエレベーターは、すべてリニアモーターエレベーターである。

X 適切でない。 平成21年マンション管理士試験 「問45」 、 平成16年マンション管理士試験 「問38」 
  機械室(マシンルーム)レス(不要)エレベーターは、すべてリニアモーターエレベーターではありません。
  機械室レスエレベーター:マシンルームレス型エレベーターは、エレベーターの巻上機を昇降路のピットに、制御盤を乗場または塔内に配置することで従来の「ロープ式」「油圧式」に不可欠だった機械室を無くした、次世代型のエレベーターです。機械室を無くすことにより、省スペース、省エネルギー、建築コストの削減はもちろんのこと、昇降路の位置を自由に設計できるので建築物の屋根や、外観など意匠設計の自由度が向上します。また、運転性能の向上、走行騒音の低下、廃油処理が必要なくなることにより地球環境に優しい移動環境を構築します。このような特性を持つマシンルームレスエレベーターは建物設計の段階から様々な発想を生み、私たちの生活を、より快適なものへと進化させていきます。これからエレベーターは、徐々にマシンルームレスエレベーターへ移行し、次世代エレベーターの本流となっていきます。
 そして、リニアモーターエレベーターとは、回転運動を直線運動に置き換えるリニアモーターを利用したエレベーターです。一次側をつり合いおもりに内蔵し、二次側を昇降路の全長に伸ばすことで、巻上機を設置する必要がなくなりました。
現在のリニアモーター式は「究極の機械室なしタイプ」ですが、次世代のリニアモーター式エレベーターとして、つり合いおもりに内蔵されている一次側を、かごに内蔵する研究が進められています。この方式が実現すれば、昇降路内に伸ばした二次側にそって一次側の「かご」が移動することになりますから、ロープが不要になるほか、水平・垂直・カーブなど、かごの移動方向も制約がなくなり、エレベーターの概念が根底から覆ることになります。という訳で、まだ研究の段階です。費用がかかるのと、モーターの小型化で、採用が遅れているようです。


答え:1 

 


(特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準)
第三十五条

 別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物又は延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計)が千平方メートルをこえる建築物については、廊下、階段、出入口その他の避難施設、消火栓、スプリンクラー、貯水槽その他の消火設備、排煙設備、非常用の照明装置及び進入口並びに敷地内の避難上及び消火上必要な通路は、政令で定める技術的基準に従つて、避難上及び消火上支障がないようにしなければならない。

過去出題 マンション管理士 H27年、H18年、H16年、H14年、
管理業務主任者 H27年、H19年、

★35条:特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準

  35条で規定されるのは、劇場や病院、学校、百貨店などの特殊建築物(建築基準法第2条2号(マンションは共同住宅として入る))で、3階以上、開口部を有しない居室を有する建築物、1,000uをこえる建築物についての、廊下の幅、居室から避難階までの距離、避難階段の構造、出口の施錠方法等を規定しています。

  35条が適用されるのは、
   @別表第1(い)欄(1)項から(4)項の特殊建築物(劇場、映画館、病院、ホテル、共同住宅、学校、体育館、百貨店、マーケットなど)
   A3階以上の建築物(地階をのぞくの規定はない)
   B採光・排煙無窓居室を有する建築物
   C延べ面積が1,000uを超える建築物(敷地内全ての建築物の延べ面積合計)
  です。

  これらの1つに該当すると、政令で定める技術的基準に従って、
    ・避難施設  
    ・消火設備
    ・排煙設備
    ・非常用の照明装置
    ・非常用の進入口
    ・敷地内の避難上及び消火上必要な通路
   を避難上及び消火上支障がないようにしなければならなりません。

★35条と施行令

 この35条に関係した、施行令は以下のとおりです。

★避難施設等の施行令は116条の2(窓その他の開口部を有しない居室等) から126条(屋上広場等)にあります。
  ここには、
  ・第二節 廊下、避難階段及び出入口として、
   ・客席からの出口の戸(施行令118条)・・・客席からの内開きとする
   ・廊下の幅(施行令119条)・・・両側居室と片側居室では異なる
   ・直通階段の設置(施行令120条)
   ・二以上の直通階段を設ける場合(施行令121条)
   ・屋外階段の構造(施行令121条の2)
   ・避難階段の設置(施行令122条)
   ・避難階段及び特別避難階段の構造(施行令123条)
   ・共同住宅の住戸の床面積の算定等(施行令123条の2)
   ・物品販売業を営む店舗における避難階段等の幅(施行令124条)
   ・屋外への出口(施行令125条)
   ・屋外への出口等の施錠装置の構造等(施行令125条の2)
   ・屋上広場等(施行令126条)
  など、細かく規定されています。

★排煙設備は、火災時に壁や天井など屋内の可燃物から発生した煙やガスを有効に屋外に排出し、建築物内にいる人に安全な避難時間を確保するための,設備で、施行令126条の2 第三節 排煙設備 (設置) から126条の3(構造)にあります。
   火災での死因で主な原因となる一酸化炭素中毒を防ぎ、煙による視界不良で非常口を見失うリスクを避けることが目的です。

  排煙の方式には、
   1..排煙口が直接外気に接する「自然排煙設備」
   2..排煙口を排煙風道に直結させる「機械排煙設備」
  の2種類があります。

   

  消防法でも排煙設備の設置基準があります。

★非常用の照明設備は、停電時に避難方向を示すための設備で、施行令126条の4 第四節 非常用の照明装置 (設置) から126条の5((構造)にあります。

   


 消防法では、「誘導灯」の規定があります。

  

★非常用の進入口は、災害時において、公共の消防隊などが、建築物内の人々を救出したり、消防活動をするために直接屋外から進入できるように開口部(窓など)を、原則、31m以下の3階以上の階に設けます。施行令126条の6 第五節 非常用の進入口 (設置) から126条の7(構造)にあります。

 3階建て以上の建物を計画するときは、「非常用進入口」または、「非常用進入口に代わる窓」の設置が必要です。
 非常用エレベーターの設置があれば、非常用進入口の設置が免除されます。

  

★敷地内の避難上及び消火上必要な通路等は、敷地を単位としてとらえたもので、地下街の規定もあり、施行令127条 第六節 敷地内の避難上及び消火上必要な通路等
(適用の範囲) から128条の3(地下街)にあります。

 これらのうち、試験に出たのは、

廊下の幅(建築基準法施行令119条)
  階段の幅と同じように廊下の幅も、避難上重要です。
  そこで、学校や共同住宅(マンションも入る)の共用廊下についても規定があります。

 建築基準法施行令第119条

 (廊下の幅)
 廊下の幅は、それぞれ次の表に掲げる数値以上としなければならない。 
    廊下の配置
 廊下の用途  両側に居室がある廊下における場合(単位 メートル)  その他の廊下における場合(単位 メートル)
小学校、中学校、義務教育学校、高等学校又は中等教育学校における児童用又は生徒用のもの   二・三  一・八
 病院における患者用のもの、共同住宅の住戸若しくは住室の床面積の合計が百平方メートルを超える階における共用のもの又は三室以下の専用のものを除き居室の床面積の合計が二百平方メートル(地階にあつては、百平方メートル)を超える階におけるもの  一・六  一・二

    @中廊下(廊下の両側に居室があるもの)......共同住宅では、1.6m 以上
    A片廊下(廊下の片側のみに居室があるもの)...共同住宅では、1.2m 以上

 

避難のための階段(建築基準法施行令120条〜)
   避難のための階段は、階段のみをとおって避難階(普通は1階)または、直接地上に出られる必要があります。このような階段を「直通階段」といいます。
   居室のある避難階以外の階では、避難のために直通階段を設けなければなりません。
  一般に、屋内階段は直接、避難階に到達でき、屋外階段は、直接、地上に到達できます。

 


{設問} 平成16年 マンション管理士 {問21}

{問 21} 共同住宅の避難施設に関する次の記述のうち、建築基準法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 屋内から屋外の避難階段に通ずる出口の戸の施錠装置について、屋内から鍵を用いることなく解錠できるものとしたが、解錠方法を表示しなかった。

→× 建築基準法施行令125条の2第1項1号によれば、屋外に設ける避難階段に屋内から通ずる出口に設ける戸の施錠装置は、当該建築物が法令の規定により人を拘禁する目的に供せられるものである場合を除き、屋内からかぎを用いることなく解錠できるものとし、かつ、当該戸の近くの見やすい場所にその解錠方法を表示しなければならない、とされる。

2 屋内に設ける避難階段の窓その他の採光上有効な開口部のない階段室について、照明設備を設けたが、予備電源を備えなかった。

→× 建築基準法施行令123条1項3号によれば、階段室には、窓その他の採光上有効な開口部又は予備電源を有する照明設備を設けること、とされる。
    そして、建築基準法施行令126条の5第1号ハによれば、非常用の照明装置は、予備電源を設ける構造としなければならない、とされる。

3 屋内に設ける避難階段の階段室の壁の室内に面する部分について、仕上げを不燃材料でしたが、その下地を不燃材料で造らなかった。

→× 建築基準法施行令123条1項2号によれば、階段室の天井(天井のない場合にあっては、屋根。第三項第三号において同じ。)及び壁の室内に面する部分は、仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ること、とされる。

4 3階が避難階である場合、屋内に設ける避難階段について避難階まで直通としたが、地上まで直通としなかった。

→○ まず、避難階とは、階段を使わずに建物の外に避難できる階で、直接地上へ通ずる出入口のある階をいう。特に1階に限らず、斜面などでは、2階や3階などもあり得る。建築基準法施行令123条1項7号によれば 階段は、耐火構造とし、避難階まで直通すること、とされ、3階が避難階であれば、地上まで直通にしなくてよい。

正解 4


非常用の照明装置(建築基準法施行令126条の4、5)
  災害時の停電に備えて、非常用の照明装置を設置して、主電源が切れても、予備電源で点灯し、災害の初期段階での避難を円滑にします。
  その、照明は、直接照明とし、床面において1ルクス以上の照度を確保することができるものとします。

   なお、非常用照明装置については、建築基準法が定め、誘導灯については、消防法が定めていますので、注意してください。

   ただし、非常用の照明装置の設置は戸建住宅や長屋、そしてマンション(共同住宅)には適用がありません。

非常用の進入ロ(建築基準法施行令126条の6,7)
  火災発生時に、消防隊が階段をつかえないときに、屋外からはしご付き消防自動車を使って、建築物内部に進入します。
  原則として、31mを超えると、消防車も届かないため、31m以下の部分にある3階以上の階に設けます。

 建築基準法施行令第126条の6

 第五節 非常用の進入口

(設置)
第百二十六条の六 建築物の高さ三十一メートル以下の部分にある三階以上の階(不燃性の物品の保管その他これと同等以上に火災の発生のおそれの少ない用途に供する階又は国土交通大臣が定める特別の理由により屋外からの進入を防止する必要がある階で、その直上階又は直下階から進入することができるものを除く。)には、非常用の進入口を設けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合においては、この限りでない
  一 第百二十九条の十三の三の規定に適合するエレベーターを設置している場合
  二 道又は道に通ずる幅員四メートル以上の通路その他の空地に面する各階の外壁面に窓その他の開口部(直径一メートル以上の円が内接することができるもの又はその幅及び高さが、それぞれ、七十五センチメートル以上及び一・二メートル以上のもので、格子その他の屋外からの進入を妨げる構造を有しないものに限る。)を当該壁面の長さ十メートル以内ごとに設けている場合
  三 吹抜きとなつている部分その他の一定の規模以上の空間で国土交通大臣が定めるものを確保し、当該空間から容易に各階に進入することができるよう、通路その他の部分であつて、当該空間との間に壁を有しないことその他の高い開放性を有するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを設けている場合

***************************************

*他に試験関係では、

 例えば、出口の鍵は建築基準法施行令 125条の2 

建築基準法施行令125条の2

 (屋外への出口等の施錠装置の構造等)
第百二十五条の二  次の各号に掲げる出口に設ける戸の施錠装置は、当該建築物が法令の規定により人を拘禁する目的に供せられるものである場合を除き、屋内からかぎを用いることなく解錠できるものとし、かつ、当該戸の近くの見やすい場所にその解錠方法を表示しなければならない。
  一  屋外に設ける避難階段に屋内から通ずる出口
  二  避難階段から屋外に通ずる出口
  三  前二号に掲げる出口以外の出口のうち、維持管理上常時鎖錠状態にある出口で、火災その他の非常の場合に避難の用に供すべきもの
2  前項に規定するもののほか、同項の施錠装置の構造及び解錠方法の表示の基準は、国土交通大臣が定める。

 
  ・避難階と歩行距離・・・歩行距離は、直通階段の最も近い降り口から、居室の最も遠い部分までの距離です。
   廊下または室内を通って、実際に歩いて行ける経路の最短距離を指します。(建築基準法施行令第120条)


  

  *避難階又は地上に通ずる直通階段(傾斜路を含む。以下同じ。)を居室の各部分からその一に至る歩行距離の数値

   ・主要構造部が準耐火構造であるか又は不燃材料で造られている場合
     30m〜50m以下
   ・それ以外の場合
     30m〜40m以下


設問 平成18年 マンション管理士 {問21}

〔問 21〕共同住宅に関する次の記述のうち、建築基準法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 避難階段から屋外に通ずる出口の戸には、かぎを使用すれば屋外に自由かつ容易に出ることができる施錠装置を設けなければならない。

→X 誤りである。建築基準法施行令第125条の2、1項「次の各号に掲げる出口に設ける戸の施錠装置は、当該建築物が法令の規定により人を拘禁する目的に供せられるものである場合を除き、屋内からかぎを用いることなく解錠できるものとし、かつ、当該戸の近くの見やすい場所にその解錠方法を表示しなければならない。
   一  屋外に設ける避難階段に屋内から通ずる出口
   二  避難階段から屋外に通ずる出口
   三  前二号に掲げる出口以外の出口のうち、維持管理上常時鎖錠状態にある出口で、火災その他の非常の場合に避難の用に供すべきもの」
   の規定によればかぎは使用できない。


設問 平成14年 マンション管理士 {問41}

〔問 41〕マンションの避難施設等に関する次の記述のうち、建築基準法及び消防法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 片廊下型マンションの場合は、規模にかかわらず、廊下の有効幅員は、90p以上でなければならない。

→X 誤 建築基準法施行令第119条によると、共同住宅(床面積100m2超)で、両側に居室がある廊下以外における廊下、すなわち片廊下型マンションの場合、廊下の有効幅員は、120p以上でなければならない。「90cm」以上とする本肢は誤りで、本問の正解肢となる。

2 避難階段には、屋外に設けるものと屋内に設けるものとがある。

→○ 正 建築基準法第35条並びに建築基準法施行令第123条によると、「避難階段」には、屋外避難階段と屋内避難階段とがある。よって、本肢は正しい。

3 バルコニーから隣戸へ避難する構造で、境界部分に仕切板がある場合は、それを容易に破壊などして通行できる措置が講じられていることが必要である。

→○ 正 バルコニーから隣戸へ避難する構造で、境界部分に仕切板がある場合は、避難を容易にするため、容易に破壊などして通行できる措置が講じられていることが必要である。よって、本肢は正しい。

4 3階に直接地上へ通ずる出入口がある場合は、3階は避難階である。

→○ 正 建築基準法施行令第13条の3第一号によると、「避難階」とは、直接地上へ通ずる出入口のある階をいう。周囲の状況によっては、2階や3階も避難階になる。よって、本肢は正しい。

正解:1


 


(特殊建築物等の内装)
第三十五条の二

 別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物、延べ面積が千平方メートルをこえる建築物又は建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備若しくは器具を設けたものは、政令で定めるものを除き、政令で定める技術的基準に従つて、その壁及び天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分の仕上げを防火上支障がないようにしなければならない。

過去出題 マンション管理士  
管理業務主任者   R02年、H26年、

★35条の2:特殊建築物等の内装

 35条の2 は、マンションなどや火を使う設備での、壁と天井に防火上の措置を求めています。

★内装の制限は、火災時に「フラッシュオーバー」までの時間をできるだけ遅らせ、火災の拡大を防ぎ、避難と消火活動を円滑にさせるものです。

フラッシュオーバーとは...爆発的に延焼する火災現象のことで、室内で火災による熱で可燃物が熱分解し、引火性のガスが発生して室内に充満した場合や、天井の内装などに使われている可燃性素材が輻射熱などによって一気に発火し、部屋全体が炎の海となる現象です。

★内装の規制を受けるのは、
  @別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物(劇場類、病院・ホテル・共同住宅類、学校、百貨店類等)
  A階数が3階以上、延べ1,000uをこえる建築物
  B政令で定める窓その他の開口部の無い居室を有する建築物。
  C調理室、浴室その他火を使用する設備を設けたもの
 
  が様々な制限を受けることになります。

★施行令は、128条の3の2 第五章の二 特殊建築物等の内装 (制限を受ける窓その他の開口部を有しない居室)から 128条の5(特殊建築物等の内装)までに規定されています。



{設問-1} 平成26年 管理業務主任者試験 「問17」

 次の記述は正しいか。

* 内装制限を受けるのは、床・壁・天井であり、床に対する基準が最も厳しいものとなっている。

X 誤っている。 内装制限を受けるのは、壁及び天井であり、床は、火災では制限の基準は厳しくない。
 これは、火は上に昇る、と考えればいい。具体的には、選択肢1でも引用しました、建築基準法第35条の2
 「(特殊建築物等の内装)
 第三十五条の二  別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物、延べ面積が千平方メートルをこえる建築物又は建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備若しくは器具を設けたものは、政令で定めるものを除き、政令で定める技術的基準に従つて、
その壁及び天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分の仕上げを防火上支障がないようにしなければならない。 」 とあるように、
 防火上重要なのは、壁及び天井であって、床に対する内装制限の基準は、最も厳しいは、誤りです。


   


(無窓の居室等の主要構造部)
第三十五条の三

 政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、その居室を区画する主要構造部を耐火構造とし、又は不燃材料で造らなければならない。ただし、別表第一(い)欄(一)項に掲げる用途に供するものについては、この限りでない。

過去出題 マンション管理士  
管理業務主任者  

★35条の3:無窓の居室等の主要構造部
 
 原則、窓や開口部を有しない居室(無窓の居室)は、その居室を区画する主要構造部を耐火構造とし、又は不燃材料で造らなければなりません。

 


 ただし、別表第一(い)欄(一)項に掲げる用途に供するものについては、この限りでない
  (一)劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場その他これらに類するもので政令で定めるもの


(この章の規定を実施し、又は補足するため必要な技術的基準)
第三十六条 (ピンク字は、平成30年6月27日公布)

 居室の採光面積、天井及び床の高さ、床の防湿方法、階段の構造、便所、防火壁、防火床、防火区画、消火設備、避雷設備及び給水、排水その他の配管設備の設置及び構造並びに浄化槽、煙突及び昇降機の構造に関して、この章の規定を実施し、又は補足するために安全上、防火上及び衛生上必要な技術的基準は、政令で定める。

過去出題 マンション管理士

H23年、H19年、H18年、H15年、H14年、H13年

管理業務主任者 H23年、H19年、H17年、H16年、H15年、H14年、H13年

★36条:この章の規定を実施し、又は補足するため必要な技術的基準

 36条は、幅広い内容です。
 この規定を受け、施行令が、様々に規定されています。


★給水設備について

給水設備とは...建築物や車両・船舶などに生活・業務に必要な水を供給するための設備です。上水道・中水道・工業用水道から受水したり敷地内の井戸から汲み上げた水を、必要とされる箇所に必要な水質で供給するため、適切な設計・施工・維持管理が必要です。

飲料水については、水道法により、残留塩素の含有量、PH値などの基準が定められています。

 建築基準法では、飲料水の配管設備の設置と構造に関して、クロスコネクションの禁止や吐水口(とすいこう)空間の設置、給水タンクの構造などが規定されています。

建築基準法施行令129条の2の4  

第一節の二 給水、排水その他の配管設備

(給水、排水その他の配管設備の設置及び構造)
第百二十九条の二の四 建築物に設ける給水、排水その他の配管設備の設置及び構造は、次に定めるところによらなければならない。
   一 コンクリートへの埋設等により腐食するおそれのある部分には、その材質に応じ有効な腐食防止のための措置を講ずること。
   二 構造耐力上主要な部分を貫通して配管する場合においては、建築物の構造耐力上支障を生じないようにすること。
   三 第百二十九条の三第一項第一号又は第三号に掲げる昇降機の昇降路内に設けないこと。ただし、地震時においても昇降機の籠(人又は物を乗せ昇降する部分をいう。以下同じ。)の昇降、籠及び出入口の戸の開閉その他の昇降機の機能並びに配管設備の機能に支障が生じないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの及び国土交通大臣の認定を受けたものは、この限りでない。
   四 圧力タンク及び給湯設備には、有効な安全装置を設けること。
   五 水質、温度その他の特性に応じて安全上、防火上及び衛生上支障のない構造とすること。
   六 地階を除く階数が三以上である建築物、地階に居室を有する建築物又は延べ面積が三千平方メートルを超える建築物に設ける換気、暖房又は冷房の設備の風道及びダストシュート、メールシュート、リネンシュートその他これらに類するもの(屋外に面する部分その他防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分を除く。)は、不燃材料で造ること。
   七 給水管、配電管その他の管が、第百十二条第二十項の準耐火構造の防火区画、第百十三条第一項の防火壁若しくは防火床、第百十四条第一項の界壁、同条第二項の間仕切壁又は同条第三項若しくは第四項の隔壁(ハにおいて「防火区画等」という。)を貫通する場合においては、これらの管の構造は、次のイからハまでのいずれかに適合するものとすること。ただし、一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で建築物の他の部分と区画されたパイプシャフト、パイプダクトその他これらに類するものの中にある部分については、この限りでない。
     イ 給水管、配電管その他の管の貫通する部分及び当該貫通する部分からそれぞれ両側に一メートル以内の距離にある部分を不燃材料で造ること。
     ロ 給水管、配電管その他の管の外径が、当該管の用途、材質その他の事項に応じて国土交通大臣が定める数値未満であること。
     ハ 防火区画等を貫通する管に通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後二十分間(第百十二条第一項若しくは第四項から第六項まで、同条第七項(同条第八項の規定により床面積の合計二百平方メートル以内ごとに区画する場合又は同条第九項の規定により床面積の合計五百平方メートル以内ごとに区画する場合に限る。)、同条第十項(同条第八項の規定により床面積の合計二百平方メートル以内ごとに区画する場合又は同条第九項の規定により床面積の合計五百平方メートル以内ごとに区画する場合に限る。)若しくは同条第十八項の規定による準耐火構造の床若しくは壁又は第百十三条第一項の防火壁若しくは防火床にあつては一時間、第百十四条第一項の界壁、同条第二項の間仕切壁又は同条第三項若しくは第四項の隔壁にあつては四十五分間)防火区画等の加熱側の反対側に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じないものとして、国土交通大臣の認定を受けたものであること。
   八 三階以上の階を共同住宅の用途に供する建築物の住戸に設けるガスの配管設備は、国土交通大臣が安全を確保するために必要があると認めて定める基準によること。

2 建築物に設ける飲料水の配管設備(水道法第三条第九項に規定する給水装置に該当する配管設備を除く。)の設置及び構造は、前項の規定によるほか、次に定めるところによらなければならない。
   一 飲料水の配管設備(これと給水系統を同じくする配管設備を含む。以下この項において同じ。)とその他の配管設備とは、直接連結させないこと。
   二 水槽、流しその他水を入れ、又は受ける設備に給水する飲料水の配管設備の水栓の開口部にあつては、これらの設備のあふれ面と水栓の開口部との垂直距離を適当に保つことその他の有効な水の逆流防止のための措置を講ずること。
   三 飲料水の配管設備の構造は、次に掲げる基準に適合するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。
     イ 当該配管設備から漏水しないものであること。
     ロ 当該配管設備から溶出する物質によつて汚染されないものであること。
   四 給水管の凍結による破壊のおそれのある部分には、有効な防凍のための措置を講ずること。
   五 給水タンク及び貯水タンクは、ほこりその他衛生上有害なものが入らない構造とし、金属性のものにあつては、衛生上支障のないように有効なさび止めのための措置を講ずること。
   六 前各号に定めるもののほか、安全上及び衛生上支障のないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものであること。

3 建築物に設ける排水のための配管設備の設置及び構造は、第一項の規定によるほか、次に定めるところによらなければならない。
   一 排出すべき雨水又は汚水の量及び水質に応じ有効な容量、傾斜及び材質を有すること。
   二 配管設備には、排水トラップ、通気管等を設置する等衛生上必要な措置を講ずること。
   三 配管設備の末端は、公共下水道、都市下水路その他の排水施設に排水上有効に連結すること。
   四 汚水に接する部分は、不浸透質の耐水材料で造ること。
   五 前各号に定めるもののほか、安全上及び衛生上支障のないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものであること。

★そして、(昭和50年12月20日建設省告示第1597号)
最終改正 平成12年5月30日建設省告示第1406号  S50建告1597 建築基準法に基づく告示

建築物に設ける飲料水の配管設備及び排水のための配管設備の構造方法を定める件

建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第129条の2の5第2項第六号及び第3項第五号の規定に基づき、建築物に設ける飲料水の配管設備及び排水のための配管設備を安全上及び衛生上支障のない構造とするための構造方法を次のように定める。

第1 飲料水の配管設備の構造は、次に定めるところによらなければならない。
  一 給水管
   イ ウォーターハンマーが生ずるおそれがある場合においては、エアチャンバーを設ける等有効なウォーターハンマー防止のための措置を講ずること
   ロ 給水立て主管からの各階への分岐管等主要な分岐管には、分岐点に近接した部分で、かつ、操作を容易に行うことができる部分に止水弁を設けること。
  二 給水タンク及び貯水タンク
   イ 建築物の内部、屋上又は最下階の床下に設ける場合においては、次に定めるところによること。
    (1) 外部から給水タンク又は貯水タンク(以下「給水タンク等」という。)の天井、底又は周壁の保守点検を容易かつ安全に行うことができるように設けること。
    (2) 給水タンク等の天井、底又は周壁は、建築物の他の部分と兼用しないこと。
    (3) 内部には、飲料水の配管設備以外の配管設備を設けないこと。
    (4) 内部の保守点検を容易かつ安全に行うことができる位置に、次に定める構造としたマンホールを設けること。ただし、給水タンク等の天井がふたを兼ねる場合においては、この限りでない。
     (い) 内部が常時加圧される構造の給水タンク等(以下「圧力タンク等」という。)に設ける場合を除き、ほこりその他衛生上有害なものが入らないように有効に立ち上げること。
     (ろ) 直径60cm以上の円が内接することができるものとすること。ただし、外部から内部の保守点検を容易かつ安全に行うことができる小規模な給水タンク等にあつては、この限りでない。
   (5) (4)のほか、水抜管を設ける等内部の保守点検を容易に行うことができる構造とすること。
   (6) 圧力タンク等を除き、ほこりその他衛生上有害なものが入らない構造のオーバーフロー管を有効に設けること。
   (7) 最下階の床下その他浸水によりオーバーフロー管から水が逆流するおそれのある場所に給水タンク等を設置する場合にあつては、浸水を容易に覚知することができるよう浸水を検知し警報する装置の設置その他の措置を講じること。
   (8) 圧力タンク等を除き、ほこりその他衛生上有害なものが入らない構造の通気のための装置を有効に設けること。ただし、有効容量が2m3未満の給水タンク等については、この限りでない。
   (9) 給水タンク等の上にポンプ、ボイラー、空気調和機等の機器を設ける場合においては、飲料水を汚染することのないように衛生上必要な措置を講ずること。
  ロ イの場所以外の場所に設ける場合においては、次に定めるところによること。
   (1) 給水タンク等の底が地盤面下にあり、かつ、当該給水タンク等からくみ取便所の便槽(そう)、し尿浄化槽(そう)、排水管(給水タンク等の水抜管又はオーバーフロー管に接続する排水管を除く。)、ガソリンタンクその他衛生上有害な物の貯溜(りゅう)又は処理に供する施設までの水平距離が5m未満である場合においては、イの(1)及び(3)から(8)までに定めるところによること。
   (2) (1)の場合以外の場合においては、イの(3)から(8)までに定めるところによること。

第2 排水のための配管設備の構造は、次に定めるところによらなければならない。
 一 排水管
  イ 掃除口を設ける等保守点検を容易に行うことができる構造とすること。
  ロ 次に掲げる管に直接連結しないこと。
   (1) 冷蔵庫、水飲器その他これらに類する機器の排水管
   (2) 滅菌器、消毒器その他これらに類する機器の排水管
   (3) 給水ポンプ、空気調和機その他これらに類する機器の排水管
   (4) 給水タンク等の水抜管及びオーバーフロー管
  ハ 雨水排水立て管は、汚水排水管若しくは通気管と兼用し、又はこれらの管に連結しないこと。
二 排水槽(排水を一時的に滞留させるための槽をいう。以下この号において同じ。)
  イ 通気のための装置以外の部分から臭気が洩(も)れない構造とすること。
  ロ 内部の保守点検を容易かつ安全に行うことができる位置にマンホール(直径60cm以上の円が内接することができるものに限る。)を設けること。ただし、外部から内部の保守点検を容易かつ安全に行うことができる小規模な排水槽にあつては、この限りでない。
  ハ 排水槽の底に吸い込みピットを設ける等保守点検がしやすい構造とすること。
  ニ 排水槽の底の勾配は吸い込みピットに向かつて1/15以上1/10以下とする等内部の保守点検を容易かつ安全に行うことができる構造とすること。
  ホ 通気のための装置を設け、かつ、当該装置は、直接外気に衛生上有効に開放すること。
 三 排水トラツプ
  イ 雨水排水管(雨水排水立て管を除く。)を汚水排水のための配管設備に連結する場合においては、当該雨水排水管に排水トラツプを設けること。
  ロ 二重トラツプとならないように設けること
  ハ 排水管内の臭気、衛生害虫等の移動を有効に防止することができる構造とすること。
  ニ 汚水に含まれる汚物等が付着し、又は沈澱しない構造とすること。ただし、阻集器を兼ねる排水トラツプについては、この限りでない。
  ホ 封水深は、5cm以上10cm以下(阻集器を兼ねる排水トラツプについては5cm以上)とすること。
ヘ 容易に掃除ができる構造とすること。
 四 阻集器
  イ 汚水が油脂、ガソリン、土砂その他排水のための配管設備の機能を著しく妨げ、又は排水のための配管設備を損傷するおそれがある物を含む場合においては、有効な位置に阻集器を設けること。
  ロ 汚水から油脂、ガソリン、土砂等を有効に分離することができる構造とすること。
  ハ 容易に掃除ができる構造とすること。
 五 通気管
  イ 排水トラツプの封水部に加わる排水管内の圧力と大気圧との差によつて排水トラツプが破封しないように有効に設けること。
  ロ 汚水の流入により通気が妨げられないようにすること。
  ハ 直接外気に衛生上有効に開放すること。ただし配管内の空気が屋内に漏れることを防止する装置が設けられている場合にあつては、この限りでない。
 六 排水再利用配管設備(公共下水道、都市下水路その他の排水施設に排水する前に排水を再利用するために用いる排水のための配管設備をいう。以下この号において同じ。)
  イ 他の配管設備(排水再利用設備その他これに類する配管設備を除く。)と兼用しないこと。
  ロ 排水再利用水の配管設備であることを示す表示を見やすい方法で水栓及び配管にするか、又は他の配管設備と容易に判別できる色とすること。
  ハ 洗面器、手洗器その他誤飲、誤用のおそれのある衛生器具に連結しないこと。
  ニ 水栓に排水再利用水であることを示す表示をすること。
  ホ 塩素消毒その他これに類する措置を講ずること。

第3 適用の特例
建築基準法(昭和25年法律第201号)別表第1(い)欄に掲げる用途以外の用途に供する建築物で、階数が2以下で、かつ、延べ面積が500m2以下のものに設ける飲料水の配管設備及び排水のための配管設備については、第1(第一号ロを除く。)並びに第2第三号イ及び第四号の規定は、適用しない。ただし、2以上の建築物(延べ面積の合計が500m2以下である場合を除く。)に対して飲料水を供給するための給水タンク等又は有効容量が5m3を超える給水タンク等については、第1第二号の規定の適用があるものとする。

★上の文章を読んだだけでは、構造は分からないでしょう。具体的には、受水槽(給水タンク)の構造は、下のようになっています。
  どの部分が、吐水口空間とよばれ、水抜管の機能は何かを理解しましょう。

★マンホールの内径や、点検に必要な上下左右の空間もよく出題されます。

 

★水道の水は、「直結式給水」と「受水槽式給水」のいずれかの方式で、家庭や学校そして事業所などへ給水されています。
  1. 直結式給水...水道の水が、配水管から蛇口までパイプが切れ目なくつながっていて給水している方式をいいます。この方式の場合は、受水槽の設置スペースが不要であるほか、受水槽方式と比べて衛生面での管理が軽減されます。
     直結式給水は、@−a 直圧給水方式...そのまま家庭で使用、と
              @−b 増圧直結給水方式...増圧ポンプを使用して、各家庭で使うに別れます。
  2.受水槽式給水...水道の水をいったん受水槽(タンク)に受けて給水する方式をいいます。3階以上の建物などで水圧が不足するところや、一時的に大量の水を使用するところでこの方式が用いられています。受水槽方式の場合には、衛生面での管理に十分配慮する必要がある反面、安定した水圧が得られるほか、水槽に水が溜められているため、断水時や災害時にも水が確保できるなどの利点があります。


排水トラップ(trap=わな)について

 排水トラップとは、排水設備の配管の途中に設けられ下水道の悪臭やガスが屋内へ侵入するのを防ぐ器具や装置、または構造を指します。害虫やネズミなどを進入させない文字通りの(trap、罠)の働きもします。

 排水管にはほぼ必須のものですが、ゴミが溜まりやすくパイプの詰まりの原因になります。
  そのため清掃のために多くの構造は開けられるようになっています。流し台・洗髪台・雨水配管など固体分の多い場合、ガソリンスタンドなど危険物が流れ出す恐れのある場合、土砂・生ゴミ・グリス・可燃性液体などを溜めるための阻集器を持つものもあります。

★排水トラップの構造

 排水トラップは、排水経路の途中を水で常に遮断しておく構造です。
 これを封水(ふうすい)または水封(すいふう)といいます。経路を水で塞ぐことによりそこから先の空気や硫化水素等のガスを遮断しています。また衛生害虫等の排水管から屋内への侵入も防止しています。

★型式

 *管トラップ...洗面器などの排水管をわざとS字型などに曲げ水が溜まり栓となるようにしたものです。S字型に曲がり床に抜けるのをSトラップ、壁に水平に抜けるのをPトラップ、出入口ともに水平の場合Uトラップといいます。

  管トラップは、他の器具トラップと比べて小型で済む点、水封部は排水そのものによって常に洗浄される(自己洗浄作用)点が大きな長所です。短所としては、Sトラップは自己サイフォン現象毛細管現象(説明は下記)が発生しやすいこと、Uトラップは底部に沈殿物が溜まりやすいこと、管トラップそのものが他の器具トラップと比べて破封しやすいことなどが挙げられます。

 衛生器具作りつけトラップ...水洗式の便器など。サイフォン式水封トラップといいます。

 *ベルトラップ(椀トラップ)...お椀を伏せたような形状あるいはベル(鈴)状のものです。
  水封部の水量が少なく破封しやすい欠点があります。また椀部は容易に取り外すことができるようになっている製品が多く、取り外した場合トラップとしての機能が失われ、悪臭やガスが逆流してくるので注意が必要です。台所の流し台・浴室の床などの排水口などで使用されています。一度、台所の流しを確認してください。

 *ドラムトラップ...管路の一部に排水管径の2.5倍以上のドラム型の水封部を設けたものです。水封部の水量が多く破封しにくい長所があります。沈殿物が溜まりやすい、清掃用流しなどに使用されます。

破封の起こる原因

 破封とは、トラップ内の水が減少しトラップとしての機能を失う現象をいいます。原因には、以下のものがあります。

 *自己サイフォン現象...洗面器などの大量に水をためて使用する器具で、器具・トラップ・排水管が連続したサイフォンとして働き、内部の水が排水されることがあります。 この現象です。

 *吸出し作用...縦管の上部から大量に排水がなされた場合、排水縦管に近い位置にトラップが設置されるとトラップ内の水が一緒に排水されることがあります。共同住宅のような住居系建物では上階の居住者が浴槽の残り湯を流した場合、下階の住居で影響が起きることがあります。

 *はね出し作用...横走り管が短く排水縦管に近い位置にトラップが設置されると、上部から縦管に大量に排水された場合、排水管内から空気と共にトラップ内の水が室内側に噴出することがあります。

 *毛管現象...内部に繊維状の物体が垂れ下がると、毛細管現象により内部の水が自然に排水されていきます。
  浴室の床用の排水孔では皮脂や石鹸等がトラップ内にこびりつきやすく、また目が行き届きにくい場所であるために毛髪が汚れに絡みついても気付かず、この毛管現象により破封することがかなりあります。

 *蒸発...長期間使用せず、排水が流れないと、蒸発により内部の水が減少して行きます。

★破封の防止

   防止法としては、次のような配慮が必要です。

   *通気設備を適切に配置する。
   *器具およびトラップから排水縦管までの横走り配管の管径および距離を適切にする。
   *器具およびトラップの清掃・定期的な排水を行う。

二重トラップの禁止平成12年5月30日建設省告示第1406号 )

  二重トラップ(ダブルトラップ)とは、1個の器具の配管に直列に2個以上のトラップを接続することです。
  排水の流れの抵抗が増大し排水不良の原因となるため禁止されています。
  施工ミスにより、トラップ付き桝(トラップ桝)を設置しているにも拘らず、途中でまたトラップをつけてしまことがあります。その場合は途中のトラップを取除き、パイプをつないで改善します。

★改正の「防火床」については、26条 を参照。


(建築材料の品質)
第三十七条

建築物の基礎、主要構造部その他安全上、防火上又は衛生上重要である政令で定める部分に使用する木材、鋼材、コンクリートその他の建築材料として国土交通大臣が定めるもの(以下この条において「指定建築材料」という。)は、次の各号の一に該当するものでなければならない。
  一  その品質が、指定建築材料ごとに国土交通大臣の指定する日本工業規格又は日本農林規格に適合するもの
  二  前号に掲げるもののほか、指定建築材料ごとに国土交通大臣が定める安全上、防火上又は衛生上必要な品質に関する技術的基準に適合するものであることについて国土交通大臣の認定を受けたもの

過去出題 マンション管理士  
管理業務主任者 H16年、

★37条:建築材料の品質

  37条は、建築材料(木材、鋼材、コンクリートなど)に一定の品質基準を求めています。

★品質基準には、日本工業規格(JIS)又は日本農林規格(JAS)もあります。

★建築基準法施行令があります。

◎鉄筋コンクリート造については、施行令72条以下です。下の出題例や 「目指せ! マンション管理士・管理業務主任者」 の過去問題の「建築基準法」の出題例を参考にしてください。


設問 平成16年 管理業務主任者 {問19}

【問19】 鉄筋コンクリート造に関する次の記述のうち、建築基準法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、国土交通大臣が別に定める場合を考慮しないものとする。(注:法改正対応すみ。)

1.コンクリートの四週圧縮強度の基準は、軽量骨材を使用する場合の方が普通骨材を使用する場合より小さな数値となっている。

→○ 建築基準法施行令74条1項1号によれば、四週圧縮強度は、1uにつき十二ニュートン(120kg)(軽量骨材を使用する場合においては、九ニュートン(90kg))以上であること、とされる。

2.コンクリートの打込み中及び打込み後5日間は、コンクリートの凝結及び硬化を促進するための特別な措置を講じない限り、コンクリートの温度が2℃を下回らないように養生しなければならない。

→○ 建築基準法施行令75条によれば、コンクリート打込み中及び打込み後五日間は、コンクリートの温度が二度を下らないようにし、かつ、乾燥、震動等によってコンクリートの凝結及び硬化が妨げられないように養生しなければならない。ただし、コンクリートの凝結及び硬化を促進するための特別の措置を講ずる場合においては、この限りでない、とされる。

3.耐力壁の厚さは、12p以上としなければならない。

→○ 建築基準法施行令78条の2、1項1号によれば、厚さは、12cm以上とすること、とされる。

4.鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さは、柱又ははりにあっては、直接土に接する場合、接しない場合にかかわらず、3p以上としなければならない。

→× 建築基準法施行令79条1項によれば、鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さは、耐力壁以外の壁又は床にあっては2cm以上、耐力壁、柱又ははりにあっては3cm以上、直接土に接する壁、柱、床若しくははり又は布基礎の立上り部分にあっては4cm以上、基礎(布基礎の立上り部分を除く。)にあっては捨コンクリートの部分を除いて6cm以上としなければならない、とされ直接土に接する立上り部分にあっては4cm以上。

正解 4


 


 (特殊の構造方法又は建築材料)  (赤字は平成27年6月1日施行)
第三十八条 

 この章の規定及びこれに基づく命令の規定は、その予想しない特殊の構造方法又は建築材料を用いる建築物については、国土交通大臣がその構造方法又は建築材料がこれらの規定に適合するものと同等以上の効力があると認める場合においては、適用しない。 


 (旧:削除されていた条)

★38条:特殊の構造方法又は建築材料

  38条は、以前削除されていましたが、平成27年6月1日施行により、また別の条文が規定されました。

 現行の建築基準法では想定していないような構造方法に対応した、国土交通大臣の認定制度を創設して、円滑な導入を促進する目的だそうです。

 今までの法令では基準化するまでに時間がかかり、新たな建築技術の開発が阻害されているとの反省から、機動的に大臣認定をしていく方向で、そこで、「特殊構造方法等認定制度」が創設されています。

  参考:68条の26、 97条の4 など。


 参考:旧の解説

★削除

★ここは、具体的な仕様(仕様規定)から、性能による記述(性能規定)に変換があり、削除されました。


(災害危険区域)
第三十九条

 地方公共団体は、条例で、津波、高潮、出水等による危険の著しい区域を災害危険区域として指定することができる。

2  災害危険区域内における住居の用に供する建築物の建築の禁止その他建築物の建築に関する制限で災害防止上必要なものは、前項の条例で定める。

過去出題 マンション管理士  
管理業務主任者 平成23年、

★39条:災害危険区域

★建築基準法の構成
  建築基準法は、基準法 ー> 施行令 −> 施行規則 −>条例 という構成をとることにより、地域的な風土や歴史の違いから生じる差異に対応できる余地を残しています。

★地方公共団体は、条例で、津波、高潮、出水等による危険の著しい区域を災害危険区域として指定することができ、災害危険区域となると、条例で別の規制ができます。

 他にも、がけ崩れ、地すべりなども該当します。

   


{設問}平成23年 管理業務主任者試験 「問22」

【問 22】 建築基準法第39条に規定されている災害危険区域に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 高潮、出水による危険の著しい区域を災害危険区域として指定することができるとしているが、津波による危険は対象としていない。


X 誤っている。 建築基準法からの出題で、第39条からは目新しい。平成23年3月11日に発生した、東北地方太平洋沖地震での津波の被害に絡んでの出題だ。
  では、建築基準法第39条
 「(災害危険区域)
  第三十九条  地方公共団体は、条例で、津波、高潮、出水等による危険の著しい区域を災害危険区域として指定することができる。
   2  災害危険区域内における住居の用に供する建築物の建築の禁止その他建築物の建築に関する制限で災害防止上必要なものは、前項の条例で定める。」とあり、
1項によれば、「地方公共団体は、条例で、津波、高潮、出水等による危険の著しい区域を災害危険区域として指定すること」ができます。

2 災害危険区域を指定することができるのは、国土交通大臣である。

X 誤っている。 災害危険区域を指定するのは、選択肢1で引用しました、建築基準法第39条1項
 「地方公共団体は、条例で、津波、高潮、出水等による危険の著しい区域を災害危険区域として指定することができる」とあり、
地方公共団体です。国土交通大臣ではありません。


3 災害危険区域内においては、住居の用に供する建築物の建築を禁止することができる。

○ 正しい。 選択肢1で引用しました、建築基準法第39条2項
 「2  災害危険区域内における住居の用に供する建築物の建築の禁止その他建築物の建築に関する制限で災害防止上必要なものは、前項の条例で定める」とあり、
条文のままです。


4 建築物の建築に関する制限で災害防止上必要なものは、建築基準法施行令に規定されている。

X 誤っている。 選択肢1で引用しました、建築基準法第39条2項
 「2  災害危険区域内における住居の用に供する建築物の建築の禁止その他建築物の建築に関する制限で災害防止上必要なものは、前項の条例で定める」とあり、
前項(1項)の条例=地方公共団体の条例ですから、建築基準法施行令ではありません。


答え:3 (ここは、建築基準法第39条を知らないと、迷う。 解答も難しいか。)



(地方公共団体の条例による制限の附加)
第四十条

 地方公共団体は、その地方の気候若しくは風土の特殊性又は特殊建築物の用途若しくは規模に因り、この章の規定又はこれに基く命令の規定のみによつては建築物の安全、防火又は衛生の目的を充分に達し難いと認める場合においては、条例で、建築物の敷地、構造又は建築設備に関して安全上、防火上又は衛生上必要な制限を附加することができる。

過去出題 マンション管理士  
管理業務主任者  

★40条:地方公共団体の条例による制限の附加

★地方公共団体は、独自の判断で、安全上、防火上又は衛生上必要な制限を附加することができます。


 都道府県などの全域に該当する場合は、都道府県の条例で、また、一つの市町村に限定される場合には、市町村の条例で制限します。


(市町村の条例による制限の緩和)
第四十一条

 第六条第一項第四号の区域外においては、市町村は、土地の状況により必要と認める場合においては、国土交通大臣の承認を得て、条例で、区域を限り、第十九条、第二十一条、第二十八条、第二十九条及び第三十六条の規定の全部若しくは一部を適用せず、又はこれらの規定による制限を緩和することができる。ただし、第六条第一項第一号及び第三号の建築物については、この限りでない。

過去出題 マンション管理士  
管理業務主任者  

★41条:市町村の条例による制限の緩和

 市町村では、一定の規定に関しては、条例で、条文不適用と制限の緩和ができます。

 参照 建築基準法第6条1項4号

  四  前三号に掲げる建築物を除くほか、都市計画区域若しくは準都市計画区域(いずれも都道府県知事が都道府県都市計画審議会の意見を聴いて指定する区域を除く。)若しくは景観法 (平成十六年法律第百十号)第七十四条第一項 の準景観地区(市町村長が指定する区域を除く。)内又は都道府県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若しくは一部について指定する区域内における建築物

★19条...(敷地の衛生及び安全)

★21条...(大規模の建築物の主要構造部)

★28条...(居室の採光及び換気)

★29条...(地階における住宅等の居室)

★36条...(この章の規定を実施し、又は補足するため必要な技術的基準)

 この規定の主旨は、都道府県のような広い地域と異なり、市町村のような狭い地域で安全性が確保できるなら、特例として国土交通大臣が承認すれば、制限を緩和してもいいとするものです。

 


ページ終わり

最終更新日:
2022年 4月 5日:見直して、かなり、加筆などした。
2021年 2月 6日:見直した。
2019年 8月 9日:施行:令和元年6月25日に対応した。
第30条が改正された。
2018年 6月 8日:第30条にレオパレス21で「界壁」が無かったを入れた。
2018年 3月19日:「田園住居地域」を入れた。
2018年 3月17日:平成29年と平成28年の出題年を入れた。
2016年 3月 5日:平成27年の出題年を入れた。
2015年 4月16日:平成27年6月1日施行に合わせた。
また、平成26年の出題年を入れた。
2014年 2月23日:平成25年の出題年を入れた。
2013年 3月24日:平成24年の出題年を入。
2012年 3月21日:平成23年の出題年記入。
2011年 5月 8日:改正を確認
2011年 1月30日:H22年の出題年を入れた。
2008年10月12日  

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